<第1実施形態>
次に、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態における電源装置は、降圧チョッパー型のDC/DCコンバータを2台並列に接続したものである。図1に示すように、電源装置1は、2つの電源ユニット3、4が並列に接続された電圧変換回路2と、電圧変換回路2から出力された出力電圧を検出する出力電圧検出回路10とを有しており、2つの共通となった入力端に電力供給源である直流電源V1が接続され、共通となった出力端に負荷R1が接続されている。なお、電源ユニット3を第1電源ユニット3とし、電源ユニット4を第2電源ユニット4とする。また、直流電源V1から電源装置1に印加される電圧をViとし、電源装置1から負荷R1に印加される電圧をVoとする。
第1電源ユニット3の内部回路について説明する。なお、第2電源ユニット4は、第1電源ユニット3の内部回路とほぼ同様の構成であるため、その説明を省略する。しかしながら、第1電源ユニット3の後述する第1制御回路5と第2電源ユニット4の後述する第2制御回路6の内部構成は異なるため、その点については後述する。
第1電源ユニット3は、スイッチング素子であるMOSFETQ1(第1スイッチング素子)と、インダクタL1と、フライホイールダイオードD1と、出力平滑用のコンデンサC1と、第1制御回路5と、を有している。
第1電源ユニット3は、MOSFETQ1がON(導通)することで、直流電源V1から負荷R1に電流を流すとともに、この電流によってインダクタL1にエネルギーを蓄える。そして、MOSFETQ1がOFFすることで、インダクタL1が電流の流れを保とうとして起電力を発生し、フライホイールダイオードD1を介して負荷R1に電流が流れる。
このMOSFETQ1のスイッチング動作は、第1制御回路5によりゲートを駆動制御することで行われる。MOSFETQ1のゲート端子は、第1制御回路5に接続されている。第1制御回路5には、電圧監視線20を介して出力電圧検出回路10から検出された出力電圧に関する信号が入力されており、この信号に応じてMOSFETQ1のゲートを駆動制御して、第1電源ユニット3から負荷R1に対して所定の電圧Voとなった出力電力を供給する。
具体的には、第1電源ユニット3は、電圧変換回路2から出力された出力電圧の電圧値が電圧Voよりも小さい場合には、MOSFETQ1のスイッチング周波数を一定としたままデューティー比を大きくする。これにより、MOSFETQ1のON時間が長くなり、電圧変換回路2から出力される出力電圧が大きくなる。また、電圧変換回路2から出力された出力電圧の電圧値が電圧Voよりも大きい場合には、MOSFETQ1のスイッチング周波数を一定としたままデューティー比を小さくする。これにより、MOSFETQ1のON時間が短くなり、電圧変換回路2から出力される出力電圧が小さくなる。
第2電源ユニット4は、第1電源ユニット3と同様にMOSFETQ2(第2スイッチング素子)のスイッチング動作により負荷R1に対して出力電力を供給するが、第1電源ユニット3と異なる点としては、第2制御回路6には、出力電圧検出回路10から検出された出力電圧が入力されておらず、スイッチング情報線21を介して第1電源ユニット3のMOSFETQ1のスイッチングON時間幅(以下、ON時間幅と称する)が入力されている。
この第2電源ユニット4の第2制御回路6は、スイッチング情報線21を介して取得したMOSFETQ1のON時間幅に応じて、第2電源ユニット4のMOSFETQ2を駆動する判断基準回路7を有している。
本実施形態における電源装置1は、負荷R1が小さいときは、第1電源ユニット3を駆動し、第2電源ユニット4を停止させており、負荷R1がある一定の大きさより大きくなると、第2電源ユニット4の駆動を開始し、第1電源ユニットとともに第2電源ユニット4を駆動する。
一般的に、本実施形態における電源ユニット3、4のような降圧チョッパー型のコンバータでは、図2(a)に示すように、負荷電力(出力電流)が小さい場合には、第1電源ユニット3のインダクタL1を流れる電流は、流れない時間を含む断続的な波形となる。このような状態を断続導通モード(Discontinuous Conduction Mode:DCM)と呼称する。
このDCMにおいては、ON時間Tonの期間において電流を磁気的エネルギーの形でインダクタL1に蓄積するとともに、OFF時間Toff中の期間Txの間に蓄積したエネルギーをフライホイールダイオードD1を通じてコンデンサC1及び負荷R1に放出する。インダクタL1が磁気的エネルギーをコンデンサC1及び負荷R1に放出し終わると、フライホイールダイオードD1の導通は停止する。したがって、DCMにおいては、Toff期間中のTxを除いた時間はインダクタL1を流れる電流はゼロである。なお、この波形の平均値が、負荷R1に供給される平均電流である。
負荷電力が中程度に増大した場合には、ON時間Tonの期間により多くの磁気的エネルギーをインダクタL1に蓄積するとともに、OFF時間Toffの期間内にインダクタL1及び負荷R1に蓄積したエネルギーを電力として負荷R1に供給する。したがって、図2(b)に示すように、インダクタL1を流れる電流はOFF時間Toffの期間中に減少して一瞬ゼロとなった途端に、再びON時間Tonに切り替わって増大へと向かう連続した三角波形となる。これを境界導通モード(Boundary Conduction Mode:BCM)と呼称する。このBCMにおいては、インダクタL1に電流が流れないのはほんの一瞬である。なお、波形の平均値が負荷R1に供給される平均電流であることはDCMの場合と同じである。
さらに負荷電力が増大すると、図2(c)に示すように、ON時間Tonの期間にインダクタL1を流れる電流はさらに増大し、OFF時間Toffにおいてもその電流は減少するがゼロには到達しない。これを連続導通モード(Continuous Conduction Mode:CCM)と呼称する。この場合も、波形の平均電流についての考え方はDCMやBCMの場合と同じである。
第1電源ユニット3では、CCMの状態では周期Tに対するON時間Tonの割合、即ちデューティー比Dは
(式1)
で定義される。
CCMで動作をしている第1電源ユニット3では、直流電源V1の電圧Viと負荷に供給される出力電圧Voとが決まれば、デューティー比Dは基本的には一定であって、式2の関係が成立する。
(式2)
しかしながら、実際には負荷電力が増えると、OFF時間Toffの期間にその増分を含めて供給するためのエネルギーをインダクタL1に蓄えるため、ON時間Tonの期間は長くなる。これは、負荷の増大にともない第1電源ユニット3の出力インピーダンスによって電圧降下が発生するので、それを補うために式2のデューティー比Dが大きくなり、出力電圧Voの電圧降下を補正しているとみなせる。
一方、軽負荷で生じるDCMでは、ON時間Tonは短くなる。したがって、インダクタL1に蓄えたエネルギーを軽負荷では余り消費せず、負荷R1へ供給する出力電圧Voは上昇しない。ここから消費電力が増えるにしたがい、ON時間Tonは長くなり、DCMからBCMに至る。さらに、負荷電流が増えると、ON時間Tonは大きくは変わらないものの、多少の増大をともなってCCMに至る。
次に、負荷電力とON時間幅の関係について図3を参照しつつ説明する。CCMやBCMにおいては、ON時間Tonは式2で表される電圧の関係式を満たすデューティー比Dとして、式2で定義されるものであり、そのデューティー比Dから逆算してON時間Tonが決定されているとみなせる。ただし、出力電圧Voが所定の電圧値からずれるようであれば、第1電源ユニット3の第1制御回路5がON時間Ton(すなわちデューティー比D)を変化させる。特に、軽負荷のDCMでは、ON時間Tonは式1、式2から計算される値より小さく修正されるのは上述したとおりである。
これらの状態をまとめると、軽負荷時にはDCMであり、ON時間Tonは短い。また、中程度の負荷ではBCMに移行し、ON時間Tonは式1、式2で定まる値まで増大する。負荷がさらに増大するとCCMに移行し、ON時間Tonは出力電圧の低下を補うためにやや増大する。したがって、ON時間幅(ON時間Tonの幅)を監視していれば、第1電源ユニット3の動作状態がDCM、BCM、CCMのいずれの状態にあるかを把握することができる。本実施形態においては、第1電源ユニット3のMOSFETQ1のON時間幅により、第2電源ユニット4の動作を決定する。
例えば、図3に示すように、第1電源ユニット3の定格出力、もしくは変換効率が最も高くなる出力電力がP_refであったとする。第1電源ユニット3のMOSFETQ1のON時間幅が、P_refを供給するON時間幅Ton_refを超えている場合、第1電源ユニット3は過負荷、もしくは変換効率が低下した状態で運転していると判断することができる。一方、MOSFETQ1のON時間幅がTon_ref以下であれば、第1電源ユニット3だけで負荷に電力を供給できると判断することができる。このときには、第2電源ユニット4を動作させて、その動作にともない損失を発生させてまで電力供給を助力しなくてもよい。
これらの判断は、第2電源ユニット4の判断基準回路7で行われる。判断基準回路7は、スイッチング情報線21から第1電源ユニット3のMOSFETQ1のON時間幅を取得し、それがTon_ref以下であれば、MOSFETQ2を駆動させる必要がないと判断し、停止させたままとする。
そこから負荷電力が増大した場合、MOSFETQ1のON時間幅は出力電圧を電圧Voに保とうとして次第に増大する。そこから、例えば、負荷電力がP_1まで増大した場合、MOSFETQ1のON時間幅はTon_1となる。第2電源ユニット4はそれをスイッチング情報線21から検知し、判断基準回路7でMOSFETQ1のON時間幅がTon_refを超えたと判断する。
すると、第2制御回路6は、MOSFETQ2のスイッチング動作を開始する。そして、MOSFETQ2のON時間幅を短い初期状態から長くしていくことで、第1電源ユニット3が負荷R1に供給する電力は次第に低下し、過負荷もしくは変換効率の悪い状態での運転するのを防止することができる。この場合、第2電源ユニット4が負担する電力は、P_refとP_1の差であり、その電力量は小さい。そのため、第2電源ユニット4のMOSFETQ2は、比較的短いON時間幅で駆動している。
ところで、第2電源ユニット4が駆動して電力供給を行うと、第1電源ユニット3の負担する負荷電力は減少し、第2電源ユニット4の負担する負荷電力が増える。すると、さらに第1電源ユニット3の負担する負荷電力が減少してしまい、2台の電源ユニット3、4がともに変換効率の悪い軽負荷状態で運転することが考えられる。
そこで、第1電源ユニット3のMOSFETQ1のON時間幅を、スイッチング情報線21を介して第2電源ユニット4の判断基準回路7が監視している。そして、第2制御回路6は、MOSFETQ1ON時間幅がTon_refに近づくにつれて(すなわち第1電源ユニット3の供給電力がP_refに近づくにつれて)、MOSFETQ2のON時間幅を短くして、第2電源ユニット4から負荷R1に供給される電力を減少させる。
これにより、第1電源ユニット3の負荷R1への供給電力はP_ref近傍に保たれる。その結果、上述したように2台の電源ユニット3、4がともに変換効率の悪い軽負荷で運転せず、第1電源ユニット3が定格もしくは変換効率が最も高い出力であるP_refまでの電力を供給し、不足分を第2電源ユニット4が供給することになる。
なお、第2電源ユニット4の駆動を開始するか否かを判断する基準であるMOSFETQ1のON時間幅Ton_refは、第1電源ユニット3の定格出力(短時間であれば多少の過負荷を認める、もしくは安全性や信頼性の観点から定格よりも若干低減した値)となるON時間幅を含む、第1電源ユニット3の定格出力よりも低い値であり、変換効率が最も高くなる出力電力を供給可能なON時間幅近傍であることが好ましい。また、第2電源ユニット4が動作を開始して、その動作にともなう損失分を加味した総合的な変換効率が最も高くなるON時間幅であってもよい。
また、第1電源ユニット3と第2電源ユニット4のいずれも駆動している状態から負荷が小さくなっていくと、MOSFETQ1のON時間幅はTon_refに保たれ、MOSFETQ2のON時間幅は小さくなる。そして、第1電源ユニット3のみで電力供給可能な負荷になると、第2電源ユニット4の駆動は停止し、第1電源ユニット3のON時間幅はTon_refに保たれずに、負荷に応じてON時間幅を変化させる。
次に、判断基準回路7の内部構成について図4を参照しつつ説明する。図4に示すように、判断基準回路7は、信号整形回路22と、積分器23と、基準電圧発生回路24と、コンパレータOP3と、を有したアナログ回路である。
信号整形回路22は、スイッチング情報線21から取得したMOSFETQ1のON時間幅に関する信号をデジタル的な一定振幅に整形して、積分器23に出力する。具体的には、信号整形回路22は、コンパレータやデジタル化素子などで構成され、入力された信号の振幅が小さければ増幅し、大きければツェナーダイオードなどで振幅を制限した後、波形を整形して、立ち上がり・立ち下がりのエッジが明確且つ俊敏な一定振幅のデジタル波形を出力する。これは、信号整形回路22に入力されるMOSFETQ1のON時間幅に関する信号は、MOSFETのゲート構造がコンデンサ状であることや、ミラー容量の充放電によりなまってしまうからである。
積分器23は、信号整形回路22から入力されたデジタル信号を積分して出力する。積分器23の出力電圧は、デジタル信号がHIレベルの間、すなわちTon時間では、時間比例して直線的に増加したランプ波形となり、ON時間幅をアナログ的に表現したものとみなすことができる。なお、積分器23による積分はスイッチングの各周期で行う必要があるため、信号整形回路22からのデジタル信号の立ち上がり(Ton開始時点)で積分値を一旦リセットする。このリセット信号は、信号整形回路22から信号線25を介して積分器23に入力される。
基準電圧発生回路24は、例えば、D/Aコンバータからなり、第2制御回路6から信号線26を介して入力されたTon_refに相当するデジタル信号をアナログ信号に変換して出力する。なお、基準電圧発生回路24は、ツェナーダイオードなどでTon_refに相当するアナログ電圧を発生してもよい。
コンパレータOP3は、非反転入力端子に積分器23の出力が入力され、反転入力端子に基準電圧発生回路24の出力が入力され、これらの出力を比較して、HIレベルまたはLOWレベルの信号を第2制御回路6に出力する。例えば、第1電源ユニット3のMOSFETQ1のON時間幅がTon_refより長い場合には、コンパレータOP3の出力はHIレベルになる。第2制御回路6は、このHIレベルの信号が入力されることで、MOSFETQ2のスイッチング動作を開始させ、電力の供給を開始する。
以上のように、第1実施形態における電源装置1では、MOSFETQ1のON時間幅がTon_ref以下であるときには、第1電源ユニット3だけで十分電力供給可能であり、第2電源ユニット4を駆動せずに第1電源ユニット3単体で駆動する。そのため、第2電源ユニット4が駆動することによる運転損失をなくし、第2電源ユニット4による電力供給が不要な負荷範囲における電源装置1の変換効率を向上することができる。また、第2電源ユニット4が駆動するか否かを決定する、MOSFETQ1のON時間幅は電流や電力を検出するときに必要な精度の高い抵抗器やトランスなどがなくても容易に検出することができるため、コストを低減し、且つ、装置を小型化することができる。
さらに、第1電源ユニット3はON時間幅を保ちながら最も高い変換効率近傍で駆動し、第2電源ユニット4は第1電源ユニット3では供給不足な小電力を補っているだけなので、電源装置1全体として高い変換効率を維持することができる。加えて、第2電源ユニット4が参入するときに着眼しても、第1電源ユニット3は所定のON時間幅を保つように駆動するため、第1電源ユニット3及び第2電源ユニット4のON時間幅が大きく変動して、出力電圧が変動したり、応答特性が急減したりするのを抑制することができる。換言すれば、第1電源ユニット3は長めのON時間に基づき、最も高い変換効率近傍で比較的大電力を供給している一方、第2電源ユニット4はON時間が比較的短くスイッチング周期が速いため、負荷電力の急変に対しても素早く応じる、いわば出力電圧のレギュレーションの改善・向上を担うことで、双方の利点を活かす協調動作を行っている。このレギュレーションの改善・向上と言う利点は、以降の各実施形態においても共通するものであり、本発明における特徴点である。
また、第2電源ユニット4のMOSFETQ2は、第1電源ユニット3のMOSFETQ1のON時間幅に基づいて動作している。そのため、第2電源ユニット4には、出力電圧検出回路10によって検出された出力電圧が入力される監視線は必要ない。したがって、第2電源ユニット4の回路構成を簡略化し、コストを低減することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の機能を有する構成要素については説明を省略し、同一番号を付与する。第1実施形態における電源装置1は、第1電源ユニット3のMOSFETQ1のON時間幅を参酌して、第2電源ユニット4のMOSFETQ2のON時間幅を変化させていたが、第2実施形態における電源装置では、第1電源ユニットのMOSFETのデューティー比一定におけるスイッチング周波数を参酌して、第2電源ユニットのMOSFETのスイッチング周波数を変化させる。
第2実施形態における電源装置は、自励式のRCC(Ringing Choke Converter)と呼ばれるフライバック型のコンバータを2台並列に接続したものである。図5に示すように、電源装置30は、2つの電源ユニット32、33が並列に接続された電圧変換回路31を有しており、2つの共通となった入力端に電力供給源である直流電源V1が接続され、共通となった出力端に負荷R1が接続されている。なお、電源ユニット32を第1電源ユニット32とし、電源ユニット33を第2電源ユニット33とする。
第1電源ユニット32の内部回路について説明する。なお、第2電源ユニット33は、第1電源ユニット32の内部回路とほぼ同様の構成であるため、その説明を省略する。なお、第1電源ユニット32の後述する第1制御回路35と第2電源ユニット33の後述する第2制御回路36の内部構造は異なるため、その点については後述する。
第1電源ユニット32は、RCCコントローラ40と、スイッチング素子であるNチャネル型のMOSFETQ3と、トランスT1と、ダイオードD2と、コンデンサC2と、フィードバック回路41と、抵抗器R3、R4とを有している。
RCCコントローラ40は、第1電源ユニット32の自励動作の制御を行う。トランスT1は、1次巻線42と2次巻線43と補助巻線44とが同じコアに巻回されて磁気的に結合されている。ダイオードD2は、2次巻線43に発生する交流を整流して出力する。コンデンサC2は、ダイオードD2によって整流された出力を平滑化した直流として負荷R1に供給する。フィードバック回路41は、実際に負荷R1に供給されている出力電圧を検出して、この電圧と出力電圧Voとの誤差をRCCコントローラ40に伝達する。つまり、本実施形態におけるフィードバック回路41は、本発明における出力電圧検出回路を含んでいる。
抵抗器R3は、起動抵抗であり、直流電源V1が投入(接続)されると、MOSFETQ3のゲート端子に直流電源V1から直接電圧が印加され、MOSFETQ3の駆動が開始する。これにより、トランスT1の1次巻線42に電流が流れ、補助巻線44に誘起電圧が生じ、RCCコントローラ40に動作用電源が供給される。RCCコントローラ40が駆動すると、MOSFETQ3のゲート端子の電圧制御、すなわちスイッチング動作の制御はRCCコントローラ40に委ねられる。
抵抗器R4は、電流検出抵抗であり、MOSFETQ3に流れる電流を電圧に変換する。この電圧は、RCCコントローラ40に印加されており、MOSFETQ3に過大な電流が流れた場合(例えば、MOSFETQ3の破壊に繋がるような重大な過負荷状態)には、MOSFETQ3の駆動を停止するための判断材料となる。この抵抗器R4は、極めて低い抵抗値が用いられ、損失はゼロではないが非常に小さい。なお、この抵抗器R4は負荷への供給電力の大小の判断に用いられる訳では無く、しかも電源ユニット32、33の動作の切替・変更と言う本発明の目的・技術には直接関与しないので、本実施形態を含め、以下抵抗器R4について特段の言及は行わない。
次に、通常時における第1電源ユニット32の動作について説明する。
(1)MOSFETQ3がONしているTon期間中には、トランスT1の1次巻線42に電流が流れ、その電流は巻線インダクタンスの影響で時間的とともにほぼ直線的に増大する電流となる。そして、トランスT1のコア中には、流れた電流による磁気的エネルギーが蓄積される。
(2)このとき、補助巻線44に誘起される電圧をRCCコントローラ40は時間的に積分し、その積分結果が所定レベルを超えた場合にMOSFETQ3をOFFする。
(3)MOSFETQ3がOFFすると、トランスT1の2次巻線43にはダイオードD2を通って電流が流れる。この電流は、(1)で蓄積した磁気的エネルギーがなくなるまで続くが、巻線インダクタンスの影響で直線的に減少する電流となっている。ただし、コンデンサC2によりこの電流は平滑化され、ほぼ直流として負荷R1に供給される。
(4)2次巻線43の電流がゼロになったことをRCCコントローラ40は補助巻線44の誘起電圧がゼロになったことで検知し、MOSFETQ3がOFFしているToff期間を終了させて再び(1)に戻る。
(5)2次側電圧(あるいは基準値との誤差)の情報はフィードバック回路41を経由してRCCコントローラ40に送られる。負荷R1に供給される電力・電流が大きいと、2次側の電圧低下が大きくなるので、上記(1)から(3)のシーケンスでトランスT1の1次巻線42から2次巻線43に転送される(コアに蓄積される)エネルギーを大きくするべく、RCCコントローラ40は(2)における積分結果を判断する所定レベルを変化させ、Ton時間を長くする。Toff時間もこれに比例とはいかないまでも長くなるので、デューティー比一定においてスイッチング周波数は低くなる。2次側負荷電力が小さい時は、Ton時間、Toff時間ともに短くなり、スイッチング周波数も高くなる。
(6)ただし、MOSFETQ3の動作が停止すると、出力電力はゼロとなる。この場合、停止した電源ユニットの2次側のダイオード(例えば、第1電源ユニット32においてはダイオードD2)が逆流阻止手段として機能し、他の電源ユニットからの電流の流れ込み(逆流)を防ぐ。
本実施形態において、第1電源ユニット32は、負荷の要求する最小電力から所定の電力までの供給を担う。第1電源ユニット32は、MOSFETQ3のゲート端子電圧の大小変化を第1制御回路35に対して出力し、この出力をスイッチング情報線38を介して第2電源ユニット33の第2制御回路36に出力する。
なお、MOSFETQ3のゲート端子電圧は、スイッチングOFF時はほぼ0Vであり、スイッチングON時は数Vからせいぜい12V程度の振幅である。したがって、この第1制御回路35は、ゲート端子電圧の情報を第2制御回路36へそのまま出力してもよいし、バッファアンプや減衰器を通してから出力してもよい。
一方、第2電源ユニット33の第2制御回路36は、第1制御回路35からスイッチング情報線38を介してMOSFETQ3のスイッチング周波数に関する情報を得る。第2電源ユニット33は、第2制御回路36内に、その情報に基づき、駆動を開始するか否かを判断する判断基準回路37を有している。また、電源ユニット33は、MOSFETQ4のスイッチング動作の禁止・許可を制御するトランジスタQ5を有している。
第2制御回路36からトランジスタQ5のゲート端子に入力された電圧が0V近い(LOWレベル)ときには、トランジスタQ5がOFF状態であるため、MOSFETQ4の動作は、RCCコントローラ40の制御に委ねられる。一方、トランジスタQ5のゲート端子に入力された電圧が数V以上の電圧(HIレベル)のときには、トランジスタQ5がONして、MOSFETQ4のゲート端子は接地される。すると、RCCコントローラ40からMOSFETQ4のゲート端子へスイッチングONのための駆動信号が供給されてもそのスイッチング動作は強制的に禁止され、第2電源ユニット33は、電力を負荷に供給しない非動作(停止)状態となる。
次に、第1電源ユニット32におけるトランスT1の1次巻線42及び2次巻線43に流れる電流について図6を参照しつつ説明する。図6(a)は負荷電力が小さい場合の1次巻線42に流れる電流であり、図6(b)は負荷電力が小さい場合の2次巻線43に流れる電流であり、図6(c)は負荷電力が大きい場合の1次巻線42に流れる電流であり、図6(d)は負荷電力が大きい場合の2次巻線43に流れる電流である。
図6(a)に示すように、MOSFETQ3がONしているTon期間、1次巻線42の電流はほぼ直線的に増大してトランスのコアにエネルギーを磁気的に蓄える。一方、図6(b)に示すように、スイッチング素子がOFFしているToff期間、1次巻線42には電流は流れず、2次巻線43にはほぼ直線的に減少する電流が流れる。
そして、Ton期間にコアに蓄積した磁気的エネルギーが、ダイオードD2を通って、コンデンサC2及び負荷R1に放出される。磁気的エネルギーを放出し終わると、2次巻線43の電流はゼロとなる。2次巻線43の電流がゼロになると、RCCコントローラ40は次のTon期間を開始するので、1回のスイッチング周期はTonとToffの和に等しい。第1実施形態ではDCM、BCM、CCMについて説明したが、本実施形態におけるRCCでは1次及び2次巻線の電流を時間的につなげて考えると、BCMで動作を行っているとみなせる。
また、図6(c)及び図6(d)に示すように、負荷の消費する電力が大きいときには、コアに大量の磁気的エネルギーを蓄積してまた放出する必要があるので、スイッチング周期は長くなり、スイッチング周波数は低くなる。
次に、負荷電力とスイッチング周波数との関係について図7を参照しつつ説明する。図7に示すように、第1電源ユニット32から負荷R1への供給電力が所定値Pnomに達したときのスイッチング周波数をfnomとすれば、MOSFETQ3のスイッチング周波数がfnomを下回った場合に、第2電源ユニット33は駆動を開始し、負荷R1への電力供給の助力を行う。
したがって、判断基準回路37はスイッチング情報線38からのMOSFETQ3のスイッチング周波数がfnomを下回ったことを判断すると、第2制御回路36はトランジスタQ5のゲート端子にLOWレベルの信号を出力して、第2電源ユニット33のMOSFETQ4は駆動を開始する。判断基準回路37の判断基準レベルは任意であるが、第1電源ユニット32の定格出力電力がPnomであったとすると、第1電源ユニット32の変換効率はその近傍もしくは若干低い辺りで最良となるように設計されるのが一般的であり、判断基準レベルはfnomか、それより若干高い値に設定しておくのが好ましい。
そして、第2電源ユニット33は、第1電源ユニット32のMOSFETQ3のスイッチング周波数がfnomに保たれるように、MOSFETQ4のスイッチング周波数を変化させて駆動する。
次に、判断基準回路37の内部構成について図8を参照しつつ説明する。図8に示すように、判断基準回路37は、モノマルチバイブレータ51と、ローパスフィルタ52と、基準電圧発生回路53と、コンパレータOP4とを有したアナログ回路である。
モノマルチバイブレータ51は、スイッチング情報線38から取得したMOSFETQ3のスイッチング周波数に関する信号に応じて、デジタル的な信号の立ち上がりから一定期間、一定振幅のパルス信号を出力する。ローパスフィルタ52は、抵抗R6とコンデンサC6からなり、モノマルチバイブレータ51から出力されたパルス信号の時間的な平均値、すなわちMOSFETQ3のゲート端子電圧の時間的な変化の回数である、スイッチング周波数に比例した電圧を出力する。
基準電圧発生回路53は、例えば、D/Aコンバータからなり、第2制御回路36から信号線54を介して入力されたfnomに相当するデジタル信号をアナログ信号に変換して出力する。なお、基準電圧発生回路53は、ツェナーダイオードなどでfnomに相当するアナログ電圧を発生してもよい。
コンパレータOP4は、非反転入力端子にローパスフィルタ52の出力が入力され、反転入力端子に基準電圧発生回路53の出力が入力され、これらの出力を比較して、HIレベルまたはLOWレベルの信号を第2制御回路36に出力する。
例えば、第1電源ユニット32のMOSFETQ3のスイッチング周波数がfnomより小さい場合には、コンパレータOP4の出力はLOWレベルになる。第2制御回路36は、このLOWレベルの信号が入力されることで、第2電源ユニット33のMOSFETQ4のスイッチング動作を開始させ、電力の供給を開始する。
以上のように、第2実施形態における電源装置30では、MOSFETQ3のスイッチング周波数がfnom以上であると、第1電源ユニット32だけで十分変換効率よく負荷に対して電力供給することができる。したがって、第2電源ユニット33が駆動することによる運転損失をなくし、このような第2電源ユニット33による電力供給が不要な負荷範囲における電源装置30の変換効率を向上することができる。また、第2電源ユニット33は、MOSFETQ3のスイッチング周波数に応じて駆動するか否かを決定するが、このスイッチング周波数は電流や電力を検出するときに必要な精度の高い抵抗器やトランスなどがなくても容易に検出することができ、コストを低減し、且つ、装置を小型化することができる。
また、第1電源ユニット32は第1スイッチング周波数を保ちながら最も高い変換効率近傍で駆動し、第2電源ユニット33は第1電源ユニットでは供給不足な小電力を補っているだけなので、装置全体として高い変換効率を維持することができる。さらに、第2電源ユニット33が参入するときにおいても、第1電源ユニット32は所定のスイッチング周波数を保つように駆動するため、第1電源ユニット32及び第2電源ユニット33のスイッチング周波数が大きく変動して、出力電圧が変動したり、応答特性が急減したりするのを抑制することができる。換言すれば第1実施形態で言及したように、第1電源ユニット32は低めのスイッチング周波数において、最も高い変換効率近傍で比較的大電力を供給している一方、第2電源ユニット4はスイッチング周波数が大きいため、負荷電力の急変に対しても素早く応じる、いわば出力電圧のレギュレーションの改善・向上を担うことで、双方の利点を活かす協調動作を行っている。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同様の機能を有する構成要素については説明を省略し、同一符号を付与する。第1実施形態における電源装置では、第1電源ユニットのON時間幅が所定値を超えると、第2電源ユニットが短いON時間幅から駆動を開始し、第1電源ユニットのON時間幅が所定値に保たれるように、第2電源ユニットのON時間幅を少しずつ長くしていた。しかしながら、本実施形態における電源装置では、第1電源ユニットのON時間幅と所定値との差から第2電源ユニットで負担する電力を推測し、その電力に対応するON時間幅で第2電源ユニットの駆動を開始するものである。
第3実施形態における電源装置は、第1実施形態における判断基準回路7に替わって、ON時間決定回路70(図10参照)を有している。その他の構成に関しては、第3実施形態における電源装置は、第1実施形態における電源装置と同様である。
本実施形態における電源装置のON時間決定回路70は、第1電源ユニット3内のMOSFETQ1のON時間幅に関する情報をスイッチング情報線21から取得すると、それを所定の基準値と比較する。そして取得したON時間幅が所定値以下であれば、第2電源ユニット4の第2制御回路6はMOSFETQ2のスイッチング動作を行わず停止しており、所定値を超えていればMOSFETQ2のスイッチング動作を開始させる。このとき、MOSFETQ2のON時間幅の初期値をMOSFETQ1のON時間幅と所定の基準値との差で決まる値から算出する。
次に、MOSFETQ2のON時間幅の駆動開始時における初期値の算出方法について図9を参照しつつ説明する。図9に示すように、スイッチング情報線21から得られた第1電源ユニット3のMOSFETQ1のON時間幅を、ON時間決定回路70は基準値Ton_refと比較する。このとき、例えば、MOSFETQ1のON時間幅がTon_1であるとする。すると、両者の差Ton_diffが算出され、この値に基づいて第1電源ユニット3がTon_1のON時間幅で駆動することで供給している負荷電力P_loadと、第1電源ユニット3の定格負荷もしくは変換効率が最良となる電力P_refとの差P_diffを推定することができる。このP_diffが第2電源ユニット4から負荷に供給すべき電力となる。
したがって、ON時間決定回路70は、原点(出力電力ゼロ)からこの推定結果P_diffに基づいてMOSFETQ2の駆動開始時の初期値となるON時間Ton_2を算出し、第2電源ユニット4の第2制御回路6は、その初期値でMOSFETQ2のスイッチング動作を開始する。その結果、第1電源ユニット3の出力は迅速に所定値P_refに復帰し保持された状態で、不足する分の電力を第2電源ユニット4から供給するので、第1電源ユニット3が過負荷状態であればそれは速やかに解消され、変換効率の良い動作点で電力を供給することができる。
ON時間決定回路70は、図10に示すように、第1実施形態における判断基準回路7に設けられたコンパレータOP3が差動アンプOP5に替わり、差動アンプOP5の出力端子に関数ブロック71が接続されている。差動アンプOP5は、非反転入力端子に積分器23の出力が入力され、反転入力端子に基準電圧発生回路24の出力が入力され、これらの出力の差に応じた電圧を関数ブロック71に出力する。関数ブロック71は、差動アンプOP5の出力電圧の大きさや符号を元に、第2電源ユニット4のMOSFETQ2のON時間の初期値を推測し、その初期値に応じた電圧を第2制御回路6に出力する。
例えば、第2制御回路6は、関数ブロック71から出力された電圧がある基準電圧より大きい場合には、その大きさに比例して長くなったON時間幅で第2電源ユニット4のMOSFETQ2のスイッチング動作を開始させ、電力の供給を開始する。また、第2制御回路6は、関数ブロック71から出力された電圧がある基準電圧より小さい場合には、第2電源ユニット4のMOSFETQ2のスイッチング動作を停止させたままにしておく。
これらより、ON時間決定回路70は、負荷電力からON時間幅を推測するため、図10のグラフに相当するデータを記憶している必要があるが、図10の横軸及び縦軸の値の組み合わせを数点データテーブルとして記憶して他の値は補間演算するものであっても、簡単な折れ線で近似演算するものであってもよい。
ところで、本実施形態においては、第1電源ユニット3及び第2電源ユニット4が同一定格の場合を説明した。そのため、負荷電力とスイッチング素子のON時間幅の関係はほぼ同一となるので、ON時間決定回路70が記憶するグラフは1本であり、これに基づいて第1電源ユニット3のMOSFETQ1のON時間幅から第2電源ユニット4のMOSFETQ2のON時間幅の初期値を決定していた。しかしながら、仮に、第1電源ユニット3及び第2電源ユニット4の定格が異なっていたとしても、第1電源ユニット3及び第2電源ユニット4のそれぞれに対するデータテーブルあるいは折れ線近似演算を記憶していれば本発明を適用することができる。
以上のように、第3実施形態における電源装置では、第2電源ユニット4のMOSFETQ2のON時間幅の初期値の設定に誤差があったとしても、ゼロもしくはかなり小さいON時間幅からスイッチングを開始するのに比べ、第2電源ユニット4から負荷R1への電力供給は速やかである。したがって、第1電源ユニット3の過負荷状態、もしくは最良変換効率の動作点から外れて動作する時間が短くて済む。したがって、第1及び第2実施形態において述べた、第1電源ユニットと第2電源ユニットの協調動作による利点に加え、第1電源ユニットは定格もしくは最良変換効率の動作点で運転を継続した状態をほぼ維持できるので、電源装置全体としての変換効率を高く維持することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態〜第3実施形態と同様の機能を有する構成要素については説明を省略し、同一符号を付与する。第2実施形態における電源装置では、第1電源ユニットのスイッチング周波数が所定値を超えると、第2電源ユニットが高いスイッチング周波数から駆動を開始し、第1電源ユニットのスイッチング周波数が所定値に保たれるように、第2電源ユニットのスイッチング周波数を少しずつ短くしていた。しかしながら、本実施形態における電源装置では、第1電源ユニットのスイッチング周波数と所定値との差から第2電源ユニットで負担する電力を推測し、その電力に対応するスイッチング周波数で第2電源ユニットの駆動を開始するものである。
第4実施形態における電源装置は、第2実施形態における判断基準回路37に替わって、スイッチング周波数決定回路80(図12参照)を有している。その他の構成に関しては、第4実施形態における電源装置は、第2実施形態における電源装置と同様である。
本実施形態における電源装置のスイッチング周波数決定回路80は、第1電源ユニット32内のMOSFETQ3のスイッチング周波数に関する情報をスイッチング情報線21から取得すると、それを所定の基準値と比較する。そして取得したスイッチング周波数が所定値以上であれば、第2電源ユニット33の第2制御回路366はMOSFETQ4のスイッチング動作を行わず停止しており、所定値を下回っていればMOSFETQ4のスイッチング動作を開始させる。このとき、MOSFETQ4のスイッチング周波数の初期値をMOSFETQ3のスイッチング周波数と所定の基準値との差で決まる値から算出する。
次に、MOSFETQ4のスイッチング周波数の駆動開始時における初期値の算出方法について図11を参照しつつ説明する。図11に示すように、スイッチング情報線38から得られた第1電源ユニット32のMOSFETQ3のスイッチング周波数を、スイッチング周波数決定回路80は基準値f_refと比較する。このとき、例えば、MOSFETQ3のスイッチング周波数がf_1であるとする。すると、両者の差f_diffが算出され、この値に基づいて第1電源ユニット32がf_1のスイッチング周波数で駆動することで供給している負荷電力P_loadと、第1電源ユニット32の定格負荷もしくは変換効率が最良となる電力P_refとの差P_diffを推定することができる。このP_diffが第2電源ユニット33から負荷に供給すべき電力となる。
したがって、スイッチング周波数決定回路80は、原点(出力電力ゼロ)からこの推定結果P_diffに基づいてMOSFETQ4の駆動開始時の初期値となるスイッチング周波数f_2を算出し、第2電源ユニット33の第2制御回路36は、その初期値でMOSFETQ4のスイッチング動作を開始する。その結果、第1電源ユニット32の出力は迅速に所定値P_refに復帰し保持された状態で、不足する分の電力を第2電源ユニット33から供給するので、第1電源ユニット32が過負荷状態であればそれは速やかに解消され、変換効率の良い動作点で電力を供給することができる。
スイッチング周波数決定回路80は、図12に示すように、第2実施形態における判断基準回路37に設けられたコンパレータOP4が差動アンプOP6に替わり、差動アンプOP6の出力端子に関数ブロック81が接続されている。差動アンプOP6は、非反転入力端子にローパスフィルタ52の出力が入力され、反転入力端子に基準電圧発生回路53の出力が入力され、これらの出力の差に応じた電圧を関数ブロック81に出力する。関数ブロック81は、差動アンプOP6の出力電圧の大きさや符号を元に、第2電源ユニット33のMOSFETQ4のスイッチング周波数の初期値を推測し、その初期値に応じた電圧を第2制御回路36に出力する。
例えば、第2制御回路36は、関数ブロック81から出力された電圧がある基準電圧より大きい場合には、その大きさに比例して低くなったスイッチング周波数で第2電源ユニット33のMOSFETQ4のスイッチング動作を開始させ、電力の供給を開始する。また、第2制御回路36は、関数ブロック81から出力された電圧がある基準電圧より小さい場合には、第2電源ユニット33のMOSFETQ4のスイッチング動作を停止させたままにしておく。
これらより、スイッチング周波数決定回路80は、負荷電力からスイッチング周波数を推測するため、図11のグラフに相当するデータを記憶している必要があるが、図11の横軸及び縦軸の値の組み合わせを数点データテーブルとして記憶して他の値は補間演算するものであっても、簡単な折れ線で近似演算するものであってもよい。
ところで、本実施形態においては、第1電源ユニット32及び第2電源ユニット33が同一定格の場合を説明した。そのため、負荷電力とスイッチング素子のスイッチング周波数の関係はほぼ同一となるので、スイッチング周波数決定回路80が記憶するグラフは1本であり、これに基づいて第1電源ユニット32のMOSFETQ3のスイッチング周波数から第2電源ユニット33のMOSFETQ4のスイッチング周波数の初期値を決定していた。しかしながら、仮に、第1電源ユニット32及び第2電源ユニット33の定格が異なっていたとしても、第1電源ユニット32及び第2電源ユニット33のそれぞれに対するデータテーブルあるいは折れ線近似演算を記憶していれば本発明を適用することができる。
以上のように、第4実施形態における電源装置では、第2電源ユニット33のMOSFETQ4のスイッチング周波数の初期値の設定に誤差があったとしても、初期値がかなり高いスイッチング周波数からスイッチングを開始するのに比べ、第2電源ユニット33から負荷R1への電力供給は速やかである。したがって、第1電源ユニット32の過負荷状態、もしくは最良変換効率の動作点から外れて動作する時間が短くて済む。したがって、この第4実施形態においても第3実施形態と同様、第1及び第2実施形態において述べた、第1電源ユニットと第2電源ユニットの協調動作による利点に加え、第1電源ユニットは定格もしくは最良変換効率の動作点で運転を継続した状態をほぼ維持できるので、電源装置全体としての変換効率を高く維持することができる。
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態における電源装置は、第4実施形態における電源装置とほぼ同一の構成であり、同様の機能を有する構成要素については説明を省略し、同一符号を付与する。
第5実施形態における電源装置は、第1電源ユニット32のMOSFETQ3のスイッチング周波数に応じて、第2電源ユニット33から負荷R1への電力供給の有無及びその大小を決定するのは、第4実施形態における電源装置と同様であり、第2電源ユニット33が負担し、負荷R1に供給する電力が小さい場合には、MOSFETQ4のスイッチング動作を間歇的に行わせる。
MOSFETQ4の間歇動作について説明する。第5実施形態における第2制御回路36のスイッチング周波数決定回路80は、第2電源ユニット33から負荷R1に供給する電力P_diffがP_diffより小さなP_min以下の場合には、MOSFETQ4に間歇的にスイッチング動作を行わせる。これは、スイッチング周波数決定回路80が、関数ブロック81に間歇動作と連続動作の境界となるP_minの判断処理を行うことで実現可能である。つまり、間歇動作とは、MOSFETQ4をP_minに対応するf_minよりも大きなスイッチング周波数で駆動した後、f_minの1周期よりも長い期間停止する動作を繰り返すことである。
一般的に、MOSFETがスイッチング動作を行うと、ON/OFFのためにエネルギーを要するほか、周辺の回路、例えば、トランスの巻線やダイオードなどでの電圧降下による損失、もしくはトランスのコアの励磁に伴うコア損など、負荷R1に電力を供給しない無負荷状態であっても発生する固定損が生じる。したがって、第2電源ユニット33から供給する電力が非常に小さい場合に連続してスイッチング動作させると、この固定損が無視できない大きさであり、電源装置全体としての変換効率を低下させてしまう。
そこで、連続的にスイッチング動作をさせては停止する間歇動作を繰り返すことで、連続的に動作しているときには固定損の割合を供給電力に対して相対的に小さなものとし、停止時には固定損をほぼゼロとすることができるため、時間平均したときに第2電源ユニット33の固定損を小さくすることができる。
出力電力に応じた間歇動作について図13を参照しつつ説明する。図13における横軸は出力電力、縦軸は電力損失である。また、損失のうち、出力電力に依存せず定常的に存在する損失を固定損Pfix、出力電力に依存する損失を可変損Pvar(ここでは簡便のため負荷電力に比例するものとして表示)としており、両者の和が各出力電力における損失となる。
MOSFETQ4に連続的にスイッチング動作を行わせた場合、図13(a)に示すように、出力電力ゼロにおいても固定損Pfixがスイッチング動作を行う限り発生し、その結果、出力電力が小さいほど全体の損失のうち固定損Pfixの占める割合が大きい。それに対して、出力電力がP_minより小さい場合にMOSFETQ4に間歇的に(動作対停止の時間比率は1:1)を行わせた場合、図13(b)に示すように、動作時に2倍の電力を供給するため可変損Pvarは2倍になるが、全体時間の半分は停止しているため、可変損Pvarは連続的にスイッチング動作を行わせた場合と変わらない。しかしながら、停止時には固定損Pfixはゼロであるから、固定損Pfixは連続的にスイッチング動作を行わせた場合の半分で済む。その結果、出力電力がP_minより小さくなると、間歇動作を行わせる方が、間歇動作を行わせない場合より全体損失が小さくなる。
したがって、出力電力が小さい軽負荷時に第2電源ユニット33のスイッチング動作を間歇的に行わせると、第2電源ユニット33を含む電源装置全体としての損失を削減し、変換効率を高めることができる。
なお、第2電源ユニット33の供給する電力は、例えば、間歇動作の動作と停止の時間比率を1:1とするならば、動作時には第2電源ユニット33の供給電力をP_diffの2倍とし、動作と停止の時間比率を1:3とするならば動作時の供給電力をP_diffの4倍とすればよい。これは、スイッチング周波数決定回路80によりRCCコントローラ40を制御することで実現することができる。
本実施形態のような自励式RCCは、基本的にBCM、すなわちMOSFETQ4のOFF期間が終われば、すぐに次のON期間を開始する構成である。しかしながら、動作と停止の時間比率に応じて第2制御回路36がRCCコントローラ40の動作を許可・禁止してもよいし、RCCコントローラ40内部に自らの動作の許可・禁止を制御するタイマを有し、そのタイマを第2制御回路36が設定するなどして、間歇動作を行わせることができる。
なお、スイッチング周波数決定回路80が判断し決定する、間歇動作の動作と停止の比率は一定であっても、P_minより小さくなるに連れて停止時間の比率を大きくしてもよい。また、P_minの値の決め方は一意的なものではなく、その値が大きければ、かなりの電力まで第2電源ユニット33は間歇動作を行うので固定損Pfixの削減効果は大きい一方で、間歇動作に伴うリプルが若干大きくなる。
なお、第2電源ユニット33が間歇動作を行うのは、負荷R1への電力供給をほとんど第1電源ユニット32で行える状態であり、第2電源ユニット33が供給する不足分の電力は非常に小さい値(例えば、第1電源ユニット32が供給している電力の数%から20%程度、大きくても30%程度)である。また、第2電源ユニット33の出力のコンデンサや第1電源ユニット32の出力のコンデンサC2)によって平滑化(平均化)もされる。そのため、第2電源ユニット33が間歇動作を行うことで発生するリプルは非常に小さく問題とはならない。
また、負荷R1への供給電力がかなり小さく、第1電源ユニット32単体において駆動している場合においても、その負荷R1への供給電力が所定値を下回ると、MOSFETQ4のスイッチング動作を第2電源ユニット33の動作と同様に間歇動作としてもよい。これにより、幅広い負荷電力の範囲で電源装置全体としての変換効率をなお一層高めることができる。なお、かなりの軽負荷状態においては第1電源ユニット32だけの間歇動作による電力供給であるので、リプル特性の悪化が懸念されるが、実際には負荷電力がかなり小さい場合には第1電源ユニット32の出力のコンデンサC2による電気的エネルギーの平滑化が十分に行われるので、リプルの発生は小さく問題とならない。
<第6実施形態>
続いて、本発明の第6実施形態について説明する。第2実施形態における電源装置では、第1電源ユニットのON時間幅が所定値に保たれるように、第2電源ユニットが駆動していた。しかしながら、後述する種々の条件により、第1電源ユニットのON時間幅は発振やハンチングを生じることがあるため、第6実施形態における電源装置では、第1電源ユニットに加えて、第2電源ユニットが負荷に電力供給を行う際には、第1電源ユニットの出力が所定の範囲から外れないように第1電源ユニットのMOSFETのON時間幅の可変範囲を制限する。まずは、ON時間幅の下限を設定する場合について説明する。
図14に示すように、第6実施形態における電源装置91は、第2制御回路36から補助電源動作信号線94を介して第1制御回路35に第2制御回路36が動作している旨を伝達する信号が入力され、この入力信号は第1制御回路35内の電力範囲制限回路92に入力される。そして、電源装置91は、第2電源ユニット33が駆動していることを検出すると、第1制御回路35から電力範囲設定線93を介してRCCコントローラ40に電力範囲の設定を行う信号を伝達し、第1電源ユニット32が負荷R1に供給する電力が所定値以下にならないようにする。
スイッチング電源は、出力電力の変動を連続的ではなく、スイッチングサイクル単位でしか出力に反映させることができないとともに、反映された量を検知することはできない。したがって、特に第1電源ユニット32のスイッチング周波数が低い場合、MOSFETQ3のスイッチング周波数の変化を検知できるまでに時間的な遅延がある。その遅延した信号で第2電源ユニット33が自らの出力を絞る。すると、第2電源ユニット33のスイッチング周波数単位で結果が反映される。そして第2電源ユニット33が自らの出力を絞った結果、第1電源ユニット32はそこから再度電力供給量を増大させようとする動作に移るが、その動作結果が反映されるにはやはり時間的な遅れがある。このように、時間的な遅れにより、出力電圧・出力電力がフラフラ変動し、発振またはハンチングが生じることがある。
そこで、本実施形態では、第2電源ユニット33から電力を供給している期間は、第1電源ユニット32に対して動作の範囲を制限する。具体的には、所定値以下の電力を供給しないように出力電力の下限値を設定する。したがって、第1電源ユニット32が負荷R1に供給する電力の最低量は保証されるので、第2電源ユニット33はその最低保証される電力から負荷R1が要求する電力との差分だけを供給すればよい。
さらに、第2電源ユニット33が負荷R1へ電力を供給している期間は、第2電源ユニット33は第1電源ユニット32のMOSFETQ3のスイッチング状態(スイッチングON時間幅やスイッチング周波数)を監視せず、出力電圧を監視して出力電圧を一定にするように駆動する。これにより、第2電源ユニット33が電力供給を開始したことによる第1電源ユニット32の動作状態の変化によって、再び第2電源ユニット33の動作状態が影響を受けるような制御ループの循環を断ち切ることができる。その結果、第1電源ユニット32及び第2電源ユニット33の間で負荷R1への供給電力分担を相互に増減し合う結果生じる、発振またはハンチングを確実に防ぎ、安定した電力分担供給を行う電源装置を構成することができる。
この出力電力の下限値は、例えば、図11に示すように、第1電源ユニット32の定格もしくは変換効率が最良となる電力P_refを設定すればよい。電力範囲制限回路92は、電力範囲設定線93を介してその値を直接RCCコントローラ40に設定してもよいし、電力範囲制限回路92において、このP_refに相当するスイッチング周波数frefあるいはその逆数であるスイッチング周期に変換して、電力範囲設定線93を介してその値をRCCコントローラ40に設定してもよい。出力電力の下限値を設定すると、スイッチング周波数がある値より上がらない(スイッチング周期がある値より短くならない)ということである。
スイッチング周期は、MOSFETQ3のONとOFFの期間の和であるので、RCCコントローラ40はTonとToffの時間幅を観測し、その和が所定値より短ければ、Tonを強制的に延長させればよい。なお、RCCでの電力とスイッチング周波数の関係は良く知られているが、例えば、佐藤守男、「スイッチング電源設計入門」(2008年7月25日初版9刷、日刊工業新聞社)の21ページから25ページを参照すれば次の式3で表される。
なお、V1:大元の直流電源Viの電圧、V2:負荷R1に出力する電圧、n1:1次巻線42の巻数、n2:2次巻線43の巻数、P1:入力電力(≒出力電力)、L1:1次巻線のインダクタンス、f:スイッチング周波数である。
式3でのP1は入力電力であるが、RCCでの損失を無視すれば出力電力と大凡近似してもよい。なお、下限値の算出に若干の誤差があっても動作の根本・目的は変わらず、その誤差分を見込んで下限値を補正してやれば十分な値となる。
また、スイッチング周波数の監視及びそれに伴うTonの決定であるが、図15に示すように、第1電源ユニット32のRCCコントローラ40の中にはMOSFETQ3を駆動するゲートドライバブロック101が存在する。ゲート駆動信号の立ち上がりエッジがTonの開始点であるから、その立ち上がりエッジで一定幅と振幅のパルスを発生するモノステーブルマルチバイブレータ103をトリガする。その出力を抵抗とコンデンサからなるローパスフィルタ104で平均化すると、スイッチング周波数に比例した電圧信号が得られる。
これに対して、第1制御回路35から電力範囲設定線93を介してRCCコントローラ40内部のD/Aコンバータ105には出力すべき電力の下限に相当する、スイッチング周波数に相当するデータが設定される。そして、D/Aコンバータ105により設定された周波数に相当するアナログ電圧に変換された後、差動アンプOP7により、ローパスフィルタ104で得られたスイッチング周波数に応じた電圧信号との差が求められる。
差動アンプOP7は両入力が同電圧であった場合、基準電圧Vrefを出力する。また、差動アンプOP7の出力がVrefよりプラスであった場合、MOSFETQ3のスイッチング周波数が大きすぎる、すなわち第1電源ユニット32の出力が設定した下限値を下回っていると判断して、RCCコントローラ40はその出力を受けてTonの時間を延長するべく、その出力の大きさに応じてゲートドライバブロック101のON駆動時間を延長する。差動アンプOP7の出力がVrefよりマイナスであればその逆であり、スイッチング周波数が小さすぎ、第1電源ユニット32からの出力電力が設定した下限値よりも大きく、RCCコントローラ40はTon時間に対して何の補正処理も行わない。
次に、第6実施形態における電源装置の動作について説明する。まず、負荷がゼロから順次増大してP_refに至るまでは、第1電源ユニット32だけが電力を負荷R1に供給する。このとき、第2電源ユニット33の第2制御回路36は補助電源動作信号線94を介して第1電源ユニット32の第1制御回路35に対して第2電源ユニット33が非動作状態にあることを通知する。
すると、第1電源ユニット32の電力範囲制限回路92は、出力電力範囲を制限する必要がないと判断し、電力範囲設定線93を介してRCCコントローラ40に対して出力電力範囲の制限を解除する。ここで、負荷R1の消費電力が急増してP_loadに達した場合、MOSFETQ3のスイッチング周波数がfrefを下回ってf_1に達したことを第2電源ユニット33のスイッチング周波数決定回路80は検知し、第2電源ユニット33のMOSFETQ4は駆動を開始する。
同時に、第2制御回路36は補助電源動作信号線94を介して第1制御回路35に対し、第2電源ユニット33が動作中であると通達する。この通告を受けて第1電源ユニット32の電力範囲制限回路92は、電力範囲設定線93を介してRCCコントローラ40に対し、第1電源ユニット32から供給する出力電力がP_refを下回らないよう動作するべく下限を制限する指示を与える。
これにより、第2電源ユニット33が動作している期間は、第1電源ユニット32はP_refだけの電力供給を続ける様に下限の制限を受けているので、その負荷R1への出力電力はP_refで固定される。そのため第2電源ユニット4が負担する電力はP_diffを超えることはない。
なお、第2電源ユニット33のスイッチング周波数決定回路80は、第2電源ユニット33が動作し負荷R1に電力を供給している期間は、MOSFETQ3のスイッチング周波数の監視を中止する。これは、第2電源ユニット33で第1電源ユニット32のスイッチング周波数を監視し続けていると、以下の様な現象が生じることがあるからである。
第2電源ユニット33としては、負荷R1への供給電力が第1電源ユニット32だけで供給可能なレベルに減少したと誤判断して動作を停止する。すると、負荷R1への供給電力は不足するので、第1電源ユニット32はP_loadまで上昇する。それを第1電源ユニット32のMOSFETQ3の動作から検知した第2電源ユニット33が再度動作を開始する。すると、第2電源ユニット33の駆動により、第1電源ユニット32の出力がP_refまで減少する。このように、上述した発振やハンチングとは異なる理由により発振やハンチングが生じることがある。したがって、第2電源ユニット33が負荷R1に電力を供給している間は、第2電源ユニット33はMOSFETQ3の動作状態の監視を中止する。これにより、発振やハンチングを防止することができる。
次に、負荷R1への供給電力が大きい状態(負荷電力値:P_load)から次第に減少して行く際の動作を説明する。負荷R1の消費電力が減少すると、その消費電力がP_refよりもまだ大きい範囲では、第1電源ユニット32はP_refだけの電力を出力し続ける一方、第2電源ユニット33も電力供給を分担している状態であるので、第2電源ユニット33が次第にその出力電力を減らす。そして、負荷R1の電力が減少するにしたがい、第2電源ユニット33の分担電力はさらに減少し、最後にはゼロとなって動作を停止する。
第2電源ユニット33の電力分担がゼロになり動作を停止すると、第2電源ユニット33の第2制御回路36は、補助電源動作信号線94を介して第1電源ユニット32の第1制御回路35に対して第2電源ユニット33が非動作状態にあることを通知するとともに、第1電源ユニット32のMOSFETQ3のスイッチング状態の監視を再開する。また、第1電源ユニット32は、非動作状態の通知を受けて、出力電力の下限の制限を外し、負荷R1の消費電力の減少に対応してその出力電力を減少させる。
さらに、第1電源ユニット32の出力電力に下限値に加えて、上限値を設定してもよい。これは、第2電源ユニット33が運転を開始しても、第1電源ユニット32から負荷R1への供給電力の不足分を第2電源ユニット33が適切に供給できるとは限らないからである。例えば、第2電源ユニット33の出力インピーダンスが第1電源ユニット32よりも高い、または電圧変動率が大きい場合、第2電源ユニット33から負荷R1に対して電力を供給しようとすると、第2電源ユニット33の出力電圧は第1電源ユニット32の出力電圧よりも低下してしまい、電力を負荷R1に適切に供給することが困難な場合がある。
これでは、負荷R1への電力供給は、第1電源ユニット32が単独で行い続けることになり、電力分担がうまく行われない。そこで、第2電源ユニット33が動作している期間、電力範囲制限回路92を用いて、第1電源ユニット32のRCCコントローラ40に対して出力電力の上限を設定し、それ以上の出力を行わないようにする。例えば、Pmaxが電力の上限であり、対応するMOSFETQ3のスイッチング周波数がfpmaxである。このように上限を設定すると、例えば、負荷R1の消費電力がP_loadである場合、第1電源ユニット32はPmaxまでの電力しか供給しないので、負荷R1に出力される電圧は低下する。すると、第2電源ユニット33からも負荷R1に電力が供給されることとなり、電力の分担が適切に行われることとなる。
なお、上限値Pmaxは、第1電源ユニット32の定格出力電力以下に設定するのが望ましい。この場合、電力下限値も同時に設定しようとすると設定値が交錯する可能性もある。そのような場合には、下限値として参照したP_refを第1電源ユニット32の定格あるいは変換効率最良点となる出力電力より若干低めに設定するとともに、第2電源ユニット33の動作開始及び停止の判断基準も同じP_refとすればよい。
電力の上限設定を行う際には、図15に示すような回路構成において、差動アンプOP7の出力がVrefよりマイナスであれば、スイッチング周波数が設定した上限値よりも低い、すなわち第1電源ユニット32が設定した上限値よりも大きな電力を負荷に供給しているということになる。したがって、RCCコントローラ40は差動アンプOP7の出力のVrefとの差の大きさも勘案しながらゲートドライバブロック101に対してTon時間の短縮、すなわちスイッチング周波数の上昇、出力電力の制限を図る。
なお、電力の上限と下限双方を設定する場合、図15に示すような回路構成において、D/Aコンバータと差動アンプを上限用、下限用にそれぞれ1つずつ設け、上限値を上回った時にTon時間の短縮(スイッチング周波数の上昇)、下限値を下回った時にはTon時間の延長(スイッチング周波数の降下)の処理をそれぞれ行えばよい。
これによると、この第6実施形態においては、第5実施形態で述べたような間歇動作を導入することが必要ない。また、本実施形態においては、第1電源ユニット32及び第2電源ユニット33は自励式RCCを例示しているが、例えば第1実施形態で例示した降圧チョッパー型のコンバータであっても、他の形式のものであってもよい。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
上述したいずれの実施形態においても、個々の電源ユニットの構造・形式は降圧チョッパー型のコンバータや自励式RCCに限らず、例えば、共振ハーフブリッジ型などを含め、負荷へ供給する電力をMOSFETなどのスイッチング素子のON時間幅やスイッチング周波数で制御するものであればどのようなものでも適用可能である。
また、第1実施形態における判断基準回路7、第2実施形態における判断基準回路37、第3実施形態におけるON時間決定70及び第4実施形態におけるスイッチング周波数決定回路80は、アナログ回路で構成されていたが、デジタル回路で構成されてもよい。一例として、第1実施形態における判断基準回路7を例に挙げて説明する。
図16に示すように、判断基準回路7は、信号整形回路111と、計測回路112と、クロック生成回路113と、判断基準値設定回路114と、コンパレータ115と、を有したデジタル回路である。
信号整形回路111は、スイッチング情報線21からのON時間幅に関する信号をデジタル的な一定振幅に整形して、計測回路112に出力するものである。計測回路112は、信号整形回路111からの信号の立ち上がりから立ち下がりまでのエッジ間隔、すなわち第1電源ユニット32のMOSFETQ1のTonの時間幅を、クロック生成回路113が生成するクロックの個数として計測するカウンタである。
判断基準値設定回路114は、設定値情報線116を介して第2制御回路6から入力された、Ton_refに相当する計測回路112の計測値に相当する値をコンパレータ115に出力する。コンパレータ115は、デジタル的に構成されており、計測回路112の計測結果と判断基準値設定回路114の値とを比較して、その結果を第2制御回路6に出力する。
このコンパレータ115の出力信号に対する処理は、第1実施形態における電源装置1と同様である。このように、判断基準回路7をデジタル回路として構成することで、第1電源ユニット32のMOSFETQ1のON時間幅をデジタル値として容易に取得でき、動作の継続・停止などの判断・選択が容易となる。また、このような判断基準回路7であるデジタル回路は、マイクロコンピュータやDSPなどのデジタル回路により構成でき、対象を簡易に制御可能であるとともに、ハードウェアを設ける必要がなく低いコストで実現可能となる。
また、第6実施形態におけるスイッチング周波数の監視及びそれに伴うTonの決定は、図15に示すように、RCCコントローラ40内のアナログ処理により行われていたが、上述したようなデジタル処理に行われてもよい。
さらに、上述した実施形態では、第1電源ユニット及び第2電源ユニットの2台並列構成を示したが、これを3台以上に拡張しても本発明は適用可能である。具体的には、第2電源ユニットのMOSFETなどのスイッチング素子のON時間幅やスイッチング周波数を第3電源ユニットに与え、第3電源ユニットが動作し始めるTon_refの値を、第2電源ユニットの定格若しくは変換効率が最高となる出力電力に相当する、第2電源ユニットのスイッチング素子のON時間幅やスイッチング周波数に定めればよい。