JP5479855B2 - 切削装置及び切削方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ワークを切削するための切削装置及び切削方法に関する。
従来から、リードフレーム上に半導体素子を実装して樹脂封止されたワークを切削するため、ダイシングブレードを備えた切削装置が用いられている。近年、ワークの樹脂封止部材として種々の材料が用いられるようになってきており、例えば、脆弱な材料や複合材料を切削する必要がある。このため、切削後のワークの品質を確保するには、ワーク(樹脂封止部材)の種類毎に切削面の評価(切削評価)を行うことが重要である。
従来、このようなワークの切削評価に際しては、最初のワークを切削するときにテストカットを行い、カメラを用いた画像処理やオペレータによる顕微鏡での目視によってその切削面を評価している。テストカットでワークが良品と判断されたときは、切削面の状態などに基づき、経験からそのダイシングブレードで切削可能な距離(すなわち加工可能な個数)が推測される。
一方、特許文献1には、スピンドルの外筒に振動計が設けられたブレード自動交換システムが開示されている。このブレード自動交換システムは、ブレードアセンブリを交換した後にスピンドルを回転させて振動計で振動状態を検出し、所定以上の振動になった場合に警報を出すように構成されている。
特開平10−340867号公報
しかしながら、従来のように、最初のワーク切削時にテストカットを行い、カメラを用いた画像処理やオペレータによる顕微鏡での目視によってその切削面を評価する評価手法では、ダイシングブレードの磨耗状態等の変化に迅速に(リアルタイムで)対応することが困難である。
また、特許文献1には、振動計を用いてスピンドルの振動状態を検出して警報を出す構成が開示されているが、具体的にどのような手法によってスピンドルの振動状態に基づいた警報を出すのかについて開示されておらず、振動状態を高精度に検出するための構成についても開示されていない。
そこで本発明は、ワークの切削状況を高精度にリアルタイムで把握可能な切削方法及び切削装置を提供する。
本発明の一側面としての切削方法は、ワークを切削する切削方法であって、前記ワークのテストカットを行う際に、スピンドルに取り付けられた加速度センサからの第1出力信号に基づいて基準データを生成する工程と、前記ワークの実カットを行う際に、前記加速度センサからの第2出力信号に基づいて実カットデータを生成する工程と、前記実カットデータが前記基準データの範囲から外れているか否かを判定する工程と、前記実カットデータが前記基準データの範囲から外れている場合に警報を出力する工程とを有し、前記基準データ及び前記実カットデータは、前記加速度センサからの前記第1出力信号及び前記第2出力信号のそれぞれに対して、ハイパスフィルタを用いた波形処理を行い、該波形処理で得られた信号を時間で積分することにより生成される。
本発明の他の側面としての切削装置は、ワークを切削する切削装置であって、前記ワークを切削するブレードと、前記ブレードを回転させるモータを備えたスピンドルと、前記スピンドルの加速度を測定する加速度センサと、前記加速度センサからの出力信号に基づいて警報を出力するように制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記ワークのテストカットを行う際に前記加速度センサからの第1出力信号に基づいて基準データを生成し、該ワークの実カットを行う際に該加速度センサからの第2出力信号に基づいて実カットデータを生成し、前記実カットデータが前記基準データの範囲から外れているか否かを判定し、前記実カットデータが前記基準データの範囲から外れている場合に前記警報を出力するように制御し、前記基準データ及び前記実カットデータは、前記加速度センサからの前記第1出力信号及び前記第2出力信号のそれぞれに対して、ハイパスフィルタを用いた波形処理を行い、該波形処理で得られた信号を時間で積分することにより生成される。
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
本発明によれば、ワークの切削状況を高精度にリアルタイムで把握可能な切削装置及び切削方法を提供することができる。
本実施例における切削装置の概略構成図である。 本実施例における切削方法のフローである。 本実施例における切削方法のテストカット工程のフローである。 本実施例における切削方法で取得された加速度波形データの一例である。 本実施例における加速度波形データのFFT変換結果の一例である。 本実施例における二重積分データの一例である。 本実施例における二重積分データの一例である。 本実施例における切削方法で行われる不良判定の一例である。 本実施例における切削方法の実カット工程のフローである。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図の説明において、重複する説明は省略する。
まず、図1を参照して、本実施例における切削装置について説明する。図1は、本実施例における切削装置100の概略構成図である。図1において、10はリードフレームの上に複数の半導体素子(ICチップ)を搭載して樹脂封止されたワーク(切削対象物)である。ワーク10は、後述のように、切削装置100により切削(切断)されて個片化される。本実施例では、ワーク10はX軸方向及びY軸方向に切削されて24個の半導体パッケージ(個片化ワーク)が製造される。このような半導体パッケージとしては、例えば一括封止BGA(ボールグリッドアレイ)パッケージが挙げられる。
ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、切削装置100は、上記個数以外の半導体パッケージに個片化することもできる。また、切削装置100は、ワーク10を切断して個片化するためでなく、ワーク10を切削する(ワーク10の所定部分に切り目を入れる)ためにも用いられる。さらに切削装置100は、半導体素子を備えたワーク10に対して、一括封止BGA(ボールグリッドアレイ)パッケージに限定されることなく、例えば発光素子を備えたLEDパッケージなどのように複数の素子を一括封止したパッケージや、更にはウエハ状態の半導体装置に直接樹脂封止を行ったWLP (Wafer Level Package)などを広く適用可能である。
切削装置100において、20はスピンドルである。スピンドル20は、スピンドルモータ21(駆動手段)を備え、この駆動手段により回転可能に構成されている。22はダイシングブレード(切断刃:以下、単に「ブレード」という)である。ブレード22は、スピンドル20の先端部に取り付けられている。ブレード22は、スピンドル20の回転と共に回転し、テーブル23上に載置されたワーク10を切削することが可能となる。スピンドル20は、ブレード22に近接して設けられた支持部で装置枠体に取り付けられている。スピンドル20は、不図示の位置決めモータによりX軸方向(図1中の左右方向)に移動可能に構成されており、ワーク10の切削位置をX軸方向に変化させることができる。
テーブル23は、テーブルモータ24により駆動されることで、Y軸方向(図1中の上下方向)に送り移動可能に構成され、さらにXY平面内で回転可能に構成されている。このため、テーブル23に載置されたワーク10の切削方向を任意に設定することが可能となる。テーブル23による回転位置は、不図示の撮像装置から得られた位置情報に基づいて制御される。撮像装置は、ワーク10の切削位置の画像を撮像可能に構成され、制御部40を介して表示部60に出力可能に構成されている。
25は加速度センサである。加速度センサ25は、スピンドル20に取り付けられており、ワーク10の切削中に発生するスピンドルの振動(加速度)を測定する。加速度センサ25により測定される振動(加速度)には、各モータ21、24が回転することより生じる振動の他に、ワーク切削中の抵抗等により生じる振動が含まれる。本実施例の切削装置100のように、スピンドル20に加速度センサ25を設けることにより、例えば、ワーク切削中におけるブレード22の劣化や、ブレード22の交換時におけるブレード22の初期異常を検出することができる。このため、ブレード22による切削不良の発生を防止し、高品質な半導体パッケージを提供することが可能になる。
なお、本実施例において、加速度センサ25は、XYZ軸の3軸方向の加速度をそれぞれ測定する3軸加速度センサであるが、これに限定されるものではない。ワーク10の切削時においては、切削方向(Y軸方向)、換言すれば、送り方向の抵抗の方が他の軸方向の抵抗よりも、切削中の抵抗等により生じる振動の変化が比較的大きく検出し易いため、例えばY軸方向の加速度のみを測定する加速度センサ25を用いてもよい。また、加速度センサ25は、ワーク切削中にスピンドル20が受ける振動の振幅を増幅して効果的に検出するため、ブレード22が取り付けられる先端部を支持する支持部から離れて配置されることが好ましい。例えば、本実施例の加速度センサ25は、ブレード22が取り付けられる先端部とは反対側の端部に設けられている。ただしこれに限定されるものではなく、スピンドル20の振動を検出できるものであれば、加速度センサ25をブレード22の近傍に設けてもよい。
加速度センサ25により検出された加速度(加速度センサ25からの出力信号)は、A/D変換器30へ入力される。A/D変換器30は、アナログ信号である加速度センサ25の出力信号を、後段における各種処理を行うためにデジタル信号へ変換する。具体的には、A/D変換器30は、加速度センサ25からのアナログ信号を一定期間毎にサンプリングすることによりデジタル信号を得る。A/D変換器30から出力されたデジタル信号は、制御部40へ入力される。
制御部40は、入力されたデジタル信号に対して、後述のように各種の信号波形処理を行う。また制御部40は、加速度センサ25の検出値(出力信号)に基づいてフィードバック制御を行う。制御部40は、スピンドル20の加速度を二重積分することにより得られた実カットデータ(スピンドル20の変位量)が、テストカット時に得られた基準データDs(図7参照)から外れている場合(所定のしきい値を超えた場合)、警報を出力するように警報部70を制御する。また、制御部40は、例えば、加速度センサ25により検出された加速度が上記の所定のしきい値を超えた場合、スピンドル20に対して回転を停止させるように制御することもできる。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、所定のしきい値を超えた場合、例えばスピンドル20のモータ回転数を下げて、ワーク切削時の抵抗を小さくするように制御し、切断の中断による不良の発生を防止してもよい。
記憶部50は、例えば半導体メモリやハードディスク等により構成されている。記憶部50は、制御部40が各種の信号波形処理を行う間、制御部40との間で情報のやり取りを行う。例えば、後述のように、基準データDsや実カットデータ等の生成したデータを順次記憶する。また、記憶部50は、加速度センサ25の検出値をログとして記録するように構成されているため、ワーク切削後の調査が可能となる。また、記憶部50に記憶された情報に対して、FFT解析等の数値解析や統計分析を行うこともできる。
表示部60には、ワーク切削中の3軸加速度(振動)の情報が表示される。さらに表示部60には、例えば、ワーク10の切削状況、ワーク10の切削位置、スピンドル20の回転数、負荷電流、切削速度、及び、切削加速度等の各加工条件情報や後述する信号処理結果などがマルチ画面で一括表示される。このような表示部60を採用することにより、ワーク10の切削状況等をリアルタイムで把握でき、ワーク切削中における変化点を容易に把握することが可能となる。
警報部70は、実カットデータが基準データDsから外れた場合に警報を出すように構成される。警報部70を作動させるためのしきい値としては、例えばスピンドル20を停止させるためのしきい値と同じ値を用いることができる。この場合、制御部40は、警報部70を作動させると同時にスピンドル20のモータを停止させる。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、警報部70を作動させるためのしきい値を、スピンドル20を停止させるためのしきい値よりも低く設定してもよい。この場合、制御部40は、警報部70を作動させた後、スピンドル20の変位量が更に増加したときにのみスピンドル20を停止させる。また、制御部40は、所定のしきい値を超えた場合に警報部70を作動させるだけで、スピンドル20をどの時点で停止させるかについて、オペレータ(作業者)に判断させるように構成してもよい。この場合、スピンドル20の回転動作を続行させるか否かがオペレータにより判断される。
次に、図2乃至図9を参照して、本実施例における切削方法について説明する。なお、本実施例において説明する切削方法は、オペレータによって行われる一部の工程を除き、切削装置100の制御部40の指令に基づいて行われる。図2は、本実施例における切削方法(切削加工)のフローである。まず、本実施例の切削加工では、ステップS101において、テストカットが行われる。テストカット工程は、最初のワーク10の切削を開始する前に行われる。図3は、本実施例におけるテストカット工程(ステップS101)のフローである。
テストカット工程では、まずステップS201において、製品用のワーク10と同じ切削条件のテスト用のワーク10を切削するテストカットの加速度波形データの取得が行われる。切削装置100の加速度センサ25を用いて、スピンドル20に生じている加速度をXYZ軸のそれぞれについて測定し、その波形データ(加速度センサ25からの第1出力信号)を取得する。この場合、ワーク10におけるダイシングラインの切削開始の位置までブレード22を移動させる動作と、そのダイシングラインにおいてブレード22でワーク10を切削する動作とを繰り返し行う。これにより、実際の切削工程と同様の複数のダイシングラインでの一連の切削が行われる際の一連の波形データが取得される。また、取得された波形データは、高速フーリエ変換(FFT変換)され、波形データ中に含まれる周波数成分の可視化が可能となる。
図4は、加速度波形データの一例である。図4において、縦軸はスピンドル20の加速度(m/s)であり、横軸は時間(Sec)である。また、図中の区間Cがワーク10を切削している期間に相当する(図6乃至8も同様)。この区間Cは、撮像装置による撮像画像、切削音、切削動作のプログラム等に基づいて適宜設定可能である。後述するような信号波形処理が行われていない加速度の波形では、区間Cも他の区間と数値的に大きな違いもないホワイトノイズのような波形となっている。このため、切削抵抗の変化に応じて変化する変位量のピークを検出することができず、ワークの切削状況を把握することはできない。
図5は、テストカット時の加速度波形データのFFT変換結果を示す。図5において、縦軸はスペクトル強度であり、横軸は周波数である。図5に示されるように、加速度波形データ中には、100Hz以下の周波数成分と500Hz前後の周波数成分とが多く含まれている。本実施例では、スピンドルモータ21を、回転数30000rpm、すなわち周波数500Hzで駆動した場合の波形を対象にしている。このため、スピンドル20のモータ回転数に相当する500Hz前後の周波数成分が多く発生している。
一方、図5には、50Hz以下にスペクトルが厚く分布している。これは、切削時においてワーク10を載置したテーブル23が移動することにより生じる周波数成分(テーブルモータ24の回転周波数)に相当する。具体的には、ワーク10を載置したテーブル23が移動する時のテーブルモータ24の最高回数は3000rpmであり、すなわち最高周波数50Hzで動作する。実際のワーク10の切削時には、この最高周波数を上限とした加工条件に従い、移動速度や切削速度は最適な数値に設定される。テーブル23の移動(すなわち、テーブルモータ24の回転)により生じる振動は、ワーク10を切削することにより生じ切削抵抗に応じて変位量(振幅)が変化する振動ではない。ワーク10の切削に伴って発生する振動だけを検出するには、振幅の大きな低周波数成分を優先して除去するため、このような50Hz以下の実際の移動速度に応じて現れる周波数を除去することが好ましい。
そこで本実施例では、ステップS202において、ハイパスフィルタ(フィルタ回路)を用いた信号波形処理を行う。本実施例では、制御部40のデジタル信号処理により、ハイパスフィルタの周波数設定を可変として信号波形処理が行われる。ハイパスフィルタは、低周波成分を取り除いて高周波成分だけを通過させるフィルタ回路である。本実施例では、50Hz以下におけるテーブルモータ24の回転に応じた周波数成分を取り除くために、この周波数成分より高い周波数を通過させるハイパスフィルタを用いて、テストカットの信号波形が波形処理される。
このようなハイパスフィルタを用いて加速度波形データの波形処理を行うことで、ハイパスフィルタの周波数設定が適切であればワーク10の切削に伴って発生する振動だけを効果的に検出することができ、高精度なワークの切削状況(ブレード22の磨耗状態)の把握が可能になる。なお本実施例では、フィルタ回路としてハイパスフィルタが用いられるが、除去したい周波数成分に応じて、例えば高周波成分についても取り除く必要があるときには、所定の周波数範囲だけを通過させるバンドパスフィルタを用いることができる。
次に、ステップS203において、二重積分波形データを生成する。図6は、テストカット時の二重積分波形データの一例である。図6において、縦軸はスピンドル20の変位(mm)であり、横軸は時間(Sec)である(後述する図7、8についても同様)。加速度波形データを時間で二重積分すると、スピンドル20の変位量が求められる。図6に示されるような変位量と時間との関係(二重積分波形データ)のグラフでは、波形処理が不十分であり、区間Cにおいても、他の区間と数値的に大きな違いが見られない波形となる。このため、図6に示されるグラフでは、切削抵抗に応じて変化する変位量のピークを検出することは困難である。
ステップS202、S203は、テストカット時の二重積分波形データに切削抵抗によるピークが検出されるまで繰り返して実行される(ステップS204)。切削抵抗によるピークが検出されない場合には、ステップS202に戻る。このとき、先の信号波形処理に用いたハイパスフィルタよりも高い周波数のみを通過させるハイパスフィルタを用いた信号波形処理を行う。すなわち、通過周波数の下限値がより大きいハイパスフィルタを用いる。このように、ステップS202においてハイパスフィルタの周波数設定を変更することで、通過させる周波数を上げながら二重積分波形データを生成していくことができる。
次に、二重積分波形データに切削抵抗によるピークが検出された場合には、ステップS205の基準データDsを生成する。図7は、切削抵抗によるピークが検出されたときの二重積分波形データである。この場合、この二重積分波形データでは切削することによって生じる振動の周波数成分が他の周波数成分よりも大きいため、区間Cの変位量が大きくなっている。二重積分波形データに切削抵抗によるピークが検出された場合には、ステップS205において、二重積分波形データに基づき基準データDsの生成工程を実行する。本実施例では、二重積分波形データの区間Cの変位量のうちの最大値を基準データDsとして設定する。
基準データDsの生成が完了すると、ステップS101のテストカット工程は終了する(ステップS206)。このように、ワーク10のテストカットを行う際に、スピンドル20に取り付けた加速度センサ25からの第1出力信号に基づいて基準データDsが生成される。より具体的には、基準データDsは、加速度センサ25からの第1出力信号に対して、ハイパスフィルタを用いた波形処理を行い、この波形処理で得られた信号を二重積分した信号波形に基づいて生成される。
次に、図2のステップS102において、オペレータの顕微鏡による目視により、テストカットによるワーク10の切削面(切断面)が滑らかで仕様範囲以内であるか否か(良品か否か)が判定される。この判定は、ワーク切断面を顕微鏡で拡大し、その切断面に所定以上の大きさを有する欠け(チッピング)が存在するか否かという観点で行われる。この工程では、切削したワーク10の縁部の欠けの量等を撮像装置が撮像した撮像画像上から画像処理により算出して判定をすることもできる。制御部40が切削後のワーク10の撮像画像を画像処理によりチッピングの面積の総量や最大幅等を算出し、これらをオペレータによって予め設定されたしきい値と比較して判定するように構成してもよい。
その切断面が滑らかである(ワークが良品である)と判定された場合、ステップS103において良品データ登録が行われる。すなわち、テストカット中に取得した基準データDs、その基準データDsを生成した際の波形処理に用いたハイパスフィルタの周波数設定、及び、その加工条件情報の各情報を良品データとして登録する(記憶部50に記憶される)。登録された良品データは、後述の実カットで利用される。一方、その切断面が滑らかでない(ワークが不良品である)と判定された場合、ステップS104において不良品データ登録が行われる。すなわち、テストカット中に取得した基準データDsと同等の不良品基準データDf(図8参照)、その不良品基準データDfを生成した際の波形処理に用いたハイパスフィルタの周波数設定、及び、その加工条件情報の各情報を不良品データとして登録する(記憶部50に記憶される)。その不良品基準データDfを生成した際の波形処理に用いたハイパスフィルタの周波数設定と共に登録された不良品基準データDfも、後述の実カットで利用される。ただし、不良品データとして記憶される加工条件情報は実カットでは利用されない点が良品データとは異なる。
続いて、ステップS105において、良品データの登録があるか否かが判定される。良品データの登録がない場合には、ステップS101に戻って、上述のステップを繰り返す。この場合、2回目以降のステップS101では、このステップの先の実行時に基準データDs(または不良品基準データDf)を生成した際のハイパスフィルタの周波数設定を記憶部50から読み出して使用することも可能である。例えば、先の実行時と同じハイパスフィルタの周波数設定で切削抵抗によるピークが検出されるような条件のときには、ハイパスフィルタを用いた波形処理と二重積分波形データの生成処理の実行回数を減らすことができ、効率的に基準データDsを生成可能である。また、不良品データとして加工条件情報が記憶されているときには、この加工条件情報に基づいてスピンドル20の回転数、負荷電流、切削速度、及び、切削加速度等を設定することができ、良好な加工条件を効率的に設定することが可能となっている。
一方、良品データの登録がある場合には、ステップS106において、登録された良品データを基準値とし、良品として認められる許容範囲(上限及び下限)を設定する。この基準値(許容範囲)は、記憶部50に記憶される。
次に、ステップS107において実カット工程が行われる。図9は、本実施例における実カット工程(ステップS107)のフローである。まずステップS301において、実カット工程における切削加工が完了したか否かが判定される。切削加工が完了した場合には実カット工程は終了し(ステップS308)、完了していない場合にはステップS302において加速度波形データを取得する。実カット工程では、テストカット工程とは異なり、ステップS301によって加速度波形データの取得が開始されたときに次のステップの処理を開始する。
ここで取得された加速度波形データに対しては、ステップS303においてハイパスフィルタを用いた波形処理が行われ、さらにステップS304において二重積分を用いた二重積分波形データが生成される。なお、ステップS303、S304は、一部の設定を除いてテストカット工程(ステップS101)のステップS202、S203と同様である。まず、処理対象の加速度波形の取得期間(長さ)が異なり、実カット工程では加速度波形データの取得開始から信号波形処理を行う時点までの期間の加速度波形データ対象とする。また、ハイパスフィルタの周波数設定として、ステップS103、S104において基準データDs(または不良品基準データDf)と共に記憶されたハイパスフィルタの周波数設定が用いられる。
このように、ワーク10の実カットを行う際に、加速度センサ25からの第2出力信号に基づいて二重積分波形データである実カットデータが生成される。より具体的には、実カットデータは、加速度センサ25からの第2出力信号に対して、ハイパスフィルタを用いた波形処理を行い、この波形処理で得られた信号を二重積分することにより生成される。
続いて、ステップS305において、ステップS304にて生成された二重積分後の実カットデータがステップS106にて設定された許容範囲から外れているか否かを判定する。すなわち、実カットデータが基準データDsの範囲から外れているか否かが判定される。実カットデータが許容範囲内である場合、すなわちテストカット工程で得られた基準データDsよりも小さい場合、ステップS301へ戻り、ステップS301〜ステップS304が繰り返される。一方、実カットデータが許容範囲外である場合、すなわちテストカット工程で得られた基準データDs以上である場合、ステップS306において、ワーク10が良品でない可能性があるため警報を出力する(警報出力処理)。このように実カットデータを取得しながら基準データDsと逐次比較することでワーク10の切削状況がリアルタイムに把握される。このとき、警報部70は、制御部40からの指令に基づいて警報を出力する。警報は、スピンドル20の加速度波形データに基づいて把握される状態が致命的になる前に、すなわち、ある程度の余裕がある状態で出力されることが好ましい。
図8は、本実施例における不良判別の一例である。図8に示される波形は、二重積分後のカットデータであり、良品として表される波形は、テストカット工程で得られた基準データDsよりも低い値となるまた、上限及び下限は、それぞれ、基準データDsの正負の値として設定され、上限と下限との間(図中の矢印)が良品と認められるための許容範囲に相当する。この許容範囲内にある場合には良品と判定される。
一方、不良品として表される上限又は下限を超える部分(図8中において丸印を付した部分)は、許容範囲から外れている。これは、ワーク10の加工個数や加工距離などで表される加工量によってブレード22の切れ味が悪化してスピンドル20の加速度(振動)が大きくなる結果、加速度(変位量)が時間と共に理想値(基準値)から外れるからである。このようなカットデータが得られた場合、上限又は下限を超える部分においては不良品であると判定される。実際には、ノイズ除去の為に設定値を設定回数分だけ超えた場合には不良品である等と判定できるようにするのが望ましい。
次に、図9のステップS307において、スピンドル20の回転動作を停止させるか否かが判定される。スピンドル20を停止させる際の基準は、警報を出力する際の基準(ステップS305の許容範囲)よりもこの許容範囲を広く設定されることが好ましい。例えば、図8に示されるように、この基準はワーク10の切断面が滑らかでない不良品となることが明らかな不良品基準データDfを設定することができる。ステップS307にてスピンドル20を停止させない場合にはステップS301に戻る。一方、スピンドル20を停止させる場合には実カット工程(ステップS107)は終了する(ステップS308)。スピンドル20を停止させた後、ブレード22のドレッシング又はブレード22の交換が行われる。なお、ステップS307においてスピンドル20を停止させる代わりに、スピンドル20の回転速度を下げて切削時の抵抗を減らすように制御してもよい。
続いて、図2のステップS108において、切削対象の全てのワーク10の加工が完了したか否かが判定される。未加工のワークが存在する場合にはステップS107に戻り、全てのワークの加工が完了した場合には切削加工が終了する(ステップS109)。
本実施例によれば、ワークの切削状況を高精度にリアルタイムで把握可能な切削装置及び切削方法を提供することができる。
また、実カットデータにおいて許容範囲の上限又は下限を超えて不良品となる部分に相当するダイシングライン、及び、そのダイシングライン中の位置を特定することができるため、1つのワーク10内に良品と不良品とが混在するときにも不良品と思われる部分を容易に特定することができる。
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
例えば、テストカット工程で1つのワーク10における一連の切削を全て行わずに信号波形処理する方法を採用することもできる。この場合、ブレード22を移動させる動作と1本のダイシングラインにおける切削動作とを少なくとも1組以上含んだ加速度波形を信号波形処理の対象とすればよい。これにより、切削加工時とそれ以外のときと変位量の比較を行うことができ、基準データDsを生成することが可能である。したがって、1つのワーク10で複数回のテストカットを行うことができ、基準データDsを効率的に生成することが可能となる。
また、2つのスピンドル20のブレード22同士を対向して設け、ワーク10を同時に切削可能なツインスピンドル構成としてもよい。この場合、各スピンドル20に加速度センサ25を設けることで、各ブレード22の磨耗状態を個別に把握でき、適切な時期に交換することができる。なお、一方のスピンドル20のみに加速度センサ25を設け、検出された加速度に基づいてワーク10の切削状況を把握する構成を採用することもできる。
10 ワーク
20 スピンドル
21 スピンドルモータ
22 ダイシングブレード(ブレード)
23 テーブル
24 テーブルモータ
25 加速度センサ
30 A/D変換器
40 制御部
50 記憶部
60 表示部
70 警報部

Claims (4)

  1. ワークを切削する切削方法であって、
    前記ワークのテストカットを行う際に、スピンドルに取り付けられた加速度センサからの第1出力信号に基づいて基準データを生成する工程と、
    前記ワークの実カットを行う際に、前記加速度センサからの第2出力信号に基づいて実カットデータを生成する工程と、
    前記実カットデータが前記基準データの範囲から外れているか否かを判定する工程と、
    前記実カットデータが前記基準データの範囲から外れている場合に警報を出力する工程と、を有し、
    前記基準データ及び前記実カットデータは、前記加速度センサからの前記第1出力信号及び前記第2出力信号のそれぞれに対して、ハイパスフィルタを用いた波形処理を行い、該波形処理で得られた信号を時間で積分することにより生成される、ことを特徴とする切削方法。
  2. 前記警報を出力する工程の後、前記スピンドルの回転動作を停止させる工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の切削方法。
  3. ワークを切削する切削装置であって、
    前記ワークを切削するブレードと、
    前記ブレードを回転させるモータを備えたスピンドルと、
    前記スピンドルの加速度を測定する加速度センサと、
    前記加速度センサからの出力信号に基づいて警報を出力するように制御する制御部と、を有し、
    前記制御部は、前記ワークのテストカットを行う際に前記加速度センサからの第1出力信号に基づいて基準データを生成し、
    該ワークの実カットを行う際に該加速度センサからの第2出力信号に基づいて実カットデータを生成し、
    前記実カットデータが前記基準データの範囲から外れているか否かを判定し、
    前記実カットデータが前記基準データの範囲から外れている場合に前記警報を出力するように制御し、
    前記基準データ及び前記実カットデータは、前記加速度センサからの前記第1出力信号及び前記第2出力信号のそれぞれに対して、ハイパスフィルタを用いた波形処理を行い、該波形処理で得られた信号を時間で積分することにより生成される、ことを特徴とする切削装置。
  4. 前記制御部は、前記警報を出力した後に前記スピンドルの回転動作を停止させることを特徴とする請求項3に記載の切削装置。
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