JP5495922B2 - 抄紙用ワイヤー - Google Patents
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Description
一方、製紙面側層は、主にワイヤーマーク防止、紙離れ性、脱水性、繊維支持性等の各種機能を抄紙用ワイヤーに付与する層として活用される。具体的には、製紙面側の経糸と緯糸は製紙面側に同じくらい表れる事で製紙面側を平滑にする構造が採用される。
即ち、下記特許文献1には、走行面側の経糸の本数を製紙面側経糸の本数の2倍とすることにより、強度に優れる抄紙用ワイヤーが提案されており、この構造は、製紙面側経糸間が開くことで、より多くの製紙面側緯糸を配置することが可能となり、製紙面側表面の平滑性が向上する。
また、特許文献2には、接結緯糸が走行面側経糸を織込む織込回数を、製紙面側緯糸を織り込む回数より多くすることにより、製紙面側織物層と走行面側織物層の組織がより強固に固定し、耐久性に優れた抄紙用ワイヤーが開示されている。
走行面側と接結する部分は脱水や内部摩耗防止の観点から定位置(経糸本数分だけズレた位置)とする為、接結部分も規則的な繰り返しとなる。そして通常、接結糸は製紙面側を構成する糸を用いるため、製紙面側も同様に規則的なパターンの繰り返しとなる。
一方、製紙面側では、この接結により生じる接結部は、製紙面側の組織を完全な平織り構造とすることを妨げることとなる。そして、接結部の構造上、製紙面側に凹凸を生じてしまう。この凹凸(特に凹)を生じる接結部の連続性が、製紙面側層を真上から見た場合に、例えば、斜めの並びの規則的なパターンとなって強調され、ワイヤーマークを生じさせる原因となる。即ち、製紙面側に生じる接結部に規則性が生まれると、この規則的なパターンがワイヤーマークとして製品紙に影響を与えるおそれがある。
この為、製紙面側層を製紙面側(真上)から見ると接結部分は斜めへの直線的な並びに配置されている。この接結部分の配置は、走行面側の構造(組織)にも影響するため、接結部分が挟む製紙面側経糸の本数が少ない場合ほど接結部と接結部とが近接し、接結部は密集することとなる。具体的には、図14(b)の従来組織は、図14(a)の従来組織よりも接結部が密集していることがわかる。
前記特許文献1及び2では、いずれもこの問題を含んでおり、製紙面側表面が平織りであるため、接結部分の規則的な繰り返しパターンによるワイヤーマークを避けられず、これを回避する検討は成されていないのが実情である。
1.製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸により接結された抄紙用ワイヤーであって、
上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有することを特徴とする抄紙用ワイヤー。
2.上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、
一方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、
他方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である1.に記載の抄紙用ワイヤー。
3.上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である1.に記載の抄紙用ワイヤー。
4.前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位U1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をS11とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうち該S11の左側に配置された製紙面側接結部をS12とし、
前記S12側において前記繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記S12の左側に配置された製紙面側接結部をS21とし、
前記繰り返し単位U1及び前記繰り返し単位U2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部S11と前記製紙面側接結部S12とが挟む製紙面側経糸をL本とし、
前記製紙面側接結部S12と前記製紙面側接結部S21とが挟む製紙面側経糸をM本とした場合に、
前記L、前記M及び前記Nは、下記(1)及び下記(2)の条件を満たす1.乃至3.のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
L及びMは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (1)
L≠M ・・・・・ (2)
5.前記L、前記M及び前記Nは、下記(3)及び下記(4)の条件を満たす請求項4に記載の抄紙用ワイヤー。
L≦N/2 (3)
M≦N/2 (4)
6.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(5)及び下記(6)の条件を満たす5.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦L≦2 ・・・ (5)
L<M ・・・ (6)
7.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(7)及び下記(8)の条件を満たす5.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦M≦2 ・・・ (7)
M<L ・・・ (8)
8.前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、
前記T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、
前記繰り返し単位V1及びV2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸をP本とし、
前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸をQ本とし、
前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸をR本とした場合に、
前記P、前記Q及び前記Rは、下記(9)及び(10)の条件を満たす請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
P及びQは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (9)
P≠Q≠R (10)
9.前記P、前記Q及び前記Rは、下記(11)乃至下記(13)の条件を満たす8.に記載の抄紙用ワイヤー。
P≦N/2 (11)
Q≦N/2 (12)
R≦N/2 (13)
10.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(14)及び下記(15)の条件を満たす9.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦P≦3 ・・・ (14)
P<Q<R ・ (15)
11.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(16)及び下記(17)の条件を満たす9.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦R≦4 ・・・ (16)
R<Q<P ・・・ (17)
12.1≦S≦3である1.乃至11.のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
13.前記製紙面側緯糸及び前記接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、前記接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、
前記接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、前記製紙面側緯糸よりも線径が細い1.乃至12.のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
また、接結緯糸が、2本の接結緯糸構成糸からなり、一方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、他方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である場合には、更に内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、接結緯糸が、2本の接結緯糸構成糸からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸であるも、更に内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、前記L、前記M及び前記Nが、L≦N/2、且つ、M≦N/2である場合には、更に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
また、前記L、前記M及び前記Nが、0≦L≦2、且つ、L<Mである場合には、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、前記L、前記M及び前記Nが、0≦L≦2、且つ、M<Lである場合にも、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、P≦N/2、Q≦N/2、R≦N/2である場合には、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
また、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rである場合には、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、0≦P≦4、且つ、R<Q<Pである場合にも、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、製紙面側緯糸及び接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、製紙面側緯糸よりも線径が細い場合には、特に接結糸の織り込みによる凹みを小さくすることができるため、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
例えば、図1に示す抄紙用ワイヤー1は、製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸50により接結され、上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、1本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸30、2本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸40がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位U1を有する。
この製紙面側織物層は上記平織り組織を有する。
本発明における上記平織り組織とは、図1に示すように、製紙面側緯糸20及び、接結緯糸50が、走行面側経糸(図示せず)を織込む以外の他部において、製紙面側経糸11の下に来るように織込み、続いて、隣りの製紙面側経糸11の上に来るように織込むことにより形成されている組織である。但し、一部にかかる織込みでない箇所があってもよい。
上記「製紙面側緯糸」は上記製紙面側経糸と垂直方向に交差して延びる糸である。
また、走行面側織物層を構成する走行面側経糸及び走行面側緯糸の織込みパターンについても特に限定はないが、走行面側緯糸を先に摩耗させ、走行面側経糸を摩耗から保護して抄紙用ワイヤーの寿命延長を図るべく、走行面側緯糸を下方に突出させたロングクリンプを有する織込みパターンとすることができる。
上記「走行面側緯糸」は上記走行面側経糸と垂直方向に交差して延びる糸である。
通常、樹脂を用い、更には、熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂{脂肪族ポリアミド樹脂(ナイロン等)、芳香族ポリアミド樹脂(パラフェニレンジアミンとテレフタル酸との重合体など)}、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂(疎水化ポリビニルアルコール樹脂等、特にビニロン)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかではポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とグリコールとからなるポリエステルであれば特にその種類に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の製紙用織物を構成する各糸は、各々単一材質で構成されていてもよく、経糸又は緯糸ごとに材質が異なる2種以上の材質で構成されているものとすることもできる。更に、各糸には、無機フィラー及び/又は有機フィラーを含有されてもよい。
本発明では、製紙面側の接結部分を「S本とS+1本に配置」させる事で接結部分の配置を部分的に不規則にさせる事が可能となる。
例えば図6に示すように、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸S11、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸S21がこの順に隣接した緯糸配置からなるものとすると、接結部分S12は製紙面側緯糸がS+1本となることで接結部分S11からS12への延長線上への配置は製紙面側の組織を崩すことになる為、ズレて配置される。これにより、製紙面側緯糸をS本とした場合の接結部分S11、S12の同一線上に、S11、S12は配置されない為、ワイヤーマークになり難くなるのである。
例えば、図1に示す繰り返し単位U1は、S=1の場合であり、1本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸31、2本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸41がこの順に隣接した緯糸配置からなる。
接結緯糸は、1本からなるものであってもよいが、図1に示す第1の接結緯糸30のように、2本の接結緯糸構成糸31、32からなるものとすることができる。
図1に示すように、一方の接結緯糸構成糸32が、製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、他方の接結緯糸構成糸31が、製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸とすることができる。
また、図4に示す第1の接結緯糸35のように、いずれの接結緯糸構成糸31、33も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸とすることもできる。
L及びMは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (1)
L≠M ・・・・・ (2)
即ち、繰り返し単位U1に含まれた、S11とS12とが挟む製紙面側経糸の本数(L)が6本であり、且つ、S12と、繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれたS21と、が挟む製紙面側経糸の本数(M)が1本である。
図6ではS11からS12へは経糸5本分のズレなので、図6より図7の方が経糸のズレの本数は2本分遠くなる(長くなる)。
一方が近くになったことで部分的に密集するが、他方とは遠くなった事で連続した斜めの配置とはならず線状にはなり難くなる。また、接結部分の他方との距離を長く(遠く)することで、例え(S12とS21が)線状に繋がって目立ったとしてもその角度は、一方の距離の短い(S11とS12の)線状の角度とは異なるものである。
製紙面側経糸10本の場合、短いものは経糸2本以内のズレ、長いものは経糸4本以上5本(全経糸10本の半分)以下のズレの配置が最大の効果を生むことになる。
即ち、L≦N/2、且つ、M≦N/2であることがより好ましい。更に、0≦L≦2、且つ、L<M、又は、0≦M≦2、且つ、M<Lであることが特に好ましい。
P及びQは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (9)
P≠Q≠R (10)
また、図3の抄紙用ワイヤー3の場合は、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rであることにより、接結部分のズレの本数を少ないものから多いものへと順次混在させることにより、線状の角度を変えて多方面に散らばらせることで一本あたりの線の強調を特に弱めさせ、一層目立たなくさせることができる。
例えば図1に示すように、製紙面側緯糸20及び接結緯糸50は、いずれもモノフィラメントからなると共に、第1の接結緯糸30は2本の接結緯糸構成糸31、32からなり、且つ、接結緯糸構成糸31、32のうちの一方の接結緯糸構成糸32は、製紙面側緯糸20よりも線径が細いことが好ましい。こうすることで、接結緯糸構成糸32によって織り込む接結部S11により生ずる凹みを小さくすることができ、製紙面側表面の平滑性をより維持することができる。
実施例1に係る抄紙用ワイヤー1は、図1に示すように、経糸10本で完全組織を形成する製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸50により接結され、上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、1本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸30、2本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸40がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位U1を有する。第1の接結緯糸30は、接結緯糸構成糸31及び接結緯糸構成糸32からなり、接結緯糸構成糸31は製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、接結緯糸構成糸32は製紙面経糸10を1本おきに織り込む織部を有しない糸である。第2の接結緯糸40は、接結緯糸構成糸41及び接結緯糸構成糸42からなり、接結緯糸構成糸41は製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、接結緯糸構成糸42は製紙面経糸11を1本おきに織り込む織部を有しない糸である。
尚、抄紙用ワイヤーを構成する各糸の材質、径は次の通りである。即ち、製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20はポリエステル製で径が0.20mmである。走行面側経糸はポリエステル製で径が0.25mmである。走行面側緯糸はポリエステル製とナイロン製の併用で径が0.35mmである。接結緯糸構成糸31は、ナイロン製で径が0.20mmであるが、接結緯糸構成糸32は、接結緯糸構成糸31より細く、ナイロン製で径が0.18mmである。
抄紙用ワイヤー1は、経糸10本で完全組織を形成するため、繰り返し単位U1及び繰り返し単位U2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは10本である。製紙面側接結部S11とS12とで挟む経糸の本数Lは0本であり、製紙面側接結部S12とS21とで挟む経糸の本数Mは5本である。即ち、L<N/2、M=N/2、及び、L<Mである。
実施例1に係る抄紙用ワイヤー1の製紙面側表面の光学顕微鏡写真(図15(a))によると、製紙面側接結部S11、S12、S21に凹みが観察されるが、その配置は不規則である。
実施例2に係る抄紙用ワイヤー2は、図2に示すように、実施例1において、1本の製紙面側緯糸21に代えて2本の製紙面緯糸21、2本の製紙面側緯糸22に代えて3本の製紙面緯糸22とした構成としたものである。他の構成は実施例1と同一とした。
抄紙用ワイヤー2も、経糸10本で完全組織を形成するため、繰り返し単位U1及び繰り返し単位U2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは10本である。製紙面側接結部S11とS12とで挟む経糸の本数Lは5本であり、製紙面側接結部S12とS21とで挟む経糸の本数Mは0本である。即ち、L=N/2、M<N/2、及び、M<Lである。
実施例3に係る抄紙用ワイヤー3は、図3に示すように、経糸12本で完全組織を形成するため、繰り返し単位V1及び繰り返し単位V2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは12本である。下記製紙面側接結部の配置以外の他の構成は実施例1と同一とした。製紙面側接結部T11とT12とで挟む経糸の本数Pは2本であり、製紙面側接結部T12とT21とで挟む経糸の本数Qは3本であり、製紙面側接結部T21とT22とで挟む経糸の本数Rは4本である。即ち、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であり、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rである。
実施例4に係る抄紙用ワイヤー4は、図4に示すように、経糸12本で完全組織を形成するため、繰り返し単位V1及び繰り返し単位V2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは12本である。そして、第1の接結緯糸35は、2本の接結緯糸構成糸31、33からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である。また、第2の接結緯糸45も、2本の接結緯糸構成糸41、43からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である。下記製紙面側接結部の配置以外の他の構成は実施例1と同一とした。
製紙面側接結部T11とT12とで挟む経糸の本数Pは2本であり、製紙面側接結部T12とT21とで挟む経糸の本数Qは3本であり、製紙面側接結部T21とT22とで挟む経糸の本数Rは4本である。即ち、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であり、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rである。
実施例5に係る抄紙用ワイヤー5は、図5に示すように、経糸12本で完全組織を形成するため、繰り返し単位V1及び繰り返し単位V2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは12本である。そして、接結緯糸35、45は、実施例4と同様、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である。下記製紙面側接結部の配置以外の他の構成は実施例1と同一とした。
製紙面側接結部T11とT12とで挟む経糸の本数Pは4本であり、製紙面側接結部T12とT21とで挟む経糸の本数Qは3本であり、製紙面側接結部T21とT22とで挟む経糸の本数Rは4本である。即ち、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2である。
比較例1に係る抄紙用ワイヤー6は、図9に示すように、実施例1に係る抄紙用ワイヤー1における製紙面側緯糸をいずれも1本からなる構成としたものである。その他の構成、材質等は、実施例1と同一とした。
その結果、接結部S11、S12、S21及びS22が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
比較例2〜4に係る抄紙用ワイヤー7〜9は、図10〜12に示すように、比較例1に係る抄紙用ワイヤー1における製紙面側緯糸1本に代えて、それぞれ製紙面側緯糸2本、3本及び4本とする構成としたものである。その他の構成、材質等は、比較例1と同一とした。
その結果、図10に示すように、比較例2に係る抄紙用ワイヤー7は、接結部S11、S12、S21及びS22が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
比較例2に係る抄紙用ワイヤー7の製紙面側表面の光学顕微鏡写真(図16(a))によると、製紙面側接結部S11、S12、S22に凹みが観察されるが、その配置は規則的である。
同様に図11に示すように、比較例3に係る抄紙用ワイヤー7は、製紙面側7接結部S11、S12及びS21が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
同様に図12に示すように、比較例4に係る抄紙用ワイヤー9は、製紙面側接結部S11、S12及びS21が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
比較例5に係る抄紙用ワイヤー10は、図13に示すように、接結緯糸構成糸のいずれも、製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、且つ、製紙面側に1本おきに3回連続して織り込む構成である。
その結果、接結部S11とS12間、S21とS22間、S31とS32間及びS41とS42間が等間隔となり、ワイヤーマークの原因となりやすいことが明白である。
上記の実施例1に係る抄紙用ワイヤー1、比較例1に係る抄紙用ワイヤー6及び比較例2に係る抄紙用ワイヤー7について、表1に示す経糸本数、緯糸本数の試験片を作成して通気度、ワイヤーマークの試験を行なった。
JIS 1096により、フラジール型通気度試験機を使用して125Paの圧力差で測定した。
プレスケール感圧紙(富士写真フィルム株式会社性、品名「プレスケール低圧用感圧紙」、寸法;縦100mm×横100mm)に、面圧3.4MPaの定荷重で加圧して押しつけた。この時織物の凸部と感圧紙が触れると発色し、逆に凹部のように感圧紙と触れないと非発色部となる。
発色部または非発色部の連続したパターンの角度を測定する。角度は、0を縦方向(XY座標でX=0方向)とし、90は横方向(XY座標でY=0方向)とした。
実施例1の通気度を100%とした場合に、緯糸本数が1本のみからなる比較例1より通気度が7.1%小さいものの、緯糸本数が2本のみからなる比較例2より通気度が15.8%多いという良好な結果が得られた。
実施例1のワイヤーマークは、図17に示すように、濃淡の割合がより均一で、特定のマークは認められない。一方、比較例1では、図18に示すように、右上から左下へ向かって角度約22度(紙面上下垂直線に対する角度)の斜めのパターン(ワイヤーマークとなる)が認められる。更に、比較例2では、図19に示すように、右上から左下へ向かって特に目立つ、角度約21度(紙面上下垂直線に対する角度)の斜めのパターン(ワイヤーマークとなる)が認められる。
11;製紙面側経糸、
20、21、22、23;製紙面側緯糸、
50;接結緯糸、
30、35;第1の接結緯糸、
40、45;第2の接結緯糸、
32、42;接結緯糸構成糸(1本おきに織り込む織部を有さない糸)、
31、33、41、43;接結緯糸構成糸(1本おきに織り込む織部を有する糸(自接結緯糸))、
U1、U2、V1、V2;繰り返し単位、
S11、S12、S21、S22;製紙面側接結部、
T11、T12、T21、T22;製紙面側接結部、
X;1本おきに織り込んでいない織部、Y;1本おきに織り込む織部。
Claims (13)
- 製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸により接結された抄紙用ワイヤーであって、
上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有することを特徴とする抄紙用ワイヤー。 - 上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、
一方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、
他方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。 - 上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
- 前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位U1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をS11とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうち該S11の左側に配置された製紙面側接結部をS12とし、
前記S12側において前記繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記S12の左側に配置された製紙面側接結部をS21とし、
前記繰り返し単位U1及び前記繰り返し単位U2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部S11と前記製紙面側接結部S12とが挟む製紙面側経糸をL本とし、
前記製紙面側接結部S12と前記製紙面側接結部S21とが挟む製紙面側経糸をM本とした場合に、
前記L、前記M及び前記Nは、下記(1)及び下記(2)の条件を満たす請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
L及びMは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (1)
L≠M ・・・・・ (2) - 前記L、前記M及び前記Nは、下記(3)及び下記(4)の条件を満たす請求項4に記載の抄紙用ワイヤー。
L≦N/2 (3)
M≦N/2 (4) - 前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(5)及び下記(6)の条件を満たす請求項5に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦L≦2 ・・・ (5)
L<M ・・・ (6) - 前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(7)及び下記(8)の条件を満たす請求項5に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦M≦2 ・・・ (7)
M<L ・・・ (8) - 前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、
前記T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、
前記繰り返し単位V1及びV2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸をP本とし、
前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸をQ本とし、
前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸をR本とした場合に、
前記P、前記Q及び前記Rは、下記(9)及び(10)の条件を満たす請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
P及びQは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (9)
P≠Q≠R (10) - 前記P、前記Q及び前記Rは、下記(11)乃至下記(13)の条件を満たす請求項8に記載の抄紙用ワイヤー。
P≦N/2 (11)
Q≦N/2 (12)
R≦N/2 (13) - 前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(14)及び下記(15)の条件を満たす請求項9に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦P≦3 ・・・ (14)
P<Q<R ・ (15) - 前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(16)及び下記(17)の条件を満たす請求項9に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦R≦4 ・・・ (16)
R<Q<P ・・・ (17) - 1≦S≦3である請求項1乃至11のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
- 前記製紙面側緯糸及び前記接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、前記接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、
前記接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、前記製紙面側緯糸よりも線径が細い請求項1乃至12のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
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