JP5492423B2 - 高周波回路調整機構 - Google Patents

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Description

本発明は高周波回路調整機構、特にマイクロ波又はミリ波帯の高周波回路基板に形成された回路パターンの静電容量を可変し、各種回路の特性を調整する機構に関する。
従来から、マイクロ波帯からミリ波帯の高周波回路が製作されており、この高周波回路は、高周波基板上にマイクロストリップ線路、コプレナー線路等のパターンを形成し、その幅や長さ等の物理的寸法を用いることで、分布定数回路として回路の特性を設計し、フィルタ、アンプ、発振回路等を構成することが多い。
このような高周波回路におけるインピーダンスマッチング、共振周波数、フィルタ特性等の回路特性は、基材の誘電率、厚さ、回路パターン寸法等で決定されるが、これらのばらつきにより、回路特性が所望の値からずれている場合は、回路パターンの一部を削除する手法や、回路パターンに物質を付加するという手法を用いることで、回路特性を調整、或いは補正することが行われる。即ち、回路パターンを削除する手法では、ナイフ等でパターンを切断したり、ヤスリや回転する刃物によりパターンを削ったり、レーザ等でパターンを削除することが行われ、回路パターンに付加する手法では、パターンに金属小物を半田等で固定したり、パターン先端に半田・導電性接着剤を付けたり、パターンに誘電体の物質を接着、塗布することが行われる。
特開平5−266808号公報 特開平9−64602号公報
しかしながら、従来の高周波回路特性調整の手法、即ち回路パターンの一部を削除したり、回路パターンに物質を付加したりする手法では、回路特性を連続的に微調整することは難しく、最適な特性値に設定するための作業に多大な時間がかかり、また調整後の性能が作業者の経験や技量に大きく影響され、作業効率が悪いという問題があった。
更に、回路特性の微調整が困難であることから、高周波回路の設計では、回路の特性を決定する基材の誘電率、厚さ、回路パターン寸法等のばらつきの最大値を考慮し、最悪の場合でもシステム全体の特性を満たすようにしており、例えばフィルタではその減衰量を所望の減衰量に大きなマージンを持たせて設計することになり、回路の大型化、複雑化、損失の増大等を招くという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成にて、回路特性を連続的に微調整することができ、かつ特性調整の作業効率を向上させることができ、ひいては回路の大型化、複雑化も防止することが可能になる高周波回路調整機構を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る高周波回路調整機構(装置)は、表面に線路、裏面に接地導体が形成されたマイクロ波帯又はミリ波帯の高周波回路基板と、この高周波回路基板の上記線路の一部を切断した切断部を跨ぐように配置され、金属薄板を凸形状に折り曲げて形成されると共に変形可能とされたブリッジ板と、を設け、上記ブリッジ板と上記線路とを非導電性接着剤で接着し、上記ブリッジ板の機械的な変形によって上記回路パターンの線路−接地間の静電容量(寄生容量)を調整することを特徴とする
本発明の構成によれば、例えば金属薄板の中央が凸形状に盛り上がるように折り曲げたブリッジ板を、高周波回路基板の回路パターンの主路の切断部に配置することにより、線路とブリッジ板を配置した接地との間に静電容量(寄生容量)が生じることになり、その容量を、ブリッジ板を変形させることで、連続的に可変調整することが可能になる。
本発明によれば、変形可能な凸形状ブリッジ板を変形させるという簡単な構成で、線路−接地間の容量を連続的に調整(微調整)することができ、これにより、伝送線路の特性、特に等価位相の調整が容易となり、しかも調整の作業時間が短縮され、調整の難易度も大幅に軽減することができ、作業者の経験や技量に左右されない効率の良い調整作業が実現可能となる。
また、調整作業が容易で、微調整も可能になることから、設計時に製造のばらつきを考慮したマージンを小さくすることができるため、フィルタではその段数等を最小限にすることができ、回路規模の増大やそれに伴う損失の増加等を避けた最適な設計が可能になる。更に、製造時において、パターン寸法等に過剰な精度を要求することなく、最適な性能を実現でき、コストダウンにも有効となる。また、周囲温度が高くなると、ブリッジ板が膨張することで、容量が減少することになる
更に、線路とブリッジ板とを非導電性接着剤で接着することにより、ブリッジ板押し下げ時のショートを防ぐことができる。
本発明の第1参考例に係る高周波回路調整機構の構成を示す斜視図である。 第1参考例の高周波回路における容量調整を示し、図(A)は調整前の断面図、図(B)は調整後の断面図である。 第1参考例の高周波回路の等価回路を示す図である。 第1参考例の高周波回路においてブリッジ板を押圧した時の周波数特性の変化を示す特性図である。 実施例に係る高周波回路調整機構の構成を示す斜視図である。 第3参考例に係る高周波回路調整機構の構成を示す斜視図である。 第4参考例に係る高周波回路調整機構の構成を示す斜視図である。 第5参考例に係る高周波回路調整機構の構成を示す斜視図である。 第6参考例に係る高周波回路調整機構の構成を示す斜視図である。 実施例及び参考例の高周波回路調整機構において温度上昇時のブリッジ板の変化を示す断面図である。
図1及び図2には、本発明の高周波回路調整機構に係る第1参考例の構成が示され、図2には、容量調整の様子が示されており、この第1参考例は、先端開放線路−接地間の容量(キャパシタンス)を調整するものである。図1に示されるように、マイクロ波帯又はミリ波帯の高周波回路を構成するものとして、基板1の上面(表面)に、マイクロストリップ線路からなる主線路2、この主線路2に接続する先端開放線路(1/4波長線路)3、2つの接地電極(導体)4が形成されており、上記先端開放線路3は、所定周波数(共振周波数等)の波長の略1/4の長さ或いはそれより短い長さとされ、上記2つの接地電極4は、基板1の裏面に形成された接地導体5とスルーホール6で接続される。
また、第1参考例では、短冊状の金属薄板をその中央が矩形(円形等でもよい)に盛り上がるように(矩形波状に)折り曲げ形成したブリッジ板(片)7が用いられており、このブリッジ板7は、変形可能な材質から成形され、上側からの圧力によってその天板部(7a:中央凸部)が上下に変形するようになっている。このブリッジ板7は、上記先端開放線路3に交差するように配置され、その両端(又は一端)の足部(7b)が接地電極4に半田や導電性接着剤等で電気的に接続される。なお、このブリッジ板7は、足部(接触片)を2ヶ所とした形状に限らず、図1に示されるように、天板部の他の辺を伸ばした部分に足部7sを追加して足部を3ヶ所以上設け、これらを接地導体(4)等に接続するような種々の形状にすることができる。
このような第1参考例によれば、図2(A)に示されるように、ブリッジ板7と先端開放線路3との間に所定の間隙ができ、この間隙が容量成分(C)として働くことになる。そして、このブリッジ板7は、例えばスクリュー構造の調整用治具9によって、その容量が調整されることになる。即ち、図2(A)のように、調整用治具9を回転させながら徐々に下降させることで、ブリッジ板7の天板部(中央凸部)を押圧し、図2(B)のように、天板部が下側へ押し潰されるように変形し、これによって、先端開放線路3と、ブリッジ板7を接続する接地電極4との間の容量が調整される。即ち、上記ブリッジ板7の天板部と先端開放線路3との間隙の高さを少しずつ変えることで、容量を連続的に微調整することが可能となる。
図3には、図1の高周波回路の等価回路が示されており、第1参考例では、先端開放線路3の誘導性成分(インダクタンス)Lと先端開放線路3−接地電極4(上記ブリッジ板7)間の容量Cを直列接続したものが、主線路2に並列に接続された直列共振回路として働くことになる。
図4には、図1の高周波回路の周波数特性の変化が示されており、この高周波回路は、図示のように、共振周波数で全反射となり、帯域阻止フィルタとして動作する。そして第1参考例では、ブリッジ板7の天板部の高さを調整することで、図の点線で示されるように、共振周波数を変化させ(天板部の高さを低くすると、周波数が低下する)、フィルタの阻止帯域を調整することが可能になる。
図5には、実施例の構成が示されており、この実施例は、線路の切断部を跨ぐようにブリッジ板を配置したものである。図5に示されるように、基板1の上面に切断部(切り欠き部)11aを有する線路(マイクロストリップ線路)11が形成され、裏面には接地導体5が形成されており、上記切断部11aを跨ぐ状態でブリッジ板7を配置する。このブリッジ板7は、第1参考例と同様のものであるが、その両端(又は一端)の足部が線路11の切断端部に非導電性接着剤で電気的に接続される。
の実施例の構成によれば、上記ブリッジ板7の天板部を、図2で示した調整用治具9によって押圧することで、この線路11(天板部)と基板1裏面の接地導体5との間の容量を調整することができる。即ち、線路11のブリッジ板7の部分の接地容量が可変調整できることになり、線路11の透過位相(線路特性)を変化させることが可能となる。しかも、線路11の線路特性を連続的に微調整することができる。
上記実施例では、ブリッジ板7の両端又は一端を非導電性接着剤で線路11の上に載せるようにし、ブリッジ板7の部分の線路−接地間の容量を可変調整することができる。
図6には、第3参考例の構成が示されており、この第3参考例は、線路の縁(側面)にブリッジ板を近接配置したものである。図6に示されるように、基板1の上面に線路(マイクロストリップ線路)12と接地電極13が形成され、この接地電極13は、基板裏面の接地導体5とスルーホール6で電気的に接続される。そして、上記例と同様の矩形のブリッジ板14において、四辺を持つ天板部の足部のない辺から水平方向に突出片14eが形成されており、このブリッジ板14の両端又は一端(足部)を接地電極13に半田、導電性接着剤等で電気的に接続しながら、上記突出片14eを線路12へ向けてその縁に近接配置する。この突出片14eの突出長は、線路12の上方の領域に入り込まない長さでもよいし、上方領域に入り込む長さとしてもよい。
この第3参考例の構成によれば、上記ブリッジ板14の突出片14eを含む天板部を、図2で示した調整用治具9によって押圧することで、この突出片14e、即ち接地電極13と主線路12との間の容量を調整することができ、線路12の線路特性(透過位相等)を変化させることが可能になる。この第3参考例の場合は、突出片14eの線路12への結合がその縁のみで行われるため、結合容量は小さくなる。従って、第3参考例は、微妙な容量調整、特性調整に有効である。
図7には、第4参考例の構成が示されており、この第4参考例は、接地電極の縁(側面)にブリッジ板を近接配置したものである。図7に示されるように、第3参考例と同様の構成において、矩形波状のブリッジ板14の両端又は一端(足部)を基板1上面の線路(マイクロストリップ線路)12に電気的に接続し、その突出片14eを接地電極13の縁に近接配置する。
この第4参考例の構成によっても、上記ブリッジ板14の突出片14eを含む天板部を調整用治具9によって押圧することで、線路12と接地電極13との間の容量を調整することができ、線路12の線路特性(透過位相等)を変化させることが可能になる。この第4参考例の場合も、突出片14eの接地電極13への結合がその縁のみで行われるため、結合容量は小さくなり、微妙な容量調整、特性調整に有効である。
図8には、第5参考例の構成が示されており、この第5参考例は、交差する2つの線路の一方を跨ぐようにブリッジ板を配置したものである。図8に示されるように、基板1の上面では、第1線路16に設けた切断部16aに第2線路17が通るようにして、2つの線路(マイクロストリップ線路)16,17が交差形成される。そして、第1参考例と同様のブリッジ板7が第2線路17(及び切断部16a)を跨ぐようにして第1線路16に配置され、その両端又は一端(足部)が第1線路16に電気的に接続される。
この第5参考例の構成によれば、上記ブリッジ板7の天板部の高さを調整用治具9によって変えることで、第1線路16と第2線路17との間の容量を調整することができる。なお、この第5参考例において、第2線路17を接地導体に代えたり、また第1線路16を接地導体に代えたりして、線路−接地間の容量を調整する構成にすることもできる。
図9には、第6参考例の構成が示されており、この第6参考例は、図8に示した第5参考例において、ブリッジ板7の天板部とこの天板部の下側に配置される線路17上に絶縁性被膜等の絶縁体18を配置したものである。このような構成にすることにより、ブリッジ板7の押し下げ時のショートを防ぐことができる。なお、上記の各例においても、同様に、ブリッジ板7,14(14e)の天板部とこの天板部の下側に配置される先端開放線路3、基板1、線路12、接地電極13、線路17との間に絶縁体を配置してもよく、このような構成で、容量の連続的な微調整を達成することもできる。また、この絶縁体には、ソルダーレジスト等を用いることができる。
更に、上記の各例のブリッジ板7,14では、その天板部が下側へ変形し易いように、天板部と足部の接続部分に金属薄板を波形に折り曲げた波形部(蛇腹部)を設けるようにしてもよい。
以上のように、上記各例によれば、高周波回路の成型工程の中で、ブリッジ板7,14を半田付け等する作業を行うことで、各種の高周波回路の特性を連続的に微調整することが可能となり、調整した後も、安定した特性を保持することができる。また、調整用治具9として、スクリュー構造で精密に変形できる治具を用いることで、調整の作業時間を短縮し、調整の難易度も大幅に軽減することができ、作業者の経験や技量に左右されない効率の良い調整作業が実現可能となる。
更に、調整作業が容易で、微調整も可能になることから、設計時に製造のばらつきを考慮したマージンを小さくすることができるため、フィルタではその段数等を最小限にすることができ、回路規模の増大やそれに伴う損失の増加等を避けた最適な設計が可能になる。また、製造時において、パターン寸法等に過剰な制度を要求することなく、最適な性能を実現でき、コストダウンにも有効となる。
更に、本願発明の構成は、温度補償効果を伴うものとなる。
図10には、図1の構成において周囲温度が高くなったときのブリッジ板7の変化が示されており、周囲温度が高くなると、ブリッジ板7が図の鎖線のように垂直方向に膨張し、この結果、設定容量が低下し、この例では、先端開放線路3−接地電極4間の容量が低下する。一般に、分布定数回路で構成した共振器は、高温側では回路パターン(先端開放線路3)の膨張により共振周波数が低下するが、この先端開放線路3の誘導性成分(L)との組み合わせで直列共振器を構成する図10の場合では、ブリッジ板7の膨張で容量成分が低下することにより、共振周波数が高い周波数側にシフトするように働く。従って、ブリッジ板7の材質や形状、回路パターンとの結合を適切に選択、設計することで、温度補償に用いることができ、本発明は、フィルタの減衰特性の温度補償や発振器の発振周波数の温度補償の効果を発揮する。
本発明は、マイクロ波帯からミリ波帯の高周波回路、高周波モジュール等に適用でき、例えばフィルタ、発振器の共振回路等の周波数の調整や、アンプ等の入出力整合回路、平衡型回路のバランス調整等に応用することができる。
1…基板、 2…主線路、
3…先端開放線路、 4,13…接地電極、
5…接地導体、 6…スルーホール、
7,14…ブリッジ板、 9…調整用治具、
11,12,16,17…線路、
11a,16a…切断部、 14e…突出片。

Claims (1)

  1. 表面に線路、裏面に接地導体が形成されたマイクロ波帯又はミリ波帯の高周波回路基板と、
    この高周波回路基板の上記線路の一部を切断した切断部を跨ぐように配置され、金属薄板を凸形状に折り曲げて形成されると共に変形可能とされたブリッジ板と、を設け、
    上記ブリッジ板と上記線路とを非導電性接着剤で接着し、
    上記ブリッジ板の機械的な変形によって上記回路パターンの線路−接地間の静電容量を調整する高周波回路調整機構。
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