図13(a)は、従来の光コネクタ組立体100を示す平面図であり、図13(b)は、図13(a)のN−N線断面図であって、くさび部材111の透視図である。光コネクタ組立体100は、主に、フェルール103、基台部105、蓋部材107a、107b、ばね部材109等から構成される。
フェルール103は、内部に光ファイバ113を内蔵する。フェルール103には、基台部105が接続される。基台部105には、V溝106が軸方向に形成される。V溝106は、光ファイバ113と、これと接続される光ファイバ121との位置決めを行う部位である。
基台部105上には、光ファイバ113、121を挟み込むように、蓋部材107a、107bが設けられる。蓋部材107aは、光ファイバ113と光ファイバ121の被覆除去部を保持する部位であり、蓋部材107bは、光ファイバ121(の被覆部)を保持する部位である。
ばね部材109は、略C字状の断面形状を有し、蓋部材107a、107bと基台部105とを挟み込むようにそれらの外部に配置される。ばね部材109には、ばね部109a、109bが形成され、それぞれ蓋部材107a、107bを挟み込む部位となる。すなわち、蓋部材107a、107bは、ばね部材109のばね部109a、109bによってそれぞれ基台部105に対して押圧される。
蓋部材107a、107bと基台部105の間には、くさび部材111が挿入される。図14は、くさび部材111を示す図であり、図14(a)は平面図、図14(b)は図14(a)のQ矢視図である。くさび部材111は、操作片117の端部に操作部119を有し、操作片117の一方の面に、断面略直方体の挿入刃115a、115bが設けられる。挿入刃115aは、蓋部材107aと基台部105との隙間に挿入され、挿入刃115bは、蓋部材107bと基台部105との隙間に挿入される。
図13に示すように、くさび部材111が挿入された状態では、蓋部材107a、107bと基台部105との間に、隙間が保持される。すなわち、くさび部材111が挿入された状態では、光ファイバ113および光ファイバ121は、蓋部材107a、107bと基台部105との間で挟まれて、固定されることはない。
光ファイバ121が蓋部材107a、107bと基台部105との間(V溝106)に挿入されて、互いの先端が突き合わされた状態で、くさび部材111の操作部を押し込むと(図13(a)の矢印O方向)、くさび部材111は、操作部119近傍を起点に回転する。したがって、他方の端部が、蓋部材107a、107bと基台部105との間から抜き取られる(図中矢印P方向)。
図15は、くさび部材111が抜き取られる状態を示す図である。図15(a)に示すように、例えば蓋部材107aと基台部105との間の挿入部108の一部にでもくさび部材111の挿入刃115aが挿入されていると、蓋部材107aは、基台部105に対して一定の隙間を形成して保持される。すなわち、ばね部109aは、蓋部材107aの全体を押圧するため、挿入部108の一部に挿入刃105aが挿入されていれば、蓋部材107aと基台部105とは、互いに略平行な隙間を形成して保持される(図13(b))。
くさび部材111を回転させていくと、図15(b)に示すように、ある時点で挿入部108からくさび部材111が抜き取られる(図中矢印R方向)。くさび部材111が抜き取られると、その瞬間に、ばね部109aによって蓋部材107aが基台部105側に押し込まれる。すなわち、蓋部材107aは、光ファイバの軸方向に対して、垂直な方向に一気に閉じられる。蓋部材107aが閉じることで、光ファイバ103、121を保持し固定することができる。
近年、現場付けコネクタの光ファイバ同士の突き当て部における反射光を低減させるために、従来のフラットにカットした光ファイバ端部同士の突き当てではなく、内蔵ファイバと挿入ファイバの端面を互いに斜めにカットして接続する現場付けコネクタが開発されている。
しかし、図16に示すように、斜めにカットされた光ファイバ113、121同士の接続では、光ファイバ113、121の先端同士を突き当てた際に、挿入した光ファイバ121が内蔵ファイバである光ファイバ113端部に乗り上げる恐れがある。
これに対し、特許文献1のような従来の光コネクタを用いると、くさび部材を抜去した瞬間に、基台部105と蓋部材107aとがばね部材109によって押圧されて、互いの隙間が一気に閉じられる。すなわち、基台部105と蓋部材107aとは、くさび部材111によって互いにほぼ平行な隙間によって保持されるが、くさび部材111が抜け切った瞬間に、蓋部材107aは基台部105に対して垂直方向に閉じられる(図中矢印S方向)。
この際、光ファイバ121の先端が乗り上げられた状態で、蓋部材107aが基台部105に対して垂直に押し付けられると、挿入された光ファイバ121が光ファイバ113を潰すように押圧される。したがって、従来の光コネクタでは、光ファイバ113端面と光ファイバ121端面が干渉した領域に欠けや割れが生じる恐れがある。このため、この際に生じた破片によるファイバ同士の調芯ズレや、端面の割れにより接続部でのロス増加および反射特性の悪化の恐れがある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、光ファイバ先端が乗り上げた状態に対しても、端部の破損を防止することが可能な光コネクタ組立体および光コネクタ組立体への光ファイバの接続方法を提供することを目的とする。
前述した目的を達するために第1の発明は、第1の光ファイバを内蔵するフェルールと、前記フェルールと接続される基台部と、前記基台部に形成され、前記第1の光ファイバおよび前記第1の光ファイバとの光接続対象である第2の光ファイバの位置決めを行う溝と、前記基台部の上方から前記第1の光ファイバおよび前記第2の光ファイバの接続部を保持する蓋部材と、前記蓋部材を前記基台部に押し付けるばね部材と、前記蓋部材と前記基台部との隙間に挿入されるくさび部材と、を具備し、前記ばね部材の前記蓋部材を押圧する部位が、少なくとも前記接続部の軸方向に複数に分割され、それぞれの分割部における前記蓋部材の押量を変えることで、前記蓋部材を軸方向に対して斜めに保持することが可能であり、前記くさび部材は、前記蓋部材と前記基台部との隙間に挿入される挿入刃と、前記挿入刃を前記隙間から回転抜去するために、前記くさび部材に形成される操作部とを具備し、前記操作部は、前記くさび部材の前記フェルールから遠い側の端部に形成され、前記蓋部材の前記フェルールとは反対側の端部から突出し、前記蓋部材と前記基台部との間に挿入される部位の前記挿入刃の厚みが、前記操作部から遠ざかるにつれて薄くなるテーパ形状であることを特徴とする光コネクタ組立体である。
前記テーパ形状は、断面が凹形状の曲面であってもよい。
前記蓋部材と前記基台部との間に挿入される部位の前記挿入刃の突出長さが、前記操作部から遠ざかるにつれて短くしてもよい。
第1の光ファイバを内蔵するフェルールと、前記フェルールと接続される基台部と、前記基台部に形成され、前記第1の光ファイバおよび前記第1の光ファイバとの光接続対象である第2の光ファイバの位置決めを行う溝と、前記基台部の上方から前記第1の光ファイバおよび前記第2の光ファイバの接続部を保持する蓋部材と、前記蓋部材を前記基台部に押し付けるばね部材と、前記蓋部材と前記基台部との隙間に挿入されるくさび部材と、を具備し、前記ばね部材の前記蓋部材を押圧する部位が、少なくとも前記接続部の軸方向に複数に分割され、それぞれの分割部における前記蓋部材の押量を変えることで、前記蓋部材を軸方向に対して斜めに保持することが可能であり、前記蓋部材と前記基台部との間には、前記くさび部材が挿入されるくさび挿入部が形成され、前記くさび挿入部の挿入代が、前記フェルールから遠ざかるにつれて狭くなってもよい。
前記溝の前記第2の光ファイバが配置される部位に、前記溝の深さが深い深溝部が形成されてもよい。
前記蓋部材の材質は、フィラーを含有しない樹脂で構成されることが望ましい。
第1の発明によれば、ばね部が複数に分割しているため、蓋部材を押圧する部位が複数個所に分散される。このため、光ファイバの接続部の軸方向で、蓋部材の押量が同一ではなく、個々のばね部に応じて異なるようにすることができる。したがって、蓋部材を基台部に対して水平に保持するのではなく、斜めに保持することが可能となる。このため、光ファイバの接続部に対して、蓋部材を垂直に閉じさせずに、接続部に対して斜めに蓋部材を閉じさせることができる。
したがって、光ファイバが乗り上げている場合でも、蓋部材を閉じる際に、第2の光ファイバを後方に押し戻すように力を付与することが可能である。このため、光ファイバの端部の損傷を防止することができる。
また、くさび部材が、蓋部材と基台部との隙間に挿入される挿入刃と、挿入刃を隙間から抜き取るためにくさび部材の端部に形成される操作部とを具備し、蓋部材と基台部との間に挿入される部位の挿入刃の厚みが、操作部から遠ざかるにつれて薄くなるようなテーパ形状とすることによって、くさび部材を抜き取る際に、くさび部材の厚みに応じて蓋部材と基台部との隙間を斜めにすることができる。このため、より確実に、蓋部材を基台に対して斜めに閉じさせることができる。
したがって、光ファイバが乗り上げている場合でも、くさび部材を抜き取ることで蓋部材を閉じる際に、第2の光ファイバに対して押し戻す方向に力を付与し、光ファイバの端部の損傷を確実に防止することができる。
また、テーパ形状の断面が凹形状の曲面であれば、効率よく、光ファイバを押し戻す方向に力を付与することができる、
また、くさび部材が、蓋部材と基台部との隙間に挿入される挿入刃と、挿入刃を隙間から回転抜去するためにくさび部材の端部に形成される操作部とを具備し、蓋部材と基台部との間に挿入される部位の挿入刃の突出長さを、操作部から遠ざかるにつれて短くすることで、くさび部材の回転時に最外周部となる部位を、より早く蓋部材と基台部との隙間から抜き取ることができる。
したがって、先にくさび部材が抜き取られる部位の蓋部材は、分割されたばね部材によって先に押し込まれ、まだくさび部材が挿入されている部位の蓋部材は閉じられることがないため、蓋部材を確実に斜めに閉じさせることができる。このため、光ファイバが乗り上げている場合でも、くさび部材を抜き取ることで蓋部材を閉じる際に、第2の光ファイバに対して押し戻す方向に力を付与し、光ファイバの端部の損傷を確実に防止することができる。
また、蓋部材と基台部との間に形成される、くさび部材が挿入されるくさび挿入部において、くさび挿入部の挿入代を、フェルールから遠ざかるにつれて狭くなるようにすることで、従来の厚みが均一で長さも均一な略直方体の挿入刃を有するくさび部材を用いても、蓋部材を斜めに保持することができる。このため、光ファイバが乗り上げている場合でも、くさび部材を抜き取ることで蓋部材を閉じる際に、第2の光ファイバに対して押し戻す方向に力を付与し、光ファイバの端部の損傷を確実に防止することができる。
また、第2の光ファイバが配置される部位の溝に、他の部位に対して深さが深い深溝部を形成することで、第2の光ファイバが蓋部材によって押し戻された際に、第2の光ファイバの逃げ部を形成することができる。したがって、より確実に、第2の光ファイバを押し戻すことができる。
また、蓋部材の材質を、フィラーを含有しない樹脂で構成することで、蓋部材の強度を弱くすることができる。したがって、蓋部材を容易に変形させることができる。このため、蓋部材を斜めに保持し、確実に斜めに閉じさせることができる。また、フィラーを含有させないことで、樹脂を透明にすることができる。したがって、内部の状態を視認することが容易である。
第2の発明は、第1の発明にかかる光コネクタ組立体を用い、前記くさび部材が、前記蓋部材と、前記基台部との隙間に挿入された状態で、前記第2の光ファイバの先端を前記第1の光ファイバの先端に突き当てるように、前記第2の光ファイバを前記溝に挿入し、前記くさび部材を、前記蓋部材と前記基台部との隙間から抜き取る際に、前記第1の光ファイバ側の前記ばね部材の分割部を、前記第2の光ファイバ側の前記ばね部材の分割部よりも早く閉じさせることを特徴とする光コネクタ組立体への光ファイバの接続方法である。
第2の発明によれば、蓋部材と基台部との隙間からくさび部材を抜き取る際に、第1の光ファイバ側のばね部材の分割部を、第2の光ファイバ側のばね部材の分割部よりも早く閉じさせることで、蓋部材を斜めに閉じさせることができる。このため、光ファイバが乗り上げている場合でも、くさび部材を抜き取ることで蓋部材を閉じる際に、第2の光ファイバに対して押し戻す方向に力を付与し、光ファイバの端部の損傷を確実に防止することができる。
本発明によれば、光ファイバ先端が乗り上げた状態に対しても、端部の破損を防止することが可能な光コネクタ組立体および光コネクタ組立体への光ファイバの接続方法を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、光コネクタ組立体1を示す概略図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図であり、くさび部材11を透視した図である。光コネクタ組立体1は、主に、フェルール3、基台部5、蓋部材7a、7b、ばね部材9、くさび部材11等から構成される。
フェルール3は、内部に第1の光ファイバである光ファイバ13を内蔵する。フェルール3には、基台部5が接続される。基台部5には、V溝6が軸方向に形成される。V溝6は、光ファイバ13と、これと接続対象である光ファイバとの位置決めを行う部位である。
基台部5上には、光ファイバ13および接続対象である他の光ファイバを挟み込むように、蓋部材7a、7bが設けられる。蓋部材7aは、光ファイバ113と他の光ファイバの接続部(被覆除去部)を保持する部位であり、蓋部材7bは、他の光ファイバの被覆部を保持する部位である。
ばね部材9は、略C字状の断面形状を有し、蓋部材7a、7bと基台部5とを挟み込むようにそれらの外部に配置される。ばね部材9は、例えば金属製である。ばね部材9には、それぞれ分割されたばね部9a、9b、9cが形成される。
ばね部9a、9bは蓋部材7aと基台部5とを挟み込む部位となる。また、ばね部9cは蓋部材7bと基台部5とを挟み込む部位となる。すなわち、蓋部材7a、7bは、ばね部材9のばね部9a、9b、9cによってそれぞれ基台部5に対して押圧され、この際、一体で形成される蓋部材7aが、光ファイバの軸方向に分割された複数のばね部9a、9bで保持される。
蓋部材7a、7bと基台部5の間には、くさび部材11が挿入される。図2は、くさび部材11を示す概略図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のB矢視図である。くさび部材11は、操作片17、挿入刃15a、15b等から構成される。操作片17の端部は操作部19となる。また、操作片17の一方の面に、挿入刃15a、15bが設けられる。操作部19から遠い側の挿入刃15aは、蓋部材7aと基台部5との隙間に挿入され、操作部19に近い側の挿入刃15bは、蓋部材7bと基台部5との隙間に挿入される。
図2(b)に示すように、挿入刃15aは、操作部19から離れるにつれて徐々にその厚みが薄くなるようなテーパ形状を有する。すなわち、挿入刃15aの厚みは一定ではなく、操作部19側の端部が最も厚みが厚く、他方の端部が最も厚みが薄くなる。
図1(b)に示すように、くさび部材11が挿入された状態では、蓋部材7a、7bと基台部5との間に、隙間が保持される。すなわち、くさび部材11が挿入された状態では、当該隙間を利用して、接続対象の他の光ファイバを蓋部材7a、7bと基台部5との間に挿入することができる。なお、くさび部材11は、操作部19が蓋部材7b側の端部(フェルール3から遠い側の端部)側に位置するように取り付けられる。
この際、蓋部材7aを押し開く挿入刃15aは、その厚みが一定ではない。また、蓋部材7aを押圧するばね部9a、9bは複数に分割されている。このため、挿入刃15aの厚みの薄い部位を挟み込む部位は、ばね部9aによって押圧され、挿入刃15aの厚みの厚い部位を挟み込む部位は、ばね部9bによって押圧される。このようにばね部9a、9bが分割されているため、それぞれのばね部9a、9bでの蓋部材7の押量を変えることができる。したがって、挿入刃15aの厚みに応じて蓋部材7aが変形し、蓋部材7aを斜めに保持することができる。
なお、蓋部材7aは、より変形が容易な材料で構成されることが望ましい。例えば、フィラーが充填されていない樹脂であることが望ましく、ポリカーボネートやポリアセタールやポリエーテルイミド等が使用できる。フィラーを充填しないことで、蓋部材7aの弾性定数を小さくすることができ、より容易に変形させることができる。また、フィラーを充填しないことで、蓋部材7aを透明にすることもできる。このようにすることで、内部の状態を外部からも視認することができる。なお、基台部5や他の部位には、所定の強度が必要であるため、フィラー充填樹脂を適用することが望ましい。
次に、光コネクタ組立体1を用いて、光ファイバを接続する方法について説明する。図3は、光コネクタ組立体1に光ファイバ21を挿入した状態を示す概略図で、図3(a)は平面図、図3(b)は図1(b)に対応した断面図、図3(c)は図3(b)のC部拡大図である。前述の通り、光コネクタ組立体1の蓋部材7a、7bと、基台部5との間には、くさび部材11を挿入する挿入部8が形成される。挿入部8には、挿入刃15a、15bが挿入される。したがって、蓋部材7a、7bと基台部5との間には隙間が形成されて保持される。
この状態から、まず、光ファイバ13との接続対象であり、第2の光ファイバである光ファイバ21を、蓋部材7a、7bと基台部5との間(V溝6)に挿入し、互いの先端を突き合わせる。なお、それぞれの光ファイバ13、21の先端は、例えば斜めにカットされている。
蓋部材7aを押圧するばね部材9は、ばね部9a、9bに分割されている。ここで、ばね部材9は、光ファイバ13、21の突き当て部をまたぐように、ばね部が複数に分割されることが望ましい。例えば、光ファイバ13、21の突き当て部よりもフェルール3側(光ファイバ13側)を押圧可能なばね部と、光ファイバ13、21の突き当て部よりもフェルール側とは反対側(光ファイバ21側)を押圧可能なばね部とに少なくとも分割されることが望ましい。
なお、ばね部の分割は、図示した例に限られず、複数に分割されれば、分割数は問わない。また、例えば、ばね部毎にばね力を変えてもよい。例えば、ばね部9aの押圧力をばね部9bの押圧力よりも強くしてもよい。以上のように、ばね部を分割させることで、蓋部材7aの部位ごとに異なる押量で蓋部材7aを押圧することができる。したがって、フェルール3側に行くにつれて基台部5との隙間が小さくなるように、蓋部材7aを斜めに保持することができる。
次に、図4(a)に示すように、くさび部材11の操作部19を押し込む(図中矢印D方向)。すると、くさび部材11は、操作部19近傍(蓋部材7bの端部側であって、フェルール3とは反対側の端部近傍)を起点に回転する。したがって、くさび部材11の回転に伴い、蓋部材7a、7bと基台部5との隙間から挿入刃15a、15bが抜き取られる(図中矢印E方向)。
図4(b)は、くさび部材11の一部が抜き取られた状態の部分拡大断面図である。くさび部材11は、操作部19近傍を起点として回転する。したがって、回転外周側に位置する挿入刃15aは、その先端側(フェルール3側)から徐々に、挿入部8から抜き取られていく。図4(b)においては、蓋部材7aのフェルール3側の約半分(図中F部)においては、挿入刃15aが抜き取られ、蓋部材7aの蓋部材7b側の約半分(図中G部)に、挿入刃15aが挟まれている状態である。
すなわち、蓋部材7aのばね部9aで押圧される部位は、挿入部8に挿入されている挿入刃15aが存在しないため、光ファイバ13側に大きく押し込まれる。一方、蓋部材7aのばね部9bで押圧される部位は、挿入部8に挿入されている挿入刃15aが存在するため、それ以上蓋部材7aを押し込むことができない。したがって、蓋部材7aをより確実に斜めに(光ファイバ21側が広く開くように)保持される。
さらにくさび部材11の操作部19を押し込むと、図5(a)に示すように、挿入刃15aがさらに抜き取られる。図5(b)は、わずかに挿入刃15aの一部が挿入部8に挟まれている状態を示す図である。このように、徐々に挿入刃15aの抜き取り部(図中F部)が広がり、挿入部(図中G部)が短くなる。したがって、挿入部8に挿入刃15aが存在しない部位の蓋部材7aは、ばね部9aによって、基台部5側に大きく押し込まれていく。この際、蓋部材7aのフェルール3側の端部が最も大きく押し込まれ、光ファイバ21側に向かって徐々に隙間が大きくなるように蓋部材7aが変形する。
さらに、くさび部材11の操作部19を押し込むことで、図5(c)に示すように、完全に挿入刃15aが挿入部8から抜き取られる。すなわち、蓋部材7aの全体が挿入刃15aの抜き取り部(図中F部)となる。挿入刃15aが完全に抜き取られると、ばね部9bが位置する部位の蓋部材7aも、他の部位と同様に光ファイバ側に押し込まれる。したがって、蓋部材7a全体と基台部5との間で、光ファイバ13、21が挟み込まれて保持される。
図6は、蓋部材7aが徐々に押し込まれていく過程を示す拡大図である。前述の通り、光ファイバ21を光ファイバ13の端部に押し当てた際に、光ファイバ21の先端が光ファイバ13上に乗り上げる場合がある。
本発明においては、図6(a)に示すように、蓋部材7aが光ファイバ13側から先に閉じられていく。この際、光ファイバ13、21の突き当て部に対しては、蓋部材7aの閉じ方向(図中H方向)に力が付与される。蓋部材7aは、光ファイバ13側から斜めに変形しながら閉じられるため、突き当て部に付与される力の方向は、突き当て方向に垂直ではなく、やや光ファイバ21方向に斜めの方向となる。
この状態で、蓋部材7aがさらに徐々に閉じられると、図6(b)に示すように、蓋部材7aによって突き当て部が光ファイバ21方向に斜めに(図中矢印H方向)押し込まれていく。したがって、光ファイバ21には、上方から押さえつけられる力とともに、光ファイバ21を後方に押し戻す力が付与される(図中矢印I方向)。
このように、蓋部材7aは、その変形によって、光ファイバ21を後方に押し戻しながら閉じられていき、完全に挿入刃15aが抜き取られると、図6(c)に示すように、蓋部材7aと基台部5とで光ファイバ13、21が挟みこまれる。したがって、光ファイバ21が光ファイバ13に乗り上げた状態であっても、光ファイバ21が後方に押し戻されながら蓋部材7aが閉じられていくため、ファイバ先端の損傷を抑制することができる。
図7は、より確実に光ファイバ21を後方に押し戻すための変形例である。図7(a)においては、V溝6の一部に深溝部6aが形成される。深溝部6aは、他の部位よりも溝の深さが深く形成される。深溝部6aは、光ファイバ13、21の突き当て部に対して、光ファイバ21側の突き当て部からやや離れた位置に形成される。
前述の通り、蓋部材7aが徐々に閉じられていく過程において、光ファイバ21は、後方に押し戻される(図中矢印I方向)。この際、光ファイバ21は、V溝6内に配置されるため、光ファイバ21がV溝6等との間で十分に滑らない場合など、光ファイバ21が後方に移動することが困難である場合がある。
このような場合においても、図7(b)に示すように、深溝部6aは、光ファイバ21が後方に逃げることが可能なように、光ファイバ21の逃げ部として機能する。すなわち、光ファイバ21は、蓋部材7aによって後方に押し戻された際に、光ファイバ21全体が軸方向に十分に移動できない場合であっても、光ファイバ21の一部を光伝送に影響を受けない程度に湾曲させることで、光ファイバ21の後方への逃げ代を吸収することができる。したがって、光ファイバ21が後方に移動できない場合でも、突き当て部における端部同士の重なりを抑制することができる。
また、図8は、挿入刃の変形例を示す図である。くさび部材30は、くさび部材11と同様であるが、図8(a)に示すように、挿入刃の形態が異なる。くさび部材30は、操作片33、挿入刃31a、31b等から構成される。操作片33の端部は操作部35となる。
なお、くさび部材30の挿入刃31a、31b、操作片33および操作部35は、くさび部材11の挿入刃15a、15b、操作片17および操作部19にそれぞれ対応する。すなわち、操作部35から遠い側の挿入刃31aは、蓋部材7aと基台部5との隙間に挿入され、操作部35から近い側の挿入刃31bは、蓋部材7bと基台部5との隙間に挿入される。
挿入刃31aは、操作部35から離れるにつれて徐々にその厚みが薄くなるような凹状に湾曲したテーパ形状を有する。すなわち、挿入刃31aの厚みは一定ではなく、操作部35側の端部が最も厚みが厚く、他方の端部が最も厚みが曲線状に薄くなる。
図8(b)は、くさび部材30が挿入された光コネクタ組立体1aを示す図である。なお、以下の説明において、光コネクタ組立体1と同様の構成については、図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。光コネクタ組立体1aは、光コネクタ組立体1と略同様の構成であるが、くさび部材およびばね部材の態様が異なる。
光コネクタ組立体1aにおけるばね部材9は、蓋部材7aに対応する部位が、ばね部9a、9b、9dに3分割されている。図8(c)に示すように、蓋部材7aと基台部5との間の挿入部8には、挿入刃31aが挿入されている。挿入刃31aは、凹状に湾曲したテーパ形状である。また、ばね部9a、9b、9cは、それぞれ個別に蓋部材7aを押圧する。しがたって、蓋部材7aは、挿入刃31aの形状に沿って変形して、斜めに保持される。
なお、光ファイバ13、21の突き当て部に対して、ばね部9aは、フェルール3側に配置され、ばね部9dは蓋部材7b側に分割して配置されることが望ましい。
図8(c)の状態から、前述したようにくさび部材30(挿入刃31a)を徐々に抜き取ることで、蓋部材7aは基台部5に対して斜めに閉じられる。したがって、光コネクタ組立体1と同様の効果を奏することができる。なお、曲線状のテーパ形状を形成する場合には、凸状のテーパ形状よりも凹状のテーパ形状の方が、蓋部材7aが閉じる際に、光ファイバ21を後方に押し戻す力を確実に得ることができる。このように、蓋部材7aを挿入刃31aの凹状テーパ形状に沿って変形させることで、より確実に、光ファイバ21を押し戻す方向へ力を付与することが可能となる。
以上説明したように、光コネクタ組立体1、1aによれば、蓋部材7aを押圧するばね部を複数に分割することで、それぞれの分割部が別個に蓋部材7aの対応する部位を押圧し、蓋部材7aを押し込むことができる。したがって、蓋部材7aを変形させて、斜めに保持することができる。
この際、光ファイバ13側から光ファイバ21側へ、基台部5との隙間が徐々に大きくなるようにすることで、蓋部材7aを閉じる際に、光ファイバ21を押し戻す方向に光ファイバ21の突き当て部に力を付与することができる。したがって、光ファイバ21が光ファイバ13に乗り上げている場合においても、光ファイバ21を後方に押し戻しながら蓋部材7aで保持するため、光ファイバ同士の突き当て部の損傷を防止することができる。
なお、前述の実施形態では、抜き取られる挿入刃の厚みを変化させてテーパ形状とし、挿入刃が全て挿入されている状態においても、蓋部材7aが斜めに保持されるようにしたが、テーパ形状は必ずしも必要ではない。前述の通り、使用されるくさび部材は、光ファイバ21側の端部を基点として回転するため、基点から最も遠い側であるフェルール3側から順次挿入刃が抜き取られる。
すなわち、厚み一定の挿入刃が全て蓋部材7aに挿入されている状態では、蓋部材7aと基台部5とは平行に保持されるが、挿入刃がフェルール3側から徐々に抜き取られていく際に、分割されたばね部によって、フェルール3側から順次、蓋部材7aが押し込まれていく。このため、蓋部材7aを斜めに変形させながら挿入刃を抜き取ることができる。したがって、本発明では、蓋部材7aを押圧する部位のばね部材9を複数のばね部に分割させれば、上記の効果を得ることができる。
これに対し、さらにくさび部材の挿入刃をテーパ形状とすることで、より確実に蓋部材7aを斜めに変形させながら、基台部5に対して閉じさせることができる。したがって、より確実に光ファイバ21を後方に押し戻すことができる。
次に、第2の実施の形態について説明する。図9は、第2の実施形態にかかる、くさび部材40を示す図である。くさび部材40は、操作片43、挿入刃41a、41b等から構成される。操作片43の端部は操作部45となる。また、操作片43の一方の面に、挿入刃41a、41bが設けられる。操作部45から遠い側の挿入刃41aは、蓋部材7aと基台部5との隙間に挿入され、操作部45に近い側の挿入刃41bは、蓋部材7bと基台部5との隙間に挿入される。
挿入刃41aは、操作部45から離れるにつれて徐々に操作片43からの突出長さが短くなるようなテーパ形状を有する。すなわち、挿入刃41aの突出長さは一定ではなく、操作部45側の端部が最も突出長さが長く、他方の端部が最も突出長さが短くなる。
なお、図9に示す例では、テーパ形状が挿入刃41aの一部に形成される例を示したが、挿入刃41aの全幅をテーパ形状としてもよい。また、図2等に示した実施形態において、先端側の挿入刃(挿入刃41aに対応)の厚みを変化させたが、本実施形態においては、厚みは一定でもよく、または、前述の実施形態と同様に厚みも変化させてもよい。
図10(a)は、くさび部材40を用いた光コネクタ組立体1bを示す図である。光コネクタ組立体1bは、くさび部材40を用いる点以外では、光コネクタ組立体1と同様の構成である。くさび部材40が挿入された状態で、光ファイバ21が蓋部材7a、7bと基台部5との隙間(V溝6)に挿入されて、内部で光ファイバ13の端部と突き当てられる。
図10(b)に示すように、挿入刃41aは、その厚みは一定である。したがって、挿入刃41aが蓋部材7aと基台部5との間の挿入部8に挿入された際に、蓋部材7aと基台部5とは、その開口部が略平行に保持される。
次に、図11(a)に示すように、操作部45を光ファイバ21側に押し込む(図中矢印D方向)。すると、くさび部材40は、操作部45近傍(蓋部材7bの端部側であって、フェルール3とは反対側の端部近傍)を起点に回転する。したがって、くさび部材40の回転に伴い、蓋部材7a、7bと基台部5との隙間から挿入刃41a、41bが抜き取られる(図中矢印E方向)。
図11(b)は、くさび部材40の一部が抜き取られた状態の部分拡大断面図である。くさび部材40は、操作部45近傍を起点として回転する。したがって、回転外周側の挿入刃41aは、先端側(フェルール3側)から徐々に、挿入部8から抜き取られていく。図11(b)においては、蓋部材7aのフェルール3側の約半分(図中F部)においては、挿入刃41aが抜き取られ、蓋部材7aの蓋部材7b側の約半分(図中G部)に、挿入刃41aが挟まれている状態である。
本実施形態では、くさび部材40の回転に伴い、最初に蓋部材7aから抜きとられる側の挿入刃41aの突出長さが、短くなっている。したがって、くさび部材40を僅かに回転させるのみで、当該先端側は即座に蓋部材7aから抜き取られる。一方、挿入刃41aの反対側の端部の突出長さは長いため、くさび部材40を所定以上回転させなければ、挿入刃41aが蓋部材7aから完全に抜き取られることがない。
すなわち、くさび部材40の回転に伴い、挿入刃41aは、徐々に蓋部材7aから抜き取られる。この際、フェルール3側のばね部9aに対応する部位からは、僅かにくさび部材40が回転するだけで、即座に挿入刃41aが抜き取られる。一方、ばね部9bに対応する部位から挿入刃41aが抜き取られるまでには所定以上くさび部材40を回転させる必要がある。このため、図11(b)に示すように、ばね部9a下部からは挿入刃41aが抜き取られて、ばね部9b下部には挿入刃41aが残存する状態をより長い時間形成することができる。
したがって、蓋部材7aのばね部9aで押圧される部位は、挿入部8に挿入されている挿入刃41aが存在しないため、光ファイバ13側に押し込まれる。一方、蓋部材7aのばね部9bで押圧される部位は、挿入部8に挿入されている挿入刃41aが存在するため、それ以上蓋部材7aを押し込むことができない。したがって、蓋部材7aをより確実に斜めに(光ファイバ21側が広く開くように)保持することができる。
以上、第2の実施形態にかかる光コネクタ組立体1bによれば、光コネクタ組立体1と同様の効果を得ることができる。また、挿入刃41aの先端側の突出長さを短くすることで、くさび部材40を操作した際に、フェルール3(光ファイバ13)側の蓋部材7aから、より早く挿入刃41aを抜き取ることができる。このため、ばね部9a、9b各部における挿入刃41aが抜き取られるタイミング差を大きくすることができる。したがって、蓋部材7aをより確実に斜めに変形させることができる。このため、挿入刃41aを抜き取る際に、光ファイバ21を確実に後方に押し戻すことができる。
次に、第3の実施の形態について説明する。図12(a)は、光コネクタ組立体1cを示す図であり、図12(b)は図12(a)のJ−J線断面図、図12(c)は図12(a)のK−K線断面図である。なお、図12においては、くさび部材の図示を省略するが、従来のくさび部材111(図14)を用いることもできる。光コネクタ組立体1cは光コネクタ組立体1と略同様の構成であるが、蓋部材7aと基台部5との間のくさび部材を挿入する挿入部8の態様が異なる。
光コネクタ組立体1cの挿入部8は、完全に閉じた状態(蓋部材7aおよび基台部5とで光ファイバを保持可能な状態)において、その挿入代(開口部高さ)が長手方向に一定ではない。挿入部8の挿入代は、フェルール3側が最も広く、蓋部材7b側に行くにつれて徐々に狭くなる。
すなわち、図12(b)に示すように、フェルール3側であって、ばね部9aに対応する部位の挿入部8の挿入代をLとし、図12(c)に示すように、蓋部材7bであって、ばね部9bに対応する部位の挿入部8の挿入代をMとすると、L>Mの関係となる。
このように形成された挿入部8に、通常の厚み一定の挿入刃(例えば図14の挿入刃115a)を挿入すると、蓋部材7aは、フェルール3側に対して、蓋部材7b側の方がより広く押し広げられる。この際、ばね部9a、9bが分割されているため、ばね部9a、9bそれぞれの蓋部材7aの押量が異なる。すなわち、同一厚みの挿入刃であっても、蓋部材7aを斜めに押し広げて保持することができる。
第3の実施の形態にかかる光コネクタ組立体1cによれば、光コネクタ組立体1と同様の効果を得ることができる。また、従来のくさび部材を用いても、蓋部材7aを斜めに保持することができる。したがって、蓋部材7aをより確実に斜めに変形させることができる。このため、挿入刃41aを抜き取る際に、光ファイバ21を確実に後方に押し戻すことができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した各実施形態において説明した各部の構成は、当然にそれぞれ組み合わせることも可能である。
また、これらの実施例において蓋部材7aの材質はフィラーを含有しないほうが好適であるが、必要に応じ所望の強度を持たせるためにフィラーを含有させても良い。この際、フィラーの材質や量を適切に設定することで、本発明の効果を得ることが可能である。