JP5476080B2 - アルミニウム製内面溝付伝熱管 - Google Patents

アルミニウム製内面溝付伝熱管 Download PDF

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Description

本発明は、各種の冷凍・空調・給湯機器用のクロスフィンチューブ型熱交換器に好適に用いられる内面溝付伝熱管に係り、特に、管材質をアルミニウム製とした内面溝付伝熱管に関するものである。
従来より、家庭用エアコンや自動車用エアコン、パッケージエアコン等の空調用機器や冷蔵庫等には、蒸発器又は凝縮器として作動する熱交換器が用いられており、その中で、家庭用室内エアコンや業務用パッケージエアコンにおいては、クロスフィンチューブ型熱交換器が、最も一般的に用いられてきている。
そして、そのようなクロスフィンチューブ型熱交換器を構成するクロスフィンチューブは、空気側のアルミニウムプレートフィンと冷媒側の伝熱管とが一体的に組み付けられることによって、構成されている。また、そのようなクロスフィンチューブを構成するために用いられる伝熱管としては、その内面に、多数の溝、例えば管軸に対して所定のリード角をもって延びるように螺旋状の溝を多数形成して、それらの溝間に、所定高さの内面フィンが形成されるようにした、所謂内面溝付伝熱管が、多く用いられてきている。
ところで、そのようなクロスフィンチューブを構成するために用いられる内面溝付伝熱管は、一般に、銅や銅合金等の金属材料を転造加工等することによって、その内面に溝付加工を施して形成されることとなる。そして、そのように形成された内面溝付伝熱管を用い、それを、例えば、定尺に切断し、ヘアピン曲げ加工を施した後、かかる伝熱管をアルミニウムプレートフィンに拡管固着してクロスフィンチューブを形成し、更に、ヘアピン曲げ加工を施した側と反対側の伝熱管端部にUベンド管をロウ付け加工する工程を経て、目的とするクロスフィンチューブ型熱交換器が、製作されているのである。
これまで、このような構成とされているクロスフィンチューブ型熱交換器においては、その熱交換性能を向上させるために、様々な取組みが為されてきている。例えば、伝熱管においては、管の内面に施した溝の形態に、様々な改良を加えることにより、伝熱管の管内を流通せしめられる冷媒と伝熱管との間の伝熱を促進して、管内熱伝達率を向上せしめるようにした内面溝付伝熱管が、各種提案されている。
また、そのような伝熱管の管材質については、熱交換性能の向上を図るために、熱伝導率の高い銅や銅合金等の銅系材料が使用されることが多いのであるが、近年、空調用熱交換器の小型化や軽量化の要求に対応するために、その管材質に、アルミニウムやアルミニウム合金からなるアルミニウム系材質を採用することが、検討されている。
そして、そのようなアルミニウム製の内面溝付伝熱管としては、例えば、特開2008−267788号公報(特許文献1)においては、JIS−A6000系(Al−Mg−Si系)のアルミニウム合金からなる、管内面にフィンが形成された伝熱管であって、前記伝熱管の外径(D)と底肉厚(t)との比[D/t]が18.4以上、24.8以下であり、かつ前記フィン底幅Wが0.1mm以上であることを特徴とする伝熱管が、明らかにされている。
しかしながら、かかる特許文献1にて明らかにされているアルミニウム製内面溝付伝熱管にあっては、従来の銅製の内面溝付伝熱管と同様に、転造加工によって内面溝を形成するものとされているのであるが、そのようなアルミニウムの転造加工工程においては、材料が長手方向に伸びやすくなるため、内面溝加工部へのメタルフローが悪化するという問題があり、従来からの銅製の内面溝付伝熱管のように、フィン高さが高く、フィン頂角の小さい、熱交換性能が良好な内面溝・フィン形状を得ることが難しいものであった。
そこで、アルミニウム製の内面溝付伝熱管における内面溝は、転造加工ではなく、一般的に、押出しによる加工工程で形成されることとなるのであるが、このような押出加工にて内面溝を形成する場合にあっては、加工上の制限から、内面フィンのリード角を大きくすることが出来ないため、通常はリード角が0°、即ち平行溝となるか、若しくは10°以下とされることとなり、このために、これまでの内面溝形状では、管内を流れる冷媒への乱流促進効果が充分には得られないものであった。
かかる状況下、そのような押出加工によって内面溝が形成されることとなるアルミニウム製内面溝付伝熱管においては、管内を流れる冷媒に対して効果的に乱流を惹起せしめ、そしてそれを促進させて、熱交換性能を向上させることが出来る、新たなアルミニウム製内面溝付伝熱管の開発が、求められているのである。
特開2008−267788号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、アルミニウム若しくはその合金の押出加工によって、管内面に所定の内面溝が形成されてなるアルミニウム製の内面溝付伝熱管において、良好な熱交換性能、特に、良好な凝縮性能を発揮することが可能なアルミニウム製内面溝付伝熱管を提供することにある。
そして、本発明にあっては、かくの如き課題の解決のために、互いに平行な多数の内面溝が押出加工によって管軸に平行な方向にそれぞれ延びるように設けられた、アルミニウム若しくはその合金を材質とするアルミニウム製内面溝付伝熱管にして、前記多数の内面溝の隣り合う溝間に内面フィンが多数形成されてなると共に、該多数の内面フィンが、高さの高い内面フィンから高さの低い内面フィンに向かって全体的に高さが変化する、管周方向に隣り合って位置した少なくとも3つの内面フィンから構成されるフィン群を、少なくとも2群以上含んでおり、且つ該フィン群における最もフィン高さの高い内面フィンと最もフィン高さの低い内面フィンとの高さの差:Qとそれら2つの内面フィン間隔:Pとの比:Q/Pが0.1以上となるように構成したことを特徴とするアルミニウム製内面溝付伝熱管を、その要旨とするものである。
なお、かかる本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管の望ましい態様の一つによれば、前記フィン群を構成する少なくとも3つ以上の内面フィンは、前記最もフィン高さの高い内面フィンから前記最もフィン高さの低い内面フィンに向かって順次高さが低くなるように構成されることとなり、更に別の望ましい態様の一つによれば、前記少なくとも2群以上のフィン群は、管周方向において連続して配置されることとなる。
さらに、このような本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管の好ましい態様の一つにあっては、管最大内径をDi(mm)としたときに、前記最もフィン高さの高い内面フィンの高さ:Ha(mm)は、0.45×Di以下とされ、且つ前記最もフィン高さの低い内面フィンの高さ:Hbは、0.1mm以上とされている。
更にまた、本発明の別の好ましい態様の一つによれば、前記フィン群を構成する少なくとも3つ以上の内面フィンは、前記最もフィン高さの高い内面フィン側に傾斜するように形成されている。
従って、このような本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管においては、管内面に形成された内面フィンが、管周方向における複数部位において、高さの高い内面フィンから高さの低い内面フィンに向かって全体的に高さが変化せしめられているフィン群として構成されていることによって、管軸方向に流れる冷媒に対して、管周方向への冷媒の有効な流れを生じさせて、冷媒の乱流を効果的に促進することが出来ることとなる。そして、そのように、冷媒の乱流が促進されることによって、冷媒と伝熱管との間における熱伝達も効果的に促進され得て、内面溝付伝熱管の熱交換性能、特に、凝縮性能を有利に向上させることが可能となるのである。
本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管の一例を示す軸直角方向の断面説明図である。 図1に示す内面溝付伝熱管の一部を拡大して示す断面部分拡大説明図である。 図1に示す内面溝付伝熱管の管内を冷媒が流通する際に、本発明に従うフィン群部分において、管周方向の冷媒流が生じる様子を、概略的に示す説明図である。 本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管の別の一例を示す軸直角方向の断面説明図である。 本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管において、内面フィンのフィン高さが変化する形態の異なる例を棒グラフ状にして示す説明図であって、(a)は、同じ高さの内面フィンが配置されてなる形態を含む構成を、(b)は、途中でフィン高さが高くなっている形態を含む構成を、それぞれ示している。 本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管の更に別の一例を示す軸直角方向の断面説明図である。 実施例において実際に製作された、本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管の軸直角方向における断面写真である。 本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管において、内面フィンが傾斜している異なる形態を示す説明図であって、(a)は、傾斜角度の大きな形態を、(b)は、(a)よりも傾斜角度が小さな形態を、それぞれ示している。 実施例における内面溝付伝熱管の単管性能を測定するために用いられる試験装置において、凝縮試験を行った際の冷媒の流通状態を示す説明図である。
以下、本発明の構成をより具体的に明らかにするために、本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1には、本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管の一例が、その管軸方向に垂直な面にて切断した断面形態において、示されている。即ち、この図1に明らかにされている伝熱管10は、管内面に、多数の内面溝12が、管軸に対して互いに平行に延びるように形成されていると共に、それら内面溝12,12間に位置するように、それぞれ異なる高さとされた内面フィン14a,14b,14cが、多数形成されている。
より詳細には、伝熱管10は、要求される伝熱性能や該伝熱管内に流通せしめられる伝熱媒体の種類等に応じて、アルミニウム若しくはその合金の中から適宜に選択された、所定のアルミニウム材料を、公知の方式に従ってホロー押出加工することによって、管状に形成された内面溝付伝熱管であって、その管外径:Dは、一般に、4.0〜10.0mm程度とされている。
また、かかる伝熱管10の内面に所定深さをもって形成されている、管軸に対して平行に延びる内面溝12は、管軸方向に垂直な面にて切断した端面の一部を拡大した図2にも示されるように、ここでは、その溝底部に向かうに従って次第に狭幅となる、略逆台形形状の凹所にて構成されており、そこにおいて、この内面溝12の底部と管外周面との間の管壁厚さが、底肉厚:tとされている。従って、管軸に対して対称的に位置する内面溝12,12の溝底部間の距離となる管最大内径:Diは、D−2tにて与えられることとなる。なお、かかる底肉厚:tは、一般に、0.2〜0.6mm程度に設定されている。
そして、それら内面溝12における隣り合う内面溝12,12間には、最も高さが高くされた内面フィン14aがフィン高さ:Haにおいて、また最も高さが低くされた内面フィン14bがフィン高さ:Hbにおいて、かかる高さの高い内面フィン14aから高さの低い内面フィン14bに向かって全体的にフィン高さが漸次減少する3つの内面フィン14cが、フィン高さ:Hc1 ,Hc2 ,Hc3 において、それぞれ形成されているのである。なお、図1や図2に示した伝熱管10においては、それら内面フィン14a,14b,14cは、その頭部が半円形状乃至は円弧形状とされた、所定のフィン頂角:α,β・・・をもった略台形形状とされているが、これに代えて、頭部を平坦面とした台形形状や、或いは三角形形状とされていても、何等差支えない。なお、かかるフィン頂角:α,β・・・は、一般に、0〜40°程度とされている。
また、このように複数の高さをもって形成されている内面フィン14a,14b,14cは、ここでは、最も高さの高い内面フィン14aの一つと、最も背の低い内面フィン14bの1つと、更に内面フィン14cの3つが、管周方向に隣り合って位置するように配置されて、これら5つの内面フィン14a,14b,14cにより、一つのフィン群16が構成されているのである。そして、ここでは、このようなフィン群16が、管周方向に10群連続して形成されることによって、内面溝付伝熱管10が構成されている。
なお、そのようなフィン群16を構成する内面フィン14a,14b,14cは、ここでは、図2に示されるように、一つのフィン群16の左端に、フィン高さが最も高い内面フィン14aが配置され、その右側に、順次フィン高さが低くなる3つの内面フィン14cが配列され、さらにその右側、即ち、一つのフィン群16の右端に、フィン高さが最も低い内面フィン14bが配置されて、フィン高さが、フィン群16において、左側から右側に向かって(図2において)順になだらかに低くなるように、即ち、フィン高さがHa>Hc1 >Hc2 >Hc3 >Hbとなるように、構成されているのである。
このように、フィン群16を構成する内面フィン14a,14c,14bのフィン高さが、管周方向において順になだらかに変化せしめられていることによって、図3に概略的に示される如く、最もフィン高さの高い内面フィン14aの近傍よりも、最もフィン高さの低い内面フィン14bの近傍の方が、冷媒が流れ易いために、管長手方向(管軸方向)に流れる冷媒から管周方向への冷媒の流れが生じ、そしてこのような管周方向への冷媒の流れによって、伝熱管10内部において、冷媒の乱流が促進されるという効果が発揮されることとなる。
また、かかる伝熱管10にあっては、図2に示される如く、フィン群16の右端に位置する内面フィン14bの右隣には、別のフィン群16の最もフィン高さの高い内面フィン14aが配置されて、同様に内面フィン14aから内面フィン14bに向かって順次フィン高さが変化するように内面フィン14a,14c,14bが配置されたフィン群16とされている。そして、このように、乱流促進効果のあるフィン群16が、伝熱管10の管周方向に連続して、管周全体に設けられている(図1参照)ことにより、ここでは、より効果的に冷媒への乱流促進効果を発揮することが出来ると共に、かかる伝熱管10をクロスフィンチューブ式熱交換器等に組み付けた際に、伝熱管10を、どのように設置しても、充分な乱流促進効果を得ることが出来るといった効果も発揮されることとなる。
そして、それら形成されている内面フィン14a,14b,14cは、本発明に従って、一つのフィン群16において、最もフィン高さの高い内面フィン14aと最もフィン高さの低い内面フィン14bとの間隔をP、それらのフィン高さの差をQ=|Ha−Hb|としたときに、かかる間隔(P)とフィン高さの差(Q)の比:Q/Pが0.1以上となるように、構成されている。このような値とすることによって、管周方向への冷媒流をより効果的に生じさせることが可能となるのである。これに対して、かかるQ/Pが範囲外となる場合にあっては、勾配が小さ過ぎることにより、管内を流通する冷媒に対して乱流を促進させるような、管周方向への有効な冷媒流を充分に発生させることが困難となるのである。なお、ここで、内面フィン14aと内面フィン14bの間隔:Pとは、図2に示されるように、内面フィン14aの中心線と内面フィン14bの中心線との間隔であって、内面溝12の溝底をつなぐ最大内径円に沿った円弧の長さを示すものとする。
また、それら内面フィン14a,14b,14cのフィン高さとしては、有利には、管最大内径をDi(mm)としたときに、最もフィン高さの高い内面フィン14aのフィン高さ:Haと、かかる管最大内径:Diとの比:Ha/Diが、0.45以下とされ、且つ最もフィン高さの低い内面フィン14bのフィン高さ:Hbが0.1mm以上となるように、構成されている。これは、最も高さの低い内面フィン14bのフィン高さ:Hbが0.1mm未満とされた場合にあっては、伝熱管10の内面に内面フィンを設けることによって得られる伝熱面積を増大させる効果が、充分に得られなくなるためである。一方、最も高さの高い内面フィン14aのフィン高さ:Haが高くされ過ぎると、管内を流れる冷媒の圧力損失が増大してしまい、伝熱性能の低下を招く恐れがあるためである。
ところで、このような構成とされた伝熱管10は、従来から公知のホロー押出加工によって好適に形成されることとなる。即ち、アルミニウムやその合金の中から適宜に選択された、公知の材質の所定のアルミニウム材料(ビレット)を、所望の内面溝形状を与えるダイスから押し出すことによって、ホロー材として、管内面に所定の内面溝12やそれぞれの高さにて内面フィン14a,14b,14cが形成されたアルミニウム製内面溝付伝熱管10が、製作されるのである。なお、このホロー押出加工によって内面溝付伝熱管を形成する際に、通常は、内面溝12と管軸とのリード角は0°、即ち管軸に平行な内面溝12とされることとなるが、かかる押出加工の際に捩り力を加える等することで、10°程度までのリード角を与え、管軸に対して螺旋状に延びる内面溝12とすることも可能である。このように、内面溝12を螺旋状とすることで、内面溝12,12間に形成される内面フィン14a,14b,14cも螺旋状とされることとなり、管内を流通する冷媒に対して、より効果的に乱流を促進することが可能となる。
このような本発明に従う内面溝付伝熱管10によれば、管内面に形成された内面フィン14a,14b,14cから構成されるフィン群16において、それらのフィン高さが、管周方向の一方向に向かって、最もフィン高さの高い内面フィン14aから、最も高さの低い内面フィン14bに向かって、全体的に変化するようにされているところから、管内を管軸方向に流通する冷媒に対して、管周方向の有効な冷媒流を生じさせ、そしてそのような冷媒流によって、管内に効果的に乱流を促進することが出来ることとなり、更にそのような乱流によって、冷媒と伝熱管との間における熱伝達が効果的に促進されることとなるところから、アルミニウム若しくはその合金を押出加工することによって形成された内面溝付伝熱管においても、熱交換性能を有利に向上させることが可能となるのである。
そして、かくの如き特徴を有する本発明に従うアルミニウム製内面溝付伝熱管10は、冷凍機用、空調機器用、給湯機器用等の、従来から公知の各種用途のクロスフィンチューブ型熱交換器における伝熱管として、有利に用いられ得ることとなるのである。
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
例えば、前記した実施の形態においては、フィン群16を5つの内面フィン(14a,14b,14c)から構成していたが、このように一つのフィン群16を構成する内面フィンの数は、例示の5本に限られるものでは決してなく、これよりも少ない本数や、或いはより多くの本数とすることも可能である。但し、少なくした場合は、少なくとも3本の内面フィンによってフィン群16が構成されることとなる。これは、フィン群16を構成する内面フィン14の本数を3本未満とした場合にあっては、フィン高さの違いによる乱流促進効果が充分発揮され得ないためである。また、このように形成されるフィン群16は、管内周に2群以上設けられることとなる。これは、フィン群が1群しか形成されていないと、充分な乱流促進効果が得られないからである。
また、例示の実施形態では、フィン群16が管周方向において連続して、管周全体に亘って配設されていたが、このようなフィン群16は、管周方向に少なくとも2群以上設けられておれば、その配設形態は適宜に選択され、例えば、図4に示されるように、本発明に従うフィン群16,16の間に、フィン高さが一定とされた内面フィン22の複数からなるフィン群24が設けられた構造の伝熱管20とすることも、可能である。但し、管内を流通する冷媒に対して乱流をより効果的に促進するためには、フィン群16は隣り合って連続して設けられていることが、望ましいのである。なお、この「隣り合って連続して」とは、フィン群16とフィン群16の間に、本発明に従う構造の条件を満たさない単独の内面フィンや、そのような条件を満たさない複数のフィンからなるフィン群を介在させることがなく、最初に例示した伝熱管10の如く、1つのフィン群16の隣に、別のフィン群16が連続して、設けられていることを意味している。
加えて、フィン群16におけるフィン高さの変化する方向は、例示の伝熱管10においては、図2に示される如く、全てのフィン群16が左側から右側へと向かって、換言すれば反時計回りに、フィン高さが減少するように構成されているが、右側から左側へと向かって(時計回りに)フィン高さが減少するように配置してもよく、更に、このように一方向に変化する以外にも、フィン高さが左側から右側へ低くなるフィン群とフィン高さが右側から左側へ低くなるフィン群とを混在して設けることも可能である。このように、フィン高さの変化方向の違うフィン群を配置することによって、管周方向へと生じる冷媒流が複数発生し、そのような管周方向への冷媒流同士が衝突することによる乱流によって引き起こされる伝熱促進効果も得られることとなる。
さらに、例示した伝熱管10においては、最もフィン高さの高い内面フィン14aから最もフィン高さの低い内面フィン14bに向かって、順次フィン高さが低くなるような3つの内面フィン14cを配置して、フィン群16が構成されているが、そのような配置形態の他にも、例えば、図5(a)に示される如く、内面フィン14cのフィン高さが等しくされたものを含む構造や、図5(b)に示されるような、途中のフィン高さが増加している内面フィン14cを含む構造のものであっても、最も背の高い内面フィン14aから最も背の低い内面フィン14bに向かうに従って全体的にフィン高さが小さくなるような構造であれば、何れも採用可能である。なお、それら図5の(a)や(b)においては、フィン形状を簡略化して、フィン高さを示す1本の棒で示すと共に、最大内径(Di)を表す円弧が直線として示されている。即ち、縦軸をフィン高さ、横軸をフィンピッチとした棒グラフとされているのである。
そして、かかる図5(a)及び図5(b)においては、最も背の高い内面フィン14aと最も背の低い内面フィン14bとの間に、5つの内面フィン14c1 〜14c5 が配置されており、図5(a)には、その5つの内面フィン14c1 〜14c5 のうち、内面フィン14c2 と内面フィン14c3 のフィン高さが等しくされたもの(Hc2 =Hc3 )が、示されている。また、図5(b)においては、内面フィン14c2 から内面フィン14c3 へ、更に内面フィン14c3 から内面フィン14c4 へと、フィン高さが増加しているが、全体的には、内面フィン14aから内面フィン14bに向かって、フィン高さが減少するように構成されている。なお、このように、途中のフィン高さが増加する場合にあっては、フィン高さが増加する箇所の直前のフィン高さの勾配、即ち、内面フィン14c1 から内面フィン14c2 への勾配:(Hc1 −Hc2 )/p1 に対し、内面フィン14c2 から内面フィン14c3 への勾配:(Hc3 −Hc2 )/p2 及び内面フィン14c3 から内面フィン14c4 への勾配:(Hc4 −Hc3 )/p3 の何れもが、1/5以下となるように構成され、また内面フィン14c1 から内面フィン14c2 への高さの減少分:Hc2 −Hc1 に対し、内面フィン14c2 から内面フィン14c4 への高さの増加の合計:Hc4 −Hc2 が、一般に、1/2以下となるように構成されていることが、望ましい。
更にまた、本発明に従う内面溝付伝熱管の望ましい態様の一つに従って、図6に示される如く、各内面フィン32,34,36の形状を、高さの高い内面フィン32側に向かって傾斜するように構成して、それらが、フィン群38を構成するようにした伝熱管30とすることも可能である。このようなフィン形状とすることによって、管周方向への冷媒流の発生をより効果的に促進せしめ、冷媒への乱流促進効果をより高めることが可能となるのである。なお、このようなフィン形状とされた伝熱管30を実際に製作したものを、管軸に垂直な面で切断した断面の写真を、図7に示す。また、この実際に作製されたアルミニウム製内面溝付伝熱管は、後述する実施例においても、性能評価試験に用いられている。
なお、このように、高さの高い内面フィン32側に傾斜した内面フィン34の傾斜は、ここでは、図8(a)や図8(b)に示される如く、内面フィンの両側面から伸びる直線の交点:Kと伝熱管の中心:Oを結ぶ線が、溝底を結ぶ円弧と交差する点をLとし、さらに内面フィンの両側面から延びる直線が溝底を結ぶ円弧と交差する点のうち、図において左側の側面から延びた方をM,右側の側面から延びた方をNとしたとき、直線OKLに対する直線KM,KNの角度は、α1 及びα2 で表されることとなる。そして、それらα1 、α2 の関係において、図8(a)や図8(b)に示される如き左側に傾斜したものは(α2 −α1 )>0となり、図1に示されるような対称形状の内面フィン14の場合は、(α2 −α1 )=0となる。また、各フィン群38の両端に位置する、高さの高い内面フィン32や高さの低い内面フィン36においても、上記した中間の内面フィン34と同様な傾斜形態となっているのである。
その他、一々列挙はしないが、本発明が、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施されるものであり、またそのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明の特徴を更に明確にすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことが、理解されるべきである。
先ず、本発明に従う構造の内面溝付伝熱管を製作するために、JIS−A3003のアルミニウム合金材料を用意し、そしてそれを、従来から公知のホロー押出加工法に従って熱間押出加工することにより、図6(図7)や図4に示される如き、本発明に従う構造とされたアルミニウム製内面溝付伝熱管を、それぞれ作製した。即ち、図6や図7の写真に示されるような、高さの高い内面フィン(32)側に傾斜するように各内面フィン(32,34,36)が形成されたものを、実施例1として作製する一方、図4に示されるような、順次フィン高さの減少する内面フィン(14a,14c,14b)からなるフィン群(16)とフィン高さが一定の内面フィン(22)からなるフィン群(24)とが管周方向に交互に形成されたものを、実施例2として、作製した。
一方、フィン形状は図6に示される形状とするものの、高さの高い内面フィンと高さの低い内面フィンとの高さの差:Qとそれらのフィン間隔:Pとの比:Q/Pが、本発明の範囲外とされたものを、比較例1として、更に内面フィンのフィン高さが一定の高さとされた、従来の内面溝付伝熱管構造のものを、比較例2として、同様なホロー押出加工にて作製した。
なお、それら実施例1,2及び比較例1,2の伝熱管の管外径やフィン高さ等の寸法諸元は、下記表1に示される通りとした。また、かかる表1においては、最もフィン高さの高い内面フィン(14a,32)に相当するフィンをフィンA、最もフィン高さの低い内面フィン(14b,36)をフィンB、更にそれらフィンAからフィンBに向かって順次高さが低くされる内面フィン(14c,34)に相当するフィンをフィンC、そして本発明に従う構成ではない内面フィン(22)をフィンDとして、それぞれの諸元を示している。なお、ここで、実施例1及び比較例1のフィンは、非対称形状のものとした。即ち、図8(a)にて示されるα1 ,α2 が、例えば実施例1のフィンAについてはα1 =0°、α2 =20°となるように構成した。また、実施例2及び比較例2のフィンは、対称形状のものとした。
Figure 0005476080
そして、このように準備された各伝熱管について、それぞれ伝熱管の単管における熱交換性能評価を行った。なお、かかる単管性能評価試験は、従来より公知の伝熱性能試験装置の試験セクションに対して各供試伝熱管を単管で組み付け、図9に示されるような冷媒の流通下において、蒸気飽和温度:50℃、入口条件:過熱度=40℃、出口条件:過冷却度=5℃の試験条件にて凝縮性能試験を行った。なお、冷媒には、HFC系冷媒であるR−410Aを使用し、実際の空調機器の運転条件とほぼ一致する、200kg/(m2 ・s) の冷媒質量速度で試験を実施した。
その結果、比較例1の伝熱管の管内熱伝達率を100としたとき、実施例1は145、実施例2は130となり、本発明に従う構造とされた伝熱管において、良好な凝縮熱伝達率が得られることを確認した。一方、比較例2は95であった。
10 伝熱管
12 内面溝
14a,14b,14c 内面フィン
16 フィン群

Claims (5)

  1. 互いに平行な多数の内面溝が押出加工によって管軸に平行な方向にそれぞれ延びるように設けられた、アルミニウム若しくはその合金を材質とするアルミニウム製内面溝付伝熱管にして、前記多数の内面溝の隣り合う溝間に内面フィンが多数形成されてなると共に、該多数の内面フィンが、高さの高い内面フィンから高さの低い内面フィンに向かって全体的に高さが変化する、管周方向に隣り合って位置した少なくとも3つの内面フィンから構成されるフィン群を、少なくとも2群以上含んでおり、且つ該フィン群における最もフィン高さの高い内面フィンと最もフィン高さの低い内面フィンとの高さの差:Qとそれら2つの内面フィン間隔:Pとの比:Q/Pが0.1以上となるように構成したことを特徴とするアルミニウム製内面溝付伝熱管。
  2. 前記フィン群を構成する少なくとも3つ以上の内面フィンが、前記最もフィン高さの高い内面フィンから前記最もフィン高さの低い内面フィンに向かって順次高さが低くなるように構成されている請求項1に記載のアルミニウム製内面溝付伝熱管。
  3. 前記少なくとも2群以上のフィン群が、管周方向において連続して配置されている請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム製内面溝付伝熱管。
  4. 管最大内径をDi(mm)としたときに、前記最もフィン高さの高い内面フィンの高さ:Ha(mm)は、0.45×Di以下とされ、且つ前記最もフィン高さの低い内面フィンの高さ:Hbは、0.1mm以上とされている請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載のアルミニウム製内面溝付伝熱管。
  5. 前記フィン群を構成する少なくとも3つ以上の内面フィンが、前記最もフィン高さの高い内面フィン側に傾斜するように形成されている請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載のアルミニウム製内面溝付伝熱管。
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