JP5465182B2 - ポリアルキレンイミンを含むウイルス感染症治療薬 - Google Patents

ポリアルキレンイミンを含むウイルス感染症治療薬 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアルキレンイミンを含むウイルス感染症治療薬に関する。
近年、様々なウイルスが引き起こすウイルス感染症が大きな問題となっている。例えば単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)は、初感染後に潜伏感染し、回帰発症して性器ヘルペスを起こす病原体である。その罹患率は高く、現在の薬剤による治療法では一生涯潜伏感染から抜け出すことは不可能であるとされる。さらに最近になって、HSV-2はヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染拡大や発症刺激の因子としても注目されるようになってきており(例えば非特許文献1参照)、HSV-2感染症の薬物療法はエイズ対策の上からも重要な課題となっている。
現在ヘルペス治療薬としては、抗ウイルス薬であるアシクロビルやビダラビン等の核酸アナログが知られている。しかしこれらの抗ウイルス薬は、ウイルス感染細胞内に入ってウイルス増殖を阻害するため、ウイルス側が薬剤の影響から抜け出すために変異を起こし薬剤耐性を獲得する可能性が高く、治療が長期に及ぶ場合には薬剤耐性ウイルスの出現に注意する必要がある。そこで、これまでの治療薬とは作用機序が異なるウイルス感染症治療薬が求められている。
薬剤耐性ウイルスの出現を阻止するという観点からすると、従来のようにウイルス感染細胞内に入るのではなく、宿主細胞がウイルスに感染する以前にウイルスを不活化することができるウイルス感染治療薬が望ましい。in vitroにおいて宿主細胞に感染する以前のウイルスを不活化する方法としては、例えば特許文献1のようなものが知られている。
特許文献1に記載の発明は、平均分子量が500〜8,000の範囲にあるポリエチレンイミンを主成分とするウイルス不活化剤を血液や体液等からなるサンプルに加えることで、各種検査測定値に影響を与えることなくサンプルに含まれているウイルスを不活化してウイルス感染を予防するというものである。しかしながら、ポリエチレンイミンは生体に対して高い毒性を有することが知られている。毒性は生細胞を用いない場合にはそれほど問題とはならないが、生細胞が関与する評価系の場合、特に医薬の分野においては新規治療薬を開発するにあたり大きな問題となる。そのため、高い毒性を有するポリエチレンイミンを生体に投与した際にどのように作用するか、特に医薬として使用できる可能性があるかどうかについてはこれまで殆ど調べられてこなかった。
ポリエチレンイミンを生体に投与した数少ない例としては特許文献2が挙げられる。特許文献2には、C18アシル基などの疎水性基を導入した分子量87,000の直鎖ポリエチレンイミンを希釈してマウスに腹腔内投与すると、インターフェロンγの発現が誘導される等の免疫賦活効果がみられることが記載されている。しかし特許文献2の実施例では、特定の分子量を有し且つ特定の疎水性基が導入されている直鎖ポリエチレンイミンをマウスの腹腔内に投与することしか示していない。ポリエチレンイミンは様々な構造および分子量をとり得るポリマーであるが、特許文献2に開示されているもの以外の、例えば他の分子量を有するポリアルキレンイミンや、分岐鎖あるいは未変性のポリアルキレンイミンを生体に投与した際の作用について実験した例はこれまで知られていない。また、ポリアルキレンイミンを外用薬として使用した例もこれまで知られていない。さらに、ポリアルキレンイミンの生体内でのウイルスに対する直接的な作用についてもこれまで知られていない。
特開平6−80520号公報 特表2004−520328号公報 ワルドら、「ジャーナル オブ インフェクシャスディジーズ」(Wald et al., J. Infect. Dis., 185, p.45-52, 2002)
本発明は、従来の抗ウイルス薬とは異なる作用機序を有することで薬剤耐性ウイルスが出現しづらいウイルス感染症治療薬を提供することを目的とする。
本発明者らは研究の結果、所定の分子量を有するポリアルキレンイミンを生体に投与すると、ポリアルキレンイミンが生体内に侵入したウイルスに吸着することにより、ウイルスが細胞膜に吸着したり細胞内に侵入したりするのを防ぎ、結果としてウイルスを不活化しウイルス感染症を治療または予防する効果が生じることを見出した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)重量平均分子量が300〜400,000の範囲であるポリアルキレンイミンを含む、ウイルス感染症を治療または予防するための医薬組成物。
(2)ポリアルキレンイミンを20mg/ml以下の量で含む外用医薬組成物である、(1)に記載の医薬組成物。
(3)ポリアルキレンイミンが直鎖または分岐鎖のポリエチレンイミンである、(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(4)さらに脂質粒子を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)エンベロープを有するウイルスによる感染症を治療または予防するための、(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(6)ヘルペスウイルス感染症を治療または予防するための、(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7)ポリアルキレンイミンを含む、生体投与用ウイルス不活化剤。
(8)ポリアルキレンイミンを含む、ウイルスの細胞吸着阻害剤。
(9)ポリアルキレンイミンを含む、ウイルスの細胞侵入阻害剤。
(10)重量平均分子量が300〜400,000の範囲であるポリアルキレンイミンを投与することを含む、ウイルス感染症を治療または予防する方法。
(11)ポリアルキレンイミンを20mg/ml以下の量で含む外用医薬組成物を投与することを含む、(10)に記載の方法。
(12)ポリアルキレンイミンが直鎖または分岐鎖のポリエチレンイミンである、(10)または(11)に記載の方法。
(13)ポリアルキレンイミンを脂質粒子と共に投与する、(10)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14)ウイルス感染症がエンベロープを有するウイルスによる感染症である、(10)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15)ウイルス感染症がヘルペスウイルス感染症である、(10)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(16)ポリアルキレンイミンを生体に投与することを含む、ウイルス不活化方法。
(17)ポリアルキレンイミンを投与することを含む、ウイルスの細胞吸着阻害方法。
(18)ポリアルキレンイミンを投与することを含む、ウイルスの細胞侵入阻害方法。
(19)ウイルス感染症を治療または予防するための医薬組成物の製造における、重量平均分子量が300〜400,000の範囲であるポリアルキレンイミンの使用。
(20)医薬組成物がポリアルキレンイミンを20mg/ml以下の量で含む外用医薬組成物である、(19)に記載の使用。
(21)ポリアルキレンイミンが直鎖または分岐鎖のポリエチレンイミンである、(19)または(20)に記載の使用。
(22)医薬組成物が脂質粒子を含む、(19)〜(21)のいずれかに記載の使用。
(23)医薬組成物がエンベロープを有するウイルスによる感染症を治療または予防するためのものである、(19)〜(22)のいずれかに記載の使用。
(24)医薬組成物がヘルペスウイルス感染症を治療または予防するためのものである、(19)〜(22)のいずれかに記載の使用。
(25)生体投与用ウイルス不活化剤の製造における、ポリアルキレンイミンの使用。
(26)ウイルスの細胞吸着阻害剤の製造における、ポリアルキレンイミンの使用。
(27)ウイルスの細胞侵入阻害剤の製造における、ポリアルキレンイミンの使用。
本発明によれば、薬剤耐性ウイルスが出現しにくい上、比較的安価なウイルス感染症治療薬を提供することができる。また、ウイルスの種類に非特異的であるウイルス感染症治療薬を提供することができる。
HSV-2感染マウスの発症経過を表したグラフである。 HSV-2感染マウスの体重の変化を表したグラフである。 HSV-2感染マウスに対するポリエチレンイミンとアシクロビルの効果を比較するための投与試験の結果を表したグラフである。
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2008-265560号および特願2009-035803号の明細書、特許請求の範囲および図面に記載された内容を包含する。
本発明で用いるポリアルキレンイミンとは、例えばエチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ジメチルエチレンイミン、ペンチレンイミン、ヘキシレンイミン、ヘプチレンイミン、オクチレンイミンといった炭素数2〜8のアルキレンイミン、特に炭素数2〜4のアルキレンイミンの1種または2種以上を常法により重合して得られるポリマー、ならびにそれらを種々の化合物と反応させて化学的に変性させたポリマーを意味する。これらのポリアルキレンイミンの中でも、ポリエチレンイミン(PEI)が本発明において特に好ましい。ポリエチレンイミンは、例えばエチレンイミンを二酸化炭素、塩酸、臭化水素酸、p-トルエンスルホン酸、塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素などを触媒として開環重合させるなどの製法により合成することができるポリマーであり、接着、コーティング、ラミネートなどの幅広い分野で広く使用されている。本発明に用いることができる具体的なポリエチレンイミンとしては、例えば日本触媒社から市販されているエポミン(登録商標)(型番:SP-003、SP-006、SP-012、SP-018、SP-200およびP-1000)、和光純薬工業社から市販されているポリエチレンイミン(販売元コード161-17831(平均分子量約600)、販売元コード167-17811(平均分子量約1,800)、および販売元コード164-17821(平均分子量約10,000))、ポリサイエンシーズ社(Polysciences, Inc.)から市販されているポリエチレンイミン(カタログ番号23966-2(直鎖状、MW 25,000))、BASF社から市販されているルパゾール(Lupasol,登録商標)(型番:Lupasol FG、Lupasol G20、Lupasol G35、およびLupasol PR8515)などを挙げることができる。
ポリエチレンイミンを含むポリアルキレンイミンは、製法を選択することによって様々な分子量のものを合成することができ、また直鎖状あるいは分岐状のものを合成することができる。例えば、直鎖状のポリエチレンイミンは式:
Figure 0005465182
(式中、nは7〜10000の範囲である)で表すことができる。また、分岐状のポリエチレンイミンは例えば式:
Figure 0005465182
で表すことができる。ポリエチレンイミンを含むポリアルキレンイミンの分岐の程度は、分子骨格中に存在する第一級アミノ基、第二級アミノ基および第三級アミノ基の存在比で表すことができる。本発明のポリアルキレンイミンが分岐構造をとる場合は、各アミノ基の比は特に限定されるものではないが、例えば第一級アミノ基、第二級アミノ基および第三級アミノ基が全体のアミノ基に対してそれぞれ25〜45モル%、35〜50モル%、20〜35モル%を占めているものを好適に用いることができ、特に第一級アミノ基、第二級アミノ基および第三級アミノ基が全体のアミノ基に対してそれぞれ30〜40モル%、30〜40モル%、25〜35モル%、中でもそれぞれ35モル%、35モル%、30モル%を占めているものを好適に用いることができる。
ポリアルキレンイミンは製法によって様々な構造をとり得るが、本発明におけるポリアルキレンイミンは直鎖あるいは分岐鎖のいずれでもよい。またポリアルキレンイミンは様々な分子量をとりうるが、本発明で用いるポリアルキレンイミンの重量平均分子量は300〜400,000の範囲内である。特に重量平均分子量が300〜30,000、中でも2,000〜30,000、とりわけ2,000〜25,000の範囲であるとより好ましい。本発明で用いるポリアルキレンイミンの重量平均分子量は2,000〜5,000の範囲が最も好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量とは水溶性糖類(和光純薬社製マルトトリオースおよびマルトヘキサオース、ならびに昭和電工社製プルランP-82など)を標準物質として用いてGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)法によって測定したものである。
ポリアルキレンイミンは未変性のものであっても、種々の化合物と反応させて化学的に変性、すなわち窒素原子上に置換基を導入させたものであってもよい。ポリアルキレンイミンは、例えばアルデヒド、ケトン、アルキルハライド、イソシアネート、チオイソシアネート、アルケン、アルキン、ビニル化合物(アクリロニトリル等)、エポキシ化合物(エピクロルヒドリン等)、シアナマイド、グアニジン、尿素、有機酸(脂肪酸等)、酸無水物、アシルハライドと反応させて変性させることができる。また、変性によりポリアルキレンイミンの窒素原子上に導入される置換基としては、例えばC1-6アルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルケニル、アシル、アミド(これらの基はさらにヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、アシル、アミド、スルホニル、スルフィニル、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6ハロアルケニル、C2-6アルキニル、C2-6ハロアルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、C3-6シクロアルキル、C3-6シクロアルケニルおよび3〜6員の飽和、部分的不飽和または芳香族複素環により置換されていてもよい)が挙げられる。ポリアルキレンイミンと各種化合物との反応例は以下の式のとおりである。
Figure 0005465182
(式中、Rはヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、アシル、アミド、スルホニル、スルフィニル、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6ハロアルケニル、C2-6アルキニル、C2-6ハロアルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、C3-6シクロアルキル、C3-6シクロアルケニルおよび3〜6員の飽和、部分的不飽和または芳香族複素環からなる群から選択される置換基である)
変性させたポリアルキレンイミンの具体例としては、ポリアルキレンイミンエトキシレート、特にポリエチレンイミンエトキシレートが挙げられる。ポリアルキレンイミンエトキシレートとは、ポリアルキレンイミンの窒素原子上にポリエチレングリコール鎖が結合した構造を有するポリマーである。ポリアルキレンイミンエトキシレートは、例えばポリアルキレンイミンにエポキシ化合物を反応させることによって合成することができる。より具体的には、例えばポリエチレンイミンエトキシレートは、窒素雰囲気下、高温、高圧、触媒存在の条件でポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを液中フィードすることにより、ポリエチレンイミン中のアミノ基に含まれる活性水素を基点としてエチレンオキサイドを付加させて合成することができる。本発明に用いることができる具体的なポリアルキレンイミンエトキシレートとしては、ポリエチレンイミンエトキシレートであって、重量平均分子量が2,000〜15,000程度、好ましくは4,000〜12,000、特に5,500〜10,000程度であり、無水フタル化法で測定した水酸基価が50〜500mgKOH/g、好ましくは70〜400mgKOH/gであるものが好ましい。中でも、ポリエチレンイミンを中心とするデンドリマー構造を有するポリエチレンイミンエトキシレートが特に好ましい。利用可能なポリエチレンイミンエトキシレートの例としては、例えば日本触媒社製のエポミンSP-006あるいはSP-018にエチレンオキサイドを反応させて調製したものが挙げられる。
ポリアルキレンイミンは非常に強いカチオン性のポリマーである。これに対し、ウイルスの表面に存在し宿主細胞と結合する役割を果たす蛋白質は負に帯電していることが知られている。それゆえ、ポリアルキレンイミンをウイルスが存在する環境に投与すると、ポリアルキレンイミンはウイルス表面に静電的に吸着し、その結果ウイルスが宿主細胞の細胞膜に吸着したり、細胞内に侵入したりすることを阻止してウイルスを不活化する。つまりポリアルキレンイミンは生体内でウイルスに直接的に作用してウイルスを不活化するのであり、例えば生体の免疫機能を向上させる免疫賦活剤によっては治療または予防できないウイルス感染症に特に有効である。このことから、本発明はウイルス感染症を治療または予防するための医薬組成物のみならず、生体に投与すると生体内に侵入したウイルスに吸着することによりウイルスの活動を阻止するという作用機序を有する生体投与用ウイルス不活化剤にも関する。また、細胞に吸着する前のウイルスに吸着することによりウイルスの細胞へ吸着する能力を阻害するウイルスの細胞吸着阻害剤、ならびに既に細胞に吸着しているウイルスの細胞内へ侵入する能力を阻害するウイルスの細胞侵入阻害剤にも関する。
上記のような作用機序により、本発明のポリアルキレンイミンは非特異的な抗ウイルス作用(ウイルスの増殖を抑制してウイルス性疾患の予防と治療をはかる作用)を有する。すなわちポリアルキレンイミンは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)およびサイトメガロウイルス(CMV)等のヘルペスウイルス科に属するウイルス(これらをヘルペスウイルスと総称する)、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス(これらをインフルエンザウイルスと総称する)等のオルトミクソウイルス科に属するウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)等のレトロウイルス科に属するウイルス、麻疹ウイルスおよびムンプスウイルス等のパラミクソウイルス科に属するウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルスおよびA型肝炎ウイルス等のピコルナウイルス科に属するウイルス、B型肝炎ウイルス等のヘパドナウイルス科に属するウイルス、C型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルスおよび西ナイルウイルス等のフラビウイルス科に属するウイルス、ヒトアデノウイルス等のアデノウイルス科に属するウイルス、コロナウイルス、SARSウイルス等のコロナウイルス科に属するウイルス、風疹ウイルス等のトガウイルス科に属するウイルス、狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス等のラブドウイルス科に属するウイルス、エボラウイルス等のフィロウイルス科に属するウイルス、ならびにヒトパピローマウイルス(HPV)等のパポーバウイルス科に属するウイルスといった種々のウイルスに対して抗ウイルス作用を有し、これらのウイルスへの感染により発症する感染症の治療に有効である。例えば、本発明のポリアルキレンイミンは、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、麻疹ウイルス、ポリオウイルスおよびライノウイルスに対して優れた抗ウイルス作用を有し、これらのウイルスへの感染により発症する感染症の治療に有効である。これらの中でも、本発明のポリアルキレンイミンは、ヘルペスウイルス科、オルトミクソウイルス科、レトロウイルス科、パラミクソウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、トガウイルス科およびラブドウイルス科等に属するエンベロープを有するウイルス、特にヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルスおよびヒト免疫不全ウイルスのようなエンベロープを有するウイルスに対して優れた抗ウイルス作用を有し、これらのウイルスへの感染により発症する感染症の治療に有効である。また、ヘルペスウイルスには重量平均分子量2,310〜4,600程度の分岐状あるいは重量平均分子量25,000程度の直鎖状のポリエチレンイミンが、麻疹ウイルスには重量平均分子量2,310程度の分岐状のポリエチレンイミンが、インフルエンザウイルスには重量平均分子量10,000程度のポリエチレンイミンエトキシレートが、コロナウイルスには重量平均分子量1,470〜321,200程度の分岐状のポリエチレンイミンあるいは重量平均分子量10,000程度のポリエチレンイミンエトキシレートが、特に有効である。
とりわけ本発明のポリアルキレンイミンはヘルペスウイルスへの感染により発症する口唇ヘルペス、ヘルペス口内炎、ヘルペス角膜炎、性器ヘルペス、新生児ヘルペス、水痘および帯状疱疹等のヘルペスウイルス感染症の予防または治療に有効であり、中でも単純ヘルペスウイルス2型の感染により発症する性器ヘルペスの予防または治療に特に有効である。さらに本発明のポリアルキレンイミンは、アシクロビルなどの従来の抗ウイルス薬に対する耐性を獲得したウイルスに対しても有効である。また本発明のポリアルキレンイミンは、これらの他にもインフルエンザ、AIDS、麻疹、おたふくかぜ、ポリオ、かぜ症候群、肝炎、日本脳炎、西ナイル熱、SARS、風疹、狂犬病、エボラ出血熱、尖圭コンジローマ、疣および子宮頸がんの予防あるいは治療にも有効である。
本発明のポリアルキレンイミンは、単独あるいは薬理的に許容される各種製剤補助剤と混合して、医薬組成物として投与することができる。一般的には、目的に応じて経口投与、静脈内投与、局所投与、経皮もしくは経粘膜投与など、使用に適した剤形で投与される。各種の剤形としては、例えば経口投与のための内服剤、経静脈投与を含む非経口投与のための注射剤、あるいは経皮もしくは経粘膜投与を含む外用投与のための外用剤(外皮用剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、口腔剤もしくは吸入剤など)が挙げられる。なお、外用剤とは内服剤及び注射剤を除いた人体へ直接用いる全ての薬剤を意味する。また外用投与とは目、鼻、耳、口腔、肛門、皮膚もしくは粘膜に直接薬剤を投与することを意味し、経皮もしくは経粘膜投与がこれに含まれる。
内服剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤およびエリキシル剤などを含む。このような液剤は、ポリアルキレンイミンを含む活性物質を一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液など)に溶解、懸濁または乳化させることにより得られる。さらに液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤または緩衝剤などを含有していてもよい。
外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、エアゾル剤、点眼剤および点鼻剤などが含まれる。
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えばポリアルキレンイミンを含む活性物質を基剤に研和、または溶融させて調製する。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルまたはオレイン酸エステルなど)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウまたはセレシンなど)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなど)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコールまたはセトステアリルアルコールなど)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサンなど)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリンまたは流動パラフィンなど)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはマクロゴールなど)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油またはテレピン油など)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワランまたはスクワレンなど)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれる基剤を単独でまたは2種以上混合して用いる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤または着香剤などを含んでいてもよい。
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ポリアルキレンイミンを含む活性物質を基剤に溶融させて調製する。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(例えば、エタノールまたはイソプロピルアルコールなど)、ゲル化剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはエチルセルロースなど)、中和剤(例えば、トリエタノールアミンまたはジイソプロパノールアミンなど)、界面活性剤(例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなど)、ガム類、水、吸収促進剤およびかぶれ防止剤から選ばれる基剤を単独でまたは2種以上混合して用いる。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤などを含んでいてもよい。
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ポリアルキレンイミンを含む活性物質を基剤に溶融または乳化させて製造される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(例えば、プロピレングリコールまたは1,3-ブチレングリコールなど)、高級アルコール(例えば、2-ヘキシルデカノールまたはセタノールなど)、乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類または脂肪酸エステル類など)、水、吸収促進剤およびかぶれ防止剤から選ばれる基剤を単独でまたは2種以上混合して用いる。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤などを含んでいてもよい。
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ポリアルキレンイミンを含む活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチンまたはメチルセルロースなど)、湿潤剤(例えば、尿素、グリセリンまたはプロピレングリコールなど)、充填剤(例えば、カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウムまたはマグネシウムなど)、水、溶解補助剤、粘着付与剤およびかぶれ防止剤から選ばれる基剤を単独でまたは2種以上を混合して用いる。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤などを含んでいてもよい。
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ポリアルキレンイミンを含む活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤およびかぶれ防止剤から選ばれる基剤を単独でまたは2種以上混合して用いる。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤などを含んでいてもよい。
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ポリアルキレンイミンを含む活性物質を水、アルコール(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコールなど)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤および懸濁化剤などから選ばれる基剤の1種または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて製造する。さらに、保存剤、抗酸化剤または着香剤などを含んでいてもよい。
噴霧剤、吸入剤、およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。
注射剤としては、すべての注射剤を含み、点滴剤をも包含する。例えば、筋肉への注射剤、皮下への注射剤、皮内への注射剤、動脈内への注射剤、静脈内への注射剤、腹腔内への注射剤、脊髄腔への注射剤および静脈内への点滴剤などを含む。
注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ポリアルキレンイミンを含む活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類などおよびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸またはポリソルベート80(登録商標)など)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤または保存剤などを含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
点眼剤には、点眼液、懸濁型点眼液、乳濁型点眼液、用時溶解型点眼液および眼軟膏が含まれる。これらの点眼剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、ポリアルキレンイミンを含む活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いる。点眼剤の溶剤としては、例えば、滅菌精製水、生理食塩水、その他の水性溶剤または注射用非水性用剤(例えば、植物油など)などおよびそれらの組み合わせが用いられる。点眼剤は、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、濃グリセリンなど)、緩衝化剤(例えば、リン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムなど)、界面活性化剤(例えば、ポリソルベート80(商品名)、ステアリン酸ポリオキシル40、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油など)、安定化剤(例えば、クエン酸ナトリウムまたはエデト酸ナトリウムなど)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウムまたはパラベンなど)などを必要に応じて適宜選択して含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか、無菌操作法によって調製される。また無菌の固形剤、例えば、凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の滅菌精製水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤または吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は使用時に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁させて使用する形態であってもよい。これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウムまたはパラベンなど)、着色剤、緩衝化剤(例えば、リン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムなど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウムまたは濃グリセリンなど)、増粘剤(例えば、カリボキシビニルポリマーなど)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(例えば、ステアリン酸およびその塩など)、結合剤(例えば、デンプンまたはデキストリンなど)、賦形剤(例えば、乳糖またはセルロースなど)、着色剤、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウムまたはパラベンなど)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(例えば、アトマイザーまたはネブライザー)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
外用投与のためのその他の組成物としては、ポリアルキレンイミンを含む活性物質を含有し常法により処方される直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリーなどが含まれる。
本発明のポリアルキレンイミンを含む医薬組成物は、特にウイルス感染症を発症している局所への外用投与、中でも経皮もしくは経粘膜投与が好ましい。またポリアルキレンイミンは20mg/ml以下の濃度で外用投与することが好ましく、特に0.004mg/ml〜20mg/mlの濃度で外用投与することが好ましい。一方、投与量は、ポリアルキレンイミンの重量を基準として、例えば哺乳動物の場合1日あたり体重1kgにつき0.001〜50mg程度とするのが好ましい。外用投与においては、この程度の濃度あるいは投与量で投与するならば、ポリアルキレンイミンの毒性を抑えつつ抗ウイルス作用を維持することができる。すなわちポリエチレンイミンの生体に対する毒性は、例えば体重を減少させて衰弱させ最終的には死に至らしめるなどの影響を生体に与えるものであるが、この程度の濃度あるいは投与量であれば、投与された動物は死に至ることなくウイルス感染を治癒することができる。なお、外用投与時のポリアルキレンイミンの濃度を10mg/ml以下とすると、より毒性を抑えることができるため好ましい。
本発明のポリアルキレンイミンを含む医薬組成物の投与はウイルス感染の前もしくは後のいずれに行ってもよいが、特にウイルス感染前あるいは感染直後に投与すると良好な効果を発揮する。ウイルス感染動物に対する投与は1日のみであっても、数日連続して行ってもよい。外用投与においては、特に10mg/ml〜20mg/ml程度、とりわけ20mg/ml程度の比較的濃度が高い剤形での投与の場合は1日のみの投与でも十分な効果を発揮する。また0.004mg/ml〜10mg/ml程度、特に0.004mg/ml〜1mg/ml程度、中でも0.004mg/ml〜0.4mg/ml程度の比較的濃度が低い剤形での投与の場合は、一定日数、例えば2週間程度、あるいは少なくとも3〜7日程度連続して投与することが好ましい。投与は一日あたり1回でもよく、または2〜3回あるいは4〜5回に分けて行ってもよい。
ポリアルキレンイミンの毒性は、ポリアルキレンイミンを変性させることによっても抑えることができる。例えばポリアルキレンイミンをポリアルキレンイミンエトキシレート、特にポリエチレンイミンエトキシレートとすることにより生体に対する毒性を抑えることができる。
ポリアルキレンイミンの毒性は、ポリアルキレンイミンを脂質粒子と併用することによっても抑えることができる。脂質粒子とは、脂質の固まりからなる粒子、脂質で表面が覆われており中に親油性成分を含む粒子(ミセル)およびリポソームなどを含む概念である。本発明における脂質粒子は、高分子ミセル、エマルション、微小球、ナノ小球、リポソームのうちのいずれかの形態であるのが好ましい。
高分子ミセルとは、親水性ポリマーと疎水性ポリマーからなる両親媒性のブロックコポリマーを水に分散させることにより自律的に会合して生じる数十ナノメートルサイズのナノ微粒子であり、ブロックコポリマーにはPEG-ポリアミノ酸またはその誘導体などが用いられる。エマルションとは、溶質溶媒が共に液体である分散系のことである。微小球とは、粒子径が数μm程度の球状の製剤のことであり、ナノ小球とは微小球の直径サイズがナノスケールのもの(通常1μm以下)をいう。
リポソームとは、リン脂質2分子膜からなり、中に水を含む閉鎖系の脂質小胞体(ベシクルvesicle)である。本発明で用いるリポソームの種類としては特に制限はなく、多重ラメラ小胞(MLV)、単ラメラ小胞(SUV、LUV)などのいずれのタイプでもよく、またその調製法も薄膜法、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、逆相蒸発法、界面活性剤除去法、エタノール注入法など公知のいずれの手法を用いてもよい。また得られたリポソームの粒径をエクストルーダーや高圧乳化機、超音波等を用いて調整してもよい。リポソーム膜成分としては公知の各種リン脂質を使用することができ、例えば卵黄、大豆またはその他の天然由来のホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、オレイン酸、セラミド、スフィンゴミエリンやこれらの水添品、および合成により得られるジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、荷電脂質のジセチルホスフェート、ジヘキサデシルホスフェート、ジオクタデシルジメチルアンモニウム塩、ステアリルアミン、ならびにその他の人工脂質やカチオン性脂質等を単独または混合して使用できる。本発明で用いるリポソームは、表面がプラスに荷電した正荷電リポソームが特に好ましい。そのような正荷電リポソームは、例えば卵黄レシチン、コレステロールおよびステアリルアミンを混合することにより調製することができる。また本発明で用いるリポソームとしては、卵黄レシチンおよびコレステロールからなる中性リポソーム、あるいはそのような中性リポソームをポリエチレングリコールでコートしたリポソームも特に好ましい。本発明で用いるリポソームのサイズは、粒径が0.025から200μmであると好ましく、特に0.025〜100μm程度、とりわけ0.025〜10μm程度であるとより好ましい。
ポリアルキレンイミンは単独で、あるいはリポソームと併用して用いることができるが、さらに他の活性物質と併用してもよい。他の活性物質としては公知の抗ウイルス薬、例えばアシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、ソリブジン、ブリブジン、ガンシクロビル、バルガンシクロビル塩酸塩、ホスカルネットナトリウム水和物、オセルタミビル、ザナミビル、アマンタジン、リマンタジン、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、サニルブジン、ラミブジン、アバカビル、テノホビル、エムトリシタビン、ネビラピン、エファビレンツ、デラビルジン、インジナビル、サキナビル、ロピナビル、リトナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、エンフュヴィルタイド、アデフォビル、エンテカビルおよびリバビリン、ならびにポビドンヨード等のヨウ素系消毒剤およびクロルヘキシジンのような殺ウイルス効果を有する消毒剤が挙げられる。リポソームおよび他の活性物質は、本発明のポリアルキレンイミンを含む製剤に含まれていてもよく、あるいは本発明のポリアルキレンイミンを含む製剤とは別の製剤として、ポリアルキレンイミンを含む製剤の投与と同時にもしくは連続して投与してもよい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1:HSV-2感染動物におけるポリエチレンイミン(SP-006及びP25K)の外用による発症阻止効果
単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)に対するポリエチレンイミン(PEI)の抗ウイルス作用について、マウスを用いた感染実験を行った。
ポリエチレンイミンとして、日本触媒社製のエポミン(登録商標)SP-006(分岐状、GPC法による重量平均分子量2,310)およびポリサイエンシーズ社製のポリエチレンイミン(カタログ番号23966-2、直鎖状、重量平均分子量25,000:以下このポリエチレンイミンを「P25K」と称する)を用いた。SP-006とP25Kの2種類を、1N塩酸でpH7.0-7.4に調整した。SP-006は20mg/ml液および0.4mg/ml液(20mg/ml液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で50倍希釈)を、P25Kは20mg/ml液および0.004mg/ml(20mg/ml液をリン酸緩衝生理食塩水で5000倍希釈)をそれぞれ使用した。対照にはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。
5-6週齢の雌のBALB/cマウスの局所(性器)にHSV-2を、1匹当たり20μlずつ(1x105PFU(プラーク形成単位)のウイルスを含有)接種した。SP-006、P25Kまたはリン酸緩衝生理食塩水を、1回当たり20μlの投与量でウイルス感染1時間前に初回投与後1日3回(午前8時、午後1時、午後6時)、1週間にわたって粘膜に塗布することにより局所投与した。その結果は表1のとおりである。
HSV-2の接種量はBALB/cマウスにとっては致死的であり、対照区では13匹すべてがウイルス感染後10日以内に死亡した。SP-006およびP25Kの20mg/ml液は、感染当日に3回投与したところ、マウスが明らかに衰弱したため2日目以降投与を行わなかった。SP-006の20mg/ml液投与のマウス3匹中1匹のみが投与開始1日目に死亡した(衰弱および死亡はポリエチレンイミンの毒性が原因と考えられる)。他の投与区では、マウスに対する毒性(体重の変化、外観から判断)は認められなかった。
ウイルス感染3日後の局所でのウイルス量を、マウス局所をPBSで洗浄することにより採取した洗浄液を用いてプラークアッセイ法によって測定した。測定の結果、SP-006およびP25Kの20mg/ml液を3回しか投与しなかった場合でも、対照に比べて激減した。また、SP-006の50倍希釈液(0.4mg/ml)およびP25Kの5000倍希釈液(0.004mg/ml)はいずれも、かなり低用量での投与にもかかわらずウイルス増殖抑制効果を示した。さらに、いずれのポリエチレンイミン投与区においても、死亡抑制効果と生存日数の延長効果がみられた。
BALB/cマウスにHSV-2を局所接種すると、人間での性器ヘルペスと同様の炎症や浮腫が見られる。このような症状から、発症の程度を次の5段階にスコア化した。0:無症状、1:局所の軽度の炎症、2:浮腫を伴う中等度の炎症、3:浸出液のみられる重度の炎症、4:後肢の麻痺、5:死亡。ウイルス感染後2週間にわたって、発症の経過をこのスコア(各マウスの平均)で表し図1に示した。対照ではウイルス感染4日後から発症が認められ、経時的に重症化した。これに対してSP-006およびP25Kの20mg/ml液を3回投与した場合、すべてのマウスが無症状で経過した。ポリエチレンイミンを低濃度で投与した場合には、感染5日後から発症が認められたが、その程度は、対照に比べて軽微であった。
図2は、生存しているマウスの平均体重の変化を、感染当日を100%として表したものである。SP-006およびP25Kの20mg/ml液を3回のみ投与した群では、毒性のために1日目で体重が大きく減少しているが、投与の中止およびウイルス感染症の治癒に伴いその後回復していることがわかる。SP-006の0.4mg/ml液およびP25Kの0.004mg/ml液を継続投与した群では殆ど体重の変動がみられない。その一方で、対照群ではウイルス感染症により体重は徐々に減少しマウスの死亡につながっていることがわかる。
以上より、ポリエチレンイミンは20mg/ml程度の濃度では、マウスにやや毒性を示し連続的な投与には適さないものの、少数回の投与によって強力な性器ヘルペス治療効果を示すことがわかる。また0.4mg/mlあるいは0.004mg/mlといった低濃度であれば、マウスに毒性を示すことなく、発症や死亡を抑制するのに十分なウイルス増殖抑制効果をもたらすことがわかる。
Figure 0005465182
実施例2:ポリエチレンイミン(SP-006)とリポソームの複合体のHSV-2感染動物における発症阻止効果
卵黄レシチン、コレステロール、ステアリルアミン(モル比で5:5:4)から成るリポソーム(総脂質20mg/ml)とSP-006を含む水溶液を、1N塩酸でpHを7.0-7.4に調整した。このポリエチレンイミン-リポソーム複合体には、SP-006が20mg/mlの濃度で含有されている。この混合物について、BALB/cマウスの性器ヘルペスモデルにおける有効性を評価した。実験は上記の実施例1と同様に行った。
その結果を、実施例1と同様に表1および図1、2に示した。SP-006のみの20mg/ml液を投与した場合とは異なり、この複合体は1週間にわたって連続的に投与してもマウスに目立った毒性をもたらさなかった。感染3日後の局所のウイルス量を測定したところ、6匹中4匹にはウイルスが検出されず、2匹にのみ、対照に比べて1/10〜1/20という少量のウイルスが検出された。死亡率や発症の程度は、対照と比較して顕著に抑制された。
これらより、生体に対するポリエチレンイミンの毒性は、ポリエチレンイミンを希釈して用いるのみならず、リポソームと併用することによっても減弱させることができ、しかもポリエチレンイミン本来の抗ウイルス作用はリポソームと併用しても維持されることがわかった。
実施例3:ポリエチレンイミンのHSV-2ウイルス不活化作用
HSV-2ウイルスが実際にポリエチレンイミンによって不活化されるかどうかを検討した。実験は以下の手順に従って行った。
(1)SP-006またはP25Kを培地でPBSを用いて各濃度に希釈した
(2)HSV-2(2x102PFU/100μlまたは2x104PFU/100μl)と上記(1)のポリエチレンイミン希釈液とを1:1で混合し、37℃、1時間処理した
(3)ウイルス量が2x102PFU/100μlの場合には希釈せずに、2x104PFU/100μlの場合にはPBSで100倍希釈後、プラークアッセイ法で残存ウイルス量を測定した
その結果を表2にまとめた。希釈処理を加えた場合は、希釈処理を行わなかった場合と比較すると残存ウイルス量が増加し、ウイルス不活化作用がやや弱まった。このことは、ポリエチレンイミンは殺ウイルス活性を有しないものの、ウイルスとの間に緩やかな結合(静電的結合)を起こして、可逆的にウイルスの感染を阻止する作用、すなわちウイルス不活化作用を有することを示している。
Figure 0005465182
比較例1:ポピドンヨードのHSV-2ウイルスに対する作用
陽性対照として、強力な殺ウイルス活性を示す市販消毒薬ポピドンヨード(明治製菓社製イソジン(登録商標)、ポピドンヨード含有量100mg/ml)の殺ウイルス活性を、上記の実施例3と同様の方法で検討した。
その結果を表3に示した。ポピドンヨードはポリエチレンイミンとは異なる挙動を示した。SP-006とP25Kは、希釈処理を加えると残存ウイルス量が増加しウイルス不活化作用が弱まったのに対して、ポピドンヨードは希釈してもその効果に大きな変化はみられなかった。このことから、ポピドンヨードの場合にはウイルス粒子の感染力を非可逆的に消失させる作用、すなわち殺ウイルス活性を有すると推定される。
Figure 0005465182
実施例4:ポリエチレンイミンのHSV-2ウイルスに対する細胞吸着阻害効果
HSV-2ウイルスがポリエチレンイミンによって宿主細胞への吸着を阻害されているかどうかを検討した。実験は以下の手順で行った。
(1)Vero細胞(24穴プレート)、ウイルス液(200PFU/100μl)、所定の濃度の2倍濃度のポリエチレンイミン液(SP-006またはP25K)を、4℃で2時間冷却した
(2)ウイルス液とポリエチレンイミン液とを100μlずつVero細胞に加え、4℃で1時間処理した(4℃では、ウイルスの細胞への吸着は起こるが、その後のウイルスの細胞内侵入は起こらない)
(3)氷冷したリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄後、サンプル無添加の培地(0.8%メチルセルロース加)を重層した。
(4)3日後にプラーク数を測定した。
サンプル存在下で細胞に吸着したウイルス量を表4に示す。SP-006およびP25Kは、濃度依存的にウイルス吸着を阻害した。
Figure 0005465182
実施例5:ポリエチレンイミンのHSV-2ウイルスに対する細胞侵入阻害効果
次に、宿主細胞に吸着したHSV-2が細胞内に侵入する段階に対するポリエチレンイミンの阻害効果を検討した。実験は以下の手順で行った。
(1)Vero細胞(24穴プレート)、ウイルス液(100PFU/100μl)を、4℃で2時間冷却した。
(2)ウイルス液を100μlVero細胞に加え、4℃で1時間処理した
(3)氷冷したリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄後、ポリエチレンイミン(SP-006またはP25K)を添加した培地を加えて、37℃で培養した(この温度に置くことによって、4℃で吸着していたウイルスが侵入を開始する)
(4)30分後または3時間後にクエン酸バッファー(pH 3.0)で1分間処理して、その時間までに侵入していなかったウイルスを不活化した
(5)すぐに培地(0.8%メチルセルロース加)を重層した
(6)3日後にプラーク数を測定した
サンプル存在下で細胞内に侵入したウイルス量を表5に示す。SP-006およびP25Kは濃度依存的にウイルス侵入を阻害した。その効果は吸着阻害効果に比べて強力であった。また実施例2においてウイルスの不活化がみられなかった濃度であっても、ウイルス侵入阻害効果が観察された。
Figure 0005465182
比較例2:ポピドンヨードのHSV-2ウイルスに対する細胞吸着・侵入阻害効果
HSV-2の宿主細胞への吸着に及ぼすポピドンヨードの影響を検討した。実験は上記の実施例4と同様に行った。その結果、サンプル存在下で細胞に吸着したウイルス量を表6に示す。ポリエチレンイミンとは異なり、ポピドンヨードには濃度依存的な吸着阻害効果がほとんどみられなかった。
Figure 0005465182
ポピドンヨードのHSV-2侵入阻害効果を、上記の実施例5と同様の方法で検討した。ポピドンヨードの存在下で細胞内に侵入したウイルス量を表7に示す。ポピドンヨードは、一見したところ低濃度でもかなりの侵入阻害効果を示すようにみえる。しかし、ポリエチレンイミンがウイルス不活化作用を示さない濃度でも侵入阻害効果を示したのに対して、ポピドンヨードは殺ウイルス活性効果の認められる濃度で侵入阻害を起こしていることから、ポピドンヨードの侵入阻害効果は殺ウイルス活性の結果もたらされたものと考えられる。
Figure 0005465182
比較例3:抗ヘルペス薬アシクロビルのHSV-2ウイルスに対する細胞吸着・侵入阻害効果
HSV-2の宿主細胞への吸着に及ぼすアシクロビルの影響を検討した。実験は上記の実施例4と同様に行った。その結果、アシクロビル存在下で細胞に吸着したウイルス量を表8に示す。ポリエチレンイミンとは異なり、アシクロビルには濃度依存的な吸着阻害効果がほとんどみられなかった。
Figure 0005465182
アシクロビルのHSV-2侵入阻害効果を、前述の実施例5と同様の方法で検討した。アシクロビルの存在下で細胞内に侵入したウイルス量を表9に示す。アシクロビルはHSV-2の細胞内への侵入を阻害しなかった。
アシクロビルは、感染細胞内でのHSV-2の複製段階を阻止する薬剤であり、ウイルスの感染初期段階である吸着および侵入段階には関与しない。この比較例により、ポリエチレンイミンはアシクロビルとは作用機序が異なっていることがわかる。
Figure 0005465182
実施例6:各種ウイルスに対するポリエチレンイミンの抗ウイルス活性評価
単純ヘルペスウイルス1型および2型、麻疹ウイルス、A型インフルエンザウイルスならびにヒトコロナウイルスに対するポリエチレンイミンの抗ウイルス活性をin vitroにおいて評価した。
ポリエチレンイミンとして、日本触媒社製のエポミン(登録商標)SP-003(GPC法による重量平均分子量1,470)、SP-006(GPC法による重量平均分子量2,310)、SP-012(GPC法による重量平均分子量3,610)、SP-018(GPC法による重量平均分子量4,600)、SP-200(GPC法による重量平均分子量16,560)およびP-1000(GPC法による重量平均分子量321,200)、ならびに後述の手順で調製したポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE-1、PEIE-2およびPEIE-3の3種類)を用いた。以下、SP-003、SP-006、SP-012、SP-018、P-1000およびPEIE-3のデータに関してはμl/mlの単位で、またSP-200、PEIE-1およびPEIE-2のデータに関してはμg/mlの単位で表すものとする。
それぞれの細胞に対するポリエチレンイミンの細胞毒性を評価するための試験を行った。試験は以下の手順で行った。
(1)種々の濃度(SP-003、SP-006、SP-012、SP-018、P-1000およびPEIE-3は0.002〜20μl/mlの濃度範囲、SP-200、PEIE-1およびPEIE-2は0.002〜20μg/mlの濃度範囲)のポリエチレンイミン存在下で72時間培養後、増殖した細胞数をトリパンブルー染色法で測定した
(2)無添加対照の細胞数を100%として、各濃度のポリエチレンイミンで処理した時の細胞数を%で表し、グラフ上で50%細胞増殖阻害濃度(CC50)を求めた
各種ウイルスに対するポリエチレンイミンの抗ウイルス活性は以下のようにして調べた。
[A]単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)
以下の手順により、単純ヘルペスウイルス1型に対するポリエチレンイミンの増殖抑制効果を調べた。
(1)Vero細胞(アフリカミドリザル腎由来細胞)をトリプシンで剥離し、1×106cells/mlに調製して48穴プレートに200μl/wellの量で加えた
(2)1-2日後に、単層状になっていることを確認した上で、0.2PFU(プラーク形成単位)/cellになるように、ウイルス液を適宜培地で希釈した
(3)ポリエチレンイミンを培地で適宜希釈した(終濃度:SP-003、SP-006、SP-012、SP-018、P-1000およびPEIE-3は0.0001〜10μl/ml、SP-200、PEIE-1およびPEIE-2は0.0001〜10μg/ml、以降の[B]〜[E]においても同様)
(4)培地を除去後、ウイルス感染を以下のように行った
A区:ウイルス液25μlとポリエチレンイミン25μlを同時に加え、室温で1時間、時々(5-10分に1回程度)プレートをゆすりながら感染させた
B区:A区のポリエチレンイミンの代わりに希釈液(培地)を加えて、A区と同様の操作を行った
(5)ウイルス液を除去後、PBS(-)で3回洗浄し、ポリエチレンイミン100μlと培地100μlとを各穴に加えた
(6)24時間後に、-80℃の冷凍庫に移し、凍結融解を3回行った
(7)35mmディッシュにVero細胞を単層状に培養しておき、3回の凍結融解が終了したサンプルをPBS(-)で100-105倍に希釈した
(8)希釈したウイルス液を、1ディッシュ当り100μl加えて、37℃、1時間、室温で感染させた
(9)メチルセルロース(MC)加MEM培地を1ディッシュ当たり1.5ml重層し、37℃のCO2インキュベータに入れた
(10)1-2日後に、プラークが適当な大きさになっていることを確認して、培地を除去し、クリスタルバイオレット液で固定・染色を行い、顕微鏡下でプラーク数を計算した
(11)無添加対照区のプラーク数を100%として、ポリエチレンイミン添加区のプラークの%を計算し、片対数グラフ上で50%ウイルス増殖阻害濃度(IC50)を求めた
(12)Vero細胞に対するCC50値とIC50値から、選択指数を求めた
単純ヘルペスウイルス1型は、アシクロビル(ACV)感受性株(KOS株)と耐性株(A4-3株)とを用いた。これらのウイルスに対するポリエチレンイミンの増殖抑制効果を表10(KOS株)と表11(A4-3株)に示す。ここで選択指数は、1以上あれば抗ウイルス活性を有すると考えられ、特に10以上あれば強力な抗ウイルス活性を有すると考えられる。
ACV感受性株に対して、SP-006、SP-012およびSP-018は、A区において、すなわちウイルス感染と同時に添加した場合には高い選択指数を示し、SP-012が最も効果的であった。ACV耐性株については、ACV感受性株の場合とほぼ同様の結果が得られ、SP-012が最も有効であった。
Figure 0005465182
Figure 0005465182
[B]単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)
[A]と同様のプラークアッセイ法により、単純ヘルペスウイルス2型に対するポリエチレンイミンの増殖抑制効果を調べた。その結果を表12に示す。SP-006、SP-012およびSP-018はA区において高い選択指数を示し、SP-012が最も効果的であった。
Figure 0005465182
[C]麻疹ウイルス(Measles virus)
[A]と同様のプラークアッセイ法により、麻疹ウイルスに対するポリエチレンイミンの増殖抑制効果を調べた。その結果を表13に示す。SP-006(A区)は10以上の選択指数を示した。
Figure 0005465182
[D]A型インフルエンザウイルス(Influenza A virus)
以下の手順により、A型インフルエンザウイルスに対するポリエチレンイミンの増殖抑制効果を調べた。
(1)MDCK細胞(イヌ腎由来細胞)をトリプシンで剥離し、1×106cells/mlに調製して48穴プレートに200μl/wellの量で加えた
(2)1-2日後に、単層状になっていることを確認した上で、ウイルス液を0.2PFU/cellとなるように、適宜培地で希釈した
(3)ポリエチレンイミンを適宜培地で希釈した
(4)培地を除去後、ウイルス感染を次のように行った
A区:ウイルス液25μlとポリエチレンイミン25μlを同時に加え、室温で1時間、時々(5-10分に1回程度)プレートをゆすりながら感染させた
B区:A区のポリエチレンイミンの代わりに希釈液(培地)を加えて、A区と同様の操作を行った
(5)ウイルス液を除去後、PBS(-)で3回洗浄し、ポリエチレンイミン100μlと維持培地100μlとを各穴に加えた
(6)24時間後に、-80℃の冷凍庫に移した
(7)35mmディッシュにMDCK細胞を単層状に培養しておき、凍結保存しておいた培養物の上清をPBS(-)で100-105倍に希釈した
(8)希釈したウイルス液を、1ディッシュ当り100μl加えて、37℃、1時間、室温で感染させた
(9)インフルエンザウイルスアッセイ用寒天培地を1ディッシュ当たり2ml重層し、寒天が固化してから37℃のCO2インキュベータに入れた
(10)2日後に、プラークが適当な大きさになっていることを確認して、染色後プラーク数を計算した
(11)無添加対照区のプラーク数を100%として、ポリエチレンイミン添加区のプラークの%を計算し、片対数グラフ上で50%ウイルス増殖阻害濃度(IC50)を求めた
(12)MDCK細胞に対するCC50値とIC50値から、選択指数を求めた
用いたウイルスは、A/NWS/33(H1N1)である。結果を表14に示す。選択指数10以上のポリエチレンイミンはなかったが、PEIE-3は最も効果があり、次いでSP-012、SP-006が比較的高い選択性を示した。
Figure 0005465182
[E]ヒトコロナウイルス(Human corona virus)
以下の手順により、ヒトコロナウイルスに対するポリエチレンイミンの増殖抑制効果を調べた。
(1)MRC-5細胞(ヒト胎児肺由来細胞)をトリプシンで剥離し、1×105cells/mlに調製して48穴プレートに300μl/wellの量で加えた
(2)1-2日後に、ほぼ単層状になっていることを確認した上で、ウイルス液を0.002TCID50になるように、適宜培地で希釈した
(3)ポリエチレンイミンを適宜培地で希釈した
(4)培地を除去後、ウイルス感染を次のように行った
A区:ウイルス液25μlとポリエチレンイミン25μlを同時に加え、室温で1時間、時々(5-10分に1回程度)プレートをゆすりながら感染させた
B区:A区のポリエチレンイミンの代わりに希釈液(培地)を加えて、A区と同様の操作を行った
(5)ウイルス液を除去後、PBS(-)で3回洗浄し、ポリエチレンイミン150μlと培地150μlとを各穴に加え、36℃で処理した
(6)3日後に、細胞変性効果(CPE)(円形化および腐肉形成(rounding and sloughing))を観察して(必要に応じてその程度を記録)、-80℃の冷凍庫に移した
(7)96穴プレートにほぼ単層状のMRC-5細胞を準備した
(8)3回凍結融解したウイルス液について、培地で3倍希釈系列(31-310)を作り、上記のプレートに4穴づつ、25μlを加えて感染させた(室温、1時間)
(9)培地を1穴当たり100μl加え、36℃のCO2インキュベータに入れた
(10)5日後に、CPEの有無を確認した
(11)Reed-Muench法でTCID50を求めた
(12)MRC-5細胞に対するCC50値とTCID50値から、選択指数を求めた
結果を表15に示す。ほぼすべてのポリエチレンイミンが高い選択指数を示し、SP-012が最も有効であった。PEIE-3も高い選択性を示した。この場合も、A区の方がB区よりも選択指数が高くなった。
Figure 0005465182
[ポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE-1,PEIE-2およびPEIE-3)の調製]
(a)PEIE-1
ポリエチレンイミン(日本触媒社製のエポミンSP-006)172.3gを1.2Lオートクレーブに仕込み、150℃へ昇温した。その後エチレンオキサイド167.4g(3.8mol)をフィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。次いで、80℃まで冷却し、49%KOH水溶液を2.5g仕込み、165℃へ昇温した。20ml/分の流量で窒素バブリングしながら、0.05MPaへ減圧して脱水した後、エチレンオキサイドを443.5g(10.1mol)フィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。次いで80℃まで冷却し、酢酸を加えてpH7へ調整した。純水をポリエチレンイミンポリエトキシレート全量に対して10%添加し、20ml/分の流量で窒素バブリングしながら、0.005MPaへ減圧し、5時間脱気を行った。軽質不純物を除去することで、目的のPEI/PEG=22/78(重量比)、GPC法による重量平均分子量5,500、無水フタル化法による水酸基価370±20mgKOH/gのポリエチレンイミンポリエトキシレート(PEIE-1)を得た。
(b)PEIE-2
ポリエチレンイミン(日本触媒社製のエポミンSP-018)172.3gを1.2Lオートクレーブに仕込み、150℃へ昇温した。その後エチレンオキサイド167.4g(3.8mol)をフィードしてポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。次いで80℃まで冷却し、49%KOH水溶液を2.5g仕込み、165℃へ昇温した。20ml/分の流量で窒素バブリングしながら、0.05MPaへ減圧して脱水した後、エチレンオキサイドを349.5g(7.9mol)フィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。次いで80℃まで冷却し、酢酸を加えてpH7へ調整した。純水をポリエチレンイミンポリエトキシレート全量に対して10%添加し、20ml/分の流量で窒素バブリングしながら、0.005MPaへ減圧し、5時間脱気を行った。軽質不純物を除去することで、目的のPEI/PEG=25/75(重量比)、GPC法による重量平均分子量7,500、無水フタル化法による水酸基価345±20mgKOH/gのポリエチレンイミンポリエトキシレート(PEIE-2)を得た。
(c)PEIE-3
ポリエチレンイミン(日本触媒社製のエポミンSP-006)180.0gを1.2Lオートクレーブに仕込み、150℃へ昇温した。その後エチレンオキサイド174.8g(3.97mol)をフィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。次いで80℃まで冷却し、49%KOH水溶液28.8g仕込み、165℃へ昇温した。20ml/分の流量で窒素バブリングしながら、0.05MPaへ減圧して脱水した後、エチレンオキサイドを469.4g(10.67mol)フィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。次いで80℃まで降温し、オートクレーブ内容液を抜出、抜出後の残液量を173.0gとした後、エチレンオキサイドを620.1g(13.2mol)フィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。この後、80℃まで冷却し、酢酸を加えてpH7へ調整した。純水をポリエチレンイミンポリエトキシレート全量に対して10%添加し、20ml/分の流量で窒素バブリングしながら、0.005MPaへ減圧し、5時間脱気を行った。軽質不純物を除去し、さらに純水を全量に対して20%添加し、固形分80%の水割り品として、目的のPEI/PEG=5/95(重量比)、GPC法による重量平均分子量10,000、無水フタル化法による水酸基価74.0±3.0mgKOH/gのポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE-3)を得た。
実施例7:HSV-2感染動物におけるポリエチレンイミン(SP-006及びSP-012)の外用による発症阻止効果
実施例6のin vitroでの抗HSV-2活性試験において高い選択指数を示したSP-006及びSP-012を対象として、これらのポリエチレンイミンの抗ウイルス作用についてマウスを用いた感染実験を再度行った。
5-6週齢の雌のBALB/cマウスの局所(性器)にHSV-2を、1匹当たり20μlずつ(1×105PFUのウイルスを含有)接種した。SP-006、SP-012またはリン酸緩衝生理食塩水を1回(20μl)当たり0.2mgまたは0.02mgの投与量(濃度:10mg/mlまたは1mg/ml)で、ウイルス感染1時間前、感染直後、6時間後、24時間後、48時間後の計5回、粘膜に塗布することにより局所投与した。この投与条件下ではマウスに対する毒性は認められなかった。結果を表16に示す。
対照群では、5匹中4匹が感染9日後までに死亡し(死亡率80%)、SP-006投与群では死亡率20-60%、SP-012投与群では0-80%となった。高用量(毎回0.2mg)のSP-012投与群では、5匹全例で性器ヘルペスの発症が全くみられなかった。
HSV-2感染3日後に、マウス局所をPBSで洗浄し、そのウイルス量をプラークアッセイ法によって測定した。その結果、SP-006及びSP-012の投与によって、用量依存的にウイルス量が抑制されていた。同じ用量で比較すると、SP-012の方がSP-006よりも高い効果を示した。
Figure 0005465182
実施例8:ポリエチレンイミン(SP-012)により薬剤耐性ウイルスが出現しないことの検証
単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)がポリエチレンイミン(SP-012)の投与により薬剤耐性を有し得るか否かを検証した。
HSV-2感染後のVero細胞を100μg/mlのSP-012存在下で3回継代培養し、さらに200μg/mlの濃度で7回継代培養して、生き残ったウイルスをプラーク法で10個分離した。この10クローンと元のウイルス株を用いて、SP-012に対する感受性試験を行った。感受性は、ウイルス増殖を50%抑制するSP-012の濃度(IC50)で表した。その結果を表17に示す。表17に示したように、10クローンとも、元のウイルス株(野生株)と同程度のIC50となり、SP-012に対する感受性が維持されている、すなわち、耐性が生じていないと判断できた。このことから、SP-012を生体に長期間投与しても、耐性ウイルスの出現による投与中断という問題は起こらない可能性が高いと推察される。
Figure 0005465182
実施例9:HSV-2感染動物に対するポリエチレンイミン(SP-012)とアシクロビルの効果の比較
単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)治療薬であるアシクロビルとポリエチレンイミン(SP-012)とを同一投与量で処置した時のマウスの性器におけるHSV-2増殖の時間的過程を追跡した。
5-6週齢の雌のBALB/cマウスの局所(性器)にHSV-2を20μlずつ(無処置対照のマウスについても追跡するために、ウイルス含有量を1匹当たり1x104PFUと少なくした)接種した。SP-012、アシクロビルをそれぞれ1回当たり0.2mg、またはリン酸緩衝生理食塩水を、感染1時間前、1時間後、8時間後、翌日からは1日2回(午前8時、午後6時)、感染7日後まで局所投与した。感染1〜12日後の間、毎日局所をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、その中のウイルス量を1匹ずつ測定した。また、15日間、発症の程度及び死亡例を記録した。
表18及び図3に示したように、対照群の11匹のマウスすべてが、HSV-2感染による局所の炎症を引き起こした。また、すべてのマウスからウイルスが検出され、7匹が死亡した(死亡率64%)。アシクロビル投与群では、10匹中1匹からウイルスが検出され、一過性の炎症を示し、死亡例はなかった。これに対して、SP-012投与群では、10匹すべてに発症もウイルスの存在も認められず、死亡例はなかった。以上のことから、SP-012は、同用量のアシクロビルと同程度かそれ以上の性器ヘルペス治療効果をもたらすことがわかった。
Figure 0005465182
実施例10:ポリエチレンイミン(SP-012)とリポソームの複合体の単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)に対する抗ウイルス活性評価
ポリエチレンイミン(SP-012)とリポソームの複合体を調製し、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)に対する抗ウイルス活性をin vitroにおいて評価した。
(1)ポリエチレンイミン-中性リポソーム複合体の調製
中性のリポソーム(卵黄レシチン(EPC):コレステロール(Cho)=5:5、モル比)をポリエチレンイミン(SP-012)水溶液と混合し(最終脂質濃度20mg/ml、ポリエチレンイミン濃度100mg/ml)、1N塩酸でpHを7.0-7.4に調整した。
(2)ポリエチレンイミン-PEGリポソーム複合体の調製
ポリエチレングリコール(PEG)でコートしたリポソーム(EPC:Cho:PEG=5:5:0.5、モル比)をポリエチレンイミン(SP-012)水溶液と混合し(最終脂質濃度20mg/ml、ポリエチレンイミン濃度100mg/mL)、1N塩酸でpH7.0-7.4に調整した。
(3)抗ウイルス活性評価
実施例6(特に[B]を参照)と同様の手順により、アシクロビル、ポリエチレンイミン(SP-012)、ポリエチレンイミン(SP-012)-中性リポソーム複合体、ポリエチレンイミン(SP-012)-PEGリポソーム複合体のそれぞれのサンプルを用い、細胞毒性(50%細胞増殖阻害濃度(CC50))、単純ヘルペスウイルス2型に対する抗ウイルス活性(50%ウイルス増殖阻害濃度(IC50))および選択指数(CC50/IC50)を求めた。アシクロビルあるいはポリエチレンイミンの濃度範囲は、細胞毒性試験時は0.02〜2000μg/ml、抗ウイルス活性試験時は0.01〜1000μg/mlとした。その結果を表19に示す。ポリエチレンイミンと中性リポソームあるいはPEGリポソームとの複合体は、ポリエチレンイミンを単独で用いた場合と比べてより高い選択指数を示し、非常に高い抗ウイルス活性を有することがわかった。

Figure 0005465182
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。

Claims (5)

  1. 重量平均分子量が300〜30,000の範囲である分岐鎖ポリエチレンイミンを含む、ヘルペスウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科またはコロナウイルス科に属するウイルスによるウイルス感染症を治療または予防するための外用医薬組成物。
  2. 分岐鎖ポリエチレンイミンを20mg/ml以下の量で含む請求項1に記載の医薬組成物。
  3. さらに脂質粒子を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、インフルエンザウイルス、またはヒトコロナウイルスによる感染症を治療または予防するための、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  5. ヘルペスウイルス感染症を治療または予防するための、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
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