図1は、本発明のプリンタ装置の一実施形態を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ装置100において、フレーム筐体1は、U字状に矩形の曲げを施した板金部品である。フレーム筐体1の2つの曲げ壁の中には、カートリッジ4の装填部、ヘッドユニット2、カッターユニット7、用紙搬送ローラ(不図示)、用紙搬送ガイド、インクリボンボビンなどが設置されている。フレーム筐体1の曲げ壁の外側には、用紙搬送ローラや用紙ボビンを回動させるための、動力を伝達するギヤ列とそれらを保持するギヤボックス18などが配置されている。
ステッピングモーター17は、プリンタ装置100に搭載されたもう1つのアクチュエータであり、記録用紙やインクリボンを搬送する駆動源として機能する。ステッピングモーター17からの動力は、ギヤボックス18内の伝達機構(不図示)を通じて、次図で説明するキャプスタンローラ31や排紙ローラ41を駆動する。また、この伝達機構は、ギヤ19、トルクリミッタ付きギヤ20を通じて、次図で説明するロール状の記録用紙27を巻いた用紙ボビン28を駆動する。一方で、この伝達機構は、ギヤ19を太陽ギヤとする遊星ギヤ21から、トルクリミッタ付きギヤ22を通じて、インクリボンを巻き取り駆動する。
次に、図2を用いて、本実施形態のプリンタ装置の各ユニット、部品と機能を簡単に説明する。
図2は、図1に記載の切断線L−Lに沿った断面図である。
ヘッドレバー3は、図2に示すように、ヘッドユニット2を保持し、腕部3aの根元付近にある軸穴を回動の中心とし、プラテンローラ38に対するヘッドユニット2の押圧、退避の移動位置を決定するためのレバーである。プラテンローラ38の近傍には、ロール状に巻かれた記録用紙27とインクリボンRとを、一部の露出面を除いて内包しているカートリッジ4が設置されている。なお、本実施形態では、記録用紙27のカートリッジ4から出ている部分を記録用紙Pとする。
インクリボンRは、記録用紙27と同様に供給側ボビン34にロール状に巻かれており、巻き取りボビン33により巻き取られる。インクリボンRは、イエロー、マゼンダ、シアンの各色およびオーバーコート層を判別するインクリボン検出センサー35の検出結果により、搬送量が制御される。供給側ボビン34の近傍には、モーター5が設置されている。
モーター5は、DCモーターであり、ウォームギヤ6を通じて、カッターユニット7へと動力を伝達し、記録用紙Pの切断動作の駆動源になっている。カッターユニット7は、移動刃62と固定刃61が交差しながら、記録用紙Pを切断するギロチン式のユニットである。
記録用紙Pは、用紙ガイド部材29、30の内部にそれぞれ設けられたキャプスタンローラ31、ピンチローラ32に誘導される。ピンチローラ32は、キャプスタンローラ31に対して、常に圧接状態であり、そのグリップ位置に記録用紙Pの先端が誘い込まれることで、記録用紙Pは挟持されるようになっている。キャプスタンローラ31の表面には、細かい突起状の爪が形成されている。この細かい突起状の爪が、記録用紙Pの裏面へかみこむことで記録用紙Pが強くグリップされる。そのため、キャプスタンローラ31の回転を制御することで、ノンフィードバックで精度の高い記録用紙の搬送が可能となる。キャプスタンローラ31とプラテンローラ38の間には、記録用紙Pの先端を検知し、用紙位置を制御するための用紙検出センサー36が設置されている。記録用紙Pは、用紙ガイド部材30と用紙ガイド部材37の間を通った後、用紙検出センサー36によって先端が検出される。その後は、用紙検出センサー36の検出結果に基づいて、印刷物の長さに応じた規定量の搬送が行われる。用紙ガイド部材30と用紙ガイド部材37の間を通過した記録用紙Pは、プラテンローラ38に支持される。プラテンローラ38とヘッドユニット2との圧接により、確実にインクリボンRから記録用紙Pにインクが転写される。プラテンローラ38の近傍には、用紙ガイド部材40が設置され、用紙ガイド部材40に対向して用紙ガイド部材39が設置されている。用紙ガイド部材39と用紙ガイド部材40は、記録用紙Pをカッターユニット7に案内する部材である。
用紙検出センサー36を通過した記録用紙Pは、プラテンローラ38とヘッドユニット2の間を通過する。そして、記録用紙Pは、供給側ボビン34と用紙ガイド部材40の間および、用紙ガイド部材39と用紙ガイド部材40の間を通って、カッターユニット7の地板60の開口部に案内される。
カッターユニット7の後方には、用紙ガイド部材25、26が設置され、その間に、排紙ローラ41と排紙ピンチローラ42が配置されている。排紙ローラ41と排紙ピンチローラ42は、図1に示す排紙ピンチローラユニット23によって互いに圧接および離間する。排紙ピンチローラユニット23では、レバー24が、ヘッドレバー3に固定されており、一体的に動作する。そのため、レバー24がヘッドユニット2の動作に連動することによって、排紙ローラ41に排紙ピンチローラ42が圧接、および離間する。
次に、図3、図4を用いて、モーター5の回転力の伝達先の一つであるヘッド駆動機構について説明する。
図3は、本実施形態のプリンタ装置の主要な駆動ギヤ列を示す上面図である。
モーター5が回転すると、ウォームギヤ6と伝達シャフト8が一体的に回転する。伝達シャフト8には、ギヤ9、10、11が嵌合して、これらのギヤは同軸で回転する。モーター5の回転は、ギヤ9から、ギヤ10、11と伝達、減速していき、ヘッドカム部材12に伝達する。
図4は、本実施形態のプリンタ装置のヘッド駆動機構の動作状態を示す図である。
図4に示すように、プリンタ装置100のヘッド駆動機構101は、ヘッドカム部材12と、ヘッド駆動部材13と、を有する。ヘッドカム部材12は、ヘッド駆動部材13を回転駆動させる部材であり、ギヤ部12aと、カム部12bと、ギヤ部12cとを有する。各部品は、回転の中心が同じになるように配置され、ギヤ部12a、カム部12b、ギヤ部12cの順に重ねて配置されている。カム部12bの外周面には、カム面121とくぼみ面122とが交互に形成されている。カム面121の回転の中心からの距離はギヤ部12cよりも長く、カム面121の回転の中心からの距離は、ギヤ部12cと同じかまたはギヤ部12cよりも短い。
ヘッド駆動部材13には、円筒部に付勢手段14のコイル部が嵌めてあり、この付勢手段14によってヘッド駆動部材13をヘッドカム部材12の方向へ付勢している。なお、本実施形態では、付勢手段14はトーションスプリングである。また、ヘッド駆動部材13には、図3に示すように、ヘッド駆動シャフト15が圧入されている。ヘッド駆動部材13とヘッド駆動シャフト15とは、一体的に回転する。さらに、ヘッド駆動シャフト15に圧入されたヘッド押さえレバー16が、ヘッド駆動部材13、ヘッド駆動シャフト15と一体的に同軸回動する。
次に、図5を用いて、ヘッドユニット2の各構成部品を説明する。
図5は、ヘッドユニット2の構成を示す断面図である。なお、図5は、ヘッドユニット2と、ヘッドユニット2に関連する部品を図2から抜き出して示し、ヘッドユニット2がプラテンローラ38を押圧している状態を示している。
ヘッドユニット2の下端部にはヘッド基板43が設けられている。ヘッド基板43の表面には、プラテンローラ38に沿って発熱抵抗体が一列に配列されている。また、ヘッド基板43上に実装されている素子は、基板カバー45により、インクリボンRにダメージを与えないよう保護されている。ヘッド基板43の裏面には、金属製の放熱部材44が接着している。
放熱部材44は、ヘッドレバー3およびヘッドフレーム46にビス締め固定されている。ヘッドフレーム46には、ヘッドフレーム48が係合し、ヘッドフレーム46と48の間には、コイルスプリング47が左右に2つ設置されている。ヘッドフレーム48には、剥離板49がビス締め固定されている。剥離板49は、インクリボンRを用紙から引き剥がすためのインクリボンRの搬送方向を定めるガイドとなる板であり、インクリボンRに与えるダメージを低減するため、ヘミング曲げをした板金部品である。
図3に示すように、ヘッド駆動部材13の回転により、ヘッド駆動シャフト15、ヘッド押さえレバー16がヘッド駆動シャフト15を回転軸として一体的に回動する。ヘッド押さえレバー16は、図3に示すように、同形状のものが2個設けられており、各ヘッド押さえレバー16は、印刷時にはヘッドユニット2の両側を押さえむようになっている。このとき、コイルスプリング47を圧縮させることによって、ヘッドユニット2をプラテンローラ38に所望の圧力で押圧させる。
次に、図5、6を用いて、ヘッドユニット2の動作を説明する。
図6は、プリンタ装置のヘッドユニットの構成を示す断面図である。図6は、図5を反対側から見た図である。なお、図6では、ヘッドユニット2とプラテンローラ38とが互いに離れた状態を示す。
図6に示す状態から、断面が扇形状をしたヘッド押さえレバー16が、反時計回りに回転すると、ヘッド押さえレバー16の円弧部分のカム形状16aがヘッドフレーム47の上面を押し込む状態になる(図5参照)。すると、コイルスプリング47が圧縮され、その復元力が、ヘッドフレーム48に伝わる。これにより、ヘッド基板43がプラテンローラ38に押し付けられた結果、発熱抵抗体、インクリボンR、記録用紙Pが隙間なく圧接されて、良好な熱転写が行われる。
一方、プリンタ装置100では、カートリッジ着脱時など、ヘッドユニット2をプラテンローラ38から退避する必要がある場合がある。そのときには、ヘッド駆動部材13が押し込み方向と逆に回転すれば、ヘッド押さえレバー16の円筒突起16bが、ヘッドレバー3の腕部3cに係合して、ヘッドレバー3を回動させ、ヘッドユニット2全体を持ち上げる。これにより、図6に示すように、ヘッドユニット2とプラテンローラ38とが互いに離れた状態になる。
次に、図7〜図11を用いて、カッターユニット7の構成と動作を説明する。
図7は、カッターユニット7の分解斜視図である。
カッターユニット地板60は、板金の折り曲げ部品である。カッターユニット地板60には、固定刃61がビス74a、74bによって固定されている。また、カッターユニット地板60の両側面に設けられたガイド形状60bで、移動刃62が上下にスライドするためのガイド壁を形成している。また、カッターユニット地板60の底面の曲げ部60cが、プリンタ装置100のフレーム筐体1に位置決め、ビス固定される。
移動刃62は、移動刃ホルダー63にビス75a、75bによって固定されており、カッター押さえバネ64によって固定刃61側に付勢されながら、カッターユニット地板60のガイド形状60bに沿って上下にスライド動作可能である。
図8はカッターユニット7を駆動させるカッター駆動機構102の分解斜視図である。
カッターユニット地板60の用紙搬送路の上流側には、モーター取り付け地板65がビス73a、73bによって、カッターユニット地板60に固定されている。モーター取り付け地板65には、モーター5が取り付けられるほか、ギヤ軸66が加締め固定されている。
ギヤ軸66には、カッターカムコア67の軸穴が嵌合しており、カッターカムコア67はギヤ軸66を中心に回動可能である。さらに、カッターカムコア67の円筒部67bが、カッターカムギヤ68の中心に開いた軸穴に嵌合しているので、カッターカムギヤ68もギヤ軸66を中心として、回動可能である。
カッターカムコア67には、カムピン69が埋め込まれている。カムピン69は、カッターユニット地板60の貫通丸穴60dを通って、移動刃ホルダー63のスリット形状63aと係合する(図7参照)。なお、カムピン69は、カッターカムコア67と一体形成されたものでもよい。
図9は、プリンタ装置100において、カッター駆動機構102側からカッターユニット7を見たときの正面図である。
図9において、カッターカムギヤ68が時計回りに回れば、カッターカムギヤ68の係合部68bに内接するカムコア67の被係合部67aに回転力が伝わる。これにより、カッターカムギヤ68とカッターカムコア67は一体的に回転する。逆に、カッターカムギヤ68が反時計周りに回れば、係合部68bと被係合部67aとは係合しない。これにより、カッターカムコア67に回転力が伝わらないので、カッターカムギヤ68は単独で回転する。
カッターカムギヤ68とカッターカムコア67とが一体的に回転すると、カムピン69は、ギヤ軸66を回転の中心として円運動する。カムピン69の円運動は、移動刃62を抱いた移動刃ホルダー63の、カッターユニット地板60に沿った、直線運動に変換される。これは、カムピン69が、上述したように、移動刃ホルダー63の横丸長のスリット形状63aと嵌合し、移動刃ホルダー63の外形側面がカッターユニット地板60の側面の曲げ壁によって規制されているからである。
図10は、プリンタ装置100の初期状態を示す断面図ある。また、図11は、プリンタ装置100が切断動作を行っている状態を示す断面図である。
図10に示すように、プリンタ100が初期状態のとき、ヘッドユニット2はプラテンローラ38から離れた初期位置に位置し、移動刃62は、固定刃61から最も離れた上端に位置している。プリンタ100が初期状態のとき、カッターカムギヤ68が時計回りに回転すると、移動刃62は、図11に示すように、固定刃61と交差する位置まで下降する。このとき、カッター地板60の開口部60aを通過した記録用紙Pが存在すれば、記録用紙Pは、移動刃62と固定刃61とによって切断される。
次に、図12、13を用いて、カッターカムギヤ68の位相検知方法について説明する。
本実施形態では、カッターユニット7の移動刃62およびヘッドユニット2が、押圧位置や退避位置に移動したかどうかなどの位置の判別を、カッターカムギヤ68の回転量を検出することによって行う。なお、押圧位置とは、ヘッドユニット2がプラテンローラ38を押圧する位置をいい、退避位置とは、ヘッドユニット2が初期位置よりもプラテンローラ38に近いがプラテンローラ38に非接触である位置をいう。
図12は、カッターカムギヤ68の斜視図である。図12では、図8に示すカッターカムギヤ68を裏側から見たときの斜視図である。
図12に示すように、カッターカムギヤ68には、外周にギヤ68aが形成され、周方向にフラグ形状68c、68d、68e、68f、68gが互いに離れて設けられている。
図13は、プリンタ100におけるカッターカムギヤ68の位相の検知部分を示す断面図である。
本実施形態では、図13に示すように、カッターカムギヤ68の位相を検知する手段として位相検知センサー70が用いられる。位相検知センサー70は、フォトインタラプタであり、発光部と受光部とで各スリットを挟んだ状態で基板71に実装されている。基板71は、モーター取り付け地板65にビス72で固定されている。
図13では、位相検知センサー70の中心を一点鎖線Mで示しているが、この中心を、各フラグ形状の隙間であるスリットA〜Eが通過することを判別することによって、カッターカムギヤ68の回転位相が検知される。ヘッド駆動部材13とカッターカムギヤ68はモーター5に連動して回転するため、カッターカムギヤ68の回転位相がわかれば、ヘッド駆動部材13の回転位相も知ることができる。したがって、ヘッド駆動部材13を停止したい位相に対応するカッターカムギヤ68の回転位相を検知できるよう、スリットA〜Eを設ければ、ヘッドユニット2を所望の位置に移動制御できる。
次に、給紙から印刷、用紙の切断、排紙までの一連のプリント動作の流れを説明する。
図14は、プリンタ装置100の印刷動作から切断動作までの動作手順を示すフローチャートである。また、図15は、プリンタ装置100の切断動作から排紙動作するまでの手順を示すフローチャートである。
まず、プリンタ装置100が初期状態のときに印刷動作開始の命令が出ると、モーター5がウォームギヤ6側から見て反時計回り方向(第1の方向)(以下、CCW方向と称する。)が回転する(STEP101)。モーター5がCCW方向に回転すると、モーター5の回転力が、ギヤ9、ギヤ10、ギヤ11に伝達され、ヘッドカム部材12は、モーター5側から見て、CCW方向に回転する。
プリンタ装置100が初期状態のとき、図4(a)に示すように、カム部12のカム面12bによって、ヘッド駆動部材13とギヤ部12cとの係合が阻止されている。
ヘッドカム部材12がCCW方向に回転すると、ヘッド駆動部材13のピン部13aが、カム部12bに沿って、付勢手段14の力で時計回り方向(以下、CW方向と称する。)に回転する。
図16は、プリンタ装置100の各動作におけるカッターカムギヤ68の回転状態を示す断面図である。図16(a)は、プリンタ装置100が初期状態のときのカッターカムギヤ68の状態を示す。また、図16(b)は、プリンタ装置100が退避状態のときのカッターカムギヤ68の状態を示す。
プリンタ装置100が初期状態から退避状態に変化すると、位相検知センサー70によって検知されるスリットが、フラグ形状68cと68dの間のスリットAからフラグ形状68eと68fの間のスリットCに変化する(図16(a)、(b)参照)。位相検知センサー70がスリットCを検出すると、モーター5は停止するように制御される。
ここで、プリンタ装置100が退避状態であるときのヘッド駆動機構102の動作状態について説明する。図4(b)は、プリンタ装置100が退避状態であるときのヘッド駆動機構102の動作状態を示す断面図である。
プリンタ装置100が初期状態から退避状態に変化すると、ヘッド駆動カム部材12とヘッド駆動部材13は、図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態に変化する。図4(b)では、ヘッドカム部材12のギヤ部12cとヘッド駆動部材13のギヤ部13bとの係合が、カム12bのくぼみ面122によって許容された状態が示されている。
図17は、プリンタ装置100の退避状態を示す断面図である。プリンタ装置100が退避状態のとき、図10に示す初期状態と比べると、ヘッドユニット2とプラテンローラ38は、互いに近付いているが非接触である。
図18は、カッター駆動機構102の動作状態を示す断面図である。図18と、後述する図20、22では、カッターカムギヤ68の係合部68bは格子状のハッチングで表示し、カムコア部材67の被係合部67aは斜線のハッチングで表示している。
プリンタ装置100が初期状態から退避状態に変化すると、カッター駆動機構102は図18(a)に示す状態から図18(b)に示す状態に変化する。具体的には、ウォームギヤ6と連結しているカッターカムギヤ68が、CCW方向に回転する。このとき、カッターカムギヤ68の回転力は、カッターカムギヤ68に内接したカッターカムコア67には伝わらないので、移動刃62は下降しない。これは、カッターカムギヤ68がCCW方向に回転する場合には、カッターカムギヤ68の係合部68bとカッターカムコア67の被係合部67aとが噛み合わず、カッターカムギヤ68の回転力がカムコア67に伝達しないからである。したがって、移動刃62は下降しない。
このように、カッター駆動機構102に移動刃62への力の不伝達機構を構成することにより、カッターカムギヤ68がモーター5に連動して回転しても、カッターユニット7を動作させないことが可能となる。
位相検知センサー70のスリットCの検知によりプリンタ装置100が退避状態であることが検知されると(STEP102)、続いて、インクリボンRを書き出し位置まで巻き取る(STEP103)。
続いて、ロール状の記録用紙27が巻かれた用紙ボビン28が、不図示の回転駆動手段によって回動し、カートリッジ4から記録用紙Pが給紙される(STEP104)。このとき、記録用紙Pの先端部は、図2に示すように、カートリッジ4の用紙部開口から出た後、キャプスタンローラ31とピンチローラ32の間へと進み、強挟される。そして、記録用紙Pは、キャプスタンローラ31とピンチローラ32により搬送され、印刷開始位置まで送られる。
記録用紙Pが、印刷開始位置まで搬送されると、モーター5がさらにCCW方向に回転する(STEP105)。すると、ヘッドカム部材12がCW方向に回転し、ヘッド駆動部材13のギヤ部13bとヘッド駆動カム部材12のギヤ部12cが噛み合いはじめる。その結果、ヘッド駆動部材13はCW方向に回転する(図4(c)参照)。ヘッド駆動部材13の回転力がヘッド駆動シャフト15を通じてヘッド押さえレバー16に伝達することで、ヘッド押さえレバー16が回転する。その結果、ヘッドユニット2はプラテンローラ38に近付く方向に下降する。さらにヘッド押さえレバー16の回転が進むと、ヘッド押さえレバー16は、ヘッドユニット2をインクリボンR、記録用紙Pを介して、プラテンローラ38を押圧する。これにより、記録用紙Pはプラテンローラ38とヘッドユニット2に挟み込まれた状態となる。その後、図16(c)に示すように、位相検知センサー70によって、フラグ形状68fと68gの間のスリットDが検知されると、モーター5は停止するように制御される。
図19は、プリンタ装置100の押圧状態を示す断面図である。
プリンタ装置100が押圧状態のとき、カッターカムギヤ68は図16(c)に示す位置にあり、ヘッドユニット2は、図19に示すように、押圧位置にある。ここで、プリンタ装置100が押圧状態であるときのカッター駆動機構の動作状態について説明する。
図20は、プリンタ装置100が押圧状態であるときのカッター駆動機構の動作状態を示す断面図である。
プリンタ装置100が押圧状態のとき、カッターカムギヤ68は、図18(b)に示す動作状態から図20に示す動作状態に変わる。図20に示すように、カッターカムギヤ68のみが回転しており、カッターカムコア67および、移動刃62は移動していない。
位相検知センサー70のスリットDの検知によりプリンタ装置100が押圧状態であることが検知されると(STEP106)、印刷処理が行われる(STEP107)。
図21は、プリンタ装置100が印刷処理を行っている状態を示す断面図である。
印刷処理では、インクリボンRが巻き取りボビン33に巻き取られながら、記録用紙Pがキャプスタンローラ31とピンチローラ32によって、図面右側の矢印200の方向、つまり、カートリッジ4に巻き取られる方向に送られる。このとき、ヘッド基板43上の発熱抵抗体により、インクリボンRのインクが昇華し、記録用紙Pに印刷パターンが転写される。
プリンタ装置100は、一般的な昇華型カラープリンタであり、イエロー、マゼンタ、シアンの三色のデータに対応する各色のデータのパターンを重ねて、最後にオーバーコート層を溶融塗布することによって、画像を完成する。したがって、1色目の印刷が終了すると、2色目のインクのパターンを印刷するために、記録用紙Pが再び印刷開始位置に搬送される。具体的には、記録用紙Pは、印刷時と逆方向(矢印200と反対方向)に搬送される。このとき、ヘッドユニット2が押し付けられたままであると、記録用紙Pの搬送と共にインクリボンRが引き連れられ、ヘッドユニット2の押し付け力が、用紙搬送に余計な負荷を与えてしまう。そのため、ヘッドユニット2を記録用紙Pから退避させる必要がある。
そこで、モーター5がCW方向に回転すると、ヘッドカム部材12がCW方向に回転する。ヘッドカム部材12の回転力がギヤ部13bに伝達されるので、ヘッド駆動部材13はCCW方向に回転する(図4(b)、(c)参照)。すると、ヘッド押しレバー16の円筒突起16bが、ヘッドレバー3の腕部3cに係合することによって、ヘッドユニット2を持ち上げる。これにより、ヘッドユニット2は、記録用紙Pから離れて退避位置まで上昇する(図17参照)。位相検知センサー70のスリットCの検知によりプリンタ装置100が退避状態であることが検知されると(STEP109)、記録用紙Pは印刷時と逆方向に搬送され、印刷開始位置へと移動する(STEP110)。こうして、記録用紙Pは3色のパターン印刷とオーバーコート処理を行うため、合計4回の往復搬送動作を繰り返す。オーバーコート処理が終了すると(STEP111:YES)、プリンタ装置100は、記録用紙Pの切断動作、排紙動作へと移行する。
切断動作、および排紙動作は、図15に示すフローチャートの手順で処理される。
まず、モーター5がCW方向(第2の方向)に回転する(STEP201)。すると、ヘッド駆動機構102によりヘッドユニット2は、初期位置まで上昇する(図10参照)。また、カッターカムギヤ68の位相は、位相検知センサー70にスリットAが検知される位置まで戻る(図16(a)参照)。位相検知センサー70のスリットAの検知によりプリンタ装置100が初期状態に戻ったことが検知されると(STEP202)、モーター5は停止し、記録用紙Pは転写された画像の縁が固定刃61と移動刃62との間に位置する切断位置まで搬送される。
次に、モーター5が、再びCW方向に回転する(STEP204)。すると、カッターカムギヤ68はCW方向に回転し始める。このときカッターカムギヤ68の係合部68bが、カッターカムコア67の被係合部67aに噛み合うので、カッターカムコア67はカッターカムギヤ68と同じ方向に回転し始める。
図22は、カッター駆動機構102の動作状態を示す断面図である。図22(a)は、カムコア67が初期位置(図18(a)参照)から90°CW方向に回転した状態を示す。図22(b)は、カムコア67が180°CW方向に回転した状態を示すこの状態のときに移動刃62が最下端に到達している。図22(c)は、カムコア67が270°CW方向に回転した状態、すなわち切断動作を終えた移動刃62が初期位置に戻る途中の状態を示している。
カッターカムコア67が、カッターカムギヤ68に連動して回転すると、カッターカムピン69がカムコア67と一体的に回動する。カッターカムピン69は、移動刃62のホルダー63に設けられた横穴形状に嵌合しているので、移動刃ホルダー63が駆動する。このとき、カムコア67の回転運動は、上先述したように、移動刃ホルダー63および移動刃62の往復直線運動に変換される。これにより、カッターカムギヤ68がちょうど1回転すると、移動刃62は、固定刃61と交差して記録用紙Pを切断し、元の初期位置に復帰する。このように、モーター5がCW方向に回転すると、カッターユニット7の移動刃62が、固定刃61との間を上下に往復運動をすることにより、記録用紙Pは切断される。
一方、モーター5がCW方向に回転すると、図3に示すように、モーター5の回転力は、伝達シャフト8を通じてギヤ9〜11に伝達される。このとき、ヘッド駆動部材13のピン形状13aがヘッドカム部材12のカム部12bに係合しているので(図4(a)参照)、ヘッド駆動部材13はカム部12bのカム面121に沿って回動可能な状態にある。
図4(d)は、移動刃62が最下端に移動したときの、ヘッド駆動機構部材101の状態を示す断面図である。
移動刃62が初期位置から最下端まで移動する間、ヘッド駆動部材13は、カム部12bのカム121に沿って回転するので、ヘッド駆動部材13のギヤ部13bとヘッドカム部材12のギヤ部12cとは係合しない。そのため、ヘッドユニット2の位置は変わらない。
本実施形態では、カッターカムギヤ68が1回転すると、ヘッドカム部材12がちょうど半回転するような減速比設定をしている。つまり、カッターカムギヤ68を1回転させて切断動作を終えると、ちょうどヘッドカム部材12は半回転することになる。そこで、移動刃62の駆動を行う前後で、カム部12bとピン形状13aとが係合するように、カム部12bの外周面には、カム面121とくぼみ面122の各々が、点対称に設けられている。
移動刃62が最下端に位置する状態でモーター5がCW方向に回転し続けると、カム部12bのくぼみ面122をカムピン13aが通過するようにヘッドカム部材12が駆動する。したがって、ヘッド駆動部材13は、一度CW方向に回転し、ヘッドユニット2はプラテンローラ38に近付く方向に一度動く。しかし、さらにモーター5がCW方向に回転し続けると、ヘッド駆動部材13のギヤ部13bとヘッドカム部材12のギヤ部12cとの係合はカム12によって阻止され、ヘッド駆動部材13はカム部12のカム面121に沿って、CCW方向へと回転する。そして、カッターカムギヤ68が1回転すると、ヘッドユニット2は、初期位置に戻る。
位相検知センサー70のスリットAの検知によりカッターカムギヤ68が1回転したこと(プリンタ装置100の切断動作が終了したこと)が検知されると(STEP205)、排紙動作が実行される(STEP206)。この排紙動作では、カッターユニット7で切断された印刷済みの記録用紙Pの後端が、排紙ローラ41、排紙ピンチローラ42によって、用紙ガイド部材25と26の隙間から装置外に排出される。
以上、説明したプリンタ装置100の各動作のタイミングチャートを図23に示す。図23(a)は、プリンタ装置100が初期状態のときにモーター5がCCW方向に回転したときのタイミングチャートを示す。一方、図23(b)は、プリンタ装置100が初期状態のときにモーター5がCW方向に駆動した場合のタイミングチャートを示す。
図23(a)、(b)において、上段の線図は、ヘッドユニット2の位置、中段の線図はカッターユニット7の移動刃62の位置を示す。下段の線図は、フォトインタラプタである位相検知センサー70のコレクタ−エミッタ間の電圧(出力電圧)を示す。出力電圧VがVpのとき、位置検出センサー70がスリットA〜Eを検出していることになる。
図23(b)を参照すると、移動刃62の駆動時には、ヘッドユニット2はプラテンローラ38を押圧していないので、モーター5には移動刃71を昇降させるのに必要な負荷以外に余計な負荷がほとんどかからない。また、非常に大きい力が必要とされる切断動作時では、モーター5の回転力がヘッド駆動部材13に伝達されない。そのため、もしも動作中に電力供給が停止され、再起動後にイニシャライズ動作を行う場合、装置がどんな動作状態であっても、モーター5がCW方向に回転し、位相検知センサー70がスリットAを検知することによって、イニシャライズ動作が可能となる。
また、カッターユニット7による記録用紙Pの切断時には、ヘッド駆動機構102の負荷変動はなく、安定した動力を切断動作に使用できる。また、記録用紙Pを切断するまでは、ヘッドユニット2が動かないことから、記録用紙Pへの圧力変化がない。そのため、記録用紙Pが動かないので、切断性能に影響を与えるようなことがない。
本実施形態では、ヘッドカム部材12の回転数を、カッターカムギヤ68の回転数の半分になるような減速比設定にし、ヘッドカム部材12のカム部12bに点対称に配置された2つのカム面121と2つのくぼみ面122を設けた。なお、カッターカムギヤ68の回転数をヘッドカム部材12のn(nは整数)倍に設定し、カム面121およびくぼみ面の個数をn個にすることによって、同様の効果が得られる。
また、本実施形態では、ヘッドユニット2がモーター5に接続され昇降動作を行う構成としたが、ヘッドユニット2を固定し、プラテンローラ38がモーター5に接続され昇降動作を行う構成としても、同様の効果が得られる。
また、本実施形態では、ヘッドユニット2およびカッターユニット7の駆動源として、DCモーターを使用したが、ステッピングモーターを使用してもよい。ステッピングモーターを使用する場合、カッターカムギヤ68の初期位置さえ判別できれば、ヘッドユニット2およびカッターユニット7を駆動させるためのモーターの回転量はステップ数で制御できる。