JP5457289B2 - 大スパン屋根構造建築物 - Google Patents

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Description

本発明は、競技場の周囲に設置されたスタンドの上方を、スタンド外周部に設置した鉛直支持部材で支持された大屋根で覆った大スパン屋根構造建築物に関する。
競技場の周囲に設置されたスタンドの上方や、そのスタンドの上方を含む競技場全体を大屋根で覆った大スパン屋根構造建築物としては、次の四つの方式が知られている(非特許文献1から一部抜粋)。
(1)片持ち梁方式(横浜国際総合競技場、静岡スタジアム)
(2)斜張式片持ち梁方式(東京スタジアム、茨城県立カシマサッカースタジアム)
(3)先端支持単純梁方式(先端支持材がアーチ形式:神戸ウイングスタジアム、宮城スタジアム、埼玉スタジアム、長居陸上競技場。先端支持材を吊り材で支持する形式:豊田スタジアム、熊本県民総合運動公園陸上競技場)
(4)シェル・ドーム方式(大分スポーツ公園総合競技場、札幌ドーム、新潟スタジアム)
(1)・(2)の方式は、スタンド外周部に設置された柱等の鉛直支持部材により、当該鉛直支持部材からスタンド内周部側(競技場側)へ跳ね出した屋根支持梁を片持ち支持させたものであるから、荷重伝達方向が一方向であり、柱梁境界部の曲げモーメントの処理、変形制御が課題となる。変形を所定の目標値に納める為には、跳ね出し根元で梁成を大きくしたり、跳ね出し長さ短縮の為の部材配置(方杖や吊り材)等が必要となる。
(2)の方式は、片持ち梁の先端を斜め上方へ吊り上げるので、(1)の方式に比べて主架構断面の縮小が可能であり、フィールド面からの視野に対する軽量感は表現できるが、屋根面上に突出したストラットや吊り材の存在が、外観のイメージに大きな影響を及ぼす。また、建築物の高さに制限がある敷地条件では採用が難しい。
(3)の方式は、跳ね出しの先端近傍にキールアーチや水平梁を設置することにより、片持ち梁方式から単純梁方式への変換を目指したものであり、キール梁の支持スパン・支持荷重が大きくなる為、キール梁およびキール梁支持材に巨大な部材が配置される。吊り材を設ける形式の場合には、キール材の断面の縮小が可能であり、フィールド面からの視野に対する軽量感は表現できるが、吊り材を支持する巨大なマストの存在が、外観のイメージに大きな影響を及ぼす。また、建築物の高さに制限がある敷地条件では採用が難しい。
(4)の方式は、二方向の荷重伝達あるいは立体抵抗を特徴とするが、これらを実現する為には、屋根架構は連続体の性質を有する必要があり、屋根架構全体で荷重に抵抗する為、構造物の全体挙動の把握が必要となる。スペースフレームなどが用いられるが、コストコントロールが課題となる。
「建築技術2002年4月号」、P109〜110
本発明は、上記の従来技術における問題点を踏まえて成されたものであって、その目的
とするところは、競技場の周囲に設置されたスタンドの上方を、スタンド外周部に設置した鉛直支持部材で支持された大屋根で覆った大スパン屋根構造、換言すれば、スタンド内部に視界の妨げとなる柱等の鉛直支持部材を設けない大スパン屋根構造であるにもかかわらず、大屋根の支持スパンをスタンド外周部間のスパンよりも縮小して、屋根支持梁の応力・変形を低減でき、ローコスト化を可能にすると共に、屋根支持梁の梁成を縮小して、屋根支持梁がスタンド客席からの視線の妨げとならないようにすることができ、しかも、屋根面上への吊り材などの突出部が無いので建物高さの制限がある敷地条件下においても採用し易い大スパン屋根構造建築物を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明は、競技場の周囲に設置されたスタンドの上方を、スタンド外周部に設置した鉛直支持部材で支持された大屋根で覆った大スパン屋根構造建築物であって、スタンド外周部に設置された鉛直支持部材に4本の屋根支持梁を競技場の周囲四辺に合わせて方形状に架け渡すにあたり、当該方形状の四隅に対応する位置に、夫々、当該方形状の各辺に対して斜めに交差する斜め方向の主梁を、それらの両端がスタンド外周部に設置した鉛直支持部材で支持された状態に設置し、前記4本の屋根支持梁をこれらの斜め方向の主梁が中間支持点となる状態に架け渡してあることを特徴としている。
尚、本発明において、4本の屋根支持梁を「方形状」に架け渡すとは、4本の屋根支持梁を平面視において「正方形状」や「長方形状」となるように互いに直角に配置し且つ隣り合う2本の屋根支持梁の端部を交差させた「井桁」に架け渡す場合と、4本の屋根支持梁を互いに直角に配置するが、隣り合う2本の屋根支持梁の端部を交差させないように屈曲させた「井桁に近似した形」に架け渡す場合とを包含する意味である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の大スパン屋根構造建築物であって、4本の屋根支持梁及び斜め方向の主梁がトラス梁であることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の大スパン屋根構造建築物であって、4本の屋根支持梁が斜め方向の主梁との接合点から両端にかけて位置する梁部分を外側程低くなるよう傾斜させた形状とされていることを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の大スパン屋根構造建築物であって、斜め方向の主梁を支持する鉛直支持部材が、主梁端部から鉛直面内において両側下方へ傾斜した一対の斜材であることを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の大スパン屋根構造建築物であって、スタンド外周部に、4本の屋根支持梁における傾斜下端部と斜め方向の主梁の鉛直支持部材である斜材の足元とを水平面内で環状に連結するテンションリングを設けたことを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、方形状の各辺に対して斜め方向に配置することで、スタンド外周部の鉛直支持部材に方形状に架け渡す4本の屋根支持梁よりも支持スパンが短くなる斜め方向の主梁が、4本の屋根支持梁の中間支持点となり、屋根支持梁の支持スパンがスタンド外周部間のスパンよりも縮小され、連梁効果が発揮されることにより、屋根支持梁の応力・変形を低減でき、ローコスト化が可能である。
また、スタンドの客席からの視線や外観の美しさを考慮した場合、梁成に制約を受けることが多いが、この発明によれば、支持スパンが縮小されるので、梁成を小さくして、建
物高さを、吊り材を設けない従来技術よりも小さくした上で、スタンド客席からの視線の妨げとならないようにすることができる。
しかも、従来技術として例示した斜張式片持ち梁方式や、吊り材支持形式の先端支持単純梁方式のように、屋根面上への突出部を設ける必要が無いので、建物高さの制限がある敷地条件下においても採用し易い。
請求項2に記載の発明によれば、上記の効果に加え、4本の屋根支持梁及び斜め方向の主梁を夫々トラス梁としたので、各方向のトラス成を合わせて、接合部の納まりの良い、軽量感の表現された屋根架構を容易かつ経済的に実現できる。即ち、例えば、競技場が長方形である場合、長辺に沿って架設される屋根支持梁と、短辺に沿って架設される屋根支持梁とでは、支持スパンが異なるので、H形鋼の単材による屋根支持梁を単一梁成で経済設計しようとすると、断面諸量の調整が困難である。応力・変形に応じて梁成を変える場合には、接合部の納まりが煩雑となり、美観上の問題もある。また、長大スパンを支持するため断面が大きくなり、架構の軽快さが損なわれる。
この点、請求項2に記載の発明では、トラス梁を用いることで、各方向のトラス成を合わせたまま、その構成部材(弦材、斜材等)の断面諸量を変えることで、剛性や耐力を望ましい値に調整することが容易である。また、H形鋼の単材と比較して構成部材も縮小できる為、架構の軽快さを確保することができ、ローコスト化も可能である。
請求項3に記載の発明によれば、上記の効果に加え、4本の屋根支持梁を斜め方向の主梁との接合点から両端にかけて位置する梁部分が外側程低くなるように傾斜した形状としたので、アーチ効果が発生し、曲げ応力・鉛直変形を低減することが可能になる。また、アーチ形状を採用した場合、一般に、アーチ梁端部に大きなスラスト力が発生し、スラスト力を支持する為に大断面の支持部材が必要になるが、この発明によれば、斜め方向に配置した主梁が中間支持点となって、アーチ梁端部の応力を低減することにより、アーチ梁端部のスラスト力支持部材を簡素化することが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、上記の効果に加え、斜め方向の主梁の端部直下に、鉛直な柱が存在せず、三角形の空間が形成されるので、架構の軽快さを一層強調することができる。
請求項5に記載の発明によれば、上記の効果に加え、スタンド外周部に、4本の屋根支持梁(トラス梁)における傾斜下端部と斜め方向の主梁の鉛直支持部材である斜め柱の足元とを水平面内で環状に連結するテンションリングを設けたので、屋根支持梁(トラス梁)がアーチ形状に形成されていることに起因するスラスト力を柱等の鉛直支持部材で支持する必要がなく、鉛直支持部材のローコスト化が可能である。殊に、テンションリングをスタンド外周部上部の鉄筋コンクリート梁に埋め込むことにより、高剛性のテンションリングを実現でき、テンションリングによる屋根支持梁(トラス梁)端部の水平変形拘束力を高めて、トラス梁中央部の応力・変形を低減でき、ローコスト化が可能となる。
本発明の実施形態を示す大スパン屋根構造建築物の概略平面図である。 図1で示した大スパン屋根構造建築物の概略斜視図である。 本発明の他の実施形態を示す大スパン屋根構造建築物の概略斜視図である。 本発明の他の実施形態を示す大スパン屋根構造建築物の概略平面図である。 図4で示した大スパン屋根構造建築物の概略斜視図である。 本発明の他の実施形態を示す大スパン屋根構造建築物の概略斜視図である。 本発明の他の実施形態を示す大スパン屋根構造建築物の屋根架構の平面図である。 図7で示した屋根架構を持つ大スパン屋根構造建築物の概略斜視図である。 図8で示した大スパン屋根構造建築物の詳細な構成を示す斜視図である。 図9で示した大スパン屋根構造建築物の外観を示す斜視図である。 本発明の他の実施形態を示す大スパン屋根構造建築物の屋根架構の概略斜視図である。 図11で示した屋根架構を備えた大スパン屋根構造建築物の斜視図である。 本発明の他の実施形態を示す大スパン屋根構造建築物の屋根架構の概略平面図である。 図13で示した屋根架構を持つ大スパン屋根構造建築物の概略斜視図である。 図14で示した大スパン屋根構造建築物の外観を示す斜視図である。
図1と図2は、本発明の第一の実施形態を示す。この実施形態は、長方形に形成され、天然芝が貼られた競技場1の周囲に、多数の客席を備えたスタンド(図示せず)が競技場1全周を取り囲む状態に設置され、その上方を、スタンド外周部に設置した鉛直支持部材としての柱2で支持された大屋根3で覆った大スパン屋根構造建築物であって、次の屋根架構形式を採用した点に特徴がある。
即ち、図1、図2に示すように、スタンド外周部に設置された鉛直支持部材としての柱2に4本の屋根支持梁4を競技場1の周囲四辺に合わせて長方形状の井桁に架け渡すにあたり、当該長方形状の四隅に対応する位置に、夫々、当該長方形状の短辺と長辺に対して平面視において45度斜めに交差する水平な斜め方向の主梁5を、それらの両端がスタンド外周部に設置した鉛直支持部材としての柱2で支持された状態に設置し、前記4本の屋根支持梁4をこれらの斜め方向の主梁5が中間支持点となる状態に架け渡してある。大屋根3の外形はスタンド外周部と平面形状を一致させてある。
尚、この実施形態においては、大屋根3がスタンドの上方だけを覆うように設けられ、競技場1の上方に開口が形成されている。大屋根3の開口縁は屋根支持梁4より若干内側へ張り出した状態に設けられている。屋根支持梁4や斜め方向の主梁5としては、H形鋼やI形鋼の単材で構成することも可能であるが、図示の実施形態では、図2に示すように、屋根支持梁4や斜め方向の主梁5をトラス梁に構成してある。また、小梁やそれを支持する外周柱は図面上省略してある。
上記の構成によれば、4本の屋根支持梁4が形づくる長方形状の短辺と長辺に対して斜め方向に配置することで、スタンド外周部の柱(鉛直支持部材)2に架け渡す4本の屋根支持梁4よりも支持スパンが短くなる斜め方向の主梁5が、4本の屋根支持梁4の中間支持点となり、屋根支持梁4の支持スパンがスタンド外周部間のスパンよりも縮小され、連梁効果が発揮されることにより、屋根支持梁4の応力・変形を低減でき、ローコスト化が可能である。
また、スタンドの客席からの視線や概観の美しさを考慮した場合、梁成に制約を受けることが多いが、上記の構成によれば、支持スパンが縮小されるので、梁成を小さくして、建物高さを、吊り材を設けない従来技術よりも小さくした上で、スタンド客席からの視線の妨げとならないようにすることができる。
しかも、従来技術として例示した斜張式片持ち梁方式や、吊り材支持形式の先端支持単純梁方式のように、屋根面上への突出部を設ける必要が無いので、建物高さの制限がある
敷地条件下においても採用し易い。
殊に、上記の構成によれば、4本の屋根支持梁4及び斜め方向の主梁5を夫々トラス梁としたので、各方向のトラス成を合わせて、接合部の納まりの良い、軽量感の表現された屋根架構を容易かつ経済的に実現できる。即ち、競技場1が長方形であるから、長辺に沿って架設される屋根支持梁4と、短辺に沿って架設される屋根支持梁4とでは、支持スパンが異なるので、H形鋼の単材による屋根支持梁4を単一梁成で経済設計しようとすると、断面諸量の調整が困難であり、応力・変形に応じて梁成を変える場合には、接合部の納まりが煩雑となり、美観上の問題もある。また、長大スパンを支持するため断面が大きくなり、架構の軽快さが損なわれる。
この点、上記の実施形態では、トラス梁を用いることで、各方向のトラス成を合わせたまま、その構成部材(弦材、斜材等)の断面諸量を変えることで、剛性や耐力を望ましい値に調整することが容易である。また、H形鋼の単材と比較して構成部材も縮小できる為、架構の軽快さを確保することができ、ローコスト化も可能である。
図3は、本発明の第二の実施形態を示す。この実施形態は、2本の斜め方向の主梁5における互に近接する側の一端を、1本の柱2で支持することにより、鉛直支持部材としての柱2の本数を減少した点に特徴がある。その他の構成や作用は、図1、図2で示した第一の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
図4、図5は、本発明の第三の実施形態を示す。この実施形態は、4本の斜め方向の主梁5をそれらの端部が互に近接するように配置し、4本の斜め方向の主梁5を4本の柱2で支持することにより、鉛直支持部材としての柱2の本数を最小限まで減少した点に特徴がある。その他の構成や作用は、図1、図2で示した第一の実施形態と実質的に同じであるため、説明を省略する。
図6は、本発明の第四の実施形態を示す。この実施形態は、4本の屋根支持梁4における斜め方向の主梁5との接合点から両端にかけて位置する梁部分4aを外側程低くなるよう傾斜させることにより、4本の屋根支持梁4をアーチ梁とした点に特徴がある。
上記の構成によれば、4本の屋根支持梁4を斜め方向の主梁5との接合点から両端にかけて位置する梁部分4aが外側程低くなるように傾斜した形状としたので、アーチ効果が発生し、曲げ応力・鉛直変形を低減することが可能になる。また、アーチ形状を採用した場合、一般に、アーチ梁端部に大きなスラスト力が発生し、スラスト力を支持する為に大断面の支持部材が必要になるが、この実施形態によれば、斜め方向に配置した主梁(トラス梁)5が中間支持点となって、アーチ梁端部の応力を低減することにより、アーチ梁端部のスラスト力支持部材を簡素化することが可能となる。その他の構成や作用は、図1、図2で示した第一の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
図7〜図10は、本発明の第五の実施形態を示す。この実施形態は、4本の屋根支持梁(トラス梁)4を平面視において長方形状となるように互いに直角に配置するが、井桁ではなく、隣り合う2本の屋根支持梁4の端部を交差させないように斜め方向の主梁(トラス梁)5との接合点から両端にかけて位置する梁部分4aを平面視で互に平行に屈曲させた「井桁に近似した形」に架け渡したこと、及び、4本の屋根支持梁4における斜め方向の主梁(トラス梁)5との接合点から両端にかけて位置する梁部分4aを外側程低くなるよう傾斜させることにより、4本の屋根支持梁4をアーチ梁としたことを特徴としている。
斜め方向の主梁5の両端は、夫々、2本の柱(鉛直支持部材)で支持されているが、図
3で示した第二の実施形態と同様に、2本の斜め方向の主梁5における互に近接する側の一端を、1本の柱2で支持することにより、鉛直支持部材としての柱2の本数を減少してもよい。6は小梁、7は小梁6の一端を支持する外周柱、8は競技場1の周囲に競技場1全周を取り囲む状態に設置されたスタンド、9はスタンド8の外周部と大屋根3の外周部との間に形成された鉛直面内の開口である。大屋根3の外形は八角形であり、スタンド外周部と平面形状を一致させてある。大屋根3の四隅部は外側が低くなるように傾斜し且つ中央が下方へ折り込まれた形状とされている。その他の構成や作用は、図1、図2で示した第一の実施形態や図6で示した第四の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
図11、図12は、本発明の第六の実施形態を示す。この実施形態は、4本の屋根支持梁(トラス梁)4における斜め方向の主梁(トラス梁)5との接合点から両端にかけて位置する梁部分4aを外側程低くなるよう傾斜させると共に、当該屋根支持梁4における中央梁部分(斜め方向の主梁5との接合点間に位置する梁部分)を逆梁にして、競技場1の周囲四辺に対応する四方の略水平(水平でもよく、水勾配等を確保するために若干傾斜させてもよいという意味である。)な屋根部分3aを吊下げ支持させたこと、四隅部に斜めに配置する斜め方向の主梁5の形状を、下弦材が全長にわたって水平であって、且つ、両側の屋根支持梁4との接合点間に位置する中央の梁部分については上弦材を水平に配置すると共に、梁成を高くし、屋根支持梁4との接合点から両端にかけて位置する梁部分5aについては梁端に至るほど低くなるように上弦材を傾斜させた形状としたこと、四隅部に配置される屋根部分3bについては、斜め方向の主梁5と、屋根支持梁4における斜め方向の主梁5との接合点から両端にかけて位置する梁部分4aとで支持された外下がりに傾斜し、且つ、前記梁部分4aの位置を折線として両側が下方へ折れ曲った形状としたことを特徴としている。
この構成によれば、大屋根3が競技場1の周囲四辺に対応する四方の略水平な屋根部材3aと四隅部の外下がりに傾斜した屋根部材3bとで構成され、平面視においては、競技場1の周囲を途切れることなく連続して囲繞する環状を呈するが、側面視においては、水平な屋根部材3aと四隅部の傾斜した屋根部材3bとの間に、斜め方向の主梁5の梁成に対応する空間が形成され、水平な屋根部分3aの上に屋根支持梁4が露出した形状の大屋根3となる。これらの結果として、軽量感の強調された美麗な外観が得られる。その他の構成や作用は、図7〜図10の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
図13〜図15は、本発明の第七の実施形態を示す。この実施形態は、斜め方向の主梁5を支持する鉛直支持部材として、主梁5端部から鉛直面内において両側下方へ傾斜した一対の斜材2a、2bを設けたこと、及び、スタンド外周部に、4本の屋根支持梁4の傾斜下端部と斜め方向の主梁5の鉛直支持部材である斜材2a、2bの足元とを水平面内で環状に連結するテンションリング10を設けたことを特徴としている。
上記の構成によれば、斜め方向の主梁(トラス梁)5の端部直下に、鉛直な柱が存在せず、三角形の空間11が形成されるので、架構の軽快さを一層強調することができる。しかも、スタンド外周部に、4本の屋根支持梁(トラス梁)4における傾斜下端部と斜め方向の主梁5の鉛直支持部材である斜材2a、2bの足元とを水平面内で環状に連結するテンションリング10を設けたので、屋根支持梁(トラス梁)4がアーチ形状に形成されていることに起因するスラスト力を柱等の鉛直支持部材で支持する必要がなく、鉛直支持部材のローコスト化が可能である。
尚、前記テンションリング10は、図14に示すように、水平なトラス梁によって構成されているが、テンションリング10の構成はこれに限定されない。例えば、大屋根3の外形とスタンド外周部の平面形状を一致させ、テンションリングをスタンド外周部上部の鉄筋コンクリート梁に埋め込むことにより、高剛性のテンションリングを実現でき、テン
ションリングによる屋根支持梁(トラス梁)4端部の水平変形拘束力を高めて、トラス梁中央部の応力・変形を低減でき、ローコスト化が可能となる。また、斜材2a、2bと合わせて鉛直柱を設定することで斜材2a、2bの断面積を縮小することも可能である。
上記の各実施形態においては、何れも、大屋根3がスタンド8の上方にのみ設けられ、競技場1の真上が開口しているが、本発明が、競技場1の周囲に設置されたスタンド8の上方だけでなく、そのスタンド8の上方を含む競技場全体を大屋根3で覆った大スパン屋根構造建築物として実施できることは勿論である。
1 競技場
2 鉛直支持部材としての柱
2a、2b 鉛直支持部材としての斜材
3 大屋根
3a、3b 屋根部分
4 屋根支持梁
4a 梁部分
5 斜め方向の主梁
5a 梁部分
6 小梁
7 外周柱
8 スタンド
9 鉛直面内の開口
10 テンションリング
11 三角形の空間

Claims (5)

  1. 競技場の周囲に設置されたスタンドの上方を、スタンド外周部に設置した鉛直支持部材で支持された大屋根で覆った大スパン屋根構造建築物であって、スタンド外周部に設置された鉛直支持部材に4本の屋根支持梁を競技場の周囲四辺に合わせて方形状に架け渡すにあたり、当該方形状の四隅に対応する位置に、夫々、当該方形状の各辺に対して斜めに交差する斜め方向の主梁を、それらの両端がスタンド外周部に設置した鉛直支持部材で支持された状態に設置し、前記4本の屋根支持梁をこれらの斜め方向の主梁が中間支持点となる状態に架け渡してあることを特徴とする大スパン屋根構造建築物。
  2. 4本の屋根支持梁及び斜め方向の主梁がトラス梁であることを特徴とする請求項1に記載の大スパン屋根構造建築物。
  3. 4本の屋根支持梁が斜め方向の主梁との接合点から両端にかけて位置する梁部分を外側程低くなるよう傾斜させた形状とされていることを特徴とする請求項2に記載の大スパン屋根構造建築物。
  4. 斜め方向の主梁を支持する鉛直支持部材が、主梁端部から鉛直面内において両側下方へ傾斜した一対の斜材であることを特徴とする請求項3に記載の大スパン屋根構造建築物。
  5. スタンド外周部に、4本の屋根支持梁における傾斜下端部と斜め方向の主梁の鉛直支持部材である斜材の足元とを水平面内で環状に連結するテンションリングを設けたことを特徴とする請求項4に記載の大スパン屋根構造建築物。
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