JP5459565B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、出力特性およびサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池に関する。本出願は、2010年6月21日に出願された国際出願PCT/JP2010/060489に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
リチウムイオン二次電池は、正極および負極と、それら両電極間に介在された非水電解液とを備え、該電解液中のリチウムイオンが両電極間を行き来することにより充放電を行う。正極においてリチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する活物質としては、主としてリチウム含有遷移金属酸化物が使用される。正極材料に関する技術文献として特許文献1および2が挙げられる。
日本国特許出願公開2009−140787号公報 日本国特許出願公開2007−273448号公報
近年、リチウムイオン二次電池の利用拡大に伴い、用途によって様々な性能の向上が望まれている。例えば自動車等のように、ハイレートでの出入力が繰り返され得る用途では、より優れた出力特性や耐久性(サイクル特性等)が求められている。特に、常温だけでなく低温(例えば−10℃以下)においても出力特性に優れ、且つ比較的高温(例えば60℃程度)でも耐久性(サイクル特性等)が高いリチウムイオン二次電池が提供されれば有用である。
本発明は、優れた出力特性およびサイクル特性が同時に実現されたリチウムイオン二次電池を提供することを一つの目的とする。
本発明によると、正極と負極と非水電解液とを備えるリチウムイオン二次電池が提供される。その正極は、正極活物質として、層状構造(典型的には、岩塩型の結晶構造)を有するリチウム含有複合酸化物(典型的には、構成金属元素として遷移金属を含むリチウム遷移金属複合酸化物)を有する。該正極活物質は、ニッケル(Ni),コバルト(Co)およびマンガン(Mn)のうち少なくとも一種の金属元素Mを含み、さらにZr,Nb,Alのうち少なくとも一種の金属元素M’を含み、さらにWを含む。そして、前記正極活物質の粉末2gと純水100gとを攪拌して懸濁液を調製し、その懸濁液を濾過した場合において、前記濾過により得られた濾液について誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)により求められる当該濾液1g当たりのW溶出量が0.025mmol以下である。本発明の他の側面として、上記M,M’およびWを含み、上記W溶出量を満足する正極活物質が提供される。
本発明により提供される他の一つのリチウムイオン二次電池は、正極と負極と非水電解液とを備え、その正極は、正極活物質として、一般式(I):LiNiCoMnM’M”;で表されるリチウム含有複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)を含む。上記式(I)中、M’はZr,Nb,Alから選択される少なくとも一種であり、M”はWおよびMoの少なくともいずれかである。好ましい一態様では、M”が少なくともWを含む。M”の実質的に全部(原子数換算で95%以上、例えば98%以上であり、100%であってもよい。)がWであってもよい。また、xは、1.0≦x≦1.25を満たす。a,b,c,d,eは、a+b+c+d+e=1および0.001≦(d+e)≦0.02を満たす。a,b,cのうち少なくとも一つは0よりも大である。少なくともaが0より大である(換言すれば、少なくともNiを含む)リチウム含有複合酸化物が好ましい。また、dは0よりも大(すなわち、d>0)である。また、eは0よりも大(すなわち、e>0)である。このリチウムイオン二次電池は、さらに、上記正極活物質の粉末2gと純水100gとを攪拌して懸濁液を調製し、その懸濁液を濾過した場合において、前記濾過により得られた濾液についてICP−MSにより求められる当該濾液1g当たりのM”溶出量が0.025mmol以下であることを特徴とする。ここに開示される技術における正極活物質の好ましい一態様では、M”が少なくともWを含み(例えば、M”の実質的に全部がWであり)、かつ、Wの溶出量が0.025mmol以下である。
かかるリチウムイオン二次電池は、上記正極活物質がM’とM”とを併せて上記所定量含み、且つ上記M”溶出量が0.025mmol/g以下であるという特性を有することから、常温(25℃)および−30℃程度の低温のいずれにおいても、反応抵抗が低く、出力特性に優れたものであり得る。同時に、比較的高温(60℃程度)でのハイレート充放電に対する耐久性(例えば、サイクル特性)にも優れたものであり得る。
上記一般式(I)において、M’は、好ましくはその実質的に全部がZr(ジルコニウム)である。また、M”は、好ましくはその実質的に全部がW(タングステン)である。上記一般式(I)において、xは、1.0≦x≦1.20(例えば0.05≦x≦1.20)であり得る。aは、0.1<a≦1(例えば0.3<a<0.9、好ましくは0.3<a<0.6)であり得る。bは、0≦b≦0.5(例えば0.1<b<0.4、好ましくは0.3<b<0.6)であり得る。cは、0≦c≦0.5(例えば0.1<c<0.4、好ましくは0.3<c<0.6)であり得る。また、ここに開示される技術は、上記一般式(I)に加えてさらに他の元素(例えば、Cr,Fe,V,Ti,Cu,Zn,Ga,In,Sn,La,Ce,Ca,MgおよびNaから選択される一種または二種以上)を含む平均組成で表されるリチウム含有複合酸化物を正極活物質として有するリチウムイオン二次電池にも適用され得る。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、その正極活物質層表面(典型的には正極シート表面)につき実施例中に記載される手順および条件で撮影されたSEM−EDX画像において(例えば、×1000程度の倍率で)、少なくともM”(例えばW)の元素分布に顕著な偏差(凝集塊等)が認められないものであり得る。M”およびM’(例えばZr)のいずれの元素分布にも顕著な偏差(凝集塊等)が認められないものが好ましい。
ここに開示される技術における正極活物質は、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の一次粒子が集まった二次粒子の形態をなすものであり得る。好ましい一態様では、該正極活物質に含まれるM”(例えばW)は、前記一次粒子の表面に偏って(すなわち、一次粒子の内部よりも表面に集中して)存在(分布)している。Wを含む正極活物質であって、そのWが上記リチウム遷移金属複合酸化物の一次粒子の表面に偏って分布しており、かつ、該正極活物質粒子の表面(ひいては、該正極活物質を用いてなる正極活物質層の表面)においてはWの分布に顕著な偏差のない正極活物質が好ましい。かかる正極活物質は、上記W溶出量が少なく、高性能な電池を実現するものであり得る。
本発明によると、また、ここに開示されるいずれかの正極活物質(例えば、リチウムイオン二次電池用の正極活物質)の一製造方法が提供される。その製造方法は、前記Mと前記M’とを含む水溶液Aqを準備することを含む。また、Wを含む水溶液Aqを準備することを含む。また、前記水溶液Aqと前記水溶液Aqとをアルカリ性条件下で(例えば、pH11〜14に維持しつつ)混合して、前記M,前記M’およびWを含む水酸化物(前駆体)を析出させることを含む。上記製造方法は、さらに、前記水酸化物とリチウム化合物とを混合することと、その混合物を焼成して前記リチウム遷移金属複合酸化物を生成させることと、を含み得る。
本発明によると、また、ここに開示されるいずれかの正極活物の他の一製造方法が提供される。その製造方法は:
(A)pH11〜14の塩基性水溶液に、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩、およびM’含有塩をそれぞれ所定濃度で含む水溶液と、M”含有塩を所定濃度で含む水溶液とを、所望の速度で添加して反応混合液を調製し、当該混合液を攪拌させる湿式混合によって、一般式(II):NiCoMnM’M”(OH)2+α;で表される前駆体(ii)を調製すること;および
(B)上記前駆体(ii)とリチウム塩との混合物を焼成して上記一般式(I)で表されるリチウム含有複合酸化物(i)を調製すること;
を包含する。上記式(II)中、M’はZr,Nb,Alから選択される少なくとも一種である。M”はWおよびMoの少なくともいずれかである。好ましい一態様では、M”が少なくともWを含む。M”の実質的に全部(原子数換算で95%以上、例えば98%以上であり、100%であってもよい。)がWであってもよい。a,b,c,d,eは、a+b+c+d+e=1および0.001≦(d+e)≦0.02を満たす。a,b,cのうち少なくとも一つは0よりも大である。また、dは0よりも大(すなわち、d>0)である。また、eは0よりも大(すなわち、e>0)である。αは、0≦α≦0.5を満たす。かかる方法によると、上記正極活物質を好適に製造することができる。なお、d:eは、2:1〜1:10程度が好ましい。a:b:cは、特に制限されない。少なくともaが0より大である(換言すれば、少なくともNiを含む)ことが好ましい。
上記一般式(II)において、aは、0.1<a≦1(例えば0.3<a<0.9、好ましくは0.3<a<0.6)であり得る。bは、0≦b≦0.5(例えば0.1<b<0.4、好ましくは0.3<b<0.6)であり得る。cは、0≦c≦0.5(例えば0.1<c<0.4、好ましくは0.3<c<0.6)であり得る。
上述のように、ここに開示されるいずれかのリチウムイオン二次電池は、常温でも低温でも出力特性に優れ、且つ高温での耐久性も良好であるので、車両において使用される電源として好適である。したがって、本発明によると、ここに開示されるいずれかのリチウムイオン二次電池を備えた車両が提供される。特に、かかるリチウムイオン二次電池を動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)として備える車両(例えば自動車)が好ましい。
図1は、一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外形を模式的に示す斜視図である。 図2は、図1におけるII−II線断面図である。 図3は、本発明のリチウムイオン二次電池を備えた車両(自動車)を模式的に示す側面図である。 図4は、例3の正極活物質粒子のZr元素分布を示すSEM−EDX(エネルギー分散型X線分光法)による画像である。 図5は、例3の正極活物質粒子のW元素分布を示すSEM−EDX画像である。 図6は、例6の正極活物質粒子のZr元素分布を示すSEM−EDX画像である。 図7は、例6の正極活物質粒子のW元素分布を示すSEM−EDX画像である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好ましい一態様では、正極活物質として、上記一般式(I)で表されるリチウム含有複合酸化物(i)を含む。上記式(I)において、M’はZrであることが好ましい。M”は、Wであることが好ましい。M’とM”とのモル比(すなわち、d:e)は、2:1〜1:10程度が好ましい。a:b:cは、特に制限されない。
上記リチウムイオン二次電池は、さらに、前記正極活物質の粉末2gと純水100gとを攪拌して懸濁液を調製し、その懸濁液を濾過した場合において、前記濾過により得られた濾液についてICP−MSにより求められる当該濾液1g当たりのM”溶出量が0.025mmol以下であることを特徴とする。当該M”溶出量は、0.020mmol/g以下であることが好ましい。上記正極活物質粉末を純水に分散・攪拌した際の当該水へのM”溶出量がより少ないことは、M”元素が、上記正極活物質の結晶構造により多く組み込まれていることを示唆する。M”溶出量が多すぎる場合は、その正極活物質を用いてなるリチウムイオン二次電池において、出力特性およびサイクル特性の向上効果が十分に実現されないことがある。なお、M”溶出量の測定の際には、攪拌は、1〜6分間程度実施すればよい。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、また、その正極活物質層表面(典型的には正極シート表面)につき実施例中に記載される手順および条件で撮影されたSEM−EDX画像において、M’およびM”の元素分布に顕著な偏差(凝集塊等)が認められないものであり得る。
ここに開示される技術における正極活物質は、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の一次粒子が集まった二次粒子の形態をなすものであり得る。好ましい一態様では、該正極活物質がWを含み、そのWは、前記一次粒子の表面に偏って(すなわち、一次粒子の内部よりも表面に集中して)存在(分布)している。
ここで、Wが「一次粒子の表面に偏って存在する」とは、一次粒子の内部に比べて、一次粒子の表面(粒界)に集中してWが存在(分布)していることを意味する。したがって、Wが粒界のみに存在する(換言すれば、一次粒子の内部には全く存在しない)態様のみを意味するものではない。Wが一次粒子の表面に偏って存在していることは、例えば、活物質粒子(二次粒子)についてエネルギー分散型X線分光法(EDX;Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)を用いてWの分布をマッピングし、そのマッピング結果においてWが粒界に集中して存在する(一次粒子の内部に比べて粒界では面積当たりのW存在量が多い)様子が認められることにより把握することができる。上記粒界(一次粒子の表面)の位置は、例えば、正極活物質粒子の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により把握することができる。EDXを備えたTEMを好ましく使用し得る。
ここに開示される正極活物質(例えば、上記複合酸化物(i))の製造方法としては、上述のようにして求められるM”溶出量が0.025mmol/g以下となる適宜の方法を採用すればよい。
かかる製造方法の一態様では、上述のような湿式混合によって調製した上記前駆体(ii)を、適当なリチウム塩と混合し、所定の温度で焼成することにより形成することができる。ここで、湿式混合とは、初期pHが11〜14の塩基性水溶液に、当該初期pHを維持しながら、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩、およびM’含有塩を含む水溶液(以下、NiCoMnM’水溶液ということもある。)、ならびにM”含有塩を含む水溶液(以下、M”水溶液ということもある。)を、所望の速度で添加・混合・攪拌することをいう。このとき、反応液の温度は、20〜60℃の範囲とすることが好ましい。
上記複合酸化物(i)の形成に上述のような湿式混合方式によって得られた前駆体(ii)を用いると、上記M”溶出量が0.025mmol/g以下であるリチウム含有複合酸化物(i)が好適に形成され得る。かかる複合酸化物は、その結晶内部および/または結晶表面におけるM’元素およびM”元素の分布がより均一で、これら元素の偏析が抑制されたものであり得る。また、かかる複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、出力特性およびサイクル特性のいずれにも優れたものであり得る。上記前駆体(ii)とリチウム塩とを混合する際は、湿式混合および溶媒を用いない乾式混合のいずれを採用してもよい。簡便性およびコスト性の観点からは、乾式混合が好ましい。なお、この方法によって製造された正極活物質、および該方法により製造された正極活物質を主成分として含む正極を備えたリチウムイオン二次電池、のいずれも本発明の範囲に含まれる。
上記塩基性水溶液としては、強塩基(アルカリ金属の水酸化物等)および弱塩基(アンモニア等)を含み、所定量のNiCoMnM’水溶液およびM”水溶液を添加した場合において、液温25℃でのpHが11〜14程度に維持され、且つ上記前駆体(ii)の生成を阻害しないものが、好ましく使用され得る。典型的には、水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水との混合溶液を用いる。該混合溶液は、pHが11〜14の範囲(例えば、pH12程度)であり、アンモニア濃度が3〜25g/Lとなるように調製することが好ましい。
上記塩基性水溶液に上記NiCoMnM’水溶液およびM”水溶液を添加して反応液を形成し、上記前駆体(ii)の生成反応を進行させる間、該反応液のアンモニア濃度は3〜25g/L程度に維持されることが好ましい。
上記NiCoMnM’水溶液は、所望のニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩、およびM’含有塩を、それぞれ所定量を水性溶媒に溶解させて調製することができる。これら塩を水性溶媒に添加する順番は特に制限されない。また、各塩の水溶液を混合して調製してもよい。あるいは、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩を含む水溶液に、M’含有塩の水溶液を混合してもよい。これら金属塩(上記ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩、M’含有塩)のアニオンは、それぞれ該塩が所望の水溶性となるように選択すればよい。例えば、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン等であり得る。すなわち、上記金属塩は、それぞれ、ニッケル、コバルト、マンガン、M’の硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩等であり得る。これら金属塩のアニオンは、全てまたは一部が同じであってもよく、互いに異なってもよい。これら塩は、それぞれ水和物等の溶媒和物であってもよい。これら金属塩の添加順は特に制限されない。NiCoMnM’水溶液の濃度は、遷移金属全て(Ni,Co,Mn,M’)の合計が1〜2.2mol/L程度であることが好ましい。
上記M”水溶液は、同様に、所定量のM”含有塩を水性溶媒に溶解させて調製することができる。上記M”含有塩としては、典型的には、M”を中心元素とするオキソ酸(タングステン酸、モリブデン酸等)の塩を用いる。M”含有塩に含まれるカチオンは、該塩が水溶性となるように選択すればよい。例えば、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等であり得る。例えば、パラタングステン酸アンモニウムが好ましく使用され得る。M”含有塩は、水和物等の溶媒和物であってもよい。M”水溶液の濃度は、M”元素基準で0.01〜1mol/L程度であることが好ましい。
上記NiCoMnM’水溶液および上記M”水溶液を調製する際に使用する水性溶媒は、典型的には水であり、使用する各塩の溶解性によっては溶解性を向上させる試薬(酸、塩基等)を含む水を用いてもよい。例えば、M’がNbである場合、適当な濃度の酸(シュウ酸等)を含む水を用いることが好ましい。かかる態様では、例えば、Ni塩、Co塩、Mn塩の水溶液に、Nb塩を含む酸性水溶液を添加してNiCoMnM’水溶液を調製してもよい。
上記Ni塩、Co塩、Mn塩、M’含有塩、M”含有塩の使用量は、上記式(I)におけるa,b,c,d,eが所望の比となるよう、Ni,Co,Mn,M’,M”のモル比を選択し、それに基づき適宜決定すればよい。
上記複合酸化物(i)の製造において、例えば、M’含有塩の水溶液およびM”含有塩(典型的にはM”オキソ酸の塩)の水溶液を単純に混合すると、M’およびM”を含む塩(例えば、M’のカチオンを含むM”オキソ酸塩)が析出し得る。また、M’含有塩の代わりにM”含有塩を、Ni塩、Co塩、Mn塩とともに水に溶解すると、Ni,Co,Mn,M”を含む塩(例えば、Ni,Co,Mnのカチオンを含むM”オキソ酸塩)が析出し得る。NiCoMnM’水溶液(典型的には酸性溶液)と、M”水溶液(例えばW水溶液)とを別々の溶液として用意し、これらをアルカリ性条件下で混合することにより、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶表面(一次粒子の表面、換言すれば粒界)に偏ってM”(例えばW)が分布した正極活物質の製造に適した水酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物の前駆体)を得ることができる。また、例えば、従来の方法により製造されたNi,Co,Mnを含む複合水酸化物と、M’含有塩およびM”含有塩を乾式混合(溶媒を用いず、粉末状固体のまま混合)した後、得られた混合物を焼成した場合、M’および/またはM”の分布が不均一となり得る。
上記の塩基性水溶液、NiCoMnM’水溶液、M”水溶液を、pH制御の下、所定の速度で混合して析出させた上記前駆体(ii)は、晶析終了後、水洗・濾過して乾燥させ、所望の粒径を有する粒子状に調製すればよい。該前駆体(ii)は、温度100〜300℃の大気雰囲気中で所定時間(例えば5〜24時間)加熱した後、次の工程に供することが好ましい。
上記複合酸化物(i)は、上記前駆体(ii)と適当なリチウム塩との混合物を、典型的には空気中で焼成することにより形成することができる。上記リチウム塩としては、リチウム複合酸化物の形成に使用される一般的なリチウム塩を特に制限なく使用することができる。具体的には、炭酸リチウム、水酸化リチウム等が例示される。これらリチウム塩は、一種のみを単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。上記前駆体(ii)と上記リチウム塩との混合比は、上記式(I)における(a+b+c+d+e):xが所望の比となるように、上記前駆体(ii)に含まれる全遷移金属の合計モル数に対するリチウム塩のモル数を選択し、それに基づき適宜決定すればよい。
焼成温度は、凡そ700〜1000℃の範囲とすることが好ましい。焼成は、同じ温度で一度に行ってもよく、異なる温度で段階的に行ってもよい。焼成時間は、適宜選択することができる。例えば、700〜800℃程度で1〜12時間程度焼成した後、800〜1000℃程度で2〜24時間程度焼成することができる。
このようにして得られたリチウム含有複合酸化物(i)は、粉砕した後必要に応じて所望の粒径に篩分して用いるとよい。正極活物質としての複合酸化物(i)の平均粒径は、通常、3μm〜7μm程度であることが好ましい。比表面積は、0.5〜1.8m/gの範囲にあることが好ましい。タップ密度は、1〜2.2g/cmの範囲にあることが好ましい。
本発明によると、ここに開示されるいずれかの正極活物質を有する正極を備えることを特徴とする、リチウムイオン二次電池が提供される。かかるリチウムイオン二次電池の一実施形態について、電極体および非水電解液を角型形状の電池ケースに収容した構成のリチウムイオン二次電池100(図1)を例にして詳細に説明するが、ここに開示される技術はかかる実施形態に限定されない。すなわち、ここに開示されるリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されず、その電池ケース、電極体等は、用途や容量に応じて、素材、形状、大きさ等を適宜選択することができる。例えば、電池ケースは、直方体状、扁平形状、円筒形状等であり得る。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
リチウムイオン二次電池100は、図1および図2に示されるように、捲回電極体20を、図示しない電解液とともに、該電極体20の形状に対応した扁平な箱状の電池ケース10の開口部12より内部に収容し、該ケース10の開口部12を蓋体14で塞ぐことによって構築することができる。また、蓋体14には、外部接続用の正極端子38および負極端子48が、それら端子の一部が蓋体14の表面側に突出するように設けられている。
上記電極体20は、長尺シート状の正極集電体32の表面に正極活物質層34が形成された正極シート30と、長尺シート状の負極集電体42の表面に負極活物質層44が形成された負極シート40とを、2枚の長尺シート状のセパレータ50と共に重ね合わせて捲回し、得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に成形されている。
正極シート30は、その長手方向に沿う一方の端部において、正極活物質層34が設けられておらず(あるいは除去されて)、正極集電体32が露出するよう形成されている。同様に、捲回される負極シート40は、その長手方向に沿う一方の端部において、負極活物質層44が設けられておらず(あるいは除去されて)、負極集電体42が露出するように形成されている。そして、正極集電体32の該露出端部に正極端子38が、負極集電体42の該露出端部には負極端子48がそれぞれ接合され、上記扁平形状に形成された捲回電極体20の正極シート30または負極シート40と電気的に接続されている。正負極端子38,48と正負極集電体32,42とは、例えば超音波溶接、抵抗溶接等によりそれぞれ接合することができる。
上記正極シート30は、例えば、ここに開示されるいずれかの正極活物質を、必要に応じて導電材、結着剤(バインダ)等とともに適当な溶媒に分散させたペースト状またはスラリー状の組成物(正極合材)を正極集電体32に付与し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製することができる。
導電材としては、カーボン粉末やカーボンファイバー等の導電性粉末材料が好ましく用いられる。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、グラファイト粉末等が好ましい。導電材は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。正極活物質層に含まれる導電材の量は、適宜選択すればよく、例えば、5〜12質量%程度とすることができる。
結着剤としては、例えば、水に溶解する水溶性ポリマーや、水に分散するポリマー、非水溶媒(有機溶媒)に溶解するポリマー等から適宜選択して用いることができる。また、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
水溶性ポリマーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。
水分散性ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)、アラビアゴム等のゴム類等が挙げられる。
非水溶媒(有機溶媒)に溶解するポリマーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(PEO−PPO)等が挙げられる。
正極活物質層に含まれる結着剤の量は、適宜選択すればよく、例えば、1.5〜10質量%程度とすることができる。
正極集電体32には、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金を用いることができる。正極集電体32の形状は、リチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。本実施形態ではシート状のアルミニウム製の正極集電体32が用いられ、捲回電極体20を備えるリチウムイオン二次電池100に好ましく使用され得る。かかる実施形態では、例えば、厚みが10μm〜30μm程度のアルミニウムシートが好ましく使用され得る。
負極シート40は、例えば、負極活物質を、必要に応じて結着剤(バインダ)等とともに適当な溶媒に分散させたペーストまたはスラリー状の組成物(負極合材)を負極集電体42に付与し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製することができる。
負極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。例えば、好適な負極活物質としてカーボン粒子が挙げられる。少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料(カーボン粒子)が好ましく用いられる。いわゆる黒鉛質のもの(グラファイト)、難黒鉛化炭素質のもの(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質のもの(ソフトカーボン)、これらを組み合わせた構造を有するもののいずれの炭素材料も好適に使用され得る。中でも特に、天然黒鉛等の黒鉛粒子を好ましく使用することができる。
結着剤には、上述の正極と同様のものを、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。負極活物質層に含まれる結着剤の量は、適宜選択すればよく、例えば1.5〜10質量%程度とすることができる。
負極集電体42としては、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、銅または銅を主成分とする合金を用いることができる。また、負極集電体42の形状は、リチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。本実施形態ではシート状の銅製の負極集電体42が用いられ、捲回電極体20を備えるリチウムイオン二次電池100に好ましく使用され得る。かかる実施形態では、例えば、厚みが6μm〜30μm程度の銅製シートを好ましく使用され得る。
上記非水電解液は、非水溶媒(有機溶媒)中に電解質(支持塩)を含む。該電解質としては、一般的なリチウムイオン二次電池に電解質として用いられるリチウム塩を、適宜選択して使用することができる。かかるリチウム塩として、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiCFSO等が例示される。これらリチウム塩は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい例として、LiPFが挙げられる。上記非水電解液は、例えば、電解質濃度が0.7〜1.3mol/Lの範囲内となるように調製することが好ましい。
上記非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる有機溶媒を適宜選択して使用することができる。特に好ましい非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。これら有機溶媒は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、ECおよびDECの混合溶媒を好ましく使用することができる。
上記セパレータ50は、正極シート30および負極シート40の間に介在する層であって、典型的にはシート状をなし、正極シート30の正極活物質層34と、負極シート40の負極活物質層44にそれぞれ接するように配置される。そして、正極シート30と負極シート40における両電極活物質層34,44の接触に伴う短絡防止や、該セパレータ50の空孔内に上記電解液を含浸させることにより電極間の伝導パス(導電経路)を形成する役割を担っている。かかるセパレータ50としては、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、樹脂からなる多孔性シート(微多孔質樹脂シート)を好ましく用いることができる。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン等の多孔質ポリオレフィン系樹脂シートが好ましい。特に、PEシート、PPシート、PE層とPP層とが積層された多層構造シート、等を好適に使用し得る。セパレータの厚みは、例えば、凡そ10μm〜40μmの範囲内で設定することが好ましい。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
<例1>
攪拌装置および窒素導入管を備えた反応容器に、その容量の半分程度の水を入れ、攪拌しながら40℃に加熱した。該反応容器を窒素置換した後、窒素気流下、3.25%水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水とを適量ずつ加え、液温25℃におけるpHが12.0、液相のアンモニア濃度が20g/Lとなるように調整して、塩基性水溶液を得た。なお、反応容器内の酸素濃度は2.0%程度であった。
硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ジルコニウムを、これらの元素モル比Ni:Co:Mn:Zrが0.33:0.33:0.33:0.005となり、これら遷移金属の合計濃度が1.8mol/Lとなるよう、水に溶解させてNiCoMnZr水溶液を調製した。
パラタングステン酸アンモニウムを水に溶解させ、タングステン(W)濃度が0.05mol/LのW水溶液を調製した。
上記で得られたNiCoMnZr水溶液およびW水溶液を、上記塩基性水溶液に、pHを12.0に維持しながら添加・混合して、元素モル比Ni:Co:Mn:Zr:Wが0.33:0.33:0.33:0.005:0.005の水酸化物(Ni0.33Co0.33Mn0.33Zr0.0050.005(OH)2+α(0≦α≦0.5);前駆体)を得た。上記水酸化物粒子を、温度150℃の大気雰囲気中で12時間加熱した。
上記水酸化物中の全遷移金属(すなわち、Ni,Co,Mn,Zr,W)のモル数の合計をMとして、該Mに対するリチウムのモル比(Li/M)が1.15となるように、炭酸リチウムを秤量し、上記加熱処理後の水酸化物粒子と混合した。得られた混合物を、酸素21体積%の空気中にて、760℃で4時間焼成した後、950℃で10時間焼成し、リチウム含有複合酸化物(Li1.15Ni0.33Co0.33Mn0.33Zr0.0050.005)を得た。これを粉砕・篩分して、平均粒径3.9μm,比表面積0.98m/g,タップ密度1.78g/cmの粉末状正極活物質を得た。
上記粉末状正極活物質、アセチレンブラック(導電材)、PVDFを、該正極活物質:導電材:PVDFが89:8:3の割合となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えてペースト状の混合物を得た。このペースト状混合物を、厚さ15μmの長尺状アルミニウム箔の各面に、付与量が両面合計で12.8mg/cmとなるように塗付した。これを乾燥後圧延して総厚65μmの正極シートを得た。
天然黒鉛とSBRとCMCとを、質量比98:1:1で混合し、イオン交換水を加えてペースト状の混合物を得た。この混合物を、厚さ10μmの長尺状銅箔の各面に、付与量が両面合計で8mg/cmとなるように塗付した。これを乾燥後圧延して総厚68μmの負極シートを得た。
上記正極シートと上記負極シートとを、二枚のセパレータ(厚さ20μmの長尺状多孔質ポリエチレンシート)ととともに長手方向に捲回して電極体を作製した。この電極体を、1mol/LのLiPF溶液(EC,DMC,EMCの混合溶媒(体積比1:1:1))とともに円筒型容器に収容して、18650型(直径18mm,高さ65mm)リチウムイオン二次電池を得た。
<例2>
元素モル比Ni:Co:Mn:Zr:Wを0.33:0.33:0.33:0.002:0.005とした他は例1と同様にして、平均粒径4.2μm,比表面積1.15m/gの粉末状正極活物質を得た。この正極活物質を用いた他は例1と同様にして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。
<例3>
元素モル比Ni:Co:Mn:Zr:Wを0.33:0.33:0.33:0.005:0.008とした他は例1と同様にして、平均粒径4.0μm,比表面積1.08m/gの粉末状正極活物質を得た。この正極活物質を用いた他は例1と同様にして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。
<例4>
元素モル比Ni:Co:Mn:Zr:Wを0.33:0.33:0.33:0.005:0.01とした他は例1と同様にして、平均粒径4.1μm,比表面積1.13m/gの粉末状正極活物質を得た。この正極活物質を用いた他は例1と同様にして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。
<例5>
攪拌装置および窒素導入管を備えた反応容器に、その容量の半分程度の水を入れ、攪拌しながら40℃に加熱した。該反応容器を窒素置換した後、窒素気流下、3.25%水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水とを適量ずつ加え、液温25℃におけるpHが12.0、液相のアンモニア濃度が20g/Lとなるように調整して、塩基性水溶液を得た。なお、反応容器内の酸素濃度は2.0%程度であった。
硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンを、これらの元素モル比Ni:Co:Mnが0.33:0.33:0.33となり、Ni,Co,Mnの合計濃度が1.8mol/Lとなるよう、上記反応容器中の水に加え、攪拌して溶解させた。析出した生成物を分離・水洗・乾燥して、NiCoMnの複合水酸化物(Ni0.33Co0.33Mn0.33(OH))を得た。
NiCoMn複合水酸化物と、炭酸リチウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン(VI)を、元素モル比Li:Ni:Co:Mn:Zr:Wが1.15:0.33:0.33:0.33:0.005:0.005となるよう、溶媒を用いず、乾式混合した。この混合物を、酸素21体積%の空気中にて、760℃で4時間焼成した後、950℃で10時間焼成し、リチウム含有複合酸化物を得た。これを粉砕・篩分して、平均粒径3.8μm,比表面積1.05m/g,タップ密度1.72g/cmの粉末正極活物質を得た。この正極活物質を用いた他は例1と同様にして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。
<例6>
元素モル比Li:Ni:Co:Mn:Zr:Wを1.15:0.33:0.33:0.33:0.005:0.008とした他は例5と同様にして、平均粒径4.0μm,比表面積0.99m/gの粉末状正極活物質を得た。この正極活物質を用いた他は例1と同様にして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。
[タングステン溶出量測定]
各例の粉末状正極活物質につき、上述した方法に従って、W溶出量(mmol/g)を測定した。ICP−MS装置としては、島津製作所社製の型式「ICPM8500」を使用した。それらの結果を、表1に示す。
[コンディショニング処理]
各電池に対して、1/10C(1Cは、1時間で満充放電可能な電流値)のレートで3時間の定電流(CC)充電を行い、次いで、1/3Cのレートで4.1Vまで充電する操作と、1/3Cのレートで3Vまで放電させる操作とを3回繰り返した。
コンディショニングした各電池に対し、以下の測定を行った。それらの結果を、正極活物質の特徴およびW溶出量と併せて表1に示す。
[初期放電容量測定]
両端子間電圧4.1Vに初期充電させた各電池を、温度25℃にて、1Cのレートで両端子間電圧が3VとなるまでCC放電させ、次いで同電圧で2時間定電圧(CV)放電させた。10分休止後、1Cのレートで両端子間電圧が4.1VとなるまでCC充電し、次いで同電圧で2.5時間CV充電した。10分休止後、0.5Cのレートで両端子間の電圧が3VとなるまでCC放電させ、次いで同電圧で2時間CV放電させ、このCCCV放電時に測定された総放電容量を初期容量とした。
[25℃反応抵抗測定]
SOC60%に調整した各電池に対し、温度25℃、周波数0.001Hz〜10000Hz、印加電圧10mVの条件にて、交流インピーダンス測定を行い、Nyquistプロットの等価回路フィッティングにより25℃反応抵抗(mΩ)を求めた。
[−30℃反応抵抗測定]
SOC40%に調整した各電池に対し、測定温度を−30℃とした他は上記と同様の条件にて、−30℃反応抵抗(mΩ)を求めた。
[高温サイクル試験]
SOC100%に調整した各電池を、温度60℃にて、1000サイクルの充放電に供した。1サイクルは、4Cのレートで電圧が3VとなるまでCC放電させる操作と、次いで4Cのレートで電圧が4.1VとなるまでCC充電する操作とした。1000サイクル完了時点において、4Cのレートで電圧が3VとなるまでCC放電させ、このときの放電容量を測定した。初期容量に対するサイクル終了後の放電容量の百分率を、容量維持率として求めた。
[SEM−EDX分析]
SEM−EDX分析用に別途構築し初期充電させた各電池を、両端子間電圧が3Vとなるまで1Cのレートで放電させ、次いで当該電圧にて3時間放電させた。放電後の該電池を解体し、正極シートを取り出して、炭酸ジエチル(DEC)により洗浄した。SEM(−EDX装置(SEM:日立ハイテクノロジーズ社製の型式「S−5500」;EDX:EDAX社製の型式「Genesis4000」)を用いて、×1000の倍率にてこの正極板表面の画像を撮影した。それら画像のうち、例3の正極活物質粒子表面のZr元素分布を示す画像を図4に、W元素分布を示す画像を図5に示す。同様に、例7に係るZr元素分布を図6に、W元素分布を図7に示す。
表1に示されるとおり、正極活物質がZrおよびWを合計2mol%以下含み、且つW溶出量が0.025mmol/g以下である例1〜4の各電池は、正極活物質が同程度のZrおよびWを含み、W溶出量が0.025mmol/gを超える例5,6の電池と比べ、25℃および−30℃のいずれの温度においても反応抵抗がより低く、出力特性により優れるものであった。また、60℃におけるハイレート充放電サイクル後の容量維持率は、例1〜4の各電池は90%以上と高く、75%未満であった例5,6の電池と比べ、高温での耐久性に顕著な優位性が認められた。
なお、図4,5に代表されるように、例1〜4の正極活物質は、その粒子表面のSEM−EDX分析において、Zr元素およびW元素ともに偏析が認められず、これら元素が均一に分布していることがわかった。一方、図6,7に代表されるように、例5,6の正極活物質は、その粒子表面において、これら元素の偏析(凝集)が認められた。また、TEM−EDX分析を行ってWの分布をマッピングしたところ、例1〜4の正極活物質は、いずれも、複数の一次粒子が集まった二次粒子の形態であり、該一次粒子の表面に偏ってWが分布していることが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 車両
20 捲回電極体
30 正極シート
32 正極集電体
34 正極活物質層
38 正極端子
40 負極シート
42 負極集電体
44 負極活物質層
48 負極端子
50 セパレータ
100 リチウムイオン二次電池

Claims (8)

  1. 正極と負極と非水電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極は、正極活物質として、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を有し、
    前記正極活物質は、Ni,CoおよびMnのうち少なくとも一種の金属元素Mを含み、さらにZr,Nb,Alのうち少なくとも一種の金属元素M’を含み、さらにWを含み、
    前記正極活物質の粉末2gと純水100gとを攪拌して懸濁液を調製し、その懸濁液を濾過した場合において、前記濾過により得られた濾液について誘導結合プラズマ質量分析により求められる当該濾液1g当たりのW溶出量が0.025mmol以下である、リチウムイオン二次電池。
  2. 正極と負極と非水電解液とを備えるリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極は、正極活物質として、一般式(I):
    LiNiCoMnM’ (I)
    (ここで、M’はZr,Nb,Alから選択される少なくとも一種であり、xは、1.0≦x≦1.25を満たし、a,b,c,d,eは、a+b+c+d+e=1および0.001≦(d+e)≦0.02を満たし、a,b,cのうち少なくとも一つは0よりも大きく、d>0であり、e>0である。);
    で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    前記正極活物質の粉末2gと純水100gとを攪拌して懸濁液を調製し、その懸濁液を濾過した場合において、前記濾過により得られた濾液について誘導結合プラズマ質量分析により求められる当該濾液1g当たりのW溶出量が0.025mmol以下である、
    リチウムイオン二次電池。
  3. 前記M’がZrである、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記d:eが2:1〜1:10である、請求項2または3に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記正極活物質は、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の一次粒子が集まった二次粒子の形態をなし、
    該正極活物質に含まれるWは、前記一次粒子の表面に偏って存在している、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用の正極活物質を製造する方法であって:
    前記Mと前記M’とを含む水溶液Aqを準備すること;
    Wを含む水溶液Aqを準備すること;
    前記水溶液Aqと前記水溶液Aqとをアルカリ性条件下で混合して、前記M,前記M’およびWを含む水酸化物を析出させること;
    前記水酸化物とリチウム化合物とを混合すること;および、
    前記混合物を焼成して前記リチウム遷移金属複合酸化物を生成させること;
    を包含する、正極活物質製造方法。
  7. 請求項2から5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用の正極活物質を製造する方法であって:
    (A)pH11〜14の塩基性水溶液に、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩、およびM’含有塩をそれぞれ所定濃度で含む水溶液と、W含有塩を所定濃度で含む水溶液とを、所望の速度で添加して反応混合液を調製し、当該混合液を攪拌させる湿式混合によって、一般式(II):
    NiCoMnM’(OH)2+α (II)
    (ここで、M’はZr,Nb,Alから選択される少なくとも一種であり、a,b,c,d,eは、a+b+c+d+e=1および0.001≦(d+e)≦0.02を満たし、a,b,cのうち少なくとも一つは0よりも大きく、d>0であり、e>0であり、αは0≦α≦0.5を満たす。);で表される前駆体(ii)を調製すること;および
    (B)前記前駆体(ii)とリチウム塩との混合物を焼成して前記一般式(I)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物(i)を調製すること;
    を包含する、正極活物質製造方法。
  8. 請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池を備えるか、または、請求項6または7に記載の方法によって製造された正極活物質を含むリチウムイオン二次電池を備える、車両。
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