JP5470666B1 - 空気電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】
空気電池において、空気極に発生する電解液の液漏れによる濡れを再び電解液内に排液
し、湿度を適度に保ち、また、反応物質である水酸化物を空気極に付着しにくくして沈殿させることにより大容量でも長時間にわたり良好な電池性能を維持すること。
【解決手段】
空気極4を電解液水面16より高い位置に設置し、空気極の濡れを導水体で排水可能にして湿度を保ち、空気極は天井に傾斜して下向きに配置してあり水酸化物は付着しにくく沈殿し、残存気体は上方へ移動する。
【選択図】図1

Description

本発明は空気電池に関し、特に空気極周辺に関するものである。
空気電池に使われる負極活物質と電解質には様々な組み合わせがある。特許文献1は近年開発されたマグネシウム空気電池で使用可能なマグネシウム合金が開示されている。
負極で2価の陽イオンになる材料をMと示すと、空気電池の反応は、負極のMと正極のO、HOが反応してM(OH)が生成するというものである。以下にその反応式を示す。
正極(空気極):O+2HO+4e→4OH (1)
負極:2M+4OH →2M(OH) +4e (2)
電池全体の反応:2M+O+2HO → 2M(OH) (3)
上記反応式に関して、視点を負極に置いた時には、負極のMが水で酸化されてHが発生し、Hが空気極で生成したOH と反応して減極されると考えることができる。すなわち反応式は次の通りである。
正極(空気極): O+2HO+4H+4e →4OH+4H →4HO (4)
負極: 2M+4HO→2M(OH) +4H+4e (5)
図2は従来構造で壁面に空気極のある空気電池の概略図である。負極材を大型の物が搭載でき、また交換可能であり大容量が魅力であるが、空気極が徐々に水浸しになり性能が低下してしまい、また内部から電解液の漏れが続き電解液が減少してしまって大容量が生かせない問題がある。
電解液漏れの原因について以下にまとめてみた。
原因1として式(4)の影響で電池として発電すればするほど空気極で水が発生し続けてしまうことが考えられる。空気極の構造により発電量や漏れ量は様々であるが、実験経験的には触媒反応の良い出力の大きい空気極ほど早く水浸しになり又漏れ量も多く、発電を停止すると漏れが減る傾向がある。このことから原因の1つであると推測できる。
原因2として電解液側は液相、大気側は気相なので根本的に密度に差があり高密度側から低密度側に物質は拡散、移動したがる。更に電解液下方は水圧もかかり、どうしても電解液側から大気側に力が働いてしまう。そして原因1で考えられる生成された水が「呼び水」となって空気極内部に漏液の道筋を作ってしまうと電解液側からの圧力で漏液が定常になってしまうと推測する。
原因3として触媒層付近は反応量を多くするため一般的に表面積を多くする細密な構造になっていて、その毛細管力で電解液や反応生成したHOを保水して自ら水没してしまう。そして気相であるOが水膜で遮断され触媒反応が低下してしまう。
気相であるOと液相であるHO、H、OHが混在して反応する触媒層の湿度の管理は大変重要で濡れすぎても乾燥しすぎても反応は低下する。また従来構造(図2)では外部に漏れた液体は電解液水面より下なので自然圧力で内部に戻すことは不可能であり吸収体に吸収させたり、そのまま外部に排液していた。
空気電池では主に空気極側でM(OH)なる水酸化物が生成され水溶液に不溶、難溶な場合が多く、沈殿を期待するのだが、実際には従来構造(図2)では、垂直な状態の空気極4に付着、固着して成長し、空気極の性能を下げてしまう事が多い。
また特許文献2に提示された問題で、空気極が水平な状態に置かれていると気体が空気極と電解液の間に留まった場合、空気極と電解液が離れてしまい空気極の性能を悪化させてしまう。
特開2012−234799号広報 特開2010−103064号広報
本発明は空気極からの電解液の漏れを少なくし、漏れた液体は再び元の電解液槽に排液して電解液の損失を無くし、空気極の触媒部はよく反応する濡れ具合を維持し、また空気極は水酸化物が付着しにくく、残存気体が留まりにくい構造にして、長時間にわたり安定した電池性能を維持する空気電池を提供することにある。
キャップ型構造体上部に空気極を有した物を、電解液の入った電解液槽内に浸け、キャップ型構造体内部の空気を抜いて電解液で満たすことにより電解液水面より上方に空気極と電解液の接触面を配置する。空気極には従来構造とは反対の圧力(大気側から電解液側への力)を働かせる。
上記構造により、空気極は電解液水面より上方にあり、その空気極の位置は毛細管現象、サイフォンの原理を利用した導水体によって排液が可能な位置であり、それを備え、空気極に染みている余分な液体を電解液槽に排液させる。
空気極と電解液との接触面は下方向に向かせつつ、水平面に対して傾斜して配置し、その上方に、キャップ型構造体内部の空気を抜く時に気体の最終残存部分になるように作り込まれた気体溜まり部を設け、空気極と電解液の間に気体が有る場合は気体溜まり部に浮いて行くようにする。
上記のように、空気極に大気側から電解液側への圧力が働くと、従来構造での電解液水圧に起因した漏れを促進する力は無くなり、更には漏れ出ようとする液体に対して内部電解液側に戻るよう力が働き、漏れ量はとても少なくなる。濡れすぎであった従来と比べると濡れ具合の調整が行いやすくなる。
上記の導水体で空気極の余分な液体を排液すると触媒層が水浸しにならずにほどよい濡れ具合で反応状態を保つことができ、良好な触媒性能を維持できる。また、排液した液体を電解液槽に戻すので漏れによる電解液の損失が無い。補充するのは蒸発や反応で消費される水だけで良い。
上記の空気極を水平面に対して傾斜して配置し、その上方に気体溜まり部を設けることにより、何らかの原因で気体が空気極を有するキャップ型構造体内に侵入、もしくは残存していても、気体は傾斜した空気極と電解液の間に留まらず上方へ浮いて気体溜まり部に行く。従って気体溜まり部相当の容積の気体が侵入しても空気極と電解液は確実に接触し、空気極の性能が低下しない。
なお気体溜まり部は、内部を目視できる透明部材で構成したり、あるいは気体を感知するセンサーを有すれば、キャップ型構造体内部の空気を抜く時の気体の残存確認や動作中の気体の混入を監視ができる。
空気極と電解液の接触面は傾斜配置するも、おおむね下方を向いていることで、空気極に付着した水酸化物が重力で引き剥がされ沈殿していき付着しにくい。また空気極で生成されたHO、OHにより、電解液よりも僅かに比重の軽い強アルカリ水域が上方から溜まり空気極を覆い、陽イオンが空気極に到達する前に強アルカリ水域で水酸化物になり水酸化物は空気極に付着しない。
本発明により、長時間安定して出力する大容量の空気電池が製作できる。
本発明の実施例の断面図 従来構造で壁面に空気極のある空気電池の断面図
本発明は空気電池の一つである負極材にマグネシウム合金、電解液に塩化ナトリウム水溶液を使用したマグネシウム空気電池が好適であり実施している。以下マグネシウム空気電池で実施形態を説明する。
図1は本発明の実施例の断面図であり、まず空気極4について説明する。空気極4は気液分離膜1,触媒層2,集電層3でできており、キャップ型構造体5に傾斜して設置してある。
気液分離膜1は電解液8に対し親水で、膜を構成する分子構造の隙間や多孔質部に電解液が染み渡ることができる素材で、外部の大気からの圧力で空気を透さない膜である。実施例ではセロファンを使用した。セロファンの孔径は1nm前後と言われており水分子の太い幅方向0.38nmがやっと通過する。ここまで小さいと熱運動や分子間力等の支配が大きくなり状態の詳細説明ができないが、染みた水分子はセロファンの大気側表面まで到達していて少量蒸発をしている。その水分子を触媒層2に接触させる。実施例としてセロファンを使用したが、前述した特徴をもった代替材があれば特に指定しない。
空気極4には、電解液水面16から1cm高くなるにつれて約1kPa(10g/cm)の大気からの圧力に耐える強度と気体密封性が必要である。
気液分離膜1は孔径によって、大気からの圧力に耐える気体密封性に限界があり、実施したセロファンでは電解液水面16から高さ15cmあたりで気泡が電解液側に現れてしまい空気極の性能が下がる。膜の特性によって設置高さ、圧力の管理は注意したい。
また強度に関して、圧力支持部14は、まずステンレス200番メッシュ(線径0.05mm位、ピッチ0.13mm位)で薄膜である気液分離膜1を受け止め、次に20番(線径0.4mm位、ピッチ1.3mm位)、そしてキャップ型構造体5の梁で圧力を支えている。これらは残存気体を留まらせないよう構成する。
触媒層2は実施例としてStatex Productions社(ドイツ)の導電布MedTexP−180を使用した。ナイロンに銀をコーテイングしてあり、銀が導電と触媒の両方を兼ねるので使用した。他にも炭素繊維やニッケルコーテイング導電布なども導電性と触媒を兼ねる。
集電層3は銅網を使用した。触媒層2に良導電性があると言っても、10cm間程度の抵抗を計測すると銀コーティング導電布で2〜9Ω、ニッケルコート導電布で2〜3Ω、炭素繊維では接触圧力によって数十Ωと状況によって不安定である。乾電池の内部抵抗は4〜8Ω位にあるので、この空気電池も少しでも確実に安定して内部抵抗を下げるため集電層3は有った方が良い。
気液分離膜1,触媒層2,集電層3をセットにした空気極4を電解液8に接触させても電解液は染みてこない。発電を開始して徐々に染みてくるのである。なお、更にOHを生成する性能の良い空気極があればこれを特に指定しない。
発電を開始すると空気極は高湿になり、更に時間が経つと水浸しになる。空気極4に毛細管現象、サイフォンの原理を利用した導水体10を設置して、この余分な液体を下方へ排液する。実施例としてポリビニルアルコールを原料とした連続気孔の多孔質体を使用した。親水性が高く、微細気孔構造に基づく毛細管現象により、吸水性・保水性に優れている素材である。
導水体10の素材や空気極への接触面積、太さ、厚さなどの形状の調整により必要な濡れ具合を維持した状態を実現させる。
マグネシウム空気電池で使用する電解液8は塩化ナトリウム水溶液でphは7であるが、本実施例で空気極4に染みてくる電解液はph11〜12程度の強アルカリ性の液体である。また、染み出た液体を乾燥させると結晶と白い粉末が析出、塩化ナトリウムと酸化マグネシウムと思われる。
ここで電解液槽7に空気極4から染み出た液体を排液する事に着目してみる。空気中のOを使用した酸素原子部分を差し引いてもそれ以外の物質は電解液8から汲み上げられた物質で有るため(一部空気中の水分という説もある)、毛細管力のポンプによる永久機関に見えてしまいそうである。しかし回路をオープンにして発電を停止すると空気極4は乾燥していく、即ち汲み上げが停止する。この事から、汲み上げられた物質の位置エネルギーは、発電エネルギーの一部を内部抵抗として消費してもたらされたのではないかと考えられる。
次にこの実施例の組み立てについて説明する。キャップ型構造体5を電解液8の入った電解液槽7に設置する。キャップ型構造体5の内部には空気が残っているので、これを抜く作業を行う。気体溜まり部9はキャップ型構造体5の一番高い部分に有り、空気が最後まで残る部分として作り込む。ここに一方向排気弁を設けたり、また空気吸引ホースを下から挿入して空気を抜く。気体溜まり部9が電解液で満たされればキャップ型構造体5の内部全体が電解液で満たされる事となる。
不慮の空気の混入や発生、残存気体が有った場合でも空気極4の傾斜配置により気体溜まり部9に気体が集まり、空気極4と電解液8が非接触になる事を防止することができる。
前述したが気体溜まり部9は、内部を目視できる透明部材で構成したり、あるいは気体を感知するセンサーを有すれば、キャップ型構造体内部の空気を抜く時の気体の残存や動作中の気体の混入を監視ができる。
正極端子12と負極端子13を回路につないで発電を開始すると、負極材6のマグネシウム板から溶けたMg2+が、キャップ型構造体5に開けたイオン泳動窓11を通り空気極4、又はその付近でMg(OH)になり不溶化、沈殿する。
空気極4の電解液接触面は傾斜配置するも、おおむね下方を向いていることで、水流や対流が無くても空気極4に付着したMg(OH)は固着せず、少し大きくなると剥離して、沈殿していく。
そのまま発電を継続すると空気極4から生成するOHによって強アルカリ性の水域が、周辺の電解水と比べ僅かに比重が軽いため、キャップ型構造体5の上部から溜まり始める。強アルカリ性水域は空気極で生成したHOも含んだためにNaClが薄くなり比重が軽いと考えられる。その水域は対流は無く拡散力は弱い。そして強アルカリ性水域と、通常の電解水の境界面付近がMg(OH)の生成する反応場所になる。Mg2+は空気極に到達以前にこの水域に触れ水酸化物になるので、益々もって空気極に付着しない。
更に発電を継続すると、強アルカリ性の水域はキャップ型構造体5のイオン泳動窓11まで占めるようになる。この境界面付近にMg(OH)が層状に漂い、徐々に厚くなり、固まるように発達するため、OHは拡散しにくくなる。そこで攪拌手段15で強アルカリ性水域を時々拡散させる。また、攪拌手段15はポンプに限定されるものではない。この空気極を下向き配置したときの水酸化物が付着しにくい一連の現象は実施した実験で見いだしたことである。
本実施例での仕様、性能の概略を記述する。
空気極4は気液分離膜1に普通セロファン、触媒層2にStatex Productions社(ドイツ)の導電布MedTexP−180、集電層3に銅網を使用した空気極を使い、その実効面積約27cm2(3cm*9cm)、設置高さは電解液水面16から約5cm、傾斜角度約6度で設置。
電解液8は海水2Lを使用(塩分濃度約3重量%)。
負極材6は難燃性マグネシウム合金AZX612(権田金属工業AZ61+Ca2%添加他)、厚さ1mm、海水浸水部面積60cm2(15cm*4cm)。
攪拌手段はポリ洗浄ボトルで12時間に1回底に溜まったMg(OH)2を吸引回収しながら行った。回路は短絡させ続けて発電を実施した。
出力は解放電圧1.35V、短絡電流95mA、10Ω抵抗接続時の端子間電圧0.53V、電流54mA,(∴内部抵抗15Ω)の性能を負極が溶けて小さくなり始める手前まで約3日目までほぼ安定して出力する。その後負極が小さくなるにつれ短絡電流値は低下するが、初めの海水浸水部面積の30%位までに小さくなっても75mA、解放電圧は変わらず1.35Vであり、5日目で海水に浸かっていた部分は溶けきった。
1 気液分離膜
2 触媒層
3 集電層
4 空気極(正極)
5 キャップ型構造体
6 負極材(マグネシウム板)
7 電解液槽
8 電解液
9 気体溜まり部
10 導水体
11 イオン泳動窓
12 正極端子
13 負極端子
14 圧力支持部
15 攪拌手段
16 電解液水面

Claims (3)

  1. キャップ型構造体上部に空気極を有した物を、電解液の入った電解液槽内に浸け、キャップ型構造体内部の空気を抜いて電解液で満たすことにより電解液水面より上方に空気極と電解液の接触面を備え、その空気極には大気側から電解液側に圧力がかかることを特徴とする空気電池。
  2. 請求項1記載の空気電池において、電解液水面より上方にある空気極は毛細管現象、サイフォンの原理を利用した導水体を備えており、空気極に染みている余分な液体を電解液槽に再び戻す排液機能を有する空気電池。
  3. 請求項1〜2のいずれかに記載の空気電池において、空気極全体を水平面に対して傾斜して配置し、その上方に気体の最終残存部分になるように作り込まれた気体溜まり部を設けることにより、空気極と電解液の間の残存気体は気体溜まり部に移動し、空気極と電解液が確実に接触する機能を有し、また空気極と電解液の接触面が前記傾斜をもつ下向きのため水酸化物が付着しにくい特徴をもった空気電池。
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