JP5460369B2 - チャック装置及びこれを備える旋盤 - Google Patents

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Description

本発明は、チャック装置及びこれを備える旋盤に関する。
旋盤のような工作機械において主軸がワークを把持する機構(以下、把持機構という)としては、例えば特許文献1,2に開示されているようなトグルとコレットチャック装置とを備える構成が知られている。
コレットチャック装置を用いる把持機構は、比較的低コストで利用できる等の利点があるため広く用いられている。一方、このような把持機構では、コレットチャックがすり割りを有すること等の理由により、ワークを把持する場合に、把持後のワークの振れの繰返し精度を高くすることが困難である。
上記のようなコレットチャック装置の欠点を改善するための把持機構として、エアー駆動されダイヤフラムの膜力によってワークを把持するダイヤフラムチャック装置を備える構成が知られている(例えば、特許文献3)。
特開平4−115804号公報 特開平2−232104号公報 特開2002−321108号公報
コレットチャック装置を使用する旋盤は、前述のようにトグルで駆動する把持機構を備えているが、ダイヤフラムチャック装置を操作するエアー供給機構を持っていない。特許文献3に開示されたようなダイヤフラムチャック装置は、チャックを開かせるにはダイヤフラムにエアーを送り込み、ダイヤフラムを凸状に膨らませることにより、チャック爪を開かせるため、エアー供給機構が必要であり、そのため主軸を専用化しなければならなかった。また、特許文献3に開示されたようなエアー式ダイヤフラムチャック装置を主軸に取り付けるためには主軸軸端が大きくなければならない。従って、ダイヤフラムチャック装置を旋盤に付けようとすると主軸及びエアー供給機構を専用化しなければならなかった。
即ち、コレットチャック装置とダイヤフラムチャック装置とでは、主軸、及び把持機構を駆動するためのエアー供給機構等の主軸台の構造が違うため共用化が困難であり、自動旋盤を購入する時に、予めどちらにするか決めた上で、一方しか使用できなかった。そのため、加工ワークによってコレットチャック装置とダイヤフラムチャック装置とを使用する場合、それぞれ別の把持機構の旋盤で加工しなければならず、その結果、コスト高となってしまうという問題点があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ダイヤフラムを備えながら簡易でコンパクトな構成とすることができ、コレットチャック装置との取り付け互換性のあるチャック装置及びこれを備える旋盤を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るチャック装置は、
回転軸の先端部に螺合するように配設された保持部材と、
周縁部が前記保持部材に保持されており、前記回転軸の軸方向に所定の押圧力を受けて弾性変形するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの表面に配設されており、把持対象物を把持する複数個の爪を備える把持部材と、
前記回転軸を前記軸方向に挿通するように配設されており、前記ダイヤフラムに対し前記把持対象物に向かって前記押圧力を加える押圧部材と、
前記押圧部材に対し押圧方向と反対の方向に所定のバネ力を付勢するバネ部材と、を備え、
前記ダイヤフラムは、該ダイヤフラムの中心部に螺合する調整ねじをさらに備え、
前記調整ねじは、前記押圧部材に当接する受圧面を備え、該受圧面と前記押圧部材との間隔を調整可能である、
ことを特徴とする。
上記のチャック装置において、
揺動可能に支承されたトグルを備え、該トグルによって前記押圧部材を前記押圧方向に付勢する押圧機構をさらに備える、
こととしてもよい。
前記調整ねじと前記バネ部材との間に配設されており、前記調整ねじを介して前記バネ力の反作用を前記ダイヤフラムに伝達する中間部材をさらに備える、
こととしてもよい。
前記調整ねじは、前記押圧部材と対向する面に、前記押圧部材の先端部が挿入される凹部を備える、
こととしてもよい。
前記押圧部材及び前記調整ねじは、いずれも前記軸方向に中空である、
こととしてもよい。
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るチャック装置は、
回転軸の先端部に螺合するように配設された保持部材と、
周縁部が前記保持部材に保持されており、前記回転軸の軸方向に所定の押圧力を受けて弾性変形するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの表面に配設されており、把持対象物を把持する複数個の爪を備える把持部材と、
前記回転軸を前記軸方向に挿通するように配設されており、前記ダイヤフラムに対し前記把持対象物に向かって前記押圧力を加える押圧部材と、
前記押圧部材に対し押圧方向と反対の方向に所定のバネ力を付勢するバネ部材と、を備え、
前記ダイヤフラムは、前記押圧部材と対向する面に、前記押圧部材の先端部が挿入される凹部を備え、
前記バネ部材は、前記押圧部材と前記保持部材との間に配設されている、
ことを特徴とする
上記のチャック装置において、
揺動可能に支承されたトグルを備え、該トグルによって前記押圧部材を前記押圧方向に付勢する押圧機構をさらに備える、
こととしてもよい。
前記押圧部材及び前記ダイヤフラムは、いずれも前記軸方向に中空である、
こととしてもよい。
前記押圧部材は、前記軸方向に複数個に分割されている、
こととしてもよい。
上記目的を達成するため、本発明の第の観点に係る旋盤は、
主軸台と、
前記主軸台に回転自在に支承された主軸と、
前記主軸に設けられた前述のチャック装置と、を備える、
ことを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係る旋盤は、
主軸台と、
前記主軸台に回転自在に支承された主軸と、
前記主軸台に対向して配設された背面主軸台と、
前記背面主軸台に回転自在に支承された背面主軸と、
前記主軸及び前記背面主軸の一方又は双方に設けられた、前述のチャック装置と、を備える、
ことを特徴とする。
上記の旋盤において、
外周部に形成されたテーパ面を備え、把持対象物を把持するコレットチャックと、
前記押圧部材から前記押圧力を受けることで、前記コレットチャックの前記テーパ面に嵌合して前記コレットチャックを閉じさせるコレットスリーブと、を備えるコレットチャック装置をさらに備え、
該コレットチャック装置と前記ダイヤフラムを備える前記チャック装置とが取り付けの互換性を有する、
こととしてもよい。
本発明の構成によれば、ダイヤフラムを備えながら該ダイヤフラムへのエアー供給機構が不要であるため、簡易でコンパクトな構成のチャック装置を得ることができる。また、このようなチャック装置を使用することで、チャック部のみの交換でコレットチャック装置に変更することができるため、ダイヤフラムチャック装置とコレットチャック装置との取り付けの互換性のある旋盤を得ることができる。
本発明の第1実施形態に係る自動旋盤の構成を示す断面図である。 ダイヤフラムチャック部を示す部分断面図である。 (a)はダイヤフラム及びチャック力調整ねじを軸方向から見た図であり、(b)は(a)のIII−III線で切断した断面図である。 第1実施形態におけるチャックの閉動作を示す断面図である。 第1実施形態におけるチャックの開動作を示す断面図である。 コレットチャックを取り付けた変形例を示す部分断面図である。 本発明の第2実施形態に係る自動旋盤の構成及びチャックの閉動作を示す部分断面図である。 第2実施形態におけるチャックの開動作を示す部分断面図である。 本発明の第3実施形態に係る自動旋盤の構成を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。以下では、旋盤の例として自動旋盤を挙げて説明する。また、以下の位置に関する説明において特に断りのない限り、「前(側)」とは旋盤の主軸(又は背面主軸)の軸方向においてワークが取り付けられる側を指し、「後(側)」はその反対側を指し、「軸方向」とは主軸(又は背面主軸)における軸方向を指す。
(第1実施形態)
図1〜図3に、第1実施形態に係る自動旋盤1の構成を示す。ベッド16上に、複数の部材から構成された主軸台11が据え付けられている。主軸21は主軸台11を貫通するように配設されており、軸受22及び軸受23により回転自在に支承されている。主軸21はビルトインモータ31により回転駆動される。ビルトインモータ31のうち、固定子32は主軸台11の内周に配設されており、回転子33は主軸21の外周に配設されている。
主軸21は中空に構成されており、その中空部には被加工物のワークWと反対の側から順に押し管41とチャック開閉ロッド55とが配設されている。チャック開閉ロッド55は中空構造をなしており、その外径及び内径はそれぞれ複数の段差でワークW側が小さくなるように形成されている。押し管41も中空構造をなしており、ワークW側の端面がチャック開閉ロッド55の一端面と接している。また、押し管41のワークWと反対側の端部付近の外周面には、後述のトグル43に対応する複数個所の溝が設けられている。
主軸21は主軸台11の後方にまで延びており、主軸21の後端部にはトグル切替部111が設けられている。トグル切替部111は、チャック開き量調整ナット42と、トグル43と、トグル支え44と、トグルスリーブ45と、軸受46と、を備えている。
チャック開き量調整ナット42は、主軸21の後端部に設けられたねじ部と螺合しており、所定の工具等により回転させるとトグル支え44の位置を軸方向に移動させる。
トグル43は、複数個の異形片状の部材から構成されている。トグル43の各々の部材は、一方の端部である支点43aがトグル支え44に支承されており、図示された2つでは図のX軸を中心とする回転動作により他部材から規制される範囲内で揺動可能になっている。また、トグル43の各部材は、押し管41をワークW方向に押すための角部43bを備えている。
トグルスリーブ45は、概ね円筒状に形成されているが、後端部の内径側にテーパ面が形成されており、このテーパ面と内周面とにトグル43の他方の端部が当接するようになっている。また、トグルスリーブ45の外周面には軸受46が配設されている(図示の簡略化のため、軸受46の支持部材の図示は省略している)。これにより、主軸21が回転する場合には、主軸21に螺合するチャック開き量調整ナット42はもとより、トグル43、トグル支え44及びトグルスリーブ45も一体となって回転するようになっている。
このようなトグル切替部111を駆動するために、自動旋盤1は、シリンダー12と、シリンダーロッド13と、アーム14と、を備えている。シリンダー12は、吸気口17又は吸気口18からエアーの供給を受けることにより、シリンダーロッド13を伸縮させることで、支点14aを中心にアーム14を所定の範囲内で回転させる。アーム14はトグルスリーブ45に機械的に接続されており、その回転動作に伴ってトグルスリーブ45を軸方向に前後に駆動可能に構成されている。
また、自動旋盤1のワークW側には、ダイヤフラムチャック部101が設けられている。ダイヤフラムチャック部101は、前述のチャック開閉ロッド55の他に、保持部材51と、ダイヤフラム52と、チャック力調整ねじ58と、チャック爪53と、チャック力調整バネ56と、チャック力調整バネ受け57と、を備えている。
保持部材51は、主軸21の前側先端部に螺合して配設されている。保持部材51は、例えば6個のねじ穴を備える前側の端面にてダイヤフラム52を保持している。また、保持部材51は略円筒状であるが、内周の一部の内径がその他より小さくなっており、この部分の内周面でチャック力調整バネ受け57の外周面を保持している。
ダイヤフラム52は、外力に対して所定の弾性変形(膜変形)をする板状部を有する部材であり、例えば6個の取付穴52aにてボルトで保持部材51に締結されている。また、ダイヤフラム52は、前側の端面にてチャック爪53を保持するための例えば6個のねじ穴52cを備えている。さらに、ダイヤフラム52の中心部にはねじ穴がさらに設けられており、このねじ穴にチャック力調整ねじ58が螺合している。
チャック力調整ねじ58は中空構造の雄ねじである。チャック力調整ねじ58は、前側に設けられた六角穴58aと、後側に設けられた凹部58bと、を備えている。図1に示すように、凹部58bにはチャック開閉ロッド55の先端部が挿入されている。
チャック爪53は、軸方向に割りを有する例えば6つの爪を備えており、それぞれの爪はボルトにてダイヤフラム52に軸方向から見て放射状に取り付けられている。図1に示すように、チャック爪53はその内径側の面でワークWをチャックできるようになっている。
チャック力調整バネ56は、チャック開閉ロッド55とチャック力調整バネ受け57との間に配設されており、所定のバネ力(反発力)を有するコイルスプリングである。
チャック力調整バネ受け57は異形の中空部材であり、チャック力調整ねじ58とチャック力調整バネ56との間に配設されている。チャック力調整バネ受け57は、チャック開閉ロッド55とでチャック力調整バネ56を保持するとともに、チャック力調整バネ56のバネ力の反作用をチャック力調整ねじ58に伝達する。
以上のように、自動旋盤1の主軸21及びその中心軸を通る各部材(押し管41、チャック開閉ロッド55、チャック力調整ねじ58等)はいずれも棒状の素材(ワーク)を通すことができるように中空構造となっている。
また、自動旋盤1は、チャック動作等、自動旋盤1の動作全般を制御する制御部100を備えている。制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Rondom Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等から構成されている。
次に、本実施形態に係る自動旋盤1の動作について説明する。なお、以下の各実施形態における動作は、特に断りがない限り制御部100の指示に従って行われる。
(チャックを閉じる場合)
まず、図4に示すように、シリンダー12の吸気口18に空気(エアー)を送りこむ(矢印A1)。これにより、シリンダー12はシリンダーロッド13を縮ませる(矢印A2)。これに伴い、シリンダーロッド13に連結されたアーム14は固定の支点14aを中心に動き、トグルスリーブ45を前方、即ちワークW側の方向(矢印A3)に移動させる。
トグルスリーブ45が移動することにより、トグル43は、支点43aを中心に回転し、トグルスリーブ45のテーパ面に接するようになる。この状態では、トグル43の角部43bは後退し、トグル43は角部43bにより押し管41を前方に押すことはない。即ち、押し管41にはトグル43からの力は働かない。
チャックを閉じる動作の前、即ちチャックが開いている状態では、トグル43が押し管41及びチャック開閉ロッド55を押すことで、ダイヤフラムチャック部101のチャック力調整バネ56は所定の力で縮んでいる。ここで前述のようにトグル43が動作することで、チャック力調整バネ56はその反発力によりチャック開閉ロッド55を矢印A4の方向に押して移動させる。これにより、同様に押し管41も矢印A5の方向に押されて移動する。なお、矢印A5方向に移動する押し管41は、トグル43の角部43bで係止し、矢印A4方向に移動するチャック開閉ロッド55は、係止した押し管41により係止し、必要以上に後方へは移動しない。
このようにチャック開閉ロッド55が移動することにより、チャック開閉ロッド55の先端の端面とチャック力調整ねじ58の端面との間に隙間59ができる。
チャックが開いている状態では、チャック開閉ロッド55からチャック力調整ねじ58を介してダイヤフラム52に力が働き、ダイヤフラム52はワークW側に凸となるように変形している。この変形に伴い、チャック爪53は開いた状態となる。本動作では、前述のようにチャック開閉ロッド55とチャック力調整ねじ58との間に隙間59ができることで、ダイヤフラム52にはチャック開閉ロッド55からの力が働かない。そのため、ダイヤフラム52はその復元力によりワークW側に凸の変形から戻ることで、チャック爪53を閉じさせる。このようなチャック爪53が閉じる力(チャック力)により、チャック爪53はワークWを把持する。
ここで、ダイヤフラム52にはチャック力調整バネ56の反発力も作用する。従って、チャック爪53からワークWに働くチャック力は、(チャック力)=(ダイヤフラム52自体の膜の復元力)−(チャック力調整バネ56の反発力)、という数式で表すことができる。
自動旋盤1におけるチャック力調整バネ56のバネ力は、チャック力調整バネ受け57を介してチャック力調整ねじ58の端面を押す反発力である。図3で示したように、チャック力調整ねじ58の外径とダイヤフラム52の内径とがねじで螺合しており、ダイヤフラム52とチャック爪53とがボルトで結合しているので、チャック力調整バネ56のバネ力はチャック爪53が開く力として働く。従って、把持力は、上記数式に表されているようにダイヤフラム52自体の膜の復元力を超えることはできない。
次に、チャック力の調整方法について説明する。チャック力は、チャック力調整ねじ58を軸方向に移動させて、チャック力調整バネ56のバネ力を変えることにより調整する。
チャック力調整ねじ58の中心の六角穴58aを六角レンチ等で回すことにより、チャック力調整ねじ58を後方に移動させると、これに伴いチャック力調整バネ受け57も後方に移動する。これにより、チャック力調整バネ56の長さが短くなり、バネ力が強くなる。このとき、上記の数式により、相対的な関係から、チャック力は、調整前より弱くなる。
逆に、チャック力調整ねじ58を左に移動させると、チャック力調整バネ56のバネ力は弱くなるため、チャック力は調整前より強くなる。
(チャックを開く場合)
チャックを開く動作は、基本的にチャックを閉じる動作とは逆になる。まず、図5に示すように、シリンダー12の吸気口17に空気(エアー)を送りこむ(矢印B1)。これにより、シリンダー12はシリンダーロッド13を伸ばす(矢印B2)。これに伴い、シリンダーロッド13に連結されたアーム14は固定の支点14aを中心に動き、トグルスリーブ45を後方(矢印B3)に移動させる。
トグルスリーブ45が移動することにより、トグル43は、支点43aを中心に回転し、支点43aと反対側の端部がトグルスリーブ45の内周面に接するようになる。これにより、トグル43は角部43bにより押し管41の端面をワークW方向に押す(矢印B4)。即ち、押し管41にはトグル43からの力が働く。
押し管41がワークW方向に移動するのに伴い、同様にチャック開閉ロッド55も矢印A5の方向に押されて移動する。その後、チャック開閉ロッド55の先端の端面がチャック力調整ねじ58の凹部に突き当たり、チャック力調整ねじ58及び螺合するダイヤフラム52をワークW方向に押す。
ダイヤフラム52は、チャック開閉ロッド55から押圧力を受けて押されることで、ワークW側に凸となるように変形する。前述のようにダイヤフラム52とチャック爪53とはボルトで結合されているので、ダイヤフラム52の変形に伴ってチャック爪53が開く。
ここで、チャック開き量の調整方法について説明する。前述したように、チャック開き量調整ナット42は、主軸21の右端にねじで螺合している。このチャック開き量調整ナット42をねじで軸方向に移動させると、これに伴いトグル支え44も軸方向に移動する。トグル支え44が移動することで、トグル43の角部43bが押し管41を押して移動させるストローク量を変化させることができる。例えば、トグル支え44を前方に移動させればストローク量は大きくなり、チャック開き量も大きくなる。反対に、トグル支え44を後方に移動させればストローク量は小さくなり、チャック開き量も小さくなる。
(第1実施形態の変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。本実施形態の自動旋盤1では、ダイヤフラムチャック部101に代えてコレットチャックを使用することが可能である。まず、変形例の構成について説明する。
図6に示すように、本変形例におけるコレットチャック部103は、コレットスリーブ81と、バネ82と、コレットチャック83と、コレットナット84と、を備えている。なお、図1のダイヤフラムチャック部101はコレットチャック部103に交換可能であり、自動旋盤1のその他の構成は図1と同様である。
コレットスリーブ81は、後側が略円筒形に形成されているが、バネ82及びコレットチャック83を内包する部分の肉厚が薄くなるように内径側に段付部が設けられている。前側の部分は厚肉部となっており、ワークW側に向かって内径がテーパ状に広がっている。コレットスリーブ81は、ワークW側から主軸21内に挿入され、後側の端面が押し管41の前側の端面に当接している。
バネ82は、ワークW側からコレットスリーブ81内に挿入されてコレットスリーブ81の段付部に突き当たるように配設されている、コイルスプリングである。コレットチャック83は、バネ82に続いてコレットスリーブ81内に挿入されている。コレットチャック83の外径側の一部の面が、コレットスリーブ81の内径側のテーパ面と同じ角度で当接するようなテーパ面として形成されている。また、コレットチャック83のワークW側(ヘッド部)は軸方向から見て例えば3分割になるようスリット83aが設けられており、このヘッド部に外径側から力を加えることで、ヘッド部が縮径しワークWを把持できるようになっている。
コレットナット84は、主軸21の先端部に螺合されたキャップ状の部材である。コレットナット84の軸方向から見て中心部には穴が設けられていて、コレットチャック83の先端部がこの穴からワークW側に突出している。また、コレットナット84は、コレットチャック83の外縁部に当接することで、コレットチャック83のワークW側への移動を規制する。
次に、本変形例のコレットチャック部103を備える自動旋盤1の動作について説明する。
(チャックを開く場合)
本変形例のコレットチャック部103においてコレットチャック83を開閉させる場合、前述のダイヤフラムチャック部101の場合とはシリンダー12にエアーを供給する継手が異なる。即ち、図6の例でコレットチャック83を開く場合には、前述の図4のように吸気口18にエアーを供給する(矢印A1)。これに伴い、シリンダーロッド13(矢印A2)、アーム14、トグルスリーブ45(矢印A3)及びトグル43等も図4と同様の動作をする。
本動作の前、即ちチャックが閉じている状態では、トグル43が押し管41及びコレットスリーブ81を押すことで、コレットチャック部103のバネ82は所定の力で縮んでいる。チャックを開く動作により、押し管41にはトグル43からの力が働かないので、バネ82はその反発力によりコレットスリーブ81及び押し管41を後方に押して移動させる(矢印C1)。
このとき、コレットスリーブ81が移動することでそのテーパ面も後方にずれるため、外径側からコレットスリーブ81に挟持され内径側にそれぞれ弾性変形していたコレットチャック83のヘッド部の変形が復元する。これにより、コレットチャック83が拡径し、把持面83bが開く。
(チャックを閉じる場合)
コレットチャック部103においてチャックを閉じる動作は、前述のチャックを開く動作と基本的に逆となる。即ち、前述の図5のように、まずシリンダー12の吸気口17にエアーを供給する(矢印B1)。これに伴い、シリンダーロッド13(矢印B2)、アーム14、トグルスリーブ45(矢印B3)、トグル43及び押し管41(矢印B4)等も図5と同様の動作をする。
押し管41が矢印B4方向、即ち図6の矢印C2方向に移動することで、コレットスリーブ81も同様に押されて矢印C2方向に移動する。これにより、コレットチャック83のヘッド部が外側から押され縮径することとなる。その結果、把持面83bが閉じることで、コレットチャック83がワークWを把持することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、主軸の先端にダイヤフラムを備えるチャック装置を簡易でコンパクトな構成で設けることができる。特に、広く用いられているトグル駆動を用いることで、主軸はそのままで主軸先端にダイヤフラムを用いたチャック装置を付けることが容易に、また安価にできる。これにより、高い同軸精度で加工することができ、切粉がチャックや主軸内に浸入することを防止できるダイヤフラムチャックをより有効に利用することができる。
また、コレットチャックとダイヤフラムチャックとの共用化が図られ、それぞれのチャック部も主軸に容易に装着することができる。従って、1台の旋盤で用途に合わせてダイヤフラムチャックとコレットチャックと使い分けることができ加工効率を向上させることができる。さらに、ダイヤフラムチャックとコレットチャックとで共用する部品が多いので、製造コスト及び保管コスト等を低減することも可能である。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7及び図8を参照して説明する。なお、以下の説明では、前述のものと同じ構成物には同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図7に示すように、本実施形態の自動旋盤2は、前述のダイヤフラムチャック部101に代えてダイヤフラムチャック部102を備えている。ダイヤフラムチャック部102は、チャック力を調整するための機構を備えていない点において、ダイヤフラムチャック部101と異なっている。ダイヤフラムチャック部102は、ダイヤフラムチャック部101と共通するチャック爪53とチャック開閉ロッド55との他に、保持部材72と、ダイヤフラム73と、開閉ロッド戻しバネ71と、を備えている。
保持部材72は、主軸21の前側先端部に螺合して配設されている。保持部材72は、例えば6個のねじ穴を備える前側の端面にてダイヤフラム73を保持している。また、保持部材72は略円筒状であるが、内周の一部の内径がその他より小さくなっており、この部分の内周面でダイヤフラム73の後側の凸部の外周面を保持している。
ダイヤフラム73は、外力に対して所定の弾性変形(膜変形)をする板状部を有する部材であり、ボルトにて保持部材72に取り付けられている。また、ダイヤフラム73は、前側の端面にてチャック爪53を保持するための例えば6個のねじ穴を備えている。さらに、ダイヤフラム73は、中空であって軸中心部の後側には凸部が形成されており、この凸部の中心部には前述のチャック力調整ねじ58と同様の凹部73aが設けられている。
開閉ロッド戻しバネ71は、チャック開閉ロッド55と保持部材72との間に配設されたコイルスプリングである。開閉ロッド戻しバネ71は、ダイヤフラムチャック部101におけるチャック力調整バネ56とは用途が異なる。図7に示すように、チャックが閉じた状態ではチャック開閉ロッド55とダイヤフラム73との間に隙間74が生じる(後述)。この隙間があるため、チャック開閉ロッド55や押し管41は固定されていないので軸方向に動き得る状態となる。これにより、ワークWを加工するため主軸21を回転させると騒音が発生するおそれがある。また、チャック開閉ロッド55の先端の端面が動いてダイヤフラム73の端面に当たることにより、チャック爪53のチャック力が変わり、加工精度に影響を及ぼすおそれがある。そのため、開閉ロッド戻しバネ71で保持部材72の端面とチャック開閉ロッド55の端面とを押すことにより、チャック開閉ロッド55や押し管41を固定する。
次に、上述の如く構成された自動旋盤2の動作について説明する。
(チャックを閉じる場合)
自動旋盤2のダイヤフラムチャック部102においてチャックを閉じる場合、前述のダイヤフラムチャック部101でチャックを閉じる場合と同様である。即ち、図4に示したように、まず吸気口18にエアーを供給する(矢印A1)。これに伴い、シリンダーロッド13(矢印A2)、アーム14、トグルスリーブ45(矢印A3)及びトグル43等も図4と同様の動作をする。
押し管41にトグル43からの力が働かないことから、開閉ロッド戻しバネ71のバネ力(反発力)により、チャック開閉ロッド55及び押し管41は、後方(矢印D1)に移動する。なお、この動作も図4と同様(矢印A4、矢印A5)である。
このようにチャック開閉ロッド55が移動することにより、チャック開閉ロッド55の先端の端面とダイヤフラム73の端面との間に隙間74ができる。
チャックが開いている状態では、チャック開閉ロッド55からダイヤフラム73に押圧力が働き、ダイヤフラム73はワークW側に凸となるように変形している。この変形に伴い、チャック爪53は開いた状態となる。本動作では、前述のようにチャック開閉ロッド55とダイヤフラム73との間に隙間74ができることで、ダイヤフラム73にはチャック開閉ロッド55からの力が働かない。そのため、ダイヤフラム73はその復元力によりワークW側に凸の変形から戻ることで、チャック爪53を閉じさせる。このようなチャック爪53が閉じる力(チャック力)により、チャック爪53はワークWを把持する。
(チャックを開く場合)
ダイヤフラムチャック部102でチャックを開く場合、前述のダイヤフラムチャック部101でチャックを開く場合と同様である。図5に示したように、まずシリンダー12の吸気口17にエアーを供給する(矢印B1)。これに伴い、シリンダーロッド13(矢印B2)、アーム14、トグルスリーブ45(矢印B3)、トグル43及び押し管41(矢印B4)等も図5と同様の動作をする。
これに伴い、押し管41に押されてチャック開閉ロッド55も図8の矢印E1(図5の矢印B5)方向に移動する。その後、チャック開閉ロッド55の先端の端面がダイヤフラム73の凹部に突き当たることで、ダイヤフラム73をワークW側に向かって押す。
ダイヤフラム73は、チャック開閉ロッド55から押されることで、ワークW側に凸となるように変形する。前述のようにダイヤフラム73とチャック爪53とはボルトで結合されているので、ダイヤフラム73の変形に伴ってチャック爪53が開く。
以上説明したように、本実施形態のようにチャック力の調整機構を省略したダイヤフラムチャック部102として構成することも可能である。なお、本実施形態の自動旋盤2でも、変形例としてダイヤフラムチャック部102に代えてコレットチャック部103に交換して使用することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図9を参照して説明する。
本実施形態に係る自動旋盤3は、主軸台11と背面主軸台91とを備えている。主軸台11と背面主軸台91とは共通のベッド95上に据え付けられている。
主軸側には、前述した第1実施形態の変形例のコレットチャック部103が設けられている。チャック部以外は、主軸台11、押し管41等、図1の自動旋盤1の構成と同様である。
背面主軸側には、前述した第1実施形態のダイヤフラムチャック部101が設けられている。この構成は図1の自動旋盤1と同様であり、背面主軸台91が図1の主軸台11に相当し、背面主軸92が図1の主軸21に相当する。
図9に本実施形態の自動旋盤3の動作例を示す。図9では、主軸側で棒状素材であるワークW0がコレットチャック83に把持されており、工具93で加工されている例を示している。この例では、その後、加工されたワークW0をその後背面主軸側に移して、ダイヤフラム52及びチャック爪53等の動作でチャックする。そして、背面主軸側の例えば突っ切り工具(図示せず)で加工し、ワークWと加工する箇所との同軸精度が必要な高精度の加工をすることができる。このように、本実施形態によれば、1本の棒状の素材(ワーク)から、連続して、高精度のワークを加工できる。
なお、この発明は前述した実施形態、具体例に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
例えば、前述した各実施形態では、押し管41とチャック開閉ロッド55とは分離した別個の部材であるが、これらを一体となるように構成してもよい。
また、シリンダー12は、エアーで動作することとしているが、エアーに限らず、油圧で作動させても良い。この場合、吸気口17及び吸気口18に代えて給油口を設けることができる。
また、シリンダー12の代わりに、サーボモーターで動作させても良い。この場合、トグルスリーブ45に所定の動作をさせるため、シリンダーロッド13及びアーム14に代えて適宜動力伝達部材を使用することができる。
また、主軸台(又は背面主軸台)は、固定で動かなくても、Z軸やX軸に動いても良い。
また、第3実施形態における主軸側、背面主軸側の組み合わせは図9に限定されず、ダイヤフラムチャック部101、ダイヤフラムチャック部102、コレットチャック部103を任意に組み合わせることができる。
また、チャック力調整バネ56、開閉ロッド戻しバネ71及びバネ82は、コイルスプリングに限定されず、バネ力を付勢する弾性体であれば良い。
また、押圧部材(押し管41、チャック開閉ロッド55)及びチャック力調整ねじ58は、中空であっても良く、また中空でなくても良い。
1〜3 自動旋盤(旋盤)
11 主軸台
12 シリンダー
13 シリンダーロッド
14 アーム
16,95 ベッド
17,18 吸気口
21 主軸(回転軸)
22,23 軸受
31 ビルトインモータ
32 固定子
33 回転子
41 押し管(押圧部材)
42 チャック開き量調整ナット
43 トグル
44 トグル支え
45 トグルスリーブ
46 軸受
51,72 保持部材
52,73 ダイヤフラム
53 チャック爪(把持部材)
55 チャック開閉ロッド(押圧部材)
56 チャック力調整バネ(バネ部材)
57 チャック力調整バネ受け(中間部材)
58 チャック力調整ねじ(調整ねじ)
59,74 隙間
71 開閉ロッド戻しバネ(バネ部材)
81 コレットスリーブ
82 バネ
83 コレットチャック
84 コレットナット
91 背面主軸台
92 背面主軸
93 工具
101,102 ダイヤフラムチャック部(チャック装置)
103 コレットチャック部(コレットチャック装置)
111 トグル切替部(押圧機構)
W,W0 ワーク(把持対象物)

Claims (12)

  1. 回転軸の先端部に螺合するように配設された保持部材と、
    周縁部が前記保持部材に保持されており、前記回転軸の軸方向に所定の押圧力を受けて弾性変形するダイヤフラムと、
    前記ダイヤフラムの表面に配設されており、把持対象物を把持する複数個の爪を備える把持部材と、
    前記回転軸を前記軸方向に挿通するように配設されており、前記ダイヤフラムに対し前記把持対象物に向かって前記押圧力を加える押圧部材と、
    前記押圧部材に対し押圧方向と反対の方向に所定のバネ力を付勢するバネ部材と、を備え、
    前記ダイヤフラムは、該ダイヤフラムの中心部に螺合する調整ねじをさらに備え、
    前記調整ねじは、前記押圧部材に当接する受圧面を備え、該受圧面と前記押圧部材との間隔を調整可能である、
    ことを特徴とするチャック装置。
  2. 揺動可能に支承されたトグルを備え、該トグルによって前記押圧部材を前記押圧方向に付勢する押圧機構をさらに備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載のチャック装置。
  3. 前記調整ねじと前記バネ部材との間に配設されており、前記調整ねじを介して前記バネ力の反作用を前記ダイヤフラムに伝達する中間部材をさらに備える、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のチャック装置。
  4. 前記調整ねじは、前記押圧部材と対向する面に、前記押圧部材の先端部が挿入される凹部を備える、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチャック装置。
  5. 前記押圧部材及び前記調整ねじは、いずれも前記軸方向に中空である、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のチャック装置。
  6. 回転軸の先端部に螺合するように配設された保持部材と、
    周縁部が前記保持部材に保持されており、前記回転軸の軸方向に所定の押圧力を受けて弾性変形するダイヤフラムと、
    前記ダイヤフラムの表面に配設されており、把持対象物を把持する複数個の爪を備える把持部材と、
    前記回転軸を前記軸方向に挿通するように配設されており、前記ダイヤフラムに対し前記把持対象物に向かって前記押圧力を加える押圧部材と、
    前記押圧部材に対し押圧方向と反対の方向に所定のバネ力を付勢するバネ部材と、を備え、
    前記ダイヤフラムは、前記押圧部材と対向する面に、前記押圧部材の先端部が挿入される凹部を備え、
    前記バネ部材は、前記押圧部材と前記保持部材との間に配設されている、
    ことを特徴とするチャック装置。
  7. 揺動可能に支承されたトグルを備え、該トグルによって前記押圧部材を前記押圧方向に付勢する押圧機構をさらに備える、
    ことを特徴とする請求項6に記載のチャック装置。
  8. 前記押圧部材及び前記ダイヤフラムは、いずれも前記軸方向に中空である、
    ことを特徴とする請求項6又は7に記載のチャック装置。
  9. 前記押圧部材は、前記軸方向に複数個に分割されている、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のチャック装置。
  10. 主軸台と、
    前記主軸台に回転自在に支承された主軸と、
    前記主軸に設けられた請求項1乃至のいずれか1項に記載のチャック装置と、を備える、
    ことを特徴とする旋盤。
  11. 主軸台と、
    前記主軸台に回転自在に支承された主軸と、
    前記主軸台に対向して配設された背面主軸台と、
    前記背面主軸台に回転自在に支承された背面主軸と、
    前記主軸及び前記背面主軸の一方又は双方に設けられた、請求項1乃至のいずれか1項に記載のチャック装置と、を備える、
    ことを特徴とする旋盤。
  12. 外周部に形成されたテーパ面を備え、把持対象物を把持するコレットチャックと、
    前記押圧部材から前記押圧力を受けることで、前記コレットチャックの前記テーパ面に嵌合して前記コレットチャックを閉じさせるコレットスリーブと、を備えるコレットチャック装置をさらに備え、
    該コレットチャック装置と前記ダイヤフラムを備える前記チャック装置とが取り付けの互換性を有する、
    ことを特徴とする請求項10又は11に記載の旋盤。
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