JP5473751B2 - Ofdm信号合成用受信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、OFDM方式を用いるデジタル放送またはデジタル伝送のOFDM信号合成用受信装置に関し、特に、デジタル放送または無線LANなどにおいて電波を受信する際に問題となるフェージングおよび干渉波の対策のために、アダプティブアレーアンテナ技術またはダイバーシティ受信技術を適用するOFDM信号合成用受信装置に関する。
OFDM信号用アダプティブアレーアンテナ技術として、例えば、特許文献1および2に記載のものが知られており、これらはいずれも放送波中継用の装置へ応用することを目的としている。この技術を用いた放送波中継用の干渉除去装置は、送信側の設備であることから、低計算量で処理を行うことよりも、高精度な干渉除去特性を得ることが求められる。しかし、放送波中継用の干渉除去装置は、極端に劣悪な受信環境で用いられることは想定されていない。特に、SFN(Single Frequency Network)環境のサービスエリアは、レベルが高く、GI(Guard Interval)内であるが遅延時間が長いマルチパス波の影響を受ける環境であることから、十分な干渉除去特性を得ることができない場合がある。また、この干渉除去装置は、周波数領域で信号を合成するPost−FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)型により構成されているため、最適化すべき重み係数の数がサブキャリヤ数とブランチ数との積となり、計算量が多くなるという問題もある。
これに対し、前述のOFDM信号用アダプティブアレーアンテナ技術を受信装置へ応用することを想定すると、低コスト化を実現するために、より簡易な構成かつ少ない計算量で所要のBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)が得られること、また、より劣悪な受信環境でも動作できることが求められる。
放送波中継用の装置では、干渉除去後に所要のBERが得られることは最低条件であり、干渉による伝送特性の劣化をいかに抑圧するかが求められる。これに対し、サービスエリアにおける受信用の装置では、干渉除去後に所要のBERが得られればよい。このように、放送波中継用の装置とサービスエリアにおける受信用の装置とでは、OFDM信号用アダプティブアレーアンテナ技術に対する要求条件が大きく異なっている。
一方、非特許文献1および2に、時間領域で信号を合成するPre−FFT型のOFDM信号用アダプティブアレーアンテナ技術が記載されている。非特許文献1の技術は、移動受信を想定したものであり、希望波以外の到来波を全て抑圧することができる。また、非特許文献2の技術は、固定受信を想定したものであり、遅延時間がGIを越えるマルチパス波のみを抑圧することができる。
しかしながら、非特許文献1および2に記載の技術を用いたOFDM信号合成用受信装置は、いずれもGIが有効シンボルの後部と同一であるというOFDM信号の特徴を利用するものである。このため、干渉波が希望波と同一方式で、GI比が同じである場合には、干渉波を抑圧できないことがある。例えば、希望波と干渉波のシンボル同期位置またはフレーム同期位置が一致する場合には、希望波と干渉波を区別することができず、干渉波を抑圧することができなくなる。
一方、特許文献3に記載のOFDM信号合成用受信装置が提案されている。このOFDM信号合成用受信装置は、アレー合成部が、時間領域で重み付け合成を行ってアレー合成信号を生成し、チャネル等化部が、周波数領域でチャネル等化後のキャリヤシンボルを生成し、重み係数制御部が、予め定められたパイロット信号などをIFFTして得られる時間領域信号を参照信号とし、アレー合成のために用いる重み係数を、アレー合成信号と参照信号との間の誤差が最小となるように最適化によって求めるものである。
特許第3759448号公報 特開2005−295506号公報 特開2010−68263号公報
堀智、菊間信良、稲垣直樹、「OFDMにおけるガード区間を利用したMMSEアダプティブアレー」、信学論、J85−B(9):1608−1615、Sep 2002 堀智、菊間信良、稲垣直樹、「ガード区間を超える到来波のみを抑圧する固定受信のためのOFDM用MMSEアダプティブアレー」、信学論、J86−B(9):1934−1940、Sep 2003
従来のアダプティブアレーアンテナ技術またはダイバーシティ受信技術を適用するOFDM信号合成用受信装置は、放送が休止して干渉波のみが送信されている状態で動作しているときに、放送が開始して希望波の送信が始まると、希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きくなった場合であっても、希望波と干渉波のシンボル同期位置またはフレーム同期位置などが一致しているときには、本来受信すべき希望波を抑圧してしまい、干渉波を受信し続けてしまうことがあるという問題があった。
図15は、干渉波のみが送信されている状態におけるOFDM信号合成用受信装置の合成指向特性の例を示す図である。この合成指向特性は、受信アンテナの素子間隔を搬送波周波数における波長の半分の長さとし、干渉波の到来角度を0度とした場合において、放送が休止して干渉波のみが送信されている状態の特性を示している。この場合、OFDM信号合成用受信装置は、干渉波のみを受信している状態で同期を確立し、同期確立状態になっているから、干渉波を希望波とみなして信号を復調してしまう。
この状態で放送が開始し、希望波の送信が始まり、希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きくなった状態を想定する。ただし、希望波の到来角度は90度とする。このような状態では、OFDM信号合成用受信装置は、干渉波を抑圧して希望波を受信することが望ましい。
しかしながら、希望波と干渉波のシンボル同期位置またはフレーム同期位置が一致している場合には、同期ずれが起こらないから、OFDM信号合成用受信装置は、以前から継続して同期が確立しているものと判定し、希望波が到来しているにもかかわらず、干渉波を希望波とみなして信号を復調する。つまり、OFDM信号合成用受信装置は、放送が開始する前からの同期確立状態が継続し、干渉波を受信し続けるべく動作する。したがって、希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きい状態であるにもかかわらず、干渉波を抑圧することができず、希望波を受信することができない。これは、図15に示した合成指向特性の例が示すように、希望波の到来角度(90度)にヌルが形成されているため、希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きい状態であっても、希望波を抑圧してしまい、結果として、干渉波を受信し続けてしまうからである。
ここで、放送が休止して干渉波のみが送信されている状態から、放送が開始して希望波の送信が始まった状態に変化した場合、OFDM信号合成用受信装置は、その状態変化を検知し、同期再生部を初期化すると共に、アレー合成を行うための重み係数を算出する重み係数算出部を初期化することができれば、すなわち、OFDM信号合成用受信装置を電源立上げ状態にすることができれば、前述の問題は解決し、本来受信すべき希望波を抑圧することなく、干渉波を抑圧して希望波を受信することが可能となる。ここで、初期化とは、OFDM信号合成用受信装置の電源立上げ時における同様の処理を行うことをいい、例えば、メモリに記憶されたデータを削除したり、算出結果を用いることなく、予め設定された初期値を用いて最初から算出したりすることをいう。
なお、希望波と干渉波のシンボル同期位置などが一致していない場合には、同期ずれが起こるから、OFDM信号合成用受信装置は、同期が確立していないものと判定し、希望波が反映された新たな同期情報を生成し復調を行うことができる。この場合、希望波は抑圧されることなく、干渉波が抑圧され希望波が受信されるから、前述の問題は生じない。
そこで、本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、本来受信すべき希望波を抑圧し続けることなく、希望波を受信するために干渉波を抑圧することが可能なOFDM信号合成用受信装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数のアレー素子で構成されるアレーアンテナによってOFDM波を受信し、ビット列を出力するOFDM信号合成用受信装置であって、受信したOFDM波の等価ベースバンド信号を、時間領域において重み付けにより合成し、アレー合成信号を生成するアレー合成部と、前記アレー合成部により生成されたアレー合成信号をFFT(Fast Fourier Transform)し、チャネル等化してキャリヤシンボルを生成し、ビット列を出力する復調部と、前記キャリヤシンボルをシンボル再生して得られたキャリヤシンボル、およびチャネル推定により得られた周波数特性に基づいて、時間領域の参照信号を生成し、前記等価ベースバンド信号と前記参照信号との間の相関を示す相互相関ベクトルを生成し、前記アレー合成信号と前記参照信号との間の誤差が最小となるように、前記アレー合成部にて用いる重み係数を算出する重み係数算出部と、前記等価ベースバンド信号に基づいて同期を再生し、同期が確立しているか否かを示す同期確立状態信号を生成する同期再生部と、前記OFDM波の受信信号のD/U(Desired to Undesired signal ratio)を測定するD/U測定部と、前記同期再生部により生成された同期確立状態信号、及び前記D/U測定部により測定されたD/Uに基づいて、前記重み係数算出部および前記同期再生部を初期化する制御部と、を備え、前記D/U測定部が、前記アレー合成部により生成されたアレー合成信号の電力を希望波信号電力として算出する希望波電力算出部、前記重み係数算出部により生成された相互相関ベクトルのノルムを干渉波信号電力として算出するノルム算出部、および、前記希望波信号電力を前記干渉波信号電力で除算してD/Uを求める除算部を備え、前記制御部が、前記同期再生部により生成された同期確立状態信号から同期が確立していることを判定し、前記同期が確立している状態において前記D/U測定部により測定されたD/UのdB値が負であることを判定した場合に、前記重み係数算出部および前記同期再生部を初期化する、ことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のOFDM信号合成用受信装置において、前記D/U測定部が、前記希望波電力算出部の代わりに位相差算出部および補正部を備え、前記位相差算出部が、前記アレー合成の重み付けのための各等価ベースバンド信号に対応した前記重み係数の要素間の位相差を算出し、前記補正部は、前記位相差算出部により算出された位相差に基づいて、所定の関数により希望波信号電力を補正する、ことを特徴とする。
以上のように、本発明によれば、干渉波のみが送信されている状態から、希望波の送信が始まって希望波信号電力が干渉波信号電力よりも大きくなった状態への変化を検出し、重み係数算出部および同期再生部を初期化するようにした。これにより、OFDM信号合成用受信装置は、電源立上げ時と同様に動作するから、重み係数算出部は、予め設定された初期値の希望波受信用重み係数を出力し、そして、受信している希望波および干渉波に応じた新たな重み係数を算出するようになる。また、アレー合成部は、新たな重み係数を用いて、受信している希望波に応じたアレー合成信号を生成するようになる。また、同期再生部は、同期再生処理をリセットし、受信している希望波および干渉波に応じた新たな同期再生を行うようになる。したがって、本来受信すべき希望波を抑圧することなく、希望波を受信するために干渉波を抑圧することが可能となる。
本発明の実施例1によるOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施例2によるOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。 実施例1のD/U算出部の構成を示すブロック図である。 実施例2のD/U算出部の構成を示すブロック図である。 位相差を用いた補正関数の例を示す図である。 復調部の構成を示すブロック図である。 チャネル推定部の構成を示すブロク図である。 チャネル等化部の構成を示すブロック図である。 重み係数算出部の構成を示すブロック図である。 同期再生部の構成を示すブロック図である。 シンボル同期部の構成を示すブロック図である。 シンボル同期部において生成されるインデックスの変遷を説明する図である。 制御部の処理を示すフローチャートである。 (1)は通常時の動作を説明する図である。(2)は希望波停波時(放送休止時)の動作を説明する図である。(3)は希望波送信開始後(放送開始後)の動作(本発明が解決すべき課題)を説明する図である。 干渉波のみが送信されている状態におけるOFDM信号合成用受信装置の合成指向特性の例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する実施例1,2は、受信信号に含まれる希望波成分および干渉波成分のD/U(Desired to Undesired signal ratio:DU比)を測定し、D/UのdB値が負の場合に同期再生部および重み係数算出部を初期化する。D/UのdB値が負の場合は、希望波を抑圧している状態を示しているとして初期化が行われるから、本来受信すべき希望波を抑圧し続けることなく、希望波を受信するために干渉波を抑圧することができる。実施例1は、D/Uを測定する際の干渉波信号電力を、受信信号と参照信号との間の相互相関ベクトルのノルムを用いて算出する。実施例2は、D/Uを測定する際の希望波信号電力を、重み係数の要素間の位相差を用いて算出する。
〔実施例1〕
まず、実施例1によるOFDM信号合成用受信装置の全体構成について説明する。実施例1は、アレー合成信号から算出した希望波信号電力と、受信信号と参照信号との間の相互相関ベクトルのノルムから算出した干渉波信号電力とによってD/Uを測定し、D/UのdB値が負の場合に同期再生部および重み係数算出部を初期化する。
図1は、本発明の実施例1によるOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。このOFDM信号合成用受信装置1は、アンテナ10、周波数変換部11、A/D変換部12、直交復調部13、アレー合成部14、D/U測定部15、復調部16、重み係数算出部17、同期再生部18および制御部19を備えている。周波数変換部11、A/D変換部12および直交復調部13は、アンテナ10のアレー素子と同じ数の構成になっている。
アレー素子数分の周波数変換部11は、アンテナ10を介して受信したOFDM波の信号をIF信号に周波数変換する。アレー素子数分の周波数変換部11が出力するIF信号はそれぞれA/D変換部12へ入力される。アレー素子数分のA/D変換部12は、周波数変換部11から入力されるIF信号をデジタルIF信号にA/D変換する。アレー素子数分のA/D変換部12が出力するデジタルIF信号はそれぞれ直交復調部13に入力される。アレー素子数分の直交復調部13は、A/D変換部12から入力されるデジタルIF信号を直交復調し、等価ベースバンド信号を生成する。アレー素子数分の直交復調部13が出力する等価ベースバンド信号は3分配され、アレー合成部14、重み係数算出部17および同期再生部18へ入力される。
アレー合成部14は、重み係数算出部17から入力される重み係数(干渉波成分を抑圧するための希望波受信用重み係数)を用いて、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を時間領域で合成する。アレー合成部14の出力するアレー合成された等価ベースバンド信号(アレー合成信号)は2分配され、一方がD/U測定部15へ、他方が復調部16へ入力される。
アレー合成部14は、アレー素子数分の乗算部141、加算部142および複素共役部143を備えている。複素共役部143は、重み係数算出部17から入力される重み係数の複素共役値を算出する。複素共役部143の出力する重み係数の複素共役値は、アレー素子数分の乗算部141へ入力される。アレー素子数分の乗算部141は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号に、複素共役部143から入力される重み係数の複素共役値を乗算する。アレー素子数分の乗算部141が出力する、重み係数の複素共役値が乗算された等価ベースバンド信号は加算部142へ入力される。加算部142は、アレー素子数分の乗算部141が出力する、重み係数の複素共役値が乗算された等価ベースバンド信号を加算し、アレー合成された等価ベースバンド信号であるアレー合成信号を生成する。加算部142の出力するアレー合成信号は2分配され、一方がD/U測定部15へ、他方が復調部16へ入力される。アレー合成部14の詳細については後述する。
D/U測定部15は、アレー合成部14から入力されるアレー合成信号、および重み係数算出部17から入力される相互相関ベクトルを用いて、受信信号のD/Uを測定する。D/U測定部15の出力するD/Uは制御部19へ入力される。
D/U測定部15は、希望波電力算出部151およびD/U算出部152を備えている。希望波電力算出部151は、アレー合成部14から入力されるアレー合成信号の電力、すなわち希望波信号電力を算出する。希望波電力算出部151の出力する希望波信号電力はD/U算出部152へ入力される。D/U算出部152は、重み係数算出部17から入力される相互相関ベクトルを用いて干渉波信号電力を算出し、希望波電力算出部151から入力される希望波信号電力、および算出した干渉波信号電力を用いて、受信信号のD/Uを算出する。D/U算出部152の詳細については後述する。
復調部16は、同期再生部18から入力される同期情報を用いて、アレー合成部14から入力されるアレー合成信号をOFDM復調し、ビット列を外部へ出力すると共に、チャネル等化後のキャリヤシンボル、周波数特性およびMER(Modulation Error Ratio:変調誤差比)を算出する。復調部16の出力するキャリヤシンボルおよび周波数特性は重み係数算出部17へ入力され、MERは制御部19へ入力される。復調部16の詳細については後述する。
重み係数算出部17は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号、復調部16から入力されるキャリヤシンボルおよび周波数特性を用いて、相互相間ベクトルおよび重み係数を算出する。また、重み係数算出部17は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、重み係数算出処理をリセットして初期化し、OFDM信号合成用受信装置1の電源立上げ時と同様に、予め設定された初期値の重み係数および相互相関ベクトルを出力する。重み係数算出部17の出力する重み係数はアレー合成部14へ入力される。また、重み係数算出部17の出力する相互相関ベクトルはD/U測定部15へ入力される。重み係数算出部17の詳細については後述する。
同期再生部18は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を用いて同期再生を行い、フレーム、シンボル、クロックのタイミングおよび周波数オフセットを示す同期情報を生成し、同期確立状態または同期非確立状態を示す同期確立状態信号を生成する。また、同期再生部18は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、同期再生処理をリセットして初期化し、OFDM信号合成用受信装置1の電源立上げ時と同様の処理を行う。同期再生部18の出力する同期確立状態信号は制御部19へ入力され、同期情報は復調部16へ入力される。同期再生部18の詳細については後述する。
制御部19は、同期再生部18から入力される同期確立状態信号、D/U測定部15から入力されるD/U、および復調部16から入力されるMERを用いて、予め設定された条件が成り立つか否かを判定し、重み係数算出部17および同期再生部18を初期化するための初期化制御信号を生成する。制御部19の出力する初期化制御信号は、一方が重み係数算出部17へ、他方が同期再生部18へ入力される。制御部19の詳細および予め設定された条件については後述する。
〔実施例2〕
次に、実施例2によるOFDM信号合成用受信装置の全体構成について説明する。実施例2は、重み係数の要素間の位相差から求めた希望波信号電力と、受信信号と参照信号との間の相互相関ベクトルのノルムから算出した干渉波信号電力とによってD/Uを測定し、D/UのdB値が負の場合に同期再生部および重み係数算出部を初期化する。
図2は、本発明の実施例2によるOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。このOFDM信号合成用受信装置2は、図1に示したOFDM信号合成用受信装置1と同様に、アンテナ10、周波数変換部11、A/D変換部12、直交復調部13、アレー合成部14、D/U測定部15、復調部16、重み係数算出部17、同期再生部18および制御部19を備えている。周波数変換部11、A/D変換部12および直交復調部13は、アンテナ10のアレー素子と同じ数の構成になっている。
図1に示したOFDM信号合成用受信装置1と図2に示すOFDM信号合成用受信装置2とを比較すると、両OFDM信号合成用受信装置1,2は同じ構成部を備えている点で同一であるが、D/U測定部15が異なる処理を行う点で相違する。アンテナ10、周波数変換部11、A/D変換部12、直交復調部13、アレー合成部14、復調部16、重み係数算出部17、同期再生部18および制御部19は、図1に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。
アレー合成部14の出力するアレー合成信号は、D/U測定部15へ入力されず、復調部16のみに入力される。また、重み係数算出部17の出力する重み係数は、一方がアレー合成部14へ入力され、他方がD/U測定部15へ入力される。D/U測定部15は、重み係数算出部17から入力される重み係数および相互相関ベクトルを用いて、受信信号のD/Uを測定する。D/U測定部15の出力するD/Uは制御部19へ入力される。
D/U測定部15は、D/U算出部153を備えている。D/U算出部153は、重み係数算出部17から入力される重み係数を用いて希望波信号電力を算出し、重み係数算出部17から入力される相互相関ベクトルを用いて干渉波信号電力を算出する。そして、D/U算出部153は、算出した希望波信号電力および干渉波信号電力を用いて、受信信号のD/Uを算出する。D/U算出部153の出力するD/Uは制御部19へ入力される。D/U算出部153の詳細については後述する。
〔アレー合成部〕
次に、図1および図2に示したアレー合成部14について詳細に説明する。アレー素子数分の直交復調部13が出力する等価ベースバンド信号であるアレー合成信号のベクトルを以下に示す。
Figure 0005473751
ここで、tは時刻、Lはアンテナ10のアレー素子数を示す。また、上付きのTは転置を示す。
重み係数算出部17の出力する重み係数のベクトルを以下に示す。
Figure 0005473751
アレー合成部14は、以下の演算を行い、アレー合成信号を出力する。
Figure 0005473751
ここで、上付きのHは複素共役転置を示す。y(t)は、干渉波が抑圧され希望波成分が抽出されたアレー合成信号である。なお、前記式(3)には、図1および図2に示した複素共役部143による処理が含まれる。
〔D/U算出部/実施例1〕
次に、図1に示した実施例1のD/U算出部152について詳細に説明する。前述のとおり、D/U算出部152は、希望波電力算出部151の出力する希望波信号電力と重み係数算出部17の出力する相互相関ベクトルとを用いて、受信信号のD/Uを算出する。希望波電力算出部151は、以下の式により、希望波信号電力Pを算出する。
Figure 0005473751
ここで、E[・]は期待値演算を示し、y(t)は、アレー合成部14の出力するアレー合成信号を示す。
図3は、D/U算出部152の構成を示すブロック図である。このD/U算出部152は、ノルム算出部154および除算部155を備えている。ノルム算出部154は、以下の式により、重み係数算出部17の出力する相互相関ベクトルrxrから干渉波信号電力Pを算出する。
Figure 0005473751
ここで、Aは正の定数である。
相互相関ベクトルrxrは、次式により与えられる。
Figure 0005473751
ただし、rは、後述する参照信号(後述する重み係数算出部17の説明および図9を参照)を示し、上付きの*は複素共役を示す。また、xは、前記式(1)の、アレー素子数分の直交復調部13が出力する等価ベースバンド信号のベクトルを示す。
除算部155は、受信信号の希望波信号電力Pおよび干渉波信号電力Pの比であるD/Uを算出する。D/UのdB値であるΓは以下のとおりである。
Figure 0005473751
〔D/U算出部/実施例2〕
次に、図2に示した実施例2のD/U算出部153について詳細に説明する。前述のとおり、D/U算出部153は、重み係数算出部17の出力する重み係数から希望波信号電力を算出し、重み係数算出部17の出力する相互相関ベクトルから干渉波信号電力を算出し、受信信号のD/Uを算出する。
図4は、D/U算出部153の構成を示すブロック図である。このD/U算出部153は、ノルム算出部154、除算部155、位相差算出部156および補正部157を備えている。位相差算出部156は、以下の式により、重み係数算出部17の出力する重み係数の要素間の位相差φを算出する。
Figure 0005473751
補正部157は、以下の演算を行い、位相差算出部156の出力する位相差に基づいて希望波信号電力を補正し、希望波信号電力Pを求める。すなわち、位相差と希望波信号電力Pとの間の関係を示した以下の補正関数を用いて、位相差から希望波信号電力Pを演算する。
Figure 0005473751
ここで、Z(・)は、位相差φと希望波信号電力Pとの間の関係を示す補正関数である。
図5は、位相差を用いた補正関数の例を示す図である。この補正関数の特性は、実測により得られるものである。図5において、位相差φが所定値よりも大きい範囲では、Z(φ)の値は一定である。これに対し、位相差φが所定値以下の範囲では、位相差φが小さくなるに従ってZ(φ)の値も小さくなっている。一般に、重み係数の位相差φが小さい場合、重み係数算出部17はアレー合成信号と参照信号との間の誤差を最小化する重み係数を算出するので、希望波成分が抑圧されることを犠牲にしてでも、より干渉波成分を抑圧するような重み係数を算出することがある。このとき、アレー合成部14の出力するアレー合成信号は、干渉波成分が抑圧されると同時に、希望波成分も抑圧された信号となり、希望波信号電力Pが小さくなる。そこで、図5に示したように、このような干渉波成分の影響を受けて希望波成分が抑圧される度合いを補正関数に反映する。補正部157は、この補正関数を用いることにより、位相差φが小さい場合、希望波信号電力Pを小さい値に補正することができる。
ノルム算出部154は、図3に示したD/U算出部152のノルム算出部154と同様に、希望波信号電力Pを算出する。また、除算部155も、図3に示したD/U算出部152の除算部155と同様に、受信信号の希望波信号電力Pおよび干渉波信号電力Pの比であるD/Uを算出する。
〔復調部〕
次に、図1および図2に示した復調部16について詳細に説明する。図6は、復調部16の構成を示すブロック図である。この復調部16は、GI除去部161、FFT部162、チャネル推定部163、チャネル等化部164、シンボル再生部169、パラレルシリアル変換部166およびMER算出部168を備えている。復調部16は、同期再生部18から入力される同期情報に基づいて、各種の処理を行う。
GI除去部161は、アレー合成部14から入力されるアレー合成信号からGIを除去し、有効シンボル期間に相当する時間のアレー合成信号を抽出する。GI除去部161の出力する、有効シンボル期間におけるアレー合成信号はFFT部162へ入力される。
FFT部162は、GI除去部161の出力する有効シンボル期間におけるアレー合成信号を、FFTにより周波数領域の信号であるキャリヤシンボルに変換する。FFT部162の出力するキャリヤシンボルは2分配され、一方がチャネル推定部163へ、他方がチャネル等化部164へ入力される。
チャネル推定部163は、FFT部162の出力するキャリヤシンボルから周波数特性(チャネル応答)を推定する。チャネル推定部163の出力する周波数特性は2分配され、一方がチャネル等化部164へ、他方が重み係数算出部17へ入力される。チャネル推定部163の詳細については後述する。
チャネル等化部164は、FFT部162から入力されるキャリヤシンボルを、チャネル推定部163から入力される周波数特性で除算することにより、チャネル等化を行う。チャネル等化部164の出力するチャネル等化後のキャリヤシンボルは3分配され、シンボル再生部169、MER算出部168および重み係数算出部17へ入力される。
ここで、チャネル等化部164は、チャネル等化後のキャリヤシンボルを重み係数算出部17へ出力するようにしたが、後述するシンボル再生部169が、シンボル再生後のキャリヤシンボルを重み係数算出部17へ出力するようにしてもよい。この場合、後述する図9に示す重み係数算出部17は、シンボル再生部173を備える必要はない。
シンボル再生部169は、デマッピング部165および再マッピング部167を備えている。デマッピング部165は、チャネル等化部164の出力するチャネル等化後のキャリヤシンボルをデマッピングし、パラレル信号に変換する。デマッピング部165の出力するパラレル信号は2分配され、一方がパラレルシリアル変換部166へ、他方が再マッピング部167へ入力される。
再マッピング部167は、デマッピング部165から入力されるパラレル信号を再マッピングし、シンボル再生後のキャリヤシンボルを生成する。再マッピング部167の出力するシンボル再生後のキャリヤシンボルはMER算出部168へ入力される。シンボル再生部169の詳細については後述する。
MER算出部168は、チャネル等化部164から入力されるチャネル等化後のキャリヤシンボルと、再マッピング部167から入力されるシンボル再生後のキャリヤシンボルとを用いて、MERを算出する。MER算出部168の出力するMERは制御部19へ入力される。MER算出部168の詳細については後述する。
パラレルシリアル変換部166は、デマッピング部165から入力されるパラレル信号をシリアル信号に変換し、ビット列を外部へ出力する。
(チャネル推定部)
次に、図6に示したチャネル推定部163について詳細に説明する。図7は、チャネル推定部163の構成を示すブロック図である。このチャネル推定部163は、パイロット抽出部201、パイロット生成部202、除算部203および補間部204を備えている。
パイロット抽出部201は、FFT部162から入力されるキャリヤシンボルのうち、予め決められたシンボル番号およびサブキャリヤ番号のキャリヤシンボルとして伝送されたパイロット信号を抽出する。パイロット抽出部201の出力するパイロット信号は、受信パイロット信号として除算部203へ入力される。
パイロット生成部202は、予め決められた振幅および位相を持つパイロット信号を生成する。パイロット生成部202が出力するパイロット信号は、送信パイロット信号として除算部203へ入力される。
除算部203は、パイロット抽出部201から入力される受信パイロット信号を、パイロット生成部202から入力される送信パイロット信号で除算し、パイロット信号が伝送されるシンボルおよびサブキャリヤにおける周波数特性を求める。除算部203が出力する周波数特性は補間部204へ入力される。
補間部204は、除算部203から入力される、パイロット信号が伝送されるシンボルおよびサブキャリヤにおける周波数特性を、シンボル方向およびサブキャリヤ方向に補間し、OFDM信号の全サブキャリヤにおける周波数特性を算出する。
ISDB−T方式において、パイロット信号であるSP(Scattered Pilot)に割り当てられたサブキャリヤは、シンボル番号をi、サブキャリヤ番号をkとすると、以下の式を満たす。
Figure 0005473751
ただし、modは剰余を示す。以下、前記式(10)を満足させるi,kをそれぞれi,kとする。
ここで、図7に示したパイロット抽出部201をSP抽出部とし、パイロット生成部202をSP生成部とする。SP抽出部により抽出される受信SP信号をXip,kpとし、SP生成部により生成されるSP信号、すなわち、送信側のISDB−T変調器において生成されて送信されるSP信号(送信SP信号)をSip,kpとすると、シンボル番号i、サブキャリヤ番号kにおける周波数特性Uip,kpは、以下の式で表される。
Figure 0005473751
ここでは、ISDB−T方式で採用されているSP信号を基準信号とし、周波数特性を算出する方法を説明したが、振幅および位相が既知の信号であって、受信側において生成可能なシンボルであれば同様に、周波数特性を算出するための基準信号として利用することができる。すなわち、本発明は、周波数特性を算出するにあたり、基準信号としてSP信号を用いることに限定されるものではない。
ところで、SP信号を用いて周波数特性を算出する場合、全てのシンボルおよびサブキャリヤにおける周波数特性を直接算出することができない。全てのシンボルおよびサブキャリヤにおける周波数特性を算出するためには、シンボルおよびサブキャリヤ方向に補間処理を行う必要がある。
補間部204が行うシンボル方向の補間には、例えば最新値保持法または線形補間法を用いることができる。最新値保持法を用いる場合、以下の式により補間処理を行う。
Figure 0005473751
また、線形補間法を用いる場合、以下の式により補間処理を行う。
Figure 0005473751
一方、サブキャリヤ方向の補間には、例えば線形補間法を用いることができ、以下の式により補間処理を行う。
Figure 0005473751
(チャネル等化部)
次に、図6に示したチャネル等化部164について詳細に説明する。図8は、チャネル等化部164の構成を示すブロック図である。このチャネル等化部164は、除算部211を備えている。
除算部211は、以下の式のように、FFT部162から入力されるキャリヤシンボルXを、チャネル推定部163から入力される周波数特性Uで除算し、チャネル等化を行う。
Figure 0005473751
ここで、Zはチャネル等化後のキャリヤシンボルを示す。
(シンボル再生部)
次に、図6に示したシンボル再生部169のデマッピング部165および再マッピング部167について詳細に説明する。
デマッピング部165は、チャネル等化部164から入力されるチャネル等化後のキャリヤシンボルから、送信されたキャリヤシンボルを推定し、複数ビットからなるパラレル信号を取り出す。再マッピング部167は、デマッピング部165から入力されるパラレル信号(複数ビットからなるパラレル信号)をキャリヤ変調し、キャリヤシンボルを再生する。ここで、前記式(15)は、以下の式で表すことができる。
Figure 0005473751
ただし、Tは送信キャリヤシンボル、Nは雑音成分を示す。
したがって、雑音成分Nが十分小さい場合は、以下の式で表すことができる。
Figure 0005473751
ここで、decはマッピングおよび再マッピングを示す関数であり、具体的には、与えられたキャリヤシンボルとの間のノルムが最も小さい送信キャリヤシンボルを返す関数である。これにより、シンボル再生部169は、チャネル等化後のキャリヤシンボルをデマッピング部165にてデマッピングし、再マッピング部167にて再マッピングすることにより、送信キャリヤシンボルを得ることができる。
(MER算出部)
次に、図6に示したMER算出部168について詳細に説明する。MER算出部168は、チャネル等化部164から入力されるチャネル等化後のキャリヤシンボルZと、再マッピング部167から入力されるシンボル再生後のキャリヤシンボルDとを用いて、以下の式で定義されるMERを算出する。
Figure 0005473751
ここで、Kは全サブキャリヤ数を示す。なお、MERの詳細については、下記の非特許文献を参照されたい。
ETR 290:Measurement guidelines for DVB Systems, ETSI Technical Report, may 1997
〔重み係数算出部〕
次に、図1および図2に示した重み係数算出部17について詳細に説明する。前述のとおり、重み係数算出部17は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号、復調部16から入力されるキャリヤシンボルおよび周波数特性を用いて、相互相間ベクトルおよび重み係数を算出し、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、重み係数算出処理をリセットして初期化する。
図9は、重み係数算出部17の構成を示すブロック図である。この重み係数算出部17は、自己相関行列算出部171、逆行列算出部172、シンボル再生部173、パイロット挿入部174、乗算部175、OFDM再変調部176、相互相関ベクトル算出部177および乗算部178を備えている。
自己相関行列算出部171は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を用いて、自己相関行列を算出する。自己相関行列算出部171の出力する自己相関行列は逆行列算出部172に入力される。逆行列算出部172は、自己相関行列算出部171から入力される自己相関行列の逆行列を算出する。逆行列算出部172の出力する自己相関行列の逆行列は乗算部178へ入力される。自己相関行列および逆行列の詳細については後述する。
シンボル再生部173は、復調部16から入力されるチャネル等化後のキャリヤシンボルをデマッピングしてパラレル信号に変換し、変換したパラレル信号を再マッピングし、シンボル再生後のキャリヤシンボルを生成する。シンボル再生部173の出力するシンボル再生後のキャリヤシンボルはパイロット挿入部174へ入力される。ここで、シンボル再生部173は、図6に示した復調部16のシンボル再生部169と同様の処理を行うから、詳細については省略する。
パイロット挿入部174は、シンボル再生部173から入力されるキャリヤシンボルに、既知のパイロット信号を挿入して新たなキャリヤシンボルを生成する。具体的には、キャリヤシンボルのうちパイロット信号に割り当てられたキャリヤシンボルを、既知のパイロット信号のキャリヤシンボルに置き換える。パイロット挿入部174の出力する新たなキャリヤシンボルは、乗算部175へ入力される。
乗算部175は、パイロット挿入部174から入力される新たなキャリヤシンボルに、復調部16から入力される周波数特性を乗算する。乗算部175の出力するキャリヤシンボルは、周波数領域の参照信号としてOFDM再変調部176へ入力される。
乗算部175の出力する周波数領域の参照信号は、周波数特性を用いて算出された信号であり、重み係数は、後述するように、この参照信号を用いて算出される。重み係数算出部17は、希望波のマルチパスが受信される環境においても、アレー合成部14によって干渉波を除去することが可能な重み係数を算出することができる。干渉波はアレー合成部14によって除去され、マルチパスによる周波数特性歪みは復調部16のチャネル等化部164によって等化される。これにより、OFDM信号合成用受信装置1,2は、OFDM信号を良好に受信することができる。
OFDM再変調部176は、乗算部175から入力される周波数領域の参照信号をIFFTし、時間領域の参照信号にOFDM再変調する。OFDM再変調部176の出力する時間領域の参照信号は相互相関ベクトル算出部177へ入力される。参照信号の詳細については後述する。
相互相関ベクトル算出部177は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号と、OFDM再変調部176から入力される参照信号とを用いて、相互相関ベクトルを算出する。相互相関ベクトル算出部176の出力する相互相関ベクトルは乗算部178へ入力される。相互相関ベクトルの詳細については後述する。
乗算部178は、逆行列算出部172から入力される自己相関行列の逆行列に、相互相関ベクトル算出部177から入力される相互相関ベクトルを乗算し、重み係数を算出する。乗算部178の出力する重み係数は、実施例1においてアレー合成部14へ入力され、実施例2において一方がアレー合成部14へ入力され、他方がD/U測定部15へ入力される。
(参照信号)
次に、図9に示したOFDM再変調部176により生成される参照信号の詳細について説明する。OFDM再変調部176は、乗算部175から入力される周波数領域の参照信号を、IFFTにより時間領域の参照信号に変換する。OFDM再変調部176は、以下の式に示す処理を行う。
Figure 0005473751
ここで、R,R,・・・,RK−1は周波数領域の参照信号を示し、r(t)は時間領域の参照信号を示す。
(自己相関行列、逆行列、相互相関ベクトル、重み係数)
次に、自己相関行列算出部171により算出される自己相関行列、逆行列算出部172により算出される自己相関行列の逆行列、相互相関ベクトル算出部177により算出される相互相関ベクトル、および乗算部178により算出される重み係数について詳細に説明する。
アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号の入力信号ベクトルを以下の式に示す。
Figure 0005473751
また、アレー合成された信号を以下の式に示す。
Figure 0005473751
重み係数算出部17は、前記式(21)に示すアレー合成された信号y(t)と参照信号r(t)との間の自乗誤差が最小となるように、重み係数を最適化する。
自乗誤差は、以下の式により定義される。
Figure 0005473751
ここで、E[・]は期待値演算を示す。
前記式(22)の自乗誤差を最小にする重み係数woptは、以下の式で表される。
Figure 0005473751
ここで、Rxxはx(t)の自己相関行列を示し、rxrはx(t)とr(t)の相互相関ベクトルを示す。
ここで、自己相関行列および相互相関ベクトルをそれぞれ以下の式で表し、
Figure 0005473751
Figure 0005473751
重み係数の更新間隔を例えば1シンボル間隔として、処理を行う。ただし、上付きの*は複素共役を示す。
すなわち、自己相関行列算出部171は、等価ベースバンド信号の入力信号ベクトルx(t)を用いて、以下の式(26)の処理を行い、自己相間行列Rxx(n)を算出する。また、相互相関ベクトル算出部177は、等価ベースバンド信号の入力信号ベクトルx(t)および参照信号r(t)を用いて、以下の式(27)の処理を行い、相互相関ベクトルrxr(n)を算出する。
Figure 0005473751
Figure 0005473751
ここで、nは、重み係数の更新時間を示す。また、λは、0≦λ<1を満たす適応係数を示し、忘却係数と呼ばれる。さらに、前記式(26)および(27)における右辺の第2項の期待値演算は、重み係数の更新間隔、例えば1シンボルのうちで有効シンボル期間に相当する期間における期待値を示す。
逆行列算出部172は、自己相関行列算出部171により算出された自己相間行列Rxx(n)の逆行列Rxx −1(n)を算出する。乗算部178は、逆行列算出部172により算出された逆行列Rxx −1(n)と、相互相関ベクトル算出部177により算出された相互相関ベクトルrxr(n)とを乗算し、重み係数w(n)を求める。したがって、重み係数算出部17は、重み係数w(n)を、以下の式により求めることができる。
Figure 0005473751
〔同期再生部〕
次に、図1および図2に示した同期再生部18について詳細に説明する。図10は、同期再生部18の構成を示すブロック図である。この同期再生部18は、シンボル同期部181、フレーム同期部182、クロック同期部183、周波数同期部184および同期確立状態生成部185を備えている。
シンボル同期部181は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を用いて、シンボルの同期再生処理を行い、シンボル同期位置を示すインデックスの同期情報を生成し、同期が確立しているときは同期が確立していることを示す状態信号を、同期が確立していないときは同期が確立していないことを示す状態信号を生成する。シンボル同期部181の出力する同期情報(シンボル同期位置のインデックス)は復調部16へ入力され、状態信号は同期確立状態生成部185へ入力される。また、シンボル同期部181は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、シンボルの同期再生処理をリセットし、OFDM信号合成用受信装置1,2の電源立上げ時と同様の初期化処理を行う。シンボル同期部181の詳細については後述する。
フレーム同期部182は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を用いて、フレームの同期再生処理を行い、フレーム同期位置を示すインデックスの同期情報を生成し、同期が確立しているときは同期が確立していることを示す状態信号を、同期が確立していないときは同期が確立していないことを示す状態信号を生成する。フレーム同期部182の出力する同期情報(フレーム同期位置のインデックス)は復調部16へ入力され、状態信号は同期確立状態生成部185へ入力される。また、フレーム同期部182は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、フレームの同期再生処理をリセットし、OFDM信号合成用受信装置1,2の電源立上げ時と同様の初期化処理を行う。
クロック同期部183は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を用いて、クロックの同期再生処理を行い、図示しない発振器へのクロック制御情報を生成し、同期が確立しているときは同期が確立していることを示す状態信号を、同期が確立していないときは同期が確立していないことを示す状態信号を生成する。クロック同期部183の出力するクロック制御情報は図示しない発振器へ入力され、状態信号は同期確立状態生成部185へ入力される。また、クロック同期部183は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、クロックの同期再生処理をリセットし、OFDM信号合成用受信装置1,2の電源立上げ時と同様の初期化処理を行う。
周波数同期部184は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を用いて、周波数の同期再生処理を行い、等価ベースバンド信号の周波数オフセットを生成し、同期が確立しているときは同期が確立していることを示す状態信号を、同期が確立していないときは同期が確立していないことを示す状態信号を生成する。周波数同期部184の出力する周波数オフセットは同期情報として復調部16へ入力され、状態信号は同期確立状態生成部185へ入力される。また、周波数同期部184は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、周波数の同期再生処理をリセットし、OFDM信号合成用受信装置1,2の電源立上げ時と同様の初期化処理を行う。
同期確立状態生成部185は、シンボル同期部181、フレーム同期部182、クロック同期部183および周波数同期部184からそれぞれ入力される状態信号に基づいて、同期確立状態信号を生成する。具体的には、同期確立状態生成部185は、入力された全ての状態信号が、同期が確立していることを示している場合、同期確立状態であることを示す同期確立状態信号を生成する。また、入力された状態信号のうちの少なくとも1つの状態信号が、同期が確立していないことを示している場合、同期非確立状態であることを示す同期確立状態信号を生成する。同期確立状態生成部185の出力する同期確立状態信号は制御部19へ入力される。
(シンボル同期部)
次に、図10に示したシンボル同期部181の詳細について説明する。図11は、シンボル同期部181の構成を示すブロック図である。このシンボル同期部181は、遅延部186、複素共役部187、乗算部188、移動平均フィルタ189、絶対値算出部190、最大値検出部191およびインデックス生成部192を備えている。
遅延部186は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号に対し、有効シンボル長分の遅延処理を行う。遅延部186の出力する、遅延した等価ベースバンド信号は複素共役部187へ入力される。また、遅延部186は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、遅延処理をリセットして初期化する。複素共役部187は、遅延部186から入力される、遅延した等価ベースバンド信号の複素共役値を求める。複素共役部187の出力する、有効シンボル長分遅延した等価ベースバンド信号の複素共役値は乗算部188へ入力される。
乗算部188は、アレー素子数分の直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号に、複素共役部187から入力される、有効シンボル長分遅延した等価ベースバンド信号の複素共役値を乗算する。乗算部188の出力する乗算結果は移動平均フィルタ189へ入力される。移動平均フィルタ189は、乗算部188から入力される乗算結果にGI長分の移動平均フィルタ処理を施し、移動平均値を算出する。また、移動平均フィルタ189は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、移動平均フィルタ処理をリセットして初期化する。移動平均フィルタ189の出力する移動平均値は絶対値算出部190へ入力される。
絶対値算出部190は、移動平均フィルタ189から入力される移動平均値の絶対値を算出し、振幅値を求める。絶対値算出部190の出力する振幅値は最大値検出部191へ入力される。最大値検出部191は、絶対値算出部190により入力される振幅値について、時間軸上における所定の1シンボル期間のポイント数についての振幅値に対し、その最大値を検出し、その最大値の振幅を有するポイント番号をインデックスとして生成する。また、最大値検出部191は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、最大値検出処理をリセットして初期化する。最大値検出部191の出力するインデックスはインデックス生成部192へ入力される。
インデックス生成部192は、最大値検出部191から入力される、最大値の振幅を有するインデックスを用いて、同期が確立しているか否かを判定して状態信号を生成し、インデックスの同期情報(シンボル)を生成する。また、インデックス生成部192は、制御部19から入力される初期化制御信号に基づいて、インデックス生成処理をリセットして初期化する。インデックス生成部192の生成する同期情報(シンボル)は復調部16へ入力され、状態信号は同期確立状態生成部185へ入力される。
図12は、シンボル同期部181の最大値検出部191により生成され、インデックス生成部192へ入力されるインデックスの変遷を説明する図である。横軸が時間、縦軸がポイント番号のインデックスを示す。インデックス生成部192は、図12に示すように変遷するインデックスを入力する。インデックスi1の同期確立状態において、インデックスi1からインデックスi2,i3への変遷に対し、インデックスi2,i3は所定期間内で瞬時的に変遷したインデックスであると判定して無視し、インデックスi1の同期情報を出力し続ける。また、インデックスi1からi4への変遷に対し、インデックスi4は瞬時的に変遷したインデックスでないと判定し、同期が確立していないことを示す状態信号を生成して出力する。これにより、同期非確立状態となる。そして、インデックス生成部192は、所定期間内でインデックスi4の変化がない場合、インデックスi4の同期情報を生成して出力し、同期が確立していることを示す状態信号を生成して出力する。これにより、同期確立状態となる。このように、インデックス生成部192は、最大値検出部191から入力されるインデックスの所定期間内における変遷に基づいて、同期が確立していることを示す状態信号、または同期が確立していないことを示す状態信号を生成し、同期が確立しているときのインデックスを同期情報として出力する。
なお、ここではシンボル同期部181の詳細についてのみ説明したが、フレーム同期部182、クロック同期部183および周波数同期部184についても、シンボル同期部181と同様の同期再生処理を行い、同期情報および状態信号を生成し、初期化制御信号に基づいて、同期再生処理をリセットして初期化する。
〔制御部〕
次に、図1および図2に示した制御部19について詳細に説明する。図13は、制御部19の処理を示すフローチャートである。制御部19は、以下の(a)〜(c)のいずれかの場合に、初期化制御信号を生成し、重み係数算出部17および同期再生部18をリセットして初期化する。
(a)同期再生部18により生成された同期確立状態信号から判断される、同期が確立していない状態(非確立状態)が所定時間継続した場合
(b)同期確立状態において、D/U測定部15により測定されたD/UのdB値が、所定期間の間、負(干渉波信号電力が希望波信号電力よりも大きい状態:D/Uの真値が1以下)である場合
(c)同期確立状態において、復調部16により算出されたMERが、所定期間の間、所定値未満の場合
ここで、放送が休止して干渉波のみが送信されている状態から、放送が開始して希望波の送信が始まり、希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きくなった状態へ変化した場合、OFDM信号合成用受信装置1,2は、本来受信すべき希望波を抑圧してしまい、結果として、干渉波を受信し続けてしまう場合がある(発明が解決しようとする課題の欄を参照)。この場合、前記(b)の状態となる。制御部19は、(b)の状態を判定することにより、すなわち、本来受信すべき希望波が抑圧されている状態を検出することにより、初期化制御信号を生成し、重み係数算出部17および同期再生部18をリセットして初期化する。これにより、同期再生部18は、受信している希望波および干渉波に応じて新たな同期情報を生成し、重み係数算出部17は、予め設定された初期値の希望波受信用重み係数を出力し、復調部16は、同期再生部18により生成された同期情報に基づいて、受信している希望波および干渉波に応じた新たなキャリヤシンボルおよび周波数特性を算出する。そして、重み係数算出部17は、受信している希望波および干渉波の等価ベースバンド信号、並びに新たなキャリヤシンボルおよび周波数特性に基づいて、新たな重み係数を算出し、アレー合成部14は、受信している希望波が反映されたアレー合成信号を生成する。つまり、本来受信すべき希望波を抑圧し続けることなく、希望波を受信するために干渉波を抑圧することが可能となる。
図13を参照して、制御部19は、同期再生部18から同期確立状態信号を入力し、同期確立状態信号が同期非確立状態を示しているか、または同期確立状態を示しているかを判定する(ステップS1001)。同期非確立状態を示していると判定した場合(ステップS1001:同期非確立)、非確立状態の同期確立状態信号を継続して入力したまま、所定時間経過したか否かを判定する(ステップS1002)。所定時間経過したことを判定した場合(ステップS1002:Y、前記(a))、初期化制御信号を生成し、重み係数算出部17および同期再生部18に出力し(ステップS1005)、ステップS1001へ移行する。一方、所定時間経過していないと判定した場合(ステップS1002:N)、ステップS1001へ移行する。
制御部19は、ステップS1001において、同期確立状態信号が同期確立状態を示していると判定した場合(ステップS1001:同期確立)、D/U測定部15から入力されるD/UのdB値と0とを比較し、D/UのdB値が所定期間の間負であるか否かを判定する(ステップS1003)。D/UのdB値が負であると判定した場合(ステップS1003:Y、前記(b))、すなわち、前記(b)のとおり、同期確立状態において干渉波の受信電力が希望波の受信電力よりも大きい場合(本来受信すべき希望波が抑圧されている状態の場合)、初期化制御信号を生成し、重み係数算出部17および同期再生部18に出力し(ステップS1005)、ステップS1001へ移行する。
制御部19は、ステップS1003において、D/UのdB値が負でないと判定した場合(ステップS1003:N)、復調部16から入力されるMERと予め設定された所定値とを比較し、MERが所定期間の間、所定値未満であるか否かを判定し(ステップS1004)、所定値未満であると判定した場合(ステップS1004:Y、前記(c))、初期化制御信号を生成し、重み係数算出部17および同期再生部18に出力し(ステップS1005)、ステップS1001へ移行する。所定値未満でないと判定した場合(ステップS1004:N)、ステップS1001へ移行する。
このように、制御部19は、前記(a)〜(c)を判定し、初期化制御信号を生成し、重み係数算出部17および同期再生部18をリセットして初期化する。特に、制御部19は、同期再生部18からの同期確立状態信号およびD/U測定部15からのD/Uに基づいて、同期確立状態におけるD/UのdB値が負である状態を判定することにより、放送が休止して干渉波のみが送信されている状態から、放送が開始して希望波の送信が始まり、希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きくなった場合、本来受信すべき希望波が抑圧されている状態を検知する。そして、制御部19は、初期化制御信号を生成して重み係数算出部17および同期再生部18をリセットして初期化する。これにより、到来する希望波および干渉波に応じて重み係数が算出され、アレー合成信号が生成される。したがって、本来受信すべき希望波を抑圧し続けることなく、希望波を受信するために干渉波を抑圧することが可能となる。
〔OFDM信号合成用受信装置の動作〕
次に、OFDM信号合成用受信装置1,2の動作について説明する。図14(1)は通常時の動作を説明する図であり、図14(2)は希望波停波時(放送休止時)の動作を説明する図であり、図14(3)は希望波送信開始後(放送開始後)の動作(本発明が解決すべき課題)を説明する図である。
図14(1)において、放送が開始している通常時には、OFDM信号合成用受信装置1,2の受信信号は、希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きくなっている。アレー合成部14により出力されたアレー合成信号の受信電力は、干渉波が抑圧されて希望波が反映された電力となる。したがって、OFDM信号合成用受信装置1,2は、希望波の信号を復調するから、正常に動作していることになる。
この場合、図3に示した希望波電力算出部151、または図4に示した位相差算出部156および補正部157により算出される希望波信号電力Pは、ノルム算出部154により算出される干渉波信号電力P以上となる。そして、制御部19は、図13に示したステップS1001(同期確立)、ステップS1003(D/U:負、N)、ステップS1004(MER<所定値、N)の処理により、初期化制御信号を出力しない。これは、希望波信号電力Pは、希望波が反映された受信信号の電力であり、干渉波信号電力Pを算出するための相互相関ベクトルは、希望波が反映された参照信号に基づいており、干渉波信号電力Pは、前記式(5)により、希望波が反映された相互相関ベクトルの絶対値の2乗に反比例した値になって、希望波が反映された希望波信号電力Pよりも小さくなり、D/UのdB値が負にならないからである。
また、図14(2)において、放送が休止している希望波停波時には、OFDM信号合成用受信装置1,2の受信信号は、干渉波のみになっている。OFDM信号合成用受信装置1,2はOFDM信号を受信する装置であるから、アレー合成部14により出力されるアレー合成信号の受信電力は、干渉波を希望波とみなした電力となる。
この場合、希望波電力算出部151、または位相差算出部156および補正部157により算出される希望波信号電力Pは(実際は干渉波の電力)、ノルム算出部154により算出される干渉波信号電力P以上となる。そして、制御部19は、図13に示したステップS1001(同期確立)、ステップS1003(D/U:負、N)、ステップS1004(MER<所定値、N)の処理により、初期化制御信号を出力しない。これは、希望波信号電力Pは、干渉波が反映された電力であり、干渉波信号電力Pを算出するための相互相関ベクトルは、干渉波が反映された参照信号に基づいており、干渉波信号電力Pは、前記式(5)により、干渉波が反映された相互相関ベクトルの絶対値の2乗に反比例した値であって、干渉波が反映された希望波信号電力Pよりも小さくなり、D/UのdB値が負にならないからである。
そして、図14(3)において、図14(2)の状態から放送が開始し希望波送信開始後には、図14(1)と同様に、OFDM信号合成用受信装置1,2の受信信号は、希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きくなっている。前述したとおり、希望波と干渉波のシンボル同期位置またはフレーム同期位置などが一致しているときには、従来のOFDM信号合成用受信装置は、以前から継続して同期が確立しているものと判定し、干渉波を希望波とみなして信号を復調する。つまり、従来のOFDM信号合成用受信装置は、放送が開始する前からの同期確立状態が継続し、本来受信すべき希望波を抑圧してしまい、干渉波を受信し続けてしまう。
図1および図2に示したOFDM信号合成用受信装置1,2において、重み係数算出部17および同期再生部18が初期化されない場合には(従来のOFDM信号合成用受信装置において)、アレー合成部14により出力されるアレー合成信号の受信電力は、希望波が抑圧されて干渉波が反映された電力となる。つまり、従来のOFDM信号合成用受信装置は、干渉波の信号を復調するから、正常に動作しないことになる。
これに対し、図1に示した本発明の実施例1によるOFDM信号合成用受信装置1および図2に示した本発明の実施例2によるOFDM信号合成用受信装置2は、図14(2)の状態から図14(3)の状態に変化した場合、この変化を、図13に示したステップS1001およびステップS1003の処理によって検出する。すなわち、同期確立状態において、D/U測定部15により測定されたD/UのdB値が、所定期間の間、負である状態(干渉波信号電力が希望波信号電力よりも大きい状態)を検出する。そして、初期化制御信号を生成し、重み係数算出部17および同期再生部18をリセットして初期化する。これにより、OFDM信号合成用受信装置1,2は、図14(1)に示した通常時の動作のとおり、本来受信すべき希望波を抑圧し続けることなく、希望波を受信するために干渉波を抑圧することができる。
(希望波停波時の状態から希望波送信開始後の状態に変化した場合の動作)
以下、図14(2)の希望波停波時の状態から図14(3)の希望波送信開始後の状態に変化した場合について、OFDM信号合成用受信装置1,2の動作を説明する。OFDM信号合成用受信装置1,2の受信信号のうち、希望波の信号をD、干渉波の信号をUとし、直交復調部13により出力される等価ベースバンド信号をD+Uとする。図9に示した相互相関ベクトル算出部177により算出される相互相関ベクトルrxrは、受信信号(等価ベースバンド信号)D+U、参照信号rの複素共役rとして、rxr=(D+U)・r=D・r+U・rである。
図14(2)の希望波停波時の状態では、希望波D=0であり、干渉波Uが希望波とみなされるから、参照信号rは干渉波Uが反映された信号となる。つまり、参照信号r=Uとなり、相互相関ベクトルrxr=D・r+U・r=0・U+U・Uとなる。そして、図14(2)の希望波停波時の状態から図14(3)の希望波送信開始後の状態に変化した場合には、参照信号rは、図14(2)の状態が反映されてr=Uのままであるから、相互相関ベクトルrxr=D・r+U・r=D・U+U・Uとなる。
ここで、図14(2)の状態の相互相関ベクトルはrxr=0・U+U・U、図14(3)の状態の相互相関ベクトルrxr=D・U+U・Uである。異なる信号間での相関値が統計的にゼロであるとすると、図14(3)の相互相関ベクトルはrxr=U・Uとなり、式としては図14(2)の状態と図14(3)の状態の相互相関ベクトルの大きさは一致する。しかし、入力段で自動利得制御が効いているため、図14(2)のUと図14(3)のDの大きさは同じとみなすことができる。また、図14(3)においてD>>Uである。この場合、図14(2)のUの大きさと図14(3)のUの大きさを比較すると、後者のUの方が小さくなる。したがって、図14(2)におけるrxr=U・Uと図14(3)におけるrxr=U・Uを比較すると、相互相関ベクトルrxrの絶対値は、図14(3)の方が小さくなり、干渉波信号電力Pは、図14(3)の方が大きくなる。
このとき、希望波および干渉波が反映された干渉波信号電力Pは、干渉波が反映された希望波信号電力Pよりも大きくなり、D/UのdB値が負になる。したがって、制御部19は、図13に示したステップS1001(同期確立)、ステップS1003(D/U:負、Y)、ステップS1005の処理により、初期化制御信号を出力する。
このように、図14(2)の希望波停波時の状態から図14(3)の希望波送信開始後の状態に変化すると、制御部19は、重み係数算出部17および同期再生部18に初期化制御信号を出力し、重み係数算出部17および同期再生部18を初期化する。これにより、希望波が反映された重み係数によりアレー合成され、参照信号rは、図14(1)の状態のようにr=Dとなり、相互相関ベクトルrxr=D・r+U・r=D・D+U・Dとなる。そして、希望波信号電力Pは干渉波信号電力Pよりも小さくなり、D/UのdB値は0以上になる。
このように、図14(2)の希望波停波時の状態から図14(3)の希望波送信開始後の状態に変化し、重み係数算出部17および同期再生部18が初期化されると、図14(1)の通常時の動作に戻る。したがって、OFDM信号合成用受信装置1,2のアレー合成部14により出力されるアレー合成信号の受信電力は、干渉波が抑圧されて希望波が反映された電力となり、OFDM信号合成用受信装置1,2は、希望波の信号を復調して正常に動作することになる。
以上のように、図1および図2に示した本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置1,2によれば、制御部19は、干渉波のみが送信されている状態から、希望波の送信が始まって希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きくなった状態への変化を検出するようにした。具体的には、制御部19は、同期再生部18からの同期確立状態信号に基づいて同期確立状態を判定し、同期確立状態において、D/U測定部15からのD/Uに基づいて、干渉波の受信電力が希望波の受信電力よりも大きい状態(D/UのdB値が負の状態)を判定し、初期化制御信号を重み係数算出部17および同期再生部18に出力し、重み係数算出部17および同期再生部18をリセットして初期化するようにした。ここで、干渉波のみが送信されているときは同期確立状態になっており、その後、希望波の送信が始まって希望波の受信電力が干渉波の受信電力よりも大きくなったときは、重み係数が変わらないから希望波信号電力Pは以前とほぼ同様の値である。また、干渉波が反映された相互相関ベクトルから希望波および干渉波が反映された相互相関ベクトルに変化するから、相互相関ベクトルの絶対値は小さくなり、干渉波信号電力Pが以前よりも大きくなり、干渉波信号電力Pは希望波信号電力Pよりも大きくなる。したがって、同期確立状態のままでD/UのdB値が負となるから、制御部19は、前述の状態変化を検出することができる。
これにより、重み係数算出部17および同期再生部18は初期化され、同期再生部18は、新たな同期情報を生成し、重み係数算出部17は、初期値の希望波受信用重み係数を出力し、復調部16は、同期再生部18により生成された同期情報に基づいて、受信している希望波および干渉波に応じた新たなキャリヤシンボルおよび周波数特性を算出する。そして、重み係数算出部17は、受信している希望波および干渉波の等価ベースバンド信号、並びに新たなキャリヤシンボルおよび周波数特性に基づいて、新たな重み係数を算出し、アレー合成部14は、受信している希望波が反映されたアレー合成信号を生成することができる。したがって、本来受信すべき希望波を抑圧し続けることなく、希望波を受信するために干渉波を抑圧することが可能となる。
1,2 OFDM信号合成用受信装置
10 アンテナ
11 周波数変換部
12 A/D変換部
13 直交復調部
14 アレー合成部
15 D/U測定部
16 復調部
17 重み係数算出部
18 同期再生部
19 制御部
141,175,178,188 乗算部
142 加算部
143,187 複素共役部
151 希望波電力算出部
152,153 D/U算出部
154 ノルム算出部
155,203,211 除算部
156 位相差算出部
157 補正部
161 GI除去部
162 FFT部
163 チャネル推定部
164 チャネル等化部
165 デマッピング部
166 パラレルシリアル変換部
167 再マッピング部
168 MER算出部
169 シンボル再生部
171 自己相関行列算出部
172 逆行列算出部
173 シンボル再生部
174 パイロット挿入部
176 OFDM再変調部
177 相互相関ベクトル算出部
181 シンボル同期部
182 フレーム同期部
183 クロック同期部
184 周波数同期部
185 同期確立状態生成部
186 遅延部
189 移動平均フィルタ
190 絶対値算出部
191 最大値検出部
192 インデックス生成部
201 パイロット抽出部
202 パイロット生成部
204 補間部

Claims (2)

  1. 複数のアレー素子で構成されるアレーアンテナによってOFDM波を受信し、ビット列を出力するOFDM信号合成用受信装置であって、
    受信したOFDM波の等価ベースバンド信号を、時間領域において重み付けにより合成し、アレー合成信号を生成するアレー合成部と、
    前記アレー合成部により生成されたアレー合成信号をFFT(Fast Fourier Transform)し、チャネル等化してキャリヤシンボルを生成し、ビット列を出力する復調部と、
    前記キャリヤシンボルをシンボル再生して得られたキャリヤシンボル、およびチャネル推定により得られた周波数特性に基づいて、時間領域の参照信号を生成し、前記等価ベースバンド信号と前記参照信号との間の相関を示す相互相関ベクトルを生成し、前記アレー合成信号と前記参照信号との間の誤差が最小となるように、前記アレー合成部にて用いる重み係数を算出する重み係数算出部と、
    前記等価ベースバンド信号に基づいて同期を再生し、同期が確立しているか否かを示す同期確立状態信号を生成する同期再生部と、
    前記OFDM波の受信信号のD/U(Desired to Undesired signal ratio)を測定するD/U測定部と、
    前記同期再生部により生成された同期確立状態信号、及び前記D/U測定部により測定されたD/Uに基づいて、前記重み係数算出部および前記同期再生部を初期化する制御部と、を備え、
    前記D/U測定部は、前記アレー合成部により生成されたアレー合成信号の電力を希望波信号電力として算出する希望波電力算出部、前記重み係数算出部により生成された相互相関ベクトルのノルムを干渉波信号電力として算出するノルム算出部、および、前記希望波信号電力を前記干渉波信号電力で除算してD/Uを求める除算部を備え、
    前記制御部は、前記同期再生部により生成された同期確立状態信号から同期が確立していることを判定し、前記同期が確立している状態において前記D/U測定部により測定されたD/UのdB値が負であることを判定した場合に、前記重み係数算出部および前記同期再生部を初期化する、ことを特徴とするOFDM信号合成用受信装置。
  2. 請求項1に記載のOFDM信号合成用受信装置において、
    前記D/U測定部は、前記希望波電力算出部の代わりに位相差算出部および補正部を備え、
    前記位相差算出部は、前記アレー合成の重み付けのための各等価ベースバンド信号に対応した前記重み係数の要素間の位相差を算出し、
    前記補正部は、前記位相差算出部により算出された位相差に基づいて、所定の関数により希望波信号電力を補正する、ことを特徴とするOFDM信号合成用受信装置。
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