JP5488335B2 - 廃電池の放電終了の判断方法及び判断装置 - Google Patents

廃電池の放電終了の判断方法及び判断装置 Download PDF

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Description

本発明は、使用済み電池又は電池製造時に不良品であるとして廃棄される電池(以下、一括して廃電池という)に残留する電荷の放電終了を判断する方法に関する。
一般に、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の電池は、コバルトやニッケル等の希少資源をはじめとする有価物を使用していることから、電池自体の寿命がきたり、製造工程で不良品と判断されたりして、廃棄の必要が生じた場合には、回収され、再資源化される。廃電池からの有価物の回収方法は、従来から種々、提案されており、例えば、廃電池を焙焼することにより各種有価金属を分離回収する方法や、廃電池を解体することにより各種有価金属だけでなく、有機電解液等の各種部材も回収可能な方法がある。
しかしながら、前者においては、可燃性の有価物の回収が不可能である。また、後者においては、廃電池内に多量の電荷が残留していると、解体時に短絡が発生し、爆発等の危険性がある。廃電池からの有価物の回収は、安全に行えることが望ましい。そこで、かかる問題点を解決するために、解体前にあらかじめ廃電池を、導電性を有する液体に浸漬させて放電する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、廃電池を、アルカリ金属弱酸塩を溶解した水溶液中に浸漬して放電する方法が開示されている。
特開2005−347162号公報
ところで、特許文献1には、気体発生の有無により、放電終了を知ることができる旨が記載されている。しかしながら、発生した気体の濃度と廃電池の残留電圧との関係、すなわち発生した気体の濃度と放電終了との関係については記載も示唆もされていない。事実、特許文献1に記載された方法では、廃電池の放電状況を精度良く把握することができず、放電終了を的確に判断できないことから、最終的には、その後の破砕処理において破裂や発火等を生じさせないように、多量の廃電池について個々に残留電圧を測定し、内部電圧が安全なレベル以下にまで低下していることを確認するという煩雑かつ非効率な作業を行っている。なお、このような煩雑な作業を避けるために、過剰な時間をかけて放電処理を行うことも可能であるが、時間、場所、設備等を無駄に使用することになり、やはり効率的に放電処理を進めることはできない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、廃電池に残留する電荷の放電状況を精度良く把握することができ、個々の廃電池の残留電圧を測定することなく放電終了の的確な判断が可能な、効率の良い廃電池の放電終了の判断方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねたところ、廃電池を、導電性を有する液体に浸漬させて放電する際に、放電に伴って発生する水素ガスの濃度が、放電の進行に伴い、低減することに気付いた。そこで、更に研究を進めたところ、上記水素ガスの濃度を測定することにより、廃電池に残留する電荷の放電状況を精度良く把握することができ、放電終了の的確な判断が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下のようなものを提供する。
(1) 廃電池を、導電性を有する液体に浸漬させた後、当該液体から発生する水素ガスの濃度を測定することにより、上記廃電池に残留する電荷の放電終了を判断することを特徴とする廃電池の放電終了の判断方法。
(2) 上記導電性を有する液体に浸漬させた廃電池に振動を与える(1)に記載の廃電池の放電終了の判断方法。
(3) 上記廃電池は、リチウムイオン二次電池である(1)又は(2)に記載の廃電池の放電終了の判断方法。
(4) 導電性を有する液体を貯えた廃電池浸漬槽と、当該廃電池浸漬槽内の上記導電性を有する液体から発生する水素ガスの濃度を検知する水素ガス濃度検知器と、当該水素ガス濃度検知器に検知された水素ガスの濃度に基づいて、廃電池の放電終了を判断する放電終了判断手段と、を備え、上記水素ガス濃度検知器が、上記廃電池浸漬槽の空間部に設けられていることを特徴とする廃電池の放電終了判断装置。
本発明の廃電池の放電終了の判断方法によれば、廃電池に残留する電荷の放電状況を精度良く把握することができるので、個々の廃電池の残留電圧を測定することなく、放電終了の的確な判断が可能であり、効率が良い。
試験例1に用いた廃電池の放電終了判断装置を示す略図である。 試験例1における水素ガス濃度及び残留電圧の変化を示す図である。 試験例2及び3に用いた廃電池の放電終了判断装置を示す略図である。 試験例2における水素ガス濃度及び残留電圧の変化を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本発明の廃電池の放電終了の判断方法(以下、判断方法という)は、廃電池を、導電性を有する液体(以下、導電性液体という)に浸漬させた後、当該導電性液体から発生する水素ガスの濃度を測定することにより、上記廃電池に残留する電荷の放電終了を判断することを特徴とする。廃電池を導電性液体に浸漬させると、廃電池の残留電圧により電気分解が起こり、導電性液体から水素ガスや酸素ガスが発生する。本発明は、これらの発生ガスのうち、大気中にほとんど存在しない水素ガスに注目し、その濃度を測定したところ、廃電池の放電反応の進行に伴い、水素ガスの濃度が低下し、廃電池に残留する電荷が安全に破砕処理可能な程度にまで放電された時点では、水素ガスの発生が検知されなくなることを見出し、なされたものである。本発明によれば、廃電池を浸漬させた導電性液体から発生する水素ガスの濃度を測定することで、廃電池に残留する電荷の放電状況を精度良く把握することができ、廃電池の放電終了を的確に判断することができるので、廃電池の残留電荷が安全に破砕処理可能な程度にまで放電するために、多量の廃電池に対して個々に残留電圧を測定し、内部電圧が安全なレベル以下にまで低下していることを確認するという煩雑かつ非効率な作業が必要としない。また、放電処理に過剰な時間をかけたりする必要がないので、時間、場所、設備等を無駄に使用することがなく、更に、導電性液体への電解質の溶出量を最小限に抑えることができるので、導電性液体の繰り返し使用が可能となり、廃水負荷やコスト低減を実現することができる。
本発明において、放電終了とは、廃電池に残留する電荷が安全に破砕処理可能な程度にまで放電されたことを意味する。例えば、廃電池の残留電圧が1.8V以下であれば、破裂や発火等を生じることなく、安全に破砕処理することができる(参考文献:特願平7−105451号公報)。また、本発明において、廃電池とは、使用済み電池又は電池製造時に不良品等であるとして廃棄される電池であって、通常、内部に電荷が残留しているものをいう。ここで、使用済み電池には、電池自体の寿命や故障だけでなく、該電池を使用した機器の寿命や故障により、使用終了であると判断された電池も含まれる。本発明の対象となる電池の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、小型シール鉛電池等の二次電池が挙げられる。これらの中でも、本発明の放電方法は、解体前の放電の必要性が特に高いリチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等への適用が好ましい。
本発明において、廃電池を浸漬させる導電性液体は、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、硫酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等の伝導度が10Ω−1cm−1以上の液体が好ましい。本発明では、これらの中でも塩化ナトリウム水溶液がより好ましい。例えば、伝導度が高い硫酸水溶液や水酸化ナトリウム水溶液を用いると、大きな電流が流れ、放電処理が短時間で完了するが、短時間における発熱量も大きくなり過熱や突沸の恐れも増加する等、取り扱い時の危険性が高く、また、廃棄には中和処理が必要であるため、コスト的なデメリットも生じることとなる。更に、伝導度が高いと電極の腐食も進行し易いので、導電性液体の劣化も進行し易くなる。これに対して、塩化ナトリウム水溶液は、本発明に有効かつ適度な伝導度を有し、かつ、入手や取り扱いが容易である点においてより好ましい。上記導電性液体の濃度は、高いほど伝導度が高くなり、放電性能が向上するため好ましいが、高すぎると過剰性能でコスト高となるため好ましいとはいえない。したがって、上記導電性液体の濃度は、放電性能とコストとを考慮し、適宜、設定するとよい。なお、上記導電性液体として、塩化ナトリウム水溶液を用いた場合には、0.5mol/L程度の濃度であれば、放電反応が十分に進行し、かつ、短時間で放電処理を完了させることができる。
本発明の判断方法では、上記導電性液体に浸漬させた廃電池に対して振動を与えることが好ましい。なお、ここでいう振動には、超音波付加による振動も含まれる。例えば、廃電池を浸漬させた導電性液体ごと超音波洗浄器に入れて超音波を付加する方法が挙げられる。導電性液体に廃電池を浸漬させる放電処理方法では、外装缶、正極端子に由来する沈殿物が生じる場合がある。例えば、廃電池の外装缶が鉄である場合、この鉄が溶出し、水酸化鉄の沈殿物が生じる場合がある。このような沈殿物に廃電池の電極表面が覆われると放電反応が停滞し、水素ガスが発生し難くなり、誤って放電が終了したと判断する可能性が生じ得る。また、発生した水素ガスが廃電池の電極表面に付着することで、放電反応が停滞する可能性がある。更に、発生した水素ガスが廃電池の外側に付着し、発生した水素ガスを精度良く測定することができない場合もある。その他、正極の端子部に孔が設けられている電池では、発生した水素ガスが孔に溜まることで放電反応が停滞する可能性もある。本発明では、上記導電性液体に浸漬させた廃電池に対して振動を与えることにより、廃電池の電極表面が沈殿物や発生した水素ガスに覆われることを防いだり、廃電池の外側に付着した水素ガスを離脱させたり、その他何らかの原因で停滞した放電反応を活性化させることで、より確実に放電終了を判断することが可能となる。
本発明の判断方法では、導電性液体に浸漬させた廃電池に対して振動を与える以外に、廃電池を浸漬させた導電性液体を攪拌又は循環させてもよい。導電性液体の攪拌又は循環によっても、廃電池を振動させた場合と同様に、廃電池の電極表面が沈殿物や発生した水素ガスに覆われることを防いだり、また、廃電池の外側だけでなく、容器の内壁に付着した水素ガスも離脱させたりすることもできるので、発生した水素ガスを精度良く測定することができ、より確実に放電終了を判断することが可能となる。なお、廃電池を浸漬させた導電性液体の攪拌又は循環は、放電時間の短縮が図れる点においても好ましい。
本発明の判断方法は、廃電池の放電状態と水素ガスの濃度との間に相関性があることを見出した点に特徴がある。ここで、水素ガスの濃度は、放電条件により変動するものである。水素ガスの濃度の変動要因としては、例えば、装置の構成、導電性液体の種類、濃度、量等、廃電池の数、放電温度、廃電池に対する振動の有無、導電性液体の攪拌又は循環の有無、水素ガスの濃度を測定する際に採取する気体のサンプリング量等が挙げられる。したがって、本発明の判断方法では、少なくとも上記変動要因については一定の条件となるように設定した環境下で、導電性を有する液体に廃電池を浸漬させ、当該液体から発生する水素ガスの濃度を測定し、廃電池に残留する電荷が安全に破砕処理可能な程度にまで放電された時点における水素ガスの濃度をあらかじめ調べておく。そうすることで、その後は、同じ条件下で測定する限りにおいては、あらかじめ調べた水素ガスの濃度を指標に、発生する水素ガスの濃度から廃電池の放電終了を判断することができるので、放電処理後の多量の廃電池に対して個々に残留電圧を測定し、内部電圧が安全なレベル以下にまで低下していることを確認するという煩雑かつ非効率な作業が不要となる。廃電池の放電が終了したか否かという判断は、特に限定されるものではなく、例えば、以下の基準による。水素ガスの検知濃度がある一定時間ある値以下を示したこと、水素ガスの検知濃度がある一定時間ゼロを示したこと、廃電池1個当たりに換算した水素ガスの検知濃度がある一定時間ある値以下を示したこと等を基準に判断すればよい。
本発明の方法により放電処理された廃電池は、安全に破砕処理可能な程度にまで放電されているため、上記導電性液体から取り出して水洗した後は、すぐに解体し、各種有価金属や有機電解液等の各種部材を回収することができる。
次に、本発明の廃電池の放電終了の判断装置(以下、判断装置という)について説明する。
本発明の判断装置は、廃電池浸漬槽と、水素ガス濃度検知器と、放電終了判断手段とを備えることを特徴とする。廃電池浸漬槽は、導電性液体を貯えたものであり、水素ガス濃度検知器は、廃電池浸漬槽内の導電性液体から発生する水素ガスの濃度を検知するものであり、放電終了判断手段は、水素ガス濃度検知器に検知された水素ガスの濃度に基づいて、廃電池の放電終了を判断するものである。そして、上記水素ガス濃度検知器は、上記廃電池浸漬槽の導電性液体が存在しない気相部である空間部に設けられている。
図1は、本発明の一実施形態に係る判断装置であり、後述する実施例の試験例1にて使用する判断装置を示す図である。図1において、環状プレート12を備えるビーカー11は、前述の導電性液体を貯えた廃電池浸漬槽である。水素ガス検知器13は、前述の水素ガス濃度検知器であり、センサー部14を備えている。データ処理装置15は、前述の放電終了判断手段である。ここで、環状プレート12は、ビーカー11の上蓋であって、一部に水素ガス検知器13のセンサー部14をビーカー11内の導電性液体が存在しない気相部である空間部に挿入するための開口部を有する。水素ガス検知器13は、データ処理装置15に接続されている。
本発明の一実施形態に係る判断装置では、導電性液体を貯えたビーカー11に廃電池10を入れると放電反応が起こり、導電性液体から水素ガスが発生する。発生した水素ガスは、ビーカー11と環状プレート12とにより形成された空間部のうち、導電性液体が存在しない気相部である空間部に移行する。この移行した水素ガスは、空間部に設けられた水素ガス検知器13のセンサー部14で濃度を検知される。検知された水素ガス濃度の測定データは、データ処理装置15に送信され、あらかじめ測定した放電終了時の水素ガス濃度に基づいて、廃電池10の放電終了が判断される。
本発明の一実施形態に係る判断装置によれば、導電性液体を貯えたビーカー11に廃電池10を入れ、導電性液体から発生した水素ガスを、ビーカー11と環状プレート12とにより形成された空間部のうち、導電性液体が存在しない気相部である空間部に移行させ、大気中への拡散が抑制された状態の水素ガスを水素ガス検知器13のセンサー部14に検知させるので、より精度良く濃度を測定することができる。また、本発明の一実施形態に係る判断装置によれば、検知された水素ガス濃度の測定データをデータ処理装置15に送信するので、発生した水素ガスを連続的に或いは一定時間毎に検知することができ、放電状況をより精度良く把握することが可能となる。そして、あらかじめ測定した放電終了時の水素ガス濃度をデータ処理装置15に入力しておくことで、廃電池10の放電終了を判断させ、アラーム等で放電終了を知らせることも可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良等は、本発明に含まれるものである。
例えば、廃電池10の電極表面やビーカー11の内壁への水素ガスの付着、廃電池10への沈殿物の被覆等により放電反応が停滞し、水素ガス測定精度が低下することを防止するために、廃電池10及び/又はビーカー11に振動を与えたり、ビーカー11内の導電性液体を攪拌又は循環させたりする手段を更に備えていてもよい。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
<試験例1>
1本の廃電池を浸漬させた導電性液体から発生する水素ガス濃度及び上記廃電池の残留電圧の変化を確認した。なお、試験には、図1に示す放電処理システムを用いた。
容量1リットルのビーカー11に、濃度1mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を800ml入れた後、残留電圧が2.5Vのリチウムイオン電池の廃電池10を1本投入した。ここで、塩化ナトリウム水溶液の温度は、室温とした。
次いで、中心部が開口した環状プレート12(開口部の内径:3cm)をビーカー11の上蓋として取り付け、開口部以外からのガスや液体の出入りが生じないようにビーカーの口を塞いだ後、開口部に、水素ガス検知器13(商品名:高感度可燃性ガス検知器 コスモテクター XP−3160,水素ガス濃度の表示方法:液晶デジタル表示,新コスモス電機株式会社製)を取り付けた。この際、水素ガス検知器13を、センサー部14の先端1cm程度が開口部からビーカー11内に挿入されている状態となるように取り付けることで、ビーカー11内で発生し、外部に流出する水素ガス濃度を検知できるようにした。そして、水素ガス検知器13が検出した水素ガス濃度を経時的に測定した。なお、水素ガス検知器13に表示される水素ガス濃度は、ビーカー11内の反応により細かく変動するため、測定時間を30秒間に区切り、30秒間の水素ガスの最大濃度と最小濃度とを測定し、これらの中間値をその時間域での水素ガス濃度とした。気体のサンプリング量については一定(1リットル/30秒間)とした。また、定期的に上蓋を外し、廃電池10を取り出して、正極及び負極にかかる電圧をテスター(商品名:CDM−12D,CUSTOM社製)にて測定し、廃電池中の残留電圧の変化を調べた。試験例1の結果を図2に示す。
図2に示すように、水素ガス濃度及び廃電池中の残留電圧は、時間の経過とともに低下し、電池を破砕したとしても問題無いレベル(1.8V以下)である1.2V程度まで残留電圧が低下した時点では、水素ガスが検出されない状況となることが確認された。
<試験例2>
10本の廃電池を浸漬させた導電性液体から発生する水素ガス濃度及び上記廃電池の残留電圧の変化を確認した。なお、試験には、図3に示す放電処理システムを用いた。なお、図3において、前記試験例1と同一又は類似の構成には、前記試験例1と同一の符号を付している。
容量1リットルのビーカー11に、濃度1mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を800ml入れた後、ネットに入れた残留電圧が4V程度のリチウムイオン電池の廃電池10を10本投入し、試験例1と同様に、ビーカーの上蓋として取り付けた環状プレート12の開口部に、水素ガス検知器13を取り付けた。
そして、水素ガス検知器13が検出した水素ガス濃度を経時的に測定した。なお、水素ガス検知器13に表示される水素ガス濃度は、ビーカー11内の反応により細かく変動するため、測定時間を30秒間に区切り、30秒間の水素ガスの最大濃度と最小濃度とを測定し、これらの中間値をその時間域での水素ガス濃度とした。気体のサンプリング量については一定(1リットル/30秒間)とした。また、定期的に上記上蓋を外し、廃電池10を取り出して、正極及び負極にかかる電圧をテスターにて測定し、廃電池中の残留電圧の変化を調べた。ここで、残留電圧は、投入した廃電池10の全てについて個々に測定し、その中の最大値で評価した。試験例2の結果を図4に示す。
図4に示すように、水素ガス濃度及び廃電池中の残留電圧は、時間の経過とともに低下し、電池を破砕したとしても問題無いレベルである1.2V程度まで残留電圧が低下した時点では、水素ガスが検出されない状況となることが確認された。
<試験例3>
試験例2において、水素ガス検知器13が検出した水素ガス濃度が0ppmを示した後、10分毎に廃電池を入れたネットを数回振り、廃電池に対して振動を与え、水素ガス濃度及び廃電池中の残留電圧を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0005488335
表1に示すように、水素ガス濃度が0ppmを示した後、廃電池に振動を与えると、再び、水素ガス検知器の検出値が上昇した。これは、廃電池に振動を与えることで、廃電池の電極表面或いは内部に付着していた水素ガスが離れ、停滞していた放電反応が活性化されたためと考えられる。
その後も同様に、廃電池に振動を与える操作を行ったところ、あるタイミングから水素ガス濃度センサーの値が0ppmの状態から変動しなくなった。そして、この時点では、10本の廃電池の全てが、破砕したとしても問題無いレベルである1V未満の残留電圧を示していた。
試験例1及び2の結果より、廃電池を浸漬させた塩化ナトリウム水溶液から放出された水素ガス濃度を測定することで、放電反応の進行の程度を把握できることが確認された。また、試験例3の結果より、廃電池に対して振動を与えることで、放電反応が終了する時点をより正確に判断できることが確認された。これらの結果から、本発明の廃電池の放電終了の判断方法を放電の終点管理に活用できることが明らかとなった。
10 廃電池
11 ビーカー
12 環状プレート
13 水素ガス検知器
14 センサー部
15 データ処理装置
16 ネット

Claims (4)

  1. 廃電池を、導電性を有する液体に浸漬させた後、当該液体から発生する水素ガスの濃度を測定することにより、前記廃電池の放電状態と前記水素ガス濃度との相関性をあらかじめ求めておき、所定の水素ガス濃度以下の場合に、前記廃電池に残留する電荷の放電終了を判断することを特徴とする廃電池の放電終了の判断方法。
  2. 前記導電性を有する液体に浸漬させた廃電池に振動を与える請求項1に記載の廃電池の放電終了の判断方法。
  3. 前記廃電池は、リチウムイオン二次電池である請求項1又は2に記載の廃電池の放電終了の判断方法。
  4. 導電性を有する液体を貯えた廃電池浸漬槽と、当該廃電池浸漬槽内の前記導電性を有する液体から発生する水素ガスの濃度を検知する水素ガス濃度検知器と、当該水素ガス濃度検知器に検知された水素ガスの濃度に基づいて、前記廃電池の放電状態と前記水素ガス濃度との相関性をあらかじめ求めておき、所定の水素ガス濃度以下の場合に、廃電池の放電終了を判断する放電終了判断手段と、を備え、
    前記水素ガス濃度検知器が、前記廃電池浸漬槽の空間部に設けられていることを特徴とする廃電池の放電終了の判断装置。
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