JP5467473B2 - 走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡、その探針及び探針の製造方法。 - Google Patents

走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡、その探針及び探針の製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、走査型プローブ顕微鏡の範疇に含まれるもので、一本の探針−試料間距離一定モードで走査しイメージングを行うと共に電気化学イメージングを行う際に用いられる走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡、その探針及び探針の製造方法に関する。
1931年にE.Ruskaにより電子を利用した走査型電子顕微鏡(Scanning Electric Microscope; SEM)が開発された。SEMの分解能はオングストロームオーダーに達し、ウィルスやDNAの測定が可能であり、生化学の発展に多大の影響を与えた。しかし、真空中で測定が行われるため、生物を『生きた状態』で観測することはできない。
走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope;SPM)は、先端を非常に鋭く尖らせた微小な探針(プローブ)を用いて試料表面をなぞるように走査し、試料表面の状態を評価する分析システムである。1981年に開発された走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunnel Microscopy;STM)は、プローブのトンネル電流をフィードバックして垂直方向の分解能を原子・分子のレベルで制御でき、形状測定を行う。
SPMのバイオロジーへの応用は、1985年に原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy;AFM)が開発されたことに端を発する。AFMは導電性のない試料の測定も可能であるため、液中での生物を生きた状態で観察可能である。そのため、リアルタイムでイメージングを行うことで、ナノメートルスケールの生体分子の動的挙動が観察できる。しかし、溶液中で10nmほどの厚さの生細胞の形状を高解像度で測定することは、現在でも困難とされている。さらにAFMでは、極めて柔らかい試料や10μm程度の表面凹凸のある試料の測定が困難である。
走査型電気化学顕微鏡(Scanning Electrochemical Microscopy; SECM)は、プローブとしてマイクロ電極を用い、局所領域において試料表面に電極を近接させ電気化学反応種をファラデー電流として定量評価するものであり、微量で分解されやすい神経伝達物質や一酸化窒素の検出に有効である。この際、一定の電位に保持するため、充電電流の影響は現れない。また、局所的に化学反応を誘起させることが可能となり、生体試料の表面や代謝の評価に有効である。
電気化学測定は、時間分解能が非常に高く、in situで定量測定が可能であり、生体試料の計測に有効である。特に、マイクロ電極では、マクロ電極にはない次のような特徴を有する。
(1)酸化還元電位を印加した際にファラデー電流/充電電流が非常に大きく、高速・高感度な測定が可能である。
(2)測定電流が微小であるため、低電解質溶液中での測定が可能であり、IRドロップを抑えられる。
(3)電子移動反応が十分に速い場合、電気化学反応種が球面拡散状態となり、定常電流が得られる。
しかし、SECMはマイクロ電極を用いるため、STMやAFMのような解像度を得ることはできない。SECMにおいて、解像度の向上には電極半径の微細化と電極を試料に近接させる必要がある。
SECMの測定は、試料が生成した物質を電極が検出するGCモードと、電極でのレドックス反応により生成した物質を試料が再生し、再び電極表面で反応が起こるFBモードに大別できる。
GCモードは、はじめ溶液中に反応物が存在しないため、バックグラウンドの電流を非常に低くできる。そのため検出感度が非常に高い。また、酵素の反応時間とともに生成物が多くなるため、生成物を蓄積させることができる。細胞の代謝物(一酸化窒素、神経伝達物質)の検出は、GCモードである。
FBモードは、基質添加後の反応時間に影響を受けず、また、レドックスサイクルが電極−試料間距離に依存するため、解像度の高い測定が可能である。低濃度のメディエータを用いることで、電極でのメディエータの直接酸化電流を低く抑えることができる。金属パターンの測定や、親水性メディエータ(細胞膜を透過できない)を用いた細胞の形状測定がFBモードである。
電気化学反応種が溶液に均一に存在する系では、探針の高さを一定に保ち測定を行うと、試料表面の凹凸に対応してFB効果が働き、形状測定が可能である。しかし、形状ではなく生細胞の代謝物などを測定する不均一系では、細胞の凹凸によるネガティブFB効果を無視できなくなる。また、代謝物の濃度は距離に反比例するので、細胞からの距離が離れるほど低くなる。そのため電極を細胞に近接させる必要がある。しかし、電極が微細な場合に、電極を検出可能な距離、すなわち電極半径以下まで近接させることが困難となる。このように、微小電極を用いた検出物の高感度測定には望まないFB効果の除去が不可欠であり、電極―サンプル間距離をできる限り近づけ、一定に保つ制御システムを導入する必要がある。
走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、先端を非常に鋭く尖らせた探針と試料との間に生じる作用を利用して探針と試料との距離を一定に保つ形状測定モードと、表面で生じる作用から表面状態を観察する表面観察モードとに大別される。表面観察モードによる測定では、探針を水平移動させるのが一般的であるが、凹凸の激しい生体試料では、できるだけ探針を試料に近接させる必要がある。そのため、一般的に、探針と試料との力学的な相互作用を利用して、探針を試料に対して一定距離に近接させ測定を行う形状測定モードが採用されている。
SECMは、試料表面の近傍の化学的な変化を高解像度で観察するための顕微鏡であり、試料が設置されている電気化学セルおよび四つの電極、即ち、プローブとしてのtip電極、試料側の電極、対極(auxiliary)及び参照(reference)電極とそれらの電極信号の検出・制御用のバイポテンショスタットとを含んで構成され、試料表面の近傍を微小探針でスキャンし、微小探針で起こる反応を画像化し、又は反応速度の定量を行うなどのために使用する顕微鏡である。
SECMは、二次元ステージに載置した試料に対応する上方の任意の高さに探針(プローブ)を位置させ、コンピュータ制御でステージを駆動し試料を二次元方向に走査し、探針で試料表面の近傍をスキャンし、試料の局所領域の化学反応に関する定量的な情報を微小探針で得ることができ、または微小探針で局所領域に化学反応を誘起することができかつ化学反応の定量的な情報を微小探針で得ることができ、微小探針で得られた定量的な情報についてバイポテンショスタットを用い、酸化還元反応下での局所的情報を直流電気信号で検出し、電気化学イメージングを行い、すなわち、画像化・視覚化を行い、電気化学計測、データ解析を行う顕微鏡である。
SECMは、生体・細胞サンプル、細胞及び生体膜の機能評価、半導体などの材料の評価・表面観察・修飾加工、局部腐食、液/液界面を経由するイオン・電子移動反応、電極表面研究など、幅広い分野の研究で応用されてきた。
SECMは、特に、局所領域の電気化学反応種の定量に有効であり、生体試料をその場で測定できるため、生体分子の機能評価に応用されてきた。SECMによる電気化学測定は、時間分解能が非常に優れているため、リアルタイムで細胞表面の状態を評価可能であるが、細胞表面の局所領域における試薬に対する応答を評価するには、局所領域での試薬のインジェクションを同時に行う必要がある。生体試料の測定においても距離制御は重要であり、できる限り電極を試料表面に近接させる必要がある。
SECMは、溶液中で電気化学測定を行う際、試料形状の影響を受けずに測定するには電極一試料間距離を一定にする必要があるが、高性能な距離制御機能を有していない。SECMは、形状測定モードにおいては、溶液中で電気化学測定を行う際、力学的相互作用が極めて低感度になるので、高性能な距離制御機能を有していないから高精密な電気化学イメージングが行えなかった。即ちSECM研究では、SPMのカテゴリーの中では例外的に、ほとんどの画像が距離制御機構を用いない高さ一定モードで取得されてきた。
SECMでは、constant current 距離制御が行われてきた。constant current 距離制御は、XY座標の変化に合わせて測定されるファラデー電流の電流値が一定となるように電極をZ方向に対して距離制御を行いながら走査する。SECMでは、距離制御のためのプローブの加工が必要なく、電極の微細化、すなわち、電極半径およびRGを小さくすることにより形状測定の解像度が向上する。
Constant Current距離制御の弱点は、導電性と絶縁性の混在した試料の測定ができないこと、ファラデー電流がフィードバック信号に使用されてしまうため、凹凸以外に試料表面の情報を取得できないこと、試料表面に電極を近接させる際に、従来の力学的相互作用を利用した距離制御システムが、試料に対してダメージを与える虞があること、が挙げられる。
そこで従来から、SECMについて、高性能な距離制御機能を保有させる研究が行われている(非特許文献1〜10)。
非特許文献1には、SchuhmannらがSECMにシアフォース距離制御を取り入れたが、生細胞のイメージングには成功していないことが報告されている。非特許文献2には、Macphersonらは、原子間力顕微鏡に用いられる距離制御をSECMに導入したが、AFMプローブの形状の影響で表面の状態を詳細に捉えることが困難であることが報告されている。非特許文献3には、Wipfらにより、インピーダンス距離制御も考案されたが、電極が微小になると距離制御が困難となることが報告されている。
非特許文献4には、イオン電流計測用電極に一定電位を印加し、探針を試料に近接させると溶液抵抗が上昇し探針−試料間距離がイオン電流値に依存して変化する現象が観測されるため、その距離範囲でイオン電流値が一定になるよう探針を試料と並行に、X−Y平面、すなわち水平方向に走査することにより試料の形状イメージングを得ることができる、という報告がなされている。ところが、イオン電流値の安定性、探針の強度、探針−試料間の距離制御機構など技術的困難が多く、一般的に使用されるには至っていなかった。
非特許文献5には、1997年からKorchevらが精力的に走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(Scanning ion-conductance microscope; SICM)のイメージングの改良に取り組んだことが報告されている。SICMは、1989年にHansmaにより発明されたイメージング技術であり、探針として、ガラスキャピラリに、電解液を充填し後方から電極を挿入したイオン電流計測用電極を用いている。
現在では、AFMでも取得困難な、極めて柔らかく、表面の高低差が著しい試料の形状を取得することが可能となったことが非特許文献6で報告されている。
ナノピペットをプローブとして用いてピペット先端部のイオン流をイオン電流として捉え、その信号をフィードバック制御することで溶液中の細胞表面の形状測定を完全に非接触で行うことが可能である。この特徴からSNOM(走査型近接場光学顕微鏡)との融合技術が開発されたことが非特許文献7で報告されている。
本発明の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡およびその探針に対応する、電気化学計測とイオン電流計測の同時取得の検討およびそれを可能とする探針の開発の試みは、これまでに報告例がある(非特許文献8、非特許文献9)。非特許文献8でBardらにより、また非特許文献9でBaurらにより、それぞれプローブの先端部の形状が類似した探針電極についての報告がされているが、ナノメートルオーダーの先端径を実現するには至っていない。
Ludwig, M.; Kranz, C.; Schuhmann, W.; Gaub, H. E., Review of Scientific Instruments 1995, 66, 2857-2860. Macpherson, J. V.; Unwin, P. R.; Hillier, A. C.; Bard, A. J., J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 6445-6452. Kurulugama, R. T.; Wipf, D. O.; Takacs, S. A.; Pongmayteegul, S.; Garris, P. A.; Baur, J. E., Anal. Chem. 2005, 77, 1111-1117. Hansma P. K. et al, Science 1989, 243, 641-643. Korchev Y. E. et al, Biophys. J. 1997, 73, 653-658. Novak P. et al, Nature Methods, 2009, 6, 279-281. Korchev, Y. E.; Raval, M.; Lab, M. J.; Gorelik, J.; Edwards, C. R. W.; Rayment, T.; Klenerman, D. Biophys. J. 2000, 78, 2675-2679. Walsh, D.A.; Fernandez, J. L.; Mauzeroll, J.; Bard, A. J. *, Anal. Chem., 2005, 77, 5182-5188. Spaine, T. W.; Baur, J. E., Anal. Chem. 2001, 73, 930-938.
本発明者らも、探針の製作において、イオン電流と酸化還元電流の同時取得を試みた。その結果、ナノメートルスケールの微細な開口を有するプローブの作製は極めて困難であった。また、プローブの外面に金属層を形成するスパッタリングを行う際に、ガラス表面が疎水化するため、プローブの空洞部の電解質と測定溶液とを導通させることが困難であった。そのため、再現性の良い微小電極を有する探針の製作が困難であった。また従来の距離制御を行わない高さ一定モードSECMでは、数10マイクロメートル四方のイメージング領域で単一細胞レベルの測定が空間分解能の限界であった。
上述したように、SECMを用いた電気化学測定を単一細胞の局所領域で行うには、高感度化が不可欠であり、拡散する電気化学反応種を計測するため、電極を微細化することと電極を試料表面に近接させることとが必要である。
本発明は、上述した点に鑑みて案出されたもので、生体素子(試料)の局所領域の生体反応(化学的な変化)を高解像度で画像化して観察することができると共に、生体素子(試料)の局所領域の表面形状を高解像度で画像化して観察することができる走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡およびその探針を提供することを目的としている。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、探針について、先端径、リング電極径、絶縁層の膜厚などのパラメータを最適化し、先端面にSECM電極だけでなく、中空部を露出させイオン電流計測のための開口を形成し中空部内にSICM電極を備え、さらに、探針の先端の微小電極と試料との距離を制御する際のフィードバック信号としてイオン電流を利用することとした。その結果、本発明者らは、SICMの距離制御システムをSECMに取り入れることができ、SECMにSICMを融合させ、探針の微小な先端に形成したSECM電極及び開口を試料に対して完全非接触に近接させることが可能であり、SICMに基づく高分解能を有する形状イメージングと電気化学イメージングの同時取得が可能な微小電極を有する探針の製作に成功し、距離制御による電気化学測定の高感度化と局所領域での試薬のインジェクションを実現した。
上記構成により、nmオーダのSECM−SICM探針(機能複合型探針)を実現でき、かつ、イオン電流を利用したフィードバック距離制御システムにより探針と試料とを非接触・近接状態に距離一定として走査できるので、細胞表面の局所領域の形状計測と電気化学計測とをクロストークなく、高解像度の電気化学イメージングと形状イメージングとを同時に行えて、細胞表面の局所領域の評価が可能となった。
本発明の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針は、
ナノメートルオーダーに先鋭化した先端面と、先端面の開口により露出される中空部とを有する探針本体と、探針本体の中空部の内周面に炭素層が形成されその先端が探針本体の先端面において開口を取り巻いてリング状に露出して構成され、探針−試料表面間の電気化学反応に起因するファラデー電流を計測するSECM電極と、
中空部内に備えられ、中空部内に満たされる電解質の開口からの流出量に応じたイオン電流を計測するSICM電極と、
を有してなり、
SECM電極とSICM電極に独立に電圧が印加されてファラデー電流と上記イオン電流とを干渉を起こすことなく同時に検出することを特徴とする。
本発明の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針は、
ナノメートルオーダーに先鋭化した先端面と、先端面の各開口により露出される2つの中空部とを有する探針本体と、
探針本体の一方の中空部に導電線が配置されてその開口を塞ぐと共に該導電線の先端がこの開口に露出して構成され、探針−試料表面間の電気化学反応に起因するファラデー電流を計測するSECM電極と、
探針本体の他方の中空部内に備えられており、他方の中空部内に満たされる電解質の開口からの流出量に応じたイオン電流を計測するSICM電極と、
を有してなり、
SECM電極とSICM電極に独立に電圧が印加されてファラデー電流とイオン電流とを干渉を起こすことなく同時に検出することを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、探針本体が、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイト又はクオーツキャピラリの中空基材からなる。
上記構成において、好ましくは、SECM電極を形成する金属線が金又はプラチナからなる。
上記構成において、好ましくは、SICM電極を形成する金属線が銀/塩化銀電極からなる
上記構成において、好ましくは、電解質が流出する中空部の開口径が1μm以下、さらに好ましくは、10nm〜100nmである。
上記構成において、好ましくは、SECM電極の半径が1μm以下、SICM電極を収容する中空部の開口径が1μm以下である
本発明の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡は、探針を備えており、探針を、SICM電極で計測したイオン電流を距離制御フィードバック信号に利用しつつ、探針−試料間距離一定モードで試料表面に沿って相対的に走査移動し、SECM電極で電気化学イメージングを行うと共に、SICM電極で形状イメージングを行うことを特徴とする。
本発明の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡の探針の製造方法は、
一つの中空部を有する中空基材の一端をプラーで引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化し、
次いで、中空部にブタンガスを充填して炭化させることにより中空部の内周面に炭素層を形成し、
一端を先鋭化して中空部内周面に炭素層を形成した中空基材の先端を、集束イオンビームで切断することにより、
中空基材を先鋭化した先端部を有しかつ中空部が露出する先端面を備えた探針本体として形成すると共に、探針本体の先端面に露出する炭素電極層のリング状の端面部をもって構成されたSECM電極を備え
中空部に金属線を挿入することにより、中空部の開口から電解質の流出量に応じたイオン電流を計測するためのSICM電極としたことを特徴とする
本発明の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡の探針の製造方法は、
二つの中空部を有する中空基材の一方の中空部にSECM電極の形成用に金属線を挿入し、
次いで、プラーにより上記中空基材の先端部を金属線と共に引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化し、
次いで、集束イオンビームで上記中空基材の先端部を切断することにより、
他方の中空部が露出する開口を有する先端面を備えるとともに、先端面に一方の中空部の開口を閉塞した状態に露出形成された金属線の切断面部にて形成されるSECM電極を備え
他方の中空部に別の金属線を挿入することにより、他方の中空部の開口から電解質の流出量に応じたイオン電流を計測するためのSICM電極としたことを特徴とする
本発明の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡の探針の製造方法は、
二つの中空部を有する中空基材の一方の中空部にSECM電極の形成用に金属線を挿入すると共に、他方の中空部に易エッチング線を挿入し、
次いで、プラーにより中空基材の先端部を金属線及び易エッチング線と共に引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化しかつ二つの中空部の先端を閉鎖した状態とし、
次いで、易エッチング線を挿入した他方の中空部の先端部を露出して易エッチング線をエッチングして除去し、
次いで、集束イオンビームで上記中空基材の先端部を切断することにより、
他方の中空部が露出する開口を有する先端面を備えるとともに、先端面に一方の中空部の開口を閉塞した状態に露出形成された金属線の切断面部にて形成されるSECM電極を備え
他方の中空部に別の金属線を挿入することにより、他方の中空部の開口から電解質の流出量に応じたイオン電流を計測するためのSICM電極としたことを特徴とする
探針本体の先端部の切断は、熱封止、研磨あるいは集束イオンビーム(focused ion beam;FIB)を採用できるが、中でもFIBの採用が好ましい。中空基材の先鋭化した先端部についてFIBを利用して切断するSECM電極は、数百ナノメートルの電極を再現性よく作製することが可能である。ガラス表面の疎水化の問題については、界面活性剤を電解質に微量に加えることで解消した。これにより、再現性よく微小電極が作製可能であり、電極を試料に対して非接触で近接させる距離が安定して得られ、このため、局所領域において試薬のインジェクションを行う距離が安定し、その際の生体試料の応答を電気化学的に安定して検出可能である。
本発明によれば、イオン電流を利用したフィードバック距離制御システムにより探針と試料とを従来のSECMでは実現できなかったナノメートルオーダーの非接触の至近距離に一定に保てるので、細胞など柔らかい試料の電気化学計測とイオン電流計測とを同時に行える探針を安定して製造することができ、ナノメートルオーダーの電気化学イメージングと形状イメージングとを同時に行うことができる。
本発明によれば、さらに局所インジェクションにより、生体試料の応答を電気化学的に検出可能であり、さらに、SICMシステムでは、局所領域に、イオン、タンパク質、DNA、試薬などをインジェクション可能であり、SECMと融合させることで、局所刺激に対応した応答を検出可能となる。
本発明によれば、電気化学計測とイオン電流計測とを同時に行える探針を実現したものであり、さらに、イオン電流を距離制御フィードバック信号に利用したので、探針−試料間距離の距離制御、並びに形状イメージの空間分解能が、先端径(直径)に依存しほぼ同等となる。例えば、先端径(直径)10nmであれば、探針−試料間距離がほぼ10nmになり、形状イメージの空間分解能がほぼ10nmとなり、また先端径(直径)1μmであれば、探針−試料間距離がほぼ1μmになり、形状イメージの空間分解能がほぼ1μmとなる。
本発明によれば、生体素子(試料)の局所領域の生体反応(化学的な変化)をナノメートルオーダーの高解像度で画像化して観察することができると共に、生体素子(試料)の局所領域の表面形状をナノメートルオーダーの高解像度で画像化して観察することができる。
本発明の一実施形態に係る走査型電気化学イオンコンダクタンスの模式的な全体構成図である。 (a)は、上記一実施形態に係る走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針の先端部の模式的な断面図であり、(b)は端面図である。 図2の探針による試料表面の電気化学イメージングを行う状態を示す図である。 図2の探針の開口より電解質などのイオン流に基づくイオン電流を計測してリング型の探針と試料との距離を算出しイオン電流をステージのZ軸のフィードバック信号に利用して形状イメージングを行う状態を示す図である。 (a)は、他の実施形態に係る走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針の先端部の模式的な断面図であり、(b)は端面図である。 (a)は、他の実施形態に係る走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針の先端部の模式的な断面図であり、(b)は端面図である。 図6の探針による試料表面の電気化学イメージングを行う状態を示す図である。 図6の探針の開口より電解質などのイオン流に基づくイオン電流を計測してダブルバレル型の探針と試料との距離を算出しイオン電流をステージのZ軸のフィードバック信号に利用して形状イメージングを行う状態を示す図である。 (a)は図2の探針の先端部の電子顕微鏡像、(b)は図2の探針の先端面をさらに拡大した電子顕微鏡像、(c)は図2の探針のサイクリックボルタモグラムである。 (a)は導電性基板のファラデー応答特性曲線を示すグラフであり、(b)は導電性基板のイオン電流応答特性曲線を示すグラフである。 実施例3に係り、(a)は西洋ワサビペルオキシダーゼパターンの形状イメージ、(b),(c)は電気化学イメージである。 実施例4に係り、(a),(c)はグルコースオキシダーゼ固定化基板の形状イメージ、(b),(d)は電気化学イメージである。 実施例5に係り、(a),(b),(c)は異なる部位のラット心筋細胞の形状イメージおよび電気化学イメージである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
〔第1の実施形態:顕微鏡の全体の構成及び顕微鏡測定法〕
図1に示すように、この実施形態に係る走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡(走査型SECM−SICM顕微鏡ともいう。)1は、X−Y方向に移動するX−Yステージ2と、X−Yステージ2上に備えられた容器3と、容器3の底面に置かれる試料Tが設置される電気化学セル4と、探針21と、試料電極(Sample Electrode)5と、対極6(Counter Electrode)と、参照電極(Reference Electrode)7と、それらの電極信号の検出・制御用のバイポテンショスタット8と、探針21をZ軸方向に移動制御するZステージ9と、X−Yステージ2及びZステージ9を移動制御しかつバイポテンショスタット8の制御信号に基づいて画像表示する制御装置(PC)10と、を含んで構成される。バイポテンショスタット8は、一つの溶液系に対極6と参照電極7及び二つの作用電極を挿入し、参照電極7のターミナル電位に対する作用電極のターミナル電位をそれぞれ任意に規制して、各作用電極を流れる電流を測定し、測定情報を制御装置(PC)10へ出力する。
この実施形態では、制御装置10は、X−Yステージ2を駆動して探針21を試料Tに対して相対的に走査したとき、探針21の先端面の開口25cから流出する電解質に含まれるイオン電流をSICM電極27で計測し(図2参照)、このイオン電流を距離制御フィードバック信号に利用し、距離Zステージ9で探針21をZ軸方向に移動制御して探針21と試料Tとの隙間が一定に保たれるようにする。
探針21は、詳細な構成については後述するが、適用できるタイプが複数ある。例えば、図2に示す探針21は、中空基体の一端をナノメートルオーダーに先鋭化しかつ先端を切断して中空部25aに満たす電解質を流出する開口25cを有して形成された探針本体25Aの先端面に、探針−試料表面間の電気化学反応に起因するファラデー電流を計測する直径1μm以下のSECM電極26Aを備え、さらに上記中空部25a内に上記開口25cから流出する電解質のイオン電流を計測するSICM電極27を備えてなる。
上記構成のSECM−SICM顕微鏡1によれば、探針21を、SICM電極27で計測するイオン電流を距離制御フィードバック信号に利用しつつ、探針−試料間距離一定モードで試料Tの表面に沿って相対的に走査移動し、SECM電極26Aで探針−試料表面間の電気化学反応に起因するファラデー電流を計測し試料表面の電気化学イメージングを行うと共に、SICM電極27でイオン電流を計測し試料表面の形状イメージングを行う。
この構成によれば、探針−試料間距離の距離制御、並びに形状イメージの空間分解能は、先端径(直径)に依存しほぼ同等となる。例えば、先端径(直径)10nmであれば、探針−試料間距離がほぼ10nmになり、形状イメージの空間分解能がほぼ10nmとなり、また先端径(直径)1μmであれば、探針−試料間距離がほぼ1μmになり、形状イメージの空間分解能がほぼ1μmとなる。
容器3には、メディエータとして低濃度、例えばフェロセンメタノールを0.5mM含む測定溶液が充填される。
SECMおよびSICMのフィルタリング速度をそれぞれ40Hz、1kHzとして測定を行うのが良い。X−Yステージ2には、Physic Instruments(PI)社の621.2CLを用いることができ、またZステージ9には、Physic Instruments(PI)社のピエゾ素子を駆動源とする621.ZCLを用いることができ、ステージコントローラからピエゾ素子を駆動する電圧を印加する。ステージコントローラの制御および電流信号の制御装置(PC)10への取り込みは、Digital Signal Processor (DSP)を用いることができる。DSPは、PI制御の演算処理を予め書き込むことで、PCを介さずにフィードバック制御を行うことが可能であり、制御を高速化できる。
走査型SECM‐SICM顕微鏡は、X−Yステージ2に載置した試料Tに対応する上方の任意の高さに探針21(プローブ)を位置させ、コンピュータ制御でX−Yステージ2を駆動して試料Tを二次元方向に走査し、探針21で試料Tの表面の近傍をスキャンする。電気化学測定系には、バイポテンショスタット8として、通常のバイポテンショスタットの性能を持ちかつ高い時間分解能、即ち速い応答時間で電流計測を可能とする、2chのパッチクランプアンプ(Axon Instruments社のCurrent Amplifier, Multiclamp 700B)を用いる。SECM電極26Aは、試料Tの局所領域の化学反応に関する定量的な情報を微小な探針21で得ることができ、または探針21で局所領域に化学反応を誘起することができかつ化学反応の定量的な情報を得ることができる。探針21で得られた定量的な情報についてバイポテンショスタット8を用い、酸化還元反応下での局所的情報を直流電気信号で検出し、電気化学イメージングを行うことができる。すなわち、PC10の表示装置にイメージを表示し視覚化を行い、電気化学計測、データ解析を行うことができる。
なお、ステージ9がなくステージ2がX−Y−Z方向に移動するX−Y−Zステージとして構成されていても良いし、あるいはステージ2がなくステージ9が探針21をX−Y−Z方向に移動するX−Y−Zステージとして構成されていても良い。
〔第2の実施形態:探針21の構成及び製造方法〕
図2〜図4に示すように、この実施形態の探針21は、探針本体25Aと、SECM電極26Aと、SICM電極27とを有してなる。
探針本体25Aは、一つの中空部25aを有する中空基材を使用してなる。探針本体25Aは、中空基材の一端を炭酸ガスプラーあるいは熱引きプラーにより引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化しかつ先端を集束イオンビームにより垂直に切断してなる先端部25bを有する。探針本体25Aの先端部25bの先端面には中空部25aを露出する開口25cを有する。
探針本体25Aを構成する中空基材には、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイトあるいはクオーツキャピラリを用いると、プラーによる引き伸ばしが良好に行われうる。
SECM電極26Aは、探針本体25Aに沿って絶縁状態に設けられた導電部の、探針本体25Aの先端面の開口25cを取り巻く状態に露出してなるリング状端面部でなる。この実施形態では、リング状端面部は、探針本体25Aを構成する中空基材の外周面を導電層26aで被覆され、さらに導電層26aの外周面を絶縁層28で被覆された状態で、プラーにより中空基材の先端部25bと一体に先鋭化されかつ集束イオンビームで先端を切断されることにより、探針本体25Aの先端面の開口25cを取り巻く状態に露出してなる。
導電層26aは、金属層であるのが好ましく、この実施形態では金(Au)又はプラチナ(Pt)を薄膜形成技術で、例えばスパッタリングにより200nmの膜厚となるように形成してなる。絶縁層28は、この実施形態では電着塗装により薄膜形成する好ましく、具体的には、被膜を形成するポリマーが、例えば、ポリアクリル酸であるように電着により10nm〜1μmの厚さとなるように形成することが好ましい。膜厚は蒸着膜の場合は蒸着時間により、電着膜の場合は電流または電着時間により制御する。絶縁層はパリレンCを用いてもよい。
SECM電極26Aは、該SECM電極26Aと試料Tの表面との間の電気化学反応に起因するファラデー電流を検出する。
SICM電極27は、中空部25a内に、この実施形態では銀線に塩化銀を析出させた銀/塩化銀電極を備えてなり、SECM電極26Aと独立に電圧を印加されて、該中空部25a内に満たされる電解質の開口25cからの流出量に応じたイオン電流を、ファラデー電流の検出と干渉を起こすことなく検出する。
電解質には例えばClイオンが含まれていることが好ましい。その他、局所インジェクションにより、生体試料の応答を電気化学的に検出するために、電解質には、他のイオン、タンパク質、DNA、試薬などを含めて電気泳動を利用してインジェクションが可能であるようにすることが望ましい。
電解質が流出する中空部25aの開口25cの径は、1μm以下であることが好ましく、さらに、10nm〜100nmであることが一層好ましい。
これらの寸法は、探針23の最適化のパラメータであり、探針−試料間の距離制御、並びに形状イメージの空間分解能は、イオン電流を距離制御フィードバック信号に利用することと相俟って、開口25cの直径に依存しほぼ同等となる。例えば、開口25cの直径が10nmであれば、探針−試料間距離がほぼ10nmになり、形状イメージの空間分解能がほぼ10nmとなり、また開口25cの直径が1μmであれば、探針−試料間距離がほぼ1μmになり、形状イメージの空間分解能がほぼ1μmになる。
図3は、探針21のリング型のSECM電極26Aにより試料表面の電気化学計測を行い電気化学イメージングを行う状態を示す図である。SECM電極26Aは、試料の局所領域の表面に近接させると電気化学反応種をファラデー電流として酸化還元電流を観測することができる。探針2を試料Tから一定距離以上遠ざけると、探針21のSICM電極27において得られる電流は定常状態になる。探針21を試料Tに近づけると、OのポジティブフィードバックによりSICM電極27において得られる電流が増加し、探針21を試料Tから遠ざけると、Oの拡散が妨げられSICM電極27において得られる電流が減少する。
図4は、SICM電極27に係り、探針21の先端開口25cより流出する電解質に含まれるイオン流に基づくイオン電流を計測し、イオン電流をステージのZ軸のフィードバック信号に利用し探針−試料間距離を一定となるように制御して試料表面の形状イメージングを行う状態を示す図である。探針21は、探針21の中空部25aが探針21の先端で露出しており、イオン電流計測や薬剤導入−回収が可能である。
生細胞のように柔らかい試料の測定を行うための、SICMの距離制御は、2chのパッチクランプアンプを用いることで、SICM極、SECM極の電流のフィルタリング速度、ならびに印加電位を、それぞれ独立に設定することができ、SICMおよびSECMのフィルタリング速度をそれぞれ1kHz、40kHzとして測定を行うようにすると、低電流(nA−pA)を高速(1kHz以上)で検出することができ、もってSICMの距離制御を行うことができて、生細胞のように柔らかい試料のSICMイメージングを行うことができる。バイポテンショスタット8では、応答速度が非常に遅く(1−10Hz)測定が困難であるので、SICMの距離制御は行えない。
この実施形態の探針21は以下のように製造することができる。
まず、一つの中空部25aを有する中空基材25A’の外周面に導電層26aをスパッタリングにより被覆形成し、次いで該導電層26aを電着塗装のための一方の電極として該導電層26aを覆う絶縁層28を形成し、次いで先端部をプラーで引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化し、次いで集束イオンビームで先端部を切断することにより中空部25aが開口25cにて露出する先端面を備えた探針本体25Aを形成すると共に、上記切断により形成する先端面に同時に露出する金属層24のリング状の切断面部をもって構成されたSECM電極26Aを備え、中空部25aに電解質を満たすと共にSICM電極27を備える。
FIBは、探針21で試料表面の観察を行いながら探針21の先端部の切断が可能なため、特定の大きさのリング型電極を再現性よく作製可能となった。さらに、開口25cと導電層26aの直径が非常に小さく、しかも探針21の端面に形成されているため、試料Tに対して探針21をアプローチさせやすく、試料Tに近接するリング部分の面積も、従来のコーンタイプに比べ広いため、試料の表面状態の測定に有効である。
これに対し、従来のSECM顕微鏡における探針の製造方法によれば、電着塗料の収縮を利用して開口の回りにコーン形状にSECM電極を露出形成していたので、SECM電極を再現性よく露出させることは困難であった。また、コーン形状の電極は、理論的な解析が困難であり、試料に近接する電極面積が狭いため、表面状態を顕著に捉えることができなかった。
〔第3の実施形態:探針22の構成及び製造方法〕
(内周リング型SECM電極とSICM電極との複合機能探針)
図5に示すように、この実施形態の探針22は、探針本体25Aと、開口25cの内周に設けられるSECM電極26Bと、SICM電極27とを有してなる。
探針本体25AとSICM電極27は、第2の実施形態の探針本体25AとSICM電極27の構成と同一である。探針本体25Aは、一つの中空部25aを有する中空基材を使用し、一端25bをプラーあるいは熱引きプラーにより引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化しかつこの先端部25bの先端を集束イオンビームにより垂直に切断してなる先端面に開口25cを有している。SICM電極27は、中空部25a内に、この実施形態では銀/塩化銀電極を備えてなる。
SECM電極26Bは、第2の実施形態のSECM電極26Aの構成と相違している。SECM電極26Bは、探針本体25Aの中空部25a内に薄膜状に形成された導電部26bの、開口25cの内周縁に露出してなるリング状端面部である。この導電部26bは、炭素層であり、具体的には、中空基材の一端がプラーにより先鋭化された後にブタンガスを導入し炭化して薄膜状に形成されている。
探針22は以下のように製造することができる。
一つの中空部25aを有する中空基材の一端をプラーで引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化し、次いで上記中空部25aにブタンガスを充填して炭化させることにより中空部25aの内周面に導電部として炭素層26bを被覆形成し、次いで集束イオンビームで中空基材の先端部25bの先端を切断することにより、先鋭化した先端部25bを有しかつ先端面に中空部25aが露出する開口25cを備えた探針本体25Aとしている。そして、炭素層26bの、探針本体25Aの先端面に露出するリング状の端面部をもってSECM電極26Bを構成している。
〔第4の実施形態:ダブルバレル型の探針23の構成及び製造方法〕
図6(a),(b)に示すように、探針23は、一の実施形態に係るダブルバレル型の探針であり、ダブルバレル型の探針本体25Bと、SECM電極26Cと、SICM電極27とを有してなる。
探針本体25Bは、隔壁によって分割された二つの中空部25a,25aを有する中空基材により形成されている。探針本体25Bは、中空基材の一端を炭酸ガスプラーあるいは熱引きプラーにより引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化した先端部25bを有しかつ先端を集束イオンビームにより垂直に切断してなる先端面を有する。探針本体25Bの先端面には一方の中空部25aを露出する開口25cを有する。
探針本体25Bを構成するダブルバレル型の中空基材には、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイトあるいはクオーツキャピラリを用いる。
SECM電極26Cは、探針本体25Bの先端面の他方の開口を閉塞し面一に露出してなる導電線26cの端面部である。SECM電極26Cは、導電線26cが探針本体25Bの他方の中空部25aに挿入されて探針本体25Bによって絶縁状態に設けられ、この状態で、プラーにより中空基材の先端部25bと一体に先鋭化されることで、導電線26cの断面が中空部25aの先鋭化による縮径断面に対応した異形となり、かつ集束イオンビームで先端を切断されることにより形成された露出断面部である。
導電線26cは、この実施形態では金(Au)又はプラチナ(Pt)の線が用いられている。
図7に示すように、SECM電極26Cは、該SECM電極26Cと試料Tの表面との間の電気化学反応に起因するファラデー電流を検出する。
SICM電極27は、中空部25a内に、この実施形態では銀/塩化銀電極を備えてなり、図8に示すように、SECM電極26Cと独立に電圧を印加されて、該中空部25a内に満たされる電解質の開口25cからの流出量に応じたイオン電流を、ファラデー電流の検出と干渉を起こすことなく検出する。
探針23は、探針本体25Bの先端外径が1.5μm以下であり、SECM電極26Cの直径が1μm以下、開口25cの直径が1μm以下であることが望ましい。
これらの寸法は、探針23の最適化のパラメータであり、探針−試料間の距離制御、並びに形状イメージの空間分解能は、イオン電流を距離制御フィードバック信号に利用することと相俟って、開口25cの直径に依存しほぼ同等となる。例えば、開口25cの直径が10nmであれば、探針−試料間距離がほぼ10nmになり、形状イメージの空間分解能がほぼ10nmとなり、また開口25cの直径が1μmであれば、探針−試料間距離がほぼ1μmになり、形状イメージの空間分解能がほぼ1μmになる。
この実施形態の探針23は以下のように製造することができる。
二つの中空部25a,25aを有する中空基材の上記一方の中空部25aにSECM電極26Cを形成するための導電線26cを挿入し、次いでプラーにより中空基材の先端部25bを導電線26cと共に引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化し、次いで集束イオンビームで先鋭化した先端部25bの先端を切断することにより、先端面に上記他方の中空部25aが露出する開口25cを備えるとともに、該先端面に上記一方の中空部25aの開口を閉塞した状態に露出形成された導電線26cの切断面部にて形成されるSECM電極26Cを備え、上記他方の中空部25aに電解質を満たすと共に該電解質の開口25cからの流出量に応じたイオン電流を計測するSICM電極27を備える。
〔第5の実施形態:ダブルバレル型の探針の製造方法〕
図6(a),(b)に示す探針23について、他の製造方法について説明する。
第1工程:二つの中空部を有する中空基材の一方の中空部にSECM電極26Cを形成するための金属線、例えば金線(Au)又はプラチナ線(Pt)を挿入すると共に、他方の中空部に易エッチング線、例えば銅線(Cu)を挿入する。
第2工程:プラーにより中空基材の先端部を金属線及び易エッチング線と共に引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化しかつ金属線を挿入した側の中空部の先端を閉鎖した状態とする。
第3工程:易エッチング線を挿入した上記他方の中空部25aの先端部を露出して易エッチング線をエッチングにより除去する。易エッチング線は銅以外であっても、銀、金または白金であっても電解エッチング法により開口を作製することができる。
第4工程:集束イオンビームで中空基材の先端部を切断することにより、易エッチング線を除去した側の中空部25aを先端面で露出させる開口25cを備えるとともに、金属線を挿通した側の中空部の開口を該金属線で閉塞した状態として、該金属線の切断面部にて形成されるSECM電極26Cを備える。
第5工程:易エッチング線を除去した側の中空部25aに、電解質を満たすと共に該電解質の該中空部の開口25cからの流出量に応じたイオン電流を計測するSICM電極27を備える。
さらに具体的に実施例により本発明を説明する。
〔チップの形状〕
従来のプローブの作製は、電着塗料の収縮を利用して開口25cを形成していたが、SECMに用いる電極部を再現性よく露出させることは困難であった。また、コーン形状の電極は、理論的な解析が困難であり、試料に近接する電極面積が狭いため、表面状態を顕著に捉えることができなかった。
そこで、FIBを用いて探針本体を構成する中空基体の先鋭化した先端部について、先端面を形成するための切断を行った。FIBは、プローブで試料表面の観察を行いながら切断が可能なため、特定の大きさのリング型電極を再現性よく作製可能となった。さらに、絶縁部と金属部が非常に小さいため、基板に対してプローブをアプローチさせやすく、試料に近接するリング部分の面積もコーンに比べ広いため、試料の表面状態の測定に有効である。
〔測定システム〕
電気化学測定系には、2chのパッチクランプアンプ(Axon Instruments社のCurrent Amplifier, Multiclamp 700B)を用いた。ここでは、2chのパッチクランプアンプバイポテンショスタット8の場所に、上記2chのパッチクランプアンプをそのまま置き換えて使用した。
SICMの距離制御には、低電流(nA−pA)を高速(1kHz以上)で検出する必要があり、バイポテンシオスタットでは、応答速度が非常に遅く(1−10Hz)、生細胞のように柔らかい試料の測定が困難であった。さらに、2chのパッチクランプアンプでは、SICM極、SECM極の電流のフィルタリング速度、ならびに印加電位を、それぞれ独立に設定できる。
本測定では、SICMおよびSECMのフィルタリング速度をそれぞれ1kHz、40Hzとして測定を行った。電極走査系にはピエゾステージを用いた。
Physic Instruments(PI)社の621.2CLをX−Yステージ、621.ZCLをZステージとし、ステージコントローラから電圧を印加した。ステージコントローラの制御および電流信号のPCへの取り込みは、Digital Signal Processor (DSP)を用いた。
DSPは、PI制御の演算処理を予め書き込むことで、PCを介さずにフィードバック制御を行うことが可能であり、制御を高速化できる。
〔測定プログラム〕
ステップ(1) はじめに試料から十分に離れた位置でプローブを高い状態に保ち初期電流値を決定(測定時間2ms)
ステップ(2) PI制御により、プローブを試料に対して近接(近接スピード50μm/s)
ステップ(3) (2)を初期電流値から1%減少する点まで繰り返す(所要時間10−200ms)
ステップ(4) SECM測定(50ms)
ステップ(5) プローブを上昇後(上げ幅0.5−10μm、上昇後ピエゾが動くまでの待ち時間2ms)
ステップ(6) XY方向へプローブを移動(ピエゾが移動するまでの待ち時間10ms)
この動作を繰り返すことで各測定点において探針−基板間距離が1点に定め、形状イメージ(z座標のプロット)を取得した。この測定では、プローブの上下運動に要する時間が非常に長い。DSPボードを導入することで、1イメージを6分で取得可能となった。
〔探針の構造及び製造方法〕
鉛ドープされたソーダガラス管の先端部を熱引きプラーを用いて先鋭化し、内径0.86μm、外径1.50μmの鉛ドープされたソーダガラス管とする。次に、ソーダガラス管との周囲に、スパッタリングにより200nmの金層を形成する。次に、銀ペーストを接着剤として用いて、金層に導線を接続する。次に、白金線を対極に用いて、アノーディック電着塗料ELECOAT AE−X(株式会社シミズ製)(塗膜を形成するポリマーはポリアクリル酸)に浸す。電着は二電極式で行う。すなわち、参照電極、対極用の2本のケーブルで白金線をポテンシオスタットにつなぎ、金層を陽極、白金線を陰極にして、2Vの直流電圧を120秒間印加し、金層上に絶縁性電着塗料層を形成する。次に、水洗後、オーブンに入れ、150℃、30分間の熱処理を行い、電着塗料膜をしっかりと固化、乾燥させる。次に、絶縁層を形成後に、フォーカスイオンビームにより、先端部を切断することでリング型の電極の形成と、中空の空洞部を露出させる。
上記の探針の製造方法により作成した電極の電子顕微鏡(SEM)写真を示す図9(a),(b)によれば、リング電極と中空の空洞部を確認することができた。開口径、リング電極径、絶縁層径の直径はそれぞれ300nm、500nm、800nmとなっている。さらに、作成された微小電極を、サイクリックボルタモグラム(CV)より評価した。作製した電極を、0.5mMのフェロセンメタノール及び0.1MのKCl溶液中に浸し、電圧をかけ、流れる電流の大きさを調べた。結果を図9(c)に示す。微小電極に特有に見られる定常電流を確認できた。SECM−SICM探針のイオン電流観測側に銀/塩化金電極を挿入した場合、銀イオンが溶け出してファラデー電流観測側のリング電極に析出しCVに銀の酸化/還元スパイクピークが観測されることがある。これを回避するために、アクリルアミドゲルを充填した細いチューブに銀/塩化銀を挿入し、それを探針後方から挿入してもよい。銀/塩化金電極の変わりに白金線などを用いても実質上測定は可能である。
FIBは、探針で試料表面の観察を行いながら探針先端部を切断が可能なため、特定の大きさのリング型電極を再現性よく作製可能となった。また探針作製の歩留まりは90%以上であった。さらに、絶縁被膜層と金属層が非常に小さいため、試料に対してプローブをアプローチさせやすく、試料に近接するリング部分の面積もコーンに比べ広いため、試料の表面状態の測定に有効である。
作成した探針の電極の評価としてアプローチカーブを測定した。メディエータとして、0.5mMのフェロセンメタノールを用いた。プローブを基板から離した状態から近接させ、その際のファラデー電流およびイオン電流をそれぞれ同時に測定した。測定の結果を図9に示す。導電性基板に対して電極をアプローチさせると、ファラデー電流は増加し、イオン電流は減少した。ファラデー電流の増加は、導電性基板と電極との間でフェロセンメタノールの酸化還元反応が起こるためである。一方、絶縁性基板の場合には、ファラデー電流とイオン電流ともに減少が見られた。ファラデー電流の減少は、電極と基板が近接することで、電極表面にアクセスするメディエータが減少することに起因している。このようにファラデー電流は、基板の導電性によりアプローチカーブの挙動が大きく異なり距離制御の信号に適さない。イオン電流は、試料表面の導電性に影響を受けずに、電極と基板との距離にのみ依存して変化することから、距離制御に有効であるといえる。初期電流値からの減少量を閾値とし、例えば1%と設定してフィードバック制御することにより距離制御が可能となる。また、同時に取得されたファラデー電流が基板の状態を反映していることから、イオン流がファラデー電流の測定に影響を与えないことが確認できた。
以上の結果から、SECM−SICM用の探針は、イオン電流計測と電気化学計測の両方を干渉することなく独立に実施可能な機能複合型の探針として構成されていることが確認できた。
イオン電流を利用した形状イメージングと微小電極を利用した電気化学イメージングの同時取得について、以下のように実施した。
測定対象として、西洋ワサビペルオキシダーゼをスポット−固定化した酵素固定化基板を用いた。酵素固定化基板の作製法は以下のとおりである。
1mg西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP, 1000units/mg)、1mgウシ血清アルブミン(BSA)、4L 25%グルタルアルデヒド(GA)、100μLミリQ水を混合し、ガラスキャピラリに充填してスポット−固定化した。
イオン電流を測定する銀塩化銀電極に対して、+200mV vs. Ag/AGClの電位を印加し、ファラデー電流を測定する微小電極には、+0.05V vs. Ag/AGClの電位を印加した。測定溶液は、メディエータとして0.1M KCl及び0.5mMフェロセンメタノールを含むリン酸バッファー溶液(PBS)を用いた。HRPの基質である過酸化水素を添加すると、HRPの酵素反応により、フェロセンメタノールが酸化される。酸化されたフェロセンメタノールを微小電極により還元し、その際の電流を測定する。同時に、イオン電流を利用したフィードバック制御により、HRPのスポット形状を測定した。
結果を図11に示す。図11(a)は、西洋ワサビペルオキシダーゼパターンの形状イメージであり、(b),(c)は電気化学イメージである。
イオン電流を用いた距離制御により、HRPスポットの形状を観察することができた(図11(a))。
また、電気化学測定においては、HRPの基質である過酸化水素を加える前には、HRPパターン上で電流変化を見ることができないが(図11(b))、過酸化水素を添加すると、HRPの酵素反応によりフェロセンメタノールが酸化され、電極によりフェロセンメタノールを還元し、その際の還元電流を検出することができた(図11(c))。
以上より、イオン電流をフィードバック信号に利用しながらファラデー電流を計測することで、形状イメージングと電気化学イメージングとを同時に取得することが可能となった。
イオン電流を利用した形状イメージングと微小電極を利用した電気化学イメージングの同時取得について、以下のように実施した。
測定対象として、グルコースオキシダーゼ(GOx)のスポット−固定化した酵素固定化基板を用いた。酵素固定化基板の作製法は以下のとおりである。
1mgグルコースオキシダーゼ(2500units/mg)、1mgウシ血清アルブミン(BSA)、4μL 25% グルタルアルデヒド(GA)、100μLミリQ水を混合し、ガラスキャピラリに充填してスポット−固定化した。
イオン電流を測定する銀塩化銀電極に対して、+200mV vs. Ag/AGClの電位を印加し、ファラデー電流を測定する微小電極には、+0.5V vs. Ag/AGClの電位を印加した。測定溶液は、メディエータとして0.5mMのフェロセンメタノールを含むリン酸バッファー溶液(PBS)を用いた。電極反応によりフェロセンメタノールを酸化する。GOxの基質であるグルコースを添加すると、GOxの酵素反応により、酸化体のフェロセンメタノールが還元される。還元されたフェロセンメタノールを微小電極により再び酸化し、その際の電流を測定する。同時に、イオン電流を利用したフィードバック制御により、GOxのスポット形状を測定した。
結果を図12に示す。(a),(c)はグルコースオキシダーゼ固定化基板の異なる位置の形状イメージ、(b),(d)は、(a),(c)に対応する電気化学イメージである。
イオン電流を用いた距離制御により、GOxスポットの形状を観察することができた。また、グルコースを添加すると、GOxの酵素反応により酸化体のフェロセンメタノールが還元され、電極によりフェロセンメタノールを再び酸化し、その際の酸化電流を検出することができた(図12(a))。GOxの測定においては、フェロセンメタノールの酸化還元が、電極とGOxの間で繰り返される。そのため、電極をGOxにできる限り近づけることが望まれ、イオン電流をフィードバック信号に利用しながらファラデー電流を計測することで、250nmの酵素パターンを検出することに成功した(図12(b))。また同様の実験で電極とGOxとの距離を100nmとすると、酵素パターンのコントラストが著しく低下し(図12(d−1))、600nmとするとパターンを確認することができなかった(図12(d−2))。以上より、イオン電流を利用した距離制御がSECMの測定感度向上に貢献していることが言える。
イオン電流を利用した形状イメージングと微小電極を利用した電気化学イメージングの同時取得について、以下のように実施した。
測定対象として、ラット心筋細胞を用いた。ラット心筋細胞に関して、酸素、フェロシアン化カリウム、フェロセンメタノールの透過性を評価した。
イオン電流を測定する銀塩化銀電極に対して、+200mV vs. Ag/AGClの電位を印加し、ファラデー電流を測定する。微小電極に対しては、酸素、フェロシアン化カリウム、フェロセンメタノール、それぞれについて、−0.5V vs. Ag/AGCl、+0.5V vs. Ag/AGCl、+0.5V vs. Ag/AGClの電圧を印加して測定を行った。電極反応により、酸素、フェロシアン化カリウム、フェロセンメタノールを還元あるいは酸化し、その電流応答により、イメージングを行った。測定溶液は、メディエータとして0.5mMのフェロセンメタノールを含むリン酸バッファー溶液(PBS)を用いた。
結果を図13に示す。(a),(b),(c)のそれぞれの左側の写真はラット心筋細胞の異なる位置の形状イメージであり、(a)の右側の写真は酸素の細胞透過性を示す電気化学イメージであり、(b)の右側の写真はフェロシアン化カリウムの細胞透過性を示す電気化学イメージであり、(c)の右側の写真はフェロセンメタノールの細胞透過性を示す電気化学イメージである。
イオン電流を用いた距離制御により、ラット心筋細胞の形状を観察することができた。また、電気化学測定では、化学物質の細胞透過性の違いを検出することができた。細胞を透過可能な化学物質(酸素、フェロセンメタノール)の検出では、細胞上において化学物質が細胞を透過することで、化学物質の物理的な拡散阻害が弱まり、細胞上と基板上で電流応答に違いが見られる。しかし、透過性のない化学物質(フェロシアン化カリウム)では、電流応答に違いが見られない。このような測定を行うには、電極と試料との距離を常に一定に保つ必要があり、凹凸の激しい心筋細胞の測定は困難とされてきた。以上より、イオン電流を利用した距離制御がSECMによる細胞膜透過性評価に貢献していることが言える。
〔その他の実施形態及び実施例〕
本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の技術的範囲には、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
上記の実施形態では、図示しないが、レーザー光を前記探針21の中空基材を通して試料に照射して、上記電気化学イメージングと上記形状イメージングとともに光学測定を同時に行うことを含むものである。
上記の実施形態では、SECM電極26Aのファラデー電流の計測に基づく電気化学イメージングについて、探針21の開口25cから流出する電解質中に特定のイオン、タンパク質、薬剤、DNAなどを含ませて、電気泳動現象を利用して生体素子に局所的にインジェクションを行いながら、生体素子の変化や応答について電気化学イメージングを行うことを含むものである。
1…走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡
T…試料
21,22,23…探針
25A,25B…探針本体
25a,25a,25a…中空部
25b…先端部
25c,開口25c…開口
26A,26B,26C…SECM電極
26a…導電層
26b…炭素層
26c…導電線
27…SICM電極
28…絶縁層

Claims (12)

  1. ナノメートルオーダーに先鋭化した先端面と、該先端面の開口により露出される中空部とを有する探針本体と、
    上記探針本体の中空部の内周面に炭素層が形成され該炭素層の先端が上記探針本体の先端面において上記開口を取り巻いてリング状に露出して構成され、探針−試料表面間の電気化学反応に起因するファラデー電流を計測するSECM電極と、
    上記中空部内に備えられており、該中空部内に満たされる電解質の上記開口からの流出量に応じたイオン電流を計測するSICM電極と、
    を有してなり、
    上記SECM電極と上記SICM電極に独立に電圧が印加されて上記ファラデー電流と上記イオン電流とを干渉を起こすことなく同時に検出する、走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針。
  2. ナノメートルオーダーに先鋭化した先端面と、該先端面の各開口により露出される2つの中空部とを有する探針本体と、
    上記探針本体の一方の中空部に導電線が配置されて該一方の中空部の開口を塞ぐと共に該導電線の先端が露出して構成され、探針−試料表面間の電気化学反応に起因するファラデー電流を計測するSECM電極と、
    上記探針本体の他方の中空部内に備えられており、該他方の中空部内に満たされる電解質の上記開口からの流出量に応じたイオン電流を計測するSICM電極と、
    を有してなり、
    上記SECM電極と上記SICM電極に独立に電圧が印加されて上記ファラデー電流と上記イオン電流とを干渉を起こすことなく同時に検出する、走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針。
  3. 前記探針本体が、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイト又はクオーツキャピラリの中空基材からなる、請求項1又は2に記載の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針。
  4. 前記SECM電極を形成する金属線が金又はプラチナからなる、請求項2に記載の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針。
  5. 前記SICM電極を形成する金属線が銀/塩化銀電極からなる、請求項1又は2に記載の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針。
  6. 前記電解質が流出する前記中空部の開口径が1μm以下である、請求項1又は2に記載の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針。
  7. 前記電解質が流出する中空部の開口径が10nm〜100nmである、請求項1又は2に記載の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針。
  8. 前記SECM電極の半径が1μm以下、前記SICM電極を収容する中空部の開口径が1μm以下である、請求項1又は2に記載の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針。
  9. 請求項1乃至8の何れかに記載の走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針を備えており、
    前記探針を、前記SICM電極で計測したイオン電流を距離制御フィードバック信号に利用しつつ、探針−試料間距離一定モードで試料表面に沿って相対的に走査移動し、前記SECM電極で電気化学イメージングを行うと共に、前記SICM電極で形状イメージングを行う、走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡。
  10. 一つの中空部を有する中空基材の一端をプラーで引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化し、
    次いで、上記中空部にブタンガスを充填して炭化させることにより上記中空部の内周面に炭素層を形成し、
    次いで、一端を先鋭化して上記中空部内周面に上記炭素層を形成した中空基材の先端を、集束イオンビームで切断することにより、
    上記中空基材を先鋭化した先端部を有しかつ中空部が露出する先端面を備えた探針本体として形成すると共に、上記探針本体の先端面に露出する上記炭素電極層のリング状の端面部をもって構成されたSECM電極を備え
    上記中空部に金属線を挿入することにより、上記中空部の開口から電解質の流出量に応じたイオン電流を計測するためのSICM電極とした、走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針の製造方法。
  11. 二つの中空部を有する中空基材の一方の中空部にSECM電極の形成用に金属線を挿入し、
    次いで、プラーにより上記中空基材の先端部を上記金属線と共に引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化し、
    次いで、集束イオンビームで上記中空基材の先端部を切断することにより、
    他方の中空部が露出する開口を有する先端面を備えるとともに、上記一方の中空部の開口が閉塞状態で露出形成された上記金属線の切断面部にて形成されるSECM電極を備え
    上記他方の中空部に別の金属線を挿入することにより、上記他方の中空部の開口から電解質の流出量に応じたイオン電流を計測するためのSICM電極とした、走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針の製造方法。
  12. 二つの中空部を有する中空基材の一方の中空部にSECM電極の形成用に金属線を挿入すると共に、他方の中空部に易エッチング線を挿入し、
    次いで、プラーにより上記中空基材の先端部を上記金属線及び易エッチング線と共に引き伸ばしてナノメートルオーダーに先鋭化しかつ上記二つの中空部の先端を閉鎖した状態とし、
    次いで、易エッチング線を挿入した上記他方の中空部の先端部を露出して易エッチング線をエッチングして除去し、
    次いで、集束イオンビームで上記中空基材の先端部を切断することにより、
    上記他方の中空部が露出する開口を有する先端面を備えるとともに、該先端面に上記一方の中空部の開口を閉塞した状態に露出形成された上記金属線の切断面部にて形成されるSECM電極を備え
    上記他方の中空部に別の金属線を挿入することにより、上記他方の中空部の開口から電解質の流出量に応じたイオン電流を計測するためのSICM電極とした、走査型電気化学イオンコンダクタンス顕微鏡用の探針の製造方法。
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