JP5479242B2 - 医療用線状部材 - Google Patents

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Description

本発明は、医療用線状部材に関するものであり、特に伸長状態の医療用線状部材に蓄積された長さ方向に対する緊縮力と直径方向に対する膨張力を利用して、緊縛した骨折部に対して外周から内側方向に所定の包圧力を付与できる医療用線状部材に関する。
一般的な骨折の治癒過程では、骨折部の骨髄から出血した血液が骨同士の隙間に溜まり、日が経つにつれて固まった血液が繊維性の細胞に置き換わり、その中に骨細胞、軟骨細胞系の細胞ができ骨折部が仮骨でつながることで骨折が治癒していく。
骨折の治療として手術が必要となる場合、まず骨を元の形や長さに戻すために折れた骨を正確に整復し、続いて患部を露出させた上で特別な器具を使って整復を行い、金属製ワイヤ等の緊縛手段やピン、ボルト、棒、プレートなどの固定手段で骨片をしっかりと固定する。
一方、成人よりも骨の強度が低く骨が成長過程にある子供の骨折治療における手術では、骨折部を固定する金属製ワイヤ等の緊縛手段による緊縛力が強すぎると骨の成長を妨げたり骨を損傷したりすることがある。したがって、子供の骨折治療では手術よりもギプスやけん引による治療が選択されることが多いが、骨がずれた状態で治癒が進行してしまうことがあった。
また、骨量・骨質が十分でない高齢者や骨粗鬆症者等の骨折治療における手術では、骨折部を固定する金属製ワイヤ等の緊縛手段による緊縛力が強すぎると骨を損傷する恐れがあり、逆に緊縛手段の緊縛力が弱いと骨折部の固定が不十分となり治癒経過にも悪影響を及ぼす可能性があった。
特許文献1には、骨折部を固定したり骨にプロテーゼを緊縛するための締結ケーブルが開示されている。
特許文献2には、2本の金属極細線を撚り合わせてなる芯材の外表面に、複数の金属極細線を撚り合わせて撚り層を形成し、該撚り層と芯材との間にらせん状に伸びる伸縮部を形成した金属撚り線が開示されている。
特開平7−163583号公報 特開平5−40884号公報
しかしながら特許文献1の締結ケーブルは、ステンレス鋼やチタニウムなどの金属製の線材を単に撚り合わせて形成されているために、引張り強度が高く伸縮性と屈曲性が低いため骨折部を緊縛した際の緊縛力が作用するのみであった。
特許文献2の金属撚り線では、断面変形性を有しているが、引張り強度が高く伸縮性に乏しいため、仮に骨折部を固定するワイヤとして使用しても骨折部を緊縛した際の緊縛力と元の断面形状に戻ろうとする若干の復元力が作用するのみであった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、緊縛した骨折部に対して外周から内側方向に所定の包圧力を常時作用させることを目的とし、引っ張り強度と屈曲性を維持しながら、伸長状態の医療用線状部材に蓄積された長さ方向に対する緊縮力と直径方向に対する膨張力を包圧力として利用可能な医療用線状部材を提供するものである。
本発明の医療用線状部材は以下の特徴を有するものである。
本発明の第1構成は、複数本のワイヤを配列した基本体を、内側に空間部を有し、かつ、軸線方向に間隙部を開けて螺旋巻きした螺旋体からなる医療用線状部材としたことを特徴とする。
上記構成により、本発明の医療用線状部材では引っ張り強度と屈曲性を維持しつつ、長さ方向に対する伸縮性の付与により伸長状態からの緊縮力および直径方向に対する膨張力が付与され、本発明の医療用線状部材により緊縛した骨折部には緊縮力および膨張力からなる包圧力が常時作用することとなる。
上記のワイヤとしては各種の断面形状のものを用いることができるが、例えば、略円形のものを用いることができる。
本発明におけるワイヤ用の線材としては、金属、プラスチック、ゴム、セラミックなどの材質のものを用いることができ、医療用として薬事法等で承認されている材質であることが好ましい。また、医療用線状部材10の引っ張り強度、伸縮性、屈曲性、復元性を確保するために、弾性力の大きなバネ材料でワイヤ11を形成するのが好ましい。金属としては、SUS416などのステンレス鋼、チタン合金、Co−Cr系合金、非鉄系、ピアノ線用の金属などを例示することができ、特に、ニッケルを含有しないNiフリーの金属であることが好ましい。具体的には、ASTM F−136で規格化されているチタン合金(成分配合重量比は以下の通りである。窒素(N)0.05%以下、炭素(C)0.08%以下、水素(H)0.012%以下、鉄(Fe)0.25%以下、酸素(O)0.13%以下、アルミニウム(Al)5.5〜6.5%、バナジウム(V)3.5〜4.5%、チタン(Ti)残部、合計100%)などを例示することができる。また、バネ材料の金属としては超弾性材料を用いることが好ましく、これにより、引っ張り強度、伸縮性、屈曲性、復元性の大きな医療用線状部材10を形成することができるものである。このような超弾性材料としては、チタンを含むチタン合金、ニッケルを含むニッケル合金、チタンとニッケルの両方を含むニッケルチタン合金などからなる形状記憶合金を用いることができる。
尚、本発明では、形状記憶合金を用いることにより所定の温度になると記憶した元の形状に戻る性質を利用して、医療用線状部材を収縮させて締め付けることができる。この場合、例えば、常温で塑性変形させながら骨折部等の所定箇所に医療用線状部材を巻き付けた後、体温や湯水などの温度で医療用線状部材を収縮させて締め付けるようにすることができる。
本発明の第2構成は、第1構成の空間部の少なくとも一部に、非直線状に成形した1本以上のワイヤからなる補助芯を有する医療用線状部材としたことを特徴とする。
補助芯を備えるようにすれば、伸長性、収縮性、屈曲性を確保しつつ、医療用線状部材の引っ張り強度を向上させることができる。非直線状の形態としてはジグザグ状や波形状、螺旋状などから選択されるいずれかまたは2形態以上の組み合わせを採用可能である。
本発明の第3構成は、第1構成から第2構成において、直径の異なる複数個の前記螺旋体を軸線に対して層状に配置して複層構造からなる医療用線状部材としたことを特徴とする。
本発明の第4構成は、第3構成において層方向に隣接する螺旋体の螺旋方向が逆方向となるように配置した医療用線状部材としたことを特徴とする。
本発明の第5構成は、第1構成から第4構成における前記基本体の全部または一部のワイヤが、金属である医療用線状部材としたことを特徴とする。
本発明の第6構成は、第1構成から第5構成における前記基本体の表面の少なくとも一部に、金属めっきが施された医療用線状部材としたことを特徴とする。
本発明の第7構成は、第1構成から第6構成における前記基本体を構成するワイヤの横断面形状における断面重心から外周線の一点までの距離と、前記断面重心から前記外周線の他の一点までの距離とが相違することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1に記載の医療用線状部材としたことを特徴とする。第7構成のワイヤの横断面形状としては、多角形、楕円その他の閉曲線を採用可能である。閉曲線は直線部分を含んでいても良い。
ワイヤの横断面形状を変形するには、例えば、複数本のワイヤを配列した基本体を軸線方向に間隙部を開けて螺旋巻きした螺旋体からなる医療用線状部材を、横断面方向の内側方向に加圧することにより医療用線状部材を構成するワイヤの最外周面を扁平状に形成することができる。
本発明の第8構成は、第1構成から第7構成における前記医療用線状部材の端部側に、塑性変形による屈曲状態を維持可能なガイド部材を接合したことを特徴とする。塑性変形とは変形を引き起こしている荷重を取り除いた後、もとの形状に戻らずに残っている変形のことであり、材料の弾性限度を超えた永久変形である。塑性ひずみ、または塑性流動とも呼ばれる。ガイド部材の素材としては、金属素材の他、樹脂などの非金属素材や金属素材と非金属素材の複合素材などを採用可能である。ガイド部材の構造としては、例えば中実状または中空(管)状の単線材、中実状または中空状の単線材を撚り合わせて中実状または中空(管)状とした撚り線材を採用することができる。金属素材と非金属素材の複合素材としては、例えば中空金属線体に樹脂注入(封入)するか、金属線に樹脂皮膜を形成(コーティング)した複合体等がある。端部側にガイド部材を備えた医療用線状部材では、手術者がガイド部材を適宜形状に屈曲させて、骨折部の一方から裏側に挿し入れて他方から引き出すことが容易になる。医療用線状部材とガイド部材との接合には、溶接やカシメ、接着などの固定手段を採用可能である。
本発明の医療用線状部材によれば、引っ張り強度と屈曲性を維持しつつ、長さ方向に対する伸縮性の付与により伸長状態からの緊縮力と直径方向に対する膨張力が付与されることから、伸長状態の医療用線状部材により緊縛した骨折部には緊縮力および膨張力からなる包圧力が常時作用することとなる。
したがって、過大な緊縛力による骨折部の損傷を招きにくく、健常な成人ばかりでなく骨強度の弱い子供や老人などに対しても幅広く適用することができる。
さらに本発明の医療用線状部材はギプスなどの外部固定手段と組み合わせることで骨折治療方法の選択肢を広げることも可能である。
端部側にガイド部材を備えた医療用線状部材では、手術者がガイド部材を適宜形状に屈曲させて、骨折部の一方から裏側に挿し入れて他方から容易に引き出すことができ、医療用線状部材による骨折部周辺組織に対する損傷を防ぐことができる。
実施例1の医療用線状部材を示す外観図である。 実施例1の医療用線状部材の伸長過程を示す説明図である。 実施例1の医療用線状部材を使用した骨折部位の緊縛状態を示す説明図である。 実施例2の医療用線状部材を示す外観図である。 実施例3の医療用線状部材を示す外観図である。 実施例3の医療用線状部材の伸長過程を示す説明図である。 実施例3の医療用線状部材を使用した骨折部位の緊縛状態を示す説明図である。 実施例4の医療用線状部材を示す外観図である。 実施例4の医療用線状部材の伸長過程を示す説明図である。 実施例4の医療用線状部材を使用した骨折部位の緊縛状態を示す説明図である。 実施例5のガイド部材を備えた医療用線状部材を示す説明図である。 実施例6のガイド部材を備えた医療用線状部材を示す説明図である。 実施例7のガイド部材を備えた医療用線状部材を示す説明図である。
10、20、30 医療用線状部材
11、21、31 ワイヤ
12、22、32 基本体
13、23、33 空間部
14 補助芯
40、41、42 ガイド部材
43 ビーズ
D1、D2、D3 外径
P1、P2、P3 ピッチ
S1、S2、S3 空隙部
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施例により本発明の医療用線状部材の適用範囲を限定するものではない。
[実施例1]
図1は、実施例1の医療用線状部材を示す外観図であり、(A)は正面図、(B)は(A)に示したI−I線に沿った端面図である。図2は実施例1の医療用線状部材の伸長過程を示す説明図である。図3は実施例1の医療用線状部材10を使用した骨折部の緊縛状態を示す説明図である。
医療用線状部材10はワイヤ11を複数本配列して基本体12を形成し、基本体12を軸線方向に間隙部S1を隔てて外径D1、ピッチP1で螺旋巻きした螺旋体であり、螺旋体の内部には軸線方向に沿って空間部13を有している。
ここで、空間部13の直径及び間隙部S1の寸法などは、医療用線状部材10の使用目的などに応じて適宜設定可能である。
以下、本発明の医療用線状部材10を骨折部分に巻き付けて緊縛して固定する際の外科用の締結ケーブルとして説明する。
医療用線状部材10の両端(図2中、下端側省略)に長さ方向に引っ張り力F1を作用させると、螺旋の傾斜角が大きくなりピッチP1が増大してP1’となって伸長するとともに間隙部S1の寸法がS1’に減少し、外径D1が外径D1’まで収縮する。この際、医療用線状部材10には伸長前のピッチP1に戻ろうとする緊縮力f1aと、外径D1に戻ろうとする膨張力f1bを蓄積した状態となる。
医療用線状部材10に対する引っ張り力F1を解除すれば医療用線状部材10のバネ性により伸長した状態から元の状態にまで復帰することができる。
手術者は医療用線状部材10を骨折部Cに巻き付け、引っ張り力F1を作用させて医療用線状部材10を長さ方向に伸長させ、伸長状態の医療用線状部材10で骨折部Cを締結することにより固定する。
[実施例1の作用]
医療用線状部材10により固定された骨折部Cには、伸長前のピッチP1および間隙部の寸法S1に戻ろうとする緊縮力f1aと、外径D1に戻ろうとする膨張力f1bからなる包圧力が骨折部Cの外周から中心側に向かって常時作用することとなる。
加えて、医療用線状部材10を骨折部Cに巻き付けたことで断面形状が略円形状から扁平楕円状に変形することから、骨折部Cに対する医療用線状部材10の接触が面接触となり骨折部Cの固定状態が安定するとともに略円形状の断面形状に戻ろうとする復元力が骨折部Cの中心側に向かって常時作用することになる。
[実施例2]
図4は実施例2の医療用線状部材を示す外観図であり、(A)は正面図、(B)は(A)に示したI−I線に沿った端面図である。実施例2では実施例1の医療用線状部材10の空間部13にワイヤを波形状に屈曲成形した補助芯14を挿入している。
補助芯14以外の構成および作用については実施例1記載および図2、図3に示した内容と同様であるため詳細な説明を省略するが、補助芯14を備えることで、伸長性、収縮性、屈曲性を確保しつつ、医療用線状部材10の限界伸長率を設定でき引っ張り強度の向上や破断防止に寄与させることができる。
すなわち、手術者は医療用線状部材10を骨折部Cに巻き付け、引っ張り力F1を作用させて医療用線状部材10を長さ方向に伸長させた際、限界伸長率以上まで伸長させてしまう恐れがなく、医療用線状部材10により固定された骨折部Cには、伸長前のピッチP1に戻ろうとする緊縮力f1aと、外径D1に戻ろうとする膨張力f1bからなる包圧力が骨折部Cの外周から中心側に向かって常時作用することとなる。
[実施例3]
図5は実施例3の医療用線状部材を示す外観図であり、(A)は正面図、(B)は(A)に示したI’−I’線に沿った端面図である。図6は実施例3の医療用線状部材の伸長過程を示す説明図である。図7は実施例3の医療用線状部材20を使用した骨折部位の緊縛状態を示す説明図である。
実施例3の医療用線状部材20はワイヤ21を複数本配列して基本体22を形成し、基本体22を医療用線状部材10の外径D1より大きな外径D2、ピッチP2で軸線方向に間隙部S2を隔てて螺旋巻きした螺旋体であり、螺旋体の内部には軸線方向に沿って空間部23を有している。ここで、空間部23の直径及び間隙部S2の寸法などは、医療用線状部材20の使用目的などに応じて適宜設定可能である。
医療用線状部材20は医療用線状部材10と逆方向に螺旋巻きしており、その空間部23には医療用線状部材10を挿入して医療用線状部材20と医療用線状部材10の両端部同士を固定している。
以下、本発明の医療用線状部材20を骨折部分に巻き付けて緊縛して固定する際の外科用の締結ケーブルとして説明する。
医療用線状部材20の両端に長さ方向に引っ張り力F2を作用させるとピッチP2が増大してP2’となって伸長するとともに間隙部S2の寸法がS2’に減少し、外径D2が外径D2’まで収縮する。
医療用線状部材20に固定された医療用線状部材10についても引っ張り力F2の作用によりピッチP1が増大してP1’となって伸長するとともに間隙部S1の寸法がS1’に減少し、外径D1が外径D1’まで収縮する。
この際、医療用線状部材20には伸長前のピッチP2と間隙部の寸法S2に戻ろうとする緊縮力と医療用線状部材10の緊縮力f1aとの合力f2aと、医療用線状部材20が外径D2に戻ろうとする膨張力と医療用線状部材10の膨張力f1bとの合力f2bを蓄積した状態となる。
医療用線状部材20に対する引っ張り力F2を解除すれば医療用線状部材20のバネ性により伸長した状態から元の状態にまで復帰することができる。
手術者は医療用線状部材20を骨折部Cに巻き付け、引っ張り力F2を作用させて医療用線状部材20を長さ方向に伸長させ、伸長状態の医療用線状部材20で骨折部Cを締結することにより固定する。
[実施例3の作用]
医療用線状部材20により固定された骨折部Cには、伸長前のピッチP2、P1に戻ろうとする緊縮力の合力f2aと、外径D2、D1に戻ろうとする膨張力の合力f2bからなる包圧力が骨折部Cの中心側に向かって常時作用することとなる。
さらに、医療用線状部材20を骨折部Cに巻き付けたことで断面形状が略円形状から扁平楕円状に変形することから、骨折部Cに対する医療用線状部材20の接触が面接触となり骨折部の固定状態が安定するとともに略円形状の断面形状に戻ろうとする復元力が骨折部Cの外周から中心側に向かって常時作用することになる。
加えて、医療用線状部材20と医療用線状部材10は互いに逆方向に螺旋巻きしたことから、伸縮時のワイヤ21、11に生じる捻れ回転を打ち消しあうため、骨折部Cを緊縛固定した医療用線状部材20に回転力が発生することを抑制する効果がある。
[実施例4]
図8は、実施例4の線状部材を示す外観図であり、(A)は正面図、(B)は(A)に示したI−I線に沿った端面図である。図9は実施例4の線状部材の伸長過程を示す説明図である。図10は実施例4の医療用線状部材30を使用した骨折部の緊縛状態を示す説明図である。
実施例4の医療用線状部材30は、横断面に扁平領域31aを有するワイヤ31を複数本配列して基本体32を形成し、基本体32を軸線方向に間隙部S3を隔てて外径D3、ピッチP3で螺旋巻きした螺旋体であり、螺旋体の内部には軸線方向に沿って空間部33を有している。
ここで、医療用線状部材30の外径D3、ピッチP3、空間部33の直径及び間隙部S3の寸法などは使用目的などに応じて適宜設定可能である。
なお、実施例4では横断面に扁平領域31aを有するワイヤ31を用いた医療用線状部材30として説明するが、ワイヤの横断面形状は扁平領域を有する閉曲面に限定されるものと解釈してはならない。
以下、本発明の医療用線状部材30を骨折部分に巻き付けて緊縛して固定する際の外科用の締結ケーブルとして説明する。
医療用線状部材30の両端(図9中、下端側省略)に長さ方向に引っ張り力F3を作用させると、螺旋の傾斜角が大きくなりピッチP3が増大してP3’となって伸長するとともに間隙部S3の寸法がS3’に減少し、外径D3が外径D3’まで収縮する。この際、医療用線状部材30には伸長前のピッチP3に戻ろうとする緊縮力f3aと、外径D3に戻ろうとする膨張力f3bを蓄積した状態となる。
医療用線状部材30に対する引っ張り力F3を解除すれば医療用線状部材30のバネ性により伸長した状態から元の状態にまで復帰することができる。
手術者は医療用線状部材30を骨折部Cに巻き付け、引っ張り力F3を作用させて医療用線状部材30を長さ方向に伸長させ、伸長状態の医療用線状部材30で骨折部Cを締結することにより固定する(図10)。
[実施例4の作用]
医療用線状部材30により固定された骨折部Cには、伸長前のピッチP3および間隙部の寸法S3に戻ろうとする緊縮力f3aと、外径D3に戻ろうとする膨張力f3bからなる包圧力が骨折部Cの外周から中心側に向かって常時作用することとなる(図10)。
加えて、医療用線状部材30を骨折部Cに巻き付けたことで断面形状が略円形状から扁平楕円状に変形することから、骨折部Cに対する医療用線状部材30の接触が面接触になると共に、医療用線状部材30の最外周面に位置するワイヤ31の扁平領域31aが骨折部Cに接触することになることから、骨折部Cの固定状態が安定するとともに略円形状の断面形状に戻ろうとする復元力が骨折部Cの中心側に向かって常時作用することになる。
[実施例5]
図11は実施例5のガイド部材を備えた医療用線状部材を示す説明図である。実施例5のガイド部材40は塑性変形による屈曲状態を維持可能な中実状の単線材や撚り線材からなる所定長の金属線であり医療用線状部材10(20、30)の内径より若干小さな外径を有している。
医療用線状部材10(20、30)にガイド部材40を挿入した後、両者の先端側同士を溶着して接合し、次いで医療用線状部材10(20、30)の外径より大きな直径を有する金属製の球状のビーズ43を溶着している。ビーズ43はガイド部材40と医療用線状部材10(20、30)の先端側を溶融させて形成することもできる。以上の構成により、ガイド部材40の挿入長さに相当する医療用線状部材10(20、30)の端部側がガイド部材40として機能することとなる。実施例5のガイド部材40は補助芯14を採用した実施例1、3、4の構成に対して好適である。
[実施例6]
図12は実施例6のガイド部材を備えた医療用線状部材を示す説明図である。実施例6のガイド部材41は塑性変形による屈曲状態を維持可能な中空(管)状の単線材や撚り線材からなる所定長の金属管であり医療用線状部材10(20、30)の外径より若干大きな内径を有している。
ガイド部材41に医療用線状部材10(20、30)を挿入した後、両者の先端側同士を溶着して接合し、次いでガイド部材41の外径より大きな直径を有する金属製の球状のビーズ43を溶着している。ビーズ43はガイド部材41と医療用線状部材10(20、30)の先端側を溶融させて形成することもできる。以上の構成により、医療用線状部材10(20、30)の挿入長さに相当する医療用線状部材10(20、30)の端部側がガイド部材41として機能することとなる。実施例6のガイド部材41は実施例1から実施例4のいずれの構成に対しても好適である。
[実施例7]
図13は実施例7のガイド部材を備えた医療用線状部材を示す説明図である。実施例7のガイド部材42は塑性変形による屈曲状態を維持可能な中実状または中空(管)状の単線材あるいは中実状または中空(管)状の撚り線材からなる所定長の金属線であり、医療用線状部材10(20、30)と同程度の直径を有している。
医療用線状部材10(20、30)の端部側とガイド部材40の先端側を突合せて、突合せ部を溶着して接合するとともに、ガイド部材42の他端側にはガイド部材42の外径より大きな直径を有する金属製の球状のビーズ43を溶着している。このビーズ43はガイド部材42の他端側を溶融させて形成することもできる。実施例7のガイド部材42は実施例1から実施例4のいずれの構成に対しても好適である。
[実施例5から実施例7の作用]
端部側にガイド部材40、41、42のいずれかを備えた医療用線状部材10(20、30)では、手術者がガイド部材40、41、42を例えば骨折部Cの外径程度の曲率に屈曲させる。ガイド部材40、41、42は屈曲形状を維持するから、実施例1から実施例4における図3、図7および図10に例示した骨折部Cへの医療用線状部材10(20、30)の巻き付けにおいて、骨折部Cの表側から裏側にガイド部材40、41、42を挿し入れし易くなり、かつ、骨折部Cの裏側を経由したガイド部材40、41、42の先端側を骨折部Cの表側に出しやすくなるため、医療用線状部材10(20、30)が容易に引き出される。また、ガイド部材40、41、42の先端側にビーズ43を設けた場合、骨折部C付近の生体組織に誤ってビーズ43を押付けても損傷を受けにくくなる。医療用線状部材10(20、30)が骨折部Cに緊縛された後、ガイド部材40、41、42を含む余剰な医療用線状部材10(20、30)は切断されて取り除かれる。

Claims (8)

  1. 複数本のワイヤを配列した基本体を、内側に空間部を有し、かつ、軸線方向に間隙部を開けて螺旋巻きした螺旋体としたことを特徴とする医療用線状部材。
  2. 前記空間部の少なくとも一部に、非直線状に成形した1本以上のワイヤからなる補助芯を有することを特徴とする請求項1記載の医療用線状部材。
  3. 直径の異なる複数個の前記螺旋体を軸線に対して層状に配置して複層構造としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の医療用線状部材。
  4. 層方向に隣接する螺旋体の螺旋方向が逆方向となるように配置したことを特徴とする請求項3記載の医療用線状部材。
  5. 前記基本体の全部または一部のワイヤが、金属よりなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1に記載の医療用線状部材。
  6. 前記基本体の表面の少なくとも一部に、金属めっきが施されたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1に記載の医療用線状部材。
  7. 前記基本体を構成するワイヤの横断面形状における断面重心から外周線の一点までの距離と、前記断面重心から前記外周線の他の一点までの距離とが相違することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1に記載の医療用線状部材。
  8. 前記医療用線状部材の端部側に、塑性変形による屈曲状態を維持可能なガイド部材を接合したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1に記載の医療用線状部材。
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