JP5478177B2 - オフセット印刷インキ用溶剤組成物、これを含有するオフセット印刷インキ及び印刷物 - Google Patents

オフセット印刷インキ用溶剤組成物、これを含有するオフセット印刷インキ及び印刷物 Download PDF

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Description

本発明は、オフセット印刷インキ用溶剤組成物、これを含有するオフセット印刷インキ、及び当該インキを用いて印刷された印刷物に関する。
オフセット印刷インキには、約20〜40質量%の石油系溶剤が含まれている。この石油系溶剤は、枯渇が懸念される化石資源から調製されているため、石油系以外の溶剤に代替することが望まれている。そのため、石油系溶剤を植物由来溶剤に代替した環境対応型オフセット印刷インキの開発が以前から行われている。
しかしながら、印刷適性の問題のため実用化が困難であり、特にオフセット輪転印刷では、加熱乾燥方式であるヒートセット乾燥が行われるため、揮発成分である石油系溶剤のすべてを植物由来溶剤に代替することは実用上不可能であった。
これに対し、乾燥性について改善した環境対応型オフセット印刷インキが開発されている。例えば、特許文献1及び2には、特定の脂肪酸エステル及び/又は脂肪族エーテルを溶剤として用いた、石油系溶剤を含有しない平板印刷インキ組成物が記載されている。また、特許文献3には、石油系溶剤の一部又は全部を特定の脂肪酸エステルに置き換えたオフセット輪転印刷インキが記載されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたインキは、乾燥性についてある程度改善されているものの石油系溶剤を含有するインキと比べると依然として劣る。
また、脂肪酸エステルを溶剤として用いた場合には、塗布されたインキ溶剤を印刷用ブランケットが吸収して膨潤してしまい、印刷用ブランケットの厚みが変動し、印刷位置精度等の品質が著しく低下するという問題が発生する。また、場合によっては、印刷用ブランケットが破裂することもある。このような問題は、印刷装置を長時間稼動させた場合に特に発生しやすい。
また、脂肪族エーテルは特有の不快な臭気を有しており、作業環境を悪化させるだけでなく、当該インキを用いて印刷された印刷物においても異臭が感じられ印刷物の品質に問題を有する。
一方、石油系溶剤を植物由来溶剤に代替したオフセット印刷インキの中には、印刷機上で安定した流動性を示す性質(機上安定性)に劣るものもあり、実用化の観点からは従来の石油系溶剤を用いたオフセット印刷インキと同等の機上安定性を有する必要がある。
特開2004−204202号公報 特開2004−331890号公報 特開2006−176754号公報
本発明の課題は、オフセット印刷インキに含まれている石油系溶剤に代替することができる溶剤(好ましくは植物由来溶剤)であって、オフセット印刷インキに適用した場合に、従来の石油系溶剤を用いたオフセット印刷インキと同等の乾燥性及び機上安定性を有し、印刷時に印刷用ブランケットの膨潤が起こりにくく、かつ臭気が少ないオフセット印刷インキ用溶剤組成物、これを含有するオフセット印刷インキ、及び当該インキを用いて印刷された印刷物を提供することにある。ここでいう、石油系溶剤とは、石油を主原料とした溶剤であり、植物由来溶剤とは、植物を主原料とした溶剤である。
本発明は、以下のオフセット印刷インキ、オフセット印刷インキ用溶剤組成物、及び印刷物を提供する。
[1]炭素数8〜18のアルコールにアルキレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物10〜90質量%と、総炭素数8〜24のジアルキルエーテル10〜90質量%とを含むオフセット印刷インキ用溶剤組成物。
[2]前記アルキレンオキサイド付加物の沸点が常圧で200〜380℃である、[1]に記載のオフセット印刷インキ用溶剤組成物。
[3]前記アルキレンオキサイド付加物が、下記一般式(1)で表される化合物である、[1]又は[2]に記載のオフセット印刷インキ用溶剤組成物。
一般式(1)
1O(AO)n
(式中、R1は炭素数8〜18のアルキル又はアルケニル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であって0.1〜1.0の数を表す。)
[4]前記ジアルキルエーテルが、下記一般式(2)で表される化合物である、[1]〜[3]のいずれかに記載のオフセット印刷インキ用溶剤組成物。
一般式(2)
2OR3
(式中、R2は炭素数4〜18のアルキル又はアルケニル基を表し、R3は炭素数1〜18のアルキル基を表す。)
[5]ワニス用樹脂と[1]〜[4]のいずれかに記載の溶剤組成物とを含有するオフセット印刷インキ。
[6]前記ワニス用樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂及び/又はロジンエステル樹脂である、[5]に記載のオフセット印刷インキ。
[7]前記ロジンエステル樹脂が、軟化点120℃以上210℃以下、重量平均分子量20,000以上300,000以下である、[6]に記載のオフセット印刷インキ。
[8]前記ロジン変性フェノール樹脂が、軟化点120℃以上210℃以下、重量平均分子量10,000以上300,000以下である、[6]に記載のオフセット印刷インキ。
[9]オフセット輪転印刷用である、[5]〜[8]のいずれかに記載のオフセット印刷インキ。
[10][5]〜[9]のいずれかに記載のオフセット印刷インキを用いて印刷された印刷物。
本発明のオフセット印刷インキ用溶剤組成物は、オフセット印刷インキ中の石油系溶剤に代替可能であり、臭気が少なく、かつ、乾燥性に優れる。また、本発明の溶剤組成物は、植物由来原料から調製することもでき、植物を栽培することで安定供給が可能であり、化石資源の消費を抑え、しかもカーボン・ニュートラルの観点から大気中の二酸化炭素の量に影響を与えない。
この溶剤組成物を含有する本発明のオフセット印刷インキは、従来の石油系溶剤を用いたオフセット印刷インキと同等の乾燥性及び機上安定性を有し、印刷時に印刷用ブランケットの膨潤が起こりにくく、印刷適性に優れる。また、臭気が少なく作業環境を改善することができる。
本発明のオフセット印刷インキを用いて印刷された印刷物は、異臭もなく印刷品質が良好である。また、印刷物に残留する溶剤は、皮膚刺激性が低く、化学物質過敏症の人に対しても不快感を与えない。
<溶剤組成物>
本発明のオフセット印刷インキ用溶剤組成物は、炭素数8〜18のアルコールにアルキレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物10〜90質量%と、総炭素数8〜24のジアルキルエーテル10〜90質量%とを含む。
(アルキレンオキサイド付加物)
アルキレンオキサイド付加物におけるアルコールの炭素数は、7以下だと沸点が低く、それにより乾燥が早く、臭気もきついので好ましくなく、19以上だと沸点が高く、それにより乾燥が遅いので好ましくない。アルキレンオキサイド付加物におけるアルコールの炭素数は、印刷性及び乾燥性の向上の点から、10〜18が好ましく、10〜16がより好ましく、12〜14が更に好ましい。前記アルコールとしては、印刷性及び乾燥性の向上の点から、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、及びこれらの混合物が好ましく、ラウリルアルコールがより好ましい。
本発明において、前記アルコールは、環境保全や作業環境の向上の観点から、植物油から製造されたものであることが好ましい。前記植物油としては、ヤシ油、パーム油、カカオ油、オリーブ油、コーン油、これらの混合物、又はこれらの廃食油が挙げられる。前記廃食油は、例えば、飲食物の製造に使用された油を含む。これらの植物油からアルコールを製造することは、当業者であれば定法に従って適宜行うことができる。
アルキレンオキサイド付加物において、アルコールに付加されるアルキレンオキサイドとしては、印刷性及び乾燥性の向上の点から、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が好ましく、プロピレンオキサイドがより好ましい。アルキレンオキサイドは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルキレンオキサイドの付加モル数は、溶剤の乾燥性及び臭気の点から、アルコール1モルに対し、0.1〜1.0モルが好ましく、0.2〜0.95モルがより好ましく、0.25〜0.9モルが更に好ましい。
アルキレンオキサイド付加物の総炭素数は、印刷性、乾燥性及び臭気の点から、9〜21が好ましく、10〜20がより好ましい。
アルキレンオキサイド付加物の沸点は、インキの蒸発乾燥性の観点から、常圧(101.3kPa)で200〜380℃が好ましく、240〜330℃がより好ましく、260〜300℃が更に好ましい。
アルキレンオキサイド付加物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(1)
1O(AO)n
(式中、R1は炭素数8〜18のアルキル又はアルケニル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であって0.1〜1.0の数を表す。)
前記一般式(1)中、R1で表されるアルキル又はアルケニル基は、直鎖状又は分枝状であってもよく、環状構造を含んでもよい。R1の炭素数は、印刷性及び乾燥性の向上の点から、10〜18が好ましく、10〜16がより好ましく、10〜14が更に好ましい。AOで表されるオキシアルキレン基の炭素数は、印刷性及び乾燥性の向上の点から、3がより好ましい。具体的には、オキシアルキレン基としては、印刷性及び乾燥性の向上の点から、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が好ましく、オキシプロピレン基がより好ましい。オキシアルキレン基は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。nで表されるAOの平均付加モル数は、印刷性及び乾燥性の向上並びに臭いの低減の点から、0.2〜0.95モルがより好ましく、0.25〜0.9モルがさらに好ましい。
なお、前記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物は、R1OHで表されるアルコールにアルキレンオキサイドが付加した化合物である。当該アルコールにおけるR1は上述のとおりである。
本発明におけるアルキレンオキサイド付加物は、アルコールにアルキレンオキサイドを付加することで製造できる。アルキレンオキサイドの付加方法は、当業者であれば定法に従い適宜行うことができる。アルキレンオキサイドの付加方法としては、例えば、オートクレーブ中で、触媒として水酸化カリウムの存在下、アルコールとアルキレンオキサイドとを反応させる方法等が挙げられる(例えば特開平4−321637号公報を参照)。ここで、前述のとおり、アルコールは、環境保全や作業環境の向上の観点から、植物油から製造されたものであることが好ましい。
(ジアルキルエーテル)
ジアルキルエーテルの炭素数は、7以下だと沸点が低く、それにより乾燥が早く、臭気もきついので好ましくなく、25以上だと沸点が高く、それにより乾燥が遅いので好ましくない。ジアルキルエーテルの総炭素数は、印刷性及び乾燥性の向上の点から、10〜20が好ましく、12〜18がより好ましい。ジアルキルエーテルとしては、例えばジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル等の2つのアルキル基が同一であるジアルキルエーテル類や、エチルメチルエーテル等の2つのアルキル基が互いに異なるジアルキルエーテル類等、およびそれらの混合物が挙げられるが、印刷性及び乾燥性の向上の点から、2つのアルキル基が同一であるジアルキルエーテル類がより好ましく、ジオクチルエーテルが更に好ましい。
ジアルキルエーテルは、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)
2OR3
(式中、R2は炭素数4〜18のアルキル又はアルケニル基を表し、R3は炭素数1〜18のアルキル基を表す。)
前記一般式(2)中、R2で表されるアルキル又はアルケニル基の炭素数は、印刷性及び乾燥性の向上の点から、4〜16がより好ましく、6〜12が更に好ましい。R3で表されるアルキル基の炭素数は、印刷性及び乾燥性の向上の点から、4〜16がより好ましく、6〜12が更に好ましい。
ジアルキルエーテルは、当業者であれば定法に従い適宜製造することができる。エーテルの製造方法としては、例えば、四ツ口フラスコ中で、触媒としてリンタングステン酸の存在下、アルコールを加熱反応させる方法等が挙げられる(例えば特開2002−105014号公報を参照)。
前記アルコールとしては、印刷性及び乾燥性の向上の点から、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、及びこれらの混合物が好ましく、オクチルアルコールがより好ましい。
本発明において、ジアルキルエーテルの製造に用いられるアルコールは、環境保全や作業環境の向上の観点から、植物油から製造されたものであることが好ましい。前記植物油としては、ヤシ油、パーム油、カカオ油、オリーブ油、コーン油、これらの混合物、又はこれらの廃食油が挙げられる。前記廃食油は、例えば、飲食物の製造に使用された油を含む。これらの植物油からアルコールを製造することは、当業者であれば定法に従って適宜行うことができる。
本発明の溶剤組成物は、前記アルキレンオキサイド付加物10〜90質量%と、前記ジアルキルエーテル10〜90質量%とを含む。前記アルキレンオキサイド付加物の含有量が10質量%未満の場合は印刷性が不良であり、90質量%を超える場合は乾燥性が不良であるので好ましくない。前記アルキレンオキサイド付加物の含有量は、印刷性及び乾燥性の向上の点から、20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。アルキレンオキサイド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
一方、前記ジアルキルエーテルの含有量が10質量%未満の場合は乾燥性が不良であり、90質量%を超える場合は印刷性が不良であるので好ましくない。前記ジアルキルエーテルの含有量は、印刷性及び乾燥性の向上の点から、20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。ジアルキルエーテルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
<オフセット印刷インキ>
本発明のオフセット印刷インキは、前記溶剤組成物とワニス用樹脂を含有する。
(ワニス用樹脂)
本発明のオフセット印刷インキに含有されるワニス用樹脂としては、ロジンエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、マレイン酸変性ロジンエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂等が好ましく、ロジンエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂がより好ましい。
ロジンエステル樹脂は、インキ塗膜の硬化性及びインキワニスを調製する際における作業性の観点から、軟化点が120℃以上210℃以下であることが好ましく、140℃以上200℃以下であることがより好ましい。また、インキの流動性及び粘弾性の観点から、重量平均分子量が20,000以上300,000以下であることが好ましく、50,000以上200,000以下であることがより好ましい。
ロジンエステル樹脂としては、重合ロジンを導入したロジンエステル樹脂や、無水マレイン酸又はフマル酸等の多塩基酸にて変性した変性ロジンエステル樹脂を好ましく使用することができる。
ロジン変性フェノール樹脂は、インキ塗膜の硬化性及びインキワニスを調製する際における作業性の観点から、軟化点が120℃以上210℃以下であることが好ましい。また、インキの流動性及び粘弾性の観点から、重量平均分子量が10,000以上300,000以下であることが好ましく、30,000以上200,000以下であることがより好ましい。
ロジンエステル樹脂及びロジン変性フェノール樹脂は任意の方法で調製することができる。
[インキワニス]
本発明のオフセット印刷インキの調製にはインキワニスが用いられる。インキワニスは、前記ワニス用樹脂と前記溶剤組成物とを配合し、更に必要に応じて、植物油及びゲル化剤を配合して調製することができる。
(植物油)
植物油としては、例えば、ヒマシ油、落花生油、オリーブ油等の不乾性油、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油等の半乾性油、及びアマニ油、エノ油、キリ油等の乾性油等、好ましくは半乾性油及び/又は乾性油が挙げられる。これらの中でも大豆油、アマニ油が特に好ましい。
(ゲル化剤)
ゲル化剤としては、任意のものを使用することができ、例えば、アルミニウムエチルアセテートジイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレート、ステアリン酸アルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキサイト、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド等、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でもエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシドが好ましく、例えば「ALCH」(商品名、川研ファインケミカル社製)を使用することができる。
インキワニス中におけるワニス用樹脂、溶剤組成物、植物油及びゲル化剤の含有量は、適宜決定される。
インキワニス中におけるワニス用樹脂の含有量は、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜55質量%である。溶剤組成物の含有量は、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは30〜55質量%である。前記インキワニスが植物油を含有する場合、その含有量は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。また、前記インキワニスがゲル化剤を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。
インキワニスの調製方法は特に限定されないが、例えば、前記ワニス用樹脂と、前記溶剤組成物と、植物油とを窒素気流雰囲気下で200℃にて30分間加熱撹拌して、その後150℃に冷却後、ゲル化剤を配合して、さらに200℃にて60分間加熱撹拌して調製することができる。
本発明のオフセット印刷インキは、前記インキワニスに着色剤を含有するタイプのものでもよく、着色剤を含有しないオーバープリントワニスタイプのものでもよい。
(着色剤)
着色剤は特に限定されず、任意のものを用いることができる。例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、磁性酸化鉄等の無機顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、イソインドリン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料等の有機顔料、カーボンブラック及び染料が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のオフセット印刷インキ中の着色剤の含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは15〜25質量%である。
インキの作製方法は特に限定されず、従来公知の方法と同様にして作製することができる。例えば、インキワニス及び着色剤をミキサーでプレミキシングし、3本ロールミルで均一に混練して、前記溶剤組成物及び/又はインキワニスを追加配合することで作製することができる。必要に応じて、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス等の耐摩擦剤及び可塑剤等の添加剤を配合してもよい。
本発明のインキ中のインキワニス含有量は、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは55〜85質量%、更に好ましくは60〜80質量%である。
本発明のオフセット印刷インキは、オフセット輪転印刷及びオフセット枚葉印刷のいずれの用途にも好ましく用いることができるが、印刷速度及び生産性の観点からオフセット輪転印刷用であることが特に好ましい。
<印刷物>
本発明のオフセット印刷インキを用いて、紙、プラスチック、金属等の基材に印刷することで印刷物を得ることができる。印刷を行う際には通常のブランケット、版、ゴムロールを使用できる。ブランケットはUVインキ又は油性−UVインキ兼用タイプを用いることが好ましく、PS版についてはネガ版或いはポジ版をバーニング処理したものを用いることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
溶剤例1〜3
(溶剤組成物a1〜a3の調製)
まず、オートクレーブ中に、植物油由来の炭素数12及び14のアルコール混合物(商品名:カルコール2470、C1225OH/C1429OH=70/30モル%、花王社製)194.4g(1.0モル)と、触媒として水酸化カリウム0.5gとを添加し、プロピレンオキサイド23.2g(0.4モル)を仕込み、150℃、圧力3.0Paにて2時間反応させることで、炭素数12及び14のアルコール混合物にプロピレンオキサイド(PO)が付加したアルキレンオキサイド付加物Aを調製した。アルコール1モルに対するPOの平均付加モル数は0.4である。アルキレンオキサイド付加物Aの沸点は281℃であった。
調製したアルキレンオキサイド付加物Aと、ジオクチルエーテル(試薬、シグマ・アルドリッチ社製)とを、下記表1に示す比率で、30℃、200rpmで5分間撹拌混合して、溶剤組成物a1〜a3をそれぞれ調製した。
溶剤例4〜7
(溶剤組成物a4〜a7の調製)
前記アルキレンオキサイド付加物Aの調製において、アルコール混合物を植物油由来の炭素数12のアルコール(商品名:カルコール2098、C1225OH=100モル%、花王社製)に変更したこと以外は前記アルキレンオキサイド付加物Aと同様にしてアルキレンオキサイド付加物Bを調製した。アルキレンオキサイド付加物Bの沸点は275℃であった。
調製したアルキレンオキサイド付加物Bと、ジオクチルエーテル(シグマ・アルドリッチ社製の試薬)とを、下記表1に示す比率で、30℃、200rpmで5分間撹拌混合して、溶剤組成物a4〜a6をそれぞれ調製した。
また、調製したアルキレンオキサイド付加物Bと、ジデシルエーテル(シグマ・アルドリッチ社製の試薬)とを、下記表1に示す比率で、30℃、200rpmで5分間撹拌混合して、溶剤組成物a7を調製した。
溶剤参考例1〜4
(有機溶剤b1〜b4)
前記アルキレンオキサイド付加物A、前記アルキレンオキサイド付加物B、前記ジオクチルエーテル、及び前記ジデシルエーテルを、それぞれ有機溶剤b1〜b4とした。
溶剤比較例1〜6
(石油系溶剤c1〜c6)
カプリル酸2−エチルヘキシルエステル、カプロン酸3,5,5−トリメチルヘキシルエステル、及びカプロン酸2−エチルヘキシルエステル(いずれもシグマ・アルドリッチ社製の試薬)を、それぞれ石油系溶剤c1、c3、及びc5とした。
また、各エステルと、ジオクチルエーテル(シグマ・アルドリッチ社製の試薬)とを、下記表2に示す比率で、30℃、200rpmで5分間撹拌混合して、石油系溶剤c2、c4、及びc6をそれぞれ調製した。
<評価>
(完全分解温度の測定)
溶剤例1〜7、溶剤参考例1〜4、及び溶剤比較例1〜6の有機溶剤について、熱重量測定法(TG法;Thermogravimetry)により完全分解温度を測定した。具体的には、下記装置及び条件で測定を開始し、有機溶剤が完全に分解消失した温度(サンプル量が0mgになった温度)を完全分解温度とした。結果を下記表1及び2に示す。
装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DTA7200、商品名
測定サンプル量:15mg
開始温度:30℃
昇温速度:5℃/分
空気流量:200mL/分
(乾燥試験)
溶剤例1〜7、溶剤参考例1〜4、及び溶剤比較例1〜6の有機溶剤を、PETフィルム上にアプリケータ(安田精機製作所製)により厚さ100μmで塗布し、25℃、50%RHの恒温恒湿室に静置し、完全に乾燥するまでの時間を測定した。結果を下記表1及び2に示す。
Figure 0005478177
Figure 0005478177
表1及び2の結果から明らかなように、溶剤例1〜7の溶剤組成物は、溶剤参考例1〜4及び溶剤比較例1〜6の有機溶剤に比べて、完全分解温度(TG0)が低く、乾燥時間も短かった。このことから、溶剤例1〜7の溶剤組成物は乾燥性に優れることがわかった。
実施例1〜5
(インキワニスV1の調製)
ワニス用樹脂として、重量平均分子量が60,000のロジン変性フェノール樹脂、軟化点:160℃)を使用した。表3に示すように、ワニス用樹脂と、大豆油と、溶剤として前記溶剤組成物a1とを混合して、窒素気流雰囲気下で200℃にて30分間加熱撹拌した。混合物を150℃に冷却した後、ゲル化剤(ALCH、商品名、川研ファインケミカル社製)を添加して、さらに200℃にて60分間均一に加熱撹拌してインキワニスV1を調製した。
(インキワニスV2の調製)
溶剤として溶剤組成物a1を溶剤組成物a2に変更したこと以外は、インキワニスV1と同様にしてインキワニスV2を調製した。
(インキワニスV3の調製)
溶剤として溶剤組成物a1を溶剤組成物a4に変更したこと以外は、インキワニスV1と同様にしてインキワニスV3を調製した。
(インキワニスV4の調製)
溶剤として溶剤組成物a1を溶剤組成物a5に変更したこと以外は、インキワニスV1と同様にしてインキワニスV4を調製した。
(インキワニスV5の調製)
ワニス用樹脂として、重量平均分子量が60,000のロジンエステル樹脂、軟化点:160℃)を使用したこと以外は、インキワニスV1と同様にしてインキワニスV5を調製した。
(オフセット印刷インキP1〜P5の調製)
調製したインキワニスV1〜V5とフタロシアニンブルーとを配合し、次に、インキのタック値がインコメーター測定値で10〜11になるように、更にインキワニスV1〜V5及びインキワニスV1〜V5の調製で用いた各溶剤を追加配合し、均一に混練して、表3に記載の組成を有するオフセット印刷インキP1〜P5を調製した。なお、上記のタック値は、得られたインキ1.3mlを東洋精機(株)製インコメーターのロール上に塗布し、ロール温度32℃、回転スピード1,200rpmで回転させ、1分後の測定値である。
比較例1〜4
(インキワニスV6の調製)
溶剤として溶剤組成物a1を有機溶剤b1に変更したこと以外は、インキワニスV1と同様にしてインキワニスV6を調製した。
(インキワニスV7の調製)
溶剤として溶剤組成物a1を石油系有機溶剤c2に変更したこと以外は、インキワニスV1と同様にしてインキワニスV7を調製した。
(インキワニスV8の調製)
溶剤として溶剤組成物a1を石油系有機溶剤c4に変更したこと以外は、インキワニスV1と同様にしてインキワニスV8を調製した。
(インキワニスV9の調製)
溶剤として溶剤組成物a1を石油系有機溶剤c6に変更したこと以外は、インキワニスV1と同様にしてインキワニスV9を調製した。
(オフセット印刷インキP6〜P9の調製)
インキワニスV1をインキワニスV6〜V9に変更したこと以外は、オフセット印刷インキP1と同様にして表3に記載の組成を有するオフセット印刷インキP6〜P9を調製した。
Figure 0005478177
<評価>
(蒸発乾燥性)
実施例1〜5及び比較例1〜4の各インキを用いて、オフセット輪転印刷を行った。実施例1〜5及び比較例1〜4の各インキ0.125mlを、2分割ロールを備えたRIテスター(商品名:RI型テスター(RI−2型)、石川島産業社製)を用いてトップコート紙に展色して、印刷試料片を作製した。次に、温度調整可能なオーブンを用いて、上記の印刷試料片を、所定の紙面温度で3分間加熱し、インキ塗膜を乾燥固化させた。加熱後、印刷試料片を1分間放冷し、放冷した印刷試料片のインキ面を学振型耐磨耗性試験機にて表面を白紙で擦り、色落ちした場合には温度を変更して同様の操作を繰り返した。色落ちしないときの温度を紙面乾燥温度とした。結果を表4に示す。
(機上安定性)
実施例1〜5及び比較例1〜4の各インキ0.5mlを、インコメーター(商品名:デジタルインコメーター、東洋精機社製)に塗布し、ロール温度32℃、回転スピード1,200rpmに設定してロールを回転させ、測定初期のタック値と、その1分後のタック値を読み取り、タック値の経時的な変動(初期値との差ΔT)を測定した。結果を表4に示す。
(膨潤性)
実施例1〜5及び比較例1〜4の各インキをゴムブランケット片(商品名:ディブラン3000−4、ディインターナショナル社製)の表面にヘラで適量塗布し、常温にて24時間放置した。その後、ゴムブランケット片からインキを拭き取り、ブランケットの厚みをデジシックネステスターで測定し、ブランケット表面の膨潤の状況を観察し、下記の基準により評価した。結果を表4に示す。
○:溶剤滴下前後のブランケットの厚み差が0.02mm未満であり、かつ、ブランケット表面に、膨れや軟化現象は認められない。
△:溶剤滴下前後のブランケットの厚み差が0.02mm以上0.06mm以下であり、かつ、ブランケット表面に、膨れや軟化現象は認められない。
×:溶剤滴下前後のブランケットの厚み差が0.06mmを超えるか、又はブランケット表面の全面又は一部に、膨れや軟化現象が認められる。
(におい)
上記の蒸発乾燥性の評価の際に作製した印刷試料片を、評価するメンバー10人に無作為に渡し、異臭の有無を官能評価した。評価基準は、「異臭なし」、「若干異臭あり」、及び「異臭あり」の三段階評価とし、最も多く得られた評価をその印刷試料片の評価とした。ここで、「異臭なし」は、印刷物を嗅いだときに臭いに全く違和感が無かった場合の評価であり、「若干異臭有り」は、印刷物を嗅いだときに臭いに若干違和感があった場合の評価であり、「異臭あり」は、印刷物を嗅いだときに、耐えられないほどの異臭を感じた場合の評価である。結果を表4に示す。
Figure 0005478177
表4の結果から明らかなように、比較例1〜4のインキはいずれも、紙面乾燥温度が110℃と高く蒸発乾燥性に劣るものであり、印刷物を嗅いだときに耐えられないほどの異臭があった。ここで、比較例では、紙面乾燥温度が実施例に比べて10℃高いが、この差は、実用上、紙の強度低下や皺が入り易くなる等の好ましくない状態を生ずる。また、比較例1のインキは機上安定性にも劣るものであり、比較例1、3及び4のインキは、ブランケットが膨潤して厚みが大きく変動してしまい、印刷位置精度等の品質が著しく低下するものであった。
これに対し、実施例1〜5のインキはいずれも、紙面乾燥温度が100℃と低く蒸発乾燥性に優れ、しかも印刷物の臭いも全くないか又はほとんどなく、機上安定性、及び膨潤性についても良好であった。
本発明の溶剤組成物は、オフセット印刷インキ中の石油系溶剤に代替可能であり、臭気が少なく、かつ、乾燥性に優れる。また、植物由来原料から調製することもでき、植物を栽培することで安定供給が可能であり、化石資源の消費を抑え、しかもカーボン・ニュートラルの観点から大気中の二酸化炭素の量に影響を与えない。このような溶剤組成物を用いた本発明のオフセット印刷インキは、環境対応型オフセット印刷インキとして有用である。

Claims (9)

  1. 炭素数8〜18のアルコールにアルキレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物10〜90質量%と、総炭素数8〜24のジアルキルエーテル10〜90質量%とを含み、該アルキレンオキサイド付加物が、下記一般式(1)で表される化合物であるオフセット印刷インキ用溶剤組成物。
    一般式(1)
    1 O(AO) n
    (式中、R 1 は炭素数8〜18のアルキル又はアルケニル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはAOの平均付加モル数であって0.1〜1.0の数を表す。)
  2. 前記アルキレンオキサイド付加物の沸点が常圧で200〜380℃である、請求項1に記載のオフセット印刷インキ用溶剤組成物。
  3. 前記ジアルキルエーテルが、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載のオフセット印刷インキ用溶剤組成物。
    一般式(2)
    2OR3
    (式中、R2は炭素数4〜18のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜18のアルキル基を表す。)
  4. ワニス用樹脂と請求項1〜3のいずれかに記載の溶剤組成物とを含有するオフセット印刷インキ。
  5. 前記ワニス用樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂及び/又はロジンエステル樹脂である、請求項に記載のオフセット印刷インキ。
  6. 前記ロジンエステル樹脂が、軟化点120℃以上210℃以下、重量平均分子量20,000以上300,000以下である、請求項に記載のオフセット印刷インキ。
  7. 前記ロジン変性フェノール樹脂が、軟化点120℃以上210℃以下、重量平均分子量10,000以上300,000以下である、請求項に記載のオフセット印刷インキ。
  8. オフセット輪転印刷用である、請求項4〜7のいずれかに記載のオフセット印刷インキ。
  9. 請求項4〜8のいずれかに記載のオフセット印刷インキを用いて印刷された印刷物。
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