そこで、本願発明は、近年のエキシマ光ランプの大型化に伴って求められる性能の非円形断面を有する合成石英ガラス管、その製造方法および製造装置を提供することを目的とするものである。
エキシマ光ランプの用途に好適となる非円形断面を有する合成石英ガラス管は、波長150〜250nmの真空、遠紫外光を放出するエキシマ光ランプの光透過性部分を構成するものであって、形状面では、管内部での良好な放電特性を確保するため、またその光が管壁を透過する際の良好な透過性を確保するため、その管の長手方向に垂直な断面の少なくともその1辺が平坦で、その平坦部が管の長手方向に渡って続き、その平坦部の長さが500〜4000mm、その平坦部の内郭側の長さが5〜150mm、内郭側の高さが3〜50mm、管壁の厚さが0.7〜4.9mmであること、また、平坦部における管壁の厚さの変動範囲はその平均厚さの±20%以内であり、同部の長さの変動率は10%以下、同部の高さの変動率は15%以下、同部のそりが1.5mm以下、同部のねじれは1.5mm以下であることが、好適である。さらに内質面では、非円形断面に成形後の合成石英ガラス管の管壁の全層厚分(バルク)の不純物濃度が、Li、K、Ca、Mg、Ti、Ni、Cu、Cr、Mo、W、V、C、Na、Feの各元素について10wt.ppb以下であり、且つ、断面を非円形に成形する前後の合成石英ガラス管の内面表層部の層厚50μmの不純物濃度増加が、Li、K、Ca、Mg、Ti、Ni、Cu、Cr、Mo、W、V、Cの各元素では30wt.ppb以下、Na、Feの各元素では50wt.ppb以下であることが、エキシマ光の良好な透過性を確保するため好適である。なお、本明細書において「成形」とは、素材に一定の形付けをすることをいう。
また、非円形断面を有する合成石英ガラス管中のOH基濃度が1wt.ppm以上400wt.ppm以下、かつCl元素濃度が5wt.ppm以下であれば、例えばキセノンを放電用ガスとした場合の波長172nm光の点灯時間の経過とともに分光透過率が低下していく、いわゆる透過率劣化を、低減することが出来る。透過率劣化の機構は明らかではないが、前述のように波長172nm光は合成石英ガラスにとっては光透過の極限に近く、ガラスの基本特性である透過率は、原子配列構造、化学結合、電子構造によって決定されるとされており、この波長172nm光の透過率劣化などは正にその典型的な現象と言える。ここでのOH基濃度とCl濃度の関わりの機構は明確にはなっていないが、まず、OH基が一定濃度存在すれば172nm光が照射されガラス構造の一部が損傷を受けた場合にOH基がその損傷部に結合して損傷の一部が回復すると考えられる。OH基量が1wt.ppm未満ではOH基の量が少なすぎて損傷の回復が不十分となり、OH基量が400wt.ppmを超えるとその回復現象は十分ではあるが真空紫外透過率はその分低下し光透過率の面で問題となってしまう。一方、Cl元素濃度の影響は、元来Cl元素が合成石英ガラス中に含まれると、非特許文献1の図1.3.8に引用記載されるようにClはCl2としてガラス素地に溶解するか、酸素原子が抜けた部分(空孔)にCl元素が結合したりする。この結合力は比較的弱く172nm光が照射されると容易に結合が切断され、再度空孔が生ずるなどの光のエネルギーを消費する現象となり、透過率を低下させる。Cl元素濃度が5wt.ppm以下になるとこの透過率低下現象を抑制することが出来る。このようにOH基濃度が適度に存在し、かつ、Cl元素濃度がある程度少ないと透過率劣化を抑制する好都合な現象として現れると考えられる。
上記の特性を有する非円形断面を有する合成石英ガラス管を放電容器として用い、エキシマ光を透過させたい平面部の外面側に網目状の電極を、その平面部と相対する管の外周部分に対極の電極を設けエキシマ光ランプを形成する。非円形断面を有する合成石英ガラス管の形状が、例えば後述する図6のように並行する2平面の場合は各々の平面の外面側に電極24,25を設ける。また別の形状としては後述する図8のようにアーチ型の場合はエキシマ光を透過させたい平面状である底面の外面側に網目状の電極25を配し、アーチ状の曲面の外周部分に対極の電極24を設けてエキシマ光ランプを形成する。さらに別の形状としては同じく後述する図9のように、屋根の部分の断面が三角形で温室に似た形状の場合は、エキシマ光を透過させたい平面状である底面の外面側に網目状の電極25を配し、上部の三角形の屋根状の外周部分に対極の電極24を設けてエキシマ光ランプを形成する。上記のエキシマ光ランプの形状に関してはいずれも代表的な形状を記述したに過ぎずこの3例に限定したものではない。いずれの形状のものでも、エキシマ光ランプを作製し、波長172nmの光を所定の時間照射した後にそのランプを分解し、エキシマ光の透過部であるその平面部からサンプルを採取して真空紫外透過率計で真空紫外域の分光透過率を測定すると、初期(照射前)の分光透過率が80%以上、点灯250時間後が同65%以上、点灯2000時間後が同55%以上である、極めて優れたエキシマ光ランプ用の非円形断面を有する合成石英管を供給するものである。
上記の解決しようとする課題は、管壁の厚さや管の汚染防止など種々の課題を包含しているため、本願発明者は以下の検討を行った。
非円形断面の管の管壁の厚さ、具体的にはエキシマ光を透過させる非円形断面の管の平面部分の厚さは、下限は成形時に管の形状を出し易く、かつその後のハンドリングとかエキシマ光ランプに加工する際の取扱いのし易さ等の制約から0.7mmとし、上限は厚さが5mmを超えると光透過率が低くなるため4.9mmとした。実用的には、1〜4mm程度の厚さのものが多く流通しているようである。
本願発明者は、まず出発材料の内面側と外面側を別々に表層部について、表面から近い順に第1層10μm、第2層15μm、第3層25μm、第4層25μm、第5層25μm(第5層の表面からの距離は75〜100μm)の5層に分け、各層ごとに極微量分析を行ったところ、表1(管内外面表層部の層別の不純物濃度分析結果)に示すように、不純物濃度は内外面ともに表面に近い層ほどより高濃度であり、その表層部のなかでも表面に近い層ほど汚染されている事が分かった。ここでの各層ごとの極微量分析方法は、まずサンプリングとしてはクリーンルーム内で管の内外面を王水で洗い表面に付着した汚れを取ったあと、化学的によく枯らした(高純度のフッ化水素酸原液を加熱してフッ化水素酸の蒸気を発生させ、その蒸気中に長時間さらし容器内の放出ガスを放出しつくした状態にした)六フッ化系のテフロン(登録商標)製の容器のなかで、同様の枯らしを行った六フッ化系のテフロン(登録商標)製の栓を管の両端にして管の内外面別に所定の層厚分ずつ半導体用途用の高純度フッ化水素酸の希釈溶液でエッチングして所定の層厚分ガラス成分が溶出したエッチング液を採取し、次にそのエッチング液を濃縮乾固、分析用の溶媒に溶解するなど専用の機器分析用前処理を行いクリーンルーム内に設置した高分解能型ICP−MS分析計を用いて分析した。この結果から、出発材料の内外面の表層をある程度除去したものを非円形断面の管への加工に供することが望ましいことが分かった。また、種々の予備的な調査から、実作業での出発材料の汚染層の除去に関しては、表層部を希釈フッ化水素酸、または同酸と硝酸などの他の酸との混酸に浸漬してエッチングし、そのあと純水などでリンスするエッチング処理が適していることが分かった。
エッチングの適正な層厚に関しては、上記の極微量分析結果から表面から層厚10μm分のエッチングで最も高濃度な部分が除去出来ることから、層厚10μm以上が望ましく、エッチング層厚は厚い程汚染層除去効果は大きいことが明らかである。ただし、このエッチングを余り深く行うとヘアークラックとか潜傷(表面層内部に有る小さなクラックなどの傷)などがあると、その部分のみエッチングが進行し過ぎ、激しい場合はクラックを発生させることもあるため注意を要する。そこまでには達しなくともエッチングをハードに行うとエッチング面が肌荒れのようになり光透過性が悪くなり、そのままではエキシマ光ランプ用の管には使用出来ないし、余りにハ−ドなエッチングをして肌荒れの程度がひどくなると本願発明のように後の工程でバーナーの火炎でその肌荒れ面を加熱しても光透過性に影響が出ない程度まで非円形断面の管の肌を平滑にすることは容易では無くなる。そこで、クラックや肌荒れが発生しても後工程のバ−ナーによる火炎研磨で光透過性に影響が出ないように修正出来るエッチングレベルであるエッチング層厚50μmを最大限として規定した。よって、望ましい出発材料のエッチング層厚は10μm以上、50μm以下となる。
非円形断面の管への加工時の汚染防止策は多岐にわたる。バーナー加工工程での汚染防止策のメインは、(1)加工環境のクリーン化と(2)直接的に管に接触するものの高純度化、(3)接触頻度の削減、(4)加熱温度の低減、(5)加工時に使用するガスの高純度化などである。まず、(1)の加工環境のクリーン化については、望ましくはクリーンルーム室内での加工を行うことである。少なくとも、除塵フィルター濾しでの空気取り入れ、除塵マット、帯電防止シート、出入り口にはエアーシヤワー使用などを行っているような除塵を積極的に行った環境の室内で加工を行う。次に(2)について、高温の加工時に直接的に管に接触するのはプラグであるが、その材料としては、高純度品または超高純度品のカーボンを使用し、更に汚染防止が必要な時にはプラグに加工した後にカーボンの純化処理(2800℃以上の高温で1日以上真空下で加熱)を行ったものを使用する。なお、管加工時にバーナー火炎加工上の理由により、管外面の変形部の修正作業のためにカーボン製のへらを使用して管外面部に触れる必要がある場合には、その材料もプラグに合わせて純度を高めたものとする。次に(3)の接触頻度の削減は、汚染防止には極めて重要な事項である。その理由は、カーボン製材料のなかに含まれる灰分(不純物)は超高純度品と言えども合成石英ガラスの含有不純物量より高濃度であるため、接触すればするほど汚染されることとなる。しかも、プラグが触れる時の加熱温度は後述するようにかなり高温であるため、汚染する速度も大きいものとなる。そこで、本願発明者らはプラグの形状と操作方法の改良に関して種々研究を重ね、後に記述する管加工時におけるプラグからの汚染防止について決定的な解決策を見出したのである。この点に関しては次の項で詳細を記すことにする。次に(4)の管加工時の加熱温度の低減も重要事項であるため、次の項でその詳細を記すことにする。また、(5)加工時に使用するガスの高純度化は、高純度ガスを使用することによって効果が得られる。
前述の(3)の管加工時の接触頻度の削減と、(4)の管加工時の加熱温度の低減とは、汚染低減には最も重要であり低減効果が期待出来る項目である。本願発明者らは、本願発明の考案に当たりまず考え方を整理し、調査した内容は、加工時のプラグと管との接触頻度を最小にし、しかも如何にして接触した際の不純物の移動(汚染)量を低減するかであった。このため、本願発明者らはガラス旋盤を用いて鏃状の縦断面形状の長さ200mm、平坦部分の幅50mm、高さ12mmのプラグによる管の非円形化の模擬実験を種々行った結果、まずはこのガラス旋盤を用いる加工方法を採ることにより、管の外面をバーナーで加熱して非円形管の加工を行うことの出来る管外面の加熱温度は、放射温度計での測定で1600〜1750℃であり、特許文献5の円筒型電気加熱炉を用いた加熱での1800℃以上の温度域と比較してもかなり低めの加熱温度で加工が出来ることを見出した。この温度域での少なくとも50〜200℃ほど加熱温度を下げられることは、不純物の移動(汚染)量の低減には大幅な改善と言える。ここで、バーナ一加熱の方が電気炉加熱と比べて加工に好適な加熱温度を下げられる理由は、まず第1の理由は熱伝達の違いである。バーナー加熱の熱伝達は、主として火炎流による強制熱伝達であり、電気炉加熱の主たる熱伝達である輻射伝達と比べて伝達係数が大きいことによる。ここでバーナー加熱の温度は、1600℃未満では円形の管から非円形管への形状の変化がスムーズに行かなくなり形状がひずむ一方、1751℃を超えると管が軟らかくなり過ぎてプラグと接する位置範囲ではプラグの形状に倣いつつもプラグが通過する際もまだ変形するだけの軟らかさが残っているため、目的の非円形断面の管形状から形が崩れる傾向にある。次に第2の理由は、本願発明の場合管の内部に不活性ガスを流しているが、その圧力がいずれも大気圧より高く、これにより管内部に入れたカーボン製プラグの移動に際して同プラグと管内面との間に隙間が出来、管を加熱によってそれ程軟らかくせずともプラグの移動が容易となるためである。また、加工時の管の回転数は、3rpm未満ではバーナー加熱での管の外面温度にの場所によるばらつきが大きくなり、管の非円形断面の管への加工が困難となる一方、101rpm以上では接続管部分の装置を精密化せざるを得ず実用的ではない。そのため、加工時の管の回転数は、3rpm〜100rpmが好適である。また、非円形断面の管の形状の数値規定については、平坦部分の長さとか内面側の幅、内面側の高さ、厚さはいずれも実用装置の使用寸法に合わせた数値である。
さらに、同模擬実験で加工時に管内を大気圧より僅かに高圧にすると、プラグと管内面との間に僅かな隙間が生じ、さらにこの隙間に窒素ガスまたはアルゴンガスなどの不活性ガスを僅かな流量流せば、プラグ側からの不純物の移動(汚染)を大幅に低減出来ること、また、前述のバーナー加熱温度の範囲内(1600〜1750℃)での管の粘性の変化による軟らかさとの兼ね合いも考慮して、その際のプラグより前方側の窒素ガスまたは不活性ガスの圧力の適正範囲が、ゲージ圧で80〜25000Paであることを見出した。この圧力の適正範囲の理由としては、ゲージ圧で80Pa未満では僅か過ぎて実用的な制御機器による制御が困難になってくる一方、25000Paを超えると管内の雰囲気シールが困難になるからである。具体的には、管の加熱温度が1600℃程度の場合は適正なゲージ圧は25000Pa以下であり、加熱温度が1750℃程度の場合は適正なゲージ圧は80Pa以上となることを見出したのである。これに対して、特許文献5に記載の発明では、その発明が解決しようとする課題に「管内を減圧下で1800℃以上に加熱しながら石英管をグラファイト(=カーボン)製プラグに密着させて所望の断面形状を得る」と記載されているように、管内の圧力は減圧下、すなわち大気圧より低い圧力で行っており、かつプラグと管内面とを密着させることで成形後の管形状寸法を精度良く造ることに力点を置いているが、この場合管加工時にプラグからの不純物の移動よる不純物汚染は相当多量となるため、エキシマ光ランプに用いるには実用上問題を生ずる不純物レベルとなる。なお、本願発明者らが行った模擬実験での管加工におけるプラグと管内面とのあいだの僅かな隙間の量は、そのプラグの縦断面での幅、高さと比べて、加工後の非円形断面の管の内郭側での幅、高さの寸法が4〜8%程度大きめであり、その隙間の間隔はおおよそプラグ寸法の2〜4%程度と見られ、この程度の隙間変動であればエキシマ光ランプ用の非円形断面の管としての使用には実用上問題無いレベルである。
ここで、主たる不純物汚染源の一つであるカーボンと合成石英ガラスとの間の高温での反応について、本願発明者らが行った模擬試験と特許文献5を比較検討する。高純度カーボンとは言いながら合成石英ガラスの純度と比べるとおおよそ数百倍から数千倍高濃度の不純物を含有するカーボンと合成石英ガラスとを、模擬試験では1600〜1750℃、特許文献5では1800℃以上の温度で接触させると、以下の式で表わされるような熱分解を伴う反応が生じる。
SiO2(s)=SiO(g)+O(g)・・・(1)
SiO(g)+O(g)=SiO2(s:フューム状)・・・(2)
SiO2(s:フューム状)+3C(s)=SiC(s)+2CO(g)・・・(3)
なお上記式中でsとは固相を表し、gとは気相を表す記号である。
上記(1)式は、合成石英ガラスの主要な化学成分であるSiO2の熱分解反応であり、高温ほどこの反応は進行する。この反応では、熱分解したガラス層中に含まれている不純物の一部がSiO2と同様に分解し、SiOガス中にはその熱分解した不純物の一部が取り込まれている。(2)式は、熱分解反応で発生した気相のSiOが、温度が僅かに低くなると酸化して前述の不純物を含むフューム(極微粒子)状のシリカ微粒子として析出する。(3)式は、析出した不純物を含むシリカ微粒子とカーボンとが反応して炭化珪素(SiC)が生成する反応である。
具体的に本願発明と特許文献5の工程に当てはめてみると、(1)式のSiO2の熱分解反応は不活性雰囲気中ではおおよそ1400〜1500℃程度で発生し始め、1800℃以上とかなり高温の特許文献5では反応が進み、かなり高濃度のSiOガスを発生する。なお、本願発明者らが特許文献5の図10に記載された円形の管の製造方法(加熱温度は2100℃)を検証するため、同様の横型電気炉で外径200mm、厚さ25mmの合成石英ガラス素管を外径40mm、厚さ2mmの薄肉管に延伸する試験を加熱温度2100℃で行ったところ、同電気炉出口側付近の延伸したばかりの外径40mmの細管の内部に薄い白煙状の霧が発生し、電気炉から少し離れたところでは同細管の内面側(内径36mm)にシリカ微粒子と見られる極微粒子が析出した。(2)式のフューム状のシリカ微粒子の析出反応は、特許文献5に記載の発明ではその元となるSiOガスを高濃度に発生しているので、シリカ微粒子の析出量も高濃度となる。更に、ここで問題となるのは、そのシリカ微粒子の析出場所である。特許文献5に記載の発明では、その実施例において横型電気炉内で2100℃に加熱しながらカーボン製のプラグを用いて真空引きをしながら減圧条件で円形断面の合成石英ガラス管を非円形断面に加工している(特許文献5、図11参照)。ここでの問題は、温度加熱が2100℃と超高温であるに加えて、加工時の合成石英管内部の気流の方向による不純物を含むシリカ微粒子が析出する場所の問題である。特許文献5の図11によると、図中の合成石英管の真空引きによる管径の絞りは図の向かって左側にあり、且つプラグの移動方向が右から左方向に向かっていることから、管内の気流は右から左方向へ流れ、プラグも同じ方向に移動する、化学工学分野で言う物質の移動とガスの移動が同じ方向である、所謂「並流」と解釈出来る。ここでの問題は、「並流」の場合(1)式で発生したSiOガスは気流に乗り移動しつつ温度の低いところでシリカ微粒子を発生してそれの一部は管の内壁に析出することとなり、ここに「並流」で移動して来たプラグの表面の一部と接触して(3)式の炭化珪素発生反応が起こすこととなる。
一方、本願発明者らが行った模擬実験では、加熱温度は1600〜1750℃であり特許文献5と比べてかなり低く、SiOガスの発生量は著しく少ないと推定される。かつ、少量発生したSiOガスが流れる方向は、プラグの動いて行く方向とは逆の方向(いわゆる「向流」)であり、仮に少量のシリカ微粒子が管内面に析出してもその析出箇所はすでにプラグが通過した箇所であり、そこにプラグが向かうことは無く、結果として、プラグと管内面との反応を促進すると心配される(3)式の炭化珪素の発生反応は、この模擬実験に関しては考慮する必要がほとんどないものと言える。
次に熱分解反応を伴わない反応について以下の式を用いて説明する。
SiO2(s)+C(s)=SiO(g)+CO(g)・・・(4)
SiO(g)+2C(s)=SiC(s)+CO(g)・・・(5)
上記(4)式は、合成石英ガラスと高純度カーボン製のプラグとが接触してSiOが発生する反応であり、このSiOは前出の(1)式と同様に不純物の一部を含むものである。(5)式は、不純物を含むSiOと高純度とは名付けられているが合成石英と比べると少なくとも数百倍の高濃度の不純物を含むカーボン製プラグとが反応して炭化珪素(SiC)が生成する反応であり、このSiC中にも無論不純物は含まれることとなる。(4)式と(5)式とは連続的起こるので、結果的には(4)式と(5)式を加算した次の(6)式がこの場合の反応式となる。
SiO2(s)十3C(s)=SiC(s)十2CO(g)・・・(6)
この熱分解反応を伴わない場合の反応は、加熱温度が1400℃または1500℃程度から起こり始め、加熱温度が高くなる程この反応は進むことが分かっている。従って、本願発明者らが行った模擬試験と特許文献5を比較検討すると模擬実験と比べて特許文献5はかなり高温であり、反応生成物である炭化珪素の生成量はかなり多くなり、結果的に合成石英ガラスの反応層中の不純物の一部とプラグに含まれる高濃度の不純物が多量に合成石英ガラスの接触面である内面側表層部にド−プすることとなる。
前述の熱分解反応が伴う場合、(1)〜(3)式に示すような反応で、炭化珪素(SiC)が発生してプラグ側の不純物の一部が合成石英ガラス側にド−プされる反応が促進されるが、一方、熱分解反応を伴わない場合、(4)、(5)式、結果的には(6)式に示す反応で炭化珪素が発生して熱分解反応を伴う場合と同様に主としてプラグ側の不純物の一部が合成石英ガラス側にド−プされる反応が促進されるが、本願発明者らが行った模擬試験の結果に基づく検討によれば、合成石英ガラスとプラグの両者の接触を極力抑制したり、加熱温度を下げたり、さらに雰囲気に不活性ガスを用いて酸化反応などが起こり難くしてシリカ微粒子の析出を抑制し、不活性ガス気流をプラグの移動方向とは逆方向にして炭化珪素などの反応生成物の発生を抑制している。この様な種々の汚染防止を主な目的とする対策を講じることにより、優れた非円形断面の管への成形加工が可能となることが明らかとなった。
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、少なくとも長手方向の一部の範囲が、円形断面を有する合成石英ガラス管から構成される素材管の内孔に、前記長手方向に垂直な断面の形状が非円形であるプラグを挿入するプラグ挿入工程と、前記素材管の軸回りに前記素材管と前記プラグとを所定の回転数で回転させる回転工程と、前記素材管のうち前記プラグと略同一位置について加熱手段で1600〜1750℃に加熱して軟化させつつ、前記素材管の一端から他端に向かう方向に前記加熱手段を移動させる加熱部移動工程と、該加熱部移動工程における前記加熱手段の移動と同期して前記プラグを前記一端から前記他端に向かう方向に移動させるプラグ移動工程と、該プラグ移動工程および前記加熱部移動工程と同時に、前記他端から前記素材管の内部に窒素ガスまたは不活性ガスを前記プラグより前方側のゲージ圧表示で80Pa以上25000Pa以下の圧力で、かつ前記プラグ及び前記加熱手段の移動方向とは逆の方向にガスが流れるように供給するガス供給工程と、前記プラグ移動工程および前記加熱部移動工程と同時に、前記素材管の内部の圧力を大気圧より高い状態に維持しながら、前記窒素ガスまたは前記不活性ガスを前記一端から吸引するガス吸引工程とを備えることを特徴とする非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造方法である。
請求項1に記載の発明によれば、プラグの形状に対応した断面形状の合成石英ガラス管であって、汚染濃度の低い合成石英ガラス管を製造することができる。
請求項2に記載の発明は、前記プラグが、高純度のカーボンからなり、平面視で鏃形の平板状に形成されているともに、前記鏃形の先端を前記他端に向けて前記素材管の内孔に挿入されており、さらに前記素材管の前記長手方向に延びる貫通孔または溝を備えることを特徴とする請求項1に記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造方法である。
請求項2に記載の発明によれば、プラグの移動方向に鏃形の先端が向いているため、素材管の中でプラグをスムーズに移動させることができ、また、素材管内のガスの一部はプラグに設けれられた貫通孔および溝を通過するため、素材管内のガスの流れが安定し、プラグを素材管の中で振動させることなくスムーズに移動させることができ、そのため形状精度が高く汚染濃度が低い合成石英ガラス管を製造することができる。
請求項3に記載の発明は、前記プラグ挿入工程の前に、前記素材管のうち前記合成石英ガラス管から構成される部分の内面および外面を層厚10〜50μm分除去するエッチング処理を行う不純物除去工程をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造方法である。
請求項3に記載の発明によれば、内面および外面に微小な凹凸が少なく、光透過性の高い合成石英ガラス管を製造することができる。
請求項4に記載の発明は、前記プラグ移動工程において、前記素材管の前記一端から挿入された棒状部材で前記プラグを押して移動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造方法である。ここで「棒状部材」とは、プラグを押して移動させる際に作用する圧縮荷重に耐えうる、すなわち座屈しない程度の曲げ剛性を有する長尺の部材をいい、ガラス管や金属管などを使用することができる。
請求項4に記載の発明によれば、簡易な工具でプラグを移動させることができ、また素材管の回転に追従して回転するプラグの回転を拘束しないため、高い形状精度の合成石英ガラス管を製造することができる。
請求項5に記載の発明は、前記プラグ移動工程において、前記素材管の他端から挿入され、前記プラグに結合された線状部材で、前記プラグを引いて移動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造方法である。ここで「線状部材」とは、プラグを引いて移動させる際に作用する引張荷重に耐えうる程度の引張強度を有する長尺の部材をいい、金属製のワイヤーやガラス製のウールなどの糸状のものを素線としたワイヤーなどを使用することができる。
請求項5に記載の発明によれば、簡易な工具でプラグを移動させることができ、また素材管の回転に追従して回転するプラグの回転を拘束しないため、高い形状精度の合成石英ガラス管を製造することができる。
請求項6に記載の発明は、前記非円形断面の合成石英ガラス管の内面側の層厚50μmにおける不純物の濃度の、前記円形断面の合成石英ガラス管の内面側の層厚50μmにおける不純物の濃度に対する増加量が、Li、K、Ca、Mg、Ti、Ni、Cu、Cr、Mo、W、VおよびCの各元素で30wt.ppb以下であり、NaおよびFeの各元素で50wt.ppb以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造方法である。
請求項6に記載の発明によれば、汚染濃度が低く光透過性の高い合成石英ガラス管を製造することができる。
請求項7に記載の発明は、少なくとも長手方向の一部の範囲が、円形断面を有する合成石英ガラス管から構成される素材管を保持しつつ、その軸回りに回転させる保持・回転手段と、前記素材管の一部を前記素材管の外側から1600〜1750℃に加熱して軟化させる加熱手段と、該加熱手段を前記素材管の一端から他端に向かう方向に移動させる加熱部移動手段と、前記素材管の内孔に挿入され、前記加熱手段により加熱されて軟化した箇所に配置されて前記素材管の回転に追随して回転する、前記長手方向に垂直な断面の形状が非円形であるプラグと、前記加熱手段の移動と同期して前記プラグを前記一端から前記他端に向かう方向に移動させるプラグ移動手段と、前記素材管の前記他端に接続され、前記素材管の内部に窒素ガスまたは不活性ガスを前記プラグより前方側のゲージ圧表示で80Pa以上25000Pa以下の圧力で、かつ前記プラグ及び前記加熱手段の移動方向とは逆方向にガスが流れるように供給するガス供給手段と、前記素材管の前記一端に接続され、前記素材管の内部の窒素ガスまたは不活性ガスを排気するガス排気手段とを備えることを特徴とする非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造装置である。
請求項7に記載の発明によれば、プラグの形状に対応した断面形状の合成石英ガラス管であって、汚染濃度の低い合成石英ガラス管の製造装置を提供することができる
請求項8に記載の発明は、前記プラグが、高純度のカーボンからなり、平面視で鏃形の平板状に形成されているとともに、前記鏃形の先端を前記他端に向けて前記素材管の内孔に挿入されており、さらに前記素材管の前記軸方向に延びる貫通孔または溝を備えることを特徴とする請求項7に記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造装置である。
請求項8に記載の発明によれば、プラグを素材管の中でスムーズに移動することができ、かつ形状精度が高く汚染濃度が低い合成石英ガラス管の製造装置を提供することができる。
請求項9に記載の発明は、前記プラグ移動手段が、前記素材管の前記一端から挿入され、その先端が前記プラグに当接する棒状部材と、前記加熱手段の移動と同期して前記棒状部材を前記他端に向けて押す押進駆動手段とを備えることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造装置である。
請求項9に記載の発明によれば、簡易な工具でプラグを移動させることができ、また素材管の回転に追従して回転するプラグの回転を拘束しないため、高い形状精度の合成石英ガラス管の製造装置を提供することができる。
請求項10に記載の発明は、前記プラグ移動手段が、前記素材管の前記他端から挿入され、その先端が前記プラグに回転自在に結合されている線状部材と、前記加熱手段の移動と同期して前記線状部材を前記他端に向けて引く牽引駆動手段とを備えることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管の製造装置である。
請求項10に記載の発明によれば、簡易な工具でプラグを移動させることができ、また素材管の回転に追従して回転するプラグの回転を拘束しないため、高い形状精度の合成石英ガラス管の製造装置を提供することができる。
請求項11に記載の発明は、非円形断面を有する合成石英ガラス管であって、管壁の厚さの全層分における不純物濃度が、Li、K、Ca、Mg、Ti、Ni、Cu、Cr、Mo、W、V、C、NaおよびFeの各元素について10wt.ppb以下であり、かつ、断面を非円形に成形する前後の合成石英ガラス管の内面表層部の層厚50μmの不純物濃度増加が、Li、K、Ca、Mg、Ti、Ni、Cu、Cr、Mo、W、V、Cの各元素について30wt.ppb以下、Na、Feの各元素について50wt.ppb以下であり、長手方向に垂直な断面において少なくとも一辺が平坦であり、前記断面の内側の輪郭において前記一辺の長さが5mm〜150mmであり、前記断面の内側の輪郭において前記一辺から最も離れた点までの距離が3mm〜50mmであり、前記管壁の厚さが0.7mm〜4.9mmであり、前記一辺における前記管壁の厚さの変動範囲が平均厚さの±20%以内であり、前記断面の形状が前記長手方向に500mm〜4000mmの長さにわたることを特徴とする非円形断面を有する合成石英ガラス管である。
請求項11に記載の発明によれば、汚染濃度が低いため光透過性が高く、高い形状精度を有し、エキシマ光ランプに使用するのに適した合成石英ガラス管を提供することができる。
請求項12に記載の発明は、前記長手方向に垂直な断面において前記一辺に相対する他の辺が、平坦でありかつ前記一辺に平行であり、前記断面の内側の輪郭において前記他の辺の長さが内面側で5mm〜150mmであり、前記他の辺における前記管壁の厚さの変動範囲が平均厚さの±20%以内であることを特徴とする請求項11に記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管である。
請求項12に記載の発明によれば、反りが小さく、エキシマ光ランプに使用するのに適した合成石英ガラス管を提供することができる。
請求項13に記載の発明は、OH基濃度が400wt.ppm以下であり、Cl元素濃度が5wt.ppm以下であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管である。
請求項13に記載の発明によれば、エキシマ光の分光透過性の経時的な劣化が小さく、
エキシマ光ランプに使用するのに適した合成石英ガラス管を提供することができる。
請求項14に記載の発明は、前記一辺において、波長172nm、放射照度20mW/cm2のレーザ光を照射した場合の初期の分光透過率が80%以上であり、前記レーザ光を照射して250時間後の分光透過率が65%以上、前記レーザ光を照射して2000時間後の分光透過率が55%以上であることを特徴とする請求項11〜13のいずれかの項に記載の非円形断面を有する合成石英ガラス管である。
請求項15に記載の発明によれば、エキシマ光の分光透過性の経時的な劣化が小さく、エキシマ光ランプに使用するのに適した合成石英ガラス管を提供することができる。
請求項14に記載の発明によれば、エキシマ光の分光透過性の経時的な劣化が小さく、
エキシマ光ランプに使用するのに適した合成石英ガラス管を提供することができる。
つぎに、この発明の実施の形態について図面に基づき説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
なお、以下の実施例によって得られた非円形断面を有する合成石英ガラス管の寸法測定、不純物濃度測定、分光透過率測定、OH基濃度測定およびCl元素濃度の測定は、以下の要領にて行った。
〔寸法の測定〕
〔厚さ〕
管壁の厚さは、管の任意の位置で管の長手方向に50mm間隔で接触式超音波測定計で測定した。
〔平面部の幅〕
平面部の幅は、管の平面部の外面側の任意の位置で管の長手方向に50mm間隔でメジャーを用いて測定し、内面側のデ一タはその部分の隣接する管壁の厚さを上記の接触式超音波測定計で測りその両側の管壁の厚さ分を除いて求めた。
〔平面部の高さ〕
平面部の高さは、管の平面部に隣接する2つの平面の外面側の任意の位置で管の長手方向に50mm間隔でメジャーを用いて測定し、内面側のデータはその部分の隣接する面平面の厚さを上記の接触式超音波測定計で測り、その厚さ分を除いて求めた。
〔反り〕
反りは、使用状況に合わせて管の平面部を水平に置いた定盤上に置き、定規を鉛直に当てて測定するものとし、反りが弓形の場合は弦の長さに対する弧の高さ、波形の場合は谷の深さまたは山の高さを測り、この測定値を反りとした。
〔ねじれ〕
ねじれは、使用状況に合わせて管の平面部を水平に置いた定盤上に置き、管の平面部と定盤との隙間の最大値を定規またはノギスまたは隙間ゲージで測定し、この測定値をねじれとした。
〔不純物元素分析〕
高分解能型ICP−MS分析計により分析した。
〔分光透過率〕
ダブルビーム型真空紫外分光光度計により測定した。分光透過率は次の式により算出される。
T=I/Io×100
ここで、 T:分光透過率(%)
Io:光路上に試料片が無い時の光量
I:光路上に試料片を置いた時に試料片を透過した光量
〔OH基濃度〕
赤外分光光度計により測定した。D.B.FRASERほか、Journal of Applied Physics, Vol.37 (1966) p.3911 文献記載の赤外分光光度計による測定方法による。
〔Cl元素濃度〕
硝酸銀添加による比濁法により測定した。
〔ガラス旋盤〕
次に実施例で用いる装置のうちガラス旋盤について、図3および図4を用いて説明する。図3および図4に、本願発明に係る非円形断面形状を有する合成石英ガラス管を製造するためのガラス旋盤50を示す。ガラス旋盤50は、加工する管をその軸回りに回転可能に保持するチャック8a,8b、加工する管およびチャック8a,8bを回転させる回転駆動部6,7、管を外側から加熱する酸水素バーナー11、酸水素バーナー11を管の長手方向に移動可能に支持するバーナー台10、バーナー台10を移動させるバーナー移動手段(図示なし)を備えている。ここで、チャック8a,8b、および回転駆動部6,7が保持・回転手段として、バーナー11が加熱手段として構成されている。バーナー移動手段は、ハンドル、ラックアンドピニオン、ボールねじ等、公知の機構の組み合わせにより構成することができる。これにより、加工する管の一部を加熱して軟化させ当該一部の断面形状を変形させながら、加熱部を長手方向に徐々に進行させることによって、管全体について断面形状を所定の形状に加工することができる。本実施例においては、加工後の管の断面形状に合わせたプラグを管の内部に挿入し、加熱により軟化した部分をプラグが通過することによって、管の断面を所定の形状に加工している。また本実施例では、図3に示す棒状部材13または図4に示す線状部材14によって、プラグを移動させている。ここで、棒状部材13および線状部材14が、プラグ移動手段を構成している。なお、本実施例ではいずれもガラス旋盤50を用いているが、同様の機能を有する装置であればこれに限定されるものではない。
〔ガス供給手段およびガス排気手段〕
次に実施例で用いる装置のうちガス供給手段およびガス排気手段について、図3および図4を用いて説明する。図3および図4に、本願発明に係る非円形断面形状を有する合成石英ガラス管を製造するためのガス供給手段およびガス排気手段を示す。ガス供給手段は、管の内部に窒素ガスまたは不活性ガスを供給するために当該管の一端に接続管4bを介して気密を保ちつつ接続されており、ガス供給用細管15、ガス微圧調整弁16、ガス供給弁17およびガス源(図示しない)から構成されている。また、ガス排気手段は、管の内部の窒素ガスまたは不活性ガスを排出するために当該管の他端に接続管4aを介して気密を保ちつつ接続されており、吸気用細管20、ガス吸引ポンプ21から構成されている。
〔実施例1および2〕
VAD合成(気相軸付け)法で、合成速度(合成石英母材の堆積速度)約20g/分で直径400mm、長さ2000mm、重さ90kgの合成石英母材を合成し、その合成石英母材を到達真空度10Paの縦型の真空焼結炉に入れ毎分8回転で回転しながら加熱温度1500℃で7時間加熱焼結して透明ガラス化した。その透明ガラス化した合成石英ガラス素材の寸法は、直径約180mm、長さ約1600mmであった。それを円筒型の横型電気炉を用いて炉中央部の炉温2350℃の高温度領域で、そのガラス素材の径方向中心部付近に砲弾型の高純度カーボン製プラグの先端部を当て徐々にガラス素材を炉内側に送り込んで全長を穿孔し、冷ました後穿孔した内径側に合わせて外周側を円筒研削し外径200mm、厚さ30mm、長さ2500mmの肉厚の粗管とした。さらに、その粗管を円筒型縦型電気炉を用いて炉温2150℃の高温度領域で落下させながら引き延ばして、外径40mm、厚さ2.5mmの、円形断面を有する合成石英ガラス管とした。管の長さは、成形作業時に一旦5m強に破断し、熱を冷ました後所定長さに切断する方法を採った。上記の横型電気炉と縦型電気炉の発熱体用のカーボンには超高純度品を、および横型電気炉の砲弾型プラグの方には高純度品を砲弾型に加工後にカーボンの再純化処理を行ったものを使用した。この円形断面を有する合成石英ガラス管の内外面の表層部を層別に、また全層厚分の不純物濃度を極微量分析した結果を表1および表2に示した。この円形断面を有する合成石英ガラス管を出発材料として、非円形断面を有する合成石英ガラス管への加工をつぎのように行った。以下、本発明の非円形断面を有する合成石英ガラス管への加工の実施例を例示的に詳しく説明する。
実施例1は、図3に示すようにガラス旋盤を用いて、上記の合成石英ガラス管1(外径40mm、厚さ2.5mm、長さ1400mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径40mm、厚さ2mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成し、そのダミー管3a,3bそれぞれの長手方向外端部には素材管100内部の雰囲気シール用の接続管4a,4bを設ける。なお、ダミー管3aは、合成石英ガラス管1と溶着する前に、予め溶着する端部3c側を加熱しながら断面が方形(58mm×11mm)のカーボン製のコテを押し込み、後述するプラグが挿入出来る長さ約200mm強分の断面を方形に変形させ、そこに図5(a)に示すような再純化処理した高純度カーボン製プラグ5(断面54.5mm×9.5mm、長さ200mmでテーパ一部長さは60mmに加工後に再純化処理したもの。表面粗さ2μm。中心に直径7.5mmの円形貫通孔5cを有する)を挿入しておくとともに、合成石英ガラス管1のうちダミー管3aと溶着する端部1aについても、加熱しながら断面が方形(58mm×11mm)のカーボン製のコテを押し込み、ダミー管3aの端部3cと断面を同じ形状としておく。合成石英ガラス管1とダミー管3a,3bとを溶着した後、素材管100をチャック8a,8bにより保持し、接続管4aを通じて石英ガラス製の管(外径7mm、厚さ1.5mm、長さ2200mm)からなる棒状部材13を、ダミー管3a内に挿入し、プラグ5の後部5aを押してプラグ5のテーパー状の先端5bがダミー管3aと合成石英ガラス管1との溶着部に達したところを加工開始の位置とする。接続管4aには、管内の圧力を測定するための測定用細管19が挿入されるとともに管内のガスを吸引する吸気用細管20も挿入されており、測定用細管19の端部には圧力計23が接続されており、吸気用細管20の端部にはガス吸引ポンプ21が設けられている。一方、ダミー管3bの端部に設けられた接続管4bには、管内にガスを供給するガス供給用細管15と管内の圧力を測定するための測定用細管18が挿入され、測定用細管18の端部には圧力計22が接続されている。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により7rpmで回転させながら、酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を所定の圧力範囲(10〜25000Pa)に調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約80Pa、排気側のゲージ圧を約60Paに設定した。加熱部の温度が所定範囲内の1700℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、窒素ガスのゲージ圧が低めであることから、合成石英ガラス管1を十分軟らかくするため、高温側の1700〜1750℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。なお、プラグ5の移動とバーナー台10の移動とを同期させることは、ラックアンドピニオンやボールねじ等、公知の機構を適宜組み合わせることによって可能となる。
実施例2は、図4に示すようにガラス旋盤を用いて、実施例1と同様に、上記の合成石英ガラス管1(外径40mm、厚さ2.5mm、長さ1400mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径40mm、厚さ2mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成し、そのダミー管3a,3bそれぞれの長手方向外端部には細管内部の雰囲気シール用の接続管4a,4bを設ける。なお、ダミー管3aは、合成石英ガラス管1と溶着する前に予め溶着する端部3c側を加熱しながら断面が方形(58mm×11mm)のカーボン製のコテを押し込み、後述するプラグが挿入出来る長さ約200mm強分の断面を方形に変形させ、そこに図5(b)に示すような再純化処理した高純度カーボン製プラグ5(断面54.5mm×9.5mm、長さ200mmでテーパ一部長さは60mmに加工後に再純化処理したもの。表面粗さ2μm。幅46.5mm、深さ1mmで先端に向かってテーパーする溝5eと、幅1.5mmで深さ1mmの溝5fとがそれぞれ2本設けられている)を挿入しておくとともに、合成石英ガラス管1のうちダミー管3aと溶着する端部1aについても、加熱しながら断面が方形(58mm×11mm)のカーボン製のコテを押し込み、ダミー管3aの端部3cと断面を同じ形状としておく。合成石英ガラス管1とダミー管3bとを溶着した後に、接続管4bを通じて直径0.5mmのモリブデン製ワイヤーからなる線状部材14を、ダミー管3bと合成石英ガラス管1とに通し、プラグ5先端部5bに線状部材14を接続する。線状部材14は、接続管4bの外部側に設けた巻取り機26で巻取る。このとき、プラグ5の回転と線状部材14の回転とが連動するため、巻取り機26をその回転と連動させ回転させるのが好適である。それから、ダミー管3aと合成石英管1とを溶着した後、素材管100をチャック8a,8bにより保持し、線状部材14を引張ってプラグ5の先端部5bがダミー管3aと合成石英管1との溶着部に達したところを加工開始の位置とする。接続管4aには、管内の圧力を測定するための測定用細管19が挿入されるとともに管内のガスを吸引する吸気用細管20も挿入されており、測定用細管19の端部には圧力計23が接続されており、吸気用細管20の端部にはガス吸引ポンプ21が設けられている。一方、ダミー管3bの端部に設けられた接続管4bには、管内にガスを供給するガス供給用細管15と管内の圧力を測定するための測定用細管18が挿入され、測定用細管18の端部には圧力計22が接続されている。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により40rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を所定の圧力範囲(10〜25000Pa)に調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約5800Pa、排気側のゲージ圧を約5700Paに設定した。加熱部の温度が所定範囲内の1620℃を超えた時から線状部材14を引き始めプラグ5を移動し始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。線状部材14すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は1620〜1660℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。なお、プラグ5の移動とバーナー台10の移動とを同期させることは、ラックアンドピニオンやボールねじ等、公知の機構を適宜組み合わせることによって可能となる。
実施例1および2によって得られた非円形断面を有する合成石英ガラス管をそれぞれ長さ1500mmに切断し、5wt.%の希釈フッ化水素酸による管内外面の極わずかなエッチング処理、純水による水洗、クリーンルーム内での乾燥を行ったあと、大気中で1080℃の温度で3時間のアニール処理を行った。そのあと、表2、表3に示すように管の寸法計測と表層部などの不純物分析をし、さらに図6および図7に示すように方形箱形のエキシマ光ランプに組立てエキシマ光発光時の透過率の経時変化等の性能を測定した。なお、エキシマ光の透過率の経時変化の測定に際して、エキシマ光を照射している期間中は少なくとも放射照度20mW/cm2を下回らないようにした。
〔実施例3および4〕
VAD合成法で、合成速度約22g/分で直径400mm、長さ1950mm、重さ90kgの合成石英母材を合成し、その合成石英母材を到達真空度10Paの縦型の真空焼結炉に入れ毎分8回転で回転しながら加熱温度1350℃で2時間加熱後、引き続き1490℃で8時間加熱焼結して透明ガラス化した。その透明ガラス化した合成石英ガラス素材の寸法は直径約180mm、長さ約1600mmであった。それを円筒型の横型電気炉を用いて炉中央部の炉温2400℃の高温度領域で、そのガラス素材の径方向中心部付近に砲弾型の高純度カーボン製プラグの先端部を当て徐々にガラス素材を炉内側に送り込んで全長を穿孔し、冷ました後穿孔した内径側に合わせて外周側を円筒研削し外径200mm、厚さ30mm、長さ2500mmの肉厚の粗管とした。さらに、その粗管を円筒型縦型電気炉を用いて炉温2130℃の高温度領域で落下させながら引き延ばして、外径30mm、厚さ2.5mmの円形断面を有する合成石英ガラス管とした。管の長さは、成形作業時に一旦5m強に破断し、熱を冷ました後所定長さに切断する方法を採った。上記の横型電気炉と縦型電気炉の発熱体用のカーボンには超高純度品を、また横型電気炉の砲弾型プラグの方には高純度品を砲弾型に加工後にカーボンの再純化処理を行ったものを使用した。この円形断面を有する合成石英ガラス管の内外面の表層部を層別に、また全層厚分の不純物濃度を極微量分析した結果を表2に示した。この内外面ともに25μmの表層分をエッチング処理して除去した円形断面を有する合成石英ガラス管を出発材料として、非円形断面を有する合成石英ガラス管への加工をつぎのように行った。
実施例3は、図3に示すようにガラス旋盤を用いて、上記の合成石英ガラス管1(外径30mm、厚さ2.5mm、長さ1600mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径30mm、厚さ2mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成し、そのダミー管3a,3bそれぞれの長手方向外端部には素材管100内部の雰囲気シール用の接続管4a,4bを設ける。なお、ダミー管3aは、合成石英ガラス管1と溶着する前に、予め溶着する端部3c側を加熱しながら断面が方形(44mm×11mm)のカーボン製のコテを押し込み、後述するプラグが挿入出来る長さ約150mm強分の断面を方形に変形させ、そこに図5(c)に示すような高純度カーボン製プラグ5(断面36mm×9.5mm、長さ150mmでテーパ一部長さは50mm、表面粗さ3μm。中心に幅11mmで高さ7.5mmの方形貫通孔5dを有する)を挿入しておくとともに、合成石英ガラス管1のうちダミー管3aと溶着する端部1aについても、加熱しながら断面が方形(44mm×11mm)のカーボン製のコテを押し込み、ダミー管3aの端部3cと断面を同じ形状としておく。合成石英ガラス管1とダミー管3a,3bとを溶着した後、接続管4aを通じてアルミナ製の管(外径7mm、厚さ1.5mm、長さ2500mm)からなる棒状部材13を、ダミー管3a内に挿入し、プラグ5の後部5aを押してプラグ5のテーパー状の先端5bがダミー管3aと合成石英ガラス管1との溶着部に達したところを加工開始の位置とする。接続管4aには、管内の圧力を測定するための測定用細管19が挿入されるとともに管内のガスを吸引する吸気用細管20も挿入されており、測定用細管19の端部には圧力計23が接続されており、吸気用細管20の端部にはガス吸引ポンプ21が設けられている。一方、ダミー管3bの端部に設けられた接続管4bには、管内にガスを供給するガス供給用細管15と管内の圧力を測定するための測定用細管18が挿入され、測定用細管18の端部には圧力計22が接続されている。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により30rpmで回転させながら、酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15からアルゴンガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を所定の圧力範囲(10〜25000Pa)に調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約2130Pa、排気側のゲージ圧を約2060Paに設定した。加熱部の温度が所定範囲内の1630℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、高温側の1630〜1680℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。なお、プラグ5の移動とバーナー台10の移動とを同期させることは、ラックアンドピニオンやボールねじ等、公知の機構を適宜組み合わせることによって可能となる。
実施例4は、図4に示すようにガラス旋盤を用いて、実施例3で使用したものと同じ合成石英ガラス管1(外径30mm、厚さ2.5mm、長さ1600mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径30mm、厚さ2mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成し、そのダミー管3a,3bそれぞれの長手方向外端部には細管内部の雰囲気シール用の接続管4a,4bを設ける。なお、ダミー管3aは、合成石英ガラス管1と溶着する前に、予め溶着する端部3c側を加熱しながら断面が方形(44mm×11mm)のカーボン製のコテを押し込み、後述するプラグが挿入出来る長さ約150mm強分の断面を方形に変形させ、そこに図5(d)に示すような再純化処理した高純度カーボン製プラグ5(断面36mm×9.5mm、長さ150mmでテーパ一部長さは50mm、表面粗さ3μm。幅12mm、深さ0.5mmで先端に向かってテーパーする溝5eと、幅1mmで深さ0.5mmの溝5fとがそれぞれ4本設けられている)を挿入しておくとともに、合成石英ガラス管1のうちダミー管3aと溶着する端部1aについても、加熱しながら断面が方形(44mm×11mm)のカーボン製のコテを押し込み、ダミー管3aの端部3cと断面を同じ形状としておく。合成石英ガラス管1とダミー管3bとを溶着した後に、接続管4bを通じて直径0.5mmのモリブデン製ワイヤーからなる線状部材14を、ダミー管3bと合成石英ガラス管1とに通し、プラグ5先端部5bにそのワイヤー14を接続する。線状部材14は、接続管4bの外部側に設けた巻取り機26で巻取る。このとき、プラグ5の回転と線状部材14の回転とが連動するため、巻取り機26をその回転と連動させ回転させるのが好適である。それから、ダミー管3aと合成石英管1とを溶着した後、素材管100をチャック8a,8bにより保持し、線状部材14を引張ってプラグ5の先端部5bがダミー管3aと合成石英管1との溶着部に達したところを加工開始の位置とする。接続管4aには、管内の圧力を測定するための測定用細管19が挿入されるとともに管内のガスを吸引する吸気用細管20も挿入されており、測定用細管19の端部には圧力計23が接続されており、吸気用細管20の端部にはガス吸引ポンプ21が設けられている。一方、ダミー管3bの端部に設けられた接続管4bには、管内にガスを供給するガス供給用細管15と管内の圧力を測定するための測定用細管18が挿入され、測定用細管18の端部には圧力計22が接続されている。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により30rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を所定の圧力範囲(10〜25000Pa)に調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約250Pa、排気側のゲージ圧を約220Paに設定した。加熱部の温度が所定範囲内の1680℃を超えた時から線状部材14を引き始めプラグ5を移動し始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。線状部材14すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は1680〜1730℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。なお、プラグ5の移動とバーナー台10の移動とを同期させることは、ラックアンドピニオンやボールねじ等、公知の機構を適宜組み合わせることによって可能となる。
実施例3および4によって得られた非円形断面を有する合成石英ガラス管をそれぞれ長さ1700mmに切断し、5wt.%の希釈フッ化水素酸による約5分間の短時間のエッチングによる管内外面の表面付着物の除去、純水による水洗、クリーンルーム内での乾燥を行ったあと、大気中で1080℃の温度で3時間のアニール処理を行った。そのあと、表2、表3に示すように管の寸法計測と表層部などの不純物分析をし、さらに図6および図7に示すように方形箱形のエキシマ光ランプに組立てエキシマ光発光時の透過率の経時変化等の性能を測定した。なお、エキシマ光の透過率の経時変化の測定に際して、エキシマ光を照射している期間中は少なくとも放射照度20mW/cm2を下回らないようにした。
〔実施例5および6〕
実施例5および6の出発材料造りの方法と条件は、ほぼ実施例3および4の方法と条件に類似しているが、その違いは、(1)横型炉の砲弾型のプラグは単に高純度品を使用し、砲弾型に加工後に再純化処理は行っていないことと、(2)製造した円形断面を有する合成石英ガラス管の寸法が外径45mm、厚さ3mmであることである。ここで管の寸法を変えたのは、単に製造する非円形断面を有する合成石英ガラス管の寸法が一回り大きいのでそれに合わせたためである。この条件で製造した出発材料たる円形断面を有する合成石英ガラス管の内外面の表層部の層別および全層厚分の不純物濃度を極微量分析した結果を表2に示す。この内外面ともに50μmの表層分をエッチング処理して除去した円形断面を有する合成石英ガラス管を出発材料として非円形断面を有する合成石英ガラス管への加工をつぎのように行った。
実施例5は、図3に示すようにガラス旋盤を用いて、上記の合成石英ガラス管1(外径45mm、厚さ3mm、長さ1700mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径45mm、厚さ3mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成し、そのダミー管3a,3bそれぞれの長手方向外端部には素材管100内部の雰囲気シール用の接続管4a,4bを設ける。なお、ダミー管3aは、合成石英ガラス管1と溶着する前に、予め溶着する端部3c側を加熱しながら断面が方形(65mm×12.5mm)のカーボン製のコテを押し込み、後述するプラグが挿入出来る長さ約250mm強分の断面を方形に変形させ、そこに図5(c)に示すような再純化処理した高純度カーボン製プラグ5(断面61mm×10.2mm、長さ250mmでテーパ一部長さは100mmに加工後に再純化処理したもの。表面粗さ2μm。中心に幅12mmで高さ8mmの方形貫通孔5dを有する)を挿入しておくとともに、合成石英ガラス管1のうちダミー管3aと溶着する端部1aについても、加熱しながら断面が方形(65mm×12.5mm)のカーボン製のコテを押し込み、ダミー管3aの端部3cと断面を同じ形状としておく。合成石英ガラス管1とダミー管3a,3bとを溶着した後、素材管100をチャック8a,8bにより保持し、接続管4aを通じてステンレス(SUS316)製の管(外径8mm、厚さ1.5mm、長さ3000mm)からなる棒状部材13を、ダミー管3a内に挿入し、プラグ5の後部5aを押してプラグ5のテーパー状の先端5bがダミー管3aと合成石英ガラス管1との溶着部に達したところを加工開始の位置とする。接続管4aには、管内の圧力を測定するための測定用細管19が挿入されるとともに管内のガスを吸引する吸気用細管20も挿入されており、測定用細管19の端部には圧力計23が接続されており、吸気用細管20の端部にはガス吸引ポンプ21が設けられている。一方、ダミー管3bの端部に設けられた接続管4bには、管内にガスを供給するガス供給用細管15と管内の圧力を測定するための測定用細管18が挿入され、測定用細管18の端部には圧力計22が接続されている。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により45rpmで回転させながら、酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を所定の圧力範囲(10〜25000Pa)に調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約5130Pa、排気側のゲージ圧を約5030Paに設定した。加熱部の温度が所定範囲内の1620℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、1620〜1670℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。なお、プラグ5の移動とバーナー台10の移動とを同期させることは、ラックアンドピニオンやボールねじ等、公知の機構を適宜組み合わせることによって可能となる。
実施例6は、前出の実施例5と同じ押し棒方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径45mm、厚さ3mm、長さ1700mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径45mm、厚さ3mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成するなど、実施例5と同様に非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(a)に示すような、再純化処理した高純度カーボン製(断面61mm×10.2mm、長さ250mmでテーパ一部長さは100mm、表面粗さ2μm。中心に直径8mmの円形貫通孔5cを有する)である。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により81rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を所定の圧力範囲(10〜25000Pa)に調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約22000Pa、排気側のゲージ圧を約21850Paに設定した。加熱部の温度が所定範囲内の1600℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、高温側の1600〜1630℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。
実施例5および6によって得られた非円形断面を有する合成石英ガラス管をそれぞれ長さ1800mmに切断し、5wt.%の希釈フッ化水素酸による約5分間の短時間のエッチングによる管内外面の表面付着物の除去、純水による水洗、クリーンルーム内での乾燥を行ったあと、大気中で1080℃の温度で3時間のアニール処理を行った。そのあと、表2、表3に示すように管の寸法計測と表層部などの不純物分析をし、さらに図6および図7に示すように方形箱形のエキシマ光ランプに組立てエキシマ光発光時の透過率の経時変化等の性能を測定した。なお、エキシマ光の透過率の経時変化の測定に際して、エキシマ光を照射している期間中は少なくとも放射照度20mW/cm2を下回らないようにした。
〔実施例7および8〕
実施例7および8の出発材料としての円形断面を有する合成石英ガラス管1は、前出の実施例1および2とほぼ同じ方法および条件で製造した。不純物濃度を極微量分析した結果を表1に示す。唯一の違いは、実施例1および2ではこの合成石英ガラス管1をエッチング処理せずにそのままでつぎの円形断面を有する合成石英ガラス管への加工に供したが、この実施例7および8ではこの合成石英ガラス管1の内外面のエッチング処理を行い、内外面ともに不純物濃度の最も濃い最表層の層厚10μm分をエッチング処理した。その結果、表2に示した最表層の層厚10μm分の不純物の高濃度な部分が除去されたものが次工程の非円形断面を有する合成石英ガラス管への加工に提供されることとなった。
実施例7は、前出の実施例1と同じ押し棒方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径40mm、厚さ2.5mm、長さ1400mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径40mm、厚さ2mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成するなど、実施例1と同様に非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(e)に示すような、再純化処理した高純度カーボン製(断面54.5mm×9.5mm、長さ200mmでテーパー部長さは60mm、表面粗さ1μm。幅12mm、深さ1mmの溝5eが6本と、幅1mmで深さ1mmの溝5fが4本設けられている)である。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により7rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を所定の圧力範囲(10〜25000Pa)に調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約250Pa、排気側のゲージ圧を約220Paに設定した。加熱部の温度が所定範囲内の1670℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、高温側の1670〜1700℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。
実施例8は、前出の実施例2と同じ引張る方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径40mm、厚さ2.5mm、長さ1400mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径40mm、厚さ2mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成するなど、実施例2と同様に非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(c)に示すような、再純化処理した高純度カーボン製(断面54.0mm×9.3mm、長さ200mmでテーパー部長さは60mm、表面粗さ1μm。中心に幅10mmで高さ7mmの方形貫通孔5dを有する)である。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により40rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を所定の圧力範囲(10〜25000Pa)に調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約250Pa、排気側のゲージ圧を約220Paに設定した。加熱部の温度が所定範囲内の1670℃を超えた時から線状部材14を引き始めプラグ5を移動し始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。線状部材14すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は1670〜1700℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。なお、プラグ5の移動とバーナー台10の移動とを同期させることは、ラックアンドピニオンやボールねじ等、公知の機構を適宜組み合わせることによって可能となる。
実施例7および8によって得られた非円形断面を有する合成石英ガラス管をそれぞれ長さ1500mmに切断し、5wt.%の希釈フッ化水素酸による管内外面の極わずかなエッチング処理、純水による水洗、クリーンルーム内での乾燥を行ったあと、大気中で1080℃の温度で3時間のアニール処理を行った。そのあと、表3に示すように管の寸法計測と表層部などの不純物分析をし、さらに図6および図7に示すように方形箱形のエキシマ光ランプに組立てエキシマ光発光時の透過率の経時変化等の性能を測定した。なお、エキシマ光の透過率の経時変化の測定に際して、エキシマ光を照射している期間中は少なくとも放射照度20mW/cm2を下回らないようにした。
〔実施例9および10〕
実施例9は、前出の実施例1と同じガラス旋盤で、同じ出発材料等を用い、ほぼ実施例1の方法と条件に類似しているが、その違いは、ダミー管3aは、合成石英ガラス管1と溶着する端部3c側を加熱しながら断面が方形(58mm×15.5mm)のカーボン製のコテを押し込み、後述するプラグが挿入出来る長さ約200mm強分の断面を方形に変形させ、そこに図10に示すような再純化処理した高純度カーボン製プラグ5(テーパー部を除く部分の断面形状が、非円形断面を有する合成石英ガラス管の断面における底部を形造る四角部分の形状は幅(W)54.5mm、厚さ(H)9.5mm、上面側の曲面部分を形造るドーム形状の曲率半径(R)100mm。長さ(L)200mm、テーパー部長さ(T)60mmに加工後、再純化処理したもの。表面粗さ2μm。中心に直径7.5mmの円形貫通孔5cを有する)を挿入しておくとともに、合成石英ガラス管1のうちダミー管3aと溶着する端部1aについても、加熱しながら断面が方形(58mm×15.5mm)のカーボン製のコテを押し込み、ダミー管3aの端部3cと断面を同じ形状としておくことである。非円形断面を有する合成石英ガラス管への加工の手順も、その加工条件もすべて前出の実施例1と同じである。
実施例10は、前出の実施例1と同じガラス旋盤で、同じ出発材料等を用い、ほぼ実施例1の方法と条件に類似しているが、その違いは、ダミー管3aは、合成石英ガラス管1と溶着する端部3c側を加熱しながら断面が方形(58mm×21.5mm)のカーボン製のコテを押し込み、後述するプラグが挿入出来る長さ約200mm強分の断面を方形に変形させ、そこに図11に示すような再純化処理した高純度カーボン製プラグ5(テーパー部を除く定形部分の断面形状が、非円形断面を有するガラス管の断面における底部を形造る四角部分の形状は幅(W)54.5mm、厚さ(H1)9.5mm、上面側の三角屋根状部分を形造る三角屋根の高さ(H2)が10mm。長さ(L)200mmでテーパー部長さ(T)60mmに加工後、再純化処理したもの。表面粗さ2μm。三角屋根状の面それぞれに幅5mm、深さ1mmの溝5eが設けられ、三角屋根に対向する面に幅5mm、深さ1mmで先端に向かってテーパーする溝5eが2本設けられ、さらに側面に幅1mmで深さ1mmの溝5fが合計4本設けられている)を挿入しておくとともに、合成石英ガラス管1のうちダミー管3aと溶着する端部1aについても、加熱しながら断面が方形(58mm×21.5mm)のカーボン製のコテを押し込み、ダミー管3aの端部3cと断面を同じ形状としておくことである。非円形断面の管への加工の手順もその加工条件もすべて前出の実施例1と同じである。
実施例9および10により得られた合成石英ガラス管をそれぞれ長さ1500mmに切断し、5wt.%の希釈フッ化水素酸による管内外面の極わずかなエッチング処理、純水による水洗、クリーンルーム内での乾燥を行ったあと、大気中で1080℃の温度で3時間のアニール処理を行った。そのあと、表2,表3に示すように管の寸法計測と表層部などの不純物分析、さらに図8および図9に示すようにエキシマ光ランプに組立て、エキシマ光発光時の透過率の経時変化等の性能を測定した。なお、エキシマ光の透過率の経時変化の測定に際して、エキシマ光を照射している期間中は少なくとも放射照度20mW/cm2を下回らないようにした。
実施例1〜10に係る非円形断面を有する合成石英ガラス管の評価の一覧を、表4に示す。
〔比較例1〜6〕
比較例1〜6の出発材料製造の方法と条件は、表5に示すように前出の実施例5および6と同じである。なお、出発材料たる円形断面を有する合成石英ガラス管の不純物分析の結果も表2の実施例5および6と同じである。比較例1〜6と実施例5および6との唯一の違いは、管の内外面表層部のエッチング処理の有無とそのエッチング層厚の違いである。実施例5および6は50μmのエッチング処理を行ったが、比較例1〜3はエッチング処理無しであり、比較例4は内外面ともに10μmの表層分をエッチング処理し、比較例5および6は同じ50μmの表層分をエッチング処理して除去した円形断面を有する合成石英ガラス管を出発材料として、非円形断面を有する合成石英ガラス管への加工に供した。なお、比較例1〜6の加工は表6に示すようにいずれもガラス旋盤で押し棒を用いてプラグを押し移動させる方式で行った。
比較例1は、前出の実施例5および6と同じ押し棒方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径45mm、厚さ3mm、長さ1700mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径45mm、厚さ3mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成するなど、実施例5および6と同様に非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(a)に示すような、再純化処理した高純度カーボン製(断面61mm×10.2mm、長さ250mmでテーパー部長さは100mm、表面粗さ8μm。中心に直径7.5mmの円形貫通孔5cを有する)である。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により45rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約10Pa、排気側のゲージ圧を約5Paに設定した。加熱部の温度が1750℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、1750〜1780℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。
比較例2は、前出の比較例1と同じ押し棒方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径45mm、厚さ3mm、長さ1700mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径45mm、厚さ3mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成するなど、比較例1と同様に非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(a)に示すような、高純度カーボン製(断面61mm×10.2mm、長さ250mmでテーパー部長さは100mm、表面粗さ6μm、再純化していない。中心に直径7.5mmの円形貫通孔5cを有する)を使用した。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により45rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約20Pa、排気側のゲージ圧を約10Paに設定した。加熱部の温度が1730℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、1730〜1750℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。
比較例3は、前出の比較例1と同じ押し棒方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径45mm、厚さ3mm、長さ1700mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径45mm、厚さ3mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成するなど、比較例1と同様に非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(a)に示すような、高純度カーボン製(断面61mm×10.2mm、長さ250mmでテーパー部長さは100mm、表面粗さ5μm、再純化していない。中心に直径7.5mmの円形貫通孔5cを有する)である。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により45rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約25500Pa、排気側のゲージ圧を約25000Paに設定した。加熱部の温度が1560℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、1560〜1590℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。
比較例4は、合成石英ガラス管1の内外面表層部の10μmをエッチング処理した後、前出の比較例1と同じ押し棒方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径45mm、厚さ3mm、長さ1700mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径45mm、厚さ3mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成するなど、比較例1と同様に非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(a)に示すような、高純度カーボン製(断面61mm×10.2mm、長さ250mmでテーパー部長さは100mm、表面粗さ5μm、再純化していない。中心に直径7.5mmの円形貫通孔5cを有する)である。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により45rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約50Pa、排気側のゲージ圧を約30Paに設定した。加熱部の温度が所1730℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、1730〜1750℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。
比較例5は、合成石英ガラス管1の内外面表層部の50μmをエッチング処理した後、前出の比較例1と同じ押し棒方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径45mm、厚さ3mm、長さ1700mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径45mm、厚さ3mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成するなど、比較例1と同様に非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(a)に示すような、高純度カーボン製(断面61mm×10.2mm、長さ250mmでテーパー部長さは100mm、表面粗さ8μm、再純化していない。中心に直径7.5mmの円形貫通孔5cを有する)である。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により45rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約15Pa、排気側のゲージ圧を約5Paに設定した。加熱部の温度が1760℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、1760〜1800℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。
比較例6は、合成石英ガラス管1の内外面表層部の50μmをエッチング処理した後、前出の比較例1と同じ押し棒方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径45mm、厚さ3mm、長さ1700mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径45mm、厚さ3mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成するなど、比較例1と同様に非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(a)に示すような、高純度カーボン製(断面61mm×10.2mm、長さ250mmでテーパー部長さは100mm、表面粗さ8μm、再純化していない。中心に直径7.5mmの円形貫通孔5cを有する)である。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により45rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約25800Pa、排気側のゲージ圧を約25100Paに設定した。加熱部の温度が1580℃を超えた時から棒状部材13を押し込み始め、プラグ5の移動を始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。棒状部材13すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は、1580〜1600℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。
〔比較例7〜9〕
比較例7〜9の出発材料製造の方法と条件は、表5に示すように前出の実施例5および6とほぼ同じである。なお、出発材料たる円形断面を有する合成石英ガラス管の不純物分析の結果は表2の実施例5および6と同じである。比較例7〜9と実施例5および6との唯一の違いは細管の内外面表層部のエッチング処理の有無である。実施例5および6は50μmのエッチング処理を行ったが、比較例7〜9はエッチング処理無しであり、そのまま非円形断面を有する合成石英ガラス管への加工に供した。なお、比較例7〜9はいずれも実施例2、4、8と同様に、ガラス旋盤でモリブデン製ワイヤーからなる線状部材14を用いてプラグ5先端部5bに接続して引張り、プラグ5を移動させる方式で行った。
比較例7は、前出の実施例2、4、8と同じ引張る方式の装置を用いて合成石英ガラス管1(外径45mm、厚さ3mm、長さ1700mm)の両端に溶融石英製のダミー管3a,3b(外径45mm、厚さ3mm、長さ800mm)を溶着して素材管100を構成し、非円形断面の管の加工開始前までの準備を行なう。なお、非円形断面の管の加工用のプラグ5は図5(a)に示すような、高純度カーボン製(断面61mm×10.2mm、長さ250mmでテーパー部長さは100mm、表面粗さ6μm。中心に直径7.5mmの円形貫通孔5cを有する)を使用した。
チャック8a,8bにより保持された素材管100を、回転駆動部6,7により30rpmで回転させながら酸水素バーナー11に点火して素材管100に挿入されたプラグ5の先端部5b近傍の外面をバーナー火炎12で予備加熱し、加熱部を放射温度計で温度測定する。素材管100内にはガス供給用細管15から窒素ガスを供給しつつ、ガス供給弁17およびガス微圧調整弁16ならびに吸引ポンプ21を調整し、供給側および排気側の両方の圧力を大気圧より高くするとともに、供給側と排気側との差圧を調節する。ここでは、供給側のゲージ圧を約10Pa、排気側のゲージ圧を約5Paに設定した。加熱部の温度が1720℃を超えた時から線状部材14を引き始めプラグ5を移動し始めた。それと同時にバーナー11が置かれているバーナー台10の移動を開始した。線状部材14すなわちプラグ5の移動速度とバーナー台10の移動速度とは同一に、すなわち同期させた。加熱温度は1720〜1750℃の範囲に調節した。合成石英ガラス管1の全長分の加工が出来たところでプラグ5とバーナー台10の移動を止め、バ−ナー11のガス流量を点火流量まで直ちに下げ、加工を終えた。なお、プラグ5の移動とバーナー台10の移動とを同期させることは、ラックアンドピニオンやボールねじ等、公知の機構を適宜組み合わせることによって可能となる。
比較例8は、上記の比較例7と同じ方法で、素材管100を30rpmで回転させながら酸水素バーナー11で加熱し、素材管100内には窒素ガスを供給側21000Pa、排気側20500Paの各ゲージ圧で流した。加熱部の温度は、1560〜1590℃の範囲に調節した。
比較例9は、上記の比較例7と比べてプラグ5の表面粗さが8μmと少し粗め以外は同じ方法で、素材管100を30rpmで回転させながら酸水素バーナー11で加熱し、素材管100内には窒素ガスを供給側20Pa、排気側10Paの各ゲージ圧で流した。加熱部の温度は、1720〜1750℃の範囲に調節した。
得られた比較例1〜9の非円形断面の合成石英ガラス管を長さ1800mmに切断し、5wt.%に希釈したフッ化水素酸による約5分間の短時間エッチング、純水による水洗、クリーンルーム内で乾燥したあと、大気中で1080℃の温度で3時間のアニール処理を行った。そのあと、表7に示すように管の寸法計測と表層部などの不純物分析とエキシマ光ランプに組立てエキシマ光発光時の透過率の経時変化等を測定した。なお、エキシマ光の透過率の経時変化の測定に際して、エキシマ光を照射している期間中は少なくとも放射照度20mW/cm2を下回らないようにした。
表4に示す通り、本願発明の実施例1〜10のいずれの製法においても、出発材料たる円形断面の合成石英ガラス管に対する非円形断面の合成石英ガラス管の内面側の層厚50μmにおける不純物の濃度の増加量は、Li、K、Ca、Mg、Ti、Ni、Cu、Cr、Mo、W、VおよびCの各元素で30wt.ppb以下であり、NaおよびFeの各元素で50wt.ppb以下であった。また、実施例1〜10の製法を用いて製造された非円形断面を有する合成石英ガラス管の管壁の厚さの全層分における不純物濃度は、Li、K、Ca、Mg、Ti、Ni、Cu、Cr、Mo、W、V、C、NaおよびFeの各元素について10wt.ppb以下であり、また、OH基の濃度は400wt.ppm以下であり、かつCl元素濃度が5wt.ppm以下であった。