JP7304623B2 - オペランド計測を可能とした走査型イオンコンダクタンス顕微鏡 - Google Patents
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Description
本発明者は、これまで非特許文献1に示すように走査型電気化学顕微鏡(SECM)を発展させ、ナノピペットを走査型プローブ顕微鏡の探針に用い、イオン電流を利用してピペットの位置制御を行うことで、ナノスケールの神経細胞の形状イメージングと、局所的な神経伝達物質の放出を電流計測により捉えられることに成功している。
この走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM:scanning ion conductance microscope)は、これまで生細胞の形状測定等に主に利用されている。
しかし、二次電池材料等の電気化学的材料の分野にあっては、充放電等の実動作下での材料表面の電気化学的イメージングが必要であり、従来のSICMをそのまま利用することができない。
ここでポテンシオスタットは、電気化学材料が実際に充電や放電等の実動作時の相対的に大きい電流を計測対象とするものである。
この実動作状態での試料表面における微小電流をSICM(走査型イオンコンダクタンス顕微鏡)のプローブ側で計測できるようにした点に、本発明の特徴がある。
バイポテンシオスタットを用いることで、2本の作用極の電位を制御しながら、電気化学計測を行うことができる。
しかし、本技術では、試料側での計測電流と、プローブ側での計測電流が3桁以上違うため、バイポテンシオスタットでの高速かつ正確なプローブの電位の正確な制御が困難である。
また、プローブ側では、イオン電流を利用したプローブと試料との距離を制御するため、1kHz以上の高速な電流応答が求められる。
そのため、一般的に利用されているバイポテンシオスタットでは、本計測を実現することは困難である。
したがって本発明においては、プローブ側の計測に微小電流計測器を用いた点で、従来のバイポテンシオスタットとも相違する。
これに対して、電気化学材料の表面の形状の凹凸差は、生細胞の表面よりも大きい。
そこで本発明において、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡に有するプローブを試料表面に対して相対的に水平方向の走査を行うためのXY方向走査手段と、前記プローブと試料表面の距離である垂直方向を走査するためのZ方向走査手段を有し、前記XY方向及びZ方向の走査手段のうち、いずれか1つ以上は粗動制御のための第1制御ステージと、精密制御のための第2制御ステージの2種以上の複数の制御ステージを有し、前記第1制御ステージと第2制御ステージとを連動して駆動させることで、精密駆動では達成できないような起伏を有する試料や、広範囲を高い精度で計測することを可能とした。
ここで複数の制御ステージは、例えばピエゾ素子によるアクチュエータ等の精密制御可能な第2制御ステージに対して、ステッピングモータ等による粗動制御のための第1制御ステージを組み合せることをいう。
このようにすると、nmオーダーレベルの精密制御しつつ、cmオーダーレベルの広範囲まで計測可能となる。
ここで、対象となる試料の起伏の差や計測範囲の広さを考慮して、XY方向とZ方向のいずれか一方にのみ、複数の制御ステージを組み合せてもよい。
密閉装置としては、例えばグローブボックス等が例として挙げられる。
例えば、リチウムイオン電池等の2次電池材料,太陽電池に用いられる材料,光触媒等の光により電気特性が変化する材料等が例として挙げられる。
図1にその構成例を示し、図2に電気化学セルの構造例を示す。
これに対して、プローブ3の垂直方向(Z方向)を位置制御するためのピエゾ素子からなるアクチュエータを用いたZピエゾステージを備える。
Zピエゾステージは、精密制御のための第2制御ステージとして作用する。
このZピエゾステージによる垂直方向(高さ)の駆動範囲が試料表面の起伏よりも小さい場合にも対応できるように本実施例においては、Zピエゾステージの背面側にステッピングモータからなる粗動制御のための第1制御ステージとして、Zステッピングモータステージを有するようにした。
これにより、例えばZピエゾステージの駆動範囲の上限90%又は下限90%に達すると、Zステッピングモータステージが駆動し、Zピエゾステージを中心位置に戻すこと等により、プローブの走査範囲が広がる。
試料を実動作状態にするために、集電用の金属を介して第1の作用極としての作用極1(WE1)を有し、マイクロガラスピペットの内側に第2作用極としての作用極2(WE2)を挿入し、内部を電解溶液で満たしたプローブ3を有する。
また、セル内には対極(CE)と参照極(RE)が配置されている。
これにより、図1に示すように試料の電位,電流等は、ポテンシオスタットにて計測され、プローブ2側の電位,電流等は微小電流計測器にて計測される。
これらの機器は、グローブボックス1の内部に設置されている。
なお、本実施例では、顕微鏡やデジタルマイクロスコープを用いてプローブ及びサンプル(試料)の位置確認ができるようになっている。
これに対して、プローブ側の微小電流計測器では、作用極2(WE2)に目的の電位を加え、参照極(RE)側をグラウンドに落としていた。
しかし、これでは試料側のWE1を制御しようとすると、それに伴ってWE2が変動することになってしまい、微小電流計測器の制御が実質的にできないことになる。
そこで本発明においては、ポテンシオスタット側のWE1の電圧を変化させた際に、その変化により生じるWE2側の副作用的な電圧変化を生じさせないように、WE1の電圧に連動して、WE2の電圧を制御するプログラムあるいは電子回路を作製した。
これにより、WE1の電位を変化させてもその差分を補完することで、ポテンシオスタット側のWE1の制御と微小電流計測器側のWE2とを相互に独立して制御可能になった。
したがって本発明において、電位を制御するプログラムは、WE1の制御手段とWE1の変化量を差分として補完する演算手段と、これに基づいてWE2を独立制御する制御手段を有している。
本発明においては、電位WE1とWE2と相互に独立制御したので、図3にSICM側の電流変化(右側目もり)と、カーボン側の電流変化(左側目もり)を示すように、試料にかける電圧を掃引した際にもプローブ側の電位を一定に保つことができる。
より具体的に説明すると、図3はカーボン電極の電圧を掃引しながら充放電反応に伴う酸化還元電流を計測し、さらにプローブをカーボン電極表面から5umの距離に保った状態で、プローブ側の電圧を一定に保ち、カーボン電極の充放電反応に伴うイオン濃度プロファイルの変化をイオン電流として、同時に捉えたものである。
WE1とWE2の電位を独立して、計測することでこのような試料側を動作させた際に形成されるイオン濃度プロファイルの変化をイオン電流として捉えている。
例えば図4に示すように、カーボン負極材料表面に形成される充放電に伴う形状変化を計測することが可能であった。
また、プローブをホッピングさせるように移動させながらイオン電流を計測すると、図5に示すようにカーボン電極に形成されるSEI(SolidElectrolyte Interphase)の形成に伴う構造変化や、試料の充放電により生じる試料表面のイオン濃度プロファイルを3次元的に可視化できた。
2 電気化学セル
2a ベース樹脂
2b 側壁樹脂
3 プローブ
4 除振台
Claims (3)
- 試料の電気化学的な動作条件を制御及び計測するためのポテンシオスタットと、試料表面の形状又は/及びイオン濃度プロファイルを計測するための走査型イオンコンダクタンス顕微鏡とを備え、
前記走査型イオンコンダクタンス顕微鏡に有するプローブを試料表面に対して相対的に水平方向の走査を行うためのXY方向走査手段と、前記プローブと試料表面の距離である垂直方向を走査するためのZ方向走査手段を有し、
前記XY方向及びZ方向の走査手段のうち、いずれか1つ以上は粗動制御のための第1制御ステージと、精密制御のための第2制御ステージの2種以上の複数の制御ステージを有し、前記第1制御ステージと第2制御ステージとを連動して駆動させることで、精密駆動では達成できないような起伏を有する試料や、広範囲を高い精度で計測することを可能とし、
前記試料の計測に用いる電気化学セルは対極(CE)及び参照極(RE)と、少なくとも試料の実動作を計測する第1作用極(WE1)とプローブ側を計測する第2作用極(WE2)とを有し、前記WE1の電位とWE2の電位は相互に独立制御され、電位を制御するプログラムはWE1の制御手段とWE1の変化量を差分として補完する演算手段と、これに基づいてWE2を独立制御する制御手段を有することを特徴とするオペランド計測を可能とした走査型コンダクタンス顕微鏡。 - 前記XY方向及びZ方向の走査手段は除振装置を介して設けられていることを特徴とする請求項1記載のオペランド計測を可能とした走査型コンダクタンス顕微鏡。
- 前記電気化学セルはグローブボックス内に配置し、大気非暴露での計測を可能とした請求項1記載のオペランド計測を可能とした走査型コンダクタンス顕微鏡。
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