JP5462121B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、モータ運転中にモータの異常を検知するモータ制御装置に関する。
モータを使用するモータ装置には、モータの異常を検知して異常状態をユーザに通知して早期メンテナンスにて安全動作を維持することが望まれている。特許文献1には、モータの初期動作時にセルフテストを行い、モータの異常を検知する技術が記載されている。
特開2003-348898号公報
しかしながら、モータ運転中にセルフテストを行うことはできない。したがって、モータ運転中は、モータ欠相あるいは短落等の大きなモータ異常を検知することはできるが、モータの層間短落および位置センサの誤差増大等の中間レベルのモータ異常を検知することはできなかった。
本発明の目的は、ゼロ速度から高速度回転までのモータ運転中において、モータの層間短落および位置センサの誤差増大等の中間レベルのモータ異常を検知できるモータ制御装置を提供することにある。
上記課題を解決する本発明のモータ制御装置は、モータに出力される出力電流の電流値を検知して目標トルクに応じた電流値に制御するモータ制御装置であって、モータの運転中にモータに出力される出力電流の電流値と出力電圧の電圧値に基づいてモータ運転状態値を演算し、その演算されたモータ運転状態値に基づいてモータに異常が発生しているか否かを判定するモータ異常判定部を有することを特徴としている。
本発明のモータ制御装置によれば、モータの運転中にモータに出力される出力電流の電流値と出力電圧の電圧値に基づいてモータ運転状態値を演算し、その演算されたモータ運転状態値に基づいてモータに異常が発生しているか否かを判定するので、モータ運転中にモータの層間短落や位置センサの誤差増大等の中間レベルのモータ異常を検知できる。
本発明のモータ装置の構成を示すブロック図。 第1の実施形態におけるモータの動作状態の変化を示す波形図。 モータ制御装置の出力電圧と出力電流を相対変換したベクトル図。 モータの位置センサの異常時における動作状態の変化を示す波形図。 本発明のモータ装置が適用された電動パワーステアリング装置の構成図。 本発明のモータ装置が適用されたハイブリッド自動車システムの構成図。 第2の実施形態におけるモータの動作状態の変化を示す波形図。
以下、本発明の第1の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明のモータ制御装置を有するモータ装置の構成を示すブロック図である。
モータ装置300は、モータ運転時のゼロ速度(停止状態)から高速度回転までの動作状態においてモータ異常を検知してフェールセーフする用途に適したものである。モータ装置300は、モータ310とモータ制御装置100を有している。
モータ制御装置100は、電流検出部120、電流制御部110、インバータ130、モータ位置検出部150、モータ異常判定部140を有している。バッテリ200は、モータ制御装置100の直流電圧源であり、バッテリ200の直流電圧は、モータ制御装置100のインバータ130によって可変電圧、可変周波数の3相交流に変換され、モータ310に印加される。
モータ310は、3相交流の供給により回転駆動される同期モータである。モータ310には、モータ310の誘起電圧の位相に合わせて3相交流の印加電圧の位相を制御するために位置センサ部320が取り付けられている。
モータ310を高精度に制御するためには、電流検出部120で3相のモータ電流値Iu,Iv,Iwを検知し、電流制御部110により、目標トルクに応じた電流値に制御する。位置検出部150は、位置センサ部320の信号から位置検出値θsを検出し、モータ回転速度ωrを演算する。
電流制御部110は、位置検出値θsと、モータ電流値Iu,Iv,Iwを用いて、電流指令(交流制御をする場合には3相の電流指令とし、ベクトル制御をする場合にはd軸、q軸の電流指令とする)に一致するように周知のパルス幅変調(PWM)されたドライブ信号を作成する。作成されたドライブ信号は、インバータ130の半導体スイッチ素子をオン/オフ制御するのに用いられる。
モータ異常判定部140は、モータ制御装置100の出力電圧Vu、出力電流Iu、及びモータ回転速度ωrから演算によりモータ運転状態を検知し、モータ異常と判断する場合にモータ異常信号を出力する。モータ異常判定部140の詳細な動作については、図3を用いて後述する。
なお、モータ装置300において、モータ310の回転速度を制御する場合には、モータ回転速度ωrを用いて演算した回転速度が、上位制御器からの速度指令と一致するように電圧指令を作成する。また、モータ出力トルクを制御する場合には、モータ電流を検出し、該検出したモータ電流からモータ出力トルクを演算し、該演算したモータ出力トルクが上位制御器からのトルク指令と一致するように電流指令を作成する。
次に、図2を用いて、本実施の形態におけるモータ状態について説明する。
図2は、モータの一定回転時におけるモータ状態の演算結果を示す動作波形である。
モータが正常時のモータトルクは、図2(a)に実線で示すように、電流制御によりほぼ一定のトルクが出力され、モータ運転状態値は、図2(b)に実線で示すように、安定した一定値を示す。ここで、モータ運転状態値は、モータ310の回転速度の影響を除去するために、モータ回転速度に応じて発生する逆起電圧相当分を補正演算することによりモータの加減速状態によらず、ほぼ一定値のモータ運転状態値を得ることができる。
一方、モータに中間レベルのモータ異常が発生した場合、具体的には、モータ310の1相巻線あるいは2相の巻線に層間短落が発生してモータ巻線(抵抗やインダクタンスなど)が約1/3となったモータ異常の場合、電流制御部110によりモータ電流はほぼ一定に制御されるが、層間短絡により逆起電圧のアンバランスが発生しているため、図2(a)に破線で示すように、モータトルクは大きな脈動を生じる。
モータ異常時のモータ運転状態値は、図2(b)に破線で示すように、電気角1周期内で大きく変動する。モータ異常判定部140では、このモータ運転状態値の変化を検知して、モータ異常を判定する。すなわち、モータ運転状態値が予め設定された所定の判定値に達した場合に、モータ異常が発生していると判断して、モータ異常信号を出力する。
好ましくは、モータ運転状態値を電気角1周期内の変動幅で検知し、変動幅のレベルを用いて、モータ運転状態値の変動幅が予め設定された所定の判定値Th以上となる状態を少なくとも1回以上検知した場合、もしくは連続して所定の回数検知した場合に、モータ異常が発生していると判断して、モータ異常信号を出力する。
尚、モータ異常時において、電流制御部110は、電流が一定となるようにPWMパルスなどの印加電圧を調整するように動作するため、インバータ130の出力電圧と、出力電流の比率が変化する。
交流モータの場合、印加電圧も交流として大小を周期的に繰り返す。すなわち、モータの回転にともない正常なモータ巻線に多く電流を流す状態と、異常な巻線に多く電流を流す状態とが周期的に繰り返され、モータ運転状態値は、インバータ130の出力電圧と、出力電流の比率変化に応じた分だけ周期的な脈動を生じる。この周期的に繰り返される脈動成分のピーク値と、予め設定された判定値とを比較することでモータ異常を判定できる。
ここでは、モータ運転状態値と判定値と比較してモータ異常を判定しているが、例えば、モータ運転状態値の周期的に繰り返される脈動成分のピーク値の大きさに応じてモータ巻線などの劣化度合いを検知することができるので、その検知した劣化度合い、あるいはその平均値などを用いて無段階にてモータ異常の度合いを使用者に通知することも可能である。
次に、図3を用いて、本実施の形態におけるモータ異常判定部140の動作について説明する。図3は、モータ制御装置の出力電圧と出力電流をdq変換(相対変換)したベクトル図である。
電圧ベクトルVは、大きさVuで、進み位相(δ+β)であり、電流ベクトルIは、大きさIuで、進み位相βである。電圧と電流の成す角δは、力率角であり、1相分の有効電力Pと皮相電力Sは下記の式(1)、(2)に示される。
Figure 0005462121
Figure 0005462121
である。一方、モータ310の出力Pmは、下記の式(3)で示される。
Figure 0005462121
特に、Id=0に制御している場合には、上記式(3a)に示すように、Iqの項のみで表される。
上記式(3)、(3a)で、ppは極対数、keは誘起電圧定数である。
インバータ130の出力Poと入力Piは、下記の式(4)、(5)で示される。
Figure 0005462121
Figure 0005462121
なお、上記式(5)で、Edcは直流電圧、Idcは直流電流である。
モータ効率ηmとしたときの、モータ出力Pmとインバータ出力Poの関係は、下記の式(6)で表される。
Figure 0005462121
そして、q軸出力電圧Vqは、下記の式(7)で示される。
Figure 0005462121
電流制御部110は、層間短絡などの中間レベルのモータ異常時にも、目標とする出力トルクに応じたd軸の電流指令値Id*と、q軸の電流指令値Iq*とに一致するように動作するため、モータ消費電力は一定で、モータ出力が変動し、有効電力が変動することとなる。
すなわち、モータ制御装置100の出力電圧と出力電流から算出されるモータ運転状態値に応じて、有効電力の変動から異常の有無、あるいは状態量を判定すればよい。
モータ運転状態値の1つの指標として、有効電力に関係するq軸電流値とq軸電圧値を下記の式(8)に示す。
Figure 0005462121
上記式(8a)に示すように、Id=0に制御されているときは、q軸電流とq軸電圧の比は簡素化されて表現できる。
ここで、層間短絡などのモータ異常が生じた場合には、逆起電圧定数を含んだKe’がモータ回転位置に依存して変化することとなる。
また、式(8)、(8a)では、モータ回転速度ωrが数式に含まれるため、モータ運転状態値がモータ回転速度に影響されることが示され、モータ回転速度ωrを、式(8)の右辺と左辺に乗算することで、モータ運転状態値がモータ回転速度ωrの影響をキャンセルして、図2に示すようなほぼ一定値を得ることができる。
ここでは、有効電力の変化を指標に取っているが、無効電力にしても同様な効果が得られる。さらには、電流指令値(Id*、ないしIq*)がほぼ一定値の場合には、出力電圧あるいはq軸電圧値のみで簡略化することができ、制御処理演算の負荷を軽減できる。
すなわち、モータトルクを多く必要な領域を多用する用途には、q軸の電流Iqとq軸の電圧Vqのみを用いてもモータ異常(モータ運転状態値の変動)を検知できる。一方、d軸の電流Idを多く流した弱め界磁制御を多用する用途には、d軸の電流Idとd軸の電圧Vdのみを用いてもモータ異常を検知できる。一般には、モータトルクを必要とする用途が多いため、有効電力の方が無効電力よりも大きく、このような使用条件にてはq軸の電流Iqとq軸の電圧Vqを用いてモータ異常を判定することで実用上問題ない。
本発明では、有効電力及び力率の計測には電気角で1周期以上が必要であり、通常のインバータ過電流保護動作より遅い応答となる。モータ巻線の地落などに対しては、これまで同様のインバータ過電流動作により保護し、Iu+Iv+Iw=0の条件が成立する層間短落などに対しては、モータ運転状態値と判定値とを比較することで保護動作ができる。
あるいは、モータ運転を継続可能なモータ異常状態である場合には、モータ異常をユーザに通知してサービスステーションに行き、メンテナンスを受けるように知らせることもできる。モータ運転は、モータ310やインバータ130の温度上昇が予め設定された許容範囲内、あるいはインバータ130の許容電流範囲内にてモータ運転を継続することができる。このとき、モータ運転状態値に応じてモータ運転に制限を加えることが好ましい。
モータ運転状態値の応答性を向上させるには、q軸電流値とq軸電圧値とを用いることにより、瞬時モータ運転状態値が異常判定レベルにある場合には、電気角1周期を計測することなく、モータ異常を保持し、モータ異常をユーザに速やかに通知することが可能である。
上述の実施形態では、インバータ出力を用いる場合について説明したが、バッテリ200からの直流電圧値と直流電流値とから求められるモータ制御装置100の入力電力(有効電力分)を用いる場合でも同様にモータ異常を検知できる。
図4は、モータの位置センサ部の異常時における動作状態の変化を示す波形図である。
モータ異常の状態を層間短絡ではなく、モータ310に取り付けられた位置センサ部320の異常について示している点が図2と異なり、他は図2と同様である。
位置検出誤差は、図4(a)に示すように、例えばレゾルバなどの位置センサ部320の異常によって位置検出値θに誤差が重畳した場合であり、位置センサ部320からの検出信号線の接触不良などによってノイズ量が時間変化して、モータ位置検出部にて演算した位置検出値θの誤差(位置検出誤差)が時間変化した場合を示している。
出力電圧変調率は、PWM変調率を示しており、図4(b)に示すように、位置検出誤差に応じて変調率が変化し、その結果、出力電流が変化している。ここで、電流制御が働いているが、dq変換で用いる位置検出値θに誤差が生じているため、電流検出部120の出力信号であるモータ電流検出値(Id,Iq)には検出誤差が含まれる。すなわち、電流制御部110にて電流指令値(Id*,Iq*)とモータ電流検出値(Id,Iq)が一致するように動作をするものの、実際にモータに流れる出力電流(Iu、Iv,Iw)は、電流指令値(Id*,Iq*)から求まる三相の電流値とは一致しないことを示している。
このときの三相出力電圧の絶対値のピーク値は大きく変動しており、三相出力電圧の絶対値のピーク値を用いても位置センサ部320の異常を検知できる。また、図3と式(1)〜(8)を用いて説明したモータ運転状態値を用いた場合にも、位置センサ部320の異常を検知して、ユーザに異常を通知することができる。例えば、図4(e)に示すように、モータ運転状態値の判定値として上限値Thaと下限値Thbを予め設定しておき、モータ運転状態値が上限値Thaを超えた場合、もしくは下限値Thbを下回った場合に、位置センサ部320の異常と判断することができる。
上記したモータ制御装置100によれば、モータ310の運転中にモータ310に出力される出力電流の電流値と出力電圧の電圧値に基づいてモータ運転状態値を演算し、その演算されたモータ運転状態値に基づいてモータ310に異常が発生しているか否かを判定するので、モータ運転中にモータ310の層間短落や位置センサ部320の誤差増大等の中間レベルのモータ異常を検知できる。
次に、図5を用いて、本発明の各実施形態に示したモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の構成について説明する。
図5は、本発明の各実施形態に示したモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の構成図である。
電動アクチュエータは、トルク伝達機構902と、モータ310と、モータ制御装置100から構成される。電動パワーステアリング装置は、電動アクチュエータと、ハンドル(ステアリング)900と、操舵検出器901および操作量指令器903を備え、運転者が操舵するハンドル900の操作力は電動アクチュエータを用いてトルクアシストする構成を有する。
電動アクチュエータのトルク指令τ*は、ハンドル900の操舵アシストトルク指令(操作量指令器903にて作成)とし、電動アクチュエータの出力を用いて運転者の操舵力を軽減するようにしたものである。モータ制御装置100は、入力指令としてトルク指令τ*を受け、モータ310のトルク定数とトルク指令τ*とからトルク指令値に追従するようにモータ電流を制御する。
モータ310のロータに直結された出力軸から出力されるモータ出力τmはウォーム、ホイールや遊星ギヤなどの減速機構あるいは油圧機構を用いたトルク伝達機構902を介し、ステアリング装置のラック910にトルクを伝達して運転者のハンドル900の操舵力(操作力)を電動力にて軽減(アシスト)し、車輪920,921の操舵角を操作する。
このアシスト量は、ステアリングシャフトに組み込まれた操舵状態を検出する操舵検出器901により操舵角や操舵トルクとして操作量を検出し、車両速度や路面状態などの状態量を加味して操作量指令器903によりトルク指令τ*として決定される。
本発明のモータ制御装置100は、急加減速する電動アクチュエータに要求されるトルク指令τ*に対しても回転センサに生じる位相差を補正して高効率なモータ駆動が可能なため、電動アクチュエータの高速・高トルク運転の弱め界磁領域に対してもモータ効率を低下させることなく駆動可能である。
また、低速度おいてもセンサ取付誤差を低減して安定して低トルク変動にてモータ駆動ができる。すなわち、モータ制御装置100を適用した電動パワーステアリング装置では運転者に操舵フィーリングを損なうことなく高トルク・高応答な電動パワーステアリング装置が得られる。なお、本実施例では、電動パワーステアリング装置について説明したが、電動ブレーキ装置であっても同様の効果が得られる。
次に、図6、図7を用いて、本発明に係るモータ制御装置を車両に適用したその他の実施形態を説明する。
図6は、本発明のモータ制御装置が適用されたハイブリッド自動車システムの構成図、図7は、モータの動作状態の変化を示す波形図である。
ハイブリッド自動車システムは、図6に示すように、同期電動機620をモータ/ジェネレータとして適用したパワートレインを有する。
図6に示す自動車において符号600は車体である。車体600のフロント部には、前輪車軸601が回転可能に軸支されており、前輪車軸601の両端には、前輪602,603が設けられている。車体600のリア部には、後輪車軸604が回転可能に軸支されており、後輪車軸604の両端には後輪605,606が設けられている。
前輪車軸601の中央部には、動力分配機構であるデファレンシャルギア611が設けられており、エンジン610から変速機612を介して伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸601に分配するようになっている。エンジン610と同期電動機620とは、エンジン610のクランクシャフトに設けられたプーリーと同期電動機620の回転軸に設けられたプーリーとがベルトを介して機械的に連結されている。
これにより、同期電動機620の回転駆動力がエンジン610に、エンジン610の回転駆動力が同期電動機620にそれぞれ伝達できるようになっている。同期電動機620は、モータ制御装置100によって制御された3相交流電力がステータのステータコイルに供給されることによって、ロータが回転し、3相交流電力に応じた回転駆動力を発生する。
すなわち、同期電動機620は、モータ制御装置100によって制御されて電動機として動作する一方、エンジン610の回転駆動力を受けてロータが回転することによって、ステータのステータコイルに起電力が誘起され、3相交流電力を発生する発電機として動作する。
モータ制御装置100は、高電圧(42V)系電源である高圧バッテリ622から供給された直流電力を3相交流電力に変換する電力変換装置であり、運転指令値に従ってロータの磁極位置に応じた,同期電動機620のステータコイルに流れる3相交流電流を制御する。
同期電動機620によって発電された3相交流電力は、モータ制御装置100によって直流電力に変換されて高圧バッテリ622を充電する。高圧バッテリ622にはDC−DCコンバータ624を介して低圧バッテリ623に電気的に接続されている。低圧バッテリ623は、自動車の低電圧(14v)系電源を構成するものであり、エンジン610を初期始動(コールド始動)させるスタータ625,ラジオ,ライトなどの電源に用いられている。
車両が信号待ちなどの停車時(アイドルストップモード)にあるとき、エンジン610を停止させ、再発車時にエンジン610を再始動(ホット始動)させる時には、モータ制御装置100で同期電動機620を駆動し、エンジン610を再始動させる。尚、アイドルストップモードにおいて、高圧バッテリ622の充電量が不足している場合や、エンジン610が十分に温まっていない場合などにおいては、エンジン610を停止せず駆動を継続する。また、アイドルストップモード中においては、エアコンのコンプレッサなど、エンジン610を駆動源としている補機類の駆動源を確保する必要がある。この場合、同期電動機620を駆動させて補機類を駆動する。
加速モード時や高負荷運転モードにある時にも、同期電動機620を駆動させてエンジン610の駆動をアシストする。逆に、高圧バッテリ622の充電が必要な充電モードにある時には、エンジン610によって同期電動機620を発電させて高圧バッテリ622を充電する。すなわち、車両の制動時や減速時などの回生モードを行う。
このような車両用のモータ駆動装置において、位置センサ部の異常や、同期電動機620の異常などが発生した場合には、異常を検知しても可能な限りモータ運転を継続することが望まれる。
そこで、図7に示すように、異常を判定しても運転継続可能な状態と、継続せずに緊急停止させる状態とを判別するために複数の判定レベルを設けた。図7(b)に示す第1の判定値Th1は、モータ運転が継続可能なモータ異常であるかを判定する異常判定レベルであり、図7(b)に示す第2の判定値Th2は、モータ運転を継続することが困難なモータ異常であるかを判定する異常判定レベルである(Th1<Th2)。
モータ運転状態値が、かかる第1の判定値Th1を超えて第2の判定値Th2との間の値となっている場合には、モータ異常を運転者に通知すると共に、速やかに停車あるいはサービスステーションまでの移動を促すことができ、必要に応じてモータ制御装置100のインバータ(図示せず)の出力制限をしながらも、安全な停車場所までの車両移動や、サービスステーションまでの車両移動を可能とすることができる。このとき、予め設定したモータ運転状態の制限や、モータ運転状態値のピーク値に応じたモータ運転の制限を加えることも可能である。
そして、モータ運転状態値が、図7(b)に示す第2の判定値Th2を越えた場合には、インバータあるいはモータの焼損につながるような重度の異常状態であり、車両を緊急停止させるべきであると判断する。したがって、最終的にモータの異常によって搭乗者等に不具合が生ずることがないようモータ運転を緊急停止することができる。
例えば、モータの巻線などに発生する異常のひとつに巻線の絶縁劣化などがある。この場合、急激な劣化よりも経年変化や、繰り返しによるダメージによって引き起こされることが多く、徐々にモータ運転状態値(運転中の状態値)が正常な状態から、継続運転可能な異常状態を経て、停止すべき異常状態に至る。したがって、2つ以上の判定値を用いてモータの異常度合いを判断することによって、モータ運転の制御をより細かく行うことができる。
モータ異常時に、モータ運転状態値が第1の判定値Th1あるいは第2の判定値Th2と一致あるいは、それ以上になる瞬間と、それ以下になる瞬間とが交互に発生する。これは、異常になったモータ巻線に印加する電圧が交流電圧であるためで、モータの回転に伴って変化することに起因する。
モータトルクも電気角1周期以内で周期的な変化となり、異常であるレベル(第1の判定値Th1あるいは第2の判定値Th2を超えるレベル)と、正常であるレベル(第1の判定値Th1以下のレベル)を繰り返し発生することがわかる。すなわち、電気角1周期を異常検出期間として異常レベルを検知し、異常を検出する。電気角の繰返し周期の都度、数周期連続して異常を検出したときに異常と判断することで、誤検知を防止することが可能となる。尚、位置センサ部320の異常においても同様に対処できる。
上述の実施の形態では、本発明のモータ制御装置100をハイブリッド自動車システムに適用した場合について説明したが、電気自動車においても同様な効果が得られる。
本発明のモータ制御装置100は、このような同期電動機620をモータ/ジェネレータにとして適用する場合にも、安全に停車可能な場所まで移動したり、サービスステーションまで移動可能とする自動車のパワートレインシステムを提供することができる。
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
100…モータ制御装置
110…電流制御部
120…電流検出部
130…インバータ
140…モータ異常判定部
150…モータ位置検出部
200…バッテリ
300…モータ装置
310…モータ
320…位置センサ部

Claims (5)

  1. モータに出力される出力電流の電流値を検知して目標トルクに応じた電流値に制御するモータ制御装置であって、
    前記モータの運転中に前記モータに出力される出力電流の電流値と出力電圧の電圧値に基づいてモータ運転状態値を演算し、該演算されたモータ運転状態値に基づいて前記モータに異常が発生しているか否かを判定するモータ異常判定部を有し、
    前記モータ異常判定部は、前記モータの運転中に前記出力電流から検出した有効電流成分と前記出力電圧の電圧値の比から前記モータ運転状態値を演算することを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記モータ異常判定部は、前記モータ運転状態値が予め設定された判定値を越えた場合に、前記モータに異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記モータ異常判定部は、前記モータ運転状態値の電気角1周期内における変動幅が、予め設定された判定幅以上の場合に、前記モータに異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  4. 前記モータ異常判定部は、電気角の繰返し周期の都度、予め設定された数周期連続して前記モータ運転状態値が予め設定された判定値を越えた場合に、前記モータに異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  5. 前記モータ異常判定部は、前記モータの異常として、前記モータの巻線に層間短絡が発生しているか、もしくは、モータの位置を検出する位置センサ部に異常が発生していると判断することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
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