JP5491303B2 - 自動車車体の積層塗膜、自動車車体の塗装方法及び自動車車体 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車車体の積層塗膜、自動車車体の塗装方法及び既述の積層塗膜を有する自動車車体に関するものである。
自動車車体の塗装としては、エポキシ系樹脂を主剤とする電着塗料等が適用される下塗り塗料と、ポリエステル系樹脂を主剤とする中塗塗料と、アクリル系塗料を主剤とする上塗り塗料(ベース塗料)と、クリヤ塗料とを用い、下塗り塗装を施した後にこれを焼き付け、当該硬化した下塗り塗膜の上に中塗塗装を施した後に、これを焼き付けて硬化させ、この上に上塗り塗装を施し、さらにクリヤ塗料を施した後、焼付けることで完成する、いわゆる3コート2ベークの塗装方法が知られている。
自動車車体の塗膜には外観向上に関する役割や被塗装物の保護等の機能性に関する役割があり、特に中塗塗膜には、この外観及び機能性に関する優れた性能が要求され、外観向上に関する役割として電着粗度の隠蔽性(下地隠蔽性)や、機能性に関する役割として耐チッピング性などの塗膜性能を満たす塗膜が形成される必要がある。
中塗塗料のための樹脂組成物としては、上塗塗装適性、顔料分散性、ならびにサンディング適性の点からポリエステル樹脂を主成分(必須樹脂成分)として用いるのが一般的である(特許文献1等)。しかしながら、従来のポリエステル系樹脂を主剤とする中塗塗料の硬化形式はメラミン硬化系が一般的であり、一般自動車向けの仕上がり外観は得られても、高級自動車向けの高外観塗装としては、十分な仕上がり外観が得られない場合があった。
また、中塗塗料の塗装及び焼き付けを、それぞれ2回ずつ行う塗装方法が提案されているが(特許文献2)、これだけでは、高外観の積層塗膜を形成することが困難であった。
特開2002−126637号公報 特開2005−177631号公報
そこで、自動車車体の塗装、特に高級自動車向けの塗装において、高外観塗装を維持することが可能となるような積層塗膜の開発が望まれていた。
本発明は、このような状況下になされたものであり、下地隠蔽性に優れ、高級自動車向けにも適用できる高外観性を有する自動車車体の積層塗膜を提供することを目的とするものである。また、上記本発明の積層塗膜を有する自動車車体を提供することを目的とする。
本発明は、下記の通りである。
(1)金属基材上に、電着塗膜、第1中塗塗膜、第2中塗塗膜、ベース塗膜、クリヤー塗膜をこの順で積層した自動車車体の積層塗膜であって、前記第1中塗塗膜を構成する第1中塗塗料、及び、前記第2中塗塗膜を構成する第2中塗塗料は、酸価が50〜300mgKOH/g(固形分)であるカルボキシル基とカルボン酸エステル基を含有するアクリル樹脂(A)、エポキシ基当量が50〜700であるエポキシ基含有アクリル樹脂(B)を含有する酸エポキシ硬化型中塗塗料であり、前記第1中塗塗料は、顔料(C1)として着色顔料及び体質顔料を含有し、前記第2中塗塗料は、顔料を含有しない又は顔料(C2)として体質顔料のみを含有することを特徴とする自動車車体の積層塗膜。
(2)前記第1中塗塗料及び/又は前記第2中塗塗料が更に、酸価が50〜350mgKOH/g(固形分)であるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)を含有することを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の積層塗膜。
(3)前記第1中塗塗料の着色顔料及び体質顔料の濃度(PWC)がそれぞれ15〜50質量%及び0を超え〜35質量%以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の自動車車体の積層塗膜。
(4)前記第2中塗塗料の体質顔料の濃度(PWC)が0〜15質量%であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の自動車車体の積層塗膜。
(5)前記ベース塗料が、溶剤ベース塗料又は水性ベース塗料であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の自動車車体の積層塗膜。
(6) 前記クリヤー塗料が、酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、2液混合型ウレタンクリヤー塗料又はアクリルメラミン型クリヤー塗料であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の塗装方法特徴とする自動車車体の積層塗膜。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の自動車車体の積層塗膜を形成する塗装方法であって、電着塗膜を形成した金属基材上に、第1中塗塗料を塗布して未硬化の第1中塗塗膜を形成する工程、次いでウエットオンウエット塗装で第2中塗塗料を塗布し、焼付け硬化して第1中塗塗膜及び第2中塗塗膜を形成する工程、この工程の後にベース塗料を塗布して未硬化のベース塗膜を形成する工程、次いでウエットオンウエット塗装でクリヤー塗料を塗布し、焼付け硬化してベース塗膜及びクリヤー塗膜を形成する工程、を包含することを特徴とする自動車車体の塗装方法。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の積層塗膜を有する自動車車体。
本発明によれば、下地隠蔽性に優れ、高級自動車向けにも適用できる高外観性を有する自動車車体の積層塗膜を提供することができる。また、本発明によれば、自動車車体の塗装における中塗塗装の工数を減らし、ランニングコストを減少させることができる自動車車体の塗装方法を提供することができる。さらに本発明によれば、上記本発明の積層塗膜を有する自動車車体を提供することができる。
本発明の自動車車体の積層塗膜は、金属基材上に、電着塗膜、第1中塗塗膜、第2の中塗塗膜、ベース塗膜、クリヤー塗膜をこの順で積層した自動車車体の積層塗膜であって、第1中塗塗膜を構成する第1中塗塗料、及び、第2中塗塗膜を構成する第2中塗塗料は、酸価が50〜300mgKOH/g(固形分)であるカルボキシル基とカルボン酸エステル基を含有するアクリル樹脂(A)、エポキシ基当量が50〜700であるエポキシ基含有アクリル樹脂(B)を含有する酸エポキシ硬化型中塗塗料であり、第1中塗塗料は、顔料(C1)として着色顔料及び体質顔料を含有し、第2中塗塗料は、顔料を含有しない又は顔料(C2)として体質顔料のみを含有する。
当該積層塗膜は、本発明の自動車車体の塗装方法により形成することができる。以下、本発明の塗装方法を積層塗膜の形成工程順に説明する。
本発明の塗装方法においては、先ず、電着塗料を用いて自動車車体の鋼板上に電着塗膜が形成される。この電着塗装に使用する塗料は、りん酸亜鉛等により化成処理した金属基材に電着塗装するもので、下塗塗料に相当する。本発明では、カチオン電着塗料及びアニオン電着塗料のいずれでも使用できるが、耐食性等の観点からカチオン電着塗料を使用することが好ましい。
カチオン電着塗料としては、公知のものを使用でき、カチオン性基体樹脂及び硬化剤を含有する塗料組成物を挙げることができる。
カチオン性基体樹脂としては、特に限定されないが、例えば、特公昭54−4978号公報、特公昭56−34186号公報等に記載されたアミン変性エポキシ樹脂系、特公昭55−115476号公報等に記載されたアミン変性ポリウレタンポリオール樹脂系、特公昭62−61077号公報、特開昭63−86766号公報等に記載されたアミン変性ポリブタジエン樹脂系、特開昭63−139909号公報、特公平1−60516号公報等に記載されたアミン変性アクリル樹脂系、特開平6−128351号公報等に記載されたスルホニウム基含有樹脂系等を挙げることができる。上記引例に記載されたものの他、ホスホニウム基含有樹脂系等を使用することもできる。上記カチオン性基体樹脂のなかでも、アミン変性エポキシ樹脂系を使用することが好ましい。硬化剤としては、アミノ樹脂や、ブロックポリイソシアネート化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
このカチオン電着塗料は、公知の方法で水中に混合分散させることによって調製される。例えば、該成分を水混和性有機溶剤中に溶解させた状態で水及び酸(例えば酢酸、ギ酸、乳酸、りん酸、硫酸などの水溶性有機酸または無機酸)と混合し中和して電着塗料浴を形成するか、または該成分を水性媒体中に分散させ、酸で中和して電着塗料浴を形成する方法などがあげられる。カチオン電着塗料には、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、沈降防止剤などを必要に応じて配合できる。
自動車車体の塗装は、例えば以下のように行われる。
自動車車体が車体組立工程から塗装工程に移され、最初に車体に付着した油や塵埃が除去されると共に、必要に応じて車体を構成する金属基材表面に防錆用の化成皮膜が形成される。金属基材としては、特に制限はないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、アルミ素材等を用いることができる。
次いで車体(被塗物)は洗浄され、電着塗料で満たされた電着塗装槽に浸漬される。電着塗装槽では、電着塗料に高電圧が印加されることにより電着塗料が電気泳動し、これにより、車体に電着塗膜(下塗り塗膜)が形成される。この電着塗装槽から出槽した車体は、次の電着水洗工程において洗浄されて、車体に付着した余分な電着塗料が洗い流される。このように電着水洗を終了した車体は、次に、電着乾燥炉に搬入されて電着塗膜を焼き付けて硬化させた後に、中塗塗装工程に移される。
電着塗膜が形成された鋼板上に、先ず第1中塗塗料が塗布され、未硬化の第1中塗塗膜が形成される。この工程の後にウエットオンウエット塗装で第2中塗塗料が塗布され、次いで焼付け硬化して第1中塗塗膜及び第2中塗塗膜が形成される。
これらの第1中塗塗料及び第2中塗塗料は、基本樹脂、硬化剤及び有機溶剤を主成分とするものである。
基本樹脂としては、酸価が50〜300mgKOH/g(固形分)であるカルボキシル基とカルボン酸エステル基を含有するアクリル樹脂(A)(以下単に「酸基含有アクリル樹脂(A)」という)、エポキシ基当量が50〜700であるエポキシ基含有アクリル樹脂(B)を含有する酸エポキシ硬化型中塗塗料が使用される。
そして、第1中塗塗料は、顔料として着色顔料及び体質顔料を含有し、必要に応じて、沈降防止剤などを適宜配合した液状塗料であり、第2中塗塗料は、顔料を含有しない又は顔料として体質顔料のみを含有し、必要に応じて、沈降防止剤などを適宜配合した液状塗料である。
有機溶剤としては、通常の塗料用有機溶剤が使用でき、例えば脂肪族系、脂環族系、芳香族系の炭化水素溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤などがあげられる。これらの中塗塗料は公知の方法で調製される。
この酸基含有アクリル樹脂(A)は、例えば、酸無水物基を有するアクリル樹脂(a1)とモノアルコール(a2)とを反応させることにより得られる。
酸無水物基を有するアクリル樹脂(a1)は、例えば、酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー(a1−1)15〜40質量%、好ましくは15〜35質量%と、酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー(a1−2)60〜85質量%、好ましくは65〜85質量%とを共重合させることにより得られる。酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー(a1−1)の量が15質量%を下回ると硬化性が不足し、40質量%を上回ると得られる塗膜が固くもろくなりすぎて耐候性が不足する傾向がある。酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー(a1−1)としては、無水イタコン酸、無水マレイン酸及び無水シトラコン酸等が挙げられる。
酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー(a1−2)は酸無水物基に悪影響を与えないものであれば特に限定されず、エチレン性不飽和結合を一つ有する炭素数3〜15、特に3〜12のモノマーであることが好ましい。具体例として、スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、及び、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリィブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等の(メタ)アクリル酸エステル類、並びに、シェル社製のVeoVa−9及びVeoVa−10等が挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びマレイン酸のようなカルボキシル基を有するモノマーも挙げられる。中でも、ε−カプロラクトン2モル変性アクリル酸〔東亞合成化学工業(株)製、アロニックスM−5300、分子量300〕のようなエチレン性不飽和基とカルボキシル基との間に炭素数5〜20個程度分のスペーサー部分を有する長鎖カルボン酸モノマーを用いれば、塗膜の耐擦傷性が向上し、特に好ましい。
この酸基含有アクリル樹脂(A)は、例えば、水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a1−2−1)と酸無水物基含有化合物(a1−2−2)とを、水酸基と酸無水物基とがモル比で1/0.5〜1/1.0、好ましくは1/0.8〜1/1.0となる割合の量でハーフエステル化反応させることにより得られるカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a1−2−3)と、酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー(a1−2)とを共重合させることにより得られる。上述の水酸基と酸無水物基とのモル比が1/0.5を超えるとポリマー粘度が高くなり作業性不良となる。1/1.0未満になると過剰の酸無水物基含有化合物(a1−2−2)が残り、塗膜の耐水性が低下する。
ここで用いる水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a1−2−1)の炭素数は5〜23であることが好ましく、5〜13であることがさらに好ましい。この鎖長が短すぎると架橋点近傍のフレキシビリティーがなくなるため固くなりすぎ、長すぎると架橋点間分子量が大きくなりすぎるからである。一般には、次式(I)で示す構造を有するモノマーが挙げられる。
Figure 0005491303
[式(I)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Xは、下記の式(II)(式中、Yは炭素数2〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、mは3〜7の整数であり、qは0〜4の整数である。)で示す有機鎖、または、下記の式(III)(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、nは2〜10の整数である。)で示す有機鎖である。]
Figure 0005491303
具体的には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル及びこれらのε−カプロラクトンとの反応物のような化合物及び(メタ)アクリル酸と大過剰のジオール(例えば、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)をエステル化することにより調製することができる化合物が挙げられ、併用することもできる。
このような化合物は市販されており、例えば、三菱化学(株)製のアクリル酸4−ヒドロキシブチル「4HBA」及びメタクリル酸4−ヒドロキシブチル「4HBMA」等、ダイセル化学工業(株)社製「プラクセルFM1」及び「プラクセルFA1」等が挙げられる。プロピレンオキサイド系モノマーとしては日油(株)製の「ブレンマーPP−1000」、「ブレンマーPP−800」及びエチレンオキサイド系モノマーとしては、「ブレンマーPE−90」がある。
ここで用いる酸無水物基含有化合物(a1−2−2)の具体例として、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水コハク酸等が挙げられ、併用することもできる。
水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(a1−2−1)と酸無水物基含有化合物(a1−2−2)とのハーフエステル化の反応は通常の方法に従い、室温から150℃の温度で行なわれる。
酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー(a1−1)と酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー(a1−2)との共重合、及び、上述のモノマー(a1−2−3)と酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー(a1−2)との共重合は、例えばラジカル重合等の溶液重合のような公知の方法により行われる、例えば、常圧または加圧下で重合温度100〜200℃、重合時間3〜8時間で行うことができる。開始剤としてはアゾ系またはパーオキサイド系の開始剤が好適に用いられる。連鎖移動剤のような他の添加剤も用いうる。
得られるポリマーの数平均分子量は好ましくは500〜8000、より好ましくは800〜6000、特に好ましくは1500〜4000である。数平均分子量が8000を上回ると樹脂同士の相溶性が低下し、外観が低下する。数平均分子量が500を下回ると樹脂組成物の硬化性が不充分となる。得られるポリマーは1分子中に平均で少なくとも2個、好ましくは2〜15個の酸無水物基を有する、1分子中に含有される酸無水物基が2個を下回ると、樹脂組成物の硬化性が不充分となる。15個を上回ると固くもろくなりすぎ、耐候性が不足する。なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、スチレンポリマー標準により換算値として得ることができる。
次いで、得られた酸無水物基を有するアクリル樹脂(a1)を、酸無水物基と水酸基とがモル比で1/10〜1/1、好ましくは1/5〜1/1、より好ましくは1/2〜1/1となる割合の量でモノアルコール(a2)と反応させることにより、カルボキシル基とカルボン酸エステル基とを有する酸基含有アクリル樹脂(A)を調製する。このモル比が1/10を下回ると過剰のアルコールが多すぎて硬化時にワキの原因となり、1/1を上回ると未反応の無水物基が残り、貯蔵安定性が悪くなる。
本発明で用いられるモノアルコール(a2)は、1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有することが好ましい。酸基含有アクリル樹脂(A)を加熱するとこれらのアルコール成分が容易に脱離し揮発するので、酸無水物基の再生が容易である。好ましいモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、フリフリルアルコール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、アセトール、アリルアルコール及びプロパルギルアルコール等が挙げられ、併用することもできる。特に好ましいものはアセトール、フリフリルアルコール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、エタノール及びメタノールである。
得られる酸基含有アクリル樹脂(A)の酸価は50〜300mgKOH/gであり、好ましくは50〜250mgKOH/gである。酸価が50mgKOH/gを下回ると塗膜の硬化性が不足となり、300mgKOH/gを上回ると中塗塗料の貯蔵安定性が不良となるので好ましくない。
酸基含有アクリル樹脂(A)成分は、中塗塗料中の全固形分の質量を基準として10〜70質量%、好ましくは15〜50質量%、より好ましくは20〜45質量%の割合で中塗塗料に配合される。この配合量は、塗膜の耐酸性を考慮すると多い方が好ましく、塗膜のもろさを考慮すると少ない方が好ましい。
本発明の第1中塗塗料及び第2中塗塗料に用いるエポキシ基当量が50〜700であるエポキシ基含有アクリル樹脂(B)は、1分子中にエポキシ基を平均で2個以上、好ましくは2〜10個、より好ましくは3〜8個有する。
このエポキシ基含有アクリル樹脂(B)の数平均分子量は200〜10000、好ましくは500〜8000、より好ましくは800〜5000である。数平均分子量は、塗膜の十分な硬化性を考慮すると大きい方が好ましく、得られる塗料の固形分を多くするためには小さい方が好ましい。また、エポキシ基当量は50〜700、好ましくは80〜600、より好ましくは100〜500である。エポキシ基当量は、塗膜の十分な硬化性を考慮すると小さい方が好ましく塗膜のもろさを考慮すると大きい方が好ましい。
このエポキシ基含有アクリル樹脂(B)は、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー10〜60質量%、好ましくは15〜50質量%とエポキシ基を有しないエチレン性不飽和モノマー40〜90質量%、好ましくは50〜85質量%とを、共重合することにより得られるアクリル系ポリエポキシドである。エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの量は、塗膜の十分な硬化性を考慮すると多い方が好ましく、塗膜の耐候性を考慮すると少ない方が好ましい。
エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキサニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。バランスのとれた硬化性と貯蔵安定性を示す塗料を調製するためには、グリシジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
エポキシ基を有しないエチレン性不飽和モノマーとしては、酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー(a1−2)として前掲したモノマーが挙げられる。共重合も酸基含有アクリル樹脂(A)の場合と同様に行うことができる。
特に、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーをエポキシ基を有しないエチレン性不飽和モノマーとして用いた場合、得られる塗膜の密着性及びリコート性等が向上する。また、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを用いて得られる、エポキシ基含有アクリル樹脂(B)は、後述するように、酸基アクリル樹脂(A)と、水酸基及びエポキシ基の両方の官能基において反応し結合するので、より強固な塗膜を得ることができる。
エポキシ基含有アクリル樹脂(B)の水酸基価は5〜300mgKOH/g、好ましくは10〜200mgKOH/g、より好ましくは15〜150mgKOH/gである。水酸基価が300を超えると、塗料固形分が低下したり硬化塗膜の耐水性が十分でなく、5未満では密着性に劣る。
特に好ましいエポキシ基含有アクリル樹脂(B)は、(i)前掲の式(I)の構造を有する水酸基含有エチレン性不飽和モノマー5〜70質量%と、(ii)エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー10〜60質量%と、必要に応じて(iii)水酸基とエポキシ基の両者を有しないエチレン性不飽和モノマー0〜85質量%とを共重合することにより得ることができる。
この場合、エポキシ基含有アクリル樹脂(B)は、1分子中にエポキシ基を平均で好ましくは2〜12個、より好ましくは3〜10個、及び水酸基を平均で好ましくは0.5〜10個、より好ましくは1〜8個有する。
エポキシ基含有アクリル樹脂(B)は、第1中塗塗料においては、中塗塗料中の全固形分の質量を基準として10〜75質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜65質量%の量で配合される。エポキシ基含有アクリル樹脂(B)は、第2中塗塗料においては、中塗塗料中の全固形分の質量を基準として10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜65質量%の量で配合される。エポキシ基含有アクリル樹脂(B)の量は、塗膜の十分な硬化性を考慮すると多い方が好ましく、塗膜の耐黄変性を考慮すると少ない方が好ましい。
これらの第1中塗塗料には、顔料(C1)として着色顔料及び体質顔料が含有される。着色顔料及び体質顔料を含有することにより、第1中塗塗膜の下地である電着塗膜表面の微細な凹凸を隠蔽することができる。また、第2中塗塗料には、顔料を含有しない又は顔料(C2)として体質顔料のみが含有される。顔料を含有しない又は体質顔料のみを含有することにより、第2中塗塗膜は透明になり、第1中塗塗膜の着色を維持しつつ、高い平滑性を得ることができ、高外観性を図ることができる。
着色顔料としては、アゾレーキ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体等の有機顔料系、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料類が挙げられる。
また、体質顔料としては、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク等が挙げられる。
第1中塗塗料の着色顔料及び体質顔料の濃度(PWC)は、それぞれ15〜50質量%及び0を超え〜35質量%以下が好ましく、20〜40質量%及び5〜25質量%がさらに好ましい。また、第2中塗塗料において体質顔料を含有する場合、その濃度(PWC)は、0〜15質量%が好ましく、7〜13質量%がさらに好ましい。
なお、「PWC」とは、塗料固形分に対する顔料の質量濃度をいう。
上記の(A)成分、(B)成分及び(C1)成分を含む第1中塗塗料、ならびに上記の(A)成分、(B)成分及び必要により(C1)成分を含む第2中塗塗料には、必要に応じて、酸価が50〜350mgKOH/g(固形分)であるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)を含有させることができる。
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)は、例えば、3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物基含有化合物とをハーフエステル化反応させて得ることができる。尚、「ポリエステルポリオール」とは、エステル結合鎖を2個以上有する多価アルコールをいう。また、多価アルコールとは、水酸基を2個以上有するアルコールをいう。
ここで用いるポリエステルポリオールは、酸無水物基含有化合物と反応して一分子当たり2個以上の酸官能性及び下記の特性を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)を提供する。
一般に、このようなポリエステルポリオールは、少なくとも3個の水酸基を有する炭素数3〜16までの低分子多価アルコールと直鎖状脂肪族ジカルボン酸とを縮合させることにより調製される。低分子多価アルコールに直鎖状の脂肪族基を導入することにより、得られる塗膜に可撓性が付与され耐衝撃性が向上する。
低分子多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4−ブタントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン及びこれらの混合物が挙げられる。
ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸及びこれらの混合物のような二塩基酸が挙げられる。また、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸及びこれらの混合物のような酸無水物基含有化合物も用いることができる。
ポリエステルポリオールは、多価アルコールと多塩基酸による脱水縮合反応、多価アルコールと酸無水物基含有化合物との反応等の通常のエステル化反応により合成される。このような操作により比較的低分子量のポリエステルポリオールのオリゴマーが得られ、ハイソリッドの中塗塗料が提供される。
本発明において特に好ましいポリエステルポリオールは、低分子多価アルコールにε−カプロラクトンのようなラクトン化合物を付加させて鎖延長することにより得られるものである。分子量分布がシャープとなるので、更に中塗塗料のハイソリッド化が可能となり、耐候性及び耐水性に優れた塗膜が得られるからである。この場合に特に好ましく用いられる低分子多価アルコールには、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
本発明で用いる「ラクトン化合物」は、環内に酸素原子を有するために求核試薬と反応して開環し、末端に水酸基を生成する環状化合物であればよい。炭素数4〜7個のラクトン化合物が、開環付加反応を起こし易いので好ましい。
具体的には、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン及びγ−ブチロラクトン等が挙げられるが、好ましくはε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン及びγ−ブチロラクトンが用いられる。
鎖延長は、通常の開環付加反応と同様の条件で行うことができる。例えば、適当な溶媒中で、または無溶媒で、温度80〜200℃で5時間以内反応させることにより低分子多価アルコールが鎖延長されたポリエステルポリオールが得られる。スズ系触媒等を用いても良い。
その際、低分子多価アルコールの水酸基のモル量に対し、ラクトン化合物のモル量は0.2〜10倍量であり、好ましくは0.25〜5倍量であり、より好ましくは0.3〜3倍量である。OH基のモル量に対するラクトン化合物のモル量は、塗膜の耐衝撃性を考慮すると多い方が好ましく、塗膜の十分な硬度を確保するためには少ない方が好ましい。
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)は、酸価50〜350mgKOH/g(固形分)、好ましくは100〜300mgKOH/g、より好ましくは150〜250mgKOH/g、及び数平均分子量400〜3500、好ましくは500〜2500、より好ましくは700〜2000、重量平均分子量/数平均分子量1.8以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.35以下の樹脂である。
酸価は、中塗塗料の十分な固形分濃度を確保するためには小さい方が好ましく、塗膜の十分な硬化性を確保するためには大きい方が好ましい。数平均分子量は、中塗塗料の十分な固形分濃度を確保するためには小さい方が好ましく、塗膜の十分な硬化性や塗膜の耐水性を考慮すると大きい方が好ましい。重量平均分子量/数平均分子量の比は、塗膜の耐水性や耐候性を考慮すると小さい方が好ましい。
ポリエステルポリオールと酸無水物基含有化合物とのハーフエステル化反応は、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸及び無水コハク酸等のような酸無水物基含有化合物を用いて、室温〜150℃、常圧のような通常の反応条件において行なわれる。但し、ポリエステルポリオールの全ての水酸基をカルボキシル基に変性する必要はなく、水酸基を残しても良い。
水酸基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)は、塗膜の表面にカルボキシル基と水酸基とを同時に提供するので、例えば、リコートしたような場合、水酸基を有しないポリエステルポリカルボン酸に比べて、優れた密着性を提供する。
その場合、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)の水酸基価は、150mgKOH/g(固形分)以下、好ましくは5〜100mgKOH/g、より好ましくは10〜80mgKOH/gである。水酸基価は、塗膜の耐水性を考慮すると小さい方が好ましい。
また、水酸基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)は、後述するように、エポキシ基含有アクリル樹脂(B)及び酸基含有アクリル樹脂(A)の両方と反応し結合しうるので、より強固な塗膜を得ることができる。1分子中に平均0.1個以上の水酸基を有するものが好ましい。
一般に、ポリエステルポリオールのOH基のモル量に対する酸無水物基含有化合物の酸無水物基のモル量を0.2〜1.0倍、特に0.5〜0.9倍とすることが望ましい。この値は、塗膜の十分な硬化性を確保するためには大きい方が好ましい。
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)は、中塗塗料中の全固形分の質量を基準として5〜70質量%、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%の量で配合されうる。この量は、中塗塗料の十分な固形分濃度を確保するためには少ない方が好ましく、塗膜の耐候性を考慮すると多い方が好ましい。
本発明の塗装方法においては、第1中塗塗膜及び第2中塗塗膜の形成工程の後にベース塗料が塗布される。このベース塗料としては、溶剤ベース塗料又は水性ベース塗料を用いることができる。
溶剤ベース塗料は、基本樹脂、硬化剤及び有機溶剤を主成分とし、水性ベース塗料は、基本樹脂、硬化剤、有機溶剤及び水を主成分とする。さらに、これらの成分のほかに必要に応じて、着色顔料、沈降防止剤、体質顔料などを適宜配合することができ、公知の方法で調製し、液状塗料であるベース塗料を作製することができる。
基本樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。特に、水性ベース塗料の場合は、塗装作業性、耐候性、耐水性等の塗膜性能面からアクリルエマルション及び/または水溶性アクリル樹脂を使用することが好ましく、なかでも、アクリルエマルションがより好ましい。
硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができ、塗膜の諸性能、コストの点からメラミン樹脂が好ましい。また、低温での硬化性向上の観点から、ブロックイソシアネート樹脂、カルボジイミド化合物、または、オキサゾリン化合物を併用して添加することも好ましい。
また、水性ベース塗料には、クリヤー塗膜とのなじみ防止、塗装作業性を確保するために粘性制御剤、その他の添加剤を適宜配合してもよい。
溶剤ベース塗料に用いる有機溶剤としては、脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロン等のケトン類の溶剤を単独で又は混合して用いることができる。また水性ベース塗料に用いる有機溶剤としては、酢酸カービトル、ブチルカービトル等のエーテル類、メタノール、ブタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のアルコール類等の親水性有機溶剤を水と併用することができる。例えば、有機溶剤として、ソルベッソ100、ソルベッソ150(ともに、エクソン化学(株)製)を使用することができる。
ベース塗料は、光輝性顔料を配合してメタリックベース塗料として用いることもでき、また、光輝性顔料を配合せずにレッド、ブルーあるいはブラック等の着色顔料及び必要によりさらに体質顔料を配合してソリッド型ベース塗料として用いることもできる。
光輝性顔料としては特に限定されず、例えば、金属又は合金等の無着色若しくは着色された金属性光輝材及びその混合物、干渉マイカ粉、着色マイカ粉、ホワイトマイカ粉、グラファイト又は無色有色偏平顔料等を挙げることができる。分散性に優れ、透明感の高い塗膜を形成することができるため、金属又は合金等の無着色若しくは着色された金属性光輝材及びその混合物が好ましい。その金属の具体例としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ等を挙げることができる。
光輝性顔料の形状は特に限定されず、更に、着色されていてもよいが、例えば平均粒径(D50)が2〜50μmであり、厚さが0.1〜5μmである鱗片状のものが好ましい。平均粒径(D50)は、レーザー光散乱法による測定値であるメジアン径である。平均粒径10〜35μmの範囲のものが光輝感に優れ、より好ましい。光輝性顔料の水性ベース塗料中の顔料濃度(PWC)は、一般に23質量%以下である。顔料濃度は、塗膜外観を考慮すると少ない方が好ましい。好ましくは、0.01〜20質量%であり、より好ましくは、0.01〜18質量%である。光輝性顔料を含有する水性ベース塗料を使用した場合、陰影感が際立つ。
光輝性顔料以外の顔料としては、中塗塗料において記載した着色顔料、体質顔料を用いることができる。顔料としては、光輝性顔料、着色顔料及び体質顔料のなかから、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。光輝性顔料及びその他の全ての顔料を含めたベース塗料中の顔料濃度(PWC)は、一般的には0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜40質量%であり、より好ましくは1〜30質量%である。顔料濃度は、塗膜外観を考慮すると少ない方が好ましい。その他の添加剤としては、中塗塗料において例示したものを挙げることができる。
本発明の塗装方法においては、ベース塗膜が形成された後に、ウエットオンウエット塗装でクリヤー塗料が塗布される。クリヤー塗料は、基本樹脂、硬化剤及び有機溶剤を主成分とし、さらに必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤などを適宜配合した液状塗料であり、公知の方法で調製される。
クリヤー塗料としては、酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、2液混合型ウレタンクリヤー塗料又はアクリルメラミン型クリヤー塗料を用いることが好ましい。
酸エポキシ硬化型クリヤー塗料は、第1中塗塗料及び第2中塗塗料と同様の基本樹脂、硬化剤及び有機溶剤を用いた酸エポキシ硬化型クリヤー塗料を用いることができるので、ここではその説明は省略する。
2液混合型ウレタンクリヤー塗料は、水酸基価が100〜200mgKOH/g(固形分)である水酸基含有アクリル樹脂(L)及びポリイソシアネートプレポリマー(M)を用いる2液型クリヤー塗料であり、かつ、前記ポリイソシアネートプレポリマー(M)のイソシアネート基当量と前記水酸基含有アクリル樹脂(L)の水酸基当量との比率が、〔イソシアネート基当量〕/〔水酸基当量〕=1/0.5〜1/1.5である。
この2液型クリヤー塗料は、更にポリラクトンポリオール(N)を、(L)/(N)=60/40〜100/0(固形分質量比)の範囲内で含み、水酸基含有アクリル樹脂(L)は、短側鎖ヒドロキシル基(L1)と長側鎖ヒドロキシル基(L2)を(L1)/(L2)=3/1〜1/3(モル比)で有し、ポリイソシアネートプレポリマー(M)のイソシアネート基当量MIと水酸基当量LOHの比率がMI/LOH=1/0.3〜1/2.0であることが好ましい。尚、長側鎖とは、炭素数6以上の側鎖をいい、短側鎖とは炭素数6未満の側鎖をいう。長側鎖の炭素数は15以上が好ましく、短側鎖の炭素数は3以下が好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(L)としては、例えば、(1)(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、N−メチロールアクリルアミン等のヒドロキシ基を有するエチレン性モノマー、(2)(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基を有するエチレン性モノマー、(3)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の前記モノマー(1)及び(2)と共重合可能なエチレン性モノマー、並びにε−カプロラクトン、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等を共重合させて得られた共重合体が好ましく挙げられる。水酸基含有アクリル樹脂(L)は1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
水酸基含有アクリル樹脂(L)において、短側鎖ヒドロキシル基は(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルに由来する基であり、長側鎖ヒドロキシル基は(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンの付加物に由来する基であることが、耐擦り傷性と耐候性を両立させる点で、好ましい。このような水酸基含有アクリル樹脂(L)は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンの付加物を含むモノマー成分を共重合することによって得ることができる。この付加物は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル1モルに対してε−カプロラクトン2〜5モルを付加してなるものであることが、耐擦り傷性発現の点で、好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(L)は、短側鎖ヒドロキシル基(L1OH)と長側鎖ヒドロキシル基(L2OH)の含有比率が(L1OH)/(L2OH)=3/1〜1/3(モル比)であることが好ましく、2/1〜1/2(モル比)であることがより好ましい。長側鎖ヒドロキシル基の含有比率は、塗膜の加水分解による耐侯性の低下を抑制するためには少ない方が好ましく、塗膜の復元力と耐擦傷性を確保するためには多い方が好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(L)は、合計水酸基当量が100〜200であることが好ましく、120〜180であることがより好ましい。合計水酸基当量が100未満であると、塗膜にした場合に光劣化が生じやすく耐侯性が低下することになり、一方、200を超えると、復元力が不充分になり衝撃で生じた凹みを元の塗膜表面状態に戻すことができず耐擦傷性が低下することとなる。
水酸基含有アクリル樹脂(L)は、ガラス転移温度が5〜50℃であることが好ましく、より好ましくは10〜40℃である。ガラス転移温度は、塗膜の復元力と耐擦傷性を確保するためには低い方が好ましく、塗膜の耐侯性や耐汚染性を考慮すると高い方が好ましい。
なお、上記ガラス転移温度は、水酸基含有アクリル樹脂(L)を合成する際に得られた、該水酸基含有アクリル樹脂(L)を含む樹脂ワニスから溶剤を減圧下で留去した後、示差走査熱量計(DSC)(熱分析装置SSC/5200H、セイコー電子社製)にて以下の昇温工程、降温工程及び昇温工程を行い、その第3工程の昇温時に測定した値である。
第1工程:20℃→100℃(昇温速度10℃/min)
第2工程:100℃→−50℃(降温速度10℃/min)
第3工程:−50℃→100℃(昇温速度10℃/min)
水酸基含有アクリル樹脂(L)の重量平均分子量は、特に制限されないが、6,000〜20,000であることが好ましい。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、スチレンポリマー標準により換算値として得ることができる。
ポリラクトンポリオール(N)としては、特に制限はないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物のような2官能ポリカプロラクトンジオール類、下記一般式(2)で表される化合物のような3官能ポリカプロラクトントリオール類、その他4官能ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリラクトンポリオール(N)は1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
Figure 0005491303
(式(1)中、Rは、C24、C24OC24、C(CH22(CH22のいずれかであり、m及びnは4〜35の整数である。)
Figure 0005491303
(式(2)中、Rは、CH2CHCH2、CH3C(CH22、CH3CH2C(CH23のいずれかであり、l+m+nは3〜30の整数である。)
ポリラクトンポリオール(N)は、官能基数が2〜5であることが好ましく、より好ましくは3〜4である。官能基数は、塗膜の復元力と耐擦傷性を確保するためには少ない方が好ましく、塗膜の耐侯性や耐汚染性を考慮すると多い方が好ましい。
2液混合型ウレタンクリヤー塗料において、水酸基含有アクリル樹脂(L)とポリラクトンポリオール(N)の固形分割合は(L)/(N)=60/40〜100/0(質量比)であることが好ましい。ポリラクトンポリオール(N)は、配合しなくても良いのであるが、配合する場合は、その固形分割合が前記(L)/(N)=60/40の割合を超えて多くなると、加水分解が起きやすく耐侯性が低下するので、(L)成分と(N)成分の合計固形分量に対し40質量%を超えないようにすることが好ましい。より好ましくは、(L)/(N)=80/20〜100/0(質量比)の範囲内である。
ポリイソシアネートプレポリマー(M)としては、例えば、メチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートプレポリマー(M)は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
2液混合型ウレタンクリヤー塗料において、ポリイソシアネートプレポリマー(M)は、そのイソシアネート基当量(MI)の、水酸基含有アクリル樹脂(L)とポリラクトンポリオール(M)の合計水酸基当量(LOH)に対する比率が(MI)/(LOH)=1/0.3〜1/2.0となるように配合されていることが好ましく、1/0.5〜1/1.5となるように配合されていることがより好ましい。
イソシアネート基当量(MI)が前記範囲よりも少ないと、光劣化が生じやすく耐侯性が低下することになり、一方、イソシアネート基当量(MI)が前記範囲よりも多いと、復元力が不充分になり衝撃で生じた凹みを元の塗膜表面状態に戻すことができず耐擦傷性が低下することとなる。
2液混合型ウレタンクリヤー塗料における樹脂成分も、分子構造中に一般にソフトセグメントと呼ばれる構造単位−(CH2)n−が含まれているが、このソフトセグメントが多すぎると、塗膜の硬さや耐候性、耐薬品性が低下するおそれがあるので、その含有割合は、水酸基含有アクリル樹脂(L)とポリイソシアネートプレポリマー(M)の固形分全量に対して25質量%未満であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
2液混合型ウレタンクリヤー塗料には、必要に応じて、有機溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤等を適宜配合することができる。有機溶剤は、通常の塗料用有機溶剤が使用でき、例えば脂肪族系、脂環族系、芳香族系の炭化水素溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤などがあげられる。
アクリルメラミン型クリヤー塗料は、アクリル系モノマー等に代表されるラジカル重合性モノマーに硬化触媒としてメラミン・ホルムアルデヒド樹脂を添加した塗料である。
本発明の塗装方法の各工程における、塗装条件として例えば以下の条件が挙げられる。
電着塗装は、特に限定されることはなく、通常の電着塗装方法を適用することができる。
本発明では、電着塗膜を架橋硬化させた硬化塗膜面に第1中塗塗料を塗装する。第1中塗塗料をフォ−ドカップNo.4を用いて20℃で測定したときの粘度が20〜30秒となるようにシンナーで希釈し、それを、静電塗装、エアースプレー、エアーレススプレーなどにより塗装する。その膜厚は、硬化塗膜に基いて20〜50μm、特に30〜40μmであることが好ましい。
次いで第1中塗塗料を焼付け硬化させない状態で、ウエットオンウエット塗装で第2中塗塗料を塗装する。
第2中塗塗料の粘度を13〜25秒に調整し、それを静電塗装、エアースプレー、エアーレススプレーなどにより、未硬化の第1中塗塗膜上に塗装する。その膜厚は硬化塗膜に基いて20〜40μm、特に25〜35μmであることが好ましい。そして、室温で放置後、約120〜160℃の雰囲気中に10〜30分間保持して、第1中塗塗料及び第2中塗塗料を架橋硬化させる。これにより、第1中塗塗料を焼付け硬化させた後に第2中塗塗料焼付け硬化させた場合より、第1中塗塗膜の表面を平滑化することができるようになる。
次いで、硬化せしめた第2中塗塗料の塗膜面に、好ましい例として、水性ベース塗料を塗装する。塗料の粘度を50〜60秒に調整し、それを、静電塗装、エアースプレー、エアーレススプレーなどにより塗装する。その膜厚は硬化塗膜に基いて5〜40μm、特に10〜20μmであることが好ましく、そして室温で放置後、予備加熱する。予備加熱は、塗布された中塗塗膜が硬化しない条件下、例えば室温〜100℃未満の温度で1〜10分間放置または加熱する工程であり、予備加熱によって固形分量を調整等することができる。
予備加熱後に、ウエットオンウエットで該塗面にクリヤー塗料を塗装する。具体的には、ベース塗料を塗装し、室温またはその付近の温度で数分間放置してから、クリヤー塗料を塗装する。室温で放置後、約120〜160℃に加熱して架橋硬化させる。なお、ベース塗料の膜厚は硬化塗膜に基いて5〜40μm、特に10〜30μmであることが好ましく、クリヤー塗料の膜厚は硬化塗膜に基いて20〜60μm、特に30〜50μmであることが好ましい。
以上のように、第1中塗塗料を焼付け硬化させない状態で、ウエットオンウエット塗装で第2中塗塗料を塗装しても高外観の積層塗膜が得られることから、第1中塗焼付け工程の削減によるコストの低減と、積層塗膜の高外観の両立を図ることができる。
以上のようにして、本発明に係る積層塗膜を有する自動車車体が製造される。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。尚、「部」は「質量部」を意味する。
製造例1 カルボキシル基とカルボン酸無水物基とを含有するポリマーの製造
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えた3Lの反応槽に、キシレン700部、混合溶媒 ソルベッソ100(エクソン化学(株)製)350部仕込み、130℃に昇温した。この容器に滴下ロートを用い、スチレンモノマー300部、メタクリル酸2−エチルヘキシル109部、アクリル酸イソブチル325部、アクリル酸25.7部、無水マレイン酸240部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300部、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート150部とキシレン150部からなる溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後30分の間130℃で保持した後、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート20部及びキシレン20部からなる溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間、130℃にて反応を継続した後、溶剤1100部を蒸留し、不揮発分70%、数平均分子量2000のカルボキシル基とカルボン酸無水物基を含有するポリマー溶液(a−1)を得た。
製造例2 カルボキシル基とカルボン酸エステル基とを含有する酸基含有アクリル樹脂(A−1)の製造
製造例1で得たポリマー溶液(a−1)1590部に、トリエチルアミン2部、メタノール125部を加え、60℃で8時間反応させて、カルボキシル基とカルボン酸エステル基とを含有するポリマー溶液(A−1)を得た。このポリマー溶液(A−1)について、赤外線吸収スペクトルを測定し、酸無水物の吸収(1785cm−1)が消失するのを確認した。ポリマー溶液(A−1)の固形分酸価は、158(mgKOH/g)であった。
製造例3 エポキシ基当量50〜700であるエポキシ基含有アクリル樹脂(B―1)の製造
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えた3Lの反応槽に、キシレン700部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート525部を仕込み、130℃に昇温した。上記の容器に、滴下ロートを用い、スチレンモノマー200部、メタクリル酸グリシジル229部、アクリル酸4−ヒドロシキブチル231部、メタクリル酸シクロヘキシル340部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート120部、及びキシレン200部とからなる溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後30分間にわたり130℃に保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部及びキシレン50部からなる溶液を30分間滴下した。この滴下終了後、更に1時間の間130℃にて反応を継続させた後、溶剤1200部を蒸留し、不揮発分77%、数平均分子量1800、エポキシ基当量625、水酸基当量623の水酸基とエポキシ基とを含有するポリマー溶液(B−1)を得た。
製造例4 酸価が50〜350mgKOH/g(固形分)であるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D−1)の製造
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管、水分離機、精留塔を備えた反応槽に、アゼライン酸183部、イソフタル酸285部、トリメチロールプロパン221部、カージュラE(シェル化学(株)製)110部、ネオペンチルグリコール290部を仕込み、加熱した。原料が融解し攪拌が可能となった後、ジブチル錫オキサイド0.2部を投入して攪拌を開始し、昇温速度を一定に保ちながら3時間かけて反応槽温度を180℃から220℃まで昇温した。この間に生成する縮合水は系外へ留去した。220℃に達したところで反応液を220℃で1時間保温した。その後反応槽内に還流溶剤としてキシレン30部を徐々に添加し、溶剤存在下の縮合に切り換えて反応を続けた。樹脂酸価が1以下に達したところで150℃に冷却し、ヘキサヒドロ無水フタル酸238部を滴下し、赤外線吸収スペクトルを測定して酸無水物基の吸収(1785cm-1)が消失するまで保温した後、100℃まで冷却した。更に、キシレン383部を加え、不揮発分75%、数平均分子量1100、酸価70(mgKOH/g)、水酸基価200(mgKOH/g)のポリエステル樹脂溶液(D−1)を得た。
実施例1
(1)塗料の調製
製造例2で得られた樹脂(A−1)、製造例3で得られた樹脂(B−1)、製造例4で得られた樹脂(D−1)、及び表1の顔料を表1に示す割合で混合して、シンナー(日本ペイント(株)製のN175/N150=5/5)で、粘度が18秒になるように希釈し、第1層用及び第2層用の中塗塗料を調製した。
ベース塗料としては、ブラックの光輝性顔料を含有する溶剤ベース塗料(日本ペイント(株)製SP M−180ブラック)をシンナー(日本ペイント(株)製のN271/N103=30/70(質量比))で粘度が12秒になるように希釈したものを準備した。
クリヤー塗料としては、2液混合型ウレタンクリヤー塗料(日本ペイント(株)製スーパーラック0−1200クリヤー)をシンナー(日本ペイント(株)製N1297)で粘度が18秒になるように希釈したものを準備した。
(2)塗膜形成及び評価
ダル鋼板に対して、サーフダインSD2000(日本ペイント(株)製)を用いて前処理し、次いで、パワーニックスPN1030(日本ペイント(株)製カチオン電着塗料)を用いて、乾燥膜厚が20μmになるような電着塗装し、170℃で30分間焼付けた。
次いで回転霧化塗装で、第1層用の中塗塗料を膜厚35μmで塗装した。更に、ウエットオンウエットで該塗面に回転霧化塗装で、第2層用の中塗塗料を膜厚30μmで塗装した。その後、140℃で20分間焼付けて、第1中塗塗膜及び第2中塗塗膜を形成した。
次いで、エアスプレー塗装で、溶剤ベース塗料を膜厚15μmで塗装し、60℃で3分間予備加熱し、ウエットオンウエットで該塗面にクリヤー塗料をエアスプレー塗装にて膜厚40μmで塗装した後、140℃で20分間焼付け、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を形成した。
得られた多層塗膜について、以下の測定及び試験を行い、表1の結果を得た。塗膜外観の鮮映性は、ビッグ・ケミー(株)製WAVE SCAN DOIを使用し、長波長(Lw)を平滑感、短波長(Sw)をツヤ感として評価した。当該長波長(Lw)は、600μm以上10000μm以下の波長領域での凹凸の大きさを表わすものであり、数値が小さいほど平滑感が高いことを意味する。一方、当該短波長(Sw)は、80μm以上600μm未満の波長領域での凹凸の大きさを表すものであり、数値が小さいほどツヤ感が高いことを意味する。
さらに、平滑感、ツヤ感について、目視評価も行なった。尚、表1において、各記号は以下の意味を有する。
◎:歪みがない。
○:殆んど歪みがない。
△:少し歪みがある。
×:かなりの歪みがある。
実施例2
クリヤー塗料として、酸エポキシクリヤー塗料(日本ペイント(株)製スーパーラック0−590クリヤー)をシンナー(日本ペイント(株)製N1297)で粘度が18秒になるように希釈したものを使用したほかは、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成し、表1の結果を得た。
実施例3
クリヤー塗料として、アクリルメラミンクリヤー塗料(日本ペイント(株)製スーパーラック0−80クリヤー)をシンナー(日本ペイント(株)製N1297)で粘度が18秒になるように希釈したものを使用したほかは、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成し、表1の結果を得た。
実施例4
ベース塗料として、ブラックの光輝性顔料を含有する水性ベース塗料(日本ペイント(株)製AR−2200ブラック)を脱イオン水で粘度が60秒になるように希釈したものを使用したほかは、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成し、表1の結果を得た。
実施例5〜8
第1中塗塗料、第2中塗塗料の組成を表1に示すものとしたほかは、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成し、表1の結果を得た。
実施例9
第1中塗塗料及び第2中塗塗料の膜厚を、それぞれ25μm、20μmとしたほかは、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成し、表2の結果を得た。
実施例10〜12及び比較例1,3
第1中塗塗料、第2中塗塗料の組成、及び第1中塗塗料及び第2中塗塗料の膜厚を、それぞれを表2に示すものとしたほかは、実施例1と同様にして多層塗膜を形成し、表2の結果を得た。
比較例2
第1中塗塗料、第2中塗塗料の組成を表1に示すものとし、さらに、第1層用の中塗塗料を膜厚35μmで塗装し、140℃で20分間焼付け、その後に、第2層用の中塗塗料を膜厚30μmで塗装し、140℃で20分間焼付けたほかは、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成し、表2の結果を得た。
比較例4
第1層用の中塗塗料のみを使用し、第2中塗塗料を使用しなかったほかは、実施例1と同様にして、多層塗膜を形成し、表2の結果を得た。
Figure 0005491303
Figure 0005491303
上記の実施例及び比較例の結果から、本発明の積層塗膜によれば、下地隠蔽性に優れ、高外観性を有する自動車車体の塗膜を得ることができることがわかった。
本発明によれば、下地隠蔽性に優れ、高外観性を有する積層塗膜を形成することができるので、自動車車体の塗装方法として好ましく用いることができる。

Claims (8)

  1. 金属基材上に、電着塗膜、第1中塗塗膜、第2中塗塗膜、ベース塗膜、クリヤー塗膜をこの順で積層した自動車車体の積層塗膜であって、
    前記第1中塗塗膜を構成する第1中塗塗料、及び、前記第2中塗塗膜を構成する第2中塗塗料は、酸価が50〜300mgKOH/g(固形分)であるカルボキシル基とカルボン酸エステル基を含有するアクリル樹脂(A)、エポキシ基当量が50〜700であるエポキシ基含有アクリル樹脂(B)を含有する酸エポキシ硬化型中塗塗料であり、
    前記第1中塗塗料は、顔料(C1)として着色顔料及び体質顔料を含有し、
    前記第2中塗塗料は、顔料を含有しない又は顔料(C2)として体質顔料のみを含有することを特徴とする自動車車体の積層塗膜。
  2. 前記第1中塗塗料及び/又は前記第2中塗塗料が更に、酸価が50〜350mgKOH/g(固形分)であるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(D)を含有することを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の積層塗膜。
  3. 前記第1中塗塗料の着色顔料及び体質顔料の濃度(PWC)がそれぞれ15〜50質量%及び0を超え〜35質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車車体の積層塗膜。
  4. 前記第2中塗塗料の体質顔料の濃度(PWC)が0〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車車体の積層塗膜。
  5. 前記ベース塗膜を構成するベース塗料が、溶剤ベース塗料又は水性ベース塗料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動車車体の積層塗膜。
  6. 前記クリヤー塗膜を構成するクリヤー塗料が、酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、2液混合型ウレタンクリヤー塗料又はアクリルメラミン型クリヤー塗料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自動車車体の積層塗膜。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の自動車車体の積層塗膜を形成する塗装方法であって、
    電着塗膜を形成した金属基材上に、第1中塗塗料を塗布して未硬化の第1中塗塗膜を形成する工程、
    次いでウエットオンウエット塗装で第2中塗塗料を塗布し、焼付け硬化して第1中塗塗膜及び第2中塗塗膜を形成する工程、
    この工程の後にベース塗料を塗布して未硬化のベース塗膜を形成する工程、
    次いでウエットオンウエット塗装でクリヤー塗料を塗布し、焼付け硬化してベース塗膜及びクリヤー塗膜を形成する工程、
    を包含することを特徴とする自動車車体の塗装方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の積層塗膜を有する自動車車体。
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