JP5487948B2 - 多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体 - Google Patents

多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体 Download PDF

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Description

本発明は、高速フレーム溶射法によって形成された溶射層を有する多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体に関する。
従来から、車両の排気ガスを浄化する触媒を担持する触媒担体として、多孔質基材が用いられている。この多孔質基材は、通常ハニカム状であって、多孔質基材の表面の一部には、正電極または負電極となる電極層が設けてある。電極層を介して多孔質基材に電力を供給し、多孔質基材を通電加熱することによって、多孔質基材に担持される触媒を暖め活性化することができる。よって、内燃機関の始動直後など、排気ガスの温度が低い場合に、触媒が活性化するまでの時間を短縮することができる。
この多孔質基材は、高温の排気ガスの通路で使用されるので、排気ガスに対する耐熱性や、加熱や冷却に対する耐熱衝撃性、車両振動等に対する機械的強度に優れた材料からなる。また、多孔質基材は、通電加熱されるので、適切な電気抵抗率を有する材料からなる。具体的な材料としては、例えば炭化ケイ素(SiC)やコージェライト(2MgO・2Al・5SiO)などのセラミックス材料が挙げられる。
ところで、多孔質基材の表面の一部に電極層などの機能層を形成する方法としては、例えばメッキ法、CVD法、PVD法、溶射法などがある。溶射法は、他の成膜法に比べて、成膜速度が速いので、厚い機能層を形成するのに適している。
溶射法としては、例えば粉末式フレーム溶射法、プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法などがある。これらの溶射法の中でも、高速フレーム溶射法は、溶射ガンにより溶射される溶射粒子の速度が速く、且つ、溶射粒子の温度が低いので、厚くて緻密な機能層を形成するのに適している(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−183805号公報
しかしながら、高速フレーム溶射法は、溶射ガンにより溶射される溶射粒子の速度が速いので、溶射粒子が多孔質基材に衝突する時の衝撃が大きい。このため、多孔質基材がセラミックス材料などの脆性材料からなる場合に、多孔質基材が損傷することがある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高速フレーム溶射法によって溶射層を形成する際に溶射粒子の衝突時の衝撃によって多孔質基材が損傷するのを抑制することができる多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明の多孔質構造体の製造方法は、
脆性材料からなる多孔質基材の表面の少なくとも一部に、該多孔質基材を補強する補強層を形成する補強層形成工程と、
形成した該補強層の表面の少なくとも一部に、高速フレーム溶射法により溶射層を形成する溶射層形成工程とを有する。
また、本発明の多孔質構造体は、
脆性材料からなる多孔質基材の表面の少なくとも一部に、該多孔質基材を補強する補強層を設け、さらに、該補強層の表面の少なくとも一部に、高速フレーム溶射法により形成される溶射層を設けたものである。
本発明によれば、高速フレーム溶射法によって溶射層を形成する際に溶射粒子の衝突時の衝撃によって多孔質基材が損傷するのを抑制することができる多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体を提供することができる。
本発明の一実施形態における多孔質構造体の断面図である。 本発明の一実施形態における多孔質構造体の製造方法の工程図である。
以下、図面を参照し、本発明を実施するための形態について説明する。
はじめに、多孔質構造体について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における多孔質構造体の断面図である。図1に示すように、多孔質構造体10は、脆性材料からなる多孔質基材12の表面の少なくとも一部に、多孔質基材12を補強する補強層14を設け、さらに、補強層14の表面の少なくとも一部に、高速フレーム溶射法により形成される溶射層16を設けたものである。多孔質基材12は、例えば触媒を担持する触媒担体であって良く、この場合、補強層14および溶射層16は、多孔質基材12を通電加熱するための電極層であって良い。この電極層には、電極端子18が埋設してあって良い。電極端子18などを介して多孔質基材12に電力を供給し、多孔質基材12を通電加熱することによって、多孔質基材12に担持される触媒を暖め活性化することができる。以下、各構成について詳説する。
(多孔質基材)
多孔質基材12は、内部に孔を有する固体である。例えば、多孔質基材12は、図1に示すように、ハニカム状であって良く、この場合、リブ(隔壁)122で取り囲まれる複数のセル(貫通孔)124を有する。各セル124の断面形状は、例えば図1に示すように四角形状であっても良いし、六角形状であっても良く、特に限定されない。
多孔質基材12は、使用環境に応じた材料からなる。例えば、多孔質基材12は、高温環境で使用される場合、耐熱性に優れた材料からなる。また、多孔質基材12は、加熱や冷却を繰り返す環境で使用される場合、耐熱衝撃性に優れた材料からなる。
例えば、多孔質基材12は、高温の排気ガスの通路で使用される場合、排気ガスに対する耐熱性や、加熱や冷却に対する耐熱衝撃性、車両振動等に対する機械的強度に優れた材料からなる。また、多孔質基材12は、通電加熱される場合、適切な電気抵抗率を有する材料からなる。具体的な材料としては、例えば炭化ケイ素(SiC)やコージェライト(2MgO・2Al・5SiO)などのセラミックス材料が挙げられる。炭化ケイ素は、コージェライトよりも、融点が高いので耐熱性に優れている。一方、コージェライトは、炭化ケイ素よりも、熱膨張係数が小さいので耐熱衝撃性に優れており、また、比重が軽い。
多孔質基材12は、車両の排気ガスを浄化する触媒を担持する触媒担体であって良い。触媒には、一般的なものが用いられ、例えば、三元触媒、酸化触媒、NOx選択還元触媒、NOx吸蔵還元触媒などが用いられる。これらの触媒は、多孔質基材12のセル124の内壁面に成膜され、担持される。担持された触媒は、セル124内を通過する排気ガス中の窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などを浄化する。
多孔質基材12の製造方法は、一般的なものであって良い。例えば、多孔質基材12の製造方法は、粉末状の脆性材料にバインダーや水を混ぜた混練材を押出機によってハニカム状に押出成形し、乾燥した後に、焼結する方法がある。焼結する代わりに、成形体の粒子の隙間に脆性金属材料を溶融含浸する方法もある。具体的には、炭化ケイ素粉末およびカーボン粉末からなるハニカム状の成形体に、金属ケイ素を溶融含浸する方法などがある。この方法では、溶融含浸した金属ケイ素は、大部分が成形体中のカーボン粉末と反応して粉末状の炭化ケイ素となり、残部が粉末状の炭化ケイ素を結合する母材(マトリックス)となる。
(補強層)
補強層14は、多孔質基材12を補強するものである。補強層14は、溶射層16の下地として形成され、溶射層16を形成する際に溶射粒子の衝突時の衝撃によって多孔質基材12が損傷するのを抑制する。補強層14は、単層または複数層からなる。
補強層14の材料は、多孔質基材12の用途や材料、溶射層16の機能や材料に応じて適宜選定されるが、溶射層16の材料と同一であることが好ましい。補強層14と溶射層16との親和性や密着性を向上できるからである。なお、補強層14が複数層である場合、少なくとも溶射層16に接する側の層の材料が、溶射層16の材料と同一であれば、上記効果が得られる。
また、補強層14の材料は、展性を有する金属材料であることが好ましい。溶射層16を形成する際に、溶射粒子の衝突時の衝撃を吸収するように塑性変形することができ、多孔質基材12が損傷するのを効果的に抑制することができるからである。なお、補強層14が複数層である場合、少なくともいずれか一層の材料が展性を有する金属材料であれば、上記効果が得られる。
補強層14の層厚は、5μm以上であることが好ましい。5μm未満の場合、十分な補強効果を得ることができない。また、補強層14の層厚は、補強層14をプラズマ溶射法により形成する場合、300μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。300μmを超える場合、溶射粒子の熱収縮に起因する残留応力が大き過ぎ、多孔質基材12が損傷する。さらに、補強層14の層厚は、補強層14を粉末式フレーム溶射法により形成する場合、300μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。300μmを超える場合、溶射粒子の熱収縮に起因する残留応力が大き過ぎ、多孔質基材12が損傷する。
(溶射層)
溶射層16は、補強層14と協働して、多孔質基材12に所定の機能を付与する機能層である。例えば、溶射層16は、補強層14と協働して、多孔質基材12を通電加熱するための電極層(正電極層または負電極層)として機能する。
溶射層16の材料は、多孔質基材12の使用環境や溶射層16の機能に応じて適宜選定される。例えば、多孔質基材12が高温環境下で使用され、溶射層16が電極層として機能する場合、溶射層16の材料は、耐高温酸化性を有する導電性材料であることが望まれる。耐高温酸化性を有する導電性材料としては、例えばCoNiCrAlY合金やNiCrAlY合金、高Cr合金などが挙げられる。
溶射層16の層厚は、溶射層16の機能や材料に応じて適宜設定される。例えば、溶射層16が電極端子18を覆う場合、溶射層16の層厚は、当然に、電極端子18の厚さ(例えば、150μm)よりも大きく設定される。
(電極端子)
電極端子18は、電源に接続され、補強層14や溶射層16などからなる電極層を介して、多孔質基材12に電力を供給するためのものである。電極端子18は、補強層14の表面に設置され、溶射層16で覆われ、固定されている。電極端子18の形状は、例えば図1に示すように箔状であっても良いし、線状であっても良く、特に限定されない。
次に、多孔質構造体の製造方法について説明する。
図2は、本発明の一実施形態における多孔質構造体の製造方法の工程図である。図2に示すように、多孔質構造体10の製造方法は、脆性材料からなる多孔質基材12の表面の少なくとも一部に、該多孔質基材12を補強する補強層14を形成する補強層形成工程(ステップS10)と、形成した補強層14の表面の少なくとも一部に、高速フレーム溶射法により溶射層16を形成する溶射層形成工程(ステップS14)とを有する。多孔質構造体10の製造方法は、補強層形成工程と、溶射層形成工程との間に、補強層14の表面に電極端子18を設置する電極端子設置工程(ステップS12)をさらに有して良い。この場合、溶射層形成工程において、補強層14の表面に設置された電極端子18を溶射層16で覆い、固定する。以下、各工程について詳説する。
(補強層形成工程)
補強層形成工程では、脆性材料からなる多孔質基材12の表面の少なくとも一部に、多孔質基材12を補強する補強層14を形成する。補強層14の形成方法としては、例えばメッキ法、CVD法、PVD法、プラズマ溶射法、粉末式フレーム溶射法などがある。中でも、プラズマ溶射法、粉末式フレーム溶射法は、溶射層16と同一材料で補強層14を形成可能であるので、溶射層16と補強層14との親和性や密着性を向上することができる。
プラズマ溶射法、粉末式フレーム溶射法では、他の成膜法に比べて、ポーラスな補強層14が得られる。ポーラスな補強層14は、補強層14と多孔質基材12との熱膨張差を吸収するように変形可能であるので、加熱や冷却を繰り返す環境で使用される場合に適している。また、ポーラスな補強層14は、溶射層16を形成する際に、溶射粒子の衝突時の衝撃を吸収するように変形可能であるので、多孔質基材12が損傷するのを効果的に抑制することができる。
プラズマ溶射法は、アーク放電によって形成されるプラズマジェット中に溶射材料を投入して溶融させ、微粒子状にして基材に衝突させて、溶射被膜を形成する。プラズマの作動ガスとしては、アルゴンガス、アルゴンと窒素の混合ガス、アルゴンと水素の混合ガスなどが用いられる。
プラズマ溶射法では、溶射ガンから溶射される溶射粒子の速度は、350〜550m/sであり、溶射粒子の温度は、2000〜8000℃である。また、プラズマ溶射法では、溶射被膜の気孔率は、溶射材料がCoNiCrAlY合金の場合、3〜10%である。
プラズマ溶射法は、高速フレーム溶射法に比べて、溶射粒子の速度が遅いので、溶射粒子が多孔質基材12に衝突する時の衝撃が小さい。このため、多孔質基材12を損傷することなく、多孔質基材12の表面に補強層14を積層することができる。
プラズマ溶射法は、粉末式フレーム溶射法よりも、溶射皮膜の気孔率を低く設定することが可能であり、緻密な補強層14を得ることが可能である。緻密な補強層14は、電気抵抗が小さいので、電極層として適している。また、緻密な補強層14は、耐高温酸化性や耐食性に優れているので、高温環境下での使用に適している。
プラズマ溶射法は、溶射材料が金属材料である場合、溶射粒子の酸化を防止するため、減圧雰囲気下で溶射を行う減圧プラズマ溶射法であることが好ましい。プラズマ溶射法は、上述の如く、溶射粒子の温度が高いからである。なお、減圧雰囲気下で溶射を行う場合、通常、不活性ガスを用いて雰囲気組成を制御する。
粉末式フレーム溶射法は、燃料をガスと混合して燃焼させた燃焼フレーム中に粉末状の溶射材料を投入して溶融または軟化させ、基材に衝突させて、溶射被膜を形成する。燃料には、通常、アセチレンやプロパンなどの気体燃料が用いられる。ガスには、通常、酸素ガスなどが用いられる。溶射材料の供給方式としては、燃焼フレームの径方向外側から供給する方式と、燃焼フレームの軸中心から供給する方式とがある。
粉末式フレーム溶射法では、溶射ガンから溶射される溶射粒子の速度は、100〜200m/sであり、溶射粒子の温度は、1500〜3000℃である。また、粉末式フレーム溶射法では、溶射被膜の気孔率は、溶射材料がCoNiCrAlY合金の場合、5〜20%である。
粉末式フレーム溶射法は、高速フレーム溶射法に比べて、溶射粒子の速度が遅いので、溶射粒子が多孔質基材12に衝突する時の衝撃が小さい。このため、多孔質基材12を損傷することなく、多孔質基材12の表面に補強層14を積層することができる。
粉末式フレーム溶射法は、プラズマ溶射法よりも、溶射粒子の温度を低く設定することが可能であり、溶射粒子の熱収縮に起因する残留応力を小さくすることができる。加えて、粉末式フレーム溶射法は、プラズマ溶射法よりも、溶射皮膜の気孔率を高く設定することが可能であり、溶射粒子の熱収縮に起因する残留応力を小さくすることができる。このため、粉末式フレーム溶射法は、厚い補強層14を形成するのに適しており、高い補強効果を得ることができる。
また、粉末式フレーム溶射法は、プラズマ溶射法よりも、溶射皮膜の気孔率を高く設定することが可能であり、ポーラスな補強層14を得ることができる。ポーラスな補強層14は、補強層14と多孔質基材12との熱膨張差を吸収するように変形可能であるので、加熱や冷却を繰り返す環境で使用される場合に適している。また、ポーラスな補強層14は、溶射層16を形成する際に、溶射粒子の衝突時の衝撃を吸収するように変形可能であるので、多孔質基材12が損傷するのを効果的に抑制することができる。
なお、補強層形成工程の前に、多孔質基材12の表面を洗浄したり、ブラスト処理しておくことが望ましい。これにより、補強層14と多孔質基材12の表面との密着性を高めることができる。
(電極端子設置工程)
電極端子設置工程では、補強層14の表面に、電極端子18を設置する。例えば、補強層14の表面に電極端子18を載置する。
(溶射層形成工程)
溶射層形成工程では、補強層14の表面の少なくとも一部に、溶射層16を高速フレーム法により形成する。高速フレーム溶射法は、燃料を高圧ガスと混合して燃焼させた燃焼フレーム中に溶射材料を投入して溶融または軟化させ、微粒子状にして基材に衝突させて、溶射被膜を形成する。燃料には、プロピレンや水素などの気体燃料、ケロシン(灯油)などの液体燃料が用いられる。溶射材料の供給方式としては、燃焼フレームの径方向外側から供給する方式と、燃焼フレームの軸中心から供給する方式とがある。
高速フレーム溶射法は、HVOF(High Velocity Oxy−Fuel)法と、HVAF(High Velocity Air−Fuel)法とに大別される。HVOF法は、高圧ガスとして高圧酸素を用いる。HVAF法は、高圧ガスとして圧縮空気を用いる。
高速フレーム溶射法では、溶射ガンから溶射される溶射粒子の速度は、600〜900m/sであり、溶射粒子の温度は、1500〜3000℃である。また、高速フレーム溶射法では、溶射被膜の気孔率は、溶射材料がCoNiCrAlY合金の場合、0.5〜3%である。
高速フレーム溶射法は、プラズマ溶射法よりも溶射粒子の温度を低く設定することが可能であり、溶射粒子の熱収縮に起因する残留応力を小さくすることができる。このため、厚い溶射層16を形成するのに適しており、電極端子18を覆うのに適している。
また、高速フレーム溶射法は、粉末式フレーム溶射法に比べて、溶射皮膜の気孔率が低いので、緻密な溶射層16を形成することができる。緻密な溶射層16は、電気抵抗が小さいので、電極層として適している。また、緻密な溶射層16は、耐高温酸化性や耐食性に優れているので、高温環境下での使用に適している。
このように、本実施形態によれば、脆性材料からなる多孔質基材12の表面の少なくとも一部に多孔質基材12を補強する補強層14を形成し、形成した補強層14の表面の少なくとも一部に高速フレーム法により溶射層16を形成するので、溶射粒子の衝突時の衝撃によって多孔質基材12が損傷するのを抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
例えば、上述した実施形態において、多孔質基材12はハニカム状であるとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、多孔質基材12は、スポンジ状であっても良い。
また、上述した実施形態において、補強層14や溶射層16の溶射材料は金属材料であるとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、溶射材料は、セラミックス材料であっても良いし、セラミックス粉末と金属粉末とを混ぜた混合物であっても良い。
また、上述した実施形態において、多孔質基材12がセラミックス材料で形成され、且つ、溶射層16が金属材料で形成される場合、補強層14は、多孔質基材12と同一のセラミックス材料と、溶射層16と同一の金属材料との複合材料(所謂、サーメット)で形成されてもよい。これにより、補強層14と溶射層16との密着性や親和性を維持しつつ、補強層14と多孔質基材12との密着性や親和性を高めることができる。また、補強層14が複数層からなる場合、各層の複合材料中に占める金属材料の割合が、多孔質基材12側から溶射層16側に向けて段階的に層毎に増えるように設定されていても良い。これにより、上記効果をさらに高めることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
多孔質基材として、炭化ケイ素ハニカム(12mil、300cpsi)を用意した。用意した炭化ケイ素ハニカムの外周面の一部に、減圧プラズマ溶射装置を用いて合金粉末を溶射し、厚さ50μmの補強層を形成した。次いで、形成した補強層の表面に、HVOF溶射装置を用いて合金粉末を溶射し、厚さ400μmの溶射層を形成した。なお、補強層および溶射層の形成において、合金粉末の合金組成は、Co−32Ni−21Cr−8Al−0.5Y(質量%)とした。溶射層形成後に、炭化ケイ素ハニカムに損傷は認められなかった。
(実施例2)
実施例2では、補強層の層厚を5μmとした以外は、実施例1と同様に、炭化ケイ素ハニカムの外周面の一部に、補強層、溶射層を順次積層した。溶射層形成後に、炭化ケイ素ハニカムに損傷は認められなかった。
(実施例3)
実施例3では、補強層の層厚を300μmとした以外は、実施例1と同様に、炭化ケイ素ハニカムの外周面の一部に、補強層、溶射層を順次積層した。溶射層形成後に、炭化ケイ素ハニカムに損傷は認められなかった。
(比較例1)
比較例1では、炭化ケイ素ハニカムの外周面の一部に、HVOF溶射装置を用いて上記合金組成の合金粉末を直接溶射した以外は、実施例1と同様に、溶射層を形成した。その結果、溶射層を形成する過程で、溶射粒子の衝突時の衝撃によって炭化ケイ素ハニカムが圧壊し、溶射層を形成することができなかった。
(比較例2)
比較例2では、補強層の層厚を350μmとした以外は、実施例1と同様に、炭化ケイ素ハニカムの側面に、補強層を形成した。その結果、補強層を形成する過程で、溶射粒子の熱収縮に起因する残留応力によって、炭化ケイ素ハニカムにクラックが発生した。
10 多孔質構造体
12 多孔質基材
14 補強層
16 溶射層
18 電極端子

Claims (7)

  1. 脆性材料からなる多孔質基材の表面の少なくとも一部に、該多孔質基材を補強する補強層を形成する補強層形成工程と、
    形成した該補強層の表面の少なくとも一部に、高速フレーム溶射法により溶射層を形成する溶射層形成工程とを有する多孔質構造体の製造方法。
  2. 前記補強層形成工程において、前記補強層をプラズマ溶射法または粉末式フレーム溶射法により形成する請求項1に記載の多孔質構造体の製造方法。
  3. 前記補強層は、単層または複数層からなり、少なくとも前記溶射層に接する側の層が前記溶射層と同一材料からなる請求項1または2に記載の多孔質構造体の製造方法。
  4. 前記補強層は、単層または複数層からなり、少なくともいずれか一層が展性を有する金属材料からなる請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質構造体の製造方法。
  5. 脆性材料からなる多孔質基材の表面の少なくとも一部に、該多孔質基材を補強する補強層を設け、さらに、該補強層の表面の少なくとも一部に、高速フレーム溶射法により形成される溶射層を設けた多孔質構造体。
  6. 前記補強層は、プラズマ溶射法または粉末式フレーム溶射法により形成されたものである請求項5に記載の多孔質構造体。
  7. 前記多孔質基材は、触媒を担持する触媒担体である請求項5または6に記載の多孔質構造体。
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