図1は、本発明の実施例1であるビデオカメラ(撮像装置、光学機器)のレンズ鏡筒部の構成を分解して示し、図2は該レンズ鏡筒部の断面を示している。
レンズ鏡筒部内には、物体側(図1,2の左側)から順に、凸,凹,凸,凸の4つのレンズユニットL1〜L4が配置され、これらのレンズユニットにより変倍光学系(ズームレンズ)としての撮影光学系が構成される。
L1は第1レンズユニット、L2は光軸方向に移動することにより変倍を行う第2レンズユニット、L3は防振光学素子としての補正レンズユニット、L4は光軸方向に移動することにより焦点調節を行う第4レンズユニットである。
1は第1レンズユニットL1を保持する前玉鏡筒である。5は固定鏡筒であり、物体側の一端が前玉鏡筒1に固定され、像面側の他端が後部鏡筒6に固定される。これにより、第1レンズユニットL1は所定位置に固定される。
2は第2レンズユニットL2を保持するバリエータ移動枠であり、4は第4レンズユニットL4を保持するフォーカス移動枠である。
3は補正レンズユニットL3を光軸に直交する平面であるシフト面内でシフトさせる光学防振装置としてのシフトユニットである。シフトユニット3は、後部鏡筒6に対して位置決めピンで位置決めされた上で、ビス2本で固定される。
701はCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)であり、撮影光学系によって形成された光学像(被写体像)を光電変換する。702は撮像素子701を後部鏡筒6に取り付けるための中間部材である。中間部材702には、撮像素子701が接着剤等により固定されており、この中間部材702はビス等によって後部鏡筒6に固定される。
703は撮像素子701に対して物体側に配置された光学フィルタであり、ローパスフィルタ、赤外線カットフィルタ、紫外線カットフィルタ等としての機能を有する。
8,9はそれぞれ固定鏡筒5および後部鏡筒6によって両端が支持された第1ガイドバーおよび第2ガイドバーである。10は第3ガイドバーであり、光量調節ユニット11および後部鏡筒6によって両端が支持されている。
バリエータ移動枠2は、第1および第2ガイドバー8,9によって光軸方向に移動可能に支持される。また、フォーカス移動枠4は、第1および第3ガイドバー8,10によって光軸方向に移動可能に支持される。
11は像面に入射する光量を調節する絞りユニットであり、2枚の絞り羽根を光軸と直交する平面内で移動させて、撮影光束が通過する開口部の径を変化させることにより、光量を調節する。
401,402はそれぞれ、第4レンズユニットL4を光軸方向に駆動するフォーカスモータ(電磁駆動ユニットとしてのボイスコイルモータ)を構成するコイルおよびドライブマグネットである。403,404はそれぞれ、コイル401およびドライブマグネット402からの磁束漏れを減少させるための第1および第2ヨークである。コイル401に電流を流すと、ドライブマグネット402とコイル401との間に磁力線相互の反発によるローレンツ力が発生し、この力によってフォーカス移動枠4がコイル401とともに光軸方向に移動する。
フォーカス移動枠4には、第3ガイドバー10が貫通するように挿入されるスリーブ部4aが設けられている。また、スリーブ部4aの側面には、光軸方向に所定ピッチで凹凸が並ぶように形成された光学スケール405が、押さえ板406によってガタなく取付けられている。後部鏡筒6における光学スケール405に対向する位置には、光学センサ407が保持されている。光学センサ407は、発光部と、光学スケール405での反射光を検出する受光部とを有する。フォーカス移動枠4を所定の初期位置に移動させた後、受光部から光学スケール405での反射光の検出ごとに出力されるパルス信号をカウントすることで、フォーカス移動枠4の位置を検出することができる。
フォーカス移動枠4の初期位置は、例えば、フォーカス移動枠4が後部鏡筒6における像面側(撮像素子側)の端面に突き当たる位置に設定することができる。
201は第2レンズユニットL2を光軸方向に駆動するズームモータ(ステッピングモータ)である。ズームモータ201の出力軸には、リードスクリュー202が形成されている。ズームモータ201は、支持部材207を介して固定鏡筒5にビスによって固定される。
リードスクリュー202には、バリエータ移動枠2に取り付けられたラック203が噛み合っている。このため、ズームモータ201への通電によってリードスクリュー202が回転すると、リードスクリュー202およびラック203の係合作用によってバリエータ移動枠2(第2レンズユニットL2)が光軸方向に移動する。
なお、ねじりコイルバネ204は、ラック203、バリエータ移動枠2、第1および第2ガイドバー8,9およびリードスクリュー202の間のガタを減少させるために設けられている。
205はバリエータ移動枠2の基準位置を検出するためのズームリセットスイッチであり、発光部および受光部を有するフォトインタラプタにより構成されている。バリエータ移動枠2に形成された遮光部206は、バリエータ移動枠2の移動に応じて発光部と受光部との間に進退可能となっている。発光部からの光が受光部に到達する状態と発光部から受光部に向かう光が遮光部206によって遮られる状態とでズームリセットスイッチ205の出力信号が変化するので、この信号変化に基づいて基準位置を検出することができる。ズームリセットスイッチ205は、基板を介してビスにより固定鏡筒5に固定されている。
第2レンズユニットL2が基準位置にあることを検出した後、ステッピングモータとしてのズームモータ201に入力するパルス信号をカウントすることにより、第2レンズユニットL2の光軸方向の位置を検出することができる。
12はズームモータ201、ズームリセットスイッチ205、コイル401、光学センサ407および絞りユニット11と電気的に接続されるフレキシブル基板である。
次に、図3、図4および図5を用いてシフトユニット3の構成について説明する。図3はシフトユニット3の断面を示している。図4および図5はそれぞれ、シフトユニット3を分解して物体側および像面側から見て示している。
シフトユニット3は、第1の方向であるピッチ方向(縦方向)の像振れを補正(低減)するために、補正レンズユニットL3をシフト面内においてピッチ方向に平行移動させることが可能である。また、シフトユニット3は、第2の方向であるヨー方向(横方向)の像振れを補正するために、補正レンズユニットL3をシフト面内においてヨー方向に回転させることが可能である。シフト面内での平行移動を以下の説明では平行シフトといい、シフト面内での回転を以下の説明では回転シフトという。
また、以下の説明において、各構成要素の符号の末尾に付した「p」は、その構成要素がピッチ方向の像振れ補正に関わるものであることを示し、「y」は、その構成要素がヨー方向の像振れ補正に関わるものであることを示す。
301はシフトユニット3のベース部材の一部をなすシフトベースである。302は補正レンズユニットL3を保持し、シフトベース301に対してシフト面内でシフト可能な可動部材としてのシフト鏡筒である。303はアッパーベースであり、シフト鏡筒302を挟んでシフトベース301とは反対側に配置されている。アッパーベース303は、その一部がシフトベース301に結合され、シフトベース301と一体化されている。すなわち、シフトベース301とアッパーベース303とによってシフトユニット3のベース部材が構成されている。
304pは磁石であり、図3の断面図にて示すように、光軸方向にてN極とS極とが逆に形成された2つの着磁領域がピッチ方向に並ぶように配置されている。304yは磁石であり、光軸方向にてN極とS極とが逆に形成された2つの着磁領域がヨー方向に並ぶように配置されている。
305は磁石304p,304yが磁力により吸着する固定用ヨークである。固定用ヨーク305は、シフト鏡筒302に形成されたヨーク受け部302dに像面側(図3の右側)から挿入され、ヨーク受け部302dに設けられた物体側(図3の左側)の端面に当接する。磁石304yは、物体側からシフト鏡筒302に形成された磁石受け部302eに挿入され、磁石受け部302eに設けられた像面側の端面に当接する。この状態で磁石304yと固定用ヨーク305との間には、光軸方向に隙間が形成される。磁石304yと固定用ヨーク305は、これらの間に作用する磁気吸引力によってシフト鏡筒302に固定される。さらに、磁石304pを固定用ヨーク305の像面側の面に当接させて吸着させる。これにより、磁石304pもシフト鏡筒302に対して固定される。なお、磁石304y,304pをさらに接着剤によってシフト鏡筒302に強固に固定してもよい。
このように、磁石304p,304yは固定用ヨーク305を間に挟んで光軸方向に並ぶように配置される。光軸方向から見たとき、磁石304p,304yの着磁境界(上記2つの着磁領域の境界)は90度をなすように交差する。
306p,306yは駆動コイルであり、それぞれシフトベース301における磁石304pに対向する箇所と、アッパーベース303における磁石304yに対向する箇所に固定されている。
307p,307yは駆動コイル306p,306yの背面に配置された上ヨークであり、それぞれシフトベース301およびアッパーベース303に固定されている。
磁石304p、上ヨーク307pおよび固定用ヨーク305によってピッチ磁気回路が形成され、磁石304y、上ヨーク307yおよび固定用ヨーク305によってヨー磁気回路が形成される。
ピッチ磁気回路において駆動コイル306pへの通電が行われると、該ピッチ磁気回路内のギャップ磁束密度と駆動コイル306pが発生する磁束とが磁気的に干渉してローレンツ力が発生する。シフト鏡筒302は、該ローレンツ力を推力(駆動力)として受けてピッチ方向にシフト(本実施例では、平行シフト)される。駆動コイル306p、磁石304p、上ヨーク307pおよび固定用ヨーク305によってピッチアクチュエータ(第1のアクチュエータ)が構成される。
ヨー磁気回路において駆動コイル306yへの通電が行われると、該ヨー磁気回路内のギャップ磁束密度と駆動コイル306yが発生する磁束とが磁気的に干渉してローレンツ力が発生する。シフト鏡筒302は、該ローレンツ力を推力(駆動力)として受けてヨー方向にシフト(本実施例では、回転シフト)される。駆動コイル306y、磁石304y、上ヨーク307yおよび固定用ヨーク305によってヨーアクチュエータ(第2のアクチュエータ)が構成される。ピッチアクチュエータとヨーアクチュエータは、光軸方向に並ぶように配置されている。
なお、本実施例のピッチおよびヨーアクチュエータは、シフト鏡筒302に磁石304p,304yが固定され、シフトベース301およびアッパーベース303に駆動コイル306p,306yが固定されたムービングマグネット型のアクチュエータである。ただし、シフト鏡筒に駆動コイルを固定し、シフトベースおよびアッパーベースに磁石を固定したムービングコイル型のアクチュエータを用いてもよい。
308p,308yは磁束密度を電気信号に変換するホール素子であり、それぞれ磁石304p,304yの着磁境界に対向する位置に配置される。ホール素子308p,308yは、シフト鏡筒302と一体にシフトする磁石304p,304yからの磁束密度の変化に応じた信号を出力する。これにより、シフト鏡筒302のピッチ方向とヨー方向のシフト位置を検出することができる。
ホール素子308p,308yと駆動コイル306p,306yの端子はフレキシブル基板309に半田付けされる。フレキシブル基板309に形成された穴部309a,309bには、シフトベース301に形成された位置決めピン301d,301eが挿入される。また、フレキシブル基板309に形成された穴部309c,309dには、アッパーベース303に形成された位置決めピン303a,303bが挿入される。これにより、フレキシブル基板309は、シフトベース301およびアッパーベース303に対して位置決めされる。
310p,310yは押さえ板であり、それぞれフレキシブル基板309をシフトベース301およびアッパーベース303に固定するために用いられる。押さえ板310p,310yは、その側壁に形成された2箇所の穴部がシフトベース301およびアッパーベース303の凸部に係合することでシフトベース301およびアッパーベース303に固定される。
311a,311b,311cはシフトベース301とシフト鏡筒302との間に挟み込まれて保持された複数(3つ)のボールである。各ボールは、シフトベース301とシフト鏡筒302に形成された保持部(当接部)に当接し、シフト鏡筒302のシフトベース301に対するシフトに伴って転動可能である。各ボールは、その近くに配置される磁石304p,304yに吸着されないように、SUS304やセラミック等の材料により形成されている。
ボール311a,311b,311cの外径は互いに同じである。これにより、シフト鏡筒302(補正レンズユニットL3)を光軸に対して倒すことなく保持およびシフト案内することが可能となる。
ボール311a,311b,311cを保持する保持部(当接部)として、シフトベース301には301a,301b,301cで示す凹部が形成され、シフト鏡筒302には302aで示す凹部と302b,302cで示す平面部が形成されている。
ボール(第1のボール)311a用の保持部(第1の保持部)を構成する凹部301a,302aはそれぞれピッチ方向に延びるV溝形状を有するガイド溝として形成されている。該ガイド溝を形成する2つの斜面がボール311aに当接することで、該ボール311aの凹部301a,302a内(所定範囲内)でのピッチ方向への転動が許容されるとともに、ヨー方向への移動(転動および滑り)が制限される。
ボール(第2のボール)311b,311c用の保持部(第2の保持部)を構成する凹部301b,301cと平面部302b,302cのうち、凹部301b,301cの底面に相当する面はシフト面に平行な平面により形成されている。そして、該凹部301b,301cの平面とシフト面に平行な平面部302b,302cとがボール311b,311cに当接する。これにより、ボール311b,311cの凹部301b,301c内(所定範囲内)でのピッチ方向およびヨー方向、つまりはシフト面に平行な全方向への転動が許容される。
なお、シフト鏡筒302をピッチ方向およびヨー方向の可動端までシフトさせた後にシフト中心位置に戻すと、最初にボールがどの位置にあっても、ボールがその中心が各凹部の中心に位置するように配置(リセット)される。この一連の動作をボールのリセット動作といい、リセットされた位置をボールの基準位置という。
シフト鏡筒302は、磁石304p,304yと上ヨーク307p,307yとの間に光軸方向にて作用する磁気吸引力によって、シフトベース301に向かって付勢される。これにより、シフト鏡筒302とシフトベース301との間でボール311a,311b,311cを加圧状態で挟持することができる。本実施例では、シフト鏡筒302には、シフトベース301側とアッパーベース303側の双方に磁気吸引力が作用する。しかし、磁石304pと上ヨーク307pとの間の間隔を磁石304yと上ヨーク307yとの間の間隔よりも小さくすることで、シフトベース301側の吸引力が強くなり、シフト鏡筒302がシフトベース301に向かって付勢されるようにしている。
また、各ボールと各保持部との間には、シフト鏡筒302とシフトベース301との間の挟持力が弱まっても又はなくなってもボールが容易に保持部から脱落しないように、適切な粘度を有する潤滑油が塗布されている。これにより、レンズ鏡筒部に加わった振動や衝撃によって大きな慣性力がシフト鏡筒302に作用して、ボールの挟持力が弱まったりなくなったりしても、ボールの脱落やずれを防止できる。
312はアッパーベース303をシフトベース301に固定するための押さえ板である。押さえ板312は、アッパーベース303に設けられた位置決めピンによってアッパーベース303に対して位置決めされる。また、押さえ板312は、その3箇所の穴部がシフトベース301に形成された3箇所の凸部に係合することでシフトベース301に固定され、アッパーベース303をシフトベース301に固定する。アッパーベース303は、これに設けられた位置決めピンがシフトベース301に形成された穴部に挿入されることで、シフトベース301に対して位置決めされる。
次に、図6および図7を用いて、ボール311とシフトベース301とシフト鏡筒302との関係について説明する。図6は、ボール311a,311bとこれらの保持部との関係を示している。なお、ボール311cについてはボール311bと同様である。
図6(a),(b)はそれぞれ、ボール311a,311bとそれらの保持部の断面を示している。また、図6(c),(d)はそれぞれ、ボール311a,311bが保持部に対して可能な動きを示している。図7(a),(b)はそれぞれ、シフトユニット3を光軸方向(物体側)から見たときのシフト鏡筒302がピッチ方向に平行シフトする様子とヨー方向に回転シフトする様子を示している。
図6(a),(c)において、前述したように、ボール311aは、ピッチ方向Pに延びるV溝形状を有するガイド溝として形成された保持部(凹部301a,302a)の斜面に当接する。これにより、ボール311aのピッチ方向Pへの転動は許容されるが、ヨー方向への移動は制限(阻止)される。これにより、図7(a)に示すように、シフト鏡筒302は、シフトベース301に対するピッチ方向への平行シフトは可能である。しかし、シフト鏡筒302は、ボール311aを保持する凹部302aの位置においてシフトベース301に対するヨー方向へのシフトが制限(阻止)される。
また、図6(b),(d)において、前述したように、ボール311bは、保持部(凹部301bおよび平面部302b)の平面に当接することで、ピッチ方向Pおよびヨー方向(シフト面に平行な全方向)への転動が許容される。このため、図7(b)に示すように、シフト鏡筒302は、シフトベース301に対して、ボール311aを中心としたヨー方向への回転シフトが可能である。
このように、本実施例のシフトユニット3では、従来のシフトユニットのようにシフト面内での回転を制限する専用の部材を用いることなくシフト鏡筒302をピッチ方向とヨー方向にガタなくシフト(平行シフトおよび回転シフト)させることができる。したがって、シフトユニット3を小型化しつつ精度良く補正レンズユニットL3をシフトさせることができる。
次に、図7(a),(b)を用いて、補正レンズユニットL3の位置検出について説明する。図7(a),(b)において、実線により磁石304と補正レンズユニットL3とボール311のシフト前の外形を、破線によりシフト後の外形をそれぞれ示す。
図7(a)に示すように、駆動コイル306pに通電すると、磁石304pを保持したシフト鏡筒302が、ボール311aを介して保持部(凹部301a,302a)により案内されて、シフト中心位置からピッチ方向に平行シフトする。このとき、磁石304pがピッチ方向にΔPmだけ平行シフトすると、シフト鏡筒302により保持された補正レンズユニットL3のシフト中心位置からのピッチ方向シフト量ΔPLもΔPmである。また、ボール311aの基準位置からのピッチ方向へのシフト量(転動距離)ΔPbは、ΔPm/2である。したがって、ホール素子308pを用いて、磁石304pのピッチ方向シフト量を検出することで、補正レンズユニットL3のピッチ方向シフト量を取得することができる。
図7(b)に示すように、駆動コイル306yに通電すると、磁石304yを保持したシフト鏡筒302は、シフト中心位置から、保持部(凹部301a,302a)によってヨー方向への移動が阻止されたボール311aを中心として回転シフトする。このとき、磁石304yのヨー方向へのシフト量ΔYmをホール素子308yを用いて検出する。また、ホール素子308pを用いて磁石304のピッチ方向へのシフト量ΔPmを検出し、ボール311aのピッチ方向へのシフト量ΔPbを算出する。ボール311aと磁石304yの中心間距離Rmは、シフト中心位置(基準位置)でのボール311aと磁石304の中心間距離をRm0とすると、
Rm=Rm0−ΔPb
となる。
光軸と直交するシフト面内での補正レンズユニットL3と磁石304p,304yの中心間距離Rcは常に一定であるので、ピッチ方向における補正レンズユニットL3と磁石304p,304yとの間に設けられた凹部301aに保持されているボール311aと補正レンズユニットL3との間の中心間距離RLは、
RL=Rc−Rm
により算出できる。また、ボール311aを中心とする補正レンズユニットL3の回転シフト角θは、
θ=|arcsin(ΔYm/Rm)|
により算出できる。
したがって、補正レンズユニットL3のシフト中心位置からのヨー方向シフト量ΔYL、
ΔYL=RL・sinθ
により算出することができる。
また、補正レンズユニットL3がヨー方向に回転シフトすると、補正レンズユニットL3はピッチ方向にもシフトする。このとき、補正レンズユニットL3のピッチ方向シフト量ΔPLは、
ΔPL=RL(1−cosθ)
により算出することができる。
以上のようにして、ホール素子308p,308yによる検出量を用いて、シフト鏡筒302(補正レンズユニットL3)のピッチ方向およびヨー方向でのシフト位置を正確に算出することができる。
図8には、上述したシフトユニット3を備えたレンズ鏡筒部を有するビデオカメラの電気的構成を示している。
13はカメラ信号処理回路であり、撮像素子701から出力された撮像信号に対して各種処理を行って映像信号を生成する。14は制御ユニットとしてのマイクロコンピュータであり、カメラ信号処理回路13からの映像信号を不図示のモニタに表示させたり、不図示の記録媒体(半導体メモリ、光ディスク、磁気テープ等)に記録したりする。また、マイクロコンピュータ14は、後述する各回路の動作を制御する。
15はフォーカスコイル駆動回路であり、マイクロコンピュータ14からのフォーカス制御信号に応じてフォーカスモータ(ボイスコイルモータ)のコイル401に対する通電を行って、フォーカス移動枠4を移動させる。マイクロコンピュータ14は、映像信号の高周波成分を抽出してAF評価値信号を生成し、AF評価値が最大となるようにフォーカスコイル駆動回路15にフォーカス制御信号を出力する。
16はズームモータ駆動回路であり、マイクロコンピュータ14からのズーム制御信号に応じてズームモータ201に対する通電を行い、バリエータ移動枠2を移動させる。マイクロコンピュータ14は、不図示のズームスイッチの操作に応じたズーム制御信号を出力する。17はズームリセット回路であり、前述したズームリセットスイッチ205を含み、バリエータ移動枠2の基準位置を検出する。
18は絞り駆動回路であり、マイクロコンピュータ14からの制御信号に応じて絞りユニット11を駆動する。マイクロコンピュータ14は、映像信号の輝度情報に基づいて絞りユニット11の開口径を制御するための制御信号を出力する。
24,25はそれぞれビデオカメラのピッチ方向およびヨー方向の振れ角度を検出するピッチ角度検出回路およびヨー角度検出回路である。これらピッチ角度検出回路24およびヨー角度検出回路25は、振動ジャイロ等の角速度センサ又は加速度センサにより構成される振れ検出器を含み、該振れ検出器からの信号を積分することでピッチ振れ角度およびヨー振れ角度を検出(算出)する。振れ角度の情報は、マイクロコンピュータ14に取り込まれる。
20,21はそれぞれ、マイクロコンピュータ14からのピッチ制御信号およびヨー制御信号に応じて、シフトユニット3におけるピッチおよびヨーアクチュエータの駆動コイル306p,306yに対する通電を行うピッチ駆動回路およびヨー駆動回路である。マイクロコンピュータ14は、ピッチ角度検出回路24およびヨー角度検出回路25からのピッチ振れ角度およびヨー振れ角度の情報に基づいて、像振れを補正するために必要な補正レンズユニットL3のピッチ方向およびヨー方向での目標シフト位置を算出する。そして、これら目標シフト位置に補正レンズユニットL3をシフトさせるためのピッチ制御信号およびヨー制御信号をそれぞれピッチ駆動回路20およびヨー駆動回路21に出力する。
より具体的に説明すると、補正レンズユニットL3をシフトさせると、これを通過する光束が曲げられて撮像素子701上に形成されている被写体像もシフトする。マイクロコンピュータ14は、ビデオカメラの振れによって被写体像が変位する方向とは逆方向に、該振れによる被写体像の変位量と同じ被写体像のシフト量が得られるように補正レンズユニットL3のピッチ方向およびヨー方向の目標シフト位置を算出する。
22,23はそれぞれ補正レンズユニットL3のピッチ方向位置およびヨー方向位置を検出するためのピッチ位置検出回路およびヨー位置検出回路であり、前述したホール素子308p,308yを含む。ピッチ位置検出回路22およびヨー位置検出回路23からの出力(補正レンズユニットL3の実際の位置の情報)はマイクロコンピュータ14に取り込まれる。マイクロコンピュータ14は、ピッチ方向およびヨー方向の目標シフト位置と、ピッチおよびヨー位置検出回路22,23を通じて得られた補正レンズユニットL3の位置とを比較し、これらの差が0に近づくようにピッチ制御信号およびヨー制御信号を出力する。これにより、補正レンズユニットL3が目標シフト位置に向かってシフトし、像振れが補正される。
また、前述したように、本実施例のシフトユニット3では、ピッチアクチュエータとヨーアクチュエータが光軸方向に並ぶように配置されている。これにより、本実施例のシフトユニット3は、ピッチアクチュエータとヨーアクチュエータとをシフト面に平行な周方向にて位相を異ならせて配置する従来のシフトユニットに比べて、光軸方向から見たときの大きさ(横方向の幅)を小さくすることができる。
図9には、本実施例のシフトユニット3を搭載したレンズ鏡筒部を有するビデオカメラを光軸方向から見て示している。ビデオカメラ26の横方向の幅は、光ディスク等の記録媒体が収納される映像記録部27の厚さと、画像等の情報が表示されるモニタ28(格納状態)の厚さと、レンズ鏡筒部29の幅(最大径D)とによって決まる。また、レンズ鏡筒部29の幅は、アクチュエータを備えた絞りユニット11やシフトユニット3の幅によって決まる。このため、シフトユニット3の幅を小さくして、絞りユニット11と同程度の幅とすることで、レンズ鏡筒部29の幅を小さく抑えることができ、この結果、ビデオカメラ26全体の幅を小さくすることができる。なお、図9では、映像記録部27の一部を、レンズ鏡筒部29のうち絞りユニット11およびシフトユニット3の幅が小さくなることで外径が最大径Dより小さくなった部分に沿って配置した例を示している。
本実施例では、光軸が一直線状に延びる撮影光学系を有するビデオカメラにシフトユニットを搭載した場合について説明したが、本実施例と同様に構成されたシフトユニットを、撮影光学系が途中で折り曲がったデジタルスチルカメラ等の撮像装置に用いてもよい。この場合でも、撮像装置の横方向の幅を小さくすることができる。
次に、本発明の参考技術例であるシフトユニットについて、図10および図11を用いて実施例2として説明する。図10は、本実施例のシフトユニットを物体側から見て分解して示している。また、図11は、本実施例のシフトユニットの像面側から見て分解して示している。これらの図において、実施例1と同様に、各構成要素の符号の末尾に付した「p」は、その構成要素がピッチ方向の像振れ補正に関わるものであることを示し、「y」は、その構成要素がヨー方向の像振れ補正に関わるものであることを示す。
L5は防振光学素子としての補正レンズユニットである。29は該補正レンズユニットL5を保持するシフト鏡筒であり、光軸に直交するシフト面内でピッチ方向およびヨー方向に平行シフト可能である。
30p,31pは磁石であり、光軸方向にてN極とS極とが逆を向き、かつピッチ方向に並ぶように配置されている。30y,31yも磁石であり、光軸方向にてN極とS極とが逆を向き、かつヨー方向に並ぶように配置されている。
32pは磁石30p,31pの背面に配置されて磁束を閉じる下ヨークである。32yは磁石30y,31yの背面に配置されて磁束を閉じる下ヨークである。
33はマグネットベースであり、シフト面に平行な周方向において互いに90度位相が異なる位置に磁石30p,31pと磁石30y,31yとが固定される。また、マグネットベース33には、ビスによって押さえ板34が固定され、該押さえ板34によって下ヨーク32p,32yがマグネットベース33に固定される。マグネットベース33は、該マグネットベース33に形成された2つの穴部にシフト鏡筒29に設けられた2つの位置決めピンが挿入されることでシフト鏡筒29に対して位置決めされ、かつシフト鏡筒29に固定される。これにより、シフト鏡筒29(補正レンズユニットL5)とマグネットベース33(磁石30p,31p、磁石30y,31yおよび下ヨーク32p,32y)とが一体となってシフトする。本実施例では、シフト鏡筒29とマグネットベース33により可動部材が構成される。
35はシフトユニットのベース部材となるシフトベースである。36p,36yは駆動コイルであり、37p,37yは駆動コイル36p,36yの背面に配置される上ヨークである。駆動コイル36p,36yと上ヨーク37p,37yは、シフトベース35における周方向において互いに90度位相が異なる位置(磁石30p,31pと磁石30y,31yに対向する位置)に固定される。
磁石30p,31p、下ヨーク32pおよび上ヨーク37pによってピッチ磁気回路が形成され、磁石30y,31y、下ヨーク32yおよび上ヨーク37yによってヨー磁気回路が形成される。
ピッチ磁気回路において駆動コイル36pへの通電が行われると、該ピッチ磁気回路内のギャップ磁束密度と駆動コイル36pが発生する磁束とが磁気的に干渉してローレンツ力が発生する。シフト鏡筒29は、該ローレンツ力を推力(駆動力)として受けてピッチ方向に平行シフトされる。駆動コイル36p、磁石30p,31p、下ヨーク32pおよび上ヨーク37pによってピッチアクチュエータ(第1のアクチュエータ)が構成される。
ヨー磁気回路において駆動コイル36yへの通電が行われると、該ヨー磁気回路内のギャップ磁束密度と駆動コイル36yが発生する磁束とが磁気的に干渉してローレンツ力が発生する。シフト鏡筒29は、該ローレンツ力を推力(駆動力)として受けてヨー方向に平行シフトされる。駆動コイル36y、磁石30y,31y、下ヨーク32yおよび上ヨーク37yによってヨーアクチュエータ(第2のアクチュエータ)が構成される。ピッチアクチュエータとヨーアクチュエータは、光軸方向から見たときに互いに異なる位相に配置されている。
なお、本実施例のピッチおよびヨーアクチュエータは、シフト鏡筒に磁石が固定され、シフトベースに駆動コイルが固定されたムービングマグネット型のアクチュエータである。ただし、シフト鏡筒に駆動コイルを固定し、シフトベースに磁石を固定したムービングコイル型のアクチュエータを用いてもよい。
38p,38yは磁束密度を電気信号に変換するホール素子である。ホール素子38p,38yはそれぞれ、シフト鏡筒29と一体にシフトする磁石30p,31pと磁石30y,31yからの磁束密度の変化に応じた信号を出力する。これにより、シフト鏡筒29のピッチ方向とヨー方向のシフト位置を検出することができる。
ホール素子38p,38yと駆動コイル36p,36yの端子は、フレキシブル基板39に半田付けされる。フレキシブル基板39に形成された穴部には、シフトベース35に形成された位置決めピンが挿入される。40は押さえ板であり、シフトベース35にビスにより取り付けられてフレキシブル基板39をシフトベース35に固定する。
41a,41b,41cはシフトベース35とマグネットベース33との間に挟み込まれて保持された複数(3つ)のボールである。各ボールは、シフトベース35とマグネットベース33に形成された保持部(当接部)に当接し、シフト鏡筒29およびマグネットベース33のシフトベース35に対するシフトに伴って転動可能である。各ボールは、実施例1と同様に、その近くに配置される磁石30p,31pと磁石30y,31yに吸着されないように、SUS304やセラミック等の材料により形成されている。
ボール41a,41b,41cの外径は互いに同じである。これにより、シフト鏡筒29(補正レンズユニットL5)を光軸に対して倒すことなく保持およびシフト案内することが可能となる。
ボール41a,41b,41cを保持する保持部(当接部)として、シフトベース35には35a,35b,35cで示す凹部が形成され、マグネットベース33には33aで示す凹部と33b,33cで示す平面部が形成されている。
ボール(第1のボール)41a用の保持部(第1の保持部)を構成する凹部35a,33aはそれぞれ、図10に矢印Aで示す第1の方向(ピッチ方向とヨー方向の間の方向であり、以下、A方向という)に延びるV溝形状を有するガイド溝として形成されている。該ガイド溝を形成する2つの斜面がボール41aに当接することで、該ボール41aの凹部35a,33a内(所定範囲内)でのA方向への転動が許容される。一方、ボール41aのA方向に直交する第2の方向(図10に矢印Bで示す方向であり、以下、B方向という)への移動(転動および滑り)は制限される。
ボール(第2のボール)41b,41c用の保持部(第2の保持部)を構成する凹部35b,35cと平面部33b,33cのうち、凹部35b,35cの底面に相当する面はシフト面に平行な平面により形成されている。そして、該凹部35b,35cの平面とシフト面に平行な平面部33b,33cとがボール41b,41cに当接する。これにより、ボール41b,41cの凹部35b,35c内(所定範囲内)でのA方向およびB方向、つまりはピッチ方向やヨー方向も含むシフト面に平行な全方向への転動が許容される。
シフト鏡筒29は、磁石30p,31pおよび磁石30y,31yと上ヨーク37p,37yとの間に光軸方向にて作用する磁気吸引力によって、シフトベース35に向かって付勢される。これにより、マグネットベース33とシフトベース35との間でボール41a,41b,41cを加圧状態で挟持することができる。
本実施例では、シフト鏡筒29は、シフトベース35に対するA方向への平行シフトは可能である。しかし、シフト鏡筒29は、ボール41aを保持する凹部33aの位置においてシフトベース35に対するB方向へのシフトが制限(阻止)される。また、前述したように、ボール41bは、保持部(凹部35bおよび平面部33b)の平面に当接することで、シフト面に平行な全方向への転動が許容される。このため、シフト鏡筒29は、シフトベース35に対して、ボール41aを中心としたB方向への回転シフトが可能である。
このように、本実施例でも、従来のシフトユニットのようにシフト面内での回転を制限する専用の部材を用いることなくシフト鏡筒29をA方向とB方向にガタなくシフト(平行シフトおよび回転シフト)させることができる。したがって、シフトユニットを小型化しつつ精度良く補正レンズユニットL5をシフトさせることができる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例では、撮影レンズ一体型の撮像装置である光学機器について説明したが、本発明は、他の光学機器としての交換レンズ装置にも適用することができる。