JP5480383B2 - ガラス基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、SiO2およびFe23を含有し、SiO2の含有率が50〜70質量%であるガラス基板の製造方法に関する。
液晶表示装置に用いられる液晶パネルは、主に、2枚の基板とその間の液晶材料とから構成される。より具体的には、液晶パネルは、カラーフィルタがガラス基板上に形成された基板と、TFT(Thin Film Transistor)等の半導体素子がガラス基板上に形成された基板との間に、液晶材料が挟まれ、基板の周囲が封止剤によってシールされることにより製造される。
液晶パネルを製造する工程においては、ガラス基板を通して紫外線(波長300〜380nm)を照射することが行われる。例えば、ガラス基板を通して紫外線(波長300〜380nm)を照射して、リソグラフィや、紫外線硬化樹脂による基板の周囲の封止が行われる。また、ガラス基板を通して、紫外線を照射して、液晶材料中の光重合ポリマを重合し、液晶分子の配向を安定化させる方法も用いられる。近年では、波長300〜380nmのうち、波長300nm近傍の紫外線が用いられることが多くなり、特に波長300nm近傍の紫外線透過率を向上させることが望まれる。
一方、液晶表示素子に用いる上記ガラス基板において、酸化砒素(As23)や酸化アンチモン(Sb23)を環境負荷の点から使用せず、酸化スズ(SnO2)や酸化鉄(Fe23)を清澄剤として使用することが知られている(特許文献1)。また、このガラス基板において、Fe23の含有率を所定値より増加させることによりガラス基板内の気泡による欠陥レベルの発生頻度を劇的に低減することができることも知られている。
特表2010−509180号公報
しかし、上記酸化スズ(SnO2)や酸化鉄(Fe23)を清澄剤として使用する上記公報に記載のガラス基板では、ガラスの組成が規定されているものの、具体的に、どのような原料をどのように調合すればよいか不明である。また、上記公知のガラス基板に比べて紫外線の透過率をより高くしたガラス基板が求められる場合もある。
そこで、本発明は、液晶表示装置用ガラス基板を製造するとき、ガラスの清澄を十分に行うと共に、波長300nmにおける透過率が30%以上となるガラス基板を効率よく製造することができるガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、SiO2およびFe23を含有し、SiO2の含有率が50〜70質量%である液晶表示装置用ガラス基板の製造方法である。当該製造不法は、
SiO2を主成分とするシリカ原料と、酸化鉄を含む調整原料とを少なくとも用いて調合してガラス原料をつくる原料調合工程と、
前記ガラス原料を熔解し熔融ガラスとする熔解工程と、
前記熔融ガラスの清澄を行う清澄工程と、を有する。
前記シリカ原料は、不純物として酸化鉄を含み、前記酸化鉄をFe23で表したとき、前記シリカ原料は、Fe23を0.001〜0.028質量%含み、前記調整原料の前記ガラス原料における含有量は、前記液晶表示装置用ガラス基板における波長300nmの透過率が30%以上となるように調整されている。
その際、前記調整原料の前記含有量は、さらに、前記熔融ガラスの前記清澄工程における清澄効果に応じて調整されている、ことが好ましい。
その際、前記シリカ原料の不純物を由来としてガラス基板に含有されるFe23の含有量は、製造されるガラス基板に含まれるFe23の含有量に対して50質量%以下である、ことが好ましい。
また、前記ガラス基板は、CaOを1〜10質量%を含み、
前記ガラス原料は、前記シリカ原料の他に、前記CaOの原料となる石灰石を含み、
前記石灰石は、酸化鉄を不純物として含み、前記石灰石に含まれる酸化鉄をFe23で表したとき、前記石灰石は、Fe23を0.001〜0.05質量%含むとき、
前記ガラス原料に用いる前記シリカ原料は、Fe23を0.001〜0.015質量%含む、ことが好ましい。
また、前記ガラス基板は、CaOを1〜15質量%を含み、
前記ガラス原料は、前記シリカ原料の他に、前記CaOの原料となる石灰石を含み、
前記石灰石は、酸化鉄を不純物として含み、前記石灰石に含まれる酸化鉄をFe23で表したとき、前記石灰石は、Fe23を0.001〜0.05質量%含むとき、
前記ガラス原料に用いる前記シリカ原料は、Fe23を0.001〜0.0125質量%含む、ことが好ましい。
前記シリカ原料および前記石灰石の不純物を由来としてガラス基板に含有されるFe23の含有量は、製造されるガラス基板に含まれるFe23の含有量に対して50質量%以下である、ことが好ましい。
前記ガラス基板は、SnO2を0.15〜0.25質量%含む、ことが好ましい。
また、製造されるガラス基板に含まれるβ−OH値が0.45/mm以下である、ことが好ましい。
前記ガラス基板はAs23及びSb23を実質的に含まない、ことが好ましい。
また、本発明の他の一形態は、SiO2およびFe23を含有し、SiO2の含有率が50〜70質量%である液晶表示装置用ガラス基板の製造方法である。当該製造方法は、
SiO2を主成分とするシリカ原料を少なくとも含むガラス原料を調合する原料調合工程と、
前記ガラス原料を熔解し、熔融ガラスとする熔解工程と、
前記熔融ガラスの清澄を行う清澄工程と、を有する。
前記シリカ原料は、不純物として酸化鉄を含み、前記酸化鉄をFe23で表したとき、前記シリカ原料は、Fe23を0.001〜0.028質量%含む。前記清澄工程における前記熔融ガラスの清澄効果に応じて、前記原料調合工程において、酸化鉄を含む調整原料を用いて、前記ガラス原料を調合する。
また、本発明の他の一態様は、SiO2およびFe23を含有し、SiO2の含有率が50〜70質量%であり、波長300nmの透過率が30%以上である液晶表示装置用ガラス基板の製造方法である。当該製造方法は、
SiO2を主成分とし酸化鉄を不純物として含むシリカ原料と、酸化鉄を主成分として含む調整原料とを少なくとも用いて調合してガラス原料をつくる原料調合工程と、
前記ガラス原料を熔解し、熔融ガラスとする熔解工程と、
前記熔融ガラスの清澄を行う清澄工程と、を有する。
前記シリカ原料が不純物として含む前記酸化鉄をFe23で表したとき、前記シリカ原料は、該Fe23を0.001〜0.028質量%含む。
上記態様のガラス基板の製造方法によれば、ガラスの清澄を十分に行うと共に、波長300nmにおける透過率が30%以上となるガラス基板を安定して製造することができる。
本実施形態のガラス基板の製造方法のフローの一例を説明する図である。 ガラス基板の分光透過率を示すグラフである。 ガラス基板における波長300nmにおける透過率のFe23の含有率依存性を示すグラフである。
以下、本実施形態の液晶表示装置用ガラス基板(以下、単にガラス基板という)の製造方法で製造されるガラス基板について説明する。
(ガラス基板の概略説明)
ガラス基板は、SiO2を50〜70質量%含有する液晶表示装置用ガラス基板であり、液晶パネルの液晶材料を挟む2枚のガラス基板に用いられる。ガラス基板の厚さは、例えば0.3〜0.7mmであり、サイズが300×400mm〜2200×2500mmである。また、ガラス基板の透過率は、300nmの波長において30%以上となっている。ここで、300nmの波長の透過率が30%以上であるとは、ガラス基板の厚さが0.3〜0.7mmの範囲において、厚さに関係なく300nmの波長の透過率が30%以上であることをいう。ガラス基板の透過率が上記値に設定されるのは、液晶パネルの製造段階で、波長300nmを含む紫外線を照射して行う処理、例えば液晶材料中の光重合ポリマを重合し、液晶分子の配向を安定化させる処理を効率よく行うためである。
また、ガラス基板のβ−OH値は0.45/mm以下であることが好ましい。β−OH値が0.45/mmを越えると、ガラス基板中に発生する気泡による欠陥の発生頻度が高くなる。
ガラス基板は、例えば、下記に示す組成のアルミノボロシリケートガラスが挙げられる。下記括弧内に記載された数値は好ましい組成比率である。下記組成比率の%表示はいずれも質量%を意味する。
SiO:50〜70%(55〜68%,58〜62%) 、
Al:10〜25%(15〜20%,15〜18%)、
:4〜18%(6〜14%,10〜13%)、
MgO:0〜10%(0〜5%,1〜2%)、
CaO:0〜20%(1〜10%,4〜7%)、
SrO:0〜20%(0〜10%,1〜3%)、
BaO:0〜10%(0〜2%,0〜1%)、
O:0〜2%(0.1〜2%,0.1〜0.5%)、
SnO:0〜1%(0.01〜0.5%,0.05〜0.4%,0.1〜0.3%,0.15〜0.25%)、
Fe23:0.01〜0.045%(0.015〜0.04%,0.02〜0.035%)。
また、例えば、下記に示す組成のアルミノボロシリケートガラスが挙げられる。
SiO:50〜70%(55〜68%,58〜63%) 、
Al:8〜25%(10〜23%,14〜23%)、
:3〜15%(5〜15%,6〜13%)、
MgO:0〜10%(0〜7%,0〜1%)、
CaO:0〜20%(4〜14%,5〜12%)、
SrO:0〜20%(0〜10%,0〜1%)、
BaO:0〜10%(0〜2%,0〜1%)、
O:0〜2%(0.1〜2%,0.1〜0.5%)、
SnO:0〜1%(0.01〜0.5%,0.05〜0.4%,0.1〜0.3%,0.15〜0.25%)、
Fe23:0.01〜0.045%(0.015〜0.04%,0.02〜0.035%)。
ここで、SnOを0.15〜0.25%とすることが、紫外線の透過率の向上の点で好ましい。SiOであるシリカ原料には、例えば、不純物としてFe23を0.028質量%以下含む珪砂が用いられる。ここで、Fe23の含有率とはFe2+とFe3+等の酸化物を合計してFe23で表した(換算した)値である。
なお、ガラス基板にSnO2を0.15〜0.25質量%含ませ、かつ、上記シリカ原料を用いることにより、ガラスの清澄を十分に行うと共に、波長300nmにおける透過率が30%以上となるガラス基板を効率よく製造することができる。
紫外線の透過率の測定では、製造されたガラス基板を切断し、1辺が30mmの略正方形のガラス試片を作製する。本発明でいう透過率は、このガラス試片に波長200nm〜800nmの透過率を、分光光度計を用いて測定することにより得られる値である。分光光度計は、例えば「UV−3100PC」、株式会社島津製作所製が用いられる。
また、β−OH値は、IR分光分析法により測定されるガラス中のヒドロキシル基含有量の尺度であり、ガラス中の水分の尺度となる。β−OH値は、下記式にしたがって求められる。
β−OH値 = (1/W)LOG10(T/T
ここで、Wは試料の厚さ(mm)である。波長2500nm〜3000nmの透過率を測定したときに、最大透過率がTであり、最小透過率がTである。例えば、Tにおける波長は、2600nmであり、Tにおける波長は2800nmである。
(各成分)
SiOはガラス基板のガラスの骨格をなす成分であり、ガラスの化学的耐久性と耐熱性を高める効果を有している。SiO含有率が低すぎる場合には化学的耐久性と耐熱性の効果が十分に得られず、SiO含有率が高すぎるとガラスが失透を起こしやすくなり、成形が困難になるとともに、粘性が上昇してガラスの清澄および均質化が困難になる。
Alはガラスの骨格をなす成分であり、ガラスの化学的耐久性と耐熱性を高める効果を有している。Al含有率が低すぎる場合にはガラスの化学的耐久性と耐熱性の効果が十分に得られない。一方、Al含有率が高すぎると、ガラスの粘性が上昇して熔解が困難になるとともに、耐酸性が低下する。
はガラスの粘性を下げて、ガラスの熔解および清澄を促進する成分である。Bの含有率が低すぎると、ガラスの粘性が高くなりガラスの均質化が困難になる。Bの含有率が高すぎると、ガラスの耐熱性、耐薬品性が低下する。
MgOおよびCaOは、ガラスの粘性を下げて、ガラスの熔解および清澄を促進する成分である。また、MgOおよびCaOは、アルカリ土類金属酸化物の中ではガラスの密度を上昇させる割合が小さいため、得られるガラスを軽量化しつつ熔解性を向上するためには有利な成分である。ただし、MgOおよびCaO含有率が高くなりすぎると、失透が起こりやすくなるとともに、ガラスの化学的耐久性が低下する。
SrOおよびBaOは、ガラスの粘性を下げて、ガラスの熔解および清澄を促進する成分である。また、ガラス原料の酸化性を高めて清澄性を高める成分でもある。ただし、SrOおよびBaOの含有率が高くなりすぎると、ガラスの密度が上昇し、ガラス板の軽量化が図れないととともに、ガラスの化学的耐久性が低下する。
Oはガラスの高温粘度を低下させて、ガラスの熔解性や成形性を向上させると同時に、耐失透性を改善する成分である。しかし、KOの含有率が高くなり過ぎると、熱膨張率が大きくなり過ぎる。
SnOは、熔融ガラス中で価数変動を伴う反応を生じるため、ガラスの清澄剤として用いられる。ただし、SnOはガラスを失透しやすくする成分であるため、清澄性を高めつつ失透を起こさせないためには、その含有率が0.01〜0.5質量%であることが好ましく、0.05〜0.4質量%であることがより好ましく、0.1〜0.3質量%であることがさらに好ましい。特に、Fe23が、0.045質量%以下の場合には、SnO2を0.15〜0.25質量%であることが好ましい。
Fe23は、熔融ガラス中で価数変動を伴う反応を生じるため、ガラスの清澄剤として用いられる。熔融ガラス中のFe23の含有率が所定値、具体的には、0.02質量%〜0.03質量%(200ppm〜300ppm)を超えると急激に清澄効果を発揮し、熔融ガラスの気泡を低減させる。一方において、Fe23の含有量が増えるにしたがって、紫外線透過率が低下する。このため、製造されるガラス基板において、Fe23の含有率(質量%)は、所定の範囲に制限される。
なお、AsおよびSbは、熔融ガラス中で価数変動を伴う反応を生じ、ガラスを清澄する効果を有する物質であるが、AsおよびSbは環境負荷が大きい物質であることから、本実施形態のガラス基板においては、ガラス中にAsおよびSbを実質的に含まない。AsおよびSbを実質的に含まないとは、0.1質量%未満であって意図的に含有させないことを意味する。
このようなガラス基板は、SiO2を主成分(98質量%以上の成分)とするシリカ原料、の他、Al23を主成分(98質量%以上の成分)とするアルミナ、CaCO3を主成分(90質量%以上の成分)とする石灰石等の原料を用いて製造される。シリカ原料として、例えば珪砂が挙げられる。なお、シリカ原料、Al23を主成分とするアルミナ、CaCO3を主成分とする石灰石等には、微量の酸化鉄が不純物として含まれる。なお、不純物とは、意図して含有される成分ではなく、原料に対して意図されず0.5質量%以下含有している成分をいう。
このような原料の中で、ガラス基板中の含有率が最も高いSiO2の原料であるシリカ原料における酸化鉄の含有率を抑制することで、ガラス基板の性質(化学的耐久性、耐熱性、耐酸性、耐失透性、熔融ガラスの粘性等)を維持したまま、後述する清澄工程における清澄効果を容易に制御することができ、波長300nmにおいて30%以上の透過率を有するガラス基板を効率よく製造することができる。
具体的には、シリカ原料における酸化鉄をFe23で表したときの含有率(以降、単に、シリカ原料におけるFe23の含有率、という)を低く抑えることにより、熔融ガラス中のFe23の含有率を、熔融ガラスの清澄効果が急激に向上するFe23の含有率の数値以下に予め低く抑え、このとき製造されるガラス基板の気泡による欠陥の発生頻度の判定結果(清澄効果)に応じて、熔融ガラス中のFe23の含有率を高くするように、酸化鉄を含む原料を調整原料としてガラス原料の配合調整をする。しかし、欠陥の発生頻度を低くするために熔融ガラス中のFe23の含有率を高くすると、波長300nmにおける透過率が低下するので、配合調整するために用いる上記調整原料を必要以上にガラス原料に含ませることはできない。すなわち、配合調整するための調整原料の配合量は、波長300nm近傍における透過率は30%以上となるように制限される。配合調整するための調整原料は、例えば、Fe23を主成分(95質量%以上を含む成分)とする酸化第2鉄(ベンガラ)が゛挙げられる。勿論、配合調整前のガラス原料に、シリカ原料のほかに、アルミナ、石灰石等の酸化鉄を不純物として含む原料を含ませることができる。この場合においても、熔融ガラス中の酸化鉄の含有率を、熔融ガラスの清澄効果が急激に向上するFe23の含有率の数値以下に予め低く抑えておく。
このように、ガラス基板製造時の熔融ガラスの清澄効果に応じて酸化鉄を含む原料(調整原料)を、シリカ原料、さらには、アルミナあるいは石灰石等の原料を含むガラス原料に付加して配合調整する。これにより、気泡による欠陥の発生頻度がほとんどなく、波長300nm近傍における透過率が高く調整されたガラス基板を効率よく製造することができる。
(ガラス基板の製造方法)
ガラス基板の製造方法について、まず概要を説明すると、ガラス基板は、ガラス原料の配合調整が行われた段階では、SiO2を主成分とするシリカ原料と、酸化鉄を含む調整原料とを他の原料とともに調合してガラス原料をつくる。このガラス原料を熔解し、熔融ガラスとする。この後、熔融ガラスの清澄を行う。このとき、シリカ原料は酸化鉄を含む。この酸化鉄をFe23で表したとき、シリカ原料はFe23を不純物として0.028質量%以下含む。また、ガラス原料に含まれる調整原料のガラス原料における含有量は、紫外線の透過率が30%以上となるように調整されている。このような調整原料の含有量は、以下で説明するように、熔融ガラス中のFe23の含有率が、清澄効果が急激に向上するFe23の含有率の数値をわずかに超えるように、調整される。これにより、波長300nmの透過率が30%以上となるように調整され得る。したがって、Fe23の含有率が、熔融ガラス中のFe23による清澄効果が急激に向上するときのFe23の含有率の値をわずかに越えるために要する調整原料の配合調整量を見出すことが必要になる。一方、この熔融ガラス中のFe23による清澄効果が急激に向上するときのFe23の含有率の値は、ガラス基板の組成によって変動する。また、ガラス基板の製造条件やガラス基板の組成の微妙な変動等によっても変動する。よって、上記配合調整量を予め見出すことは難しい。このため、以下に説明するように、上記調整原料の配合調整量を見出すことができるように、シリカ原料はFe23を不純物として0.028質量%(酸化鉄をFe23で表したときの含有率)以下含むようにする。これにより、熔融ガラス中に含まれるシリカ原料に由来するFe23の含有率を、熔融ガラス中のFe23による清澄効果が急激に向上するときの上記Fe23の含有率の値より低くすることができる。
図1は、本実施形態のガラス基板の製造方法のフローの一例を説明する図である。ガラス板の製造方法は、原料調合工程(ステップS5)と、熔解工程(ステップS10)と、清澄工程(ステップS20)と、攪拌工程(ステップS30)と、成形工程(ステップS40)と、徐冷工程(ステップS50)と、採板工程(ステップS60)と、形状加工工程(ステップS70)と、検査工程(ステップS80)と、を主に有する。
まず、原料調合工程(ステップS5)では、SiO2を主成分とするシリカ原料と、酸化鉄を含む調整原料とを他の原料とともに調合してガラス原料をつくる。ガラス原料として用いるシリカ原料は、酸化鉄を不純物として含み、そのシリカ原料におけるFe23の含有率は、0.028質量%以下である。上記Fe23の含有率は、好ましくは、0.02質量%以下であり、より好ましくは0.015質量%以下である。一方、シリカ原料におけるFe23の含有率は0.001質量%以上であることが好ましい。上記Fe23の含有率が0.001質量%より低いシリカ原料は入手が困難であり、また、上記Fe23の含有率が0.001質量%より低いシリカ原料を製造するには特別な処理が必要となりコストがかかる。
この他に、Al23を主成分とするアルミナ、あるいはCaCO3を主成分とする石灰石等がシリカ原料とともにガラス原料に含まれていてもよい。アルミナ、あるいは石灰石には、微量の酸化鉄が不純物として含まれている。シリカ原料におけるFe23の含有率が0.028質量%を越えると、熔融ガラスに含まれるFe23の含有率が、他の酸化鉄を含むガラス原料とあいまって、熔融ガラスの清澄効果が急激に向上するFe23の含有率の数値を超える場合があり、この場合、波長300nmにおける透過率を30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上に調整することはでき難い場合がある。このため、シリカ原料におけるFe23の含有率を0.028質量%以下とする。このとき、シリカ原料の不純物を由来としてガラス基板に含有されるFe23の含有量は、製造されるガラス基板に含まれるFe23の含有量に対して50質量%以下である、ことが好ましい。シリカ原料の不純物を由来としてガラス基板に含有されるFe23の含有量を、製造されるガラス基板に含まれるFe23の含有量に対して50質量%以下とすることにより、酸化鉄を含む調整原料を用いて清澄効果を発揮させ、かつ紫外線の透過率が向上するための調整配合の自由度を確保することができる。しかも、清澄効果を確保しつつ、Fe23の含有率を抑制することができるので、より紫外線の高い透過率を有するガラス基板を製造することができる。
また、CaOを1〜10質量%を含むガラス基板を製造する場合、ガラス原料は、シリカ原料のほか、CaOの原料となる石灰石を少なくとも含む。この石灰石が、酸化鉄を不純物として含み、石灰石に含まれる酸化鉄をFe23で表して、石灰石がFe23を、0.001〜0.05質量%含むとき、ガラス原料に用いるシリカ原料におけるFe23の含有率は0.001〜0.015質量%であることが好ましい。このとき、シリカ原料および石灰石の不純物を由来としてガラス基板に含有されるFe23の含有量は、製造されるガラス基板に含まれるFe23の含有量に対して50質量%以下である、ことがより好ましい。
また、CaOを1〜15質量%を含むガラス基板を製造する場合、ガラス原料は、シリカ原料のほか、CaOの原料となる石灰石を少なくとも含む。この石灰石が、酸化鉄を不純物として含み、石灰石に含まれる酸化鉄をFe23で表して、石灰石がFe23を、0.001〜0.05質量%含むとき、ガラス原料に用いるシリカ原料におけるFe23の含有率は0.001〜0.0125質量%であることが好ましい。このとき、シリカ原料および石灰石の不純物を由来としてガラス基板に含有されるFe23の含有量は、製造されるガラス基板に含まれるFe23の含有量に対して50質量%以下である、ことがより好ましい。
次に、熔解工程(ステップS10)では、図示されない熔解炉で、ガラス原料が加熱されて熔融ガラスが作られる。
次に、清澄工程が行われる(ステップS20)。清澄工程では、熔融ガラスが図示されない清澄槽で、熔融ガラス中の気泡が上述の清澄剤を用いて取り除かれる。清澄工程では、清澄槽内の熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれるO2、CO2、あるいはSO2等を含んだ泡が、清澄剤であるFe23の還元反応により生じたO2を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上して放出される(脱泡工程)。また、清澄工程では、脱泡後、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤であるFe23の還元反応により得られたFeOの酸化作用により、熔融ガラスに残存する泡中のO2が熔融ガラス中に吸収されて、泡が消滅する(吸収工程)。清澄剤による酸化反応及び還元反応は熔融ガラスの温度を制御することにより行われる。
Fe23の他に、SnO2等も清澄剤として機能するが、SnO2は、ガラスを失透し易くする成分であり、使用量が制限されるため、Fe23の含有率を調整することが、清澄効果を効果的に制御する点で好ましい。
次に、攪拌工程が行われる(ステップS30)。攪拌工程では、ガラスの化学的および熱的均一性を保つために、垂直に向けられた図示されない撹拌槽に熔融ガラスが通される。攪拌槽に設けられたスターラによって熔融ガラスは攪拌されながら、垂直下方向底部に移動し、後工程に導かれる。これによって、脈理等のガラスの不均一性を改善することができる。
次に、成形工程が行われる(ステップS40)。成形工程では、ガラス板を製板する方法に関しては特に制限はなく、フロート法やダウンドロー法が用いられる。オーバーフローダウンドローやスロットダウンドロー等を含むダウンドロー法は、例えば特開2010−189220号公報、特許第3586142号公報等に記載された公知の方法である。これにより、所定の厚さ、幅を有するシート状のガラスリボンが成形される。成形方法としては、ダウンドロー法の中でも、オーバーフローダウンドローが最も好ましいが、スロットダウンドローでもよい。
次に、徐冷工程が行われる(ステップS50)。具体的には、シート状に成形されたガラスリボンは、図示されない徐冷炉にて徐冷点以下に冷却される。
次に、採板工程が行われる(ステップS60)。具体的に、連続的に生産されるガラスリボンは一定の長さ毎に採板されガラス板が得られる。
この後、形状加工工程が行われる(ステップS70)。形状加工工程では、所定のガラス板のサイズや形状に切り出す他、ガラス端面の研削・研磨が行われる。
次に、検査工程が行われる(ステップS80)。検査工程では、ガラス基板中の気泡による欠陥の発生頻度を調べ、この発生頻度が所定頻度以下か否かを、所定の枚数のガラス基板について調べる。すなわち、ガラス基板が気泡品質を満たすか否かを判定する(ステップS90)。このとき、上記発生頻度が所定頻度を越えると判定された場合、すなわち気泡品質を満足しない場合、酸化鉄を含む調整原料等を用いて熔融ガラス中にFe23の含有率を高くする配合調整が行われ(ステップS100)、再度ステップS5〜S90が繰り返される。本実施形態では、ガラス基板が気泡品質を満たすまでステップS5〜S100が繰り返し行われるが、一端気泡均質が満たされた後においても、ガラス基板の製造中であれば、常に上記製造方法のフロー(ステップS5〜S100)が行われてもよい。
図2は、ガラス基板の分光透過率を示している。複数の曲線は、原料の配合調整によって変動する分光透過率を示す。図2に示されるように、波長250〜400nmにおいて透過率が急激に立ち上がり、原料の微妙な組成変化によって波長300nmにおける透過率は大きく変動することがわかる。図3は、波長300nmにおける透過率の一例を示すグラフである。図3に示す例によれば、透過率30%以上を確保するには、Fe23のガラス基板における含有率は0.045質量%以下(450ppm以下)である。なお、図3では、透過率30%におけるFe23の含有率は0.048質量%であるが、0.045質量%以下であれば、透過率30%以上を確保することができる。これに対して、Fe23による清澄効果は0.02質量%〜0.03質量%(200〜300ppm)において急激に向上する。しかし、Fe23による清澄効果が急激に向上するFe23の含有率の値は、ガラス基板の製造条件、さらにはガラス基板の組成の微妙な変動によって変動し、予め知ることはできない。したがって、本実施形態のガラス基板の製造方法では、ガラス基板におけるSiO2の含有率が50〜70質量%であることを考慮して、シリカ原料に不純物として含まれる酸化鉄をFe23で表したときのFe23の含有率を少なくとも0.028質量%(280ppm)以下とすることにより、シリカ原料に含まれる不純物を由来としてガラス基板に含有されるFe23の含有率を、清澄効果が急激に向上するFe23の含有率である0.02質量%〜0.03質量%(200〜300ppm)より、低くすることができる。また、シリカ原料の他にガラス原料として用いる他の原料に含まれる酸化鉄を由来としてガラス基板に含有されるFe23を合計した含有率(酸化鉄をFe23で表した合計の含有率)を、清澄効果が急激に向上するFe23の含有率である0.02質量%〜0.03質量%(200〜300ppm)より、低くすることができる。なお、シリカ原料におけるFe23の含有率0.028質量%は、清澄効果に応じてガラス原料を調整配合する前の段階で、アルミナあるいは石灰石等の酸化鉄を含む原料を含まない場合、あるいはこれらの原料に酸化鉄が不純物として全く含まれていない場合を想定した上限値である。
また、CaOを1〜10質量%を含むガラス基板を製造する場合、ガラス原料は、シリカ原料のほか、CaOの原料となる石灰石を含む。この石灰石が、酸化鉄を不純物として含み、石灰石に含まれる酸化鉄をFe23で表して、石灰石がFe23を、0.001〜0.05質量%含むとき、ガラス原料に用いるシリカ原料におけるFe23の含有率は0.001〜0.015質量%であることが好ましい。
このように、シリカ原料と調整原料を用いて原料調合をする前の段階では、熔融ガラスに含まれるFe23の含有率を、Fe23による清澄効果が急激に向上するFe23の含有率の値より低く抑えることができるので、清澄効果に応じて、酸化鉄を含む調整原料を用いて、ガラス基板における紫外線透過率が30%以上となるように、ガラス原料の原料調合をすることができ、気泡による欠陥が基準値以下であり、波長300nmの透過率が30%以上であって、好ましくは透過率が40%以上、より好ましくは50%以上であるガラス基板の製造を効率よく行うことができる。特に、本実施形態では、清澄効果が劇的に向上する直後のFe23の含有率を容易に見出すことができる。したがって、このときの原料調合を維持することにより、紫外線の高い透過率、例えば、40%以上あるいは50%以上の透過率を有するガラス基板を安定的に製造することができる。
シリカ原料におけるFe23の含有率は、好ましくは0.02質量%(200ppm)以下であり、より好ましくは0.015質量%(150ppm)以下である。シリカ原料におけるFe23の含有率の下限は好ましくは0.001質量%(10ppm)である。すなわち、シリカ原料におけるFe23の含有率を上記範囲にすることで、紫外線の透過率と清澄効果を効率よく調整して、好ましい透過率を有するガラス基板を効率よく製造することができる。
以上、本発明の液晶表紙装置用ガラス基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。

Claims (11)

  1. SiO2およびFe23を含有し、SiO2の含有率が50〜70質量%である液晶表示装置用ガラス基板の製造方法であって、
    SiO2を主成分とするシリカ原料と、酸化鉄を含む調整原料とを少なくとも用いて調合してガラス原料をつくる原料調合工程と、
    前記ガラス原料を熔解し熔融ガラスとする熔解工程と、
    前記熔融ガラスの清澄を行う清澄工程と、を有し、
    前記シリカ原料は、不純物として酸化鉄を含み、前記酸化鉄をFe23で表したとき、前記シリカ原料は、Fe23を0.001〜0.028質量%含み、前記調整原料の前記ガラス原料における含有量は、前記液晶表示装置用ガラス基板における波長300nmの透過率が30%以上となるように調整されている、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
  2. 前記調整原料の前記含有量は、さらに、前記熔融ガラスの前記清澄工程における清澄効果に応じて調整されている、請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
  3. 前記シリカ原料の不純物を由来としてガラス基板に含有されるFe23の含有量は、製造されるガラス基板に含まれるFe23の含有量に対して50質量%以下である、請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法。
  4. 前記ガラス基板は、CaOを1〜10質量%を含み、
    前記ガラス原料は、前記シリカ原料の他に、前記CaOの原料となる石灰石を含み、
    前記石灰石は、酸化鉄を不純物として含み、前記石灰石に含まれる酸化鉄をFe23で表したとき、前記石灰石は、Fe23を0.001〜0.05質量%含むとき、
    前記ガラス原料に用いる前記シリカ原料は、Fe23を0.001〜0.015質量%含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  5. 前記ガラス基板は、CaOを1〜15質量%を含み、
    前記ガラス原料は、前記シリカ原料の他に、前記CaOの原料となる石灰石を含み、
    前記石灰石は、酸化鉄を不純物として含み、前記石灰石に含まれる酸化鉄をFe23で表したとき、前記石灰石がFe23を0.001〜0.05質量%含むとき、
    前記ガラス原料に用いる前記シリカ原料は、Fe23を0.001〜0.0125質量%含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  6. 前記シリカ原料および前記石灰石の不純物を由来としてガラス基板に含有されるFe23の含有量は、製造されるガラス基板に含まれるFe23の含有量に対して50質量%以下である、請求項4または5に記載のガラス基板の製造方法。
  7. 前記ガラス基板は、SnO2を0.15〜0.25質量%含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  8. 製造されるガラス基板のβ−OH値が0.45/mm以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  9. 前記ガラス基板にAs23及びSb23を実質的に含まない、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガラス製造方法。
  10. SiO2およびFe23を含有し、SiO2の含有率が50〜70質量%である液晶表示装置用ガラス基板の製造方法であって、
    SiO2を主成分とするシリカ原料を少なくとも含むガラス原料を調合する原料調合工程と、
    前記ガラス原料を熔解し熔融ガラスとする熔解工程と、
    前記熔融ガラスの清澄を行う清澄工程と、を有し、
    前記シリカ原料は、不純物として酸化鉄を含み、前記酸化鉄をFe23で表したとき、前記シリカ原料は、Fe23を0.001〜0.028質量%以下含み、前記清澄工程における前記熔融ガラスの清澄効果に応じて、前記原料調合工程において、酸化鉄を含む調整原料を用いて、前記ガラス原料を調合することを特徴とするガラス基板の製造方法。
  11. SiO2およびFe23を含有し、SiO2の含有率が50〜70質量%であり、波長300nmの紫外線透過率が30%以上である液晶表示装置用ガラス基板の製造方法であって、
    SiO2を主成分とし酸化鉄を不純物として含むシリカ原料と、酸化鉄を主成分として含む調整原料とを少なくとも用いて調合してガラス原料をつくる原料調合工程と、
    前記ガラス原料を熔解し熔融ガラスを生成する熔解工程と、
    生成した熔融ガラスの清澄を行う清澄工程と、を有し、
    前記シリカ原料が不純物として含む前記酸化鉄をFe23で表したとき、前記シリカ原料は、該Fe23を0.001〜0.028質量%含む、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。

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