JP5464234B2 - フッ素含有水の処理方法 - Google Patents
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フッ素含有水を効率よく処理する方法として、シックナーからの返送汚泥と水酸化カルシウムを混合して混合汚泥を調製し、この混合汚泥を用いて原水を中和するHDS法(高密度汚泥法)が知られている。HDS法において、返送汚泥と水酸化カルシウムを混合する混合槽で、水酸化カルシウムの代わりに塩化カルシウムと水酸化ナトリウムを注入して、水酸化カルシウムを生成させる方法もある。混合槽で水酸化カルシウムを混合して調製した混合汚泥で中和を行うと、混合槽で汚泥粒子の表面にCa2+イオンが吸着され、次いで反応槽でフッ素含有水と接触するとき、汚泥粒子の表面にフッ化カルシウムが生成し、これが結晶の核として作用する。その結果、生成する汚泥粒子の全体が結晶化し、脱水ケーキの発生量が低減し、処理水の水質が向上する。
また、返送汚泥と水酸化カルシウムを混合して調製した混合汚泥でフッ素含有水を中和するとき、溶解度の小さい水酸化カルシウムは、表面より徐々にCa2+イオンとOH-イオンに解離しながら溶解するが、溶解速度が遅いため、水酸化カルシウムが汚泥粒子の内部に取り込まれる。その結果、汚泥表面に吸着されるCa2+イオンの量が減少し、反応槽での結晶化の度合が小さくなる。さらに、混合槽では未溶解水酸化カルシウムにより、混合物がペースト状となり、反応槽への流入管を閉塞させたり、配管抵抗のために流れにくくなり、混合槽より汚泥が溢流する場合があった。
図1は、従来のHDS法の一例の工程系統図である。本例においては、水酸化カルシウムの代わりに塩化カルシウムと水酸化ナトリウムが用いられ、混合槽1において、返送汚泥に塩化カルシウムと水酸化ナトリウムが混合されている。水酸化ナトリウムの注入量は、反応槽2内に設けたpH計3から送られる信号により制御されている。反応槽内において生成したフッ化カルシウムを含むスラリーは、凝集槽4へ送られ、高分子凝集剤が添加され、粗大フロックを形成して沈殿槽5へ送られる。沈殿槽で沈降した汚泥は、一部が余剰汚泥として抜き取られ、残余が返送汚泥として混合槽へ返送される。フッ素濃度が低下した沈殿槽の上澄水は、HDS法の処理水となる。しかし、本例では、反応槽に設置されたpH計からの信号を受ける自動弁の開閉により混合槽に水酸化ナトリウムが注入され、混合槽を経由して反応槽に入るために、水酸化ナトリウムの注入の遅れがあった。さらに、所定のpH値に到達し、水酸化ナトリウム注入停止の信号が送られても、返送汚泥によって混合槽から水酸化ナトリウムが押し出されるために、反応槽のpHが設定pH値より高くなり、反応槽内のpHは図2に示すような変動の大きい動きとなり、一定のpHを保つことが困難であった。さらには、
CaCl2+2NaOH→Ca(OH)2+2NaCl
の反応により、溶解速度の遅い水酸化カルシウムが生成するため、ペースト状となり、配管閉塞等の問題があった。
すなわち、本発明は、
(1)フッ素含有水を反応槽で塩化カルシウムと反応させて不溶物を生成させ、凝集槽で凝集剤を添加した後、沈殿槽で凝集汚泥を固液分離して沈殿槽の上澄水は処理水として取り出し、沈殿槽で沈降した汚泥の一部は余剰汚泥として抜き取り、残余を返送汚泥として、混合槽に返送し、混合槽において、返送汚泥に塩化カルシウムを混合した後、反応槽において、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウムからなるアルカリの存在下で、フッ素含有水と塩化カルシウム化合物とを反応させるフッ素含有水の処理方法において、前記混合槽において、返送汚泥と塩化カルシウムとを、アルカリを注入しない状態で混合することによって、汚泥粒子の表面にCa2+イオンを吸着させて混合槽内の混合物がペースト状になることを防止した後、該混合物を混合槽から反応槽に返送することを特徴とするフッ素含有水の処理方法、及び
(2)反応槽に入るフッ素含有水が、予備中和槽で予備中和される第1項記載のフッ素含有水の処理方法、
を提供するものである。
フッ素含有水中のフッ素と反応して難溶性のフッ化カルシウムを生成するためのカルシウム化合物としては、例えば、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、チオシアン酸カルシウムなどを挙げることができる。これらの中で、塩化カルシウムは取り扱いが容易であり、副次的な環境汚染を引き起こすおそれがないので、本発明方法に好適に用いることができる。
図3は、本発明方法の実施の一態様の工程系統図である。本態様においては、混合槽1において、返送汚泥に塩化カルシウムが混合され、反応槽2において、水酸化ナトリウムが注入される。水酸化ナトリウムの注入量は、反応槽内に設けたpH計3から送られる信号により制御される。フッ素含有水は反応槽2に導入され、反応槽内において生成したフッ化カルシウムを含むスラリーは、凝集槽4へ送られ、高分子凝集剤が添加され、粗大フロックを形成して沈殿槽5へ送られる。沈殿槽で沈降した汚泥は、一部が余剰汚泥として抜き取られ、残余が返送汚泥として混合槽に返送される。フッ素濃度が低下した沈殿槽の上澄水は、本発明方法の処理水となる。
Ca2++2F-→CaF2
により必要とされる理論量よりも、Ca2+イオンとして200〜500mg/L過剰であることが好ましい。
本発明方法においては、返送汚泥を塩化カルシウムと混合したのちに反応槽に返送する。アルカリを注入しない状態で返送汚泥を塩化カルシウムと混合することにより、混合物がペースト状になることがなく、混合槽廻りの配管に閉塞を生じたり、流出不良を起こして混合槽が溢れたりすることがなく、安定した運転を行うことができる。従来法で混合槽にアルカリが注入されると汚泥の粘度が上昇するが、これは汚泥粒子の表面にCa2+イオンが吸着されたとき、Ca2+イオンの周囲にOH-イオンが多量存在し、これが配位結合するため、汚泥粒子の表面がマイナス荷電となり、その結果荷電反発により、汚泥粒子が分散状態となって粘度が上昇する。一方、中性域で塩化カルシウムを混合した場合、粘度が上昇しないのは、吸着されたCa2+イオンへのOH-イオンの配位結合量が少なく、荷電反発が生じにくいためと考えられる。
本発明方法において、反応槽内のpHは、6〜7に設定することが好ましく、6.3〜6.7になるように設定することがより好ましい。反応槽内のpHを6〜7に設定することにより、フッ化カルシウムの結晶化効率を高めて、フッ素濃度の低い処理水を得ることができる。混合槽に塩化カルシウムを注入すると、混合槽で汚泥粒子の表面にCa2+イオンが吸着され、次いで反応槽でフッ素含有水と接触すると、汚泥粒子の表面にフッ化カルシウムが生成し、これが結晶の核として作用する。その結果、生成する汚泥粒子の全体が結晶化し、脱水ケーキの発生量が減少し、処理水の水質が向上する。
図5は、本発明方法の実施の他の態様の工程系統図である。本態様においては、反応槽2の前段に予備中和槽6が設けられ、予備中和槽に設けたpH計7から送られる信号により、予備中和槽への水酸化ナトリウムの注入量が制御される。予備中和槽のpHの設定値は、3.5〜5.5であることが好ましい。本態様の処理方法は、水酸化ナトリウムの添加量が多いためpH調整が難しいフッ素含有水のフッ素濃度が5,000〜20,000mg/Lのように高い場合に適し、予備中和槽で予備中和を行ったのち、反応槽でpHの微調整を行うことにより、pH調整の精度を向上し、水質のより良好な処理水を得ることができる。
実施例1
図3に示される構成の連続試験機を用いて、フッ素含有合成廃水の処理を行った。試験機の各槽の容量は、反応槽1L、混合槽0.1L、凝集槽0.5L、沈殿槽10Lである。合成廃水は、pH2.5であり、フッ素250mgF-/L、硝酸イオン100mgNO3 -/L、リン酸イオン50mgPO4 3-/L、硫酸イオン300mgSO4 2-/Lを含有する。
反応槽へ合成廃水3L/hを供給し、返送汚泥として0.3L/hを混合槽に返送した。混合槽には、10重量%塩化カルシウム水溶液を、塩化カルシウムとして5,000mg/h供給した。塩化カルシウムの供給量は、CaF2及びCa5(PO4)3OHを生成するために必要な理論量の約300mg(Ca2+イオンとして)過剰である。反応槽の設定pHを6.5とし、反応槽に浸漬したpH計から送られる信号により、5重量%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に反応槽に供給した。また、凝集槽へ、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤[栗田工業(株)、クリフロックPA322]を3mg/h供給した。
試験機の運転開始2日後から、12時間ごとに、計6回のサンプリングを行い、沈殿槽処理水のフッ素濃度と、返送汚泥の濃度を測定した。
実施例2
図3に示される構成の連続試験機の反応槽の前段に、容量0.5Lの予備中和槽を付け加えた図5に示される構成の連続試験機を用い、予備中和槽に合成廃水を供給し、予備中和槽の設定pHを5とし、予備中和槽に浸漬したpH計から送られる信号により、5重量%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に予備中和槽にも供給した以外は、実施例1と同様にしてフッ素含有合成廃水の処理を行った。
比較例1
図1に示される構成の連続試験機を用い、反応槽の設定pHを6.5とし、反応槽に浸漬したpH計から送られる信号により、5重量%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に混合槽に供給した以外は、実施例1と同様にしてフッ素含有合成廃水の処理を行った。
実施例1〜2及び比較例1におけるサンプリング時の反応槽内のpH、沈殿槽処理水のフッ素濃度及び返送汚泥の濃度を、第1表に示す。また、実施例1〜2及び比較例1における反応槽pHの連続測定結果の最高値及び最低値を、第2表に示す。
元来HDS法において、処理水のフッ素濃度が最低になる反応槽の最適pHは、6.5前後であり、比較例1に比べて、実施例1、さらに実施例2の方が、反応槽におけるpHが安定するために良好な結果が得られたと考えられる。
2 反応槽
3 pH計
4 凝集槽
5 沈殿槽
6 予備中和槽
7 pH計
Claims (2)
- フッ素含有水を反応槽で塩化カルシウムと反応させて不溶物を生成させ、凝集槽で凝集剤を添加した後、沈殿槽で凝集汚泥を固液分離して沈殿槽の上澄水は処理水として取り出し、沈殿槽で沈降した汚泥の一部は余剰汚泥として抜き取り、残余を返送汚泥として、混合槽に返送し、混合槽において、返送汚泥に塩化カルシウムを混合した後、反応槽において、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウムからなるアルカリの存在下で、フッ素含有水と塩化カルシウム化合物とを反応させるフッ素含有水の処理方法において、前記混合槽において、返送汚泥と塩化カルシウムとを、アルカリを注入しない状態で混合することによって、汚泥粒子の表面にCa2+イオンを吸着させて混合槽内の混合物がペースト状になることを防止した後、該混合物を混合槽から反応槽に返送することを特徴とするフッ素含有水の処理方法。
- 反応槽に入るフッ素含有水が、予備中和槽で予備中和される請求項1記載のフッ素含有水の処理方法。
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