以下に添付図面を参照して、この分散補償装置、光受信装置、分散補償方法および光受信方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。この分散補償装置、光受信装置、分散補償方法および光受信方法は、過少または過多な補償量によって分散補償した光信号の通信品質を監視することで、波長分散の増減方向によって、監視する通信品質の増減方向が異なるようにする。このため波長分散の増減方向を判定することができる。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる光伝送システムの機能的構成を示すブロック図である。図1において、実線矢印は光信号の流れを示している。点線矢印は監視信号などの制御信号の流れを示している(以下のブロック図においても同様)。図1に示すように、実施の形態1にかかる光伝送システム100は、光送信装置110と、伝送路120と、光受信装置130と、を備えている。また、光送信装置110は光送信機111を備えている。
光送信機111は、図示しない信号処理部から出力された電気信号を光信号に変換する。光送信機111は、変換した光信号を、伝送路120を介して光受信装置130へ送信する。伝送路120はたとえば光ファイバである。光送信装置110から光受信装置130へ送信される光信号には、伝送路120において波長分散が発生する。
光受信装置130は、分散補償装置131と、光受信機132と、を備えている。分散補償装置131は、光受信機132の前段において、光送信装置110から送信された光信号の波長分散を補償する。光受信機132は、分散補償装置131によって波長分散が補償された光信号を受信し、受信した光信号を図示しない信号処理部へ出力する。
また、光受信機132は、分散補償装置131から出力された光信号の通信品質を監視する実信号監視手段としての機能を有していてもよい。たとえば、光受信機132は、分散補償装置131からの光信号の通信品質を示す情報、つまり、通信品質指標として光信号のBERを算出する。光受信機132は、算出したBERを分散補償装置131へ出力する。
分散補償装置131は、光カプラ133と、TODC134と、監視用固定DC135と、監視用光受信機136と、制御部137と、を備えている。光カプラ133は、伝送路120から出力される光信号を分岐させる分岐手段である。具体的には、光カプラ133は、光送信装置110から伝送路120を介して送信された光信号を分岐して、分岐した各光信号をそれぞれTODC134と監視用固定DC135へ出力する。
TODC134は、光受信機132によって受信される光信号を可変の補償量によって分散補償する分散補償器である。具体的には、TODC134は、光カプラ133から出力された光信号を分散補償し、分散補償した光信号を光受信機132へ出力する。TODC134による分散補償の補償量は制御部137によって制御される。
TODC134には、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)板を用いたVIPA型分散補償器、エタロン板を用いたエタロン型分散補償器、FBG(Fiber Bragg Grating:ファイバブラッググレーティング)、リング共振型分散補償器などの各種の可変分散補償器を適用することができる。
監視用固定DC135は、光カプラ133によって分岐した光信号を、その光信号の分散量に対して過少または過多な補償量によって分散補償する監視用補償器である。具体的には、監視用固定DC135は、光カプラ133から出力された光信号を分散補償し、分散補償した光信号を監視用光受信機136へ出力する。
監視用固定DC135は、たとえばDCF(Dispersion Compensating Fiber)である。光信号の分散量に対して過少な補償量とは、最適補償量よりも少ない補償量である。光信号の分散量に対して過多な補償量とは、最適補償量よりも多い補償量である。最適補償量とは、波長分散後の光信号の分散量が最小(すなわち、光信号のBERが最小)となる補償量である。
また、監視用固定DC135の補償量は、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が一時的に変動しても最適補償量とならないように、最適補償量よりも十分に少なくまたは多く設定される。たとえば、監視用固定DC135の補償量と最適補償量は、伝送路120で発生することが想定される分散量の変動幅以上の間隔をあけて設定される。
監視用光受信機136は、監視用固定DC135により分散補償された光信号(出力光信号)の通信品質を監視する監視手段である。具体的には、監視用光受信機136は、監視用固定DC135から出力された光信号の通信品質を示す情報として光信号のエラー数をカウントしたり、カウントしたエラー数からBERの算出などを行い、通信品質を監視する。本実施例では、監視用光受信機136は、監視用固定DC135から出力された光信号のBERを算出し、算出したBERを制御部137へ出力する。
制御部137は、監視用光受信機136によって監視された通信品質の変化方向(増減方向)に基づいて光信号の分散量の増減方向を判定する判定手段である。具体的には、制御部137は、監視用光受信機136からのBERの増加方向に基づいて分散量の増減方向を判定する。制御部137は、増減方向の判定結果に基づいてTODC134の補償量の増減を制御する制御手段である。具体的には、制御部137は、光受信機132により受信される光信号のBERが最小または所定量以下になるようにTODC134の補償量を制御する。
また、制御部137は、分散補償装置131の立ち上がり時においては、監視用光受信機136から出力されたBERではなく、光受信機132から出力されたBERに基づいてTODC134の補償量を制御してもよい。制御部137は、たとえばCPU(Central Processing Unit)によって実現することができる。
なお、光受信機132および監視用光受信機136による光信号の通信品質の監視は、常時行ってもよいし、時間間隔をあけて定期的に行ってもよい。光受信機132および監視用光受信機136は、たとえば、光信号に含まれる誤り検出符号を用いて光信号の誤りを検出し、光信号の各ビットに対する誤り率を計算することによってBERを算出する。
図2は、図1に示した監視用固定DCの補償量の設定例を示すグラフである。図2において、横軸は、TODC134または監視用固定DC135が光信号に対して行う分散補償の補償量を示している。縦軸は、光受信機132または監視用光受信機136によって受信される光信号のBER(または伝送ペナルティ)を示している。
特性211は、分散補償の補償量に対する光信号のBERの変化を示している。特性211に示すように、分散補償の補償量に対して光信号のBERは2次関数的に変化する。最適補償量c21は、特性211においてBERが最小となる分散補償の補償量である。最小値b41は、分散補償の補償量が最適補償量c21となったときのBERである。
図1において、伝送路120から分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が増加すると、図2における特性211が特性212のように変化する。この場合は、BERが最小値b41となる最適補償量c21は補償量c22のように変化する。一方、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が減少すると、特性211が特性213のように変化する。この場合は、BERが最小値b41となる最適補償量c21は補償量c23のように変化する。
したがって、制御部137は、光受信機132によって受信される光信号のBERが最小値b41となるようにTODC134の補償量を最適補償量c21に制御する。または、制御部137は、光受信機132によって受信される光信号のBERが基準値b42以下となるようにTODC134の補償量を制御してもよい。基準値b42は、光受信機132によって受信される光信号において、許容できるBERの最大値によって設定する。
監視用固定DC135の補償量c31は、たとえば、図2に示すように、最適補償量c21に対して過少な補償量とする。具体的には、監視用固定DC135の補償量c31は、最適補償量c21との間に十分な間隔d32を有するような(たとえばBERが数桁異なるような)補償量とする。これにより、伝送路120から分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が経時変動等によって変化(特性212,213参照)しても、監視用固定DC135の補償量c31を最適補償量c21より常に小さくすることができる。
分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が増加すると(特性212)、監視用光受信機136によって受信される光信号のBERが増加する(点211aから点212aへ)。一方、入力される光信号の分散量が減少すると(特性213)、監視用光受信機136によって受信される光信号のBERが減少する(点211aから点213aへ)。
このように、監視用固定DC135の補償量c31を最適補償量c21より十分に少ない補償量に設定することで、監視用光受信機136によって受信される光信号のBERが最小点を通過しない範囲で変動する。これにより、分散補償装置131へ入力される光信号の波長分散の増減方向によって、監視用光受信機136によって受信される光信号のBERの増減方向が異なることになる。
このため、制御部137は、監視用光受信機136からのBERの増減方向に基づいて光信号の波長分散の増減方向を判定できるため、TODC134の補償量を適切な方向に制御することができる。具体的には、制御部137は、監視用光受信機136からのBERが増加したときはTODC134の補償量を増加させ、監視用光受信機136からのBERが減少したときはTODC134の補償量を減少させる。これにより、光受信機132によって受信される光信号のBERを常に最小値b41付近に制御することができる。
図示しないが、監視用固定DC135の補償量c31は、最適補償量c21に対して過多な補償量に設定されてもよい。この場合は、分散補償装置131へ入力される光信号の波長分散の増減方向に応じて、監視用光受信機136によって受信される光信号のBERの増減方向が逆方向になる。この場合、制御部137は、監視用光受信機136から出力されたBERが増加したときはTODC134の補償量を減少させ、監視用光受信機136から出力されたBERが減少したときはTODC134の補償量を増加させるように制御すればよい。
また、制御部137は、TODC134の補償量を、BERの増減方向に基づいて判断した制御方向へ、たとえばあらかじめ設定された単位量だけ変化させる。または、制御部137は、監視用光受信機136から出力されたBERに基づいて、分散補償装置131へ入力された光信号の分散変化量を算出してもよい。この場合は、制御部137は、算出した分散変化量に応じた量だけTODC134の補償量を変化させる。
また、制御部137は、BERが最小(またはBERが基準値b42以下)となるようにTODC134の補償量を制御したときに、監視用光受信機136から出力されるBERb51を図示しない記憶部に記憶しておいてもよい。制御部137は、監視用光受信機136からのBERが、記憶していたBERb51を中心とした基準範囲b52から変化した場合にTODC134の補償量を制御してもよい。これにより、通信に影響しない程度の微小なBERの変動を無視し、TODC134の制御を安定させることができる。
図3は、図1に示した制御部の動作の一例を示すフローチャートである。図3に示すステップS301〜S304は、分散補償装置131の立ち上がり時に行う分散補償制御である。まず、制御部137は、分散補償装置131を立ち上げて、光送信装置110から伝送路120を介して送信された光信号の受信を開始する(ステップS301)。つぎに、制御部137は、光受信機132から出力されるBERを取得する(ステップS302)。
そして、制御部137は、ステップS302によって取得されたBERが基準値b42(図2参照)以下か否かを判断する(ステップS303)。ここで、BERが基準値b42以下でない場合(ステップS303:No)は、制御部137は、TODC134の補償量を制御し(ステップS304)、ステップS302に戻って処理を続行する。一方、BERが基準値b42以下である場合(ステップS303:Yes)は、制御部137は、ステップS305へ移行する。なお、上記で説明したTODC134の補償量の制御は、品質が最良となるように制御する方法でもよい。具体的には、TODC134の補償量は、BERが最小となるように制御されてもよい。
このように、ステップS301〜S304においては、従来のように光受信機132からのBERに基づいて分散補償制御を行う。たとえば、ステップS304において、制御部137は、1ループ前のステップS304によるTODC134の補償量の制御の結果、光受信機132からのBERが減少したか否かによって補償量の制御方向を決定する。
なお、他の制御方法として、ステップS303,S304において光受信機から取得したBERが基準値以下であるかを判断する代わりにつぎの制御としてもよい。すなわち、ステップS303,S304において、光受信機から取得したBERが基準値となるように、TODC134を制御する方法である。このとき、光受信機132から取得したBERに基づくTODC134の制御は、以下に示すステップS305〜S308に対応する、監視用光受信機のBERに基づく制御とは独立に行われることもできる。そしてこのとき、監視用光受信機のBERに基づく制御は、分散補償装置131を立ち上げる動作に続いて行われることになる。
図3の説明を続ける。ステップS305〜S308は、ステップS301〜S304によって光受信機132からのBERが基準値b42以下に制御された後における分散補償制御である。ここでは、上記により説明したTODC134の制御により、補償量とBERとの関係が図2の特性211の状態であると仮定する。制御部137は、監視用光受信機136から出力されるBERb51(図2参照)を取得する(ステップS305)。
つぎに、制御部137は、ステップS305によって取得されたBERが基準範囲b52(図2参照)内か否かを判断する(ステップS306)。
ステップS306において、監視用光受信機136から獲得したBERが基準範囲b52内である場合(ステップS306:Yes)は、ステップS305に戻って監視用光受信機136から出力されるBERを取得する処理を行う。これは、たとえば、取得したBERが図2の特性211に対応するBERb51である場合に相当する。
なお、取得したBERが基準範囲b52内であるとき、ある時間が経過してから、監視用光受信機136から出力されるBERを取得する処理としてもよい。分散特性の時間的変化を考慮して上述した時間を決め、その時間が経過してからステップS305の処理を行うことにより、不必要なTODC134の制御の回避や、制御部137の処理負荷の軽減ができる。
一方、BERが基準範囲b52内でない場合(ステップS306:No)は、取得されたBERの増減方向に基づいて光信号の波長分散の増減方向を判定する(ステップS307)。BERの増減方向とは、たとえば、1度目のステップS305の処理によって取得されたBER(BERの初期値)と比較して、現時点で取得されたBERが増加、減少のいずれであるかの方向である。
そして、BERの増減方向と、光信号の波長分散の増減方向とは、監視用固定DC135の分散補償量が、過小補償であるか、過大補償であるかに対応して決まる。具体的には、図2に示したように、監視用固定DC135として、最適分散補償量c21に比して、過小な分散補償量であるc31を用いた場合、監視用固定DC135を経由して計測されたBERの増加は、波長分散量の増加に対応しており、伝送路の波長分散特性が分散量の増加方向となったことを示す。したがって、最適分散補償量とするためには、分散補償量を減少させることが必要となる。
そして、監視用固定DC135を経由して計測されたBERの減少は、波長分散量の減少に対応しており、伝送路の波長分散特性が分散量の減少方向となったことを示す。したがって、最適分散補償量とするためには、分散補償量を増加させることが必要となる。監視用固定DC135として、最適分散補償量に比して、過大な分散量を用いた場合には、監視用固定DC135を経由して計測されたBERの増加は、波長分散量の減少に対応しており、伝送路の波長分散特性が分散量の減少方向となったことを示す。したがって、最適分散補償量とするためには、分散補償量を増大させることが必要となる。
そして、監視用固定DC135を経由して計測されたBERの減少は、波長分散量の増大に対応しており、伝送路の波長分散特性が分散量の増大方向となったことを示す。したがって、最適分散補償量とするためには、分散補償量を減少させることが必要となる。
図3の説明に戻る。ステップS307によって判定された光信号の波長分散の増減方向に応じた方向にTODC134の補償量を単位量だけ変化させる(ステップS308)。つぎに、制御部137は、BERが基準値b42(図2参照)以下か否かを判断する(ステップS309)。ここで、BERが基準値b42以下でない場合(ステップS309:No)は、ステップS308へ戻って処理を続行する。一方、BERが基準値b42以下である場合(ステップS309:Yes)は、制御部137は、監視用光受信機136のBER基準値を現在の設定値に更新し(ステップS310)、ステップS305へ移行する。
ステップS305〜S310を繰り返すことによって、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が経時変動によって変化しても、光受信機132によって受信される光信号のBERを常に基準範囲b52内に制御することができる。
図4は、最適補償量からの変化量に対する伝送ペナルティの実測値の例を示すグラフである。図4の横軸は、TODC134または監視用固定DC135が光信号に対して行う分散補償の補償量における、最適補償量c21(図2参照)からの変化量[ps/nm]を示している。縦軸は、光受信機132または監視用光受信機136によって受信される光信号の伝送ペナルティ[dB]を示している。
特性411は、40[Gbps]の光信号における、最適補償量c21からの変化量に対する伝送ペナルティの実測値を示している。特性411に示すように、光信号に対して行う分散補償の補償量の最適補償量c21からの変化量が0になると伝送ペナルティが最小となる。たとえば、分散補償の補償量を最適補償量c21に設定した場合、図4において特性411の点421となる。
また、分散補償の補償量が±100[ps/nm]変化した場合は、たとえば、特性411のそれぞれ点431,432となり、±150[ps/nm]変化した場合は、特性411のそれぞれ点441,442となる。また、特性411により、最適補償量c21からの変化量が±150[ps/nm]付近において、変化量の増減に対して伝送ペナルティが急峻に変化していることが分かる。
このため、監視用固定DC135の補償量c31(図2参照)を最適残留分散量(最適補償量c21)−150[ps/nm]に設定するとよい。これにより、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量の変化に対して、監視用光受信機136から出力されるBERの変化を急峻にすることができる。このため、制御部137は、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量の変化を精度よく高速に、効率的に検出することができる。
このように、実施の形態1にかかる分散補償装置131によれば、監視用固定DC135によって過少または過多な補償量で分散補償した光信号の通信品質を監視用光受信機136によって監視する。そして、監視用光受信機136の通信品質の悪化・改善、たとえばBERの増加・減少に対応して、波長分散が増加したのか、減少したのかが判断できる。
これにより、制御部137は、監視用光受信機136によって監視される通信品質指標の増減に基づいて、光信号の波長分散の増減を適切に判定することができる。このため、たとえば光伝送路の波長分散特性が変動した場合に、波長分散の増減方向に応じてTODC134の補償量を適切な方向へ高速に制御することができる。すなわち、光伝送路の波長分散特性が変動した場合でも、誤った方向へ補償量を制御して通信品質を劣化させることを回避するとともに、通信品質が劣化する時間を短縮することができる。
また、過少または過多な補償量によって分散補償した光信号の通信品質を監視することで、入力される光信号の分散量の変化に対して、監視される通信品質の変化を急峻にすることができる。これにより、最適補償量c21付近で分散補償した光信号の通信品質を監視する従来の構成と比べて、光信号の分散量の変化を精度よく高速に検出することができる。したがってTODC134の補償量を正確かつ高速に制御することができる。
また、光受信機132によって受信される光信号を光カプラ133により分岐し、分岐した光信号を監視用固定DC135により分散補償する。これにより、監視用固定DC135により過少または過多な補償量で分散補償を行っても、光受信機132によって受信される光信号の分散量が大きくならない。したがって、TODC134の補償量を大きくする必要がなく、装置の大型化および製造コストの増加を回避することができる。
ただし、光受信機132によって受信される光信号を分岐する前に監視用固定DC135によって分散補償する構成も可能である。たとえば、監視用固定DC135を光カプラ133の前段に設ける。この場合は、光受信機132によって受信される光信号(実信号)の分散量に応じて、TODC134の補償量を適切に選択すればよい。
また、図3のステップS306において、監視用光受信機136のBERが基準範囲b52内でない場合(ステップS306:No)は、光受信機132から出力されるBERが増加しているか否かを確認するようにしてもよい。光受信機132から出力されるBERが増加していない場合は、ステップS305に戻って処理を続行する。光受信機132から出力されるBERが増加した場合は、ステップS307へ移行する。この場合は、光信号の分散量の変化の検出が遅くなるが、光信号の分散量の変化の誤検出を回避することができる。
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2にかかる光伝送システムの機能的構成を示すブロック図である。図5において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、実施の形態2にかかる分散補償装置131は、実施の形態1における監視用固定DC135(図1参照)に代えて監視用TODC501を備えている。これにより、監視用補償器の補償量を変更することができる。光カプラ133は、光信号を分岐し、分岐された光をTODC134と監視用TODC501とのそれぞれへ出力する。
監視用TODC501は、光カプラ133によって分岐された光信号を、その光信号の分散量に対して過少または過多な補償量によって分散補償する監視用補償器である。具体的には、監視用TODC501は、光カプラ133から出力された光信号を可変の分散量によって分散補償し、分散補償した光信号を監視用光受信機136へ出力する。監視用TODC501による分散補償の補償量は制御部137によって制御される。
図6は、光信号のビットレートごとの補償量とBERの関係を示すグラフである。図6において、横軸および縦軸は図2に示したグラフと同様である。特性611(実線)は、光信号のビットレートが10[Gbps]の場合における分散補償の補償量に対する光信号のBERの変化を示している。特性612(点線)は、光信号のビットレートが40[Gbps]の場合における分散補償の補償量に対する光信号のBERの変化を示している。
特性611および特性612に示すように、分散補償の補償量に対する光信号のBERの変化の急峻さは、光信号のビットレートによって異なる。このため、監視用光受信機136によって受信される光信号を分散補償する監視用補償器(ここでは監視用TODC501)の適切な補償量は、光信号のビットレートに応じて異なる場合がある。
たとえば、10[Gbps]の光信号を受信している状況において、制御部137は、監視用TODC501の補償量を補償量c61に設定していたとする。この後に、光信号が40[Gbps]に切り替わり、特性611から特性612に変化したとする。特性612においては、監視用TODC501の補償量が補償量c61であると、光信号のBERが極端に増加するため、監視用光受信機136によるBERの監視が不安定、または、困難となる。
このため、制御部137は、たとえば、受信する光信号が40[Gbps]に切り替わると、監視用TODC501の補償量を、補償量c61よりも最適補償量c21に近い補償量c62に設定する。これにより、監視用光受信機136によって受信される光信号のBERが極端に大きくならない(ここでは40[Gbps]のときと同程度)ため、監視用光受信機136によるBERの監視を安定して続行することができる。換言すると、制御部137は、監視する光信号のビットレートに応じて、監視用TODC501を適切な補償量に変更するのである。
また、たとえば分散補償装置131の分散補償制御を連続実行していると、図2に示した補償量c31と最適補償量c21との間の間隔d32が減少したり増加したりする。このような場合にも、監視用TODC501の補償量を制御することで、間隔d32を一定に保つことができる。これにより、間隔d32の増減が少なくなる。こうすることで、監視用TODC501の補償量c31が最適補償量c21を通過して誤動作が生じたり、間隔d32が大きくなり監視用光受信機136によって監視されるBERが極端に増加したりすることを回避することができる。
図7は、図5に示した制御部の動作の一例を示すフローチャートである。図7に示すステップS701〜S704は、それぞれ図3に示したステップS301〜S304と同様であるため説明を省略する。ステップS703においてBERが基準値b42(図2参照)以下である場合(ステップS703:Yes)は、制御部137は、監視用TODC501の補償量c31(図2参照)を設定する(ステップS705)。
たとえば、制御部137は、最適補償量c21よりも小さい補償量の範囲において、監視用光受信機136から出力されるBERがあらかじめ設定されたBERb51となるように監視用TODC501の補償量c31を設定する。ステップS706〜S711は、それぞれ図3に示したステップS305〜S310と同様であるため説明を省略する。
このように、実施の形態2にかかる分散補償装置131によれば、実施の形態1にかかる分散補償装置131の効果を奏するとともに、監視用光受信機136によって受信される光信号を分散補償する監視用補償器として監視用TODC501を設ける。これにより、監視用補償器の補償量を柔軟に変更することができる。
たとえば、光信号のビットレートが高速なビットレートに切り替わり、監視用TODC501の補償量c31に対する光信号のBERの変化が急峻になる場合には、補償量c31を最適補償量c21に近づける。これにより、監視用光受信機136によって監視される光信号のBERが極端に増加することを回避することができる。
また、光信号のビットレートが低速なビットレートに切り替わり、監視用TODC501の補償量c31に対する光信号のBERの変化が緩やかになる場合には、補償量c31を最適補償量c21から遠ざける。これにより、補償量c31に対する光信号のBERの変化が緩やかになってBERの変化の検出精度が低下することを回避することができる。
この制御は次のようになされてもよい。図5において、たとえば、制御部137に図示しない記憶部を設ける。そして、この記憶部に、あらかじめ、光信号のビットレートと、補償量の値との対応を保持しておく。そして、運用する光信号のビットレートの値を、たとえばオペレータが、制御部137に与える。制御部137は、与えられた光信号のビットレートの値に対応する分散補償量を、監視用TODC501に設定する。このように制御することにより、光信号のビットレートに応じた、適切な分散補償量を監視用TODC501に設定することができる。
また、制御部137は、TODC134の補償量を変化させた場合(図7のステップS709)に、監視用TODC501の補償量を過少または過多な補償量に再度制御する(図7のステップS705)。これにより、入力される光信号の分散量が変動しても間隔d32を一定に保つことができる。このため、補償量c31が最適補償量c21を通過して誤動作が生じたり、監視用光受信機136によって監視されるBERが極端に大きくなってBERの監視が不安定になったりすることを回避することができる。
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3にかかる光伝送システムの機能的構成を示すブロック図である。図8において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施の形態3にかかる分散補償装置131は、図1に示した構成に加えて、光カプラ811と、監視用固定DC812と、監視用光受信機813と、を備えている。これにより、光信号の分散量が極端に変化しても波長分散の増減方向を適切に判定することができる。
光カプラ811は、光カプラ133で分岐された一方の光信号をさらに分岐する。そして、光カプラ811により分岐された一方の光信号は、監視用固定DC135へ出力される。そして、光カプラ811により分岐された他方の光信号は、監視用固定DC812へ出力される。
監視用固定DC135は、光カプラ133により分岐された一方の光信号を、その光信号の分散量に対して過少な補償量によって分散補償する第1監視用分散補償器である。一方、監視用固定DC812は、光カプラ811によって分岐された他方の光信号を、その光信号の分散量に対して過多な補償量によって分散補償する第2監視用分散補償器である。監視用固定DC135は、入力された光信号の一部を、光信号の分散量に対して過少な補償量によって分散補償し、監視用光受信機136に出力する。監視用固定DC812は、入力された光信号の他の一部を、光信号の分散量に対して過多な補償量によって分散補償し、監視用光受信機813に出力する。
監視用光受信機813は、監視用固定DC812から出力された光信号の通信品質を監視する監視手段である。具体的には、監視用光受信機813は、監視用光受信機136と同様に、光信号の通信品質を示す情報としてのBERを算出して制御部137へ出力する。制御部137は、監視用光受信機136および監視用光受信機813から出力された各BERの各増減方向に基づいて、光信号の波長分散の増減方向を判定する。光信号の波長分散の増減方向の判定方法については後述する。
図9は、図8に示した各固定DCの補償量の設定例を示すグラフである。図9において、図2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。監視用固定DC135の補償量c31は、図2において説明したように、最適補償量c21に対して過少な補償量に設定される。これに対して、監視用固定DC812の補償量c91は、最適補償量c21に対して過多な補償量に設定される。
また、補償量c91は、光信号の分散量が経時変動によって変化しても最適補償量c21より常に増加するように、最適補償量c21との間に十分な間隔d92を有するように設定される。ここでは、補償量c31および補償量c91は、それぞれ監視用光受信機136および監視用光受信機813によって算出される各BERがほぼ同じとなるように設定されている。このため、間隔d32と間隔d92はほぼ同じ間隔になっている。
伝送路120から分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が増加すると(特性212)、監視用光受信機813によって受信される光信号のBERが減少する(点211bから点212bへ)。一方、伝送路120から分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が減少すると(特性213)、監視用光受信機813によって受信される光信号のBERが増加する(点211bから点213bへ)。
これにより、分散補償装置131へ入力される光信号の波長分散の増減方向によって、監視用光受信機813によって受信される光信号のBERの増減方向が異なる。なお、監視用光受信機136および監視用光受信機813から出力される各BERにおける、光信号の波長分散の変化に対する増減方向は互いに反対になる。
図10は、図8に示した制御部の動作の一例を示すフローチャートである。図10に示すステップS1001〜S1004は、それぞれ図3に示したステップS301〜S304と同様であるため説明を省略する。ステップS1003においてBERが基準値b42(図2参照)以下である場合(ステップS1003:Yes)は、制御部137は、監視用光受信機136および監視用光受信機813(各監視用光受信機)からのBERb51およびBERd93(各BER。図9参照)を取得する(ステップS1005)。
つぎに、制御部137は、ステップS1005によって取得された各BERがともに基準範囲b52(図9参照)内か否かを判断する(ステップS1006)。ステップS1005によって取得された各BERがともに基準範囲b52内である場合(ステップS1006:Yes)は、制御部137は、ステップS1005に戻って処理を続行する。各BERがともに基準範囲b52内でない場合(ステップS1006:No)は、制御部137は、ステップS1005によって取得された各BERがともに増加したか否かを判断する(ステップS1007)。
ステップS1006において、各BERがともに増加した場合(ステップS1007:Yes)は、制御部137は、伝送路120の波長分散の変動以外の要因によって通信品質が劣化した旨のエラーメッセージを出力し(ステップS1008)、ステップS1005に戻って処理を続行する。各BERがともに増加していない場合(ステップS1007:No)、すなわち各BERの少なくとも一方が増加していない場合は、制御部137は、ステップS1009へ移行する。
つぎに、制御部137は、ステップS1005によって取得された各BERの増減方向(たとえば1ループ目のステップS1005によって取得された各BERからの増減方向)に基づいて光信号の波長分散の増減方向を判定する(ステップS1009)。ステップS1010〜S1012は、図3に示したステップS308〜S310と同様であるため説明を省略する。
図11は、補償量に対するBERの特性の変化例1を示すグラフである。図11において、図9に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図11は、伝送路120から分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が減少した場合における、分散補償の補償量に対する光信号のBERの特性を示している。
光信号の分散量が減少すると(特性213)、監視用光受信機136から出力されるBERが減少する(点211aから点213aへ)とともに、監視用光受信機813から出力されるBERが増加する(点211bから点213bへ)。制御部137は、監視用光受信機136からのBERが減少するとともに監視用光受信機813からのBERが増加した場合は、光信号の分散量が減少したと判定し、TODC134の補償量を減少させる。
光信号の分散量が増加すると(図9の特性212)、監視用光受信機136から出力されるBERが増加する(点211aから点212aへ)とともに、監視用光受信機813から出力されるBERが減少する(点211bから点212bへ)。制御部137は、監視用光受信機136からのBERが増加するとともに監視用光受信機813からのBERが減少した場合は、分散量が増加したと判定し、TODC134の補償量を増加させる。
図12は、補償量に対するBERの特性の変化例2を示すグラフである。図12において、図9に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図12は、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が極端に減少した場合における、分散補償の補償量に対する光信号のBERの特性を示している。
ここでは、最適補償量c21が、監視用固定DC135の補償量c31を下回っている(点線c121)。また、監視用光受信機136から出力されるBERb51は、基準範囲b52内に収まっている(点1211a)。一方、監視用光受信機813から出力されるBERd93は基準範囲b52から外れて増加している(不図示の点213b)。BERb51は、特性211の特性1211に示す変化に対して、基準範囲b52より小さくなって最小値b41を経由した後、再び増加して基準範囲b52に収まっている。
一方、BERd93は、特性211の特性1211に示す変化に対して常に増加している。制御部137は、図10に示したステップS1009において、基準範囲b52から外れているBERd93の増減方向に基づいて波長分散の増減方向を判定する。この場合は、監視用光受信機813から出力されるBERd93が増加しているため、制御部137は、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が減少したと判定する。
図示しないが、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が極端に大きくなり、BERb51が基準範囲b52から外れるとともにBERd93が基準範囲b52内に収まる場合について説明する。この場合は、BERb51は、特性211の変化に対して常に増加する。これに対して、BERd93は、特性211の変化に対して、基準範囲b52より小さくなり最小値b41を経由した後、再び増加して基準範囲b52内に収まる。
制御部137は、図10に示したステップS1009において、基準範囲b52から外れているBERb51の増減方向に基づいて波長分散の増減方向を判定する。この場合は、監視用光受信機136から出力されるBERb51が増加しているため、制御部137は、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が増加したと判定する。
このように、BERb51およびBERd93のうちの一方が基準範囲b52内に収まり他方が基準範囲b52から外れている場合は、制御部137は、基準範囲b52から外れているBERの増減方向に基づいて光信号の波長分散の増減方向を判定する。これにより、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が極端に小さくまたは大きくなり、BERb51およびBERd93のうちの一方が最小値b41を経由して基準範囲b52内に再び収まっても、波長分散の増減方向を適切に判定することができる。
図13は、補償量に対するBERの特性の変化例3を示すグラフである。図13において、図9に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図13は、光信号の通信品質が、伝送路120における波長分散の変動以外の要因によって劣化した場合における、分散補償の補償量に対する光信号のBERの特性を示している。
この場合は、光信号の波長分散の補償量にかかわらずに光信号のBERが劣化するため、特性1311に示すように特性211が全体的に増加する。このため、監視用光受信機136および監視用光受信機813から出力される各BERがともに増加する(点211aから点1311aへ、点211bから点1311bへ)。
このような場合は、制御部137は、ユーザまたは上位システムへエラーメッセージを出力する(図10のステップS1008参照)。図10においてはエラーメッセージの出力後に分散補償制御を続行(ステップS1008からステップS1005への移行)する場合について説明したが、エラーメッセージの出力後に分散補償制御を終了してもよい。
図11〜図13において説明したように、制御部137は、監視用光受信機136および監視用光受信機813から出力された各BERに基づいて波長分散の増減方向を判定する。これにより、制御部137は、図11や図12に示した各状況において、光信号の波長分散の増減方向を適切に判定することができる。たとえば、図12に示したように、光信号の分散量が極端に変化しても、波長分散の増減方向を適切に判定することができる。
さらに、図13において説明したように、制御部137は、監視用光受信機136および監視用光受信機813から出力された各BERに基づいて、波長分散の変動以外の要因によって通信品質が劣化したことを検出することができる。また、波長分散の変動以外の要因によって通信品質が劣化したことを検出した場合に分散補償制御を終了することで、TODC134の補償量を無駄に制御し続けることを回避することができる。
図14は、図8に示した光伝送システムの変形例を示すブロック図である。図14において、図8に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図14に示すように、実施の形態3にかかる分散補償装置131は、図8に示した監視用光受信機813に代えて光スイッチ1411(SW:SWitch)を備えていてもよい。
監視用固定DC135および監視用固定DC812のそれぞれは、分散補償した光信号を光スイッチ1411へ出力する。光スイッチ1411は、制御部137による制御によって、監視用固定DC135および監視用固定DC812から出力された各光信号のうちの一方を監視用光受信機136へ出力する。監視用光受信機136は、光スイッチ1411から出力された光信号のBERを算出し、算出したBERを制御部137へ出力する。
図10に示したステップS1005において、まず、制御部137は、監視用固定DC135から出力された光信号を出力するように光スイッチ1411を制御する。これにより、監視用光受信機136には、監視用固定DC135によって分散補償された光信号が入力される。このため、制御部137は、監視用固定DC135によって分散補償された光信号のBERを監視用光受信機136から取得することができる。
つぎに、制御部137は、監視用固定DC812から出力された光信号を出力するように光スイッチ1411を制御する。これにより、監視用光受信機136には、監視用固定DC812によって分散補償された光信号が入力される。このため、制御部137は、監視用固定DC812によって分散補償された光信号のBERを監視用光受信機136から取得することができる。そして、制御部137は、ステップS1006へ移行する。
このように、制御部137は、監視用固定DC135および監視用固定DC812から出力された各光信号のうちの光スイッチ1411が出力する光信号を交互に切り替えるように光スイッチ1411を制御する。これにより、監視用光受信機813(図8参照)を設けなくても、分散量に対して過少な補償量で分散補償した光信号のBERと、分散量に対して過多な補償量で分散補償した光信号のBERと、を取得することができる。
このため、図8に示した構成において監視用光受信機813を省くことが可能になるため、分散補償装置131の小型化および製造コストの低減を図ることができる。なお、監視用固定DC135および監視用固定DC812から出力された各光信号のうちの光スイッチ1411が出力する光信号の制御部137による切替順序はどちらでもよい。
このように、実施の形態3にかかる分散補償装置131によれば、過少な補償量(第一の補償量)で分散補償した光信号のBERと、過多な補償量(第二の補償量)で分散補償した光信号のBERと、に基づいて光信号の波長分散の増減方向を判定する。これにより、実施の形態1にかかる分散補償装置131の効果を奏するとともに、光信号の分散量が極端に変化しても波長分散の増減方向を適切に判定することができる。
特に、光信号のビットレートが高い場合は、分散補償の補償量に対する光信号のBERの変化が急峻になる。このため、一方のBERによる判定では波長分散の増減方向の誤判定が発生しうるが、過少な補償量で分散補償した光信号のBERと、過多な補償量で分散補償した光信号のBERと、を用いて判定することで誤判定を回避することができる。
また、監視用光受信機136および監視用光受信機813から出力された各BERに基づいて、波長分散の変動以外の要因によって通信品質が劣化したことを検出することができる。さらに、波長分散の変動以外の要因によって通信品質が劣化したことを検出した場合に、分散補償制御を終了するようにしてもよい。これにより、TODC134の補償量を無駄に制御し続けることを回避することができる。
また、光受信機132によって受信される光信号を光カプラ811により分岐し、分岐した光信号を監視用固定DC812により分散補償する。これにより、監視用固定DC812により過多な補償量で分散補償を行っても、光受信機132によって受信される光信号(実信号)の分散量が大きくならない。このため、TODC134の補償量を大きくする必要がなく、装置の大型化および製造コストの増大を回避することができる。
ただし、光受信機132によって受信される光信号を分岐する前に監視用固定DC812によって分散補償する構成も可能である。たとえば、監視用固定DC812を光カプラ133の前段に設ける。この場合は、光受信機132によって受信される光信号(実信号)の分散量に応じて、TODC134の補償量を適切に選択すればよい。
また、監視用固定DC812および監視用光受信機813を設けない構成とすることもできる。たとえば、分散補償装置131を図5に示した構成とする。そして、制御部137が、光信号の分散量に対して過少な補償量と、光信号の分散量に対して過多な補償量と、を交互に切り替えるように監視用TODC501の補償量を制御する。
この場合の分散補償装置131の動作は図10に示した各ステップと同様である。ただし、ステップS1005においては、監視用TODC501の補償量の切替によって各BERを取得する。これにより、光信号の分散量が極端に変化しても波長分散の増減方向を適切に判定することができるとともに、図8に示した構成と比べて、監視用固定DC812および監視用光受信機813を省くことができる。このため、部品点数を削減して装置の小型化および製造コストの低減を図ることができる。
また、図示しないが、図8または図14に示した構成において、監視用固定DC135および監視用固定DC812の少なくともいずれかに代えて監視用TODC501(図5参照)を設けた構成にしてもよい。
(実施の形態4)
図15は、実施の形態4にかかる光伝送システムの機能的構成を示すブロック図である。図15において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図15に示すように、実施の形態4にかかる分散補償装置131においては、光カプラ133がTODC134の後段に設けられている。これにより、分散補償装置131の分散補償制御を高速に安定して連続実行する。
TODC134は、光送信装置110から伝送路120を介して送信された光信号を分散補償し、分散補償した光信号を光カプラ133へ出力する。光カプラ133は、TODC134から出力された光信号を分岐する。光カプラ133は、分岐した各光信号を光受信機132および監視用固定DC135のそれぞれへ出力する。
図16は、各伝送路分散量における伝送ペナルティの実測値を示すグラフである。図16において、横軸は、TODC134または監視用固定DC135が光信号に対して行う分散補償の補償量[ps/nm]を示している。縦軸は、光受信機132または監視用光受信機136によって受信される光信号の伝送ペナルティ[dB]を示している。
特性1601〜1611のそれぞれは、分散補償の補償量に対する、TODC134によって分散補償された光信号の伝送ペナルティの特性を示している。また、特性1601〜1611は、伝送路120において光信号に発生した分散量(伝送路分散量)がそれぞれ−1000,−800,−600,−400,−200,0,200,400,600,800,1000[ps/nm]である場合の各特性を示している。
特性1601〜1611に示すように、光信号の伝送ペナルティの特性(最小値および変化の急峻さ)は、伝送路分散量にかかわらずほぼ等しいことが分かる。したがって、伝送路分散量が変化した場合にTODC134の補償量を最適補償量c21(図2参照)に調整することで、最適補償量c21と監視用固定DC135の補償量c31(図2参照)との関係(図2の間隔d32)は常に一定(残留分散トレランスが一定)となる。
このため、分散補償装置131による分散補償制御を連続実行しても、補償量c31と最適補償量c21との間の間隔d32が一定になるため、監視用TODC501の補償量の制御後の間隔d32の再調整(図7のステップS709後のステップS705)が必要ない。このため、監視用固定DC135に代えて監視用TODC501(図5参照)を設けなくても、分散補償装置131の分散補償制御を安定して連続実行することができる。
また、図示しないが、図15に示した構成において、監視用固定DC135に代えて監視用TODC501(図5参照)を設けた構成にしてもよい。この場合の分散補償装置131の動作の一例は、図7に示したステップS709において、TODC134の補償量を変化させると、ステップS706に戻って処理を続行する。すなわち、この場合はステップS709後のステップS705を省くことができる。
このように、実施の形態4にかかる分散補償装置131によれば、実施の形態1にかかる分散補償装置131の効果を奏するとともに、光カプラ133がTODC134の後段において光信号を分岐させる。これにより、TODC134によって伝送路分散量の変動が補償された光信号が監視用固定DC135によって分散補償される。
したがって、伝送路分散量が変動しても監視用固定DC135の補償量c31と最適補償量c21との間隔d32を一定に保つことができる。このため、補償量c31が最適補償量c21を通過して誤動作が生じたり、監視用光受信機136により監視されるBERb51が極端に大きくなって監視が不安定になったりすることを回避することができる。
また、TODC134の補償量を変化させた場合に、監視用TODC501の補償量を過少または過多な補償量に再度制御する動作(図7のステップS705)を行わなくても補償量c31と最適補償量c21との間隔d32を一定に保つことができる。このため、分散補償装置131の分散補償制御を高速に安定して連続実行することができる。
また、監視用光受信機136によって受信される光信号を分散補償する監視用補償器(ここでは監視用固定DC135)に代えて監視用TODC501(図5参照)を設けなくても、分散補償装置131の分散補償制御を安定して連続実行することができる。このため、監視用補償器に監視用TODC501を用いる場合と比べて、分散補償装置131の小型化を図るとともに製造コストの低減を図ることができる。
ただし、図15に示した構成において、監視用固定DC135に代えて監視用TODC501(図5参照)を設けてもよい。この場合は、TODC134によって分散量の変動が補償された光信号が監視用TODC501によって分散補償される。これにより、監視用TODC501によって分散補償される光信号の分散量の変動が減少するため、監視用TODC501の補償量の可変幅が小さくてもよい。このため、図5に示した構成と比べて分散補償装置131の小型化を図るとともに製造コストの低減を図ることができる。
(実施の形態5)
図17は、実施の形態5にかかる光伝送システムの機能的構成を示すブロック図である。図17において、図5に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施の形態5にかかる分散補償装置131は、光信号に対する分散補償の補償量と光信号の通信品質との対応情報を保存し、保存した対応情報に基づいて光信号の分散量の変化量を算出する。図17に示すように、分散補償装置131は、図5に示した構成に加えて保存部1711を備えている。
保存部1711は、光信号に対する分散補償の補償量と光信号の通信品質との対応情報を保存する保存手段である。対応情報は、図2の特性211に示した分散補償の補償量とBERの対応関係を示す情報である。対応情報は、たとえば、分散補償の補償量ごとに光信号のBERが対応付けられた対応表である。または、対応情報は、分散補償の補償量と光信号のBERの関係を近似的に示す関数(たとえば2次関数)であってもよい。
制御部137は、監視用光受信機136からのBERに基づく分散補償制御において、監視用光受信機136からのBERと、保存部1711に保存された対応情報と、に基づいて光信号の分散変化量を算出する。たとえば、制御部137は、監視用光受信機136からのBERの変化の前後にそれぞれ対応する各補償量を保存部1711の対応情報から取得し、取得した各補償量の差分を光信号の波長分散の変化量として算出する。
制御部137は、TODC134の補償量を、算出した分散変化量に相当する量だけ変化させる。これにより、制御部137は、監視用光受信機136からのBERの増減方向に基づいて光信号の波長分散の増減方向を判定するとともに、監視用光受信機136からのBERの変化量に基づいて光信号の波長分散の変化量を算出することができる。
対応情報は、監視用光受信機136からのBERに基づく分散補償制御の前に保存部1711に保存される。たとえば、制御部137は、監視用光受信機136からのBERに基づく分散補償制御の前に、予備動作として、監視用TODC501の補償量を変化させながら監視用光受信機136からのBERを取得することで対応情報を作成する。そして、制御部137は、作成した対応情報を保存部1711に保存する。
図18は、図17に示した制御部の動作の一例を示すフローチャートである。図18に示すステップS1801〜S1804は、図7に示したステップS701〜S704と同様であるため説明を省略する。ステップS1803においてBERが基準値b42(図2参照)以下である場合(ステップS1803:Yes)は、制御部137は、上述の予備動作を行って対応情報を作成し、作成した対応情報を保存部1711に保存する(ステップS1805)。
ステップS1806〜S1808は、図7に示したステップS705〜S707と同様であるため説明を省略する。ステップS1808において、BERb51が基準範囲b52内でない場合(ステップS1808:No)は、制御部137は、BERb51と、ステップS1805によって保存した対応情報と、に基づいて、光信号の波長分散の増減方向を判定するとともに光信号の波長分散の変化量を算出する(ステップS1809)。
つぎに、制御部137は、ステップS1809によって判定された増減方向に応じた方向に、算出された変化量だけTODC134の補償量を変化させ(ステップS1810)、ステップS1806に戻り処理を続行する。ステップS1806〜S1810を繰り返すことによって、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が経時変動によって変化しても、光受信機132によって受信される光信号のBERを常に基準範囲内に制御することができる。
また、ステップS1809によって波長分散の変化量を算出し、ステップS1810においては算出した変化量だけTODC134の補償量を変化させるため、一度の制御によってTODC134の補償量を最適補償量c21付近に制御することができる。このため、TODC134の補償量をさらに精度よく高速に制御することができる。
また、図示しないが、制御部137は、ステップS1809によって波長分散の変化量を算出した後に、光受信機132から出力されたBERが増加したか否かを判断してもよい。光受信機132から出力されたBERが増加していない場合は、ステップS1806に戻って処理を続行する。光受信機132から出力されたBERが増加した場合はエラー処理を行う。
たとえば、制御部137は、エラー処理としてユーザまたは上位システムへエラーメッセージを出力して分散補償動作を終了する。これにより、光信号に対する分散補償の補償量と光信号の通信品質との対応関係が経時変動などにより変化した場合において、誤った波長分散の変化量を算出し続けることを回避できる。このため、TODC134の補償量を誤った方向に制御し続けて通信品質が劣化することを回避することができる。
または、制御部137は、エラー処理として、ステップS1805に戻って再び予備動作を行い、対応情報を作成し直してもよい。これにより、光信号に対する分散補償の補償量と光信号の通信品質との対応関係が経時変動などにより変化した場合においても、作成し直した対応情報に基づいて再び波長分散の変化量を正しく算出することができるようになる。このため、分散補償動作を続行することができる。
このように、実施の形態5にかかる分散補償装置131によれば、実施の形態1にかかる分散補償装置131の効果を奏するとともに、光信号に対する分散補償の補償量と光信号の通信品質との対応情報を保存する保存部1711を備える。そして、制御部137は、監視用光受信機136によって監視された通信品質と、保存部1711によって保存された対応情報と、に基づいて光信号の分散量の変化量を算出する。
また、制御部137は、算出した変化量に基づいてTODC134の補償量を制御する。これにより、一度の制御によってTODC134の補償量を最適補償量c21付近にすることができるため、光受信機132によって受信される光信号のBERを低下させるまでの時間を短縮することができる。このため、通信品質を劣化させることなく、迅速に分散補償制御を行うことができる。
ここでは、予備動作として、監視用TODC501の補償量を変化させながら監視用光受信機136からのBERb51を取得することで対応情報を作成する場合について説明したが、対応情報の作成方法はこれに限らない。たとえば、制御部137は、予備動作として、TODC134の補償量を変化させながら光受信機132からのBERを取得することで対応情報を作成してもよい。この場合は、監視用TODC501に代えて監視用固定DC135(図1参照)を設けた構成としてもよい。
(実施の形態6)
図19は、実施の形態6にかかる光伝送システムの機能的構成を示すブロック図である。図19において、図8に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図19に示すように、実施の形態6にかかる光伝送システム100は、図8に示した光伝送システム100をWDM伝送システムに適用した例である。
光送信装置110は、光送信機1911a〜1911zと、波長多重部1912と、光アンプ1913と、DCF1914と、を備えている。光送信機1911a〜1911zのそれぞれは、図8に示した光送信機111と同様の構成である。光送信機1911a〜1911zは、互いに異なる波長(a〜z)の光信号を波長多重部1912へ出力する。
波長多重部1912は、光送信機1911a〜1911zから出力された各光信号を波長多重して光アンプ1913へ出力する。光アンプ1913は、波長多重部1912から出力された光信号を増幅し、増幅した光信号を光受信装置130へ送信する。DCF1914は、光アンプ1913を通過する光信号を固定の分散量によって分散補償する。
伝送路120には、伝送路120を通過する光信号を増幅する光アンプ1921〜1923が間隔をあけて設けられている。また、光アンプ1921〜1923にはそれぞれDCF1924〜1926が設けられている。DCF1924〜1926は、それぞれ光アンプ1921〜1923を通過する光信号を固定の分散量によって分散補償する。
光受信装置130は、光アンプ1931と、DCF1932と、波長多重分離部1933と、分散補償装置131と、光受信機1935a〜1935zと、を備えている。光アンプ1931は、光送信装置110から伝送路120を介して送信された光信号を増幅し、増幅した光信号を波長多重分離部1933へ出力する。
DCF1932は、光アンプ1931を通過する光信号を固定の分散量によって分散補償する。波長多重分離部1933は、光アンプ1931から出力された光信号を、互いに異なる波長の各光信号に波長多重分離する。波長多重分離部1933は、波長多重分離した各光信号(波長a〜z)をそれぞれTODC1934a〜1934zへ出力する。
TODC1934a〜1934zのそれぞれは、図8に示したTODC134と同様の構成である。TODC1934a〜1934zのそれぞれは、波長多重分離部1933から出力された光信号を分散補償する。TODC1934a〜1934zは、分散補償した光信号をそれぞれ光受信機1935a〜1935zへ出力する。TODC1934a〜1934zによる分散補償の各補償量は制御部137によって制御される。
光受信機1935a〜1935zのそれぞれは、図8に示した光受信機132と同様の構成である。光受信機1935a〜1935zは、それぞれTODC1934a〜1934zから出力された各光信号を受信する。光受信機1935a〜1935zのそれぞれは、受信した光信号のBERを算出し、算出したBERを制御部137へ出力する。
光カプラ133は、波長多重分離部1933からTODC1934zへ出力される光信号を分岐して監視用固定DC135へ出力する。また、光カプラ811は、波長多重分離部1933からTODC1934aへ出力される光信号を分岐して監視用固定DC812へ出力する。このように、光カプラ133および光カプラ811のそれぞれは、波長多重分離部1933によって波長多重分離された各光信号のいずれかを分岐する。
制御部137は、監視用光受信機136および監視用光受信機813から出力された各BERに基づいて、TODC1934a〜1934zの各補償量を個別に制御する。また、制御部137は、光受信機1935a〜1935zによって受信される各光信号(実信号)の残留分散量が最小または所定量以下になるように上記各補償量を制御する。
具体的には、制御部137は、TODC1934aと光受信機1935aの組を対象として、図10に示した各ステップを実行する。同様に、制御部137は、TODC1934bと光受信機1935bの組,…,TODC1934zと光受信機1935zの組のそれぞれを対象として、図10に示した各ステップを並行して実行する。
ここで、波長多重分離部1933によって波長多重分離された各光信号のうちの、異なる各光信号(ここでは波長aと波長z)をそれぞれ光カプラ133および光カプラ811によって分岐するとよい。これにより、監視用光受信機136および監視用光受信機813は、互いに異なる波長帯域の光信号のBERを監視することができる。
また、波長aと波長zの各光信号のうちの一方が使用されていないときでも、使用されている光信号のBERを監視することで分散補償制御を続行することができる。この場合は、制御部137は、監視用光受信機136および監視用光受信機813から出力される各BERのうちの、使用されている光信号に対応するBERを取得する。そして、制御部137は、取得したBERに基づいて、たとえば図3に示した各ステップを実行する。
図20は、図19に示した光伝送システムの変形例を示す図である。図20において、図14または図19に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図20に示すように、実施の形態6にかかる光伝送システム100は、図14に示した光伝送システム100をWDM伝送システムに適用した構成であってもよい。
具体的には、光伝送システム100は、図19に示した監視用光受信機813に代えて光スイッチ1411(図14参照)を備えていてもよい。制御部137は、TODC1934aと光受信機1935aの組,…,TODC1934zと光受信機1935zの組のそれぞれを対象として、図10に示した各ステップを並行して実行する。
図21は、図20に示した光伝送システムの変形例を示す図である。図21において、図20に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図21に示すように、図20に示した構成において、監視用固定DC135および監視用固定DC812に代えて監視用TODC501(図5参照)を設けてもよい。この場合は、光スイッチ1411を監視用TODC501の前段に設ける。
光カプラ133および光カプラ811のそれぞれは、分岐した光信号を光スイッチ1411へ出力する。光スイッチ1411は、制御部137による制御によって、光カプラ133および光カプラ811から出力された各光信号のうちの一方を監視用TODC501へ出力する。監視用TODC501は、光スイッチ1411から出力された光信号を可変の補償量によって分散補償して監視用光受信機136へ出力する。
制御部137は、上記過少な補償量によって分散補償した光信号のBERを取得するときには、光カプラ133から出力された光信号を出力するように光スイッチ1411を制御するとともに、監視用TODC501の補償量を過少な補償量に制御する。また、制御部137は、過多な補償量によって分散補償した光信号のBERを取得するときには、光カプラ811から出力された光信号を出力するように光スイッチ1411を制御するとともに、監視用TODC501の補償量を過多な補償量に制御する。
このように、実施の形態6にかかる分散補償装置131によれば、WDM信号を分散補償する場合にも、光信号の波長分散の増減方向によって、監視する通信品質の増減方向が異なる。このため、TODC1934a〜1934zの補償量を適切な方向へ高速に制御し、通信品質を劣化させることなく、迅速に分散補償制御を行うことができる。
また、波長多重分離部1933によって波長多重分離された各光信号のうちの、異なる各光信号をそれぞれ光カプラ133および光カプラ811によって分岐する。これにより、分岐する各光信号のうちの一方が使用されていないときでも、使用されている光信号のBERを監視することで分散補償制御を続行することができる。
(実施の形態7)
図22は、実施の形態7にかかる分散補償装置の動作の一例を示すフローチャートである。実施の形態7にかかる分散補償装置131は、監視用光受信機136からのBERb51が所定期間以上、所定量以上変動しない場合は、TODC134の補償量の制御周期を長くすることで、TODC134の制御量を減らす。実施の形態7にかかる分散補償装置131の構成は、図1に示した分散補償装置131と同様である。
図22に示すステップS2201〜S2204は、図3に示したステップS301〜S304と同様であるため説明を省略する。ステップS2203において、制御部137は、BERが基準値b42以下である場合(ステップS2203:Yes)は、事前に設定された期間Tだけ待機する(ステップS2205)。ステップS2205における期間Tは、TODC134の補償量の制御周期を調整するための期間である。
ステップS2206,S2207は、それぞれ図3に示したステップS305,S306と同様であるため説明を省略する。ステップS2207において、BERb51が基準範囲b52内である場合(ステップS2207:Yes)は、制御部137は、ステップS2207において所定期間以上連続してBERb51が基準範囲b52内であったか否かを判断する(ステップS2208)。所定期間以上連続してBERb51が基準範囲b52内でない場合(ステップS2208:No)は、制御部137は、ステップS2205に戻って処理を続行する。
ステップS2208において、所定期間以上連続してBERb51が基準範囲b52内であった場合(ステップS2208:Yes)は、制御部137は、期間Tを所定量増加させ(ステップS2209)、ステップS2205に戻り処理を続行する。したがって、所定期間以上連続してBERb51が基準範囲b52内である間は、期間Tが増加し続けることになる。
ステップS2210〜S2213は、それぞれ図3に示したステップS307〜S3010と同様である。なお、ステップS2208においては、所定期間以上連続してBERb51が基準範囲b52内であり、かつ、ステップS2209によって期間Tを増加させていない状態が所定期間以上連続したか否かを判断してもよい。この場合は、所定期間以上連続してBERb51が基準範囲b52内か、または期間Tを増加させていない状態が所定期間以上連続していない場合はステップS2205に戻って処理を続行する。
また、所定期間以上連続してBERb51が基準範囲b52内であり、かつ、期間Tを増加させていない状態が所定期間以上連続した場合はステップS2209へ移行する。これにより、ステップS2209によって期間Tが増加した後は、さらに所定期間連続してBERb51が基準範囲b52内となるまで期間Tが増加しない。
また、ステップS2214においては、期間Tを所定量減少させるのではなく、期間Tを初期化することで、ステップS2209によって増加した期間Tを初期値に戻すようにしてもよい。これにより、BERb51が基準範囲b52から外れた場合(分散量が変動した場合)に、TODC134の補償量の制御周期を即座に最短にすることができる。
このように、実施の形態7にかかる分散補償装置131によれば、監視用光受信機136によって監視された光信号のBERb51が所定期間以上、所定量以上変動しない場合は、TODC134の補償量の制御周期を長くする。これにより、実施の形態1にかかる分散補償装置131の効果を奏するとともに、光伝送が安定して光信号の分散量が変動しないときには、制御部137によるTODC134の制御量を減らすことができる。
また、BERb51が基準範囲b52内から外れてTODC134の補償量を変化させた場合には、期間Tを減少させることによってTODC134の補償量の制御周期を短くすることができる。これにより、光伝送が不安定となって光信号の分散量が変動するときには、TODC134の補償量を精度よく高速に制御することができる。
また、制御部137は、監視用光受信機136によるBERb51の算出周期(通信品質の監視周期)を制御してもよい。たとえば、ステップS2209において、制御部137は、監視用光受信機136によるBERb51の算出周期を長くする。これにより、光伝送が安定して光信号の分散量が変動しないときには、監視用光受信機136による通信品質の監視負担(BERb51の算出負担)を減らすことができる。
また、BERb51が基準範囲b52内でなくなりTODC134の補償量を変化させた場合には、監視用光受信機136によるBERb51の算出周期を短くする。これにより、光伝送が不安定となり光信号の分散量が変動するときには、BERb51の変動を精度よく高速に監視し、TODC134の補償量を精度よく高速に制御することができる。
(実施の形態8)
図23は、実施の形態8にかかる光伝送システムの機能的構成を示すブロック図である。図23において、図8に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施の形態8は、実施の形態3と実施の形態5を組み合わせた形態である。図23に示すように、実施の形態8にかかる分散補償装置131は、図8に示した構成に加えて保存部1711(図17参照)を備えている。
制御部137は、監視用光受信機136および監視用光受信機813からの各BERに基づく分散補償制御において、光受信機132からのBERと、保存部1711に保存された対応情報と、に基づいて光信号の分散変化量を算出する。制御部137は、TODC134の補償量を、算出した分散変化量に相当する量だけ変化させる。
対応情報は、監視用光受信機136および監視用光受信機813からの各BERに基づく分散補償制御の前に保存部1711に保存される。たとえば、制御部137は、各BERに基づく分散補償制御の前に、予備動作として、TODC134の補償量を変化させながら光受信機132からのBERを取得することで対応情報を作成する。そして、制御部137は、作成した対応情報を保存部1711に保存する。
図24は、図23に示した制御部の動作の一例を示すフローチャートである。図24に示すステップS2401〜S2404は、それぞれ図3に示したステップS301〜S304と同様であるため説明を省略する。ステップS2403においてBERが基準値b42以下である場合(ステップS2403:Yes)は、制御部137は、上述の予備動作を行って対応情報を作成し、作成した対応情報を保存部1711に保存する(ステップS2405)。
ステップS2406〜S2409は、それぞれ図10に示したステップS1005〜S1008と同様であるため説明を省略する。つぎに、ステップS2408において、各BERがともに増加していない場合について説明する。この場合は、制御部137は、各BERと、ステップS2405によって保存した対応情報と、に基づいて、波長分散の増減方向を判定するとともに光信号の波長分散の変化量を算出する(ステップS2410)。
つぎに、制御部137は、ステップS2410によって判定された増減方向に応じた方向に、算出された変化量だけTODC134の補償量を変化させ(ステップS2411)、ステップS2406に戻り処理を続行する。ステップS2406〜S2411を繰り返すことによって、分散補償装置131へ入力される光信号の分散量が経時変動によって変化しても、光受信機132によって受信される光信号のBERを常に基準範囲内に制御することができる。
ステップS2410において、BERb51およびBERd93のうちの一方が基準範囲b52内に収まり他方が基準範囲b52から外れている場合(図12参照)について説明する。この場合は、制御部137は、BERb51の変化と対応情報に基づいて光信号の波長分散の増減方向を仮判定する。さらに、制御部137は、BERd93の変化と対応情報に基づいて光信号の波長分散の増減方向を再度仮判定する。
そして、BERb51を用いた増減方向の仮判定結果と、BERd93を用いた増減方向の仮判定結果と、が一致した場合は、制御部137は、仮判定結果の増減方向を波長分散の増減方向として判定する。一方、BERb51を用いた増減方向の仮判定結果と、BERd93を用いた増減方向の仮判定結果と、が一致しなかった場合は、制御部137はエラー処理を行う。たとえば、制御部137は、エラー処理としてユーザまたは上位システムへエラーメッセージを出力して分散補償動作を終了する。
このように、実施の形態8にかかる分散補償装置131によれば、BERb51の増減方向に基づいて波長分散の増減方向を仮判定するとともに、BERd93の増減方向に基づいて波長分散の増減方向を仮判定する。そして、各仮判定結果の整合性を判断することによって、波長分散の増減方向をより確実に判定することができる。このため、TODC134の補償量をさらに精度よく制御し、通信品質を劣化させることなく、迅速に分散補償制御を行うことができる。
ここでは、予備動作として、TODC134の補償量を変化させながら光受信機132からのBERを取得することで対応情報を作成する場合について説明したが、対応情報の作成方法はこれに限らない。たとえば、監視用固定DC135に代えて監視用TODC501(図5参照)を設け、制御部137は、監視用TODC501の補償量を変化させながら監視用光受信機136からのBERを取得することで対応情報を作成してもよい。
または、監視用固定DC812に代えて監視用TODC501を設け、制御部137は、監視用TODC501の補償量を変化させながら監視用光受信機813からのBERを取得することで対応情報を作成してもよい。また、監視用光受信機813に代えて光スイッチ1411を備えた構成(図14参照)としてもよい。
以上説明したように、開示の分散補償装置、光受信装置、分散補償方法および光受信方法によれば、過少または過多な補償量によって分散補償した光信号の通信品質を監視する。これにより、光信号の波長分散の増減方向によって、監視する通信品質の増減方向が異なる。このため、波長分散の増減方向を判定し、可変分散補償における補償量を適切な方向に制御することができる。このため、通信品質を劣化させることなく、迅速に分散補償制御を行うことができる。上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)受信される光信号を分岐する分岐手段と、
前記分岐手段により分岐された一方の光信号を可変の補償量によって分散補償する第一の分散補償器と、
前記分岐手段により分岐された他の光信号を分散補償する第二の分散補償器と、
前記第二の分散補償器の出力光信号の通信品質を監視する監視手段と、
前記監視手段によって監視された通信品質の変化方向に基づいて前記光信号の分散量の増減方向を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に基づいて前記第一の分散補償器の補償量を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする分散補償装置。
(付記2)前記第二の分散補償器は、前記出力光信号の通信品質の劣化を示す値が所定の値以上となる分散補償量を有することを特徴とする付記1に記載の分散補償装置。
(付記3)前記第二の分散補償器は、可変の補償量によって光信号を分散補償することを特徴とする付記1または2に記載の分散補償装置。
(付記4)前記制御手段は、前記分散補償器の補償量を変化させた場合に、前記第二の分散補償器の補償量を前記光信号の分散量に対して過少または過多な補償量に再度制御することを特徴とする付記3に記載の分散補償装置。
(付記5)前記制御手段は、前記光信号の分散量に対して過少な第一の補償量と、前記光信号の分散量に対して過多な第二の補償量と、を交互に切り替えるように前記第二の分散補償器の補償量を制御し、
前記監視手段は、前記第二の分散補償器によって前記第一の補償量および前記第二の補償量で分散補償された各光信号の各通信品質を監視し、
前記判定手段は、前記監視手段によって監視された各通信品質の増減方向に基づいて前記分散量の増減方向を判定することを特徴とする付記3に記載の分散補償装置。
(付記6)前記分岐手段と前記第二の分散補償器との間に配置され、前記分岐手段からの光信号を分岐する第二の分岐手段と、
前記第二の分岐手段により分岐された光信号を分散補償する第三の分散補償器と、を備え、
前記第三の分散補償器は、前記出力光信号の通信品質を示す値が所定の値以上に悪くなる分散補償量であり、かつ、前記第二の分散補償器の分散補償量とは、通信品質を示す値の、分散量の変化に対する増減が逆特性となる分散補償量を有し、
前記監視手段は、前記第二の分散補償器および前記第三の分散補償器によって分散補償された各光信号の通信品質を監視し、
前記判定手段は、前記各光信号の通信品質を示す値の増減方向に基づいて前記分散量の増減方向を判定することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の分散補償装置。
(付記7)前記第二の分散補償器および前記第三の分散補償器によって分散補償された各光信号のいずれか一方を出力する光スイッチを備え、
前記制御手段は、前記各光信号のうちの前記光スイッチが出力する光信号を交互に切り替えるように前記光スイッチを制御し、
前記監視手段は、前記制御手段によって前記光スイッチから出力された各光信号の通信品質を監視し、
前記判定手段は、前記監視手段によって監視された各光信号の通信品質の増減方向に基づいて前記分散量の増減方向を判定することを特徴とする付記6に記載の分散補償装置。
(付記8)前記光信号に対する分散補償の補償量と前記光信号の前記通信品質を示す値との対応情報を保存する保存手段を備え、
前記制御手段は、前記監視手段によって監視された通信品質と前記保存手段によって保存された対応情報とに基づいて前記光信号の波長分散の変化量を算出し、算出した変化量に基づいて前記第一の分散補償器の補償量を制御することを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の分散補償装置。
(付記9)前記制御手段は、前記監視手段によって監視された光信号の通信品質が所定期間以上、所定量以上変動しない場合は、前記補償量の制御周期を長くすることを特徴とする付記1〜8のいずれか一つに記載の分散補償装置。
(付記10)前記制御手段は、前記監視手段によって監視された光信号の通信品質が所定期間以上、所定量以上変動しない場合は、前記監視手段による前記通信品質の監視周期を長くすることを特徴とする付記1〜8のいずれか一つに記載の分散補償装置。
(付記11)受信される光信号を分岐する分岐手段と、
前記分岐手段により分岐された一方の光信号を可変の補償量によって分散補償する第一の分散補償器と、
前記分岐手段により分岐された他の光信号を分散補償する第二の分散補償器と、
前記第二の分散補償器の出力光信号の通信品質を監視する監視手段と、
前記監視手段によって監視された通信品質の変化方向に基づいて前記光信号の分散量の増減方向を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に基づいて前記第一の分散補償器の補償量を制御する制御手段と、
前記第一の分散補償器によって分散補償された光信号を受信する光受信機と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
(付記12)波長分割多重された光信号を受信する光受信装置において、
前記光信号を波長多重分離する波長多重分離手段と、
前記波長多重分離手段によって波長多重分離された各光信号を分散補償する付記6に記載の分散補償装置と、
前記第一の分散補償器によって分散補償された各光信号を受信する各光受信機と、を備え、
前記第二の分散補償器は、前記波長多重分離手段によって波長多重分離された各光信号のうちのいずれかの光信号を波長分散し、
前記第三の分散補償器は、前記波長多重分離された各光信号のうちの前記いずれかの光信号とは異なる光信号を波長分散することを特徴とする光受信装置。
(付記13)受信される光信号を分岐する分岐工程と、
前記分岐工程により分岐された一方の光信号を可変の補償量によって分散補償する第一の分散補償工程と、
前記分岐工程により分岐された他の光信号を分散補償する第二の分散補償工程と、
前記第二の分散補償工程の出力光信号の通信品質を監視する監視工程と、
前記監視工程によって監視された通信品質の変化方向に基づいて前記光信号の分散量の増減方向を判定する判定工程と、
前記判定工程による判定結果に基づいて前記第一の分散補償工程の補償量を制御する制御工程と、
を含むことを特徴とする分散補償方法。
(付記14)受信される光信号を分岐する分岐工程と、
前記分岐工程により分岐された一方の光信号を可変の補償量によって分散補償する第一の分散補償工程と、
前記分岐工程により分岐された他の光信号を分散補償する第二の分散補償工程と、
前記第二の分散補償工程の出力光信号の通信品質を監視する監視工程と、
前記監視工程によって監視された通信品質の変化方向に基づいて前記光信号の分散量の増減方向を判定する判定工程と、
前記判定工程による判定結果に基づいて前記第一の分散補償工程の補償量を制御する制御工程と、
前記第一の分散補償工程によって分散補償された光信号を受信する光受信機と、
を含むことを特徴とする光受信方法。