第1の発明は、原料を用いて水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された前記水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により低減するためのCO除去器と、酸化ガスを供給する酸化ガス供給器と、前記CO除去器から送出される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、前記酸化ガス供給器から供給される前記酸化ガスを前記改質器より前記CO除去器に供給される前記水素含有ガスに混入させるための第1の酸化ガス経路と、前記第1の酸化ガス経路より分岐し前記CO除去器より前記燃料電池に供給される前記水素含有ガスに前記酸化ガスを混入させるための第2の酸化ガス経路と、前記分岐部より下流の前記第1の酸化ガス経路に設けられた第1閉止弁と、前記分岐部より下流の前記第2の酸化ガス経路に設けられた第2閉止弁と、前記第1の酸化ガス経路に設けられた流量測定器と、制御器とを備え、前記制御器が、前記第1閉止弁を開けた状態で所定の出力にて前記酸化ガス供給器を動作させ、前記第2閉止弁を開放させるよう制御した場合の前記流量測定器が計測した計測値と前記第2閉止弁を閉止させるよう制御した場合の前記流量測定器が計測した計測値との差を比較し、前記計測値の差が所定の閾値以下ならば前記第2閉止弁が異常であると判定する異常判定動作をシステムの起動時に実施することを特徴とする。
上記構成において、第2閉止弁が正常に開閉動作を行っていれば、第1閉止弁を開けた状態で所定の出力にて酸化ガス供給器が酸化ガスを供給している状態において、第2閉止弁を開放させるよう制御した場合の第1の酸化ガス経路または第2の酸化ガス経路の酸化ガスの流量と、第2閉止弁を閉止させるよう制御した場合の第1の酸化ガス経路または第2の酸化ガス経路の酸化ガスの流量とは、異なる筈であるので、この場合の第2閉止弁を開放させるよう制御した場合の第1の酸化ガス経路または第2の酸化ガス経路の酸化ガスの流量と、第2閉止弁を閉止させるよう制御した場合の第1の酸化ガス経路または第2の酸化ガス経路の酸化ガスの流量との差が、所定の閾値以下ならば第2閉止弁が異常であると判定することが可能である。
また、燃料電池の発電中は、酸化ガス供給器と第1閉止弁と第2閉止弁は、適切に制御する必要があり、もし、燃料電池の発電中に異常判定動作を行って第2閉止弁が異常と判定された場合は、燃料電池システムを緊急停止させる必要があり、燃料電池への悪影響があるが、この異常判定動作は、発電前のシステムの起動時に実施するので、燃料電池への悪影響が、ほとんどなく、この異常判定動作により第2閉止弁が異常と判定された場合には、燃料電池システムを停止して、第2閉止弁を確認する対応をとることができ、この異常判定動作により第2閉止弁が正常と判定された場合は、発電前にエアブリードが正常に動作しているか確認しているため、燃料電池に確実にエアブリード用の酸化ガスを供給しながら運転することができるので、一酸化炭素による被毒の影響を抑制し、より長期間に渡り好適に運転可能な燃料電池システムを提供することができる。
また、燃料電池に酸化剤ガスを供給するものとは別の酸化ガス供給器から第1の酸化ガス経路、第2の酸化ガス経路を介して、CO除去器の前後の水素含有ガス経路の水素含有ガスに酸化ガスを混入するため、燃料電池に酸化剤ガスを供給する経路から分岐して酸化ガスを供給する従来の方式と比較して、水素含有ガス経路と第1の酸化ガス経路、第2の酸化ガス経路の間に確実に圧力差を設けることができ、各種圧力センサや圧力調整器などを削減することができる。そのためコストを削減すると共に、装置の小型化を実現した燃料電池システムを提供することができる。
また、第2の発明は、特に第1の発明に加えて、前記CO除去器の温度を検知する温度検知手段とさらに備え、前記制御器が、前記温度検知手段が検知した温度が所定温度以上の場合は、前記異常判定動作を実施しないことを特徴とするものであり、CO除去器の温度によって、異常検知動作を実施するか否かを判断しているため、暖起動時におけるCO除去器の過昇温により、CO除去器が燃料電池に水素含有ガスを供給するのに適した温度範囲から外れることを防止することができるので、一酸化炭素による被毒の影響を抑制しながらも確実に発電運転を実施可能な燃料電池システムを提供することができる。
また、第3の発明は、特に第1または第2の発明において、前記流量測定器が、前記分岐点と前記第1閉止弁との間の前記第1の酸化ガス経路に配置されていることを特徴とする。
第1の酸化ガス経路の酸化ガスの流量の測定は、第2の酸化ガス経路の酸化ガスの流量の測定よりも、高い精度が要求され、また、第2の酸化ガス経路の酸化ガスの流量は、第1の酸化ガス経路の酸化ガスの流量の測定値と酸化ガス供給器の出力を基に推測可能であるので、流量測定器を、第1の酸化ガス経路と第2の酸化ガス経路との分岐点と第1閉止弁との間の第1の酸化ガス経路に配置して、この流量測定器を使って第1の酸化ガス経路の酸化ガスの流量を測定および制御すると共に、この流量測定器を、異常判定動作に利用することが望ましい。
以下、本発明の燃料電池システムの一実施の形態について、図1から図3を用いて説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
先ず、本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの構成、及び、エアブリード用酸化ガスを供給開始する際の基本的な動作について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。なお、図1では、本実施の形態を説明するために必要となる構成要素のみを図示しており、その他の構成要素については図示を省略している。
図1において、改質器1は、都市ガス、LPG、灯油などの少なくとも炭素及び水素から構成される有機化合物を含む原料と水から水素含有ガスを生成する装置であり、水蒸気改質反応を進行させる改質触媒や改質触媒の温度を検知するための改質器温度センサ11を有している。
なお、本実施の形態では、改質器温度センサ11として熱電対を用いたが、温度を検知することができれば如何なるセンサでも構わない。また、水は、改質器1の外部にて加熱して水蒸気としてから供給しても構わないが、本実施の形態では改質器1内に水蒸発部(図示せず)が設けられており、水蒸発部の温度は改質器温度センサ11により検知される改質器1の温度にて相対的に把握される。また、改質器1に水を供給する水供給器16と、原料を供給する原料供給器17が設けられている。
また、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、反応を進行させるには熱を与える必要があるため、改質器1は加熱器1aを有しており、これにより改質触媒が加熱される。なお、加熱器としては、本実施の形態では燃焼バーナーが用いられ、燃料としては、改質器1を通過した原料や、燃料電池3のアノードから排出されたアノードオフガスが用いられる。なお、加熱することができれば、燃焼バーナーである必要はない。
CO除去器2は、改質器1で生成した水素含有ガス中の一酸化炭素を低減するための装置であり、水素含有ガス経路10によって改質器1と接続されている。CO除去器2内に設けられている酸化触媒にて、一酸化炭素と酸化ガス中の酸素を反応させて、二酸化炭素に変化させることで、一酸化炭素が低減される。CO除去器2には酸化触媒の温度を検知するためのCO除去器温度センサ20を有している。なお、本実施の形態では、CO除去器温度センサ20として熱電対を用いたが、温度を検知することができれば如何なるセンサでも構わない。酸化ガスは酸化ガス供給器4により供給される。なお、本実施の形態では、酸化ガスの一例として空気を用いた。また、酸化ガス供給器4としては、空気ポンプを用いたが、酸化ガスを供給できれば如何なる構成でも構わない。
燃料電池3は、供給された水素含有ガスと酸化剤ガスを用いて発電する装置であり、水素含有ガス経路10によってCO除去器2と接続されている。図示しないが、燃料電池3には酸化剤ガスを供給する経路があり、ブロワなどにより酸化剤ガスとして空気が供給されている。
また、燃料電池システムの起動動作時は、改質器1およびCO除去器2を通過した後の水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が高いため、燃料電池3には水素含有ガスを供給せず、燃料電池3をバイパスするバイパス経路15を通じて改質器1が有する加熱器1aに水素含有ガスを供給するように制御が行われる。このように加熱器1aで燃焼させることによって水蒸気改質反応に必要な熱が賄われる。
そして、改質器1およびCO除去器2が所定の温度に温まり、十分に一酸化炭素濃度を低減した水素含有ガスを生成できるようになった時点で、燃料電池3に水素含有ガスを供給し始め、酸化剤ガスと反応させることで発電させる。
また、このとき、水素含有ガス中の全ての水素が燃料電池3で発電に使用されるわけではない。そのため、余った水素を含む水素含有ガスは燃料電池3から排出されるアノードオフガスとして、アノードオフガス経路19を通じて改質器1の加熱器1aに供給され、改質触媒を加熱するエネルギー源として利用することで、エネルギーの有効利用を行い、効率的な発電を実現することができる。
また、燃料電池3で発電を実施すると、電気と熱が発生する。この熱を有効に利用するために、水等の熱媒体との熱交換により熱回収が行われている。図示しないが、このように熱回収した熱媒体(例えば、温水)は貯湯タンクなどに蓄えられ、お湯として利用される。
バイパス経路15は、CO除去器2と燃料電池3の間の水素含有ガス経路10と、燃料電池3と加熱器1aを接続するアノードオフガス経路19とを接続するように配置されている。また、水素含有ガス経路10からバイパス経路15への分岐点には、経路切替器18が設けられている。この経路切替器18によって、CO除去器2を通過した後の水素含有ガスの供給先が、バイパス経路15側若しくは燃料電池3側に切り替えられる。なお、本実施の形態では、経路切替器18の一例として3方弁を用いたが、経路切替が実施できれば如何なる構成でもよく、例えば水素含有ガス経路10とバイパス経路15の分岐点の下流にそれぞれ設けた2個の電磁弁でも構わない。
酸化ガス供給器4から供給される酸化ガスをCO除去器2に供給するために、改質器1とCO除去器2の間の水素含有ガス経路10と酸化ガス供給器4とを接続する第1の酸化ガス経路6が設けられている。CO除去器2に供給された酸化ガスは、改質器1で生成した水素含有ガスと混合され、CO除去器2にて一酸化炭素の低減に使われる。また、第1の酸化ガス経路6には第1閉止弁13が設けられており、CO除去器2への酸化ガスの供給及び停止を行うことができる。なお、本実施の形態では、酸化ガス経路6はCO除去器2の上流と接続しているが、改質器1で生成した水素含有ガスと混合ができるならば、直接CO除去器2に酸化ガスが供給されるよう構成しても構わない。
第1の酸化ガス経路6には流量測定器5が設けられている。この流量測定器5により、CO除去器2に供給される酸化ガスの量が測定され、制御器9により所定の酸化ガス量になるように酸化ガス供給器4が制御される。
ここで、CO除去器2に供給する酸化ガスの量が多すぎると、水素含有ガス中の一酸化炭素だけでなく水素ガスも消費されてしまい、効率良く水素含有ガスを生成することができなくなる。さらに、一酸化炭素・水素の酸化反応は発熱反応であり、CO除去器2の温度が上昇し過ぎることになる。一方、酸化ガスの量が少なすぎると、水素含有ガス中の一酸化炭素を十分に低減することができなくなり、燃料電池3での発電に影響を及ぼす。
酸化ガス供給器4と流量測定器5との間の第1の酸化ガス経路6の分岐部14で分岐し、CO除去器2の下流で燃料電池3の上流の水素含有ガス経路10に接続される第2の酸化ガス経路7が設けられている。酸化ガス供給器4から供給される酸化ガスの流れは、分岐部14において酸化ガス供給器4からCO除去器2の上流側に酸化ガスを供給する第1の酸化ガス経路6と、酸化ガス供給器4からCO除去器2の下流側に酸化ガスを供給する第2の酸化ガス経路7とに分かれる。
第2の酸化ガス経路7を通過した酸化ガスは、CO除去器2の下流に供給され、CO除去器2で酸化されずにCO除去器2を通過した水素含有ガス中の微量な一酸化炭素を酸化反応により低減するために用いられる。本実施の形態では、CO除去器2を通過した水素含有ガス中の一酸化炭素濃度はおよそ10ppmである。このわずかな一酸化炭素濃度でも燃料電池3を長期間運転する場合は被毒の影響が現れてしまうため、燃料電池3のアノード触媒中に吸着した一酸化炭素を除去する必要があり、酸化ガスと燃料電池3のアノード触媒に吸着した一酸化炭素とを酸化反応させることによって一酸化炭素が除去される。
なお、第2の酸化ガス経路7には流量測定器5のようなガス流量計が用いられておらず、第1の酸化ガス経路6の経路圧力損失と第2の酸化ガス経路7の経路圧力損失との関係により、酸化ガス供給器4により送られた酸化ガスを所定の割合で分流するように設計されており、流量測定器5で測定される酸化ガスの流量に基づき酸化ガス供給器4から供給する酸化ガスの量を調整することで、第2の酸化ガス経路7を通る酸化ガス流量も所望の量とすることができる。
このように設計することで、第2の酸化ガス経路7上にガス流量計を設置する必要がなくなる。また、水素含有ガス経路の上流・下流で酸化ガスを分岐するため、燃料電池3に酸化剤ガスを供給する経路から分岐して酸化ガスを供給する従来の方式と比較して、水素含有ガス経路10と第1の酸化ガス経路6、第2の酸化ガス経路7の間に確実に圧力差を設けることができ、各種圧力センサや圧力調整器などを削減することができる。そのためコストを削減すると共に、装置の小型化を実現することができる。
本設計は、第1の酸化ガス経路6からCO除去器2に供給される酸化ガスの量、及び第2の酸化ガス経路7からCO除去器2の下流の水素含有ガス経路10に供給される酸化ガスの量は、それぞれ個別に流量制御しなくても、CO除去器2に供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度に対して、共に比例制御することで一酸化炭素を低減する目的が達成されることに基づく。
第2の酸化ガス経路7には第2閉止弁8が設けられており、この第2閉止弁8によって第2の酸化ガス経路7は開閉可能に構成されている。起動時において燃料電池システム(特に、改質器1)の温度を上昇させている間に、改質器1を通過した後の水素含有ガスには多量の一酸化炭素が含まれている。その状態でCO除去器2に酸化ガスを供給するとCO除去器2の酸化触媒が過昇温してしまうため、酸化ガス供給器4によるCO除去器2への酸化ガスの供給は、改質器1の温度が所定の温度以上に上昇した時点から実施される。
このため、第1の酸化ガス経路6は、第1閉止弁13により酸化ガス供給器4に連動して閉止される。また同時に、第2の酸化ガス経路7の第2閉止弁8も閉じられる。さらに、停止時・待機時においてシステム内部に含まれる可燃ガスが酸化ガス供給器4を介してシステム外部に漏出しないようにするために第2閉止弁8及び第1閉止弁13を閉じる必要がある。
制御器9は、流量測定器5で計測された酸化ガスの流量を、現在の運転状態(例えば、燃料電池3の発電量や、改質器1へ供給される原料流量)に対応した酸化ガスの目標流量になるよう、酸化ガス供給器4の出力を指令する出力指令(以下、これを操作量と呼ぶ)を増減させる装置である。
また、制御器9は、流量測定器5の検出値もしくは酸化ガス供給器4の操作量をもとに第2閉止弁8の異常検知動作を実施したり、燃料電池システムを停止したりする制御も行う。本実施の形態では制御器9の構成としては、マイコン等の演算装置であり、CPU等からなる演算部(図示せず)を有している。制御器9は所定の動作を行うことができれば如何なる構成でも構わない。
制御器9によって、正常に酸化ガスを水素含有ガス経路10に供給できていない旨の異常が検知された場合に、ユーザーやメンテナンス会社に異常発生の旨を知らせる異常報知器12が設けられている。
本実施の形態の燃料電池システムは、原料を用いて水素含有ガスを生成する改質器1と、改質器1で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応により低減するためのCO除去器2と、酸化ガスを供給する酸化ガス供給器4と、CO除去器2から送出される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池3と、酸化ガス供給器4から供給される酸化ガスを改質器1よりCO除去器2に供給される水素含有ガスに混入させるための第1の酸化ガス経路6と、第1の酸化ガス経路6より分岐しCO除去器2より燃料電池3に供給される水素含有ガスに酸化ガスを混入させるための第2の酸化ガス経路7と、分岐部14より下流の第1の酸化ガス経路6に設けられた第1閉止弁13と、分岐部14より下流の第2の酸化ガス経路7に設けられた第2閉止弁8と、分岐点14と第1閉止弁13との間の第1の酸化ガス経路6に設けられた流量測定器5と、制御器9とを備え、制御器9が、第1閉止弁13を開けた状態で所定の出力にて酸化ガス供給器4を動作させ、第2閉止弁8を開放させるよう制御した場合の流量測定器5が計測した計測値と第2閉止弁8を閉止させるよう制御した場合の流量測定器5が計測した計測値との差を比較し、その計測値の差が所定の閾値以下ならば第2閉止弁8が異常であると判定する異常判定動作をシステムの起動時に実施するように構成されている。
次に、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システムがエアブリード用酸化ガスを供給開始するまでの基本的な起動動作について説明する。図2は、本実施の形態1の燃料電池システムの制御を示すフローチャートである。
燃料電池システムの起動動作では、制御器9は、図2のS1に示すように、はじめに改質器1を加熱器1aにより加熱し、改質器1を水素含有ガスを生成するのに適した温度に上昇させる。具体的には、改質器1を加熱するために、制御器9により原料供給器17から改質器1に原料の供給が開始される。
そして、経路切替器18により改質器1内を流通した原料が燃料電池3をバイパスするバイパス経路15を通過した後、加熱器1aに供給され、燃焼される。改質器1内に原料を通す理由は改質器1及びCO除去器2を内部から加熱する熱媒体として原料を用いるためであり、原料を改質器1内に通さず直接加熱器に供給しても構わない。
次に、水蒸気が改質器1に供給されるが(S3)、改質器1内に含まれる原料は水の無い状態で所定温度以上に加熱されると、原料中の炭素成分が析出して改質器1の経路が詰まったり、改質触媒を劣化させたりするため、改質器1の温度が原料中の炭素が析出しない上限温度未満にて改質器1に水蒸気の供給が開始される。なお、本実施の形態の燃料電池システムにおいては、上記上限温度未満にて水供給器16より水が改質器1に供給されるよう制御器9により制御される。
また、本実施の形態では、加熱器1aの熱により水を蒸発させ水蒸気を得ているため、水供給器16より水の供給が開始される際には、水蒸発部が水を蒸発できる温度になるように加熱器1aから出る熱が配分される。なお、本実施の形態では、水供給器16より改質器1に水の供給を開始する改質器1の温度を400℃としたが(S2)、炭素が析出しない上限温度未満で水蒸発可能な温度であれば如何なる温度でも構わない。また、この温度は改質器1の構成や改質器温度センサ11の取り付け位置などにより異なってくる。
このように改質器1に原料と水蒸気を供給すると、水蒸気改質反応により水素含有ガスが生成し始める。水蒸気改質反応は吸熱反応であり、改質触媒の温度により生成する水素濃度や一酸化炭素濃度が異なる。そして、制御器9は、改質器1内の温度が所定の温度に上昇し、水素含有ガス中の水素濃度が増加し始めてから、第1閉止弁13を開放し、酸化ガス供給器4を動作させることにより、第1の酸化ガス経路6を経由して、CO除去器2に酸化ガスが供給される(S5)。
なお、本実施の形態では、第1の酸化ガス経路6を経由して、CO除去器2に酸化ガス供給を開始する改質器1の温度を500℃としたが(S4)、CO除去器2が過昇温しない下限温度以上であれば如何なる温度でも構わない。また、この温度は改質器1の構成や改質器温度センサ11の取り付け位置などにより異なってくる。
一方、CO除去器2で行われる酸化反応も平衡反応であるため、CO除去器2は、反応を進めるために必要な温度までヒーターなどにより加熱される。なお、CO除去器2の構成によっては、改質器1から送出されるガスが保有する熱を利用して温めることも可能であり、必ずしもヒーターなどの加熱手段はなくても構わない。
CO除去器2により一酸化炭素の濃度が低減されるが、CO除去器2に酸化ガスを供給し始めたばかりの時点では、酸化触媒の温度が均一になっていないことや、まだ改質器1の温度が低く高濃度の一酸化炭素がCO除去器2に送られてくるなどの理由から、CO除去器2を通過した後の水素含有ガス中の一酸化炭素濃度はまだ十分に低減されていない。そのため、改質器1とCO除去器2が、ともにそれぞれの最適な反応温度(S10)に上昇した後、経路切替器18がバイパス経路15側から燃料電池3側に切り替えられ、燃料電池3に水素含有ガスの供給を開始する(S11)。
CO除去器2が反応温度に上昇した後も、CO除去器2を通過した後の水素含有ガスには約10ppmの一酸化炭素が含まれており、この一酸化炭素による燃料電池3のアノード被毒を抑制するために、第2の酸化ガス経路7からCO除去器2を通過した後の水素含有ガスに酸化ガスを供給する必要がある。
第2の酸化ガス経路7からの酸化ガスの供給を開始するタイミング(S9)は、第1の酸化ガス経路6からの酸化ガスの供給を開始してから、燃料電池3に水素含有ガスの供給を開始する直前までの間であって、燃料電池3に供給する水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を十分に低減できるタイミングであればよい。
本実施の形態では、第1の酸化ガス経路6から酸化ガスの供給を開始した後、酸化ガスの流量が安定してから供給開始することとした。安定時間としては、1分間としたが(S6)、時間は装置構成により異なるため、この限りではない。後述する理由によりCO除去器2の温度が所定値以下の場合(S7)にのみ、異常検知動作(S8)を実施したのち、第2の酸化ガス経路7からの酸化ガスの供給を開始する。
第2の酸化ガス経路7からの酸化ガスの供給は、酸化ガス供給器4から第1の酸化ガス経路6に酸化ガスが供給されている状態で、制御器9の制御信号により第2閉止弁8を閉止状態から開放状態にすることで開始される。第1の酸化ガス経路6と第2の酸化ガス経路7に流れる酸化ガスの量の分配比がおよそ4.5:1となるように各々の経路の抵抗が設計されている。
この分配比は、第2閉止弁8、第1閉止弁13が完全に開放され、第1の酸化ガス経路6、及び第2の酸化ガス経路7に凝縮水などによる詰まりが発生していない状態で実現される。なお、酸化ガス量の分配比はCO除去器2を通った後の水素含有ガス中の一酸化炭素の量や燃料電池の耐被毒性能により変更する必要が生じる。そのため、酸化ガスの分配比は上記比率の限りでなく、それぞれの装置構成に適した比率とすればよい。
なお、流量制御の精度で言えば、通常、CO除去器2で水素含有ガス中のCO濃度を所望の濃度まで確実に低減させ、さらに残った微量(通常、10ppm程度)の一酸化炭素によるアノード触媒被毒をエアブリードによって抑制するよう設計されるので、第1の酸化ガス経路6に供給する酸化ガスの方が、第2の酸化ガス経路7から供給する酸化ガスよりも、目標流量に対する誤差の許容幅が小さい。
例えば、本実施の形態では、第1の酸化ガス経路6に許される誤差範囲が±10%であるのに対し、第2の酸化ガス経路7に許される誤差範囲は±30%である。その理由から、流量測定器5はより厳しい流量制御が必要な第1の酸化ガス経路6に設置するのが望ましい。なお、許容される誤差範囲は、装置構成や設計余裕度などにより異なってくるため、この範囲に限定されるものではない。
前述のように、第2閉止弁8を開放することによりCO除去器2の下流側に酸化ガスの供給を行うが、第2閉止弁8が正常に動作せず完全に開放されない場合や、凝縮水等によって第2の酸化ガス経路7が詰まっている場合には、第2の酸化ガス経路7から所定量の酸化ガスを供給することができず、エアブリードを正常に実施することができなくなる。従って、エアブリードを正常に行い、燃料電池3の劣化が進行することを抑制するために、第2の酸化ガス経路7から酸化ガスを供給開始した際に所定量の酸化ガスが供給されているか否かを確認する必要がある。
次に、正常にエアブリードが実施されているか否かを検知する異常検知動作について、図3の異常検知動作フローを用いて説明する。
本実施の形態における燃料電池システムは、制御器9が酸化ガス供給器4の操作量を一定に制御しながら、第2閉止弁8に開指令を発してエアブリードを開始する際の流量測定器5の検出値に基づきエアブリードの異常検知動作が実施される。
第2閉止弁8が閉じている状態では、酸化ガス供給器4の操作量を一定に制御しておけば、流量測定器5で測定される流量値もほぼ一定値となる。その状態から、酸化ガス供給器4の操作量を一定に保ったまま、第2閉止弁8を開放すると、同一操作量で送られる酸化ガスが分岐されて第1の酸化ガス経路6と第2の酸化ガス経路7に流れるため、流量測定器5に流れる酸化ガスは少なくなる。
しかしながら、第2閉止弁8が正常に動作せず、制御器9が開指令を発しても閉止状態のままである場合や、第2の酸化ガス経路7が詰まっている場合には、流量測定器5に流れる酸化ガスの量は変化しないか、もしくは、減少量が想定される値よりも小さくなる。このように、エアブリードを開始するために、制御器9が、第2閉止弁8を閉止状態から開放状態にする開指令を発した時、第2の酸化ガス経路7に酸化ガスが正常に流通するか否かによって流量測定器5で検出される流量の変化量が異なる。
本実施の形態では、流量測定器5によって検出される検出値に基づいて、エアブリードが正常に行われているか否かが検知される。
図2に示すS5で、第1閉止弁13を開放し、第1の酸化ガス経路6を通じて酸化ガスが供給された後、図3に示すS102において酸化ガスの流量が安定した状態において、流量A(第2閉止弁8に対する開指令前の流量)が流量検出器5によって検出される(S103)。
次に、流量Aの計測後、制御器9は、第2閉止弁8に対して開指令を発する(S104)。
続いて、第2閉止弁8に対して開指令を発した後の流量Bが、流量測定器5によって計測される(S105)。
次に、S106にて制御器9は、流量Aと流量Bから変化量Xを演算する。そして、S107にて、変化量Xと予め設定されている閾値Zの比較を行い、変化量Xが閾値Zよりも大きい場合、すなわち式(2)を満たしている場合には、エアブリードを正常に実施することができていないと判定する(S108)。
変化量X=第2閉止弁8に対する開指令後の流量B−第2閉止弁8に対する開指令前の流量A・・・(式1)
ここで、この変化量Xは、絶対値ではなく正または負の値を有する相対値である。
変化量X>閾値Z・・・(式2)
閾値Zは、第2閉止弁8が全く動作しない場合や、第2の酸化ガス経路7が完全に詰まっている場合等のように、第2の酸化ガス経路7に酸化ガスが全く流通しない時の変化量をXoとし、第1閉止弁13が完全に開放され、第1の酸化ガス経路6及び第2の酸化ガス経路7に凝縮水などによる詰まりが発生していない状態(上述した分配比で酸化ガスが流れる状態)における変化量をXpとすると、例えば、XoとXpの中央の値に設定することができる。
なお、この閾値Zは、装置構成や酸化ガスの分岐の仕方などにより、値が異なってくるため、その値に限られるものではなく、酸化ガス供給器4から供給される酸化ガス量に応じて設定される燃料電池3の触媒性能を劣化させないようなエアブリードを実現できる所定の酸化ガス量以上が供給されるときに示される値であればよい。
従って、第2閉止弁8が完全には開放されていない場合であっても、変化量Xが閾値Z以下である場合には、正常と判定されることになる。なお、上述において、上記所定の閾値Zは、酸化ガス供給器4からの供給される酸化ガス量に応じて設定されるとしたが、これに限定されず、例えば、燃料電池3の発電量、改質器1への原料供給量など、酸化ガス供給器4からの酸化ガスの供給量に比例する各パラメータの値に応じて設定されても構わない。
以下に、上記判定について、具体的な数値を例に挙げて説明を行う。
酸化ガス供給器4からの酸化ガス流量を1.65(NL/min)とする操作量を制御器9より指令すると、第1閉止弁13が開放された後、第2閉止弁8が開放される前には、第1の酸化ガス経路6中を流れる酸化ガスの流量Aも1.65(NL/min)となっている。
一方、制御器9より第2閉止弁8に対して開指令を行い、第2閉止弁8が完全に開放した状態となり、第2の酸化ガス経路7の詰まりもない場合には、第1の酸化ガス経路6と第2の酸化ガス経路7の分配比は4.5:1であるため、第1の酸化ガス経路6中を流れる酸化ガスの流量Bは1.35(NL/min)となり、第2の酸化ガス経路7中を流れる酸化ガスの流量は0.3(NL/min)となる。そのため、第2閉止弁8に対する開指令後、流量測定器5は、1.35(NL/min)という値を検出することになる。
従って、第2閉止弁8が完全に開放状態となり、第2の酸化ガス経路7に詰まりがない場合には、変化量Xpは、−0.3(=1.35−1.65)となる。
一方、例えば第2閉止弁8が故障して全く動作しない場合や、第2の酸化ガス経路7が完全に詰まっている場合には、第2の酸化ガス経路7中に酸化ガスが全く流通しないため、酸化ガス経路の流量Bは1.65(NL/min)となり、変化量Xoは、0(=1.65−1.65)となる。
そこで、閾値Zを例えば−0.15と設定すると、制御器9は、(式1)によって算出する変化量Xが、閾値Zである−0.15よりも大きい場合には、正常にエアブリードが実施されていないと判定することができる。
このような制御により、制御器9から第2閉止弁8に対して開指令を送っても第2閉止弁8が開かなかった場合や、第2の酸化ガス経路7が水などにより詰まってしまった場合等によるエアブリード動作の異常を検知することが可能である。
なお、図2のS11に示すように、エアブリードが正常に実施されていると判定された場合には、CO除去器2を通過した水素含有ガスが燃料電池3に供給され発電が開始されるが、正常に実施されていないと判断された場合には、燃料電池システムとして次の制御が行われる。一つの対応として、運転が停止される。このまま運転を継続したならば、燃料電池3のアノード触媒の被毒が進行させる恐れがあるからである。
また、もう一つの対応として、異常報知器12によって異常が報知される。異常報知先としては、燃料電池システムの操作リモコン(図示せず)などに報知することにより機器を使用している使用者に報知したり、燃料電池システムのメンテナンスなどを行う会社などに報知したりすることで、使用者やメンテナンス会社等に燃料電池システムの異常に対して適切な対処を促す方法がある。
なお、上記適切な対処とは、例えば、使用者であれば、燃料電池システムの停止ボタンを押してシステムを停止させたり、またはメンテナンス会社に連絡することを意味し、メンテナンス会社であれば、インターネット回線等を通じて異常が報知された燃料電池システムに停止信号を出力したり、または異常が報知された燃料電池システムのメンテナンスにメンテナンス作業員が向かうことを意味する。
また、異常を検知した場合に、すぐに異常を確定せずに、数回第2閉止弁8を開閉動作させ、それでも異常が解消されないならば、異常を確定し、運転を停止させてもよい。
また、異常による運転停止が数回起きた時点で異常を報知してもよい。
また、異常を検知した場合でもS11のように通常の運転を継続し、所定の異常検知回数に達した時点で異常を報知してもよい。
また、異常を検知した場合は、上述のように運転を停止するとともに、異常を報知してもよいし、いずれか一方であってもよい。
ここで燃料電池システムは、改質器1やCO除去器2などが常温程度に冷えた状態から起動する場合(以下、これを冷起動と呼ぶ)だけではなく、前回の発電運転を停止してから改質器1やCO除去器2などが常温程度まで冷える以前に起動する場合(以下、これを暖起動と呼ぶ)など、改質器1やCO除去器2が高温の状態から起動する場合もある。
この場合も図2の制御フローに従って燃料電池システムの起動が実施されるが、図3に示した異常検知動作は、前述のように第2閉止弁8の開閉により第1の酸化ガス経路を通じてCO除去器2に供給される酸化ガスの流量が変化する。そのため、一時的にではあるがCO除去器2に、原料供給量などのパラメータに応じて設定された所定の酸化ガス供給量よりも多量または少量の酸化ガスが供給される。
CO除去器2への酸化ガス供給量が多量の場合には、CO除去器2の温度が上がり過ぎることになるが、冷起動の場合、異常検知動作の時点ではCO除去器2が燃料電池3に水素含有ガスを供給するために適した温度(S10)に達していないため、ほとんど問題とならない。
しかしながら、暖起動の場合には、異常検知動作の時点ですでにCO除去器2が燃料電池3に水素含有ガスを供給するために適した温度(S10)に達していることがあり、その場合には、酸化ガスを多量に供給することでCO除去器2がS10の温度範囲を超えてしまうことになり、問題となりうる。そのため、図2のS7において、CO除去器温度センサ20の検出温度が、燃料電池3への水素含有ガス供給に適した温度の下限値(本実施の形態においては150℃)以上の場合には、異常検知動作を実施しない。
なお、本実施の形態では、異常検知動作を実施しないCO除去器2の温度を150℃としたが(S7)、CO除去器2がS10の温度範囲以上に過昇温しない下限温度以下であれば如何なる温度でも構わない。また、この温度はCO除去器2の構成やCO除去器温度センサ20の取り付け位置などにより異なってくる。
なお、暖起動時に異常検知動作を実施しないことになるが、エアブリード不足は長期的な燃料電池3の性能のみに影響を与えるため、エアブリード不足の状態で運転を実施しても不安全な状態や、短期的な性能低下には至らない。そのため、暖起動時の異常検知動作を実施しなくても冷起動時に異常検知動作を実施し、異常が検知できれば大きな問題には至らない。
一方、CO除去器2への酸化ガス供給量が少量の場合には、十分なCO低減ができなくなる。冷起動の場合、異常検知動作の時点ではCO除去器2が燃料電池3に水素含有ガスを供給するために適した温度(S10)に達していないため、異常検知動作終了後に所定の酸化ガス供給量に戻った後、十分にCOを低減する時間があるが、暖起動の場合には、異常検知終了後にS10の温度条件を満たし、すぐに水素含有ガスを燃料電池3に供給してしまうことになる。
この場合には、温度条件を満たしていてもCOが十分に低減されていないことになるため、水素含有ガスを燃料電池3に供給するまでに、COが十分に除去される時間を待つ必要がある。具体的には、図2のS10の温度条件を満たしてから、1分経過後にS11に以降する(図示せず)。
本実施の形態では、酸化ガスの流量および反応が安定してから供給開始することとし、安定時間としては、1分間とした。安定時間は装置構成により異なるため、この限りではない。また、CO除去器2への酸化ガス供給量が少量の場合には、図2におけるS7の判断は不必要になり、冷起動、暖起動においても異常検知動作が実施できるため、より望ましい方式と言える。
本実施の燃料電池システムの構成およびその動作により、エアブリードが正常に動作しているか確認しているため、燃料電池に確実にエアブリード用の酸化ガスを供給しながら運転することができるので、一酸化炭素による被毒の影響を抑制し、より長期間に渡り好適に運転可能な燃料電池システムを提供することができる。
また、CO除去器2の温度によって、異常検知動作を実施するか否かを判断しているため、暖起動時におけるCO除去器2の過昇温により、CO除去器2が燃料電池3に水素含有ガスを供給するのに適した温度範囲から外れることを防止することができるので、一酸化炭素による被毒の影響を抑制しながらも確実に発電運転を実施することができる。
なお、本実施の形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。