JP5470911B2 - Li含有α−サイアロン系酸窒化物蛍光体粉末およびその製造方法 - Google Patents

Li含有α−サイアロン系酸窒化物蛍光体粉末およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、照射光の一部を、それとは異なる波長の光に変換する機能を有する光機能材料とその製造方法に関するものである。具体的には、紫外から青色の光源に好適な、希土類金属元素で賦活されたLi含有α−サイアロン系蛍光体に関するものである。また、前記のサイアロン系蛍光体の製造方法、それを利用した発光装置および画像表示装置に関するものである。
近年、青色発光ダイオード(LED)が実用化されたことにより、この青色LEDを利用した白色LEDの開発が精力的に行われている。白色LEDは、既存の白色光源に較べ消費電力が低く、長寿命であるため、液晶パネル用バックライト、室内外の照明機器等への用途展開が進行している。
現在、開発されている白色LEDは、青色LEDの表面にCeをドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)を塗布したものである。しかしながら、CeをドープしたYAGの蛍光波長は530nm付近にあり、この蛍光の色と青色LEDの光を混合して白色光にすると、青みの強い白色光となり、良好な白色を得ることができない。
これに対して、希土類元素を賦活させたα−サイアロン系の蛍光体は、CeをドープしたYAGの蛍光波長より長い波長の蛍光を発生することが知られている(特許文献1参照)。このようなサイアロンの蛍光を用いて白色LEDを構成すると、YAGを用いた白色LEDよりも、色温度の低い電球色の白色LEDを作製することができる。
また、非特許文献1では、Eu(ユーロピウム)付活α型カルシウムサイアロン系蛍光体は、その組成式をMSi12−(m+n)Alm+n16−nで表すと、m=2.8で最高の強度になりその時のピーク波長は595nm付近のものが得られている。この蛍光波長は、電球色のような色温度の低い白色LEDに適している。しかしながら、もっと色温度の高い昼白色、昼光色のような色温度の高い白色LEDを作製することはできない。
昼白色、昼光色は照明のみならず液晶表示装置のバックライトなど用途が広く、社会的ニーズが電球色よりも大きい。そのため、サイアロン系蛍光体の蛍光の短波長化が望まれている。ところが、非特許文献1からも分かるように、Caを含むαサイアロン蛍光体では、蛍光波長が595nmより短波長側になると蛍光強度が低下していく。そのため、青色LEDと組み合わせて、高輝度の昼白色、昼光色のLEDを作製するのに適した短波長の蛍光を放出するサイアロン系蛍光体を作製するとは困難であった。
これを解決するために特許文献2においてLi(リチウム)含有α-サイアロン系蛍光体が開示されている。このサイアロンはCa含有α−サイアロン系蛍光体にくらべ短波の蛍光を放出することができる。しかし、この発明では、粒子の形態や凝集状態に配慮がなされていない。特許文献1および2では、結晶質の窒化ケイ素を用いてα−サイアロン系蛍光体を作製している。Ca含有α−サイアロン系蛍光体の場合、結晶質の窒化ケイ素を用いると、小さな一次粒子が強く凝集(融着)した二次粒子を形成する。そのような例は特許文献3の図1から図8に見られる。Li含有α−サイアロン系蛍光体の場合も同様になると考えられる。
蛍光体粉末の粒子形態や凝集状態は、光の散乱、吸収に影響するため、蛍光強度に影響する。一般に、一次粒子、二次粒子にかかわらず、粒子サイズがサブミクロンになると、光の散乱が増え吸収が低下し、蛍光強度が低下する。逆に、数十ミクロン以上になると、白色LED等の製品を作る際に、色むらの原因等を引き起こし、安定した品質の製品を作ることができなくなる。一方、高品質の蛍光体、すなわち、高い蛍光強度を有する蛍光体を得るには、高い結晶性の粒子が必要である。この点から、一次粒子が大きな結晶であることが好ましい。その理由は、結晶サイズが小さくなると、表面欠陥の影響で蛍光強度が低下するからである。
以上の条件を勘案すると、特性の良い蛍光体とは、凝集のない一次粒子が1μmから20μmの範囲に分布し、この粒度範囲でより大きいサイズの粒子で構成された粉末が望ましいと言える。
特許文献4、5においてCa含有α−サイアロン蛍光体の一次粒子のサイズについてはすでに知られているが、特許文献4、5では、Li含有α-サイアロンの一次粒子については、まだ、十分な検討がなされていない。特許文献4、5の開示にもかかわらず、Li含有α-サイアロンの一次粒子の成長については、Liが蒸発しやすい元素であること、また、Liに関係する物質が比較的低融点の化合物を作りやすいことのために、Ca含有α−サイアロンと同様に考えることはできない。
蛍光体において、一次粒子の形態を整える技術として、融剤を用いる技術が広く使用されている。Li含有α-サイアロンにおいても、一次粒子を大きくするために、融剤を用いることが考えられる。特許文献2には、融剤として、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Euのフッ化物、塩化物、ヨウ化物、臭化物、リン酸塩、特にフッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウムを指摘しているが、その効果については、具体的には示しておらず、一般的な技術を示したにすぎない。
特開2002−363554号公報 WO2007/004493 A1 特開2006−152069号公報 特開2006−52337号公報 特開2006−321921号公報
J. Phys. Chem. B 2004,108, 12027−12031
本発明は、Li含有α-サイアロンの一次粒子を制御することで、高い蛍光強度を有し、かつ、蛍光体粉末として優れた特性を有する、Li含有α-サイアロン蛍光体粉末を提供することを目的とする。このようなLi含有α-サイアロンは、紫外〜青色LEDと組み合わせて、高効率の昼白色や昼光色の白色発光ダイオードを作製することが可能である。
また、本発明は高い蛍光強度のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末を提供することにより、紫外または青色LEDを光源として、昼白色、昼光色の色を発する白色LEDなどの照明装置を提供することを目的とする。
また、電子線などの励起源を有する画像評価装置の高輝度化と色調安定化を達成することを目的とする。
さらに、本発明の目的は、前記のような蛍光色を高強度で発光することが可能なLi含有α−サイアロン蛍光体粉末が高収率で得られる新規な製造方法を提供することにある。
本発明者らはLiとEuを含有するα−サイアロン系蛍光体において、詳細な研究を行い、一次粒子のサイズの大きなLi含有α−サイアロンを得ることが可能であることを突き止めた。さらにこの方法では、より短波長の蛍光を発するLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末を得ることができること、また、その蛍光強度は、通常の方法で作製したものに比べ、高くなることを突き止めた。
こうして、本発明は下記を提供する。
(1)一般式
LiEuSi12−(m+n)Al(m+n)16−n
(式中、Euの平均価数をaとすると、x+ya=m、0.5≦x≦3.0、0.01≦y≦0.3、0.5≦m≦3.0、0.5≦n≦2.4)
で表されるLi含有α-サイアロン系蛍光体であって、走査型電子顕微鏡写真を画像解析することにより計測される一次粒子のアスペクト比が3以下であり、短軸の長さが3μmより大きいことを特徴とするLi含有α-サイアロン系蛍光体粒子。
(2)一般式
LiEuSi12−(m+n)Al(m+n)16−n
(式中、Euの平均価数をaとすると、x+ya=m、0.5≦x≦3.0、0.01≦y≦0.3、0.5≦m≦3.0、0.5≦n≦2.4)
で表されるLi含有α-サイアロン系蛍光体であって、走査型電子顕微鏡写真を画像解析することにより計測される一次粒子の平均アスペクト比が3以下であり、短軸の平均長さが1.3〜3.6μmであるLi含有α-サイアロン系蛍光体粉末であり、蛍光の主波長が570〜574nmであることを特徴とするLi含有α-サイアロン系蛍光体粉末。
(3)粒度分布のD10が7μm以上、D50が13〜20μmであることを特徴とする上記(2)記載のLi含有α-サイアロン系蛍光体粉末。
(4)AlNの多形である12Hタイプの結晶、または、X線源としてCuのKαを用いたときに約19.0°と19.4°にピークを有する結晶相を含有することを特徴とする上記(2)または(3)に記載のLi含有α-サイアロン系蛍光体粉末。
(5)一般式
LiEuSi12−(m+n)Al(m+n)16−n
(式中、Euの平均価数をaとすると、x+ya=m、0.5≦x≦3.0、0.01≦y≦0.3、0.5≦m≦3.0、0.5≦n≦2.4)の所定の組成になる理論量の、非晶質窒化ケイ素粉末とAlNを含むアルミニウム源となる物質と、Liの窒化物、酸窒化物、酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質と、Euの窒化物、酸窒化物、酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質と、さらに、前記理論量に含まれない過剰の、Liの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質とを混合し、常圧の窒素を含有する不活性ガス雰囲気中、1500〜1800℃で焼成することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末の製造方法。
(6)前記理論量に含まれない過剰の、Liの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質の金属リチウムの量が、理論量の生成物のLi含有α−サイアロン系蛍光体1モルに対して、0.1〜1.25モルであることを特徴とする上記(5)に記載のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末の製造方法。
(7)発光源と、上記(1)に記載のLi含有α−サイアロン系蛍光体を含有する蛍光体とから構成される照明器具。
(8)前記発光源が330〜500nmの波長の光を発光するLEDであることを特徴とする上記(7)に記載の照明器具。
(9)励起源と上記(1)に記載のLi含有α−サイアロン系蛍光体を含有する蛍光体とから構成される画像表示装置。
(10)前記励起源が電子線、電場、真空紫外、紫外線であることを特徴とする上記(9)に記載の画像表示装置。
本発明によれば、従来にない一次粒子サイズの大きなLi含有α−サイアロン蛍光体を得ることができる。本発明のLi含有α−サイアロン蛍光体は、高い蛍光強度を有し、かつ、蛍光体粉末として優れた特性を有する。また、この蛍光体粉末を使用することにより、紫外または青色LEDを光源として、昼白色、昼光色の色を発する白色LEDなどの高輝度の照明装置を提供することができる。
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた粉末のSEM写真である。 実施例3及び比較例4で得られた粉末のX線回折パターンである。 実施例3で得られた粉末の蛍光スペクトルと励起スペクトルを示す。 実施例3〜6及び比較例1〜2で得られた粉末の粒度分布を示す。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のLi含有α−サイアロン系蛍光体の粒子は、一般式
LiEuSi12−(m+n)Al(m+n)16−n (1)
(式中、Euの平均価数をaとすると、x+ya=m、0.5≦x≦3.0、好ましくは0.5≦x≦1.2、0.001≦y≦0.3、好ましくは0.001≦y≦0.2、0.5≦m≦3.0、好ましくは0.9≦m≦2.5、さらに好ましくは1.0≦m≦2.5、0.5≦n≦2.4)
で表される組成のLi含有α-サイアロン系蛍光体であって、走査型電子顕微鏡写真を画像解析することにより計測される一次粒子のアスペクト比が3以下であり、短軸の長さが3μmより大きいことを特徴とする。短軸の長さの好ましい上限は5μmである。このようなLi含有α−サイアロン系蛍光体の粒子は、高い蛍光強度を有する。
また、蛍光体粒子の集合としての、本発明のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末は、走査型電子顕微鏡写真を画像解析することにより計測される一次粒子の平均アスペクト比が3以下であり、短軸の平均長さが1.3〜3.6μmであるLi含有α-サイアロン系蛍光体粉末であり、蛍光の主波長が570〜574nmであることを特徴とする。このような蛍光体粉末は、青色LEDと組み合わせることで、昼光色、昼白色の白色を得ることができ、しかも、高い蛍光強度を有する。
さらに、前記蛍光体粉末は、光源の発光ダイオード等に塗布して用いられるので、粒度分布のD10が7μm以上、D50が13〜20μmであることが好ましい。
本発明のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末は、非晶質窒化ケイ素粉末を原料として用いることと、酸化リチウム、及び、高温で酸化リチウムを形成する原料を過剰に添加して製造することを特徴としており、非晶質窒化ケイ素粉末と、Al源と、Li源と、Eu源とを、上記の一般式(1)の所望のLi含有α−サイアロン系蛍光体組成を秤量し、さらにこの粉末に、Liの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質を過剰に添加して混合し、窒素を含有する不活性ガス雰囲気中、焼成することにより得られる。
図1は、本発明の実施例および比較例で得られたLi含有α−サイアロン系蛍光体粒子の酸処理後の粉末の状態を示した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。一次粒子が弱く融着した二次粒子の一部を観察している。
図1(a)〜(f)は非晶質窒化ケイ素にLiの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質を過剰に添加した原料を用いて作製したLi含有α−サイアロン系蛍光体粒子、図1(g)、(h)は非晶質窒化ケイ素を原料に使用し、Liの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質を過剰に添加しない方法で作製したLi含有α−サイアロン系蛍光体粒子、図1(i)は結晶質窒化ケイ素にLiの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質を過剰に添加したLi含有α−サイアロン系蛍光体粒子である。図1(j)は非晶質窒化ケイ素を原料として、さらに、結晶形態制御のためにフッ化バリウム(BaF)を添加して作製したときのLi含有α−サイアロン系蛍光体粒子である。
図1(a)〜(f)では、Li含有α−サイアロン系蛍光体の一次粒子の形態(自形)が明確に確認できる。これらの粉体では、一次粒子の短軸が3μmより大きな粒子を含んでいる。また、長軸に関しては、最大で約10μm程度一次粒子が存在する。
図1(g)、(h)では一次粒子サイズは小さくなり、短軸および長軸が1〜2μmの一次粒子を含んでいる。図1(i)では1μm以下の粒子が密に集合した二次粒子を形成している。これらの粒子は、自形を示す明確な一次結晶はほとんどない。図1(j)においても、大きな一次粒子は観察されない。
図1に示すような一次粒子形態及び凝集状態の差が生じる原因について述べる。Li含有α−サイアロン系蛍光体粒子の核形成及び成長は、昇温過程で原料中に生じるLi−Al−Si−O−N系のガラス相で起こると考えられる。
まず、一次粒子の大きさの違いの原因について述べる。非晶質窒化ケイ素を用い、過剰の酸化リチウムを用いない場合((g)、(h))では、一次粒子の大きさは小さい。一方、過剰の酸化リチウムを用いた場合((a)〜(f))、一次粒子の大きさは、大きくなる。これはガラス相の量の差に起因する。すなわち、過剰の酸化リチウムを用いた場合、生成するガラス相が増加する。ガラス相が増加すると、ガラス中のサイアロンの過飽和度が低下し、生成する核の量は少なくなる。このため、1個の核に供給される原料の量が増え、結晶の大きさは大きくなる。
次に粒子の凝集状態について述べる。結晶質の窒化ケイ素を用いて作製した場合((i))、得られた蛍光体粉末の凝集が著しく起こる。一方、非晶質窒化ケイ素を用いた場合には、凝集は少なくなる((a)〜(f)、および、(g)、(h))。
非晶質窒化ケイ素は、その粒子径が数nmから10nm程度の超微粉であり、これがサイアロンの主原料になるため、非晶質窒化ケイ素を用いたサイアロンの原料はきわめて嵩高い。この中では、他の原料は均一に分散し、超微粉の窒化ケイ素原料と接触することになる。このため微細なガラス相が低温で均一に形成されると考えられる。しかも、原料が嵩高いため、空間的に離れた状態となる。このようなガラス相の中で核形成、成長が起こると、結果として、凝集の少ない粉体になる。
一方、結晶質窒化ケイ素の場合、その粒子径は、非晶質窒化ケイ素にくらべ非常に大きく0.2μm程度ある。窒化ケイ素が大きいため、ガラス相に原料が溶け込むのではなく、窒化ケイ素粒子の表面をガラスが被うような様式でサイアロンへの反応が進行すると考えられる。また、結晶質窒化ケイ素を用いたサイアロン原料は嵩が小さく、非晶質窒化ケイ素を用いた場合のようなガラス相の空間的隔離が十分にできない。このような状態でサイアロンへの反応が進行すると、一次粒子同士が強く融着・凝集した二次粒子になる。
本発明では過剰に添加した酸化リチウム、及び、高温で酸化リチウムを生成する原料は一種の融剤のような役割を果たすのであるが、結晶の形態をそろえる目的で添加される一般的な融剤とは大きく異なる。その理由は次の2点である。
(1)本発明で示される常圧におけるLi含有α−サイアロンの合成では、Liの蒸発が多くなる。Liを補うことなくサイアロンを作製すると、リチウムの大きく不足したLi含有α-サイアロンになる。このようなサイアロンは欠陥が多くなり、蛍光体として好ましくない。これを解決するために、酸化リチウム、または、高温で酸化リチウムを形成する原料を添加することで、不足するLiを補うことができる。
(2)Li含有α−サイアロン系蛍光体の重要な特徴は、Ca含有α-サイアロン系蛍光体に比べ、短波長の蛍光を発することである。この蛍光波長の短波長化に、酸化リチウム、または、高温で酸化リチウムを形成する原料が有効であることも今回の検討において明らかになった。これは、添加した試薬から酸素が供給されることによると思われる。
以上のように、本発明における酸化リチウム、及び、高温で酸化リチウムを生成する原料は単に、結晶の一次粒子の形態を制御する通常のフラックスとは異なり、Li含有α−サイアロンの蛍光特性を本質的に向上させる効果がある。
一般的に考えて、サイアロン蛍光体を作製する場合、酸化リチウム、または、高温で酸化リチウムを形成する原料を融剤に用いることは好ましいことではない。融剤は蛍光体を得た後には不要な成分になるので、合成後に除去することが好ましい。そのため水や酸によって除去しやすい物質を選ぶことが普通である。この点を考慮するとフッ化バリウムのようなハロゲン化合物が選ばれる。酸化リチウムは、ハロゲン化合物に比べると溶解しにくい成分であり、合成後の除去が難しい。このため、本来なら融剤として採用しがたい原料である。そこで発明者らは、フッ化物を融剤として用いて検討したが、フッ化物では、良好形態の一次粒子からなるLi含有α−サイアロン系蛍光体を得ることはできなかった。
しかも、蛍光強度は酸化リチウム、または、高温で酸化リチウムを形成する原料を添加した場合に比べて低くなった。これはLiの蒸発を補うことができないためであると考えられる。以上の検討から、Li含有α−サイアロン系蛍光体に有効な融剤は、酸化リチウム、または、高温で酸化リチウムを形成する原料だけが適しているという結論に達した。酸化リチウム、および、高温で酸化リチウムを形成する原料の欠点は、添加量が多くなると、Li含有α−サイアロン以外の結晶相が生成することである。しかも生成した異相は水や酸の洗浄によって除去されず、蛍光体粉末の中に残存する。
異相の生成によって蛍光強度は低下するはずであるが、本発明の場合、結晶が大きくなることの効果で蛍光強度が上がるため、異相が生成しても、その量が極端に多くなければ、蛍光強度の低下はほとんど起こらない。本発明のLi含有α-サイアロン系蛍光体粉は、異相としてAlNの多形である12Hタイプの結晶、または、X線源としてCuのKαを用いたときに約19.0°と19.4°にピークを有する結晶相(O’サイアロン(例えば、PDF42−1490)、x-相サイアロン(たとえば、PDF31−0032)、β-LiSiON(PDF34−0963)の可能性がある)を含有する条件で製造されると、蛍光強度が従来よりも高い。
次に、Li含有α−サイアロン系蛍光体の組成について述べる。
本発明の酸化リチウム、または、高温で酸化リチウムを形成する原料を添加する方法は、すべての組成のLi含有α-サイアロンに有効であると考えられ、Li含有α-サイアロンの組成的な制限はない。また、本発明のLi含有α-サイアロンは、簡単のために、一般式
LiEuSi12−(m+n)Al(m+n)16−n
(式中、Euの平均価数をaとすると、x+ya=m、0.5≦x≦3.0、0.01≦y≦0.3、0.5≦m≦3.0、0.5≦n≦2.4)
で表しているが、LiEuSi12−(m+n)Al(m+n)n+δ16−n−δ(Euの平均価数をaとすると、x+ya+δ=m、x、y、m、nは上記式と同じ。)で表されるような非量論組成で表されるものを含むものと解釈されるべきものである。この場合、δ≧であり、上限は格別に限定されないが、一般的にはδは0.05〜1.2、x/mが0.4〜0.9であり、さらには、δが0.05〜1.0であり、x/m比が0.6〜0.9であることが好ましい。
本発明における組成上の問題は、合成中にLiが蒸発を起こすため仕込み組成と生成した結晶の組成が異なるということである。そこで、以下の議論は、仕込み組成について行う。
EuはLi含有α−サイアロン系蛍光体に固溶して発光源となる元素であり、一般式(1)において、yは、0.001≦y≦0.3が好ましい。yが0.001より小さい発光源が少なくなるために明るい蛍光体を得ることができない、また、0.3よりも大きいと短波長の蛍光を発するサイアロンが得られなくなる。より好ましい範囲は、0.01≦y≦0.2であり、さらに好ましい範囲は、0.05≦y≦0.2である。
mとnは、0.5≦m≦3.0、0.5≦n≦2.4が好ましい。mが0.5より少なくなると、サイアロンへ固溶するEu量が減少し、蛍光強度が低下する。逆に3.0より多くなると蛍光波長が長くなり、Li含有α-サイアロンの特徴である短波長化が達成できなくなる。また、nが0.5より少なくなると、短波長化が難しくなり、2.4を超えると異相の生成量が多くなり、蛍光強度が低下する。より好ましい範囲は、1.0≦m≦2.75、1.0≦n≦2.0である。
Liの含有量を決めるxは、m=x+ayの関係にある。ここで、aはEuの平均価数である。xは0.5≦x≦3.0が好ましい。0.5より少ないとLi含有α−サイアロンへのEuの固溶が減り、蛍光強度は低下する。また、3.0を超えると異相の生成が多くなり、蛍光強度が低下する。より好ましい範囲は、0.8≦x≦2.6である。
Li含有α−サイアロン系蛍光体粉末原料(すなわち、生成すべきLi含有α−サイアロンとなるべき理論量の酸化リチウム)に対して過剰に添加する酸化リチウム、または、高温で酸化リチウムを形成する原料は、金属Liの量で、生成するLi含有α−サイアロン1モルに対し、0.1モル以上、1.25モル以下が好ましい。0.1モルよりも少ないと、結晶を大きくする効果が十分に得られない。また、1.25モルを超えると、異相の生成量が増えて蛍光強度の低下が起こる。より好ましい範囲は、0.15モル以上、0.8モル以下である。
次に本発明のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末の作製方法について述べる。本発明のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末は、非晶質窒化ケイ素粉末と、AlNを含むアルミニウム源となる物質と、Liの窒化物、酸窒化物、酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質と、Euの窒化物、酸窒化物、酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質とで所望のLi含有α−サイアロン分を秤量し、さらにこの粉末に、Liの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質を過剰に添加して混合し、0.08〜0.1MPaの不活性ガス雰囲気中1500〜1800℃で焼成することにより得ることができる。焼成雰囲気としては、窒素雰囲気下、常圧で行うことがさらに好ましい。特に、窒素を含有する常圧の不活性ガス雰囲気中における合成を行うことで、Li含有α−サイアロン系蛍光体の生産コストを低減させることができる。
得られた粉末は、酸溶液で洗浄し、表面に付着したガラス成分などを取り除くことで、最終的に、Li含有α−サイアロン系蛍光体、または、Li含有α−サイアロン系蛍光体と異相とで構成された蛍光体粉末を得ることができる。また、原料として、非晶質窒化ケイ素粉末の代わりに、シリコンジイミド(Si(NH))、シリコンニトロゲンイミド(SiNH)などの含窒素シラン化合物または、含窒素シラン化合物と非晶質窒化ケイ素粉末との混合物を用いてもよい。
主原料である含窒素シラン化合物および/または非晶質窒化ケイ素粉末は、公知の方法、例えば、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四沃化ケイ素などのハロゲン化ケイ素とアンモニアとを気相または液相状態で反応させることにより生成するシリコンジイミド等のSi−N−H系前駆体化合物を窒素またはアンモニアガス雰囲気下に600〜1200℃に加熱分して得ることができる。
また、含窒素シラン化合物および/または非晶質窒化ケイ素粉末は、酸素含有量が1〜5質量%のものを使用する。酸素含有量1〜3質量%のものは更に好ましい。酸素含有量が1質量%未満のものでは、焼成過程での反応によるα−サイアロン相の生成が著しく困難となる。一方、酸素含有量が5質量%以上になると、α−サイアロン生成反応は促進される反面、β−サイアロンの生成割合が増大する。
また、含窒素シラン化合物および/または非晶質窒化ケイ素粉末は、80〜600m/gの比表面積を持つものの使用が好ましい。340〜500m/gのものは更に好ましい。
アルミニウム源となる物質としては、酸化アルミニウム、金属アルミニウム、窒化アルミニウムが挙げられ、これらの粉末の夫々を単独で使用しても良く、併用しても良い。窒化アルミニウム粉末は、酸素含有量が0.1〜8質量%、比表面積が1〜100m/gの一般的なものを使用することができる。
LiおよびEuの熱分解により酸化物となる前駆体物質としては、夫々の炭酸塩、蓚酸塩、クエン酸塩、塩基性炭酸塩、水酸化物等の金属塩類を挙げることができる。過剰に添加するLiの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質も同様である。
本発明では、Li含有α−サイアロン系蛍光体の構成成分以外の、金属不純物量が0.01質量%以下となる様にすることが好ましい。特に、添加量の多い窒素シラン化合物および/または非晶質窒化ケイ素粉末、並びに、酸化アルミニウム、AlNについては、金属不純物の含有量が好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、更に好ましくは0.001質量%のものを使用する。金属Liの酸化物または熱分解により酸化物となる前駆体物質と、金属Euの酸化物または熱分解により酸化物となる前駆体物質についても、酸化物になった場合の金属不純物含有量が0.01質量%以下のものの使用が好ましい。
前記した各出発原料を混合する方法については、特に制約は無く、それ自体公知の方法、例えば、乾式混合する方法、原料各成分と実質的に反応しない不活性溶媒中で湿式混合した後に溶媒を除去する方法などを採用することができる。混合装置としては、V型混合機、ロッキングミキサー、ボールミル、振動ミル、媒体攪拌ミルなどが好適に使用される。但し、含窒素シラン化合物および/または非晶質窒化ケイ素粉末は、水分、湿気に対して極めて敏感であるので、出発原料の混合は、制御された不活性ガス雰囲気下で行うことが必要である。
出発原料の混合物は、常圧または減圧の窒素含有不活性ガス雰囲気中1500〜1800℃、好ましくは1550〜1700℃で焼成され、目的とするLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末が得られる。不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトンなどが例示されるが、本発明においては、これらのガスと少量の水素ガスとを混合して使用することも可能である。焼成温度が1500℃よりも低いと、所望のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末の生成に長時間の加熱を要し、実用的でない。また、生成粉末中におけるLi含有α−サイアロン系蛍光体相の生成割合も低下する。焼成温度が1800℃を超えると、窒化ケイ素およびサイアロンが昇華分解し、遊離のシリコンが生成する好ましくない事態が起こる。焼成時間としては、1〜48時間が好ましい。特に、焼成温度1600〜1700℃において1〜24時間の焼成時間が粒子形状及び組成において優れた蛍光体粒子が得られるためもっとも好ましい。
粉末混合物の焼成に使用される加熱炉については、とくに制約は無く、例えば、高周波誘導加熱方式または抵抗加熱方式によるバッチ式電気炉、ロータリーキルン、流動化焼成炉、プッシャ−式電気炉などを使用することができる。焼成のるつぼには、BN製の坩堝、窒化ケイ素製の坩堝、黒鉛製の坩堝、炭化珪素製の坩堝を用いることができる。黒鉛製の坩堝の場合には、その内壁に窒化珪素、窒化ホウ素等で被覆しておくことが好ましい。
このようにして得られたLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末には、構成する粒子表面にガラス層が付着しており、より高い蛍光強度の蛍光体を得るためには、ガラス層の除去が好ましい。蛍光体粒子の表面のガラス層の除去には、酸による洗浄がもっとも容易である。すなわち、硫酸、塩酸または硝酸から選ばれる酸溶液に前記サイアロン粒子を入れ表面のガラス層を除去する処理である。酸溶液の濃度は0.1規定から7規定であり、好ましくは、1規定から3規定である。過度に濃度が高いと酸化が著しく進み良好な蛍光特性を得られなくなる。濃度を調整した酸溶液に、サイアロン粉末を溶液に対し5wt%入れ、攪拌しながら、所望の時間保持する。洗浄後、サイアロンの入った溶液をろ過して水洗によって、酸を洗い流して乾燥する。
本発明の、希土類元素で賦活させたLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末は、励起光を入射することにより、波長570nmから574nmの主波長の蛍光を放出する。また、公知の方法でエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の透明樹脂と混練されてコーティング剤が製造され、該コーティング剤で表面をコーティングされた発光ダイオードは、発光素子として各種照明器具に用いることができる。
特に、励起光のピーク波長が330〜500nmの範囲にある発光源は、本発明のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末に好適である。紫外領域では、Li含有α−サイアロン系蛍光体粉末の発光効率が高く、良好な性能の発光素子を構成することが可能である。また、青色の光源でも発光効率が高く、本発明のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末の黄色の蛍光と青色の励起光の組み合わせで、良好な昼白色〜昼光色の発光素子を構成できる。
さらに、色調の調整に600nm〜650nmの赤色の蛍光体と組み合わせて、昼白色や昼光色の発光色を、温かみのある電球色の領域に制御することができる。このような電球色の発光素子は、一般家庭の照明に広く使うことができる。
また、本発明のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末を用いて画像表示素子を作ることも可能である。この場合、前述した発光素子を用いることも可能であるが、直接、電子線、電場、紫外線などの励起源を用いてLi含有α−サイアロン系蛍光体を励起して発光させることも可能であり、たとえば、蛍光灯のような原理での利用ができる。そのような発光素子でも、画像表示装置を構成することができる。
以下では、具体的例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
(実施例1〜6)
炭酸リチウム粉末、酸化ユーロピウム粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末及び、四塩化珪素とアンモニアを反応させることにより得られた非晶質窒化珪素粉末、さらに過剰の添加物として、炭酸リチウム、または、酸化リチウムを表1の組成で秤量した。表1における添加物の量は作製するLi含有α−サイアロン1モルに対し、金属Liのモル数を示した。攪拌用のナイロンボールと秤量した粉末を容器に入れ窒素雰囲下において、1時間振動ミルによって混合した。混合後、粉末を取り出し、窒化ホウ素製の坩堝に充填した。この時の充填密度は、約0.18g/cmあった。これを抵抗加熱炉にセットし、常圧の窒素ガス流通雰囲気下、室温から1000℃までを1時間、1000℃から1250℃までを2時間、1250℃から200℃/hで、表1に示す保持温度まで加熱した。保持時間は3時間とし蛍光体粉末を得た。得られた粉末は弱く焼結した塊になっていたので、これを大きな塊のない粉末になるまで、めのう乳鉢を用いて軽く解砕した。次いで、2規定−硝酸溶液中に5時間浸漬、攪拌し酸処理を行った。得られた粉末を110℃の温度で5時間乾燥した。
得られた粉末を、日本電子社製 JSM−7000Fの走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子形態を観察した。結果を図1に示す。図1(a)〜(f)に示すように、平均アスペクト比3以下で、短軸の長さが3μmよりも大きい一次粒子のLi含有α−サイアロン蛍光体粒子含むLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末を得ることができた。短軸が3μmを超える一次粒子のアスペクト比と短軸の長さを表2に示した。
これらの粉末のX線回折パターンを測定し、結晶相の同定を行った。なおエックス線源としてCuのKαを用いた。その結果、すべての実施例において、主要なピークはLi含有α−サイアロンであることを確認した。しかし、炭酸リチウム、酸化リチウムの多い実施例においては、Li含有α−サイアロン以外の異相を含んでいた。例として、実施例3のX線パターンを図2(a)に示す。このX線パターンの解析の結果、異相はAlNの多形である12H及び、19.0°と19.4°に特徴的なピークを有する結晶相である。この2つのピークの出現は同時に同じような挙動をするので、単一の結晶相からの回折であると考えられる。この結晶相はO’サイアロン(例えば、PDF42−1490)、x-相サイアロン(たとえば、PDF31−0032)、β-LiSiON(PDF34−0963)の可能性がある。
また、加圧して作製した比較例4におけるX線のパターンを図2(b)に示した。加圧した場合、Li含有α−サイアロン相に起因するピークは非常に低く、その生成量はわずかであり、ほとんどが、サイアロン以外の結晶相である。このため、蛍光強度は非常に低くなる。加圧によって、リチウム蒸発が抑制され、添加された炭酸リチウム、または、酸化リチウムが別の結晶を生成するのに使われている。このことは、本発明のように、炭酸リチウム、酸化リチウムを過剰に添加する場合、その成分の一部が飛散していくことが、結果として、Li含有α−サイアロン相の生成量を多くしていることを示唆している。このように、酸化リチウムを生成する物質を添加する場合、常圧雰囲気で焼成するほうが、より好ましい。
次に蛍光特性について述べる。試料として、蛍光体を実際に利用する場合を考え、極端に大きな粒子と小さな粒子を除去した分級品を採用した。具体的には、大きな粒子の塊を20μmのふるいを通して除去し、さらに、極端に微細な粒子を、水比によって除去した。
蛍光特性は、日本分光社製、積分球付のFP−6500を用いて蛍光特性の測定を行った。実施例3において得られた蛍光スペクトルと、励起スペクトルを図3(a)、(b)に示す。(a)は励起スペクトルであり、蛍光波長は571nmとした。(b)は蛍光スペクトルであり、励起波長は450nmとした。すべての実施例について蛍光スペクトルのピーク波長とピーク強度の評価を行った。結果を表2に示した。実施例は、酸化リチウム源となる物質を添加しない比較例1,2に比べ非常に高い蛍光強度を有していることが分かる。図1の粒子の形状、図4の粒度分布から分かるように、一次粒子のサイズが大きいことと、分級後に小さな粒子を含まないことによると考えられる。さらに、後述する組成分析の結果、実施例では、Li、酸素の含有量が多くこれも蛍光強度の向上に影響していると考えられる。
実施例3,4,5の分級品について、粒度分布の測定を行った。粒度分布測定には堀場製作所社製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910を用いて測定した。測定方法は次のとおり。サンノプコ社製のSNディスパーサントを0.03wt%含む分散媒をフローセルに入れブランク測定を行った。次に、同じ組成の分散媒に試料を加え、超音波分散を60分行った。溶液の透過率が95%〜70%になるように試料の量を調整し測定を行った。測定結果を、あらかじめ測定したブラン測定結果で補正し、粒度分布を求めた。
粒度分布測定の結果の例を図4に示した。実施例は微粒子のない良好な粉末であることが粒度分布から分かる。一方、比較例では、5μm以下の粒子が多くなり、粒度分布の対称性が悪く、良好な粉末ではない。図1における比較例のSEM写真からも分かるように、比較例では小さな一次粒子が融着した粉末になっており、このような粉末を粉砕して分級しても良好な粒度分布を有する蛍光体粉末を得ることはできない。この粒度分布曲線から、10%径(D10)、50%径(D50)、90%径(D90)を求めた。結果を表2に示す。図4に示した実施例と比較例の粒度分布の差は、特に、D10に明確に現れる。本特許の製造方法で作製すれば、D10が6μm以上の蛍光体粉末を得ることができる。一方比較例では、小さい粒子が多くなり、D10は6μm未満である。細かな粒子が増えると蛍光強度は低下する。
実施例3、比較例2について、得られた粉末の酸素、窒素分析をLECO社製の酸素窒素同時分析装置にて行った。実施例3と比較例2は、炭酸リチウムを過剰に添加した以外は同じ組成である。結果を表3に示す。酸化リチウム源となる物質を添加した場合、酸素の含有量が増えている。この時、蛍光の主波長は573nmであり、酸化リチウム源となる物質を添加しなかった場合の575nmよりも短波化している。このように、酸化リチウム源となる物質を添加することで、Li含有α−サイアロン蛍光体の短波長化を達成することができる。実施例3には異相が生成しているが、その量は少なく、増加した酸素の多くは、サイアロンに入っていると考えられる。このことが原因で短波化したと考えられる。
さらに、Li、Eu、Al、Siについて、定量分析を行った。Liは、試料を硝酸とフッ化水素酸で加圧酸分解したのち、硫酸を加えて白煙が発生するまで加熱濃縮し、これに塩酸を加えて加熱溶解したのち、エスアイアイ・ナノテクノロジー社のSPS5100型を用いてICP−AES法によって定量分析を行った。Siについては、試料を炭酸ナトリウムとほう酸で過熱融解したのち、塩酸で溶解し凝集重量法に準拠して定量分析を行った。Al,Euについては、Siの定量分析の前処理で得られたろ液を回収し、ICP−AESによる定量分析を行った。結果を表4に示す。実施例3は、比較例2に比べて、Liの量が多い。これは、過剰に添加したLi成分によるものである。
(比較例1、2)
表1に示す組成で、過剰の添加物として、炭酸リチウム、または、酸化リチウムを添加せずに、秤量し、実施例と同じ方法で焼成し、実施例と同じ方法で評価を行った。粒子の写真を図1(g)、(h)に示した。粒子のサイズは小さく、粒子の長軸の長さで3μm以下であった。
(比較例3)
表1に示す組成で、窒化ケイ素原料として結晶質窒化ケイ素(比表面積、約10m2/g)を用いた以外は、実施例と同じ方法で焼成し、実施例と同じ方法で評価を行った。粒子の写真を図1(i)に示した。粒子のサイズは小さく、粒子の長軸の長さで3μm以下であった。
(比較例4)
表1に示す組成で、実施例と同じ原料を作成し、0.8MPaの窒素ガス流通雰囲気下で焼成し、実施例と同じ方法で評価を行った。図2(b)に、X線回折パターンを示す。サイアロン相に由来するピークは非常に低く、サイアロン相はほとんどないことが分かった。このように、本発明のように、過剰添加物を加えると、加圧雰囲気では、目的のサイアロン相を得ることが困難になることが確認できた。このため、発光強度は非常に低くなった。
(比較例5)
添加物としてBaFを用いた以外は実施例と同じ方法で焼成し、評価を行った。粒子の写真を図1(j)に示した。粒子のサイズは小さく、粒子の長軸の長さで3μm以下であった。
(実施例7)
実施例3の蛍光体とエポキシ樹脂を20:100の重量比で混合し、蛍光体ペーストを作製した。これを電極に取り付けられた青色発光ダイオード(波長460nm)に塗布し、120℃1時間加熱し、さらに150℃12時間過熱しエポキシ樹脂を硬化させた。得られた発光ダイオードを点灯し、昼光色の白色であることを確認した。

Claims (10)

  1. 一般式
    LiEuSi12−(m+n)Al(m+n)16−n
    (式中、Euの平均価数をaとすると、x+ya=m、0.5≦x≦3.0、0.01≦y≦0.3、0.5≦m≦3.0、0.5≦n≦2.4)
    で表されるLi含有α-サイアロン系蛍光体であって、走査型電子顕微鏡写真を画像解析することにより計測される一次粒子のアスペクト比が3以下であり、短軸の長さが3μmより大きいことを特徴とするLi含有α-サイアロン系蛍光体粒子。
  2. 一般式
    LiEuSi12−(m+n)Al(m+n)16−n
    (式中、Euの平均価数をaとすると、x+ya=m、0.5≦x≦3.0、0.01≦y≦0.3、0.5≦m≦3.0、0.5≦n≦2.4)
    で表されるLi含有α-サイアロン系蛍光体であって、走査型電子顕微鏡写真を画像解析することにより計測される一次粒子の平均アスペクト比が3以下であり、短軸の平均長さが1.3〜3.6μmであるLi含有α-サイアロン系蛍光体粉末であり、蛍光の主波長が570〜574nmであることを特徴とするLi含有α-サイアロン系蛍光体粉末。
  3. 粒度分布のD10が7μm以上、D50が13〜20μmであることを特徴とする請求項2記載のLi含有α-サイアロン系蛍光体粉末。
  4. AlNの多形である12Hタイプの結晶、または、X線源としてCuのKαを用いたときに約19.0°と19.4°にピークを有する結晶相を含有することを特徴とする請求項2または3記載のLi含有α-サイアロン系蛍光体粉末。
  5. 一般式
    LiEuSi12−(m+n)Al(m+n)16−n
    (式中、Euの平均価数をaとすると、x+ya=m、0.5≦x≦3.0、0.01≦y≦0.3、0.5≦m≦3.0、0.5≦n≦2.4)の所定の組成になる理論量の、非晶質窒化ケイ素粉末とAlNを含むアルミニウム源となる物質と、Liの窒化物、酸窒化物、酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質と、Euの窒化物、酸窒化物、酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質と、さらに、前記理論量に含まれない過剰の、Liの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質とを混合し、常圧の窒素を含有する不活性ガス雰囲気中、1500〜1800℃で焼成することを特徴とする請求項1又は2に記載のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末の製造方法。
  6. 前記理論量に含まれない過剰の、Liの酸化物、または熱分解により酸化物となる前駆体物質の金属リチウムの量が、理論量の生成物のLi含有α−サイアロン系蛍光体1モルに対して、0.1〜1.25モルであることを特徴とする請求項5記載のLi含有α−サイアロン系蛍光体粉末の製造方法。
  7. 発光源と、請求項1に記載のLi含有α−サイアロン系蛍光体を含有する蛍光体とから構成される照明器具。
  8. 前記発光源が330〜500nmの波長の光を発光するLEDであることを特徴とする請求項7に記載の照明器具。
  9. 励起源と請求項1に記載のLi含有α−サイアロン系蛍光体を含有する蛍光体とから構成される画像表示装置。
  10. 前記励起源が電子線、電場、真空紫外、紫外線であることを特徴とする請求項9記載の画像表示装置。
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