昇降式移動足場は、垂直方向の伸縮が可能であるため、その高さを低くして保管や運搬ができるとともに、所定場所まで水平方向に移動させ、その場所で固定した後に、所定高さまで昇降式移動足場を伸張し、その高さを固定することによって、所定場所の所定高さにおいて、内装及び外装工事等の作業をすることができる。
このような昇降式移動足場の水平方向の移動と固定に関しては、昇降式移動足場の接地面にブレーキロック付き車輪を備えるとともにアウトリガーでさらに固定することによってなされることが多い。そして、垂直方向の伸縮と固定に関しては、作業台を直接上下し固定するか、又は、折り畳み可能なアームの上に作業台を設置してそのアームを伸縮し固定することによってなされる。
このような昇降式移動足場を所定場所において伸張した後に、作業員が高所で作業をすることになる。したがって、作業員の高所からの落下を防止するために、作業台には手摺が必要となる。作業台の手摺は、所定場所まで移動する前に予め昇降式移動足場に取り付けておいても良いが、所定場所まで移動した後に取り付けても良い。この場合、手摺の取付は昇降式移動足場を垂直方向に収縮した状態、すなわち、作業台が低所にある状態で安全に手摺の取付作業をした後、昇降式移動足場を垂直方向に伸張することによって、作業員が高所で安全に作業をすることができる。
また、このような昇降式移動足場は垂直方向の伸縮が可能であるため、昇降式移動足場を保管する際には、その高さを低くすることによって、高さ方向の収納スペースを節約することができる。昇降式移動足場を昇降可能にすることによって高さを低くするだけでなく、さらに昇降式移動足場の作業床を折り畳み可能にすることによって幅方向の収納スペースを節約することも提案されている。
特許文献1には、接地面に車輪を備える矩形の基体フレーム(枠体)の上に、複数段の水平フレーム(枠体)をX字形のスライダークランクを介して順に積み重ね、そして、昇降用タラップ(梯子)を備える昇降式移動足場が開示されている。そのX字形のスライダークランクは折り畳みと伸張ができるものであり、そのX字形のスライダークランクを手動で伸縮することによって、作業床の昇降を可能とし、そしてその高さを段階的に固定することが可能である。ここで、昇降用タラップはスライダークランクを伸張した後の各フレームの間の支柱の役割も果たしている。
図1及び図2は、特許文献1で開示された技術に基づき実用化されている昇降式移動足場の一例である。(a)が正面図、(b)が右側面図である。図1は昇降式移動足場200を所定場所に固定した状態で、3つのX字形のスライダークランク50のすべてを垂直方向に伸張したときの状態を示し、図2は同じく所定場所に固定した状態で、3つのX字形のスライダークランク50のすべてを垂直方向に折り畳んだときの状態を示す。
この昇降式移動足場200は、接地面に車輪を備えるとともに所定場所に移動かつ固定可能な矩形の基体フレーム5と、複数段の昇降自在な水平フレーム40からなる。最上段の水平フレーム40は作業床用フレームを兼ねており、最上段の水平フレーム40には、網目状板や縞付き板などからなる作業床が張られるとともに手摺り等が設置されて、作業台60が形成されている。
矩形の基体フレーム(枠体)5の四隅にはパイプ状の支柱7が立設され、その下端部にはブレーキロック付き車輪6が取り付けられている。また、基体フレームの各支柱7の側面には、先端にジャッキベース75を備えたアウトリガー76が取り付けられ、基体フレームの各支柱7を軸として水平方向に回動しうるように設置されている。この昇降式移動足場200の移動は、車輪6のブレーキロックを外し、ジャッキベース75を持ち上げた状態のまま、昇降式移動足場200を水平方向に押すことによってなされる。この移動は、通常、水平フレーム40を垂直方向に折り畳んだ状態でなされる。そして、所定の場所まで移動した後、車輪6のブレーキロックを掛けるとともに、ジャッキベース75を接地させることで所定の場所で固定する。
矩形の基体フレーム5の上には、間隔をあけて、3段の昇降自在な矩形状の水平フレーム40が設けられ、そして、各フレーム間には、2本の斜材を交叉し軸着してなるX字形のスライダークランク50が縦方向に2列立設されている。ここでは、基体フレーム5は最下段の水平フレームを兼ねているが、基体フレーム5とは別に最下段の水平フレーム40を設けてもよい。基体フレーム5とは別に最下段の水平フレーム40を設けた場合には、基体フレーム5と水平フレームとを分離できる。したがって、昇降式移動足場200の移動・運搬の際には、水平フレームを含む上部部材を基体フレームから取り外すことができるので、作業が楽になるとともに、保管の際にはそのスペースを有効に使うことができる。
最上段の水平フレーム40の上には、作業台60が設置される。最上段の水平フレーム40の四隅には、手摺り柱62が設置され、そして、隣接する手摺り柱62の間には手摺りバー63が取り付けられ、さらに四辺の上には巾木64が取り付けられて、作業台60の組み立てが完成する。なお、作業台60の組み立ては、移動前に行っても良いし、移動後に行っても良い。ここでは、最上段の水平フレーム40は作業床用フレームを兼ねているが、最上段の水平フレーム40とは別に作業床用のフレームを設けてもよい。最上段の水平フレーム40とは別に作業床用のフレームを設けた場合には、昇降式移動足場200の保管・運搬時には、作業床を含めて作業台60の全体も取り外すことができる。
なお、上述したように、基体フレーム5とは別に最下段の水平フレーム40を設けた場合には、水平フレームを含む上部部材(作業台60も含まれる)を基体フレームから取り外すことができるので、殊更に最上段の水平フレーム40とは別に作業床用のフレームを設けなくても、昇降式移動足場200の移動・運搬の際の作業が楽になるとともに、保管の際にはそのスペースを有効に使うことができる。
この昇降式移動足場200の昇降は、各フレーム間に設けられたX字形のスライダークランク50の2本の斜材を水平方向にスライドさせることによってなされる。すなわち、X字形のスライダークランク50が上方向に伸張したときは、その上側の水平フレーム40が上昇し、逆に、X字形のスライダークランク50が下方向に収縮したときは、その上側の水平フレーム40が下降する。
そして、昇降式移動足場200を上昇させるときは、X字形のスライダークランク50を上方向に伸張させた後に、各フレーム間の両側面にそれぞれ立設可能に取り付けられた、長材70と横材71からなる支柱69で上部の水平フレーム40を支持することによって上部の水平フレーム40の高さが固定される。この操作を、最上段の水平フレーム40が所定の高さに上昇するまで、各段のスライダークランク50において繰り返す。逆に、昇降式移動足場200を下降させるときは、先に長材70と横材71からなる支柱69を内側に押し倒すことによって上部の水平フレーム40の支持を外し、その後、その段のX字形のスライダークランク50を下方向に収縮させて、上部の水平フレーム40の高さを下げ、留め具52によってその高さが固定される。この操作を、最上段の水平フレーム40が所定の高さに下降するまで、各段のスライダークランク50において繰り返す。
最下段のX字形のスライダークランク50を例にとって、X字形のスライダークランク50の構造を詳述すると、その2本の斜材の交叉部がピン51によって軸着されるとともに、2本の斜材の左端がそれぞれ上下のフレームの長辺に軸着されている。したがって、2本の斜材の右端がそれぞれ上下のフレームの長辺に沿って水平方向に移動かつ固定可能な構造であり、スライダークランク50を上方向に伸張した後は、上下のフレームの間の両側面にそれぞれ立設可能に取り付けられた支柱69によって、上部の水平フレーム40を支持することによって上部の水平フレーム40を所定高さで固定することができる。また、スライダークランク50を下方向に収縮した後は、留め具52を上方に回動させて内側に固定することによって、上側の水平フレーム40をその高さで固定することができる。
なお、この例では、この昇降式移動足場200の最上段の水平フレーム40は作業床用フレームを兼ねているため、最上段のX字形のスライダークランク50を上方向に伸張した後に最上段の水平フレーム40を支持するための支柱69の長材70は、最上段の水平フレーム40の下部に設けられた横部材41を介して最上段の水平フレーム40を支持することによって最上段の水平フレーム40を所定高さで固定する。
これに対して、最上段の水平フレーム40とは別に作業床用のフレームを設けた場合には、最上段のX字形のスライダークランク50を上方向に伸張した後に最上段の水平フレーム40を支持するための支柱69の長材70は、最上段の水平フレーム40を直接支持することによって最上段の水平フレーム40を所定高さで固定することができるので、最上段の水平フレーム40の下部に横部材41を設ける必要はない。
このようにして、作業員は、この昇降式移動足場200を所定の場所まで移動させ、その場所で昇降式移動足場200を固定した後、各段のX字形のスライダークランク50の伸張作業をすることによって、最上段の水平フレーム40を所定高さまで上昇させ固定した後、支柱69を登って作業台60に上がり、内装及び外装工事等の作業をすることになる。
上記においては、3段の水平フレーム40を有する昇降式移動足場200について説明したが、図3に示すように、4段の昇降可能な水平フレーム40を有する昇降式移動足場201も実用化されている。なお、図3に示す昇降式移動足場201は、4段の水平フレーム40を有する点、基体フレーム5が水平フレーム40よりも大きい点及び最下段の支柱69が傾斜して設けられている点を除いて、図1および図2に示した昇降式移動足場200と同様の構成および機能を有する。
図1及び図2に図示した昇降式移動足場200においては、3つのX字形のスライダークランク50のすべてを垂直方向に伸張したときに地上から作業床までの最大高さが約2.5mとなり、そして、3つのX字形のスライダークランク50のすべてを垂直方向に折り畳んだときに地上から作業床までの最小高さが約0.9mとなる。また、図3に示した昇降式移動足場201においては、4つのX字形のスライダークランク50のすべてを垂直方向に伸張したときに地上から作業床までの最大高さが約3.6mとなり、そして、4つのX字形のスライダークランク50のすべてを垂直方向に折り畳んだときに地上から作業床までの最小高さが約1.4mとなる。したがって、X字形のスライダークランク50の伸張と折り畳みを適宜組み合わせることによって、昇降式移動足場の作業床の高さをそれぞれの作業に適した所定の高さに固定することができる。
以下、図面を用いて、本発明に係る昇降式移動足場について説明する。
(1)第1の例
(1−1)昇降式移動足場の構成
図4は、本発明の第1の例に係る昇降式移動足場を示す図である。図4(a)は正面図であり、図4(b)は右側面図である。
図4に示す昇降式移動足場101が図3で説明した昇降式移動足場201と異なるのは以下の点である。
図4に示すように、本例に係る昇降式移動足場101においては、基体フレーム5の四隅に立設された支柱7の側面に、先端にジャッキベース13を備えたアウトリガー14が取り付けられている。アウトリガー14は、支柱7を軸として水平方向に回動しうるように設置されている。
アウトリガー14の上側フレーム14aと下側フレーム14bとの間には、支柱14cが固定されている。また、支柱14cと基体フレーム5との間には、火打材17が設けられている。
図5は、図4の昇降式移動足場101のうち、基体フレーム5、支柱14cおよび火打材17の接続状態を示す拡大図であり、(a)は図4(a)のA−A線断面図(側面図)、(b)は図5(a)のB−B線断面図(平面図)である。
図5に示すように、火打材17の一端には掴み金具17aが固定されており、火打材17は、掴み金具17aを介して支柱14cに上下動可能に取り付けられている。また、火打材17の他端には、下方が開口した略逆U字形状の引っ掛け金具17bが固定されている。本例においては、この引っ掛け金具17bを基体フレーム5に引っ掛けることにより火打材17の落下を止めることができ、火打材17の上下方向における位置を固定することができる。また、基体フレーム5の側面の所定の位置には当て材18が固定されている。この当て材18により、引っ掛け金具17b(火打材17)の基体フレーム5上での移動が阻止される。火打材17の効果については後述する。
図4に示すように、アウトリガー14には、リング状の固定金具15が取り付けられている。また、上から2段目の水平フレーム40と各アウトリガー14の固定金具15とを連結するように、4本の引張材30が取り付けられている。具体的には、昇降式移動足場101の正面側において、2つのアウトリガー14と水平フレーム40とを連結するように2本の引張材30が取り付けられ、昇降式移動足場101の背面側において2つのアウトリガー14と水平フレーム40とを連結するように2本の引張材30が取り付けられている。
図6は、図4(b)の引張材30の拡大図(右側面図)であり、図7は、引張材30の正面図である。
図6および図7に示すように、引張材30は、上部棒材31、中間棒材32および下部棒材33を有する。上部棒材31、中間棒材32および下部棒材33は、例えば、鋼からなる。上部棒材31の上端部にはフック31aが形成され、上部棒材31の下端部に連結板34が固定されている。中間棒材32の上端部には、ロック金具32aが固定されている。下部棒材33の下端部には、フック33aが形成されている。
図6に示すように、連結板34には、ロック金具32aが挿通可能な複数(本例では4つ)の調整孔34aが形成されている。本例においては、ロック金具32aをいずれかの調整孔34aに挿通して中間棒材32の上端部を連結板34に取り付けることにより、上部棒材31と中間棒材32とを連結することができる。また、図6および図7に示すように、中間棒材32の下端部と下部棒材33の上端部とは、ターンバックル35によって連結されている。
図6に示すように、上部棒材31、中間棒材32および下部棒材33を連結した状態で、上部棒材31のフック31aを水平フレーム40に引っ掛けるとともに、下部棒材33のフック33aを固定金具15に引っ掛けることにより、引張材30を昇降式移動足場101に取り付けることができる。
(1−2)効果
上記のように、本例に係る昇降式移動足場101においては、アウトリガー14と水平フレーム40とが複数本(本例においては、4本。)の引張材30(図4参照)によって連結されている。これらの引張材30によって、昇降式移動足場101に対して鉛直方向の圧縮力が加えられるので、昇降式移動足場101の各構成部材の遊びが減少し、昇降式移動足場101を安定させることができる。その結果、作業者が作業台60において作業をしている際に昇降式移動足場101に揺れが生じることを抑制することができる。
また、図4(b)に示すように、昇降式移動足場101の正面側の引張材30は下端側が前方に傾斜するように取り付けられ、背面側の引張材30は下端側が後方に傾斜するように取り付けられている。この場合、昇降式移動足場101は、正面側の2本の引張材30および背面側の2本の引張材30によって互いに逆方向に引っ張られるので、昇降式移動足場101の前後方向における安定性を十分に向上させることができる。それにより、昇降式移動足場101の前後方向の揺れを低減することができ、作業者の安全性および作業効率を向上させることができる。また、図4(a)に示すように、昇降式移動足場101の右側面側の引張材30は下端側が右側方に傾斜するように取り付けられ、左側面側の引張材30は下端側が左側方に傾斜するように取り付けられている。この場合、昇降式移動足場101は、右側面側の2本の引張材30および左側面側の2本の引張材30によって互いに逆方向に引っ張られるので、昇降式移動足場101の左右方向における安定性を十分に向上させることができる。それにより、昇降式移動足場101の左右方向の揺れを低減することができ、作業者の安全性および作業効率をさらに向上させることができる。
なお、鉛直方向に対する引張材30の前後方向への傾斜角度(図4(b)における引張材30の鉛直方向に対する傾斜角度)は、60°程度であることが好ましいが、約75°〜80°の傾斜角度でも昇降式足場101の揺れを十分に低減できる。また、鉛直方向に対する引張材30の左右方向への傾斜角度(図4(a)における引張材30の鉛直方向に対する傾斜角度)は、90°〜85°の範囲内とすることが好ましい。
また、本例においては、中間棒材32(図6参照)および下部棒材33(図6参照)がターンバックル35(図6参照)によって連結されているので、引張材30を昇降式移動足場101に取り付けた状態でも、ターンバックル35により引張材30の張力を容易に調整することができる。この場合、4つの引張材30の張力を同等の大きさに容易に調整することができるので、昇降式移動足場101の安定性を容易に向上させることができる。
また、引張材30の連結板34(図6参照)には、複数の調整孔34a(図6参照)が形成されており、ロック金具32aを挿入する調整孔34aを変えることにより、引張材30の全長を調整することができる。したがって、引張材30の全長を調整することにより、引張材30を任意の水平フレーム40(図4参照)に取り付けることができるし、作業台60の高さ調整のため水平フレーム40を伸縮させた場合にも、取り付けることができる。
また、本例においては、アウトリガー14と基体フレーム5との間には、火打材17(図4,5参照)が設けられている。これにより、アウトリガー14を所定の位置に容易かつ正確に固定することができる。また、火打材17により、アウトリガー14の水平方向の力に対する耐力を向上させることができる。それにより、昇降式移動足場101の安定性を十分に向上させることができる。また、基体フレーム5には火打材17の水平方向への移動を規制するための当て材18(図5参照)が形成されているので、火打材17およびアウトリガー14のガタつきを確実に抑制することができる。
(1−3)他の例
上記においては、4段の水平フレーム40を備えた昇降式移動足場101について説明したが、本発明は、3段の水平フレーム40を備えた昇降式移動足場に適用してもよく、2段または5段以上の水平フレーム40を備えた昇降式移動足場に適用してもよい。
また、上記においては、上部棒材31、中間棒材32および下部棒材33からなる引張材30について説明したが、引張材30の構成は上記の例に限定されない。たとえば、引張材30が2本以下の棒材又は4本以上の棒材によって構成されてもよい。また、棒材の代わりに、バネ材又はワイヤー等を用いてもよい。
また、引張材30の取り付け位置は上記の例に限定されず、昇降式移動足場101に鉛直方向の圧縮力を加えることができるのであれば、他の位置に引張材30を取り付けてもよい。具体的には、上記においては、引張材30の上端を正面側および背面側の水平フレーム40に取り付ける場合について説明したが、例えば、側面側の水平フレーム40又は支柱69に引張材30の上端を取り付けてもよい。ここで、引張材30の上端部は、水平フレーム40の四隅またはその近傍に取り付けることが好ましい。また、上記においては、上から2段目の水平フレーム40に引張材30の上端を取り付ける場合について説明したが、例えば、最上段または3段目以降の水平フレーム40に引張材30の上端を取り付けてもよい。また、上記においては、引張材30の下端をアウトリガー14に取り付ける場合について説明したが、例えば、基体フレーム5又は支柱7に引張材30の下端を取り付けてもよい。
(2)第2の例
(2−1)昇降式移動足場の構成
図8は、本発明の第2の例に係る昇降式移動足場を示す図である。なお、図8(a)は正面図であり、図8(b)は右側面図である。
図8に示す昇降式移動足場102は、基台100上に昇降式足場201を搭載した構成を有する。なお、図8に示す昇降式足場201は、図3で説明した昇降式移動足場201から車輪6およびアウトリガー76を取り外したものである。
図9および図10は、本発明に係る基台の一例を示す図である。なお、図9(a)は正面図であり、図9(b)は右側面図であり、図10は平面図である。
図9および図10に示すように、本例に係る基台100は、略矩形のベースフレーム(枠体)11を備える。ベースフレーム11の四隅には、支柱12が立設され、その下端部にはブレーキロック付き車輪12a(図9参照)が取り付けられている。各支柱12の側面には、先端にジャッキベース13を備えたアウトリガー14が取り付けられ、各支柱12を軸として水平方向に回動しうるように設置されている。
図9(b)に示すように、アウトリガー14には、リング状の固定金具15および滑り止め16が取り付けられている。またアウトリガー14の上側フレーム14aと下側フレーム14bとの間には、支柱14cが固定されている。固定金具15および滑り止め16については後述する。
図10に示すように、ベースフレーム11の両端部には、横地11aがそれぞれ設けられている。横地11aは、支柱12(図9参照)の上端に固定されている。横地11aと横地11aとの間には、2本の横地11bが互いに並行に固定されている。また、横地11bの下方において横地11bに平行になるように、支柱12(図9参照)間に横地11cが固定されている。図9および図10に示すように、横地11cと支柱14cとの間には、図5と同様の火打材17が設けられている。
図11は、図9に示す基台100のうち、横地11c、支柱14cおよび火打材17の接続状態を示す拡大図であり、(a)は図9(a)のA−A線断面図(側面図)、(b)は図11(a)のB−B線断面図(平面図)である。
図11に示すように、火打材17は、掴み金具17aを介して支柱14cに上下動可能に取り付けられている。また、引っ掛け金具17bを横地11cに引っ掛けることにより火打材17の上下方向における位置が固定されている。また、横地11cの側面の所定の位置には当て材18が固定されている。この当て材18により、引っ掛け金具17b(火打材17)の横地11cの軸方向への移動が阻止される。
図9および図10に示すように、横地11bの両端部(ベースフレーム11の四隅)には、ホゾ19およびクランプ20がそれぞれ設けられている。4つのホゾ19のうち、一の対角線上に位置する2つのホゾ19の長さは、他の対角線上に位置する2つのホゾ19よりも長く形成されている。
ベースフレーム11の両端部(短辺側)には、踊り場21がそれぞれ設けられている。踊り場21は、略矩形の枠体21aおよびその枠体21a上に固定される網材21bからなる。図10に示すように、枠体21aは、連結金具22を介して横地11aに取り付けられている。具体的には、連結金具22の一端側が横地11aに固定され、連結金具22の他端側に枠体21aが回動可能に取り付けられている。
図9に示すように、踊り場21の下面には略円柱形状の連結金具23が固定され、その連結金具23に回動可能に踊り場受け材24が取り付けられている。踊り場受け材24の下端には、断面半円形状の掴み金具24aが固定されている。この掴み金具24aに支柱12を嵌合させることにより、踊り場受け材24が固定される。
図12は、基台100の保管時の状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。なお、図12においては、踊り場21の網材21b(図9および図10参照)は図示していない。
図12に示すように、本例に係る基台100を倉庫等において保管する際には、アウトリガー14および踊り場21を畳むことができる。具体的には、アウトリガー14を畳む際には、まず、図9に示した状態から、ジャッキベース13を持ち上げるとともに、火打材17を上方に持ち上げて引っ掛け金具17b(図11参照)を横地11cから外す。これにより、アウトリガー14が回動可能となる。したがって、図12に示すように、アウトリガー14をベースフレーム11側に回動させることにより、アウトリガー14を畳むことができる。一方、踊り場21を畳む際には、まず、図9に示す状態から、踊り場21を上方に少し持ち上げて、踊り場受け材24の掴み金具24aを支柱12から外す。これにより、踊り場受け材24が回動可能となるとともに、踊り場21の下方への回動が可能となる。したがって、図12に示すように、踊り場受け材24を踊り場21の下面側に回動させるとともに、踊り場21をベースフレーム11側に回動させることにより、踊り場21を畳むことができる。
なお、アウトリガー14を畳む際には、火打材17を横地11c上に位置させておくことが好ましい。それにより、アウトリガー14を図12の状態から図9の状態に展開する際の作業が容易になる。具体的には、アウトリガー14を展開する際には、アウトリガー14の展開(回転)動作とともに火打材17が移動する。そして、アウトリガー14が所定の位置まで回転することにより、火打材17の引っ掛け金具17b(図11参照)が横地11c(図11参照)に引っ掛かり、アウトリガー14を固定することができる。
(2−2)昇降式移動足場の構築方法
図13〜図16は、昇降式移動足場102の構築方法を説明するための図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
昇降式移動足場102を構築する際には、まず、図13および図14に示すように、基台100のホゾ19が昇降式足場201の支柱7の下端部に挿入されるように、基台100上に折り畳まれた状態の昇降式足場201を搭載する。なお、この段階では、作業台60(図8参照)は設置されていない。
その状態で、図14に示すように、クランプ20によって支柱7の下端部を基台100に固定する。なお、図14に示す状態において、地面から最上段の水平フレーム40までの高さが2m以下になるように、基台100の高さを決定することが好ましい。この場合、労働安全衛生規則に定められる足場等の設置が不要になる。また、図14に示す状態で基台100および昇降式足場201をトラック等に積載した際に、最上段の水平フレーム40の高さを、道路交通法によって定められる積載物の上端高さの制限値よりも低くすることができる。
次に、図15に示すように、アウトリガー14および踊り場21を展開する。この状態で、作業者は、アウトリガー14の上側フレーム14aをタラップとして利用して一旦踊り場21に登り、最上段の水平フレーム40上に作業台60(手摺り柱62、手摺りバー63および巾木64)を設置する。
次に、図16に示すように、作業者は、踊り場21上でスライダークランク50のすべてを垂直方向に伸長させる。最後に、図8に示したように、上から3段目の水平フレーム40と各アウトリガー14の固定金具15とを連結するように、4本の引張材30(図7参照)を取り付ける。具体的には、基台100の正面側の2つのアウトリガー14と昇降式足場201の正面側の水平フレーム40とを連結するように2本の引張材30が取り付けられ、基台100の背面側の2つのアウトリガー14と昇降式足場201の背面側の水平フレーム40とを連結するように2本の引張材30が取り付けられる。これにより、基台100および昇降式足場201からなる昇降式移動足場102が完成する。
なお、本例においては、引張材30は、基台100の保管時には、例えば、図9に示したように、ベースフレーム11内に格納することができる。
(2−3)効果
上記のように、本例に係る昇降式移動足場102は、基台100上に昇降式足場201を搭載した構成を有するので、図3に示した既存の昇降式移動足場201に比べて、基台100の高さ分だけ作業台60の最大高さが高くなっている。それにより、既存の昇降式移動足場201では対応できない高さでの作業が可能になる。
また、建築会社等は、既存の昇降式移動足場201では対応できない高さでの作業が必要になった場合でも、その高さに対応することができる昇降式移動足場201を新たに購入する代わりに基台100のみを購入すればよいので、購入費用を抑制できる。また、建築会社等が保有する昇降式移動足場201自体の数が増加しないので、管理費用の増加を防止できるとともに、1台当たりの稼働率を向上させることができる。なお、基台100は車輪12aを備えているので、昇降式足場201を搭載した状態で任意の位置に移動することができる。
また、本例に係る基台100においては、ベースフレーム11(図9参照)上に4つホゾ19(図9参照)が形成されており、昇降式足場201を搭載する際には、各ホゾ19が昇降式足場201の各支柱7(図13参照)に挿入される。この場合、各ホゾ19がそれぞれ各支柱7内に挿入されているので、昇降式足場201を安定した状態で追加基台100上に搭載することができる。
また、各ホゾ19に隣接して設けられているクランプ20(図13参照)を用いて各支柱7を確実に固定することができるので、基台100上で昇降式足場201を十分に安定させることができる。
また、4つのホゾ19のうち一方の対角線上に位置する2つのホゾ19が他の2つのホゾ19に比べて長いので、その長さの長い2つのホゾ19を先に昇降式足場201の支柱7に挿入することにより、昇降式足場201の搭載作業が容易になる。すなわち、長さの長い2つのホゾ19を位置合わせ用のホゾ19として用いることができる。
また、本例に係る基台100には、踊り場21(図9参照)が設けられているので、作業者は、踊り場21に一旦登って、そこで昇降式足場201を容易かつ安全に昇降させる作業をすることができる。
また、基台100にはアウトリガー14(図9参照)が取り付けられており、アウトリガー14の上側フレーム14a(図9参照)の表面には、滑り止め16(図9)が取り付けられている。それにより、アウトリガー14の上側フレーム14aをタラップとして利用する場合にも、作業者がアウトリガー14から足を踏み外すことを滑り止め16によって防止することができるので、作業者は容易かつ安全に踊り場21に登ることができる。
また、本例においては、アウトリガー14とベースフレーム11との間には、火打材17(図9〜図11参照)が設けられている。これにより、アウトリガー14を所定の位置に容易かつ正確に固定することができる。また、火打材17により、アウトリガー14の水平方向の力に対する耐力を向上させることができる。それにより、昇降式移動足場102の安定性を十分に向上させることができる。また、ベースフレーム11の横地11c(図11参照)には火打材17の水平方向への移動を規制するための当て材18(図9(a)および図11参照)が形成されているので、火打材17およびアウトリガー14のガタつきを確実に抑制することができる。
また、本例においては、アウトリガー14と昇降式足場201の水平フレーム40とが複数本(本例においては、4本。)の引張材30(図8参照)によって連結されている。これらの引張材30によって、昇降式足場201に対して鉛直方向の圧縮力が加えられるので、昇降式足場201の各構成部材の遊びが減少し、昇降式足場201の揺れを低減することができる。また、図8(b)に示すように、昇降式足場201の正面側の引張材30は下端側が前方に傾斜するように取り付けられ、背面側の引張材30は下端側が後方に傾斜するように取り付けられている。この場合、昇降式足場201は、正面側の2本の引張材30および背面側の2本の引張材30によって互いに逆方向に引っ張られるので、昇降式足場201の前後方向における安定性を十分に向上させることができる。それにより、昇降式足場201の前後方向の揺れを低減することができ、作業者の安全性および作業効率を向上させることができる。また、図8(a)に示すように、昇降式足場201の右側面側の引張材30は下端側が右側方に傾斜するように取り付けられ、左側面側の引張材30は下端側が左側方に傾斜するように取り付けられている。この場合、昇降式足場201は、右側面側の2本の引張材30および左側面側の2本の引張材30によって互いに逆方向に引っ張られるので、昇降式足場201の左右方向における安定性を十分に向上させることができる。それにより、昇降式足場201の左右方向の揺れを低減することができ、作業者の安全性および作業効率をさらに向上させることができる。
なお、鉛直方向に対する引張材30の前後方向への傾斜角度(図8(b)における引張材30の鉛直方向に対する傾斜角度)は、60°程度であることが好ましいが、約75°〜80°の傾斜角度でも昇降式足場101の揺れを十分に低減できる。また、鉛直方向に対する引張材30の左右方向への傾斜角度(図8(a)における引張材30の鉛直方向に対する傾斜角度)は、90°〜85°の範囲内とすることが好ましい。
また、本例においては、中間棒材32(図6参照)および下部棒材33(図6参照)がターンバックル35(図6参照)によって連結されているので、引張材30を昇降式足場201および基台100に取り付けた状態でも、ターンバックル35により引張材30の張力を容易に調整することができる。この場合、4つの引張材30の張力を同等の大きさに容易に調整することができるので、昇降式足場201の安定性を容易に向上させることができる。
また、引張材30の連結板34(図6参照)には、複数の調整孔34a(図6参照)が形成されており、ロック金具32aを挿入する調整孔34aを変えることにより、引張材30の全長を調整することができる。したがって、引張材30の全長を調整することにより、引張材30を任意の水平フレーム40(図8参照)に取り付けることができるし、作業台60の高さ調整のため水平フレーム40を伸縮させた場合にも、取り付けることができる。
(2−4)他の例
上記においては、4段の水平フレーム40を備えた昇降式足場201を基台100上に搭載する場合について説明したが、図17に示すように、3段の水平フレーム40を備えた昇降式足場200を基台100上に搭載してもよく、2段または5段以上の水平フレーム40を備えた昇降式足場(図示せず)を基台100上に搭載してもよい。なお、図17において(a)は正面図であり、(b)は右側面図である。また、図17に示す昇降式足場200は、図1および図2で説明した昇降式足場200と同様の構成を有する。
また、上記においてはクランプ20(図13)を用いて昇降式足場の支柱7(図13)を基台100に固定する場合について説明したが、昇降式足場の固定方法は上記の例に限定されない。たとえば、クランプ20の代わりにボルト・ナットまたは固定ピン等を用いて支柱7とホゾ19(図13参照)とを固定することにより、基台100上に昇降式足場を固定してもよい。また、ホゾ19の代わりに、支柱7が嵌合可能な凹部または孔をベースフレーム11に形成してもよい。
また、上記においては、上部棒材31、中間棒材32および下部棒材33からなる引張材30について説明したが、引張材30の構成は上記の例に限定されない。たとえば、引張材30が2本以下の棒材又は4本以上の棒材によって構成されてもよい。また、棒材の代わりに、バネ材又はワイヤー等を用いてもよい。
また、引張材30の取り付け位置は上記の例に限定されず、昇降式足場に鉛直方向の圧縮力を加えることができるのであれば、他の位置に引張材30を取り付けてもよい。具体的には、上記においては、引張材30の上端を正面側および背面側の水平フレーム40に取り付ける場合について説明したが、例えば、側面側の水平フレーム40又は支柱69に引張材30の上端を取り付けてもよい。ここで、引張材30の上端部は、水平フレーム40の四隅またはその近傍に取り付けることが好ましい。また、上記においては、上から3段目の水平フレーム40に引張材30の上端を取り付ける場合について説明したが、例えば、最上段、2段目または4段目の水平フレーム40に引張材30の上端を取り付けてもよい。また、上記においては、引張材30の下端をアウトリガー14に取り付ける場合について説明したが、例えば、基台100のベースフレーム11、支柱12又は踊り場21に引張材30の下端を取り付けてもよい。
また、上記においては、アウトリガー14に滑り止め16を設けた場合について説明したが、滑り止めの形態は上記の例に限定されない。たとえば、アウトリガー14の表面粗さを粗くして滑り止めとしてもよい。
なお、上記においては既存の昇降式足場を基台100上に搭載する場合について説明したが、新規に作製された昇降式足場を基台100に搭載してもよく、基台100用として別途作製された専用の昇降式足場を基台100上に搭載してもよい。
また、上記においては、踊り場21に登る際にアウトリガー14をタラップとして利用する場合について説明したが、以下に説明するように専用のタラップを別途設けてもよい。
図18は、基台100に専用のタラップを設けた場合の一例を示す図である。図18に示す基台100においては、一方の踊り場21の側面部にタラップ80が設けられている。なお、両方の踊り場21にタラップ80を設けてもよい。
図19は、基台100に専用のタラップを設けた場合の他の例を示す図である。図19に示す基台100においては、ベースフレーム11の側面に、タラップ81が設けられている。