JP5476035B2 - エンジン - Google Patents

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Description

本願発明は、クランク角検出手段及び回転角検出手段の検出情報に基づいて、気筒毎の燃料噴射及び点火を実行するように構成されているエンジンに関するものである。
従来から、車両に搭載されたエンジンにおいては、クランク軸の回転に応じてクランク角センサから出力されるクランク角信号と、カム軸の回転に応じてカム角センサから出力されるカム角信号との組合せにて気筒判別をし、当該気筒判別結果に基づいて気筒毎の燃料噴射及び点火を実行するように構成されている。このような気筒毎の燃料噴射及び点火によって、エンジンを駆動させている(例えば特許文献1及び2参照)。ここで、気筒判別とは、エンジンにおける1サイクル(720°CA)でのクランク軸のクランク角(回転位置)を特定することを意味している。
この種のエンジンでは、クランク軸方向の一側部(説明の便宜上、エンジンの後面側と称する)に、クランク軸と一体回転するフライホイールが配置されている。そして、フライホイールに取り付けられたクランク軸用パルサの外周側にクランク角センサが近接配置されている。クランク軸の回転に伴い、クランク軸用パルサの被検出部がクランク角センサの近傍を通過することによって、クランク角センサがクランク角信号を出力するように構成されている。
また、エンジンの前面側(クランク軸方向の他側部)には、クランク軸に固定されたクランクギヤと、カム軸に固定されたカムギヤとが配置されている。クランクギヤに連動してカムギヤ及びカム軸を回転させ、カム軸に関連させた動弁機構を駆動させることによって、エンジンの吸気弁や排気弁が開閉作動するように構成されている。カムギヤに取り付けられたカム軸用パルサの外周側にカム角センサが近接配置されている。カム軸の回転に伴い、カム軸用パルサの被検出部がカム角センサの近傍を通過することによって、カム角センサがカム角信号を出力するように構成されている。
特開2004−44440号公報
ところで、近年のエンジンは、効率のよい駆動や排気ガス対策等のために、各種センサやコントローラ等の電子部品を利用して電子制御される。これら電子部品や当該電子部品にて作動制御されるアクチュエータ類は、エンジンの熱による悪影響をできるだけ回避するため、一般にエンジンのうち比較的低温である右側面側(吸気マニホールド設置側)に集中配置される。また、エンジンの右側面側には、エンジンに燃料を供給するための燃料供給ポンプが配置される。燃料供給ポンプからの燃料供給経路もエンジンの右側面側に設けられる。
一方、燃料供給経路がエンジンの右側面側に位置する関係上、カムギヤ及びカム軸はエンジンの前面側のうち左側面に近い方(排気マニホールド設置側に近い方)に寄せて配置される。このため、カム角センサもエンジンの前面側のうち左側面に近い方に位置することになる。
そうすると、カム角センサはエンジンのうち比較的高温になる部位に位置するため、エンジンの熱による悪影響を受けやすくなるという問題があった。また、カム角センサが他の電子部品と離れて配置されることになるから、カム角センサにつながるハーネスを長くせざるを得ない。その上、カムギヤやクランクギヤのあるエンジンの正面側には、冷却ファンやファンベルトが設けられていることも多い。従って、カム角センサにつながるハーネスは、冷却ファンやファンベルトを避けながら、エンジンの右側面側(吸気マニホールド設置側)まで配線しなければならず、配線作業性の点で改良の余地があった。また、カム角センサへのハーネスの引き回しのために、当該ハーネスに対するクランプ部品の配置及び個数も考慮しなければならず、コスト増加の一因となっていた。
そこで、本願発明は、これらの現状を検討して改善を施したエンジンを提供することを技術的課題とするものである。
請求項1の発明は、クランク軸の回転角を検出するクランク角検出手段と、前記クランク軸に連動して回転する回転軸の回転角を検出する回転角検出手段とを備えており、前記クランク角検出手段及び前記回転角検出手段の検出情報に基づいて、気筒毎の燃料噴射及び点火を実行するように構成されているエンジンであって、吸気マニホールドの近傍に配置された燃料供給ポンプに、前記回転軸としてのポンプ軸を備えており、前記ポンプ軸上にポンプ軸用パルサが設けられており、前記ポンプ軸用パルサの外周側に前記回転角検出手段を近接配置して、前記クランク角検出手段及び前記回転角検出手段それぞれを、前記吸気マニホールド設置側に集中配置し、シリンダブロックの一側部に、前記クランク軸上のクランクギヤと、前記ポンプ軸上のポンプギヤと、前記クランクギヤと前記ポンプギヤとに噛み合うアイドルギヤとを収容するギヤケースが配置されており、前記ギヤケース内の前記ポンプギヤに、前記ポンプ軸用パルサが一体回転するように取り付けられる一方、前記ギヤケースには、前記ポンプ軸用パルサに対峙するように前記回転角検出手段を装着するための挿入部が形成されている、というものである。
請求項2の発明は、請求項1に記載したエンジンにおいて、シリンダブロックの他側部に、前記クランク軸と一体回転するフライホイールが配置されており、前記フライホイールの外周側には、前記クランク角検出手段に対するクランク軸用パルサと、スタータ用のリングギヤとが、前記フライホイールの厚み方向に沿って互いに逆側から嵌め込み固定されているというものである。
請求項1の発明によると、クランク軸の回転角を検出するクランク角検出手段と、前記クランク軸に連動して回転する回転軸の回転角を検出する回転角検出手段とを備えており、前記クランク角検出手段及び前記回転角検出手段の検出情報に基づいて、気筒毎の燃料噴射及び点火を実行するように構成されているエンジンであって、吸気マニホールドの近傍に配置された燃料供給ポンプに、前記回転軸としてのポンプ軸を備えており、前記ポンプ軸上にポンプ軸用パルサが設けられており、前記ポンプ軸用パルサの外周側に前記回転角検出手段が近接配置されているから、前記エンジンのうち比較的低温である吸気マニホールド設置側に寄せて、前記回転角検出手段が位置することになる。換言すると、前記クランク角検出手段といったその他の電子部品・アクチュエータ類と共に、前記回転角検出手段まで含めて、前記エンジンの吸気マニホールド設置側に集中配置されることになる。このため、前記回転角検出手段に対して、前記エンジンの熱による悪影響を回避できるという効果を奏する。また、電装用のハーネス類をコンパクトにまとめられるから、組付け作業(接続作業)の効率化に貢献できる。
また、シリンダブロックの一側部に、前記クランク軸上のクランクギヤと、前記ポンプ軸上のポンプギヤと、前記クランクギヤと前記ポンプギヤとに噛み合うアイドルギヤとを収容するギヤケースが配置されており、前記ギヤケース内の前記ポンプギヤに、前記ポンプ軸用パルサが一体回転するように取り付けられているから、請求項1の効果に加えて、前記アイドルギヤを交換することによって、前記燃料供給ポンプを前記クランク軸と等速で駆動させたり、1/2速駆動させたりすることが簡単に行える。このため、前記エンジンの構成上の汎用性が向上するという効果を奏する。
さらに、前記ギヤケースには、前記ポンプ軸用パルサに対峙するように前記回転角検出手段を装着するための挿入部が形成されているから、前記ギヤケースの外側から前記回転角検出手段を前記挿入部に装着でき、組付け作業が簡単になる。従って、請求項1及び2の効果と併せて、エンジン製造ラインでの作業性向上及び省工程化に寄与できるという効果を奏する。
請求項2の発明によると、シリンダブロックの他側部に、前記クランク軸と一体回転するフライホイールが配置されており、前記フライホイールの外周側には、前記クランク角検出手段に対するクランク軸用パルサと、スタータ用のリングギヤとが、前記フライホイールの厚み方向に沿って互いに逆側から嵌め込み固定されているから、例えば前記エンジンの検査段階であっても、前記フライホイールに前記リングギヤを装着したままで、前記クランク軸用パルサを簡単に位置決め修正できることになる。従って、前記クランク軸用パルサの修正作業の作業性が向上するという効果を奏する。また、前記クランク軸用パルサの内径と前記リングギヤの内径とをそれぞれ独立的に設定することが可能になるから、フライホイール形状等の設計の自由度が向上するという利点もある。
ディーゼルエンジンの外観斜視図である。 ディーゼルエンジンの吸気マニホールド設置側の側面図である。 ディーゼルエンジンの排気マニホールド設置側の側面図である。 ディーゼルエンジンのフライホイール設置側の側面図である。 ディーゼルエンジンの冷却ファン設置側の側面図である。 ディーゼルエンジンの平面図である。 ディーゼルエンジンの燃料系統説明図である。 ディーゼルエンジンのギヤトレインを示す側面図である。 図8の部分拡大側面図である。 図9のX−X視断面図である。 フライホイールの拡大正面図である。 図11のXII−XII視断面図である。 トラクタの側面図である。 トラクタの平面図である。 普通型コンバインの側面図である。 普通型コンバインの平面図である。
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図1〜図12までのディーゼルエンジンに関する説明では、ディーゼルエンジンの吸気マニホールド設置側を「右側」、排気マニホールド設置側を「左側」として、これらを便宜的に、ディーゼルエンジンにおける四方及び上下の位置関係の基準としている。
(1).ディーゼルエンジンの全体構造
まず、主として図1〜図6を参照しながら、ディーゼルエンジン70の全体構造について説明する。実施形態のディーゼルエンジン70は4気筒型のものであり、ディーゼルエンジン70におけるシリンダヘッド72の左側面に排気マニホールド71が配置されている。シリンダヘッド72の右側面には吸気マニホールド73が配置されている。シリンダヘッド72は、クランク軸74とピストン(図示省略)が内蔵されたシリンダブロック75上に搭載されている。シリンダブロック75の前後両側面からクランク軸74の前後先端部をそれぞれ突出させている。シリンダブロック75の前面側には冷却ファン76が設けられている。クランク軸74の前端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力を伝達するように構成されている。
図1〜図4に示すように、シリンダブロック75の後面にフライホイールハウジング78が固着されている。フライホイールハウジング78内にフライホイール79が配置されている。フライホイール79はクランク軸74の後端側に軸支されている。フライホイール79は、クランク軸74と一体的に回転するように構成されている。後述するトラクタ201又は普通型コンバイン300といった作業車両の駆動部に、フライホイール79を介してディーゼルエンジン70の動力を取り出すように構成されている。
図11及び図12に示すように、フライホイール79の外周側には、環状のクランク軸用パルサ134と、スタータ(モータ)138用のリングギヤ135とが、フライホイール79の厚み方向に沿って互いに逆側から嵌め込み固定されている。この場合、フライホイール79の外周面のうち厚み方向の中央部が半径外向きに突出していて、階段状(外向き凸状)の係合段部133を形成している。係合段部133のうちシリンダブロック75から遠い表側に、クランク軸用パルサ134が圧入又は焼き嵌めにて装着されている。シリンダブロック75に近い裏側に、リングギヤ135が圧入又は焼き嵌めにて装着されている。
クランク軸用パルサ134の外周面には、所定のクランク角(回転角)毎に並ぶ被検出部としての出力突起134aが形成されている。クランク軸用パルサ134の外周面のうち例えば第1又は第4気筒の上死点(TDC)に対応する部分には、欠歯部134bが形成されている。クランク軸用パルサ134の外周側には、出力突起134a及び欠歯部134bに対峙するように、クランク角検出手段としてのクランク角センサ136が近接配置されている。クランク角センサ136は、クランク軸74のクランク角(回転角)を検出するためのものであり、クランク軸74の回転に伴い、クランク軸用パルサ134の出力突起134aがその近傍を通過することによって、クランク角信号を出力するように構成されている。実施形態のクランク角センサ136は、フライホイールハウジング78の上部右側に形成されたセンサ挿入部137(図2参照)に着脱可能に装着されている。
フライホイールハウジング78の左側には、出力軸にピニオンギヤ(図示省略)を有するスタータ(モータ)138が装着されている。スタータ138のピニオンギヤはフライホイール79のリングギヤ135に噛み合っている。ディーゼルエンジン70の始動時に、スタータ138の回転動力にてフライホイール79のリングギヤ135を回転させることにより、クランク軸74が回転開始する(いわゆるクランキングを実行する)ように構成されている。
クランク軸用パルサ134のうちシリンダブロック75から遠い側面には、例えば欠歯部134bの箇所に、位置決めの目印となるケガキ線K1が付されている一方、フライホイール79のうちシリンダブロック75から遠い表面側の周縁部に、クランク軸用パルサ側のケガキ線K1に対応するケガキ線K2が付されている。フライホイール79の係合段部133にクランク軸用パルサ134を装着する際は、両ケガキ線K1,K2を直線状に揃えることによって、フライホイール79の係合段部133に対するクランク軸用パルサ134の位置を簡単に決められることになる。
なお、ケガキ線K1,K2を設ける位置は上記の例に限らず、例えばクランク軸用パルサ134のうち欠歯部134bに隣接するいずれか一方の出力突起134aの箇所と、これに対応するフライホイール79の周縁部とに設けてもよい。欠歯部134bの近傍にケガキ線K1,K2があると、目視で確認し易く好適である。
上記のように構成すると、シリンダブロック75の他側部(後面側)に、クランク軸74と一体回転するフライホイール79が配置されており、フライホイール79の外周側には、クランク角検出手段136に対するクランク軸用パルサ134と、スタータ138用のリングギヤ135とが、フライホイール79の厚み方向に沿って互いに逆側から嵌め込み固定されているから、例えばディーゼルエンジン70の検査段階であっても、フライホイール79にリングギヤ135を装着したまま、クランク軸用パルサ134を簡単に位置決め修正できることになる。従って、クランク軸用パルサ134の修正作業の作業性が向上する。また、クランク軸用パルサ134の内径とリングギヤ135の内径とをそれぞれ独立的に設定することが可能になるから、フライホイール79形状等の設計の自由度が向上する。
更に、クランク軸用パルサ134がフライホイール79にケガキ線K1,K2合わせにて装着されるから、クランク軸用パルサ134の装着に際して位置決め専用の治具が要らなくて、目視で簡単に位置合わせでき、取付け作業の作業性がよい。また、クランク軸用パルサ134の装着位置がずれていても、目視で検査・確認でき、検査作業の作業性も向上するのである。
さて、シリンダブロック75の下面にはオイルパン81が配置されている。シリンダブロック75の左右側面とフライホイールハウジング78の左右側面とには、機関脚取付部82がそれぞれ設けられている。各機関脚取付部82には、防振ゴムを有する機関脚体83がボルト締結されている。ディーゼルエンジン70は、各機関脚体83を介して、前述した作業車両のエンジン支持シャーシ84に防振支持される。
図1、図2、図4及び図6に示すように、吸気マニホールド73の入口側には、EGR装置91(排気ガス再循環装置)を構成するコレクタ92を介して、エアクリーナ(図示省略)が連結される。エアクリーナ88にて除塵・浄化された外気は、EGR装置91のコレクタ92を介して、吸気マニホールド73に送られ、そして、ディーゼルエンジン70の各気筒に供給される。
図1、図2、図4及び図6に示すように、EGR装置91は、ディーゼルエンジン70の再循環排気ガス(排気マニホールド71からのEGRガス)と新気(エアクリーナからの外部空気)とを混合させて吸気マニホールド73に供給するコレクタ(EGR本体ケース)92と、排気マニホールド71にEGRクーラ94を介して接続する再循環排気ガス管95と、再循環排気ガス管95にコレクタ92を連通させるEGRバルブ96とを備えている。
上記の構成により、エアクリーナからコレクタ92内に外部空気を供給する一方、排気マニホールド71からEGRバルブ96を介してコレクタ92内にEGRガス(排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部)を供給する。エアクリーナからの外部空気と、排気マニホールド71からのEGRガスとが、コレクタ92内で混合された後、コレクタ92内の混合ガスが吸気マニホールド73に供給される。すなわち、ディーゼルエンジン70から排気マニホールド71に排出された排気ガスの一部が、吸気マニホールド73からディーゼルエンジン70に還流されることによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が下がり、ディーゼルエンジン70からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減される。
図1及び図3〜図6に示すように、シリンダヘッド72の左側面には、ターボ過給機100が取り付けられている。ターボ過給機100は、タービンホイール(図示省略)を内蔵したタービンケース101と、ブロアホイール(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース102とを備えている。タービンケース101の排気ガス取入れ管105に排気マニホールド71が接続されている。図示は省略するが、タービンケース101の排気ガス排出管103には、マフラー又はディーゼルパティキュレートフィルタ等を介してテールパイプが接続される。すなわち、ディーゼルエンジン70の各気筒から排気マニホールド71に排出された排気ガスは、ターボ過給機100等を経由して、テールパイプから外部に放出される。
一方、コンプレッサケース102の給気取入れ側には、給気管104を介してエアクリーナの給気排出側が接続される。コンプレッサケース102の給気排出側には、過給管108を介して吸気マニホールド73が接続される。すなわち、エアクリーナによって除塵された外気は、コンプレッサケース102から過給管108を介してディーゼルエンジン70の各気筒に供給される。
(2).コモンレールシステム及びディーゼルエンジンの燃料系統構造
次に、図1〜図7を参照しながら、コモンレールシステム117及びディーゼルエンジン70の燃料系統構造について説明する。図1、図2、図6及び図7に示すように、ディーゼルエンジン70に設けられた4気筒分の各インジェクタ115に、コモンレールシステム117及び燃料供給ポンプ116を介して、燃料タンク118が接続されている。各インジェクタ115は電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ119を備えている。コモンレールシステム117は円筒状のコモンレール120を備えている。
図1、図2、図6及び図7に示すように、燃料供給ポンプ116の吸入側には、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料タンク118が接続される。燃料タンク118内の燃料が燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料供給ポンプ116に吸い込まれる。実施形態の燃料供給ポンプ116は吸気マニホールド73の近傍に配置されている。具体的には、シリンダブロック75の右側面側(吸気マニホールド73設置側)で且つ吸気マニホールド73の下方に設けられている。一方、燃料供給ポンプ116の吐出側には、高圧管123を介してコモンレール120が接続される。また、コモンレール120には、4本の燃料噴射管126を介して4気筒分の各インジェクタ115がそれぞれ接続されている。
上記の構成により、燃料タンク118の燃料が燃料供給ポンプ116によってコモンレール120に圧送され、高圧の燃料がコモンレール120に蓄えられる。各燃料噴射バルブ119がそれぞれ開閉制御されることによって、コモンレール120内の高圧の燃料が各インジェクタ115からディーゼルエンジン70の各気筒に噴射される。すなわち、各燃料噴射バルブ119を電子制御することによって、各インジェクタ115から供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。従って、ディーゼルエンジン70からの窒素酸化物(NOx)を低減できると共に、ディーゼルエンジン70の騒音振動を低減できる。
なお、図7に示すように、燃料タンク118には、燃料戻り管129を介して燃料供給ポンプ116が接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向の端部に、コモンレール120内の燃料の圧力を制限する戻り管コネクタ130を介して、コモンレール戻り管131が接続されている。すなわち、燃料供給ポンプ116の余剰燃料とコモンレール120の余剰燃料とが、燃料戻り管129及びコモンレール戻り管131を介して、燃料タンク118に回収されることになる。
(3).ディーゼルエンジンのギヤトレイン構造及び気筒判別構造
次に、図4、図5及び図8〜図10を参照しながら、ディーゼルエンジン70のギヤトレイン構造及び気筒判別構造について説明する。図5及び図8〜図10に示すように、シリンダブロック75の前面側には、ケース蓋141とケース本体142とからなる二つ割り状のギヤケース140が固定されている。実施形態のギヤケース140は、冷却ファン75を回転可能に軸支するファン軸85の下方に位置している。
シリンダブロック75の前面から突出したクランク軸74の前端側は、ギヤケース140のケース本体142を貫通している。クランク軸74の前先端部に、クランクギヤ143が固着されている。シリンダブロック75内には、クランク軸74の回転軸心と平行状に延びるカム軸144が回転可能に軸支されている。実施形態のカム軸144は、シリンダブロック75内部のうち左側面に近い方(排気マニホールド71設置側に近い方)に寄せて配置されている。カム軸144の前端側は、クランク軸74と同様に、ギヤケース140のケース本体142を貫通している。カム軸144の前先端部にカムギヤ145が固着されている。
ディーゼルエンジン70の右側面側に設けられた燃料供給ポンプ116は、クランク軸74の回転軸心と平行状に延びる回転軸としてのポンプ軸146を備えている。ポンプ軸146の前端側は、クランク軸74及びカム軸144と同様に、ギヤケース140のケース本体142を貫通している。ポンプ軸146の前先端部にポンプギヤ147が固着されている。
ケース本体142のうちクランク軸74、カム軸144及びポンプ軸146で囲まれた部位には、クランク軸74の回転軸心と平行状に延びるアイドル軸148が設けられている。アイドル軸148は、ケース本体142を貫通してシリンダブロック75の前面に固定されている。アイドル軸148には、アイドルギヤ149が回転可能に軸支されている。アイドルギヤ149は、クランクギヤ143、カムギヤ145及びポンプギヤ147の3つに噛み合っている。クランク軸74の回転動力は、クランクギヤ143からアイドルギヤ149を介してカムギヤ145及びポンプギヤ147の両方に伝達される。このため、カム軸144及びポンプ軸146は、クランク軸74に連動して回転することになる。実施形態では、クランク軸74の2回転に対してカム軸144及びポンプ軸146が1回転するように、各ギヤ143,145,147,149間のギヤ比が設定されている。
この場合、クランク軸74と共に回転するクランクギヤ143に連動してカムギヤ145及びカム軸144を回転させ、カム軸144に関連して設けられた動弁機構(図示省略)を駆動させることによって、シリンダヘッド72に設けられた吸気弁や排気弁(図示省略)が開閉作動するように構成されている。また、クランクギヤ143に連動してポンプギヤ147及びポンプ軸146を回転させ、燃料供給ポンプ116を駆動させることによって、燃料タンク118の燃料をコモンレール120に圧送して、高圧の燃料をコモンレール120に蓄えるように構成されている。
図8〜図10に詳細に示すように、ポンプギヤ147におけるケース蓋141側の側面には、ドーナツ盤状のポンプ軸用パルサ150が、ポンプギヤ147と一体回転するようにボルト締結されている。ポンプ軸用パルサ150の外周面には、90°毎(180°クランク角毎)に、被検出部としての出力突起150aが形成されている。そして、ポンプ軸用パルサ150の円周面のうち例えば第1気筒の上死点に対応する出力突起150aの直前(回転上流側)に、余分歯150bが形成されている。ポンプ軸用パルサ150の外周側には、出力突起150a及び余分歯150bに対峙するように、回転角検出手段としてのポンプ軸回転角センサ151が近接配置されている。ポンプ軸回転角センサ151は、ポンプ軸146の回転角を検出するためのものであり、ポンプ軸146の回転に伴い、ポンプ軸用パルサ150の出力突起150a及び余分歯150bがその近傍を通過することによって、回転角信号を出力するように構成されている。
クランク軸74の回転に応じてクランク角センサ136から出力されるクランク角信号と、ポンプ軸146の回転に応じてポンプ軸回転角センサ151から出力される回転角信号とは、コントローラ(図示省略)に入力される。コントローラは各信号から気筒判別及びクランク角を演算し、演算結果に基づいて各燃料噴射バルブ119を電子制御する(気筒毎の燃料噴射及び点火を実行する)。その結果、各インジェクタ115から供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされることになる。
実施形態のポンプ軸回転角センサ151は、ギヤケース140の左側部に形成された挿入部152に着脱可能に装着されている。この場合、ケース蓋141の左側部にギヤケース140内外に貫通する貫通穴153が形成されている。当該貫通穴153にポンプ軸回転角センサ151が外側から挿入固定されている。ケース蓋141において貫通穴153の形成された部分が挿入部152を構成している。
上記のように構成すると、クランク軸74のクランク角(回転角)を検出するクランク角検出手段136と、クランク軸74に連動して回転する回転軸の回転角を検出する回転角検出手段151とを備えており、クランク角検出手段136及び回転角検出手段151の検出情報に基づいて、気筒毎の燃料噴射及び点火を実行するように構成されているエンジン70であって、吸気マニホールド73の近傍に配置された燃料供給ポンプ116に、回転軸としてのポンプ軸146を備えており、ポンプ軸146上にポンプ軸用パルサ150が設けられており、ポンプ軸用パルサ150の外周側に回転角検出手段151が近接配置されているから、エンジン70のうち比較的低温である吸気マニホールド73設置側に寄せて、回転角検出手段151が位置することになる。換言すると、クランク角検出手段136といったその他の電子部品・アクチュエータ類と共に、回転角検出手段151まで含めて、エンジン70の吸気マニホールド73設置側に集中配置されることになる。このため、回転角検出手段151に対して、エンジン70の熱による悪影響を回避できる。また、電装用のハーネス類をコンパクトにまとめられるから、組付け作業(接続作業)の効率化に貢献できる。
また、シリンダブロック75の一側部(前面側)に、クランク軸74上のクランクギヤ143と、ポンプ軸146上のポンプギヤ147と、クランクギヤ143とポンプギヤ147とに噛み合うアイドルギヤ149とを収容するギヤケース140が配置されており、ギヤケース140内のポンプギヤ147に、ポンプ軸用パルサ150が一体回転するように取り付けられているから、前述の効果に加えて、アイドルギヤ149を交換することによって、燃料供給ポンプ116をクランク軸74と等速で駆動させたり、1/2速駆動回転させたりすることが簡単に行える。このため、エンジン70の構成上の汎用性が向上する。
更に、ギヤケース140には、ポンプ軸用パルサ150に対峙するように回転角検出手段151を装着するための挿入部152が形成されているから、ギヤケース140の外側から回転角検出手段151を挿入部152に装着でき、組付け作業が簡単になる。従って、前述の効果と併せて、エンジン製造ラインでの作業性向上及び省工程化に寄与できるのである。
(4).ディーゼルエンジンのトラクタへの搭載構造
次に、図13及び図14を参照して、図1〜図12に示すディーゼルエンジン70をトラクタ201に搭載した構造を説明する。作業車両としてのトラクタ201は、走行機体202を左右一対の前車輪203と同じく左右一対の後車輪204とで支持し、走行機体202の前部に搭載されたディーゼルエンジン70にて後車輪204及び前車輪203を駆動することにより、前後進走行するように構成される。
エンジン70はボンネット206にて覆われている。走行機体202の上面にはキャビン207が設置され、キャビン207の内部には、オペレータが着座する操縦座席208と、操縦座席208の前方に位置する操向手段としての丸ハンドル形状の操縦ハンドル209が設けられている。操縦座席208に着座したオペレータが操縦ハンドル209を回動操作することにより、その操作量(回動量)に応じて左右前車輪203のかじ取り角(操向角度)が変わるように構成されている。キャビン207の底部には、オペレータが搭乗するためのステップ210が設けられている。
図13に示すように、走行機体202は、前バンパ212及び前車軸ケース213を有するエンジンフレーム214と、エンジンフレーム214の後部にボルトの締結にて着脱可能に連結する左右の機体フレーム216とにより構成される。前車輪203は、エンジンフレーム214の外側面から外向きに突出するように装着された前車軸ケース213を介して取り付けられている。また、機体フレーム216の後部には、ディーゼルエンジン70からの出力を適宜変速して後車輪204(前車輪203)に伝達するためのミッションケース217が連結されている。後車輪204は、ミッションケース217に対して、当該ミッションケース217の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース(図示省略)を介して取り付けられている。
図13に示すように、ミッションケース217の後部上面には、耕耘機等の作業機(図示省略)を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構220が着脱可能に取り付けられている。耕耘機等の作業機は、ミッションケース217の後部にロワーリンク221及びトップリンク222を介して昇降動可能に連結される。更に、ミッションケース217の後側面に、作業機を駆動するPTO軸223が設けられている。
詳細は図示していないが、ディーゼルエンジン70の後面側からクランク軸74及びフライホイール79等を介して、ミッションケース217の前面側にディーゼルエンジン70の回転動力を伝達するように構成している。ディーゼルエンジン70の回転動力をミッションケース217に伝達し、次いで、ミッションケース217の油圧無段変速機や走行副変速ギヤ機構にてディーゼルエンジン70の回転動力を適宜変速して、差動ギヤ機構等を介してミッションケース217から後車輪204に駆動力を伝達するように構成している。また、走行副変速ギヤ機構にて適宜変速したディーゼルエンジン70の回転を、前車軸ケース213の差動ギヤ機構等を介してミッションケース217から前車輪203に伝達するように構成している。
(5).ディーゼルエンジンの普通型コンバインへの搭載構造
図15及び図16を参照して、図1〜図12に示すディーゼルエンジン70を普通型コンバイン300に搭載した構造を説明する。作業車両としての普通型コンバイン300は、走行部としての左右一対の走行クローラ302にて支持された走行機体301を備えている。走行機体301の前部には、稲、麦、大豆等の植立穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置303が単動式の油圧シリンダ304にて昇降調節可能に装着されている。
走行機体301の前部一側(実施形態では前部右側)には、キャビンタイプの操縦部305が搭載されている。走行機体301の後部には、脱穀後の穀粒を貯留するための穀粒タンク307と、動力源としてのディーゼルエンジン70とが配置されている。走行機体301の他側(実施形態では左側)には、刈取装置303から送られてきた刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀装置308が搭載されている。脱穀装置308の下方には、揺動選別及び風選別を行うための選別装置309が配置されている。
走行部としての左右の走行クローラ302は、走行機体301の下方にある前後長手のトラックフレーム310の前後端にそれぞれ配置された駆動輪311及び従動輪312と、トラックフレーム310の長手中途部に複数個配置された転動輪313と、これら車輪311〜313の外周に巻き掛けられた履帯314とを備えている。左右の駆動輪311がミッションケース(図示省略)から左右外向きに突出した駆動出力軸からの動力にて回転駆動することにより、左右の履帯314が各車輪311〜313の周りを回行駆動するように構成されている。
刈取装置303は、脱穀装置308の前部開口に連通した角筒状のフィーダハウス315と、フィーダハウス315の前端に連設された横長バケット状のプラットホーム316とを備えている。フィーダハウス315の下面部と走行機体301の前端部とが単動式の油圧シリンダ304を介して連結されている。プラットホーム316内には横送りオーガ317が回転可能に軸支されている。横送りオーガ317の前部上方にはタインバー付きの掻き込みリール318が配置されている。プラットホーム316の下面側には横長バリカン状の刈刃319が配置されている。プラットホーム316の前部には左右一対の分草体320が突設されている。掻き込みリール318にて後方に引き倒された植立穀稈は、刈刃319にて刈り取られたのち、横送りオーガ317の回転駆動にてプラットホーム316の左右中央部付近に集められる。集められた刈取穀稈は、フィーダハウス315内のチェーンコンベヤ321を介して脱穀装置308に送り込まれる。
脱穀装置308の扱室には、刈取穀稈を脱穀処理するための前後長手の扱胴322が内蔵されている。なお、詳細は図示していないが、扱胴322の外周面には、複数の切歯を有するスクリュー羽根が螺旋状に巻回突設されている。扱室内に搬送された刈取穀稈は、扱胴322の各切歯にて細かく切断される。
脱穀装置308の下方に配置された選別装置309は、受網やチャフシーブ等を有する揺動選別装置323と、唐箕ファン等を有する風選別装置324とを備えている。受網から漏下した穀粒は、揺動選別装置323及び風選別装置324にて、精粒等の一番物、枝梗付き穀粒等の二番物及び排稈(藁屑)等に選別される。揺動選別装置323及び風選別装置324による選別を経て、走行機体301の下部にある一番受け樋に集められた精粒等の一番物は、一番コンベヤ325及び揚穀コンベヤ(図示省略)を介して穀粒タンク307に集積される。枝梗付き穀粒等の二番物は、二番コンベヤ326及び還元コンベヤ327等を介して扱室に戻され、扱胴322にて再脱穀される。再脱穀後の二番物は選別装置309にて再選別される。排稈等は、脱穀装置308の後部下方に配置されたスプレッダ328にて細かく切断されたのち、走行機体301の後方に排出される。穀粒タンク307内の穀粒は、走行機体301の後部に立設された排出オーガ329を介して、輸送用トラックの荷台等(走行機体301の外部)に搬出される。
70 ディーゼルエンジン
72 シリンダヘッド
73 吸気マニホールド
74 クランク軸
75 シリンダブロック
115 インジェクタ
120 コモンレール
134 クランク軸用パルサ
135 リングギヤ
136 クランク角検出手段としてのクランク角センサ
140 ギヤケース
143 クランクギヤ
144 カム軸
145 カムギヤ
146 ポンプ軸
147 ポンプギヤ
148 アイドル軸
149 アイドルギヤ
150 ポンプ軸用パルサ
151 ポンプ軸回転角センサ
152 挿入部
153 貫通穴

Claims (2)

  1. クランク軸の回転角を検出するクランク角検出手段と、前記クランク軸に連動して回転する回転軸の回転角を検出する回転角検出手段とを備えており、前記クランク角検出手段及び前記回転角検出手段の検出情報に基づいて、気筒毎の燃料噴射及び点火を実行するように構成されているエンジンであって、
    吸気マニホールドの近傍に配置された燃料供給ポンプに、前記回転軸としてのポンプ軸を備えており、前記ポンプ軸上にポンプ軸用パルサが設けられており、前記ポンプ軸用パルサの外周側に前記回転角検出手段を近接配置して、前記クランク角検出手段及び前記回転角検出手段それぞれを、前記吸気マニホールド設置側に集中配置し、
    シリンダブロックの一側部に、前記クランク軸上のクランクギヤと、前記ポンプ軸上のポンプギヤと、前記クランクギヤと前記ポンプギヤとに噛み合うアイドルギヤとを収容するギヤケースが配置されており、前記ギヤケース内の前記ポンプギヤに、前記ポンプ軸用パルサが一体回転するように取り付けられる一方、前記ギヤケースには、前記ポンプ軸用パルサに対峙するように前記回転角検出手段を装着するための挿入部が形成されている、
    エンジン。
  2. シリンダブロックの他側部に、前記クランク軸と一体回転するフライホイールが配置されており、前記フライホイールの外周側には、前記クランク角検出手段に対するクランク軸用パルサと、スタータ用のリングギヤとが、前記フライホイールの厚み方向に沿って互いに逆側から嵌め込み固定されている、
    請求項1に記載したエンジン。
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