JP5487595B2 - 有機電界発光素子用組成物および有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
・高分子材料は重合度や分子量分布を制御することが困難である。
・連続駆動時に末端残基による劣化が起こる。
・材料自体の高純度化が困難で、不純物を含む。
本発明はまた、発光層を有する有機電界発光素子において、該層が結晶化しにくく、発光効率が高く、駆動電圧が低く、耐熱性を含めた駆動安定性に優れる有機電界発光素子と、この有機電界発光素子を用いた有機EL表示装置および有機EL照明を提供することを課題とする。
Ar1〜Ar3は、互いに独立に、芳香族炭化水素基を表し、かつAr1は、Ar 1 が置換基を有する場合は、その置換基も含めて炭素数10〜30の芳香族炭化水素基を、Ar4は、1,3,5−ベンゼントリイル基をそれぞれ表す。
Cz1、Cz2は、互いに独立に、ジアリールアミノ基またはN−カルバゾリル基を表す。但し、Cz1上のN原子とCz2上のN原子とは、互いに非共役である。さらに、QがN原子である場合には、環A上のQは、Cz1上のN原子およびCz2上のN原子と、非共役である。
J1は、直接結合、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
環A、J1、Ar1〜Ar 3 、Cz1、Cz2は、それぞれ独立に、さらに置換基を有していてもよいが、Ar1が有していてもよい置換基は、芳香族炭化水素基のみである。)
本発明の有機電界発光素子用組成物は、特定の湿式成膜用電荷輸送材料と、沸点180℃以上の溶剤とを含有するものであり、好ましくは更に発光材料を含有する。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる湿式成膜用電荷輸送材料(以下、「本発明の電荷輸送材料」と称す場合がある。)は、下記式(I)で表される。この電荷輸送材料は、下記式(I)で表される構造を有することにより、優れた電荷(正孔)輸送能を有し、三重項励起準位が高く、高い耐熱性を有し、また十分な溶剤への溶解性を示す。これは化合物の非対称構造に由来すると推測される。
尚、本発明において、湿式成膜用電荷輸送材料とは、水または有機溶剤などの溶剤に溶解し、正電荷または負電荷を輸送可能な材料であって、溶剤とともに、成膜の際、用いられる材料である。
本発明の有機電界発光素子用組成物に、本発明の電荷輸送材料は、1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
Ar1〜Ar3は、互いに独立に、芳香族炭化水素基を表し、Ar4は、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
Cz1、Cz2は、互いに独立に、ジアリールアミノ基またはN−カルバゾリル基を表す。但し、Cz1上のN原子とCz2上のN原子とは、互いに非共役である。さらに、QがN原子である場合には、環A上のQは、Cz1上のN原子およびCz2上のN原子と、非共役である。
J1は、直接結合、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
環A、J1、Ar1〜Ar4、Cz1、Cz2は、それぞれ独立に、さらに置換基を有していてもよいが、Ar1が有していてもよい置換基は、芳香族炭化水素基のみである。)
本発明の電荷輸送材料の分子量は、通常、5000以下、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、特に好ましくは2000以下であり、また通常400以上、好ましくは500以上、より好ましくは600以上である。
分子量が上記上限を超えると、不純物の高分子量化によって精製が困難となる場合があり、また分子量が上記下限を下回ると、ガラス転移点および、融点、気化温度などが低下するため、耐熱性が著しく損なわれるおそれがある。
本発明の電荷輸送材料は、通常150℃以上のガラス転移点を有するが、耐熱性の観点および湿式成膜法のプロセスの点から、ガラス転移点は150℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。ガラス転移点の上限は通常400℃程度である。
また、本発明の電荷輸送材料は、通常300℃以上、800℃以下の気化温度を有する。
本発明の電荷輸送材料は、ガラス転移点と気化温度の間に結晶化温度を有さないことが好ましい。
上記式(I)中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4に用いることができる芳香族炭化水素基を例示するならば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、5または6員環の単環または2〜5縮合環由来の基が挙げられる。これらは置換基を有していてもよい。
Cz1、Cz2に用いることができるジアリールアミノ基を例示するならば、アリール基として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、5または6員環の単環または2〜5縮合環由来の基を有するものが挙げられる。ジアリールアミノ基の2つのアリール基は同一であっても異なるものであってもよい。また、これらのアリール基は置換基を有していてもよい。
また、Cz1,Cz2のN−カルバゾリル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは3位および/または6位に置換基を有していてもよいN−カルバゾリル基が挙げられる。
ここで、非共役とは、当該N原子同士が互いに共役可能でないこと、即ち、N原子同士のπ電子雲上を電子が容易に移動できる連結状態にないこと、すなわち電子が非局在化することをさす。
J1は直接結合、芳香族炭化水素基、または芳香族複素環基を示すが、このうち、芳香族炭化水素基の具体的な例示としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、5または6員環の単環または2〜5縮合環由来の芳香族炭素環基が挙げられ、芳香族複素環基の具体的な例示としてはフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の芳香族複素環基が挙げられる。
QはC原子またはN原子を表し、QがC原子の場合、Qはさらに置換基を有していてもよい。
環A、J1、Ar1〜Ar4、Cz1、Cz2が有していてもよい置換基、並びにQがC原子の場合、Qが有していてもよい置換基の具体例を例示するならば次のようなものが挙げられる。ただし、Ar1については、置換基として、芳香族炭化水素基のみを有する。
アルケニル基:炭素数2〜9のアルケニル基であり、ビニル基、1−ブテニル基等
アラルキル基:例えばベンジル基等
アルコキシ基:炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等
アリールオキシ基:炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を有するものであり、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等
芳香族炭化水素基:例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、5または6員環の単環または2〜5縮合環由来の基等
芳香族複素環基:例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の基等
電気化学的安定性、および耐熱性の観点から、式(I)において、Ar1〜Ar4、Cz1、Cz2およびJ1としては、次のようなものが好ましい。
Ar1、Ar2は、互いに独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の基などが好ましく、これらが置換基を有する場合、その置換基はフェニル基が好ましい。特に、Ar1としては、置換基を有する場合、その置換基も含めて炭素数10〜30の芳香族炭化水素基が好ましい。
Ar3、Ar4は、ベンゼン環由来の基が好ましく、特にAr3は、1,3−ベンゼンジイル基が、Ar4は、1,3,5−ベンゼントリイル基が好ましい。
Cz1、Cz2は、互いに独立に、ジフェニルアミノ基、またはN−カルバゾリル基が好ましく、さらに溶解性の観点からN−カルバゾリル基がより好ましい。
J1は直接結合、または1,3−ベンゼンジイル基等のベンゼン環由来の基が好ましい。
QはN原子、C原子のいずれでもよいが、QがC原子で置換基を有する場合、その好ましい置換基としては、化合物の安定性の面から、アルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素基、芳香族複素環基であり、より好ましくは芳香族炭化水素基である。
以下に本発明の電荷輸送材料として好ましい具体的な例を示すが、本発明の電荷輸送材料はこれらに限定されるものではない。
前記式(I)で表される化合物は、目的とする化合物の構造に応じて原料を選択し、公知の手法を用いて合成することができる。例えば以下の(a)〜(c)のような方法で合成することができる。
得られた化合物(XAr(−NR1R2)X:以下「中間体2」と称す。)とさらに導入させたいジアリールアミノ基、またはカルバゾリル基(R1’R2’N−)とを、銅粉末、銅線、ハロゲン化銅(CuX(X=Cl,Br,I))、酸化銅(CuO)などの銅触媒(中間体2のハロゲン原子に対して0.1〜5当量程度)および、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カリウム、炭酸セシウム、tert−ブトキシナトリウムなどの塩基性物質(中間体2のハロゲン原子に対して1〜10当量程度)の存在下、不活性ガス気流下、無溶剤またはニトロベンゼンなどの芳香族系溶剤、テトラグライム、ポリエチレングリコールなどの溶剤中、20〜300℃の温度範囲で、1〜60時間撹拌混合する方法。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる溶剤の沸点は通常180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは240℃以上で、通常300℃以下、好ましくは260℃以下である。溶剤の沸点が、この下限を下回ると溶剤の揮発性が高くなり、組成物の濃度変化による湿式成膜むらが起こる恐れがあり好ましくなく、上限を上回ると溶剤を除去するための乾燥温度が高くなり、乾燥工程において溶質材料の劣化を招く恐れがあり好ましくない。
この様な観点からは、本発明の有機電界発光素子用組成物は、例えば、25℃に於ける水の溶解度が1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下である溶剤を、組成物中10重量%以上含有することが好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の電荷輸送材料と沸点180℃以上の溶剤の他、更に発光材料を含んでいてもよい。ここで、有機電界発光素子用組成物から発せられる光量(単位:cd/m2)の内、通常10%〜100%、好ましくは20%〜100%、より好ましくは50%〜100%、最も好ましくは80%〜100%が、ある成分材料からの発光と同定される場合、それを発光材料と定義する。
尚、本発明の電荷輸送材料が発光材料であってもよい。本発明の電荷輸送材料を含む有機電界発光素子用組成物にさらに発光材料を含む場合には、本発明の電荷輸送材料がホスト材料として働き、発光材料がドーパント材料として働いてもよい。また、発光材料は、1種類のみ含まれていても2種類以上が含まれていてもよい。
周期表7ないし11族から選ばれる金属を含む燐光性有機金属錯体における金属として好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記一般式(3)または下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
(一般式(3)中、Mは金属を表し、qは上記金属の価数を表す。また、L”およびL’は二座配位子を表す。jは0、1または2を表す。)
一般式(3)中、Mは任意の金属を表し、好ましいものの具体例としては、周期表7ないし11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。
環A1,A2が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基、フェナンチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
中でも、環A1、環A1’、環A2および環A2’の置換基として、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基が挙げられる。
また、R92〜R95はさらに置換基を有していてもよい。この場合のさらに有していてもよい置換基には特に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。
(式(ア)中、Aは、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
nは、1以上10以下の整数を表す。
Zは、n=1の場合は水素原子又は置換基を表し、nが2以上の場合は直接結合又はn価の連結基を表す。
なお、nが2以上の場合、複数のAは同一であっても異なるものであってもよく、A及びZはそれぞれ、更に置換基を有していてもよい。)
式(ア)において、nは、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常10以下、好ましくは6以下の整数を表す。nがこの範囲を超えると、各種精製によって不純物を十分に低減させることが困難になるおそれがあり、また、この範囲を下回ると、電荷注入・輸送性が著しく低下するおそれがあるために、何れも好ましくない。
Aが芳香族炭化水素基である場合、その炭素数は、通常6以上、また、通常30以下、好ましくは20以下である。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環等の6員環の単環或いは2〜5縮合環由来の基などが挙げられる。
更に、アゼピン系化合物としては、特開2002−235075号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
次に、有機電界発光素子について説明する。
本実施の形態が適用される有機電界発光素子は、基板上に少なくとも陽極、陰極およびこれらの両極間に設けられた発光層を有するものであって、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層を有することを特徴とする。この層は、湿式成膜法により形成された層であり、特にこの層は有機発光層であることが好ましい。
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
基板1上には陽極2が設けられる。陽極2は発光層側の層(正孔注入層3または発光層4等)への正孔注入の役割を果たすものである。
正孔注入層3は陽極2から発光層4へ正孔を輸送する層であるため、正孔注入層3には正孔輸送性化合物を含むことが好ましい。正孔注入層3は、正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことがさらに好ましい。また、正孔注入層3にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことがさらに好ましい。さらに、必要に応じて、正孔注入層3には電荷のトラップになりにくいバインダー樹脂や、塗布性改良剤を含んでいてもよい。
正孔輸送性化合物としては、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型炭化水素化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記一般式(V)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Ar21〜Ar25およびAr31〜Ar41の芳香族炭化水素環および/または芳香族複素環由来の基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。
Ar21、Ar22としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基がさらに好ましい。また、Ar23〜Ar25としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基がさらに好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。例としては、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の有機基の置換したオニウム塩、塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物、テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物、フラーレン誘導体、ヨウ素等が挙げられる。上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物が好ましく、種々の溶剤に可溶で湿式塗布に適用可能である点で有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物が好ましい。電子受容性化合物として好適な有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物の具体例としては、WO2005/089024号公報に記載のものが挙げられ、その好適例も同様であり、例えば下記構造式で表される化合物(A1)が挙げられるが、何らそれらに限定されるものではない。
正孔注入層3上には、図7に示すように正孔輸送層10を設けてもよい。正孔輸送層10の材料に要求される条件としては、陽極2からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、更に安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。また、発光層4に接するために発光層4からの発光を消光したり、発光層4との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが求められる。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子には更に耐熱性が要求される。従って、ガラス転移点として80℃以上、更に好ましくは85℃以上の値を有する材料が好ましい。
正孔注入層3(または正孔輸送層)の上には、通常、発光層4が設けられる。
発光層4は、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3を通じて注入された正孔と、陰極6から電子注入層5を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。発光層4は、発光材料(ドーパント)と1種または2種以上のホスト材料を含むことが好ましく、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法により形成されることが好ましい。
尚、本実施の形態の素子が、陽極2および陰極6の両極間に、発光層4のみを有する場合の発光層4の膜厚は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、通常500nm以下、好ましくは300nm以下である。
発光材料として燐光発光性色素を用いたり、青色発光を与える蛍光発光材料を用いたりする場合、正孔阻止層8を設けることが効果的である。正孔阻止層8は正孔と電子を発光層4内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。即ち、正孔阻止層8は、発光層4から移動してくる正孔が電子輸送層7に到達するのを阻止することで、発光層4内で電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層4内に閉じこめる役割と、電子輸送層7から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送する役割がある。
電子輸送層7は素子の発光効率をさらに向上させることを目的として、発光層4と電子注入層5との間に設けられる。電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極6から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子注入層5は陰極6から注入された電子を効率よく発光層4へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行うには、電子注入層5を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましく、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウム等のアルカリ土類金属が用いられる。
尚、電子注入層5は、これを省略してもよい。
陰極6は、発光層4側の層(電子注入層5または発光層4等)に電子を注入する役割を果たす。陰極6として用いられる材料は、陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
以上、図3に示す層構成の素子を中心に説明してきたが、本実施の形態においては、有機電界発光素子における陽極2および陰極6と発光層4との間には、その性能を損なわない限り任意の層を有していてもよく、また図1,2,5,6,7に示すように、発光層4以外の任意の層を省略してもよい。例えば、電子輸送層7および正孔阻止層8は必要に応じて、適宜設ければよく、1)電子輸送層のみ、2)正孔阻止層のみ、3)正孔阻止層/電子輸送層の積層、4)用いない等の用法がある。
電子阻止層9に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
また、発光層4と電子輸送層7との間に正孔緩和層を設けてもよい。
本発明の有機電界発光素子は、有機EL表示装置や有機EL照明に使用される。本発明により得られる有機電界発光素子は、例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社,平成16年8月20日発行,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で有機EL表示装置や有機EL照明を形成することができる。
なお、以下において、ガラス転移点はDSC測定により、気化温度はTG−DTA測定により求めた。
DEI−MS(m/z=789(M+))から目的物5(本発明の電荷輸送材料(IA))であることを確認した。TG−DTA測定より気化温度は546℃であり、DSC測定の結果、このもののガラス転移温度(Tg)は150℃であった。
DEI−MS(m/z=954(M+))から目的物8(本発明の電荷輸送材料(IB))であることを確認した。DSC測定の結果、このもののガラス転移点(Tg)は170℃であった。
[実施例1]
図3に示す有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(株式会社スリーボンド製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
なお、駆動寿命は、室温で通電開始時の発光輝度が1000cd/m2となる一定電流値で直流定電流連続通電し、発光輝度が500cd/m2となったときの通電時間である。
表1に示す如く、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いることで、高効率、長寿命の素子が得られたことが明らかである。
本発明の有機電界発光素子用組成物において、上記構造式(C1)で表される化合物に代えて、下記構造式(C5)で表される化合物(本発明の電荷輸送材料(IB))を用い、構造式(C5),(C2),(C3)で表される化合物の含有量を、(C5)が2.5重量%、(C2)が2.5重量%、(C3)が0.25重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、図3に示す有機電界発光素子を作製した。
得られた有機電界発光素子の発光特性を表1に示す。
表1に示す如く、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いることで、高効率、長寿命の素子が得られたことが明らかである。
本発明の有機電界発光素子用組成物において、上記構造式(C1)で表される化合物に代えて、下記構造式(C6)で表される化合物を用い、構造式(C6),(C2),(C3)で表される化合物の含有量を、(C6)が2.5重量%、(C2)が2.5重量%、(C3)が0.25重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、図3に示す有機電界発光素子を作製した。
得られた有機電界発光素子の発光特性を表1に示す。
正孔阻止層にかえて、正孔緩和層を用いた以外は、図7に示す有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nmの厚さに堆積したもの(スパッタ成膜品、シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィー技術により2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
得られた有機電界発光素子の発光特性を表2に示す。
なお、表2中、最高輝度は、250mA/cm2の電流を流したときの正面輝度である。CIE色度座標は、正面輝度10〜1000cd/cm2時のCIE色度座標である。駆動寿命T50は、室温条件下、初期正面輝度4,000cd/cm2で定電流駆動したとき、正面輝度が初期輝度の50%まで低下するまでに要した時間である。
表2に示す如く、輝度が高く、駆動寿命の長い有機電界発光素子が得られることがわかる。
正孔輸送層形成用塗布組成物に含まれる溶剤をシクロヘキシルベンゼンとし、固形分濃度を1.4重量%にしたこと、および、有機電界発光素子用組成物に含まれる溶剤をシクロヘキシルベンゼンとし、固形分濃度を5.0重量%にしたこと以外は参考例1と同様にして、有機電界発光素子を得た。
得られた有機電界発光素子の発光特性を表2に示す。
表2に示す如く、輝度が高く、駆動寿命の長い有機電界発光素子が得られることがわかる。
有機電界発光素子用組成物中の、構造式(C7)で表される化合物(本発明の電荷輸送材料(IC))を前記構造式(C6)で表される化合物に変更したこと以外は参考例2と同様にして、有機電界発光素子を得た。
この素子からは、ELピーク波長513nmの緑色発光が得られることを確認した。
得られた有機電界発光素子の発光特性を表2に示す。
表2に示す通り、この素子は駆動寿命が短かった。
2 陽極
3 正孔注入層
4 発光層
5 電子注入層
6 陰極
7 電子輸送層
8 正孔阻止層
9 電子阻止層
10 正孔輸送層
Claims (7)
- 下記式(I)で表される湿式成膜用電荷輸送材料と、沸点180℃以上の溶剤とを含有してなることを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
Ar1〜Ar3は、互いに独立に、芳香族炭化水素基を表し、かつAr1は、Ar 1 が置換基を有する場合は、その置換基も含めて炭素数10〜30の芳香族炭化水素基を、Ar4は、1,3,5−ベンゼントリイル基をそれぞれ表す。
Cz1、Cz2は、互いに独立に、ジアリールアミノ基またはN−カルバゾリル基を表す。但し、Cz1上のN原子とCz2上のN原子とは、互いに非共役である。さらに、QがN原子である場合には、環A上のQは、Cz1上のN原子およびCz2上のN原子と、非共役である。
J1は、直接結合、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
環A、J1、Ar1〜Ar 3 、Cz1、Cz2は、それぞれ独立に、さらに置換基を有していてもよいが、Ar1が有していてもよい置換基は、芳香族炭化水素基のみである。) - 式(I)のAr3が、1,3−ベンゼンジイル基であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物。
- 湿式成膜用電荷輸送材料のガラス転移点が150℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用組成物。
- 沸点180℃以上の溶剤に、前記湿式成膜用電荷輸送材料が0.5重量%以上溶解することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の有機電界発光素子用組成物。
- 基板上に、陽極、陰極、およびこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、請求項1ないし4のいずれかに記載の有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
- 請求項5に記載の有機電界発光素子を用いた、有機EL表示装置。
- 請求項5に記載の有機電界発光素子を用いた、有機EL照明。
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