JP5459221B2 - 含フッ素アルコールおよび含フッ素単量体 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な含フッ素アルコールおよび含フッ素アルコールから誘導される含フッ素単量体、ならびに含フッ素単量体を重合して得られる新規な含フッ素重合体に関する。
半導体集積回路をはじめとする各種の電子部品は超微細加工が必要とされ、その加工技術にはレジストが広く用いられている。また、電子部品の多機能化、高密度化に伴い、形成されるレジストパターンの超微細化が求められている。
現状のレジストパターンを形成するフォトリソグラフィー技術としては、ArFエキシマレーザーにより発せられる波長193nmの紫外光を用いて露光するArFリソグラフィープロセスのほか、ArF露光装置における、縮小投影レンズとレジスト被膜を設けたウェハの間を、純水で満たす液浸露光技術とが検討されている(非特許文献1)。
また次世代技術として極端紫外光(EUV)リソグラフィープロセスの開発も急速に進んでいる。
たとえば、レジスト材料についても、波長193nmに対して透明な、従来のArFレジスト、つまり脂肪族環状構造を有する炭化水素系樹脂を主成分としたレジスト材料がそのまま検討されてきている。
また、一般的なレジストパターン形成法に使用できるレジスト材料や反射防止膜などの材料として、
Figure 0005459221
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基を表し、R2は直鎖または分岐を有してもよいアルキル基、環状構造を有するアルキル基、芳香環、またはそれらの複合置換基であって、その一部がフッ素化されていてもよい。R3は水素原子、及び分岐を含んでもよい炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族や脂肪環を有する環状体であって、酸素、カルボニル等の結合を含んでもよい。また、nは1〜2の整数を表す)で表される重合性単量体およびその重合体が記載されている(特許文献1)。
しかし、特許文献1ではR2はその一部がフッ素化されていてもよいという記載はあるものの、R2が−CF2−を主鎖中に含む具体的な単量体および重合体についてはそれらの製造の仕方、特性も含めまったく記載されていない。
また、特許文献2には、
Figure 0005459221
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状の1価の炭化水素基を示し、1価の炭化水素基の場合、構成する−CH2−が−O−または−C(=O)に置換されていてもよい。R3およびR4は独立に水素原子または炭素数1〜8の直鎖状、分岐状または環状の1価の炭化水素基)で示される含フッ素アルコール、さらにはこれをエステル化して、
Figure 0005459221
(式中、R1、R3およびR4は前記と同じ;Rは、
CH2=CR5−(C=O)−O−、
(式中、R5は水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基)
または
Figure 0005459221
(式中、Wは−CH2−または−O−;k1は0または1;R6は水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基)で示されるエステル基を有する含フッ素単量体、およびこの単量体を(共)重合して得られる高分子化合物が、レジスト材料として有用であることが開示されている。
しかし、
Figure 0005459221
(式中、R’は酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の2価の炭素数1〜8の炭化水素基;R1は前記と同じ)で示される構造のものは記載されていない。
特開2003−040840号公報 特開2007−204385号公報
"Immersion Optical Lithography at 193nm"(7/11/2003)Future Fab Intl. Volume 15 by Bruce W. Smith, Rochester Institute of Technology
本発明は、フッ素含有量をより大きくすることにより、各種レジスト材料や各種光学材料として有用な含フッ素重合体、それを製造するための含フッ素単量体、含フッ素アルコールを提供することを目的とする。
すなわち本発明は、
式(3):
Figure 0005459221
(式中、R1は酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の2価の炭素数1〜8の炭化水素基;R2はラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有し、かつ酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の1価の炭素数2〜20の不飽和の炭化水素基;R3は酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜20の炭化水素基、または水素原子;Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、いずれも、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜6の含フッ素炭化水素基または炭素数6〜10の含フッ素アリール基)で示される含フッ素単量体に関する。
含フッ素単量体としては、式(4):
Figure 0005459221
(式中、R4は水素原子、ハロゲン原子、CH3、CF3またはCCl3;R1、R3、Rf1およびRf2は式(3)と同じ)で示される含フッ素単量体、または
式(5):
Figure 0005459221
(式中、WはCH2または酸素原子;nは0〜2の整数;Zは単結合または酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の2価の炭素数1〜3の炭化水素基;R1、R3、Rf1およびRf2は式(3)と同じ)で示される含フッ素単量体
が好ましい。
また本発明は、式(I):
−(M)−(N)− (I)
(式中、Mは式(3)〜(5)のいずれかに記載の含フッ素単量体(m)由来の構造単位、Nは含フッ素単量体(m)と共重合可能な単量体(n)に由来する構造単位)
で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%、構造単位Nを0〜99.9モル%含む含フッ素重合体にも関する。
本発明はまた、式(1):
Figure 0005459221
(式中、R1は酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の2価の炭素数1〜8の炭化水素基;Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、いずれも、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜6の含フッ素炭化水素基または炭素数6〜10の含フッ素アリール基)で示される含フッ素アルコールに関する。
さらに本発明は、式(2):
Figure 0005459221
(式中、Rは1価の有機基;R1は酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の2価の炭素数1〜8の炭化水素基;Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、いずれも、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜6の含フッ素炭化水素基または炭素数6〜10の含フッ素アリール基)で示される含フッ素アルコールを脱アルキル化することを特徴とする式(1):
Figure 0005459221
(式中、R1、Rf1およびRf2は式(2)と同じ)で示される含フッ素アルコールの製造方法に関する。
本発明によれば、レジスト材料や各種光学材料として有用なフッ素含量の高い含フッ素化合物を提供することができる。
また、R3が水素原子の場合、各種リソグラフィー用レジスト材料としてはフルオロプロパノール基の標準現像液への溶解性が向上し、液浸レジスト材料としては表面の静的・動的な撥水性が向上し、またEUVリソグラフィーにおいては感度向上のためにフッ素が光を吸収する性質、赤外領域から真空紫外領域までの透明性と低屈折率性が向上する。
本発明の重合性含フッ素単量体は、
式(3):
Figure 0005459221
(式中、R1は酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の2価の炭素数1〜8の炭化水素基;R2はラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有し、かつ酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の1価の炭素数2〜20の不飽和の炭化水素基;R3は酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜20の炭化水素基、または水素原子;Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、いずれも、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜6の含フッ素炭化水素基または炭素数6〜10の含フッ素アリール基)で示される含フッ素単量体である。
Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、いずれも、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜6の含フッ素炭化水素基または炭素数6〜10の含フッ素アリール基である。具体的には、−CF3、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613などのパーフルオロアルキル基;−C65などのパーフルオロアリール基があげられる。これらのなかでも、溶剤やアルカリ水溶液への溶解性と表面撥水性とのバランスが良好な点から、−CF3、−C25が好ましい。
1としては、たとえば直鎖状のアルキレン基、分岐鎖状のアルキレン基、環状の飽和の2価の炭化水素基、酸素原子を含有する(たとえば−O−または−(C=O)−の形)直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基、酸素原子を含有する(たとえば−O−または−(C=O)−の形)環状の2価の炭化水素基、これらの炭化水素基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されている2価の含フッ素炭化水素基などがあげられる。
直鎖状のアルキレン基としては、−CH2−、−C24−、−C36−、−C48−、−C510−、−C612−などがあげられ、適度な脂溶性が得られる点から、−CH2−、−C24−が好ましい。
分岐鎖状のアルキレン基としては、−CH(CH3)−、−CH(C25)−、−CH(C37)−、−CH(CH(CH32)−、−CH(C49)−、−CH(CH(CH3)C25)−、−CH(C(CH33)−などがあげられ、溶解性を損なわずかさ密度を向上し屈折率が低くなる点から−CH(CH3)−、−CH(C25)−が好ましい。
環状の飽和の2価の炭化水素基としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナンなどの環構造を有する2価の脂環式炭化水素基があげられ、これらの環構造は直接またはアルキレン鎖を介して結合していてもよい。ドライエッチング耐性が良好な点からシクロヘキサン環、ノルボルナン環を有するものが好ましい。
酸素原子を含有する直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基としては、−(CH2O)n−CH2−、−(C24−O)n−CH2−O−、−C24−(O−C24n−(nは1〜3の整数)などがあげられ、非晶性が良好な点から、−C24−(O−C24n−が好ましい。
酸素原子を含有する環状の2価の炭化水素基としては、グリシジル、オキセタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどに由来する2価の基があげられ、これらは直接またはアルキレン鎖を介して結合していてもよい。架橋性のアルコール性水酸基に変換しやすい点から、グリシジル、オキセタンが好ましい。酸素原子は、−O−(エーテル結合)または−(C=O)−(カルボニル)の形で含まれるのが、溶剤溶解性が良好な点から好ましい。
2価の含フッ素炭化水素基としては、−CF2−、−C24−、−C2HF−、−C36−、−C3HF5−、−C48−などがあげられ、溶解性と屈折率のバランスが良好な点から、−CF2−、−C24−が好ましい。
2はラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有し、かつ酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の1価の炭素数2〜20の不飽和の炭化水素基である。
ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有し、かつ酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状または分岐鎖状の1価の炭素数2〜5の不飽和の炭化水素基としては、たとえばつぎの基が例示できる。
CX12=CX3−、
CX12=CX3−CH2−、
CX12=CX3−(C=O)−、
(式中、X1、X2およびX3は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、ハロゲン原子、CH3、CF3またはCCl3
などがあげられる。
これらのうち自己重合性が良好な点から、
CX12=CX3−CH2−、
CX12=CX3−(C=O)−、
が好ましく、特に、他のアクリル系モノマーとの共重合性が良好な点から、
CH2=CR4−(C=O)−
(R4は水素原子、ハロゲン原子、CH3、CF3またはCCl3
が好ましい。
ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有し、かつ酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい環状の1価の炭素数2〜20の不飽和の炭化水素基としては、シクロヘキセン、シクロペンテンなどのほか、たとえばつぎの基が例示できる。
Figure 0005459221
(式中、WはCH2または酸素原子;nは0〜2の整数;Zは単結合または酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の2価の炭素数1〜3の炭化水素基)で示されるノルボルネン系の炭化水素基、ノルボルネン2量体があげられる。
これらのうち、メタセシス反応性が良好な点から、
Figure 0005459221
ノルボルネン、ノルボルネン2量体が好ましく、特に、開環メタセシス反応が行える点から、WがCH2でnが1のノルボルネン2量体が好ましい。
3は酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜20の炭化水素基、または水素原子である。
酸素原子は、−O−(エーテル結合)または−(C=O)−(カルボニル)の形で含まれるのが、酸触媒での脱離性が良好な点から好ましい。
酸素原子を含んでいてもよい直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキル基としては、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、
Figure 0005459221
などがあげられる。
酸素原子を含んでいてもよい直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜20の含フッ素アルキル基としては、たとえば
Figure 0005459221
などがあげられる。これらのうち、溶解性を損なわずに撥水ならびに撥液性が向上できる点から、
Figure 0005459221
が好ましい。
環状の1価の炭化水素基としては、フッ素原子を含んでいてもよい芳香族環構造や脂肪族環構造を有する炭素数3〜20の炭化水素基などがあげられ、これらは酸素原子、窒素原子、硫黄原子を環構造の内外に含んでいてもよい。
具体例としては、たとえば
Figure 0005459221
などがあげられる。これらのうち、真空紫外領域で透明性が高くドライエッチング耐性が良好な点から、
Figure 0005459221
が好ましい。
3は、特に好ましくは、得られる重合体の現像液への溶解性が特に優れる点から水素原子である。また、R3が水素原子の場合、pKaの低いアルコール性水酸基となることで、基材密着性や各種汎用溶剤への溶解性などの向上が期待できる。
式(3)の含フッ素単量体は、たとえば、式(6):
Figure 0005459221
(式中、R1、R3、Rf1およびRf2は式(3)と同じ)で示される含フッ素アルコールと、不飽和カルボン酸、たとえばR10COOH(式中、R10はラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有し、かつ酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の1価の炭素数2〜19の不飽和の炭化水素基)またはその酸ハライドもしくはアルキルエステルとを反応させることにより製造できる。
不飽和カルボン酸としては、含フッ素アルコールとエステル化反応を生じてR2O−を形成し得るものであればよい。具体例は上記のR2の説明のうち、R10C(=O)−を与えるものが好ましい例示と共にあげられる。
なかでも、
CH2=CR4−(C=O)−OH
(R4は水素原子、ハロゲン原子、CH3、CF3またはCCl3)、
または
Figure 0005459221
(式中、WはCH2または酸素原子;nは0〜2の整数)で示されるノルボルネン系のカルボン酸が好ましく例示できる。
反応条件などは、たとえば特許文献1や実験化学講座第5版16巻P35〜38、P42〜43などに記載の反応条件が採用できる。
本発明はまた、式(I):
−(M)−(N)− (I)
(式中、Mは、式(3)、さらには式(4)または式(5)で示される本発明の含フッ素単量体(m)由来の構造単位;Nは含フッ素単量体(m)と共重合可能な単量体(n)由来の構造単位)で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%、構造単位Nを0〜99.9モル%含む含フッ素重合体にも関する。
本発明の重合体は重合性単量体(m)の単独重合体でもよく、共重合可能な単量体(n)の1種または2種以上との共重合体でもよい。
共重合可能な単量体(n)としては、使用する用途、目的に合わせて付加する機能によって適宜選択すればよい。
たとえば液浸レジスト積層体の保護層用材料として用いる場合、共重合可能な単量体(n)は、特開2007−204385号公報に記載された式(22)で示される単量体(ただし、R5は水素原子、ハロゲン原子、CH3、CF3またはCCl3)が例示でき、なかでも
Figure 0005459221
Figure 0005459221
で示される単量体、または
Figure 0005459221
で示される構造単位を与える単量体が好ましく例示できる。特に本発明で好ましい具体例としては、
Figure 0005459221
Figure 0005459221
があげられる。
さらにはR5がFである化合物が重合性が良好な点から好ましくあげられる。
たとえば液浸レジスト積層体のレジスト層用材料として用いる場合は、共重合可能な単量体(n)は、特開2007−204385号公報に記載された式(19)〜(21)で示される単量体(ただし、R5は水素原子、ハロゲン原子、CH3、CF3またはCCl3)が例示でき、なかでも
Figure 0005459221
で示される単量体、または
Figure 0005459221
Figure 0005459221
Figure 0005459221
Figure 0005459221
で示される構造単位を与える単量体がその具体例と共に好ましく例示できる。特に本発明で好ましい具体例としては、
Figure 0005459221
がドライエッチング耐性が良好な点からあげられる。
共重合割合は、構造単位Mを10モル%以上、さらには30モル%以上含むことが、溶解性を良好に保つことから好ましい。構造単位Nの上限は99.9モル%である。
重量平均分子量は、1000〜1000000の範囲が好ましく、溶解性の点から500000以下、さらには300000以下、さらには100000以下が好ましい。一方、下限は成膜性の点から2000、さらには4000が好ましい。
重合は、通常のラジカル重合法、イオン重合法、ヨウ素移動重合法、メタセシス重合などで行うことができる。
任意の構造単位である構造単位Nを与える単量体(n)としては、構造単位Mを与える単量体(m)、または構造単位Mに変換できる構造単位を与える単量体、たとえばα−フルオロアクリル酸のヘキサフルオロアルコールエステルと共重合可能な単量体であればよく、たとえば国際公開第02/18457号パンフレットにおいて、構造単位Aを与える単量体として記載されているものがあげられる。
具体的には、以下の単量体が好ましく例示できる。
(1)官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
これらは、含フッ素重合体(I)およびその硬化物の屈折率を低く維持しながら、基材への密着性や溶剤、特に汎用溶剤への溶解性を付与できる点で好ましく、架橋性などの機能を付与できる点で好ましい。
官能基を有する好ましい含フッ素エチレン性単量体の構造単位は、式(7):
Figure 0005459221
(式中、X11、X12、X13はH、FまたはCH3;X14はH、F、CF3;またはCX14 2はC=Oであってもよい;hは0〜2、iは0または1;Rf4は炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;Z1は−OH、−CH2OH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基、シアノ基から選ばれるもの)で示される構造単位があげられる。
具体的には、つぎの単量体が例示できる。
Figure 0005459221
(2)官能基を含まない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
これらは含フッ素重合体(I)またはその硬化物の屈折率を低く維持できる点で、またさらに低屈折率化することができる点で好ましい。また単量体を選択することで含フッ素重合体(I)の機械的特性やガラス転移点などを調整でき、特に構造単位Mと共重合してガラス転移点を高くすることができ、好ましいものである。
含フッ素エチレン性単量体の構造単位としては式(8):
Figure 0005459221
(式中、X15、X16はHまたはF;X17はH、F、CF3、CH3;X18はH、F、CF3;またはCX18 2はC=Oであってもよい;h1、i1、jは0または1;Z2はH、FまたはCl;Rf5は炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基)で示されるものがあげられる。
具体的には、つぎの単量体が例示できる。
Figure 0005459221
(3)フッ素を有する脂肪族環状の構造単位
これらの構造単位を導入すると、透明性を高くでき、また、より低屈折率化が可能となり、さらに高ガラス転移点の含フッ素重合体(I)が得られ、硬化物にさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
含フッ素脂肪族環状の構造単位としては式(9):
Figure 0005459221
(式中、X19、X20、X23、X24、X25、X26は同じかまたは異なりHまたはF;X21、X22は同じかまたは異なりH、F、ClまたはCF3;Rf6は炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4、n5は同じかまたは異なり0または1の整数)で示されるものが好ましい。
具体的には、つぎの単量体が例示できる。
Figure 0005459221
Figure 0005459221
(4)フッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位
屈折率を悪化(高屈折率化)させない範囲でフッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位を導入してもよい。
それによって、汎用溶剤への溶解性が向上したり、添加剤、たとえば光触媒や必要に応じて添加する硬化剤との相溶性を改善できるので好ましい。
具体的には、つぎの単量体が例示できる。
αオレフィン類:
エチレン、プロピレン、ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど
ビニルエーテル系またはビニルエステル系単量体:
CH2=CHOR、CH2=CHOCOR(R:炭素数1〜20の炭化水素基)など
アリル系単量体:
CH2=CHCH2Cl、CH2=CHCH2OH、CH2=CHCH2COOH、CH2=CHCH2Brなど
アリルエーテル系単量体:
Figure 0005459221
など
アクリル系またはメタクリル系単量体:
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類のほか、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類などがあげられる。
(5)脂環式単量体から誘導される構造単位
さらなる共重合成分として、より好ましくは構造単位Mと前述の含フッ素エチレン性単量体または非フッ素エチレン性単量体(前述の(3)、(4))の構造単位に加えて、第3成分として脂環式単量体構造単位を導入してもよく、それによって高ガラス転移点化、高硬度化が図られるので好ましい。
脂環式単量体の具体例としては、
Figure 0005459221
(m:0〜3、A、B、C、Dは、H、F、Cl、COOH、CH2OH、炭素数1〜5のパーフルオロアルキルなど)で示されるノルボルネン誘導体、
Figure 0005459221
などの脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体などがあげられる。
本発明の単量体や重合体は、各種の光学材料、例えば、半導体製造に代表される深紫外光レジスト積層体、真空紫外光レジスト積層体、液浸レジスト積層体の保護層用材料、液浸レジスト積層体のレジスト層用材料、反射防止膜用材料などの液浸レジスト積層体材料、極端紫外光リソグラフィー用レジスト材料、反射防止膜、発光素子材料、レンズ用材料、光デバイス用材料、表示用材料、光学記録材料、光信号伝送用材料(光伝送媒体)、またそれらの封止部材用材料等に好適に使用できる。また、例えば医用材料として各種医用デバイス接液部やフィルターのコーティング材料などにも好適に使用できる。
発光素子としては、例えばEL素子、ポリマー発光ダイオード、発光ダイオード、光ファイバーレーザー、レーザー素子、光ファイバー、液晶バックライト、光検知器などがあげられ、大型ディスプレイ、照明、液晶、光ディスクシステム、レーザープリンター、医療用レーザー、レーザー加工、印刷、コピー機器などに応用される。本発明の重合体は、透明性、成形加工性、耐光性に優れ、これらの用途に好適である。
また、レンズ用材料としては集光レンズ、ピックアップレンズ、めがね用レンズ、カメラ用レンズ、プロジェクター用フレネルレンズ、コンタクトレンズなどがあげられる。本発明の重合体は、透明性、耐熱性、成形加工性に優れ、これらの用途に好適である。
光デバイス用光学材料としては、光増幅素子、光スイッチ、光フィルター、光分岐素子、波長変換素子などの光導波路素子をあげることができる。またN分岐導波路(Nは2以上の整数)を含む光分岐素子と上記素子を組み合わせた光回路は今後の高度情報通信社会においては極めて有用である。これらの素子を組み合わせることにより、光ルーター、ONU、OADM、メディアコンバーター等に利用できる。光導波路素子の形式は、平面型、ストリップ型、リッジ型、埋込み型などの適宜の形式をとることができる。本発明の重合体は、広い波長範囲にわたって透明性が高く、成形加工性に優れ、また、屈折率も低いためこれらの用途に好適である。
表示デバイス用の光学材料としては、反射防止材、照明器具のカバー材、ディスプレイ保護板、透明ケース、表示板、自動車用部品などがあげられる。本発明の重合体は、広い波長範囲にわたって透明性が高く、成形加工性に優れ、また、屈折率も低いため、これらの用途に好適である。
光学記録材料としては、光ディスク基板、体積型ホログラム記録材料のマトリックス材料などに用いることができる。本発明の重合体は、広い波長範囲にわたって透明性が高く、成形加工性に優れ、また、屈折率も低いため、これらの用途に好適である。
光信号伝送用材料(光伝送媒体)としては、耐熱性の光伝送媒体、コアとクラッドで形成されるプラスチック光ファイバーのコアおよび/またはクラッド材などがあげられる。本発明の重合体はガラス転移温度が高いため、これらの用途に好適である。
また、水に不溶で高い動的ならびに静的接触角を示すにも拘わらずアルカリ水溶液可溶性を示すような表面濡れ性をもつので、蛋白質など生体関連物質の吸着を抑えながら生体適合性を示す用途に利用する道があり、医用材料として各種医用デバイス接液部やフィルターのコーティング材料として利用できる。
また、式(6):
Figure 0005459221
(式中、R1、R3、Rf1およびRf2は式(3)と同じ)で示される含フッ素アルコール、なかでも式(6)において、R3が水素原子である式(1):
Figure 0005459221
(式中、R1、Rf1およびRf2は式(3)と同じ)で示される含フッ素ジオールは、新規化合物である。
式(1)において、R1、Rf1およびRf2の具体例および好ましい例示は式(3)で示される含フッ素単量体において説明した例と同じである。
この含フッ素ジオールは、本発明の含フッ素単量体の原料として有用であるほか、たとえば架橋剤、溶剤、分散剤などの各種の機能性材料;各種の医薬・農薬の原料または中間体として有用である。
式(1)の含フッ素アルコールは、式(2):
Figure 0005459221
(式中、Rは1価の有機基;R1、Rf1およびRf2は式(1)と同じ)で示される含フッ素アルコールからRを脱アルキル化することにより製造できる。
また、式(2)の含フッ素アルコールは、たとえば出発原料となる酸ハライド、カルボン酸、カルボン酸エステルに国際公開第02/066526号や国際公開第03/006413号パンフレットに記載の公知の方法でフッ素原子を導入することにより製造できる。なお、式(2)で示される含フッ素アルコールの合成は、合成例を示して実施例において後述する。
脱アルキル化反応自体は公知の反応であり、たとえばJ.Org.Chem., Vol. 42(23) 3761(1977)などに記載された反応条件が採用できる。具体的には、たとえばトリメチルシリルアイオダイドなどのシリル化剤を用い、クロロホルム、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの溶媒中で、室温〜80℃にて行うことができる。
また、式(6)でR3が水素原子以外の含フッ素エーテルは、たとえばつぎの方法で製造できる。
アルカリ金属、アルカリ土類金属の各種アルカリ性塩やピリジン、トリエチルアミンなどの有機アミンと式(2)のアルコールを反応させた後、目的とするアルキルハライドを加える求核置換反応を行う方法、また硫酸などの強酸触媒存在下で式(2)アルコールと目的とするアルコールをベンゼンなどの共沸触媒存在下で加熱し脱水縮合する方法、アルコールの水酸基にオレフィンを付加反応させる方法などがあげられる。
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
なお、物性の評価に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
(1)NMR
NMR測定装置:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:376MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
(2)IR
PERKIN ELMER社製フーリエ変換赤外分光光度計1760Xで室温にて測定。
(3)数平均(重量平均)分子量:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC−8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−801を1本、GPC KF−802を1本、GPC KF−806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定したデータより算出する。
(4)ガラス転移温度(Tg):
示差走査熱量計(SEIKO 社製、RTG220)を用いて、30℃から150℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温−降温−昇温(2回目の昇温をセカンドランと呼ぶ)させて得られるセカンドランにおける吸熱曲線の中間点をTg(℃)とする。
(5)熱分解温度(Td):
島津製作所製TGA−50型熱天秤を用い、10℃/分の昇温速度で5%質量減少の始まる温度を測定する。
合成例1(1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−4−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ブタン−2−オールの合成)
(1)2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸メチルの合成
5モル/L濃度のナトリウムメトキシド/メタノール溶液900ml(4.5モル)とジイソプロピルエーテル900mlを3L四つ口フラスコに入れ氷浴にて冷却した。窒素気流下内温が20℃以上にならないようにしながらテトラフルオロオキセタン260g(2.0モル)をゆっくりと滴下した。室温に戻し一昼夜攪拌した後、純水を1L加えてフッ化ナトリウムをろ過した。有機層を分離し、水層はジイソプロピルエーテルにて2回抽出した。先の有機層と合わせ飽和食塩水で2回洗浄し硫酸マグネシウムで乾燥した。GPCとNMRによる測定の結果、生成物は単量体と2量体の3:1の混合物であった。常圧で蒸留することにより80〜86℃の留分として2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸メチルを得た(61.2g)。
(2)2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸フルオライドの合成
上記(1)で水層と分離した2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸メチルを含む有機層をそのまま用い、これに水酸化ナトリウム水溶液(20%)400mlを加え0℃から室温で一昼夜攪拌した。氷浴にて冷却し注意しながら希硫酸を加えて水層を酸性にした。有機層を分離し、水層はジイソプロピルエーテルにて2回抽出した。飽和食塩水で1回洗浄した後、硫酸マグネシウムにて乾燥し、溶媒を留去することで2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸を得た(145g)。
この2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸140g(1.0モル)とジメチルフルオライド(DMF)7.8ml(0.1モル)を滴下ロートと蒸留管を付けた四つ口フラスコに入れ、氷浴にて冷却した。窒素気流下内温が20℃以上にならないようにしながらチオニルクロライド131g(1.1モル)をゆっくりと滴下した。室温に戻し12時間攪拌後加熱し、86〜97℃にて2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸クロライドを57g得た。
得られた2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸クロライド25gをコールドフィンガートラップと蒸留管を備えた100ml四つ口フラスコ中のフッ化カリウム(KF)15gとテトラグライム50mlに加え90℃で1時間攪拌した。そのまま加熱してバス温125〜165℃で63.5〜66.5℃の留分として2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸フルオライド11gを得た。
(3)1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−4−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ブタン−2−オールの合成
温度計・真空ライン・パージライン・窒素ライン・仕込みライン・ゲージを設置した100mlオートクレーブにフッ化カリウム(KF)10gと硫酸マグネシウム上で乾燥したアセトニトリル30mlを加えた。ドライアイス−アセトンバスで−40℃に冷却し、減圧にして2,2−ジフルオロ−3−メトキシプロパン酸フルオライド10g(70ミリモル)と硫酸マグネシウム上で乾燥したトリフルオロメチルトリメチルシラン25g(166ミリモル)をオートクレーブ内に導入した。そのままゆっくりと室温に戻していくと−8.5℃で温度上昇が始まり10分間で12.2℃(内圧0.05MPa)まで上昇した。そのまま96時間攪拌すると内圧は0.1MPaまで上昇した。反応生成物を希塩酸に投入し分液し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム上で乾燥して目的化合物を得た。
NMR測定により、この化合物が、1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−4−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ブタン−2−オールであることを確認した。
19F−NMR(CFCl3標準):−72.20 6F(t、d)、−113.8 2F(m)
実施例1(2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1,3−ジオールの合成)
合成例1で得た1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−4−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ブタン−2−オール18.34g(70ミリモル)をクロロホルム30mlに溶解し、これに室温、窒素気流下でトリメチルシリルアイオダイド36.2g(182ミリモル)をゆっくりと滴下した。63〜70℃で24時間攪拌した。室温に戻した後、メタノール15mlを加え60℃で2時間攪拌した。亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し硫酸マグネシウム上で乾燥した。反応生成物はアルコールとトリメチルシリル体の混合物であった。この反応生成物にメタノール、濃塩酸を加え室温で一昼夜攪拌した。エーテルにて抽出し、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウム上で乾燥することで目的とする2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1,3−ジオールを11.9g得た。
NMR測定により、この化合物が、2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1,3−ジオールであることを確認した。
19F−NMR(CFCl3標準):−72.2(t、6F)、−115.7(m、2F)
参考(2−フルオロアクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イルの合成)
窒素導入管、滴下漏斗、温度計、シリカゲル乾燥管、セプタムラバーキャップ、スタラーチップを装着した四つ口フラスコを乾燥し、2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1,3−ジオール10.9g(52ミリモル)、トリエチルアミン5.7g(57ミリモル)およびTHF30mlを加え氷‐水浴で冷却した。攪拌しながら2−フルオロアクリル酸フルオライド5.3g(57ミリモル)を内温5℃以下でゆっくりと滴下した。その後窒素下室温で終夜間攪拌した。反応混合物に水50mlとジイソプロピルエーテル25mlを加え分液した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、希塩酸水溶液で1回、飽和食塩水で2回洗浄し無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。得られた溶液を濃縮し、ハイドロキノン存在下、減圧にて蒸留することにより無色透明の液体を得た(沸点58℃(1.0mmHg)。収量7.8g、収率53.2%)。
この化合物の構造をNMRおよびIRで測定し、2−フルオロアクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イルであることを確認した。
19F−NMR(CFCl3標準):−72.3 6F(t),−114.3 2F(m),−118.2 1F(dd)
1H−NMR(TMS標準)):4.85 2H(t)、5.60 1H(dd)、5.84 1H(dd)8.61H(s)
参考(2−フルオロアクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イルの単独重合体の製造)
窒素導入管、減圧ライン、温度計、セプタムラバーキャップ、スタラーチップを装着した三つ口フラスコを乾燥し、2−フルオロアクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イル4.0g(14ミリモル)およびTHF10mlを加え、ドライアイス−アセトン浴で冷却した。アゾイソブチロニトリル(AIBN)65mg(0.5ミリモル)を加えた後、攪拌しながら減圧して脱酸素を行った。窒素で置換した後水浴にて68〜70℃に加温し、3時間攪拌した。
室温に戻して20時間攪拌した後、反応混合物をn−ヘキサン300mlに攪拌しながら投入し、再沈殿させて目的とする含フッ素重合体を得た(収量3.2g。収率80%)。
含フッ素重合体の構造はIRにて、C=Oの吸収を1780cm-1に、OHの吸収を3210cm-1に確認して同定した。
また、GPC(スチレン標準)で測定した数平均分子量は5392、重量平均分子量は11753であった。また、ガラス転移温度(Tg)は131℃で、熱分解温度(Td)は227℃であった。
参考(メタクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イルの合成)
参考の2−フルオロアクリル酸フルオライドの代わりにメタクリル酸クロライド6.0g(57ミリモル)用いた他は同様に反応・精製することで目的物を得た(沸点62℃(1.5mmHg)。収量8.8g、収率60.0%)。この化合物の構造は19F−NMRにて確認した。
19F−NMR(アセトン‐d、CFCl標準):−74.5 6F(t),−115.1 2F(m)
参考(メタクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イルの単独重合体の製造)
2−フルオロアクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イルの代わりにメタクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イル4.0g(14ミリモル)用いた他は参考と同様に反応・精製することで目的とする含フッ素重合体を得た(収量3.7g。収率92.5%)。含フッ素重合体の構造はIRにて同定した。
IR:C=O 1790cm−1、OH 3220cm−1
また、GPC(スチレン標準)で測定した数平均分子量は7566、重量平均分子量は13324であった。また、ガラス転移温度(Tg)は128℃で、熱分解温度(Td)は220℃であった。
参考(2−フルオロアクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イルとメタクリル酸2−メチル―2−アダマンチルの共重合体の製造)
2−フルオロアクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イル2.0g(7ミリモル)、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル1.6g(7ミリモル)を用いた他は参考と同様に反応・精製することで目的とする共重合体を得た(収量2.8g、収率77.8%)。
1H-NMRにて求めた共重合比率は、2−フルオロアクリル酸2,2,4,4,4−ペンタフルオロ−3−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1−イル:メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルは 48:52(モル%)であった。
また、GPC(スチレン標準)で測定した数平均分子量は4728、重量平均分子量は9227であった。また、ガラス転移温度(Tg)は142℃で、熱分解温度(Td)は236℃であった。
参考
(メタクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イルの単独重合体の合成)
5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イル メタクリレート3.0g(10ミリモル)にTHF15mlを加えドライアイス−アセトン浴で冷却し、AIBN60mg(0.4ミリモル)を加えた後、攪拌しながら減圧して脱酸素を行った。窒素で置換した後水浴にて55℃に加温し、2時間攪拌した。室温に戻して20時間攪拌した後、反応混合物をn−ヘキサン300mlに攪拌しながら投入し再沈殿にて目的とする含フッ素重合体を得た(収量0.84g。収率28%)。
構造は19F−NMR、H−NMRにて調べて確認した。GPC(スチレン標準)で測定した数平均分子量は18300、重量平均分子量は23130であった。また、ガラス転移温度(Tg)は88℃で、熱分解温度(Td)は248℃であった。
参考およびならびに参考でそれぞれ得られた含フッ素重合体について、以下の試験を行い、特性を調べた。結果を表1に示す。
試験1
つぎの方法で静的接触角、前進接触角、後退接触角、転落角を調べる。
試料の作製:
ガラス基板に含フッ素重合体の10質量%メチルアミルケトン(MAK)溶液をスピンコート(300rpm、3秒;2000rpm、25秒)し、110℃で180秒乾燥して、試料を作製する。
静的接触角:
水平に置いた試料の重合体膜表面にマイクロシリンジから水、n−ヘキサデカンを2μl滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより求める。
前進接触角、後退接触角、転落角:
水平に置いた試料の重合体膜表面にマイクロシリンジから、水を20μl滴下し、試料基板を毎秒2°の速度で傾斜させ、液滴が転落し始めるまでを、ビデオマイクロスコープで動画として記録する。その動画を再生し、液滴が転落し始める角度を転落角とし、転落角における液滴の進行方向側の接触角を前進接触角、進行方向と反対側を後退接触角とする。
試験2
つぎの方法で標準現像液に対する溶解速度を調べる。
試料の作製:
金で被覆された直径24mmの水晶振動子板に含フッ素重合体の10質量%MAK溶液をスピンコート(300rpm、5秒;2000rpm、30秒)し、110℃で90秒乾燥して、厚さ約100nmの重合体被膜を作製する。
標準現像液に対する溶解速度の測定:
標準現像液として2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、水晶振動子法(QCM法)により水に対する溶解速度を測定する。膜厚は水晶振動子板の振動数から換算して算出し測定する。
上記で作製した試料の水晶振動子板を純水に浸し、浸漬させた時点から時間に対する被膜の膜厚変化を振動数の変化により測定し、単位時間あたりの溶解速度(nm/秒)を算出する(参考文献:Advances in Resist Technology and Proceedings of SPIE Vol. 4690, 904(2002))。
試験3
つぎの方法により透過率(k値)および屈折率を測定する。
試料の作製:
8インチのシリコンウエハ基板に、含フッ素重合体の10質量%MAK溶液をスピンコーターを用いて、はじめに300rpmで3秒間、ついで4000rpmで20秒間ウェハを回転させながら塗布し、乾燥後約100nmの膜厚になるように調整しながら被膜を形成する。
屈折率の測定:
分光エリプソメーター(J.A.Woollam 社製のVASE ellipsometer)を用いて波長589nmの光におけるk値、屈折率および膜厚を測定する。
Figure 0005459221
これらの結果から、本発明の含フッ素重合体は、耐熱性を有し、また、液浸レジスト材料として用いた場合、現像液への溶解速度も速く、透明でかつ低屈折率であることが分かる。

Claims (2)

  1. 式(2):
    Figure 0005459221
    (式中、Rは1価の有機基;R1は酸素原子を含んでいてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の2価の炭素数1〜8の炭化水素基;Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、いずれも、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜6の含フッ素炭化水素基または炭素数6〜10の含フッ素アリール基)で示される含フッ素アルコールを脱アルキル化することを特徴とする式(1):
    Figure 0005459221
    (式中、R1、Rf1およびRf2は式(2)と同じ)で示される含フッ素アルコールの製造方法。
  2. 式(1):
    Figure 0005459221
    (式中、R1は−CH2−、−C24−、−C36−、−C48−、−C510−もしくは−C612−で示される直鎖状のアルキレン基、−CH(CH3)−、−CH(C25)−、−CH(C37)−、−CH(CH(CH32)−、−CH(C49)−、−CH(CH(CH3)C25)−もしくは−CH(C(CH33)−で示される分岐鎖状のアルキレン基、またはシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環もしくはノルボルナン環を有する炭素数8までの2価の脂環式炭化水素基;Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、いずれも、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の飽和の1価の炭素数1〜6の含フッ素炭化水素基または炭素数6〜10の含フッ素アリール基)で示される含フッ素アルコール。
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