JP5477198B2 - 冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、Ti−IF鋼板にBを添加することにより耐二次加工脆性を改善する技術が開示されている。また、特許文献2には、浸炭雰囲気中で箱焼鈍を行い、フェライトを細粒化することにより、Ti−IF鋼板またはTi、Nb−IF鋼板の耐二次加工脆性を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献2に開示された技術は、長時間の焼鈍を必須とするものであるため、生産性に劣る。さらに、鋼組織が細粒であるために良好なプレス成形性を得ることができない。
その結果、熱延鋼板の段階においては鋼中に固溶Cを極力存在させないようにして、冷間圧延後の再結晶焼鈍時における粒成長と深絞り性に好ましい集合組織の形成とを促進し、再結晶焼鈍後の段階においては鋼中に適量の固溶Cを存在させるようにして、良好な耐二次加工脆性を具備させるという、一見相反する関係にある事項を両立させることを新たに着想した。
本発明者らは、固溶C量が異なる板厚0.65mmの冷延鋼板(化学組成は、質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.01%、Mn:0.08〜0.10%、P:0.010〜0.012%、S:0.006%、sol.Al:0.03〜0.05%、N:0.0018〜0.0022%、Ti:0.003〜0.025%、Nb:0.010〜0.040%を含有し、残部Feおよび不純物からなる。)を用いて、下記式(3)で規定される計算固溶C量と降伏応力(YS)、平均r値、耐二次加工脆性、BH量との関係を調査した。
Ti*=max[Ti−(48/14)×N−(48/32)×S,0] (2)
計算固溶C量=C−(12/93)Nb−(12/48)Ti* (3)
(i)計算固溶C量の増加にともなって、再結晶焼鈍における粒成長が阻害されて鋼組織が微細となるとともに深絞り性に好ましい集合組織の形成が阻害され、図1に示すように降伏応力(YS)が上昇し、図2に示すように平均r値が低下する。
これらの知見から、降伏応力(YS)が180MPa以下かつ平均r値が1.6以上を実現するためには、計算固溶C量を0未満にすることが有効であることが判明した。
−0.0025≦C−(12/93)×Nb−(12/48)×Ti*<0 (1)
Ti*=max[Ti−(48/14)×N−(48/32)×S,0] (2)
ここで、式(1)および(2)における各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示し、式(2)におけるmax[ ]は[ ]内の引数のうち最大の値を返す関数である。
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、B:0.0020質量%以下を含有することを特徴とする上記(1)に記載の冷延鋼板。
(A)スラブに熱間圧延を施して860℃以上960℃以下の温度域で圧延を完了し、600℃以上750℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(D)前記冷延鋼板に800℃以上900℃以下の温度域で焼鈍して550℃まで4℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する連続焼鈍工程;および
(E)前記鋼板を1%以下の伸び率で圧延するスキンパス工程。
(1)C:0.0005%以上0.0035%以下
Cは、固溶状態で鋼中に存在することにより、粒界の強度を高めて耐二次加工脆性を向上させる作用を有する。本発明においては、再結晶焼鈍においてNbCを再固溶させることにより上記作用を得る。C含有量が0.0005%未満では上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、C含有量は0.0005%以上とする。一方、C含有量が0.0035%では、熱延鋼板段階において鋼中のCをNbにより固定したとしても、多数のNbCが析出してしまい、再結晶焼鈍時における粒成長と深絞り性に好ましい集合組織の形成とが阻害されてしまう。したがって、C含有量は0.0035%以下とする。好ましくは0.0025%以下、さらに好ましくは0.0020%以下である。
Siは、不純物として含有され、固溶強化により降伏応力を上昇させる作用を有する。また、易酸化元素であることから、非めっき鋼板については化成処理性を劣化させる作用を有し、溶融めっき鋼板については濡れ性を低下させる作用を有し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板については合金化速度を低下させる作用を有する。したがって、Si含有量は0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。
Mnは、鋼中のSと結合してMnSを形成し、固溶Sによる熱間脆性を防止する作用を有する。Mn含有量が0.05%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.05%以上とする。一方、Mn含有量が0.2%超では、平均r値の低下が著しくなる場合がある。したがって、Mn含有量は0.2%以下とする。好ましくは0.16%以下である。
Pは、不純物として含有され、耐二次加工脆性を劣化させる作用を有する。また、鋼板表面に合金化溶融亜鉛めっきを施す場合には、合金化速度を低下させる作用を有するため、その含有量が過剰であると適度な合金化度を得ることが困難になる場合がある。したがって、P含有量は0.03%以下とする。好ましくは0.025%以下である。
Sは、不純物として含有され、粒界に偏析して鋼を脆化させる作用を有する。したがって、S含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.010%未満、さらに好ましくは0.008%未満である。S含有量は少ないほど好ましいので下限を限定する必要はないが、コストの観点からは0.003%超とすることが好ましい。
Alは、脱酸により鋼を健全化する作用を有する。また、鋼中のNをAlNとして固定することにより、固溶Nによる常温時効を抑制する作用を有する。本発明においては、Nを固定する作用を有するTiの含有量の上限を後述するように制限することから、AlによるNの固定は重要である。sol.Al含有量が0.0005%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は0.0005%以上とする。好ましくは0.010%以上である。一方、sol.Al含有量を0.08%超としても上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利になる。したがって、sol.Al含有量は0.08%以下とする。好ましくは0.07%以下である。
Nは、不純物として含有され、延性、深絞り性および耐常温時効性を劣化させる作用を有する。したがって、N含有量は0.004%以下とする。好ましくは0.0030%以下である。N含有量は少ないほど好ましいのでN含有量の下限を規定する必要はない。ただし、過度に極低窒素化することは、製鋼コストの著しい上昇を伴う。したがって、N含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Tiは、鋼中のNをTiNとして固定することにより、固溶Nによる常温時効を抑制するとともに、鋼板のr値を高める作用を有する。Ti含有量が0.003%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Ti含有量は0.003%以上とする。好ましくは0.005%以上である。一方、Ti含有量が0.015%超では、元来TiCの方がNbCよりも優先的に析出することから、TiCの析出量の増加に伴ってNbCの析出が抑制されてしまい、焼鈍によってNbCを再固溶させたとしても適度な固溶C量を確保することができずに耐二次加工脆性が劣化する場合がある。したがって、Ti含有量は0.015%以下とする。なお、Ti含有量は下記式(4)を満足することが好ましい。
0.7×(48/14)×N≦Ti≦(48/14)×N+(48/32)×S (4)
Nbは、熱延鋼板段階においては鋼中のCをNbCとして固定することにより、鋼中に固溶Cを極力存在させないようにして、冷間圧延後の再結晶焼鈍時における粒成長と深絞り性に好ましい集合組織の形成とを促進する作用を有する。さらに、再結晶焼鈍において再固溶することにより、再結晶焼鈍後の段階においては鋼中に適量の固溶Cを存在させるようにして、良好な耐二次加工脆性を具備させる作用を有する。Nb含有量が0.015%未満では上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、Nb含有量は0.015%以上とする。好ましくは0.020%以上である。一方、Nbは鋼組織を細粒化する作用をも有し、Nb含有量が0.035%を超えると降伏応力の上昇が著しくなる場合がある。したがってNb含有量は0.035%以下とする。好ましくは0.030%以下である。
Bは、結晶粒界に偏析して粒界を強化し、耐二次加工脆性を向上させる作用を有する。したがって、Bを含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.0020%を上回ると、再結晶温度が過度に上昇してしまい、深絞り性が劣化する場合がある。したがって、B含有量は0.0020%以下とする。好ましくは0.00015%未満である。上記作用による効果をより確実に得るにはB含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0003%超であり、特に好ましくは0.0004%超である。
上記以外の含有成分はFeおよび不純物である。
下記式(3)で求められる計算固溶C量が−0.0025未満では、再結晶焼鈍においてNbCを再固溶させたとしても、良好な耐二次加工脆性を具備させることが可能な程度の適量の固溶Cを鋼中に存在させることが困難である。一方、下記式(3)で求められる計算固溶C量が0以上では、再結晶焼鈍における粒成長が阻害されて鋼組織が微細となるとともに深絞り性に好ましい集合組織の形成が阻害され、降伏応力(YS)の上昇や平均r値の低下が著しくなる。したがって、下記式(1)および(2)を満足する化学組成とする。
−0.0025≦C−(12/93)×Nb−(12/48)×Ti*<0 (1)
Ti*=max[Ti−(48/14)×N−(48/32)×S,0] (2)
計算固溶C量=C−(12/93)Nb−(12/48)Ti* (3)
フェライト結晶粒度番号は9.0以下とする。
JIS G 0552で規定されるフェライト結晶粒度番号が9.0超となると、鋼組織が過度に細粒から構成されることとなるため、降伏応力の上昇が著しくなる。したがって、フェライト結晶粒度番号は9.0以下とする。フェライト結晶粒度番号の下限は、降伏応力が低く深絞り性に優れるとともに良好な耐二次加工脆性を有する鋼板を得る観点からは特に規定されない。フェライト結晶粒を過度に粗大化すると、プレス成形時に肌荒れを生じる場合がある。このため、優れた外観のプレス成形品を安定的に得ることが求められる場合には、フェライト結晶粒度番号は7.8以上とすることが好ましい。
(1)塗装焼付硬化量:10MPa以上35MPa以下
塗装焼付硬化量(BH量)は10MPa以下35MPa以上とする。
なお、塗装焼付硬化量はJIS G 3135で規定される塗装焼付硬化量試験方法により求められる圧延方向の値である。
平均r値は1.6以上かつYSは180MPa以下であることが好ましい。
平均r値を1.6以上かつYSを180MPa以下とすることにより、サイドパネルアウターのような絞り成形の厳しい部品についてもプレス時の割れをより確実に抑制することができる。平均r値は1.7以上、YSは170MPa以下とすることがさらに好ましい。
絞り成形を施す際には、フランジの流入抵抗に耐え得る縦壁部の強度を確保することが好ましい。このような観点から、圧延方向の引張強さは285MPa以上であることが好ましい。一方、引張強さが高すぎると引張強さの上昇に伴って降伏応力も上昇し、スプリングバックによる形状不良が生じ易くなる。したがって、圧延方向の引張強さは325MPa以下であることが好ましい。
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を備えさせてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
(1)熱間圧延工程
上記化学組成を有するスラブに熱間圧延を施して860℃以上960℃以下の温度域で圧延を完了し、600℃以上750℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする。ここで、熱間圧延に供するスラブは、連続鋳造後あるいは分塊圧延後の高温状態にあるものであってもよく、一旦冷却されたものを加熱したものであってもよい。加熱する場合の温度は、スケール疵抑制の観点から低い方が好ましく、1300℃以下とすることが好ましく、1250℃以下とすることがさらに好ましい。
上記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板には酸洗を施してスケール除去して酸洗鋼板とする。酸洗は常法にしたがって行えばよい。例えば、塩酸や硫酸を用いる。
上記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする。
冷間圧延は常法にしたがって行えばよい。冷間圧延の圧下率は特に規定しないが、圧下率を高めることにより冷延鋼板の深絞り性が向上する傾向にあるので70%以上とすることが好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。一方、圧下率が高すぎると圧延荷重が過大となって操業が困難になる場合があるので90%以下とすることが好ましい。
上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に800℃以上900℃以下の温度域で焼鈍して550℃まで4℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する連続焼鈍を施す。
焼鈍工程により得られた鋼板には、通常、平坦矯正や表面粗さの調整のためにスキンパス圧延が施されるが、本発明では、焼鈍工程においてNbCを再固溶させるため鋼中に微量の固溶Cが存在するので、ストレッチャーストレインの抑制の観点からスキンパス圧延を施す。しかしながら、スキンパス圧延の伸び率が1%を超えると、降伏応力の上昇が著しくなる。したがって、スキンパス圧延の伸び率は1%以下とする。なお、ストレッチャーストレインの抑制の観点からは、0.4%以上とすることが好ましく、0.6%以上とすることがさらに好ましい。
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき処理を施してめっき層を備えさせてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。
表1に示す化学組成の鋼を試験転炉で溶製し、連続鋳造試験機にて250mm厚のスラブを製造した。得られたスラブを1220℃に加熱して熱間圧延試験機を用いて4.4mm厚まで熱間圧延した。熱間圧延条件として、熱間圧延完了温度と巻取温度とを表2に示す。
得られた冷延鋼板を表2に示す焼鈍温度で焼鈍し、550℃までを8℃/秒で冷却した。冷却後の鋼板を0.8%の伸び率でスキンパス圧延した。
平均r値=(r0°値+r90°値+2×r45°値)/4
また、No.14は、Nb含有量が過少で、計算固溶C量が0以上であったため、熱延鋼板段階において鋼中のCをNbCとして固定することにより、鋼中に固溶Cを極力存在させないようにして、冷間圧延後の再結晶焼鈍時における粒成長と深絞り性に好ましい集合組織の形成とを促進することができなかった。このため、フェライト結晶粒度番号が9.0超となって降伏応力が高く、平均r値が低かった。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.0005%以上0.0035%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.05%以上0.2%以下、P:0.03%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.0005%以上0.08%以下、N:0.004%以下、Ti:0.003%以上0.015%以下およびNb:0.015%以上0.035%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなるとともに下記式(1)および(2)を満足する化学組成を有し、フェライト結晶粒度番号が9.0以下である鋼組織を有し、塗装焼付硬化量が10MPa以上35MPa以下であり、平均r値が1.6以上であるとともに、降伏応力YSが180MPa以下である機械特性を有することを特徴とする冷延鋼板。
−0.0025≦C−(12/93)×Nb−(12/48)×Ti*<0 (1)
Ti*=max[Ti−(48/14)×N−(48/32)×S,0] (2)
ここで、式(1)および(2)における各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示し、式(2)におけるmax[ ]は[ ]内の引数のうち最大の値を返す関数である。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、B:0.0020質量%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板。
- 前記冷延鋼板の表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷延鋼板。
- 下記工程(A)〜(E)を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の冷延鋼板の製造方法:
(A)スラブに熱間圧延を施して860℃以上960℃以下の温度域で圧延を完了し、600℃以上750℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(D)前記冷延鋼板に800℃以上900℃以下の温度域で焼鈍して550℃まで4℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する連続焼鈍工程;および
(E)前記鋼板を1%以下の伸び率で圧延するスキンパス工程。
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