以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではない。
まず、本発明のバイオマス資源由来ポリエステル製発泡体の原料としてのポリエステル(以下「本発明のポリエステル」と称す場合がある。)について説明する。
[ポリエステル]
本発明のポリエステルは、ジカルボン酸単位及びジオール単位を必須成分とする。なお、本発明においてジカルボン酸単位及びジオール単位を構成するジカルボン酸及びジオールは、少なくともいずれか一方がバイオマス資源から誘導されたものである。
<ジカルボン酸単位>
ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸又はそれらの混合物、若しくは、芳香族ジカルボン酸又はそれらの混合物、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものが好ましい。本発明でいう主成分とは、全ジカルボン酸単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を占める成分をさす。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。この内、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。本件明細書に開示の芳香族ジカルボン酸を使用した場合にも、例えばジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールのポリエステルのように任意の芳香族ジカルボン酸を使用することにより所望の芳香族ポリエステルが製造できる。
脂肪族ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体が使用される。脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常炭素数が2以上40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物も使用できる。これらの内、脂肪族ジカルボン酸としては、得られる重合体の物性の面から、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸又はこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、又はこれらの混合物がより好ましい。
これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合して使用することもできる。
本発明において、これらのジカルボン酸は、バイオマス資源から誘導されるものが好ましい。
本発明でいうバイオマス資源とは、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれる。この中でも、より好ましいバイオマス資源としては、植物資源であるが、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。この中でも木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは木材、稲わら、籾殻、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣であり、最も好ましくはとうもろこし、さとうきび、キャッサバ、サゴヤシである。これらのバイオマス資源は、一般に、窒素元素やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する。
そしてこれらのバイオマス資源は、特に限定はされないが、例えば酸やアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理、物理的処理等の公知の前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導される。その工程には、例えば、通常特に限定はされないが、バイオマス資源をチップ化する、削る、擦り潰す等の前処理による微細化工程が含まれる。必要に応じて、更にグラインダーやミルによる粉砕工程が含まれる。こうして微細化されたバイオマス資源は、更に前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導されるが、その具体的な方法としては、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸等の強酸で酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理、酸化剤処理等の化学的方法や、微粉砕、蒸煮爆砕法、マイクロ波処理、電子線照射等の物理的方法、微生物や酵素処理による加水分解等の生物学的処理が挙げられる。
上記のバイオマス資源から誘導される炭素源としては、通常グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース、ペントサン、サッカロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の油脂、グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、フルクトース、キシロースが好ましく、特にグルコースが好ましい。より広義の植物資源由来の炭素源としては、紙の主成分であるセルロースが好ましい。
これらの炭素源を用いて、微生物変換による発酵法や加水分解・脱水反応・水和反応・酸化反応等の反応工程を含む化学変換法ならびにこれらの発酵法と化学変換法の組み合わせによりジカルボン酸が合成される。これらの中でも微生物変換による発酵法が好ましい。
微生物変換に用いる微生物としては、ジカルボン酸の生産能を有すれば特に限定されないが、例えば、Anaerobiospirillum属(米国特許第5143833号明細書)等の嫌気性細菌、Actinobacillus属(米国特許第5504004号明細書)、Escherichia属(米国特許第5770435号明細書)等の通性嫌気性細菌(E.coli(J.Bacteriol.,57:147−158)又はE.coliの株の変異体(特表2000−500333号公報、米国特許第6159738号明細書)、Corynebacterium属(特開平11−113588号公報)などの好気性細菌、Bacillus属、Rizobium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属に属する好気性細菌(特開2003−235593号公報)、Bacteroidesruminicola、Bacteroidesamylophilus等の嫌気性ルーメン細菌などを用いることができる。これらの文献は、ここに参照として取り込まれる。
より具体的には、本発明に使用できる細菌の親株は、コリネ型細菌(coryneform bacterium)、バチルス属細菌、又はリゾビウム属細菌が好ましく、コリネ型細菌がより好ましい。これらの菌は、微生物変換によりコハク酸の生産能を有する。
コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム属に属する微生物、ブレビバクテリウム属に属する微生物又はアースロバクター属に属する微生物が挙げられ、このうち好ましくはコリネバクテリウム属又はブレビバクテリウム属に属するものが挙げられ、更に好ましくはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)又はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に属する微生物が挙げられる。
上記細菌の親株の特に好ましい具体例としては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233(FERM BP−1497)、同MJ−233 AB−41(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6872、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC31831、及びブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869等が挙げられる。なお、ブレビバクテリウム・フラバムは、現在、コリネバクテリウム・グルタミカムに分類される場合もあることから(Lielbl,W.,Ehrmann,M.,Ludwig,W.and Schleifer,K. H.,International Journal of Systematic Bacteriology,1991,vol.41,p255−260)、本発明においては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株、及びその変異株MJ−233 AB−41株はそれぞれ、コリネバクテリウム・グルタミカムMJ−233株及びMJ−233 AB−41株と同一の株であるものとする。
なお、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233は、1975年4月28日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立法人 産業技術総合研究所 特許寄託センター)(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P−3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−1497が付与されている。
また、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233−AB−41は、1976年11月17日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立法人 産業技術総合研究所 特許寄託センター)(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P−3812として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−1498が付与されている。
微生物変換における反応温度、圧力等の反応条件は、選択される菌体、カビなど微生物の活性に依存することになるが、ジカルボン酸を得るための好適な条件を各々の場合に応じて選択すればよい。
微生物変換においては、pHが低くなると微生物の代謝活性が低くなったり、或いは微生物が活動を停止するようになり、製造歩留まりが悪化したり、微生物が死滅するため、通常、中和剤を使用してpH調整する。具体的にはpHセンサーによって反応系内のpHを計測し、所定のpH範囲となるように中和剤の添加によりpHを調節する。中和剤の添加方法については特に制限はなく、連続添加であっても間欠添加であってもよい。
中和剤としてはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。好ましくはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素である。なお上記アルカリ(土類)金属の水酸化物としてはNaOH、KOH、Ca(OH)2、Mg(OH)2等、或いはこれらの混合物などが挙げられ、アルカリ(土類)金属の炭酸塩としては、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、NaKCO3等、或いはこれらの混合物などが挙げられる。
pH値は、用いる菌体、カビ等の微生物の種類に応じて、その活性が最も有効に発揮される範囲に調整されるが、一般的には、pH4〜10、好ましくは6〜9程度の範囲である。
発酵法を含む製造方法により得られるジカルボン酸の精製方法は電気透析を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、塩交換法等が知られている。例えばジカルボン酸塩を分離し純粋な酸を生成する電気透析及び水分解工程を組み合わせて用いることによって製造し、更なる精製を、一連のイオン交換カラムに生成物ストリームを通すことによって行っても良いし、ジカルボン酸の過飽和溶液に変換するための水分解電気透析を用いても良い(米国特許第5,034,105号明細書)。また、塩交換法としては、例えばジカルボン酸のアンモニア塩を硫酸水素アンモニウム及び/又は硫酸と十分に低いpHで混合して反応させてジカルボン酸及び硫酸アンモニウムを生成させても良い(特表2001−514900号公報)。
イオン交換樹脂を用いる具体的方法としては、ジカルボン酸の溶液から遠心分離、濾過等により菌体等の固形分を除去した後、イオン交換樹脂で脱塩し、その溶液から結晶化或いはカラムクロマトグラフィーによりジカルボン酸を分離精製する方法が挙げられる。その他の精製方法としては、特開平3−30685号公報に記載のように水酸化カルシウムを中和剤として醗酵し、硫酸により硫酸カルシウムを析出させて除去した後、強酸性イオン交換樹脂、弱塩基性イオン交換樹脂を用いて処理する方法や、特開平2−283289号公報に記載のように、発酵法により生成したコハク酸塩を電気透析した後、強酸性イオン交換樹脂、弱塩基性イオン交換樹脂を用いて処理する方法が例示される。更には、USP6284904号明細書ならびに特開2004−196768号公報に記載の方法も好適に使用される。
すなわち、本発明においては、精製方法はどのような方法を用いても良く、上記の、電気透析を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、硫酸等の酸で処理する方法、水、アルコール、カルボン酸或いはそれらの混合物を用いた晶析ならびに洗浄、濾過、乾燥などの上記の公知文献や本発明の参考例に記載の任意の単位操作を任意の組み合わせで、必要に応じて繰り返し実施することにより本発明に適した精製されたモノマー原料を製造することができる。これらの中では、特に、コスト、効率の点でイオン交換法又は塩交換法が好ましく、工業的生産性の点で塩交換法が特に好ましい。
このような精製を行うことにより、ジカルボン酸中に含まれる不純物の窒素化合物や金属カチオンの量を減らすことが、通常実用的なポリエステルを得るために必要である。
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸には、バイオマス資源由来、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子が含まれてくる。具体的には、アミノ酸、たんぱく質、アンモニウム塩、尿素、発酵菌由来等の窒素原子が含まれてくる。
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸中に含まれる窒素原子含有量は、該ジカルボン酸に対して質量比で、上限は通常2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。下限は通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、精製工程の経済性の理由からより好ましくは0.1ppm以上、更に好ましくは1ppm以上、特に好ましくは10ppm以上である。ジカルボン酸中に含まれる窒素原子含有量が多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーのカルボキシル末端数量の増加、着色、一部ゲル化、そして安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。
窒素原子含有量は、元素分析法等の公知の方法や、アミノ酸分析計を用い、生体アミノ酸分離条件にて試料中のアミノ酸やアンモニアを分離し、これらをニンヒドリン発色させて検出する方法により測定される値である。
窒素原子含有量が上記の範囲にあるジカルボン酸を用いることで、得られるポリエステルの着色の減少に有利になる。また、ポリエステルの重合反応の遅延化を抑制する効果も併せ持つ。
ジカルボン酸中に含まれる不純物のアンモニアの量を効率的に減らす具体的な方法として、目的とするジカルボン酸よりもpHの高い弱酸性の有機酸を使用した反応晶析方法が挙げられる。
また、発酵法により製造したジカルボン酸を用いる場合には、酸による中和工程を含む精製処理により硫黄原子が含まれてくる場合がある。具体的に、硫黄原子が含有される不純物としては、硫酸、硫酸塩、亜硫酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸塩等が挙げられる。
また、上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸中に含まれる硫黄原子含有量は、該ジカルボン酸に対して質量比で、上限は通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは上限が10ppm以下、特に好ましくは上限が5ppm以下、最も好ましくは上限が0.5ppm以下である。一方、下限は通常0.001ppm以上、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、特に好ましくは0.1ppm以上である。ジカルボン酸中に含まれる硫黄原子含有量が多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーの一部ゲル化、そして生成ポリマーのカルボキシル末端数量の増加や安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。硫黄原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸をポリエステル原料として使用するにあたり、重合系に連結される該ジカルボン酸を貯蔵するタンク内の酸素濃度を一定値以下に制御してもよい。これによりポリエステルの不純物である窒素源の酸化反応による着色を防止することができる。
酸素濃度を制御して原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、又は樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好適に用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは0.01%以上である。一方、上限は通常16%以下、好ましくは14%以下、より好ましくは12%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、設備や管理工程が煩雑になり経済的に不利であり、一方、高すぎる場合には、製造されるポリエステルの着色が増加する傾向がある。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の温度は、下限が通常−50℃以上、好ましくは0℃以上である。一方、上限が通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下であるが、温度管理の必要がない理由から室温で貯蔵する方法が最も好ましい。温度が低すぎる場合には、貯蔵コストが増大する傾向があり、また、高すぎる場合には、ジカルボン酸の脱水反応等が併発する傾向がある。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の湿度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.0001%以上、好ましくは 0.001%以上であり、より好ましくは0.01%以上、最も好ましくは0.1%以上であり、上限は通常80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下である。湿度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑で経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、貯蔵タンクや配管へのジカルボン酸の付着、ジカルボン酸のブロック化、貯蔵タンクが金属製の場合にはタンクの腐食等が問題になる傾向がある。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の圧力は、通常大気圧(常圧)である。
本発明で使用されるジカルボン酸は、通常着色の少ないものであることが好ましい。本発明で使用されるジカルボン酸の黄色度(YI値)は、その上限が、通常50以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは6以下、特に好ましくは4以下であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常−20以上、好ましくは−10以上、より好ましくは−5以上、特に好ましくは−3以上、最も好ましくは−1以上である。高いYI値を示すジカルボン酸の使用は、製造されたポリエステルの着色が著しい欠点を有する。一方、低いYI値を示すジカルボン酸は、より好ましい形態ではあるが、その製造に極めて高額の設備投資を要する他、多大な製造時間を要するなど経済的に不利な点である。本発明において、YI値は、JIS K7105に基づく方法で測定される値である。
<ジオール単位>
本発明においてジオール単位とは、芳香族ジオール及び/又は脂肪族ジオールから誘導されるものであり、公知の化合物を用いることができるが、脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。
脂肪族ジオールとは、2個のOH基を有する脂肪族及び脂環式化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限値が2以上であり、上限値が通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中では、より融点の高いポリエステルが得られる理由から炭素数が偶数のジオール又はそれらの混合物が好ましい。
脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
この内、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコ−ル及び1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好ましく、その中でも、エチレングリコール及び1,4−ブタンジオ−ル、及びこれらの混合物が好ましく、更には、1,4−ブタンジオ−ルが主成分とするもの、又は、1,4−ブタンジオ−ルが特に好ましい。ここでいう主成分とは、全ジオール単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を占める成分をさす。
芳香族ジオールとしては、2個のOH基を有する芳香族化合物であれば、特に制限はされないが、炭素数の下限値が6以上であり、上限値が通常15以下の芳香族ジオールが挙げられる。芳香族ジオールの具体例としては、例えば、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン及びビス(p−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン等が挙げられる。
本発明において、ジオール全量中、芳香族ジオールの含有量は、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
また、両末端ヒドロキシポリエーテルを上記の脂肪族ジオールと混合して使用してもよい。両末端ヒドロキシポリエーテルとしては、炭素数の下限値が通常4以上、好ましくは10以上であり、上限値が通常1000以下、好ましくは200以下、更に好ましくは100以下であるものが挙げられる。
両末端ヒドロキシポリエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリ1,6−ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合ポリエーテル等を使用することもできる。これらの両末端ヒドロキシポリエーテルの使用量は、ポリエステル中の両末端ヒドロキシポリエーテル単位の含量として、通常90重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下に計算される量である。
本発明において、これらのジオールは、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。具体的には、ジオール化合物はグルコース等の炭素源から発酵法により直接製造してもよいし、発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、環状エーテルを化学反応によりジオール化合物に変換しても良い。
例えば発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン等から化学合成により1,4−ブタンジオールを製造しても良いし、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造してもよい。この中でもコハク酸を還元触媒により水添して1,4−ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましい。
コハク酸を水添する触媒の例としては、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Cu、Co及びその化合物が挙げられ、より具体的には、Pd/Ag/Re、Ru/Ni/Co/ZnO、Cu/Zn酸化物、Cu/Zn/Cr酸化物、Ru/Re、Re/C、Ru/Sn、Ru/Pt/Sn、Pt/Re/アルカリ、Pt/Re、Pd/Co/Re、Cu/Si、Cu/Cr/Mn、ReO/CuO/ZnO、CuO/CrO、Pd/Re、Ni/Co、Pd/CuO/CrO3、リン酸Ru、Ni/Co、Co/Ru/Mn、Cu/Pd/KOH、Cu/Cr/Znが挙げられる。この中でもRu/Sn又はRu/Pt/Snが触媒活性の点で好ましい。
更に、バイオマス資源から公知の有機化学触媒反応の組み合わせによりジオール化合物を製造する方法も積極的に用いられる。例えば、バイオマス資源としてペントースを利用する場合には公知の脱水反応、触媒反応の組み合わせで容易にブタンジオール等のジオールを製造できる。
バイオマス資源由来から誘導されたジオールには、バイオマス資源由来、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的には、アミノ酸、蛋白質、アンモニア、尿素、発酵菌由来の窒素原子が含まれてくる。
発酵法により製造したジオール中に含まれる窒素原子含有量は、該ジオールに対して質量比で、上限は通常2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。下限は特に制限されないが、通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、精製工程の経済性の理由からより好ましくは0.1ppm以上、更に好ましくは1ppm以上、特に好ましくは10ppm以上である。ジオール中に含まれる窒素原子含有量が、多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーのカルボキシル末端数量の増加、着色、一部ゲル化、そして安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。
発酵法により製造したジオールを用いる場合には、酸による中和工程を含む精製処理により硫黄原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的に、硫黄原子が含有される不純物としては、硫酸、亜硫酸、有機スルホン酸塩等が挙げられる。
また、発酵法により製造したジオール中に含まれる硫黄原子含有量は、該ジオールに対して質量比で、上限は通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは上限が10ppm以下、特に好ましくは上限が5ppm以下、最も好ましくは上限は0.5ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常0.001ppm以上、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、特に好ましくは0.1ppm以上である。ジオール中に含まれる硫黄原子含有量が、多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーの一部ゲル化、そして生成ポリマーのカルボキシル末端数量の増加や安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、硫黄原子含有量が少ない程、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。硫黄原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジオールをポリエステル原料として使用するにあたり、上記不純物に起因するポリエステルの着色を抑制するため、重合系に連結されるジオールを貯蔵するタンク内の酸素濃度や温度を制御してもよい。この制御により、不純物自身の着色や不純物により促進されるジオールの酸化反応が抑制され、例えば、1,4−ブタンジオールを使用する場合の2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン等のジオール酸化生成物によるポリエステルの着色を防止することができる。
酸素濃度を制御して原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、又は樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好適に用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
ジオールの貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは0.0001%以上であり、より好ましくは0.001%以上、最も好ましくは0.01%以上であり、上限が通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、最も好ましくは0.1%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、ジオールの酸化反応生成物によるポリエステルの着色が増大する傾向がある。
ジオールの貯蔵タンク内の貯蔵温度は、下限が通常15℃以上、好ましくは 30℃以上であり、より好ましくは50℃以上、最も好ましくは100℃以上であり、上限が230℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、最も好ましくは160℃以下である。温度が低すぎる場合には、ポリエステル製造時の昇温に時間を要し、ポリエステル製造が経済的に不利になる傾向があるばかりかジオールの種類によっては固化してしまう場合がある。一方、高すぎる場合には、ジオールの気化により高圧対応の貯蔵設備が必要となり経済的に不利になるばかりかジオールの劣化が増大する傾向がある。
ジオールの貯蔵タンク内の圧力は、通常大気圧(常圧)である。圧力が低すぎたり、高すぎる場合には、管理設備が煩雑になり経済的に不利となる。
本発明において、色相の良いポリエステルを製造するために、ジオール中の酸化生成物の含有量の上限は、通常10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、最も好ましくは2000ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常1ppm以上、好ましくは精製工程の経済性の理由から10ppm以上、より好ましくは100ppm以上である。
本発明においては、通常ジオールは蒸留による精製工程を経てポリエステル原料として使用される。
<ジカルボン酸単位とジオール単位との組み合わせ>
上記に列挙したジカルボン酸単位及びジオール単位の範疇に属する各種化合物を主体とする成分の反応により製造されるポリエステルはすべて本発明のポリエステルに含まれるが、典型的なものとして、以下のポリエステルが具体的に例示できる。
コハク酸を用いたポリエステルとしては、コハク酸とエチレングリコールのポリエステル、コハク酸と1,3−プロピレングリコ−ルのポリエステル、コハク酸とネオペンチルグリコールのポリエステル、コハク酸と1,6−ヘキサメチレングリコールのポリエステル、コハク酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル、及びコハク酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリエステルなどが例示できる。
シュウ酸を用いたポリエステルとしては、シュウ酸とエチレングリコールのポリエステル、シュウ酸と1,3−プロピレングリコ−ルのポリエステル、シュウ酸とネオペンチルグリコールのポリエステル、シュウ酸と1,6−ヘキサメチレングリコールのポリエステル、シュウ酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル、及びシュウ酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリエステルなどが例示できる。
アジピン酸を用いたポリエステルとしては、アジピン酸とエチレングリコールのポリエステル、アジピン酸と1,3−プロピレングリコ−ルのポリエステル、アジピン酸とネオペンチルグリコールのポリエステル、アジピン酸と1,6−ヘキサメチレングリコールのポリエステル、アジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル、及びアジピン酸1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリエステルなどが例示できる。
その他、上記のジカルボン酸を組み合わせたポリエステルも好ましい組み合わせであり、コハク酸とアジピン酸とエチレングリコールのポリエステル、コハク酸とアジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル、テレフタル酸とアジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル、及びテレフタル酸とコハク酸と1,4−ブタンジオールのポリエステルなどが例示できる。
<その他の共重合成分>
本発明のポリエステルは、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルであっても良い。
その共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能及び/又は3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤を使用することなく、極少量で容易に高重合度のポリエステルを製造できるので最も好ましい。
2官能のオキシカルボン酸としては、具体的には、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、カプロラクトン等が挙げられるが、これらはオキシカルボン酸のエステルやラクトン、或いはオキシカルボン酸重合体等の誘導体であっても良い。また、これらオキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、又はラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、又は水溶液であってもよい。これらの中では、入手の容易な乳酸又はグリコール酸が特に好ましい。その入手形態としては、30〜95重量%の水溶液のものが容易に入手することができる点で好ましい。
高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で2官能のオキシカルボン酸を共重合成分として使用する場合、任意の2官能のオキシカルボン酸を重合時に添加すると所望の共重合ポリエステルが製造できる。具体的には、その効果が発現する使用量としては、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して下限としては、通常0.02モル%以上、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上である。一方、使用量の上限は、原料モノマーに対して通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
具体的にそのポリエステルの態様を示すと、2官能のオキシカルボン酸として乳酸を用いたものとしては、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−乳酸の共重合ポリエステルや、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−乳酸の共重合ポリエステルが挙げられる。また、グリコール酸を用いたものとしては、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−グリコール酸の共重合ポリエステルが挙げられる。
3官能以上の多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
共重合成分の3官能以上の多価アルコールとしてペンタエリスリトールを用いたものとしては、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−ペンタエリスリトールの共重合ポリエステルや、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−ペンタエリスリトールの共重合ポリエステルが挙げられる。これらの3官能以上の多価アルコールを任意に変えて、所望の共重合ポリエステルを製造することができる。
また、これらの共重合ポリエステルを鎖延長(カップリング)した高分子量のポリエステルも本発明のポリエステルの範疇に属する。
3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物としては、具体的には、プロパントリカルボン酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
3官能以上のオキシカルボン酸としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。特に、入手のし易さから、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸ならびにその混合物が好ましい。
共重合成分の3官能のオキシカルボン酸としてリンゴ酸を用いたものとしては、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸の共重合ポリエステルが挙げられる。
これらの3官能のオキシカルボン酸を任意に変えて、所望の共重合ポリエステルを製造することができる。
更に2官能のオキシカルボン酸を組み合わせたものとして、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸−乳酸の共重合ポリエステルも本発明のポリエステルとして挙げられる。
上記の3官能以上の多官能化合物単位の量は、ゲルの発生原因となるため、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限値が通常5モル%以下、好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.50モル%以下、特に好ましくは0.3モル%以下である。一方、高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で3官能以上の化合物を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する使用量の下限値としては、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、通常0.0001モル%以上、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上である。
本発明のポリエステルは、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできるが、その量は、通常ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対し、カーボネート結合ならびにウレタン結合が通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。しかしながら、本発明のポリエステルを生分解性樹脂として使用する場合には、ジイソシアネートやカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する可能性があるため、その使用量は、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対し、カーボネート結合が1モル%未満、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合が0.06モル%未満、好ましくは0.01モル%以下、より好ましくは0.001モル%以下である。
カーボネート結合量やウレタン結合量は、13C NMR等のNMR測定により算出される。
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物が使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステルは従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
より具体的には、ジオールとジカルボン酸(又はその無水物)とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルプレポリマーに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20,000以上のプレポリマーであれば、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステルを製造することができる。
従って、例えば鎖延長剤として上記のジイソシアナートを用いて更に高分子量化をする場合には、ジオールとジカルボン酸からなる重量平均分子量が20,000以上、好ましくは40,000以上のプレポリマーが、ジイソシアナートに由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するポリエステルが製造される。
ポリエステルプレポリマーの鎖延長時の圧力は、通常0.01MPa以上、1MPa以下、好ましくは0.05MPa以上、0.5MPa以下、より好ましくは0.07MPa以上、0.3MPa以下であるが、常圧が最も好ましい。
ポリエステルプレポリマーの鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上であり、上限が通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向があり、また高すぎると、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上であり、より好ましくは5分以上であり、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下、最も好ましくは15分以下である。時間が短すぎる場合には、添加効果が発現しなくなる傾向があり、また、長すぎる場合には、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
また、その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。
珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシラン等が例示される。
珪酸エステルは、環境保全ならびに安全性の面の理由からは、特にその使用量に制限はされないが、操作が煩雑になったり、重合速度に影響を与える可能性があるため、その使用量は少ない方が良い場合がある。従って、この使用量は、ポリエステルを構成する全単量体単位100モルに対して、0.1モル%以下とするのが好ましく、10−5モル%以下とするのが更に好ましい。
このように、本発明のポリエステルは、ポリエステル、共重合ポリエステル、鎖延長(カップリング)された高分子量のポリエステル、及び変性ポリエステルを包含する。
また、本発明においては、ポリエステル末端基を、カルボジイミド、エポキシ化合物、単官能性のアルコール又はカルボン酸で封止しすることにより、ポリエステルの改質を行っても良い。
改質剤はポリエステルの末端カルボキシル基量の調製、発泡特性の改良等のために添加されるものであり、末端封止剤や増粘剤として有効であることから、カルボジイミド基を有するものが好ましく、このような改質剤としては、カルボジイミド化合物としては、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)が挙げられ、具体的には、モノカルボジイミド化合物として、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどが例示される。ポリカルボジイミド化合物としては、その重合度が、下限が通常2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは30以下であるものが使用され、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、及びChemical Review 1981、81巻、第4号、p.619−621等に記載された方法により製造されたものが挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物の製造原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を挙げることができ、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートなどが例示される。
工業的に入手可能な具体的なポリカルボジイミドとしては、カルボジライトHMV−8CA(日清紡製)、カルボジライト LA−1(日清紡製)、スタバクゾールP(ラインケミー社製)、スタバクゾールP100(ラインケミー社製)などが例示される。
カルボジイミド化合物は単独で使用することもできるが、複数の化合物を混合して使用することもできる。
その他の改質剤としては、ポリエステルの末端基と反応性を有するエポキシ、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
(エポキシ化合物)
さらに、エポキシド化合物としては、o-フェノールフェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、レゾルシングリシジルエーテル、ヒドロキノングリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはノボラック型エポキシ樹脂、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。この他、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物等のエポキシ化合物なども、改質剤として挙げられる。
(オキサゾリン化合物)
また、オキサゾリン化合物としては、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。
なお、上記改質剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
改質剤の使用量は、本ポリエステルを100重量部として、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、特に好ましくは0.2重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、特に好ましくは2重量部以下である。この範囲の下限を下回ると、耐水性、発泡体の所定の気泡の均一性および気泡の寸法などにおいて安定的に維持することができない。また、上限を上回ると製造費が高くなりすぎるとともに、所定の発泡特性、機械的か強度および耐水性のような改質剤の効果が無駄になり、カルボジイミドのような改質剤の余剰の影響が特に脂肪族ポリエステルの末端基ヒドロキシ基またはカルボキシル基の活性水素と高度に反応してゲル化を促進して加工に障害となることがある。特にポリエステル反応モノマーとして、2官能、3官能の多価アルコール、多価カルボン酸を用いた場合には、改質剤としての鎖伸長剤またはカップリング剤としての作用に微妙な調整を要することになる。
また、上記の使用量の範囲内において、改質剤は、定量的にポリエステル酸末端を封止する量を加えれば良いが、長期安定性や発泡体製造時における発泡剤含浸工程における加水分解抑制効果と溶融張力向上効果とを発現するためには、ポリエステル末端に対して改質剤を過剰に存在させることが望ましい。なお、ここで改質剤を過剰に存在させるとは、基材樹脂(即ち、本ポリエステル及び適宜使用されるその他の樹脂)の末端カルボキシル量を定量的に封止できる量以上に改質剤を加えることをいう。
(改質剤の処理方法)
本発明の発泡体に改質剤を含有させる具体的な方法に制限は無いが、通常は、ポリエステルの製造時でも良いし、発泡体製造工程中でもよく、前記ポリエステルと改質剤とを混合して、発泡体に改質剤を含有させるようにする。例えば、本ポリエステルを二軸混練機等で溶融混練する時に改質剤を同時に練り込んでもよいし、また、溶融している生分解性樹脂系に改質剤を混合させてもよい。なお、ここでいう樹脂粒子は、本発明の発泡体を製造する際に作製されるもので、この樹脂粒子を発泡成形させることにより本発明の発泡体が得られるようになっている。
溶融混練時に改質剤を練りこむ場合には、混練時温度としては120〜250℃が好ましい。温度が高すぎると、樹脂等の材料が熱劣化する虞があるためである。また、低分子揮発成分を除去する目的から、混練時には、混練機シリンダー途中を真空吸引(ベント吸引)できるようにすることが好ましい。なお、二軸混練機における二本のスクリューの回転方向は、同方向でも異方向でもよい。
また、改質剤を高含有で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。含有量が目的濃度となるように混合して希釈することができるためである。
マスターバッチ中の改質剤の含有量に制限は無いが、通常は1重量%以上、また、通常45重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。改質剤の含有量が少なすぎると、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、ゲル化が進行しやすくなる傾向がある。
マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されず、カルボジイミドを含有する市販マスターバッチでもよいが、使用する本ポリエステルを用いて製造されたマスターバッチがより好ましい。
<ポリエステル原料中の窒素原子含有量及び硫黄原子含有量>
本発明においては、前述のジカルボン酸原料及びジオール原料中に含まれる窒素原子含有量を、ポリエステル原料の総和に対して質量比で、通常500ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とする。一方、窒素原子含有量の下限は特に制限されないが、通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、0.1ppm以上である。ポリエステル中の窒素原子含有量が多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーのカルボキシル末端数量の増加、着色、一部ゲル化、そして安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。
また、本発明においては、前述のジカルボン酸原料及びジオール原料中に含まれる硫黄原子含有量を、ポリエステル原料総和に対して質量比で、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは上限が10ppm以下、特に好ましくは上限が5ppm以下、最も好ましくは0.5ppm以下とする。一方、硫黄原子含有量の下限は特に制限されないが、通常0.001ppm以上、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、特に好ましくは0.1ppm以上である。ポリエステル原料中の硫黄原子含有量が多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーのカルボキシル末端数量の増加、着色、一部ゲル化、そして安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。
<ポリエステルの製造方法>
ジオール単位及びジカルボン酸単位を主体とする本発明のポリエステルの製造は、ポリエステルを製造する公知技術で行うことができる。このポリエステルを製造する際の重合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。具体的には、上記のジカルボン酸成分とジオール成分、更にオキシカルボン酸単位や3官能以上の成分を導入する場合には、それらの成分も含めたジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができるが、経済性ならびに製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合法が好ましい。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸及び/又はジオールは、ポリエステル原料として使用するにあたり、ポリエステル製造反応中の酸素濃度を特定値以下に制御された反応槽内でポリエステルを製造してもよい。これにより不純物である窒素化合物の酸化反応によるポリエステルの着色や、例えばジオールとして1,4−ブタンジオールを使用する場合の1,4−ブタンジオールの酸化反応により生成する2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン等のジオール酸化反応生成物によるポリエステルの着色を抑制することができるため、色相の良いポリエステルを製造することができる。
ここでいうポリエステル製造反応とは、原料をエステル化反応槽へ仕込み、昇温を開始した時点から重縮合反応槽で減圧下にて所望の粘度のポリマーを製造し、反応槽を減圧から常圧以上に復圧するまでの間と定義する。
ポリエステル製造反応中の反応槽中の酸素濃度は、反応槽全体積に対して、下限は、特に限定されないが通常1.0×10−9%以上、好ましくは1.0×10−7%以上であり、上限が通常10%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、最も好ましくは0.01%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となる傾向があり、また、高すぎる場合には、上記の理由で得られるポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
本発明において、前述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸及び/又はジオールをポリエステル原料として使用するにあたり、減圧下での重合反応停止前の攪拌速度(最終攪拌速度)を制御してもよい。これにより分解が抑制された粘度の高いバイオマス資源由来のポリエステルを製造することができる。
ここで言う“最終攪拌速度”とは、後述する縮重合反応中において、所望の粘度のポリマーを製造した際の攪拌装置の最低攪拌回転数を示す。但し、製造ポリマー抜き出し操作等に伴う攪拌装置の停止操作は、縮重合反応中の定義の中には含まれない。
減圧下での重合反応時の反応停止前の攪拌速度は、下限が通常0.1rpm以上、好ましくは0.5rpm以上であり、より好ましくは1rpm以上であり、上限が10rpm以下、好ましくは7rpm以下、より好ましくは5rpm以下、最も好ましくは3rpm以下である。攪拌速度が遅すぎる場合には、重合速度が遅くなったり、生成ポリマーに粘度むらが生じる傾向があり、また、速すぎる場合には、剪断発熱により不純物が多いバイオマス資源由来のポリマーの製造においては特にポリマーが分解しやすい傾向がある。本発明においては、通常少なくとも10rpm以下の回転数で少なくとも5分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上攪拌して所望のポリエステルを製造するのが好ましい。
また、減圧下での重合開始時の攪拌速度は、下限が通常10rpm以上、好ましくは20rpm以上であり、より好ましくは30rpm以上であり、その上限は、200rpm以下、好ましくは100rpm以下、より好ましくは50rpm以下である。攪拌速度が遅すぎる場合には、重合速度が遅くなったり、生成ポリマーに粘度むらが生じる傾向があり、また、速すぎる場合には、剪断発熱により不純物が多いバイオマス資源由来のポリマーの製造時においては特にポリマーが分解しやすい傾向がある。
ここで減圧下での重合反応時の攪拌速度は、ポリエステルの粘度上昇との兼ね合いで、連続的、又は多段階で攪拌速度を低減させてもよい。より好ましくは減圧下での重縮合反応停止前10分間の平均攪拌速度を、減圧下での重縮合反応開始後30分間の平均攪拌速度より低くすることが重要である。この調節を行うことにより不純物が多く熱分解しやすいバイオマス資源由来のポリエステルの製造時の熱分解が抑えられ、安定にポリマーが製造できる。
また、エステル化反応及び/又はエステル交換反応時の攪拌速度を制御することにより、例えば、ジオールとして1,4−ブタンジオールを用いた場合のテトラヒドロフランの副生が低減され、重合速度を向上することができる。
エステル化反応時の攪拌速度は、下限が通常30rpm以上、好ましくは50rpm以上、より好ましくは80rpm以上であり、上限は、通常1000rpm以下、好ましくは500rpm以下である。攪拌速度が遅すぎる場合には、留去効率が悪く、エステル化反応が遅くなる傾向があり、例えばジオールの脱水反応や脱水環化等が引き起こされる傾向がある。それによりジオール/ジカルボン酸の比率が崩れて重合速度が低下したり、より過剰のジオールを仕込む必要が生じる等の欠点を有する、また、速すぎる場合には、余計な動力を消費するため経済的に不利である。
また、バイオマス資源由来のジカルボン酸を、ポリエステル原料として使用するにあたり、ジカルボン酸を貯蔵タンクから反応器へ移送する際の酸素濃度と湿度を制御してもよい。これにより不純物である硫黄成分による移送管内の腐食を防止することができ、更には窒素源の酸化反応による着色を抑えることができ、色相の良いポリエステルを製造することができる。
移送管の種類としては、具体的には、通常の公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好適に用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
移送管内の酸素濃度は、移送管全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは0.01%以上である。一方、上限が通常16%以下、好ましくは14%以下、より好ましくは12%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、設備投資や管理工程が煩雑になり経済的に不利であり、一方、高すぎる場合には、製造されるポリマーの着色が増加する傾向がある。
移送管内の湿度は、下限は特に限定されないが、通常0.0001%以上、好ましくは0.001%以上であり、より好ましくは0.01 %以上、最も好ましくは0.1%以上であり、上限が80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下である。湿度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑で経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、貯蔵タンクや配管の腐食が問題になる傾向がある。更に、湿度が高すぎる場合は、貯蔵タンクや配管へのジカルボン酸の付着、ジカルボン酸のブロック化等の問題が生じ、これらの付着現象により配管の腐食が促進される傾向がある。
移送管内の温度は、下限が通常−50℃以上、好ましくは0℃以上である。一方、上限が通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下である。温度が低すぎる場合には、貯蔵コストが増大する傾向があり、また、高すぎる場合には、ジカルボン酸の脱水反応等が併発する傾向がある。
移送管内の圧力は、通常0.1kPaから1MPaであるが、操作性の観点から0.05MPa以上0.3Mpa以下程度の圧力で使用される。
ポリエステルを製造する際に用いるジオールの使用量は、ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化及び/又はエステル交換反応及び/又は縮重合反応中の留出があることから、0.1〜20モル%過剰に用いられる。
一方、芳香族ポリエステルを製造する際にはカルボキシル基末端数が増加する傾向があるため、ジオールの使用量はジカルボン酸又はその誘導体100モルに対して10〜60モル%過剰に用いられる。
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うのが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く第1族〜第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。これらの触媒成分は、上記の理由からバイオマス資源から誘導されるポリエステル原料中に含まれる場合がある。その場合は、特に原料の精製を行わず、そのまま金属を含む原料として使用してもよい。しかしながら、製造するポリエステルによってはポリエステル原料中に含まれるナトリウムやカリウム等の1族金属元素の含有量が少ない程、高重合度のポリエステルが製造しやすい場合がある。その様な場合には1族金属元素が実質含まれない程度まで精製された原料が好的に使用される。
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネートが挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好適に用いられる。更には、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製のチタニア/シリカ複合酸化物(製品名:C−94))も好適に用いられる。これらの中では、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)がより好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が例示される。更には、酸化ジルコニウムや、例えばジルコニウムと珪素を含む複合酸化物も好適に使用される。これらの中では、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましく、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドがより好ましく、特にジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートが着色のない高重合度のポリエステルが容易に得られる理由から好ましい。
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。ここで使用する触媒量としては、その使用量を低減させる程生成するポリエステルの末端カルボキシル基量が低減されるので使用触媒量を低減させる方法は好ましい態様である。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。
反応雰囲気は、通常窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。
反応圧力は、通常常圧〜10kPaであるが、常圧が好ましい。
反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは4時間以下である。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.01×103Pa以上、好ましくは0.05×103Pa以上であり、上限が通常1.4×103Pa以下、好ましくは0.4×103Pa以下の真空度下として行う。
この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。
反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
本発明においてポリエステルを製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型攪拌槽型反応器を用いることができる。例えば、同一又は異なる反応装置を用いて、溶融重合のエステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には凝縮器を結合し、該凝縮器にて重縮合反応中に生成する揮発成分や未反応原料を回収する方法が好適に用いられる。
脂肪族ポリエステルを製造する場合の製造方法としては、従来の、上記の脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下で、ポリエステルのアルコール末端のエステル交換反応により生成するジオールを留去しながらポリエステルの重合度を高める方法、或いは、ポリエステルの脂肪族カルボン酸末端から脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を留去させながらポリエステルの重合度を高める方法が用いられる。後者の場合、脂肪族カルボン酸及び/又はその無水物環状体の除去は、通常上記溶融重合工程における後段の減圧下での重縮合反応中に脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を加熱留出させる方法が採られるが、重縮合反応条件下では、脂肪族ジカルボン酸は容易に酸無水物環状体になりやすいため、酸無水物環状体の形態で加熱留出させる場合が多い。また、その際、ジオールから誘導される鎖状又は環状エーテル及び/又はジオールもまた脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体と共に除去されてもよい。更に、ジカルボン酸成分とジオール成分の環状単量体を共に留去させる方法は、重合速度が向上するため、好ましい態様である。
一方、芳香族ポリエステルを製造する際には上述のように過剰のジオールを用いて前者のジオールを留去しながらポリエステルの重合度を高める方法が好ましい製造法である。
また、ポリエステルの製造工程の途中、又は製造されたポリエステルには、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤あるいは着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加してもよい。
着色顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料等を使用することができる。また、炭酸カルシウムやシリカなどの改質剤も使用することができる。
本発明において、重合反応終了後、重合反応槽より抜き出す際のポリエステルの温度を制御してもよい。これにより、高粘度のポリエステルの抜き出し時の熱分解を抑制させて取り出すことができる。
重合反応槽より抜き出す際のポリエステルの温度は、重合終了後、反応槽の圧力を減圧からから常圧以上に復圧した際の樹脂温度をTeとしたとき、下限は、(Te−50)℃以上、好ましくは(Te−30)℃以上であり、より好ましくは(Te−20)℃以上、最も好ましくは(Te−10)℃以上であり、上限が(Te+20)℃以下、好ましくは(Te+10)℃以下、より好ましくはTe℃以下である。この温度が低すぎる場合には、抜き出し時のポリエステルの粘度が上昇し、抜き出し難くなり生産性に問題が生じる傾向があり、また、高すぎる場合には、ポリエステルの熱分解が顕著になる傾向がある。
ここで、抜き出し時のポリエステルの温度は、重合反応槽内の温度を測定する目的で取り付けられた熱電対等により測定することができる。
また、本発明において、重合反応終了後、重合反応槽より抜き出されたストランド状のポリエステルを特定温度以下の水性媒体に接触させてもよい。これにより、高粘度のポリエステルの分解を抑制させたまま得ることができる。
ポリエステルを冷却するための媒体としては特に限定されないが、エチレングリコール等のジオール、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトン、水が挙げられ、この中では、水が最も好ましい。これらの水性溶媒は、2種以上併用してもよい。
また、冷却のための水性媒体の温度は、下限が通常−20℃以上、好ましくは−10℃以上であり、より好ましくは0℃以上、最も好ましくは4℃以上であり、上限が通常20℃以下、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下である。温度が低すぎる場合には、媒体の冷却設備運転コストが高くなり経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、ストランドでの抜き出し時にポリエステルの熱分解が顕著になる傾向がある。
ポリエステルを冷却する時間は、下限が通常0.1秒以上、好ましくは1秒以上であり、より好ましくは5秒以上、最も好ましくは10秒以上であり、上限が通常5分以下、好ましくは2分以下、より好ましくは1分以下、最も好ましくは30秒以下である。時間が短すぎる場合には、ストランド同士の融着が著しくなったり、ペレット化が困難になる傾向があり、また、長すぎる場合には、生産性が不利になる傾向がある。
冷却する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合反応槽からポリエステルをストランド状で抜き出し、冷却媒体中を潜らす方法や、冷却媒体をストランドに例えばシャワー状で降りかける等の方法が挙げられる。
<ポリエステルペレット>
重合反応終了後、重合反応槽からストランド状で抜き出されたポリエステルは、水、空気、その他で冷却しながらもしくは冷却後、公知の固定式、回転式のカッターやペレタイザーを用いてペレット化され、貯蔵してもよい。
ペレット形状は、通常断面が円形又は楕円形である円筒状、もしくは球状に成形される。
ポリエステルペレットの径は、重合反応槽からの抜出口径、ストランド抜き出し速度、引き取り速度ならびにカッティング速度等の調整により調整される。具体的には、例えば、ポリエステル抜き出し時の反応槽の圧力を調整したり、回転式ストランドカッターのカッティング速度を調整することにより調整される。
得られたポリエステルペレットの径は、下限(最小径)が通常0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上であり、より好ましくは0.5mm以上、最も好ましくは1mm以上であり、上限(最大径)が20mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下、最も好ましくは4mm以下である。ペレット径が小さすぎる場合には、ペレット貯蔵時の加水分解による劣化が顕著になる傾向があり、また、ペレット径が大きすぎる場合には、成形時の食い込みが悪く製品にムラが生じる傾向がある。
本発明のポリエステルペレット中には、最大径1mm未満の粉状体の割合が2.0重量%以下であることが好ましく、最大径1mm未満の粉状体の割合が1.0重量%以下であるのがより好ましい。最大径1mm未満の粉状体の割合が多いと、この粉状体により溶融成形時において、成形機スクリューへの食い込み性が劣って成形機中での滞留時間が長くなり、又表面積が大きいことから熱劣化を起こし易く、それが成形体中にヤケやブツ等の異物として混入され、成形体の機械的強度の低下や外観の不良等の問題を招くこととなる。
尚、ここでいうポリエステルペレットの径とはポリエステルペレットの断面の径、もしくは長さを示す。また、ポリエステルペレットの断面とは、得られたポリエステルペレットの断面積が最大となる断面を示す。
本発明においては、貯蔵時のポリエステルペレット中の水含有量を調整してもよい。その水含有量は、質量比で該ポリエステルに対して下限は特に限定されないが、通常0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上であり、より好ましくは1ppm以上、最も好ましくは10ppm以上であり、上限が通常3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは800ppm以下、最も好ましくは500ppm以下である。水含有量が少なすぎる場合には、設備や管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があるばかりでなく、乾燥時間に多大な時間を要するためポリエステルの着色やブツの生成等の劣化が引き起こされる傾向がある。一方、多すぎる場合には、ペレット保存時の加水分解によるポリエステルの劣化が顕著になる傾向がある。
水含有量(水分量)の測定方法としては、水分気化装置(三菱化学株式会社製VA−100型)を用いて0.5gの試料を200℃で加熱溶融させて試料中の水を気化させた後、気化した全水分量を、微量水分測定装置(三菱化学株式会社製CA−100型)を用いてカール・フィッシャー反応の原理に基づく電量滴定法により定量することにより試料中の水分量を決定する方法が挙げられる。
更に、本発明においては、ポリエステルペレットは、湿気によりポリエステルが加水分解されやすくポリエステルの特性が低下するため、密閉された状態で保存してもよい。ここでいう密閉された状態とは、ポリエステルの乾燥状態が保たれる状態のことをいう。
密閉する方法は、密閉機能を備えた空間で貯蔵しておく方法、密閉機能を備えた袋に貯蔵しておく方法、密閉機能を備えたシートをポリエステルペレットに覆う方法、乾燥雰囲気下(乾燥空気、窒素流通下を含む)のサイロに貯蔵しておく方法等が挙げられる。この中でも、密閉機能を備えた袋に入れ、貯蔵することが好ましい。
袋の材質としては、気密性の高いものが好ましく、合成樹脂製のフィルムやシートが好ましい。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や塩化ビニル樹脂製のシートあるいはこれらのシートをポリエステルやポリアミドなどのフィルムや各種繊維基材で補強したものなどが挙げられる。これらのシートは必要に応じて、水蒸気や酸素などを遮蔽するバリア層が積層されていても良い。そのような例としてポリエステル/アルミニウム/ポリエチレンの様な積層フィルム等が挙げられる。
この様な特性を持った包装材は種々市販されているが、ヒートシールにより簡便に密封できるものがよく、熱融着及び/又は縫製などの手段で包装袋に成形される。
包装袋の形状は特に制限はなく、平袋、ガゼット袋、角底袋、フレコンなどのフレキシブル容器等公知の包装袋形状を採用することができる。これらの内、包装体としたときの胴部断面形状を概ね矩形とすることを考慮すると底面を有することが好ましく、ガゼット袋、角底袋、フレキシブル容器などが好ましい。そして、底面形状が概ね矩形であると容易に断面形状が概ね矩形の包装体とすることができるのでより好ましい。
また、バイオマス資源由来のポリエステルペレットは、不純物が混入しているので光による着色や劣化が起こりやすいため、遮光して貯蔵してもよい。
遮光する方法としては、ポリエステルが遮光されている状態であれば特に制限されないが、具体的には、遮光機能を備えた空間で貯蔵しておく方法、遮光機能を備えた袋に貯蔵しておく方法、遮光機能を備えたシートをポリエステルペレットに覆う方法等が挙げられる。この中でも、遮光機能を備えた袋に入れ、貯蔵することが好ましい。
遮光の度合いとしては、通常空間の照度の上限が、通常300ルクス以下、好ましくは70ルクス以下、より好ましくは1ルクス以下、最も好ましくは0.001ルクス以下であり、下限は特に限定されない。照度が高すぎる場合には、ポリエステルの着色が顕著になる傾向があり、また、低すぎる場合には、制御が難しく経済的に不利である。
ポリエステルペレットを貯蔵する際の温度は、下限が−50℃以上、好ましくは−30℃以上であり、より好ましくは0℃以上であり、上限が80℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下であるが、管理工程が必要ではない理由から、室温で保存するのが最も好ましい。温度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となり経済的に不利である傾向があり、また、高すぎる場合には、ポリエステルの劣化が著しくなる傾向がある。
ポリエステルペレットを貯蔵する際の外圧力は、特に限定されないが、通常大気圧(常圧)である。
なお、後述するポリエステル組成物をペレット化して上述の条件にて保存してもよい。
<ポリエステルの物性>
なお、本発明のポリエステルペレットは、以下のような物性を示すポリエステルであることが好ましく、貯蔵した場合においてもその物性の劣化は少ない。
本発明のポリエステルの物性特性は、ポリブチレンサクシネートやポリブチレンサクシネートアジペートのような脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸のポリエステルを例に説明すると、密度が1.2〜1.3g/cm3、融点は80〜120℃、引張強度30〜80MPa、極限伸び300〜600%、引張弾性率400〜700MPa、衝撃試験強度5〜20kJ/m2程度、ガラス転移点−45〜−25℃というような汎用のポリマーが有する特性を保有する。また、特定の用途を対象とした場合には、前記のような範囲の域を超えた、任意の広範囲の特性を保有するポリエステルとすることができる。さらに各種成形手段により成形品を製造することができる程度の融点、メルトインデックス、溶融粘弾性の特性を有することができる。これらの特性は、使用目的に応じて、ポリエステル原料や添加物の種類、重合条件或いは成形条件等を変えることにより任意に調整することができる。
以下に詳細に本発明のポリエステルが有する代表的な物性値の範囲を開示する。
(融点)
本発明のポリエステルの融点は、特に制限されないが、通常40℃〜270℃、好ましくは50℃〜230℃、より好ましくは60℃〜130℃である。これらは上述した成分によって決まるものであり、適宜成分を選択して上記融点の範囲にあるポリエステルを製造することは可能である。
(数平均分子量)
本発明のポリエステルの数平均分子量は、ポリスチレン換算で通常下限が通常5000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは1.5万以上であり、上限が通常50万以下、好ましくは30万以下である。
(組成比)
ポリエステルの組成比は、ジオール単位とジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいことが必要である。
(窒素原子含有量)
本発明のポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は該ポリエステル質量に対して通常50ppm以下である。ポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。ポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は主に原料中の窒素原子に由来するものであるが、ポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量が50ppm以下であると成形時の着色や異物の発生が少なく、成形後製品の熱又は光等の劣化や加水分解が起こりにくく好ましい。
一方、共有結合された官能基以外でポリエステル中に含まれる窒素原子含有量は、0.01ppm以上が好ましい。より好ましくは0.05ppm以上、さらに好ましくは0.1ppm以上、特に好ましくは1ppm以上である。窒素原子含有量が0.01ppm未満では原料の精製の際の負荷がかかりエネルギー上不利であり、環境に対しての影響も無視できない。
また窒素原子含有量が1ppm以上であると脂肪族ポリエステルの場合は土壌における生分解速度が促進され好ましい。窒素原子含有量が上記の範囲にある原料を用いることで、通常には、重合反応において、ポリエステルの重合速度を低下させず、かつ、得られるポリエステルの生分解性を促進させることができる。
ポリエステル中の窒素原子含有量は、後述するような従来公知の方法である化学発光法により測定することができる。また、本発明おけるppmとは、質量ppmである。
また、本発明においては、ポリエステル中に共有結合された官能基とは、上記のジイソシアネート化合物やカルボジイミド化合物から誘導されたウレタン官能基、未反応のイソシアネート官能基、尿素官能基、イソ尿素官能基ならびに未反応のカルボジイミド官能基を指す。従って、本発明においては、ポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は、ポリエステル中に含まれる総窒素原子含有量から上記のウレタン官能基、未反応のイソシアネート官能基、尿素官能基、イソ尿素官能基ならびに未反応のカルボジイミド官能基に帰属される窒素原子含有量を差し引いた値である。
ポリエステルのウレタン官能基、未反応のイソシアネート官能基、尿素官能基、イソ尿素官能基ならびに未反応のカルボジイミド官能基の含有量は、上記の13C NMRやIR等の分光学的測定やポリエステルの製造時の仕込み量から算出される。
本発明のポリエステル中に含まれる上述の窒素含有量と原料中に含まれるアンモニア含有量の比は0より大きく0.9以下であるが好ましく、より好ましくは0より大きく0.6以下、特に好ましくは0.3以下である。
(硫黄原子含有量)
本発明のポリエステル中の硫黄原子含有量は、該ポリエステル質量に対して、上限が通常10ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは3ppm以下、最も好ましくは0.3ppm以下である。一方、下限は、特に限定されないが、0.0001ppm以上、好ましくは0.001ppm以上、より好ましくは0.01ppm以上であり、特に好ましくは0.05ppm以上であり、最も好ましくは0.1ppm以上である。硫黄原子含有量が多すぎるとポリエステルの熱安定性や耐加水分解性が低下する傾向があり、少なすぎる系は精製コストが著しく高くなりポリエステルの製造においては経済的に不利になる傾向がある。
(揮発性有機成分含有量)
ポリエステル、特にバイオマス資源から誘導される原料を用いたポリエステルの場合、例えば、テトテヒドロフランやアセトアルデヒド等の揮発性有機成分がポリエステル中に含有されやすい傾向がある。本発明のポリエステル中のこれらの揮発性有機成分の含有量の上限は、通常10000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは500ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常1ppb以上、好ましくは10ppb以上、より好ましくは100ppb以上である。揮発性有機成分含有量が多いと臭気の原因となり得るほか、溶融成形時の発泡や、保存安定性の悪化を招く場合がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、このようなポリエステルを製造するには極めて高額の設備投資を要する他、多大な製造時間を要するなど経済的に不利である。
(還元粘度)
本発明で製造されるポリエステルの還元粘度(ηsp/C)値は、実用上十分な力学特性が得られる理由から、0.5dL/g以上であり、中でも1.5dL/g以上が好ましく、更には1.8dL/g以上が好ましく、特に2.0g/dL以上が特に好ましい。還元粘度(ηsp/C)値の上限は、ポリエステルの重合反応後の抜き出し易さならびに成形のし易さ等の操作性の観点から、通常6.0dL/g以下、好ましくは5.0dL/g以下、更に好ましくは4.0dL/g以下である。
本発明でいう還元粘度は以下の測定条件により測定されたものである。
〔還元粘度(ηsp/C)測定条件〕
粘度管:ウベローデ粘度管
測定温度:30℃
溶媒:フェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)溶液
ポリエステル濃度:0.5g/dL
(溶解性)
本発明のポリエステルは、ポリエステル(0.5g)をフェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)溶液(容量:1dL)に室温で溶解させた際、均一に溶解するポリエステルが好ましく、ポリエステルの不溶成分が生じる場合、通常不溶成分量は全ポリエステル中、1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であることが好ましい。
(末端カルボキシル基量)
本発明のポリエステルの末端カルボキシル基量は、通常50当量/トン以下であるが、より好ましくはその濃度は、35当量/トン以下、更には25当量/トン以下であることが好ましく、0.1当量/トン以上、好ましくは0.5当量/トン以上、特に1当量/トン以上が好ましい。この量が多くなると、ポリエステルの発泡体製造時の熱安定性、加水分解性や製品の比較的長期の使用・保管時の耐加水分解性が低下する傾向があり、カルボキシル基が少なすぎるポリエステルは、より好ましい形態ではあるが、このようなポリエステルを製造するには極めて高額の設備投資を要する他、多大な製造時間を要するなど経済的に不利な点である。
上記のジカルボン酸及び/又はジオール中に含まれる窒素含有化合物や硫黄含有化合物が多量に存在するとこれらの不純物がポリマーの架橋点となる或いはこれらの窒素含有化合物や硫黄含有化合物によりポリマーの熱分解反応が促進される為にポリマー中の末端カルボキシル基量が増加する傾向がある。その様な理由から、末端カルボキシル基量を上記の範囲内に制御するためには、上述のような範囲内に窒素原子含有量や硫黄原子含有量を制御する、使用する触媒量を低減する、或いはより低い重合温度でポリエステルの製造を実施する方法が好適に使用される。
ポリエステルの末端カルボキシル基量は、通常公知の滴定方法により算出されるが、本発明においては、得られたポリエステルをベンジルアルコールに溶解し0.1N NaOHにて滴定した値であり、1×106g当たりのカルボキシル基当量である。
(YI値)
本発明のポリエステルは、通常着色の少ないポリエステルであることが好ましい。
本発明のポリエステルの黄色度(YI値)は、その上限が、通常50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、特に好ましくは10以下であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常−20以上、好ましくは−10以上、より好ましくは−5以上、特に好ましくは−3以上、最も好ましくは−1以上である。
高いYI値を示すポリエステルは、発泡成形品の使用用途が制限される欠点を有する。一方、低いYI値を示すポリエステルは、より好ましい形態ではあるが、このようなポリエステルを製造するには製造プロセスが煩雑で極めて高額の設備投資を要するなど経済的に不利な点がある。
本発明において、YI値は、JIS K7105に基づく方法で測定される値である。
[ポリエステル組成物]
本発明のポリエステルは、従来公知の各種の樹脂とブレンド(混練)することにより、ポリエステル組成物として発泡に供することができる。このような樹脂としては、従来公知の各種の汎用の熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂を用いることができ、好ましくは生分解性高分子や汎用の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらを単独で用いても、2種類以上ブレンドして用いてもよい。各種樹脂はバイオマス資源から得られる樹脂であってもよい。
本発明のポリエステルは公知の各種の樹脂とブレンド(混練)により、任意の広範囲の特性を保有するポリエステル組成物とすることができる。
本発明のバイオマス由来のポリエステルへ配合する汎用の熱可塑性樹脂としては、後述の石油由来のポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドの汎用の熱可塑性樹脂を任意に選択できる。この場合には、バイオマス由来のポリエステルとの相溶性を考慮する必要がある。さらに、本発明のバイオマス由来のポリエステルの性質を適正に維持するためには、配合量も重要になる。通常は、バイオマス由来のポリエステルが99.9〜20重量%であり、汎用の可塑性樹脂が0.1〜80重量%程度のブレンドが可能である。しかし、バイオマス由来のポリエステルの生分解性の特性などを維持することを目的とする場合には、汎用の熱可塑性樹脂のブレンド量を50〜1重量%、目的にもよるが、好ましくは30〜3重量%程度とすると生分解性特性を維持しながら所定の物性が得られる。
生分解性を有する高分子としては、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコ−ル、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、多糖類、その他の生分解性樹脂が挙げられる。
これらの生分解性高分子のブレンド量は、単に生分解という目的では、両者がいずれも生分解性樹脂である場合には、本発明のバイオマス由来のポリエステル99.9〜0.1重量%に対して、生分解性高分子が0.1〜99.9重量%程度ブレンドしても適正に生分解性特性が発現するので、最も適正な特性の発現が可能な組成物である。しかし、本発明のバイオマス由来のポリエステルの観点からは、バイオマス由来のポリエステルが99.9〜40重量%であり、生分解性高分子が0.1〜60重量%程度のブレンドが好ましく、特に、生分解性高分子を5〜50重量%程度のブレンドがより好ましい。
本発明のバイオマス由来のポリエステルへ配合する天然樹脂、多糖類としては、酢酸セルロース、キトサン、セルロース、クロマンインデン、ロジン、リグニン、カゼイン等が列挙できる。この種の天然樹脂、多糖類は、本来自然の状態で水、空気の存在で腐敗して土壌に帰るか、又は肥料となる性質を有するものであり、本発明のバイオマス由来のポリエステル99.9〜0.1重量%に対して、天然樹脂、多糖類が0.1〜99.9重量%程度ブレンドが可能である。しかし、バイオマス由来のポリエステルの生分解性のみならず、本来のプラスチックに求められる機械的特性、耐水性、耐候性などの諸特性などを維持するためには、天然樹脂、多糖類を5〜50重量%程度ブレンドするのがより好ましい。
本発明のバイオマス由来のポリエステルと天然樹脂、多糖類との相溶性の問題もある。これらを解決すれば、本発明のバイオマス由来のポリエステルと天然樹脂の組成物からなる発泡体は、使用済後の材料を投棄すれば、早期生分解消失はないにしても、天然樹脂、多糖類は腐敗して、土壌改良剤、堆肥としても有効である場合がある。この種のポリエステル組成物は、積極的に自然に、特に土壌に投棄することが推奨される場合があり、まさに、グリーンプラ製品としての有意性を高めることになる。以下に各樹脂の具体的な組成物を開示するが、特に限定されるものではない。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位並びに脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位を必須成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂等が挙げられる。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位の具体例としては、例えば、エチレングリコール単位、ジエチレングリコール単位、トリエチレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、ジプロピレングリコール単位、1,3−ブタンジオール単位、1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル単位、1,6−へキサンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、ポリテトラメチレングリコール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位の具体例としては、例えば、コハク酸単位、シュウ酸単位、マロン酸単位、グルタル酸単位、アジピン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカン二酸単位、ドデカン二酸単位、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位等が挙げられる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
上記脂肪族オキシカルボン酸系樹脂を構成する脂肪族オキシカルボン酸単位の具体例としては、例えば、グリコール酸単位、乳酸単位、3−ヒドロキシ酪酸単位、4−ヒドロキシ酪酸単位、4−ヒドロキシ吉草酸単位、5−ヒドロキシ吉草酸単位、6−ヒドロキシカプロン酸単位を挙げることができる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂には、乳酸単位、6−ヒドロキシカプロン酸単位等のオキシカルボン酸単位が共重合されていても良い。上記記載のオキシカルボン酸単位は、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限は通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、最も好ましくは10モル%以下である。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂には3官能以上のアルコール又はカルボン酸が共重合されていても良い。具体的にはトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、プロパントリカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等の3官能以上の多価アルコール、多価カルボン酸、多価オキシカルボン酸が共重合されていても良い。上記の3官能以上の多官能化合物単位の量は、ゲルの発生原因となるため通常ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限値が通常5モル%以下、好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.50モル%以下、特に好ましくは0.3モル%以下である。一方、高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で3官能以上の化合物を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する使用量の下限値としては、通常0.0001モル%以上、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上である。また、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂には、1,4−ブタンジオール単位、コハク酸単位、アジピン酸単位等の脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位並びに脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位、トリメチロールプロパン単位、グリセリン単位、ペンタエリスリトール単位、プロパントリカルボン酸単位、リンゴ酸単位、クエン酸単位、酒石酸単位等の3官能以上の脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価オキシカルボン酸単位が共重合されていても良い。上記記載の単位の量は、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限は通常90モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは50モル%以下である。
また、上記脂肪族ポリエステル系樹脂を構成するジオール(多価アルコール)単位、ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位、及びオキシカルボン酸単位は、脂肪族系が主成分であるが、生分解性を損なわない範囲で、少量の他の成分、例えば、芳香族ジオール(多価アルコール)単位、芳香族ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位、芳香族オキシカルボン酸単位等の芳香族系化合物単位を含有してもよい。芳香族ジオール(多価アルコール)単位の具体例としては、ビスフェノールA単位、1,4−ベンゼンジメタノール単位等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位の具体例としては、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位、トリメリット酸単位、ピロリメリット酸単位、ベンゾフェノンテトラカルボン酸単位、フェニルコハク酸単位、1,4−フェニレンジ酢酸単位等が挙げられる。芳香族オキシカルボン酸単位の具体例としては、ヒドロキシ安息香酸単位が挙げられる。これらの芳香族系化合物単位の導入量は、全ポリマーに対して50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂の製造方法は、公知公用の方法を採用することができ、特に限定されない。また、生分解性に影響を与えない範囲で、脂肪族ポリエステル系樹脂には、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合、ケトン結合等が導入されていても良い。また脂肪族ポリエステルとしては、例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、酸無水物、過酸化物等を用いて分子量を高めたり、架橋させたものを用いてもよい。さらに末端基をカルボジイミド、エポキシ化合物、単官能性のアルコール又はカルボン酸で封止し、樹脂の改質を行っても良い。
多糖類としては、セルロース、酢酸セルロースの様な変性セルロース、キチン、キトサン、澱粉、変性澱粉が挙げられる。
その他の分解性樹脂としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
汎用の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン等の含ハロゲン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム等のエラストマー、ナイロン6,6、ナイロン6等のポリアミド系樹脂の他、ポリ酢酸ビニル、メタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン等が挙げられる。また各種相溶化剤を併用して、諸特性を調製することもできる。
ポリエステル組成物における本発明のポリエステルに対する上記記載の樹脂の混合比率(重量比)は、上記に詳述しているが、各種樹脂の共通した一般的な配合量を総称として明示すれば、本発明のポリエステル樹脂が、99.9/0.1以上0.1/99.9以下であることが好ましく、99/1以上 1/99以下であることがより好ましく、最も好ましくは98/2以上2/98以下である。
また、従来公知の各種添加剤を配合して組成物とし、発泡体にすることもできる。
添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、分散剤や各種界面活性剤などの樹脂用添加剤が挙げられる。これらの添加量は、全組成物重量に対して、通常0.01〜5重量%である。これらは1種又は2種以上の混合物として用いる事もできる。
また、従来公知の各種フィラーや機能性添加剤を配合して組成物とし、発泡体にすることもできる。機能性添加剤としては、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤などを添加することができる。フィラーは、無機系フィラーと有機系フィラーとに大別される。これらは1種又は2種以上の混合物として用いる事もできる。
無機系フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられる。無機系フィラーの含有量は、全組成物重量に対して、通常1〜80重量%であり、好ましくは3〜70重量%、より好ましくは5〜60重量%である。無機系フィラーの中には、炭酸カルシウム、石灰石のように、土壌改良剤の性質を持ちものもあり、これらの無機系フィラーを特に多量に含むバイオマス由来のポリエステル組成物を、土壌に投棄すれば、生分解後の無機系フィラーは残存して、土壌改良剤としても機能するので、グリーンプラとしての有意性を高める。農業資材、土木資材のように、土壌中に投棄するような用途の場合には、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤のようなものを添加したポリエステルを発泡成形品とすることは、本発明のポリエステルの有用性を高めることになる。
有機系フィラーとしては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木材粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末などが挙げられる。これ等は1種又は2種以上の混合物として使用することもできる。有機系フィラーの添加量は、全組成物重量に対して、通常0.01〜70重量%である。特にこの有機系フィラー系の充填剤は、ポリエステル組成物の生分解後に、その有機系フィラーが、土壌に残り、土壌改良剤、堆肥としての役割も果すので、グリーンプラとしての役割を高める。
組成物の調製は、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また混錬機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混錬機、一段型、二段型連続式混錬機、二軸スクリュー押し出し機、単軸スクリュー押し出し機等を使用できる。混練の方法としては、加熱溶融させたところに各種添加剤、フィラー、熱可塑性樹脂を添加して配合する方法などが挙げられる。また、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的でブレンド用オイル等を使用することもできる。
[バイオマス資源由来ポリエステル製発泡体]
本発明のバイオマス資源由来ポリエステル製発泡体は、上述のような本発明のポリエステルないしはポリエステル組成物を発泡させてなるものである。
本発明のバイオマス資源由来ポリエステルを用い、成形体を得る工程は通常行われている方法でよく、特に限定されるものではない。例えば、上述の本発明のポリエステル又はポリエステル組成物に改質剤、核剤などの所望の添加剤を配合した樹脂組成物を通常の溶融押出機を用いて押し出したストランドを、ペレタイザーを用いて、ペレット、又は粒子を成形し(ポリエステル樹脂粒子作製工程)、このポリエステル樹脂粒子を、オートクレーブ内に投入して、気相、又は水、純水のような液相に投入して、例えば分散剤、融着防止剤、粘着防止剤のような、任意の慣用の添加剤を用いて、樹脂粒子分散液を調製し、揮発性発泡剤を用いて発泡させることにより発泡粒子を得(発泡工程)、この粒子を大気にさらし空気を粒子気泡内に浸透させ、かつ必要に応じ粒子に付着した水分を除去する(熟成工程)。次いでこの発泡粒子を小さな孔やスリットが設けられている閉鎖型金型の型内に充填し、加熱発泡することによって個々の粒子を融着一体化した成形体とすることが出来る。
以下に各工程について説明する。
<ポリエステル樹脂粒子作製工程>
この工程では、前述のポリエステル又はポリエステルに改質剤、核剤などの所望の添加剤を配合した樹脂組成物を通常の溶融押出機を用いて押し出してストランドとし、ペレタイザーを用いて、発泡粒子用の樹脂粒子を製造する。これ以外にも慣用の成形方法で、ビーズ、粉末、微粉末のような所定の大きさの樹脂粒子を任意に製造することができる。樹脂粒子の大きさは、通常は、0.01〜8mm程度の範囲、好ましくは0.1〜5mm程度であることが好ましい。しかし、その後の発泡工程における不活性の揮発性発泡剤の浸漬を考慮して、最大長径及び最小短径の寸法が1〜3mm程度の範囲内に入る程度のペレットが理想的である。樹脂粒子の寸法が0.01mmと小さすぎると発泡の程度が正確に定量できず、8mm以上と大きすぎると、発泡剤の浸漬が難しくなり、均一な発泡体ができにくい。
この工程で、前記ポリエステルと改質剤、気泡調整剤としての核剤、その他添加剤、その他の樹脂を配合した樹脂組成物とし、任意の大きさの樹脂粒子を製造するのが好ましい。また、改質剤等の各種添加剤はあらかじめ高濃度のマスターバッチを製造しておき、樹脂粒子を製造するのが好ましい。
溶融混練方法は公知の方法を採用できる。通常は汎用の2軸混練押出し機を用いるのが好ましい。混練時温度としては120〜250℃が好ましい。温度が高すぎると、樹脂等の材料が熱劣化する虞があるためである。また、低分子揮発成分を除去する目的から、混練時には、混練機シリンダー途中を真空吸引(ベント吸引)できるようにすることが好ましい。なお、二軸混練機における二本のスクリューの回転方向は、同方向でも異方向でもよい。
得られた樹脂粒子は、前述のポリエステルペレットの項を参考にし、水分量の調整、乾燥を行うのが好ましい。
本発明の発泡体は、均一で微細な気泡セルを得るため、気泡調整剤としての核剤を含有いても良い。この核剤は、本発明の発泡体の製造時に樹脂粒子を発泡させるときに核となり気泡数、気泡径の調節等の目的で用いられるものであり、本発明の効果を著しく損なわないものであれば任意のものを用いることができ、無機系核剤および有機系核剤のいずれをも使用することができる。例えば無機系核剤の具体例としては、タルク、カオリン、モンモリナイト、合成吸着剤、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、ハイドロタルサイト類、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などを挙げることができる。また、これらの無機系核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていてもよい。
なお、これらの核剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、核剤の使用量は、生分解性樹脂100重量部に対して、高発泡倍率の発泡粒子を得る点から、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上とする。また、本発明の発泡粒子を成形する際に、すぐれた融着性を発現させ、該発泡粒子から機械的強度や柔軟性などにすぐれた発泡成形体を得る観点から、通常10重量部以下、好ましくは2重量部以下である。この範囲の上限を超えると、発泡倍率が低下傾向にある。
さらに、上記核剤の平均粒径は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意である。ただし、気泡が均一で高発泡倍率を有する発泡粒子を得ることができ、また、該発泡粒子から機械的強度や柔軟性などにすぐれた発泡成形体を得ることができる点から、通常50μm以下、好ましくは10μm以下であることが望ましい。また、2次凝集や取扱作業性の点から、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であるのが望ましい。上記平均粒径が上記範囲の上限を超える場合には、核剤の粒径が発泡粒子内の気泡壁の膜厚より大きくなって気泡膜が破れ易くなり、好ましくない。また、核剤の平均粒径が上記範囲の下限未満となった場合には、発泡核点になりにくく、発泡性が低下する傾向にある。
なお、樹脂粒子の調製に用いたポリエステル組成物に既に上述の核剤が含まれている場合には、これらを更に配合する必要はないが、任意に発泡性を調整する目的で追加してもよい。
<発泡工程>
上述のようにして得られたポリエステル樹脂粒子は、オートクレーブ内に投入して、気相又は液相で、例えば分散剤、融着防止剤、粘着防止剤のような、任意の慣用の添加剤を用いて、樹脂粒子分散液を調製する。オートクレーブの容量は、実験室レベルでは、慣用の装置を用いて実施するので、内容量500mL程度であるが、工業的には、生産性を考慮して、容量が500mL〜5000L程度の任意の大型のものが使用できる。
発泡の際に樹脂粒子を分散させる分散媒としては、樹脂粒子を溶解させないものであれば任意であるが、例えば、水、エチレングリコール、メタノール、エタノール等が挙げられ、通常は水(例えば純水)が使用される。なお、分散媒は、1種のものを単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
水ないし純水等の分散媒は、樹脂粒子100重量部に対して、100〜500重量部程度仕込むことが好ましい。各添加剤の量は、樹脂粒子及び分散媒量を考慮して任意に決める。
樹脂粒子を分散媒に分散せしめて加熱するに際し、その樹脂粒子同士の融着を防止するために融着防止剤を用いることができる。融着防止剤としては、分散媒に溶解せず、加熱によって溶融しないものであれば、無機系、有機系問わずに使用可能であるが、一般には無機系のものが好ましい。その具体例としては、リン酸三カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の粉体が挙げられる。なお、融着防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、その融着防止剤の平均粒径は任意であるが、通常0.001μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは30μm以下である。
さらに、融着防止剤の使用量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、樹脂粒子100重量部に対し、通常0.01重量部〜10重量部である。
また、分散溶媒中には、分散剤を共存させることが好ましい。分散剤に制限は無いが、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤などが挙げられるなお、分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、分散剤の使用量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、樹脂粒子100重量部に対し、通常は0.001〜5重量部とすることが好ましい。
発泡方法の工程は、調製された樹脂粒子分散液に揮発性発泡剤を圧入する圧入工程及びそれを放圧状態にする放圧工程とからなる。
圧入工程は、樹脂粒子分散液に存在する空気をなどの気体を予め窒素ガスで置き換えた後、攪拌下に、揮発性発泡剤を高圧注入しながら、一定の発泡温度に昇温させた後、加圧時間として一定時間放置する。
揮発性発泡剤としては、ポリエステルの燃焼を促進するようなものではなく、環境に優しく、しかも取り扱いが比較的安全で、容易な身近なものが推奨される。例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスや圧縮空気が好ましく、特に、二酸化炭素、窒素などが好ましく、より好ましくは二酸化炭素である。その理由としては樹脂に対する溶解度が高いためである。窒素含有量の多い空気も使用できるが、約20%程度酸素が存在する影響も考慮して選択する。これらのガスは単独で用いても、任意の割合で2種以上のガスを用いても良い。例えば、二酸化炭素と圧縮空気などの組み合わせがある。
高圧注入の程度は、用いる発泡剤の種類及び樹脂粒子の種類により若干の違いがあるが、通常は30〜60kgf/cm2G(2.9〜5.9MPa)程度あればよい。
発泡温度についても、樹脂粒子の種類により若干の違いがあるが、通常80〜120℃程度、好ましくは100〜110℃程度で十分である。
加圧時間は、樹脂粒子、温度及び攪拌条件を考慮して決めるが、30〜180分程度、好ましくは30〜60分程度熟成すれば足りる。
上記圧入工程後の放圧工程では、内容物の突発的な粒子の飛散や水の過沸騰などを防止することに配慮して、100℃以下に、好ましくは90〜98℃程度に温度を下げて、オートクレーブの一端を解放して、樹脂粒子を常温(約25℃)常圧(約1気圧)に放置する。
このようにして得られる発泡粒子の嵩密度は通常0.01g/cm3以上0.6g/cm3以下、特に0.02g/cm3以上0.3g/cm3以下であることが好ましい。このような発泡粒子を予備発泡粒子と呼ぶこともできる。本明細書において発泡粒子の嵩密度は空のメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに相対湿度50%、23℃大気圧下において一日以上放置した発泡粒子を入れたときメスシリンダーの目盛りが示す容積でその入れた発泡粒子の重量を割り算することによって求められる。
放圧工程の放圧温度及び放圧環境温度を常温より高く或いは常温より低くして温度条件および、放圧速度を調節することにより、得られる発泡粒子の発泡倍率を2.0〜120倍、好ましくは4〜60倍程度に制御することができる。なお、発泡倍率は、発泡成形品の強度、気泡の均一性という発泡材料の品質などにも影響することから、生産現場で留意して調整する。本明細書においての発泡倍率は、多くの慣用の手段に従って定量できるが、身近な例としては、未発泡粒子および発泡粒子あるいは発泡成形体を、例えば目盛付シリンダー内の水中にそれぞれ投入して、発泡前後の体積変化を測定して、その体積比を算出すれば容易に定量できる。
(架橋について)
ポリエステル樹脂粒子は、最終的に成形型に充填して加熱成形する熱成形材料として適するように、ゲル化させることができる。ゲル化のための方法は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は、架橋剤及び架橋助剤を用いてポリエステル樹脂粒子中の成分を架橋させるようにする。
用いる架橋剤は、ポリエステル樹脂粒子の架橋が可能な限り任意であるが、通常は、有機過酸化物を用いる。架橋剤として使用できる有機過酸化物の具体例としては、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステルなどが挙げられる。なお、架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
また、架橋剤とともに、架橋助剤を用いることが好ましい。架橋助剤は重合性を有するものである限り任意のものを用いることができる。中でも、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する化合物を用いるのが好ましい。
架橋助剤が有する不飽和結合には、二重結合の他、三重結合も包含される。このような架橋助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;スチレン;酢酸ビニル;エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等のアクリレート系又はメタクリレート系の化合物;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌール酸又はイソシアヌール酸のアリルエステル;トリメリット酸トリアリルエステル、トリメシン酸トリアリルエステル、ピロメリット酸トリアリルエステル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸トリアリルエステル、シュウ酸ジアリル、コハク酸ジアリル、アジピン酸ジアリル等のカルボン酸のアリルエステル;N−フェニルマレイミド、N,N−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系化合物;1,2−ポリブタジエン等の2重結合を有するポリマー;フタル酸ジプロバギル、イソフタル酸ジプロバギル、トリメシン酸トリプロバギル、イタコン酸ジプロバギル、マレイン酸ジプロバギル等の2個以上の3重結合を有する化合物などが挙げられる。また、不飽和結合を有するポリエステルなども用いることができる。
なお、架橋助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
なかでも、特に、架橋剤と架橋助剤との組合せとしては、架橋剤である有機過酸化物と、架橋助剤であるジビニル化合物、アクリル酸、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの組合せが好ましく、特に、架橋剤であるベンゾイルパーオキサイドと、架橋助剤であるジビニルベンゼン又はメタクリル酸メチルとの組合せがより好ましい。
架橋剤の使用量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ポリエステル樹脂粒子100重量部当り、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。この範囲の下限を下回ると架橋効果が得られなくなる虞があり、上限を上回ると発泡粒子及びその成形体に架橋剤の未反応物や残渣が残る虞がある。
また、架橋助剤の使用量にも制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ポリエステル樹脂粒子100重量部当り、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは2重量部以下である。この範囲の下限を下回ると架橋効果が得られなくなる虞があり、上限を上回ると発泡粒子及びその成形体に架橋助剤の未反応物や残渣が残る虞がある。
架橋剤や架橋助剤は、ポリエステル樹脂粒子に、発泡前のいずれの段階において共存させるようにしてもよい。例えば、ポリエステルの製造工程においてポリエステルに含有されるようにしてもよく、溶融押出機を用いてポリエステル樹脂粒子の各成分を混合する際に架橋剤及び架橋助剤を混合するようにしてもよく、ポリエステル樹脂粒子の作製後にポリエステル樹脂粒子と架橋剤及び架橋助剤とを混合するようにしてもよく、発泡剤を含浸させる前の工程において混合し、含浸させ、加熱架橋体を製造してもよい。
架橋によりポリエステル樹脂粒子をゲル化する場合、通常は、分散媒中において、架橋剤及び適宜使用される架橋助剤の存在下でポリエステル樹脂粒子を加熱する。
分散媒に制限は無く、架橋が可能な限り任意のものを用いることができる。例えば、水、エチレングリコール、メタノール、エタノールなどが挙げられる。なお、分散媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、分散媒として水を用いる場合、上記の熱水加熱処理工程において、加熱時に水中に架橋剤及び架橋助剤を共存させて、同時に架橋を行なうようにしても良い。
また、架橋時の温度条件も、架橋が可能である限り任意である。具体的な温度条件はポリエステル樹脂粒子の樹脂の種類により異なり一義的に決めることは困難であるが、通常は、ポリエステル樹脂の融点をTm(℃)として、〔Tm−25(℃)〕〜〔Tm+10(℃)〕で行なうことが好ましい。また、この際使用する架橋剤としては、上記の温度範囲において半減期が1時間となるものを用いることが望ましい。分解温度が余りにも高い有機過酸化物(架橋剤)を用いると、水中で樹脂粒子を加熱する場合に、その加熱温度が高くなり、また加熱時間も長くなるため、ポリエステル樹脂が加水分解する虞があるので好ましくない。
さらに、架橋のために加熱を行なう時間についても、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、加熱条件下での長時間の保持は、ポリエステルの加水分解を進行させ、また、ゲル化の効率や樹脂物性を悪化させる虞があることから、反応時間としては3時間未満にすることが好ましい。
また、ポリエステル樹脂粒子を確実にゲル化させるために、上記の架橋を行なうよりも以前において、上記の加熱温度未満の温度にて架橋剤や架橋助剤をポリエステル樹脂粒子に含浸させる含浸工程を行なうようにすることが好ましい。
含浸時の含浸温度に制限は無く任意である。好適な含浸温度は、ポリエステルの種類により異なり一義的に決めることは困難であるが、架橋剤の20時間の半減期を与える温度から5時間の半減期を与える温度までの範囲とすることが好ましい。
また、架橋剤等の含浸時間にも制限は無く任意である。好適な含浸時間はポリエステル樹脂粒子の粒子重量によっても異なってくるが、通常10分以上、また、通常120分以下、好ましくは60分以下である。含浸時間が長すぎると、含浸性が向上する反面、ポリエステル樹脂の加水分解が進行する虞がある。また、含浸時間が短すぎると、得られる発泡粒子内部のゲル分率が低くなる虞がある。
上記の含浸温度及び含浸時間の具体例を挙げると、例えば架橋剤として過酸化ベンゾイルを使用した場合には、その含浸温度は通常65℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常85℃以下、好ましくは80℃以下であり、また、含浸時間は通常10分以上、また、通常120分以下、好ましくは60分以下である。
また、ポリエステル樹脂粒子を密閉容器内で架橋剤及び適宜使用される架橋助剤と共に反応させて架橋を行なう場合、密閉容器内の上部気相空間の酸素濃度を低くすることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、5体積%以下、さらに好ましくは0.5体積%以下である。これにより、架橋剤の酸化劣化を抑制できるという利点を得ることができる。
酸素濃度を低くする方法としては、無機ガス、例えば窒素ガス、二酸化炭素、アルゴンガス、水蒸気等でパージする方法等が挙げられるが、その他どのような方法でも採用できる。
また、これに関連し、使用する分散媒として、溶存酸素濃度が通常9.5mg/L以下、好ましくは8.5mg/L以下のものが望ましい。
なお、発泡粒子のゲル分率は、分散媒中において、架橋剤の存在下でポリエステル樹脂粒子をゲル化処理する際の、そのゲル化条件等により調節することができる。
(発泡成形工程)
所望の発泡成形品を成形する為には、発泡成形工程として、所定の大きさの成形を目的とする形状の成形用金型(モールド)内に、所定量の発泡粒子を投入して、スチームなどを用いて、または伝導熱、輻射熱、マイクロ波などの加熱手段として、100〜140℃程度に、好ましくはスチームで110〜125℃で加熱して発泡成形をすることが好ましい。金型に投入する発泡粒子の投入量は、発泡粒子の予めの発泡程度により、投入量に違いがあるが、発泡倍率を考慮して、金型容量に対して、約30〜90容量%程度の量で足りる。それを成形用金型(モールド)内で加熱発泡することにより所定の形状を持った発泡成形品を成形する。
それと反対に、発泡倍率が非常に高い、たとえば、発泡倍率10〜80倍程度の発泡粒子を圧縮により所定の発泡成形品を製造することができるが、一般的な成形方法では、例えば、発泡倍率が約50倍というような、飽和程度に達している発泡粒子の場合には、金型内で110〜180容量%程度という多少に多めの発泡粒子を金型内に投入して、それを縮小により固めるということも可能である。発泡倍率の大きい粒子を加熱融着するものであり、気泡の縮小にもなり、高度な取り扱い技術を要するもので、慣用技術ではない。この発泡成形工程は、通常は、具体的な発泡成形品の型、大きさ、強度、用途などの諸事情を考慮して決める設計事項でもある。通常は予備発泡粒子ともいえる比較的低発泡の発泡粒子を、さらに型内で二次発泡と呼ぶことができる発泡をさせて、未発泡粒子に対して、発泡倍率10〜80倍、好ましくは、発泡倍率20〜50倍程度の所望の用途を持った形状の発泡成形品を成形することが推奨される。
本発明の発泡成形品とは、発泡粒子の発泡倍率、成形用金型(モールド)による成形条件にもよるが、その発泡成形品の成形の際に、温度を比較的低くした成形用金型(モールド)で成形をすれば、皮付きの発泡成形品を成形できる。金型内で高度に発泡させると、金型内部では発泡方向に気泡が楕円形状に配列した気泡構造を採るのが多いが、金型面に押し付けられた表層部に相当する部分の発泡粒子は、容易につぶれ、発泡倍率の低い皮付きや、表層部分の気泡が、表層面に平衡に扁平になった気泡になることもある。この発泡成形品の表面構造が、発泡成形品の収縮の発生、通気性、透水性、断熱性、および強度に影響することになるから、成形条件、発泡倍率などは、用途を考慮して設定をすべきである。部分的に強度を要求される発泡成形品には、皮付きや、リブなどを設けて力学的な材料および構造的な工夫が有益である。
(二次加工工程)
このようにして得られた発泡成形体は、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種合目的的二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
このようにして得られた発泡成形体の形状派特に制約されず、例えば容器状、板状、筒体状、柱状、シート状、ボード状、ブロック状等の各種形状を挙げることが出来る。その用途としては、日用雑貨、玩具、産業資材、工業用資材、保冷箱の断熱材や緩衝材用途への使用が期待される。また、同一あるいは他の樹脂の非発泡体との積層体としても良い。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における特性値は、次の方法により測定した。また、本発明おけるppmとは、質量ppmである。
希薄溶液粘度(還元粘度):ポリエステルを濃度0.5g/dLとなるようにフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に溶解し、溶液が30℃の恒温槽中で粘度管を落下する時間t(sec)を測定した。また溶媒のみの落下する時間t0(sec)を測定し30℃での還元粘度ηsp/C(=(t−t0)/t0・C)を算出した(Cは溶液の濃度)。
窒素原子含有量:試料数10mgを石英ボートへ採取して、全窒素分析計(三菱化学社製TN−10型)を用いて試料を燃焼し、化学発光法により決定した。
硫黄原子含有量:試料約0.1gを白金製ボートに採取して石英管管状炉(三菱化学社製AQF−100(濃縮システム))で燃焼し、燃焼ガス中の硫黄分を0.1%−過酸化水素水で吸収させた。その後、吸収液中の硫酸イオンをイオンクロマトグラフ(Dionex社製 ICS−1000型)を用いて測定した。
水含有量(水分量):水分気化装置(三菱化学株式会社製VA−100型)を用いて0.5gの試料を200℃で加熱溶融させて試料中の水を気化させた後、気化した全水分量を、微量水分測定装置(三菱化学株式会社製CA−100型)を用いてカール・フィッシャー反応の原理に基づく電量滴定法により定量することにより試料中の水分量を決定した。
末端カルボキシル基量:得られたポリエステルをベンジルアルコールに溶解し0.1NNaOHにて滴定した値であり、1×106g当たりのカルボキシル基当量である。
YI値:JIS K7105の方法に基づいて測定した。
[参考例1]
<遺伝子破壊用ベクターの構築>
(A)枯草菌ゲノムDNAの抽出
LB培地[組成:トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5gを蒸留水1Lに溶解]10mLに、枯草菌(Bacillus subtilis ISW1214)を対数増殖期後期まで培養し、菌体を集めた。得られた菌体を10mg/mLの濃度にリゾチームを含む10mM NaCl/20mMトリス緩衝液(pH8.0)/1mM EDTA・2Na溶液0.15mLに懸濁した。
次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロフォルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合した。遠心分離(15,000×g、2分)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10mMトリス緩衝液(pH7.5)−1mM EDTA・2Na溶液5mLを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
(B)PCRによるSacB遺伝子の増幅及びクローニング 枯草菌SacB遺伝子の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、既に報告されている該遺伝子の塩基配列(GenBank Database AccessionNo.X02730)を基に設計した合成DNA(配列番号1及び配列番号2)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、68℃で2分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの68℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約2kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5’末端をリン酸化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて大腸菌ベクター(pBluescriptII:STRATEGENE製)のEcoRV部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリン及び50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、次に50μg/mLアンピシリン及び10%ショ糖を含むLB寒天培地に移し37℃で24時間培養した。これらのクローンのうち、ショ糖を含む培地で生育できなかったものについて、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。SacB遺伝子が大腸菌内で機能的に発現する株は、ショ糖含有培地にて生育不能となるはずである。得られたプラスミドDNAを制限酵素SalI及びPstIで切断することにより、約2kbの挿入断片が認められ、該プラスミドをpBS/SacBと命名した。
(C)クロラムフェニコール耐性SacBベクターの構築
大腸菌プラスミドベクターpHSG396(宝酒造:クロラムフェニコール耐性マーカー)500ngに制限酵素PshBI10ユニットを37℃で一時間反応させた後、フェノール/クロロフォルム抽出及びエタノール沈殿により回収した。クレノウフラグメント(Klenow Fragment:宝酒造製)により両末端を平滑化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いてMluIリンカー(宝酒造)を連結、環状化させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を34μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗抹した。得られたクローンから常法によりプラスミドDNAを調製し、制限酵素MluIの切断部位を有するクローンを選抜し、pHSG396Mluと命名した。
一方、上記(B)にて構築したpBS/SacBを制限酵素SalI及びPstIで切断した後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化した。これにライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いてMluIリンカーを連結したのち、0.75%アガロースゲル電気泳動によりSacB遺伝子を含む約2.0kbのDNA断片を分離、回収した。このSacB遺伝子断片を、制限酵素MluI切断後、アルカリフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase Calf intestine:宝酒造)にて末端を脱リン酸化したpHSG396Mlu断片とライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を34μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗抹した。こうして得られたコロニーを、次に34μg/mLクロラムフェニコール及び10%ショ糖を含むLB寒天培地に移し37℃で24時間培養した。これらのクローンのうち、ショ糖を含む培地で生育できなかったものについて、常法によりプラスミドDNAを精製した。こうして得られたプラスミドDNAをMluI切断により解析した結果、約2.0kbの挿入断片を持つことが確認され、これをpCMB1と命名した。
(D)カナマイシン耐性遺伝子の取得
カナマイシン耐性遺伝子の取得は、大腸菌プラスミドベクターpHSG299(宝酒造:カナマイシン耐性マーカー)のDNAを鋳型とし、配列番号3及び配列番号4で示した合成DNAをプライマーとしたPCR法によって行った。
反応液組成:鋳型DNA1ng、PyrobestDNAポリメラーゼ(宝酒造)0.1μL、1倍濃度添付バッファー、0.5μM各々プライマー、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、62℃で15秒、72℃で1分20秒からなるサイクルを20回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約1.1kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5’末端をリン酸化した。
(E)カナマイシン耐性SacBベクターの構築
上記(C)で構築したpCMB1を制限酵素Van91I及びScaIで切断して得られた約3.5kbのDNA断片を0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。これを上記(D)で調製したカナマイシン耐性遺伝子と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
このカナマイシン含有培地上で生育した株は、ショ糖含有培地にて生育不能であることが確認された。また、同株から調製したプラスミドDNAは、制限酵素HindIII消化により354、473、1807、1997bpの断片を生じたことから、図1に示した構造に間違いがないと判断し、該プラスミドをpKMB1と命名した。
[参考例2]
<LDH遺伝子破壊株の作製>
(A)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株ゲノムDNAの抽出
A培地[尿素2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、FeSO4・7H2O 6mg、MnSO4・4−5H2O 6mg、ビオチン200μg、チアミン100μg、イーストエキストラクト 1g、カザミノ酸 1g、グルコース 20g、蒸留水1Lに溶解]10mLに、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株を対数増殖期後期まで培養し、得られた菌体から上記参考例1の(A)に示す方法にてゲノムDNAを調製した。
(B)ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
MJ233株ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、特開平11−206385号公報に記載の該遺伝子の塩基配列を基に設計した合成DNA(配列番号5及び配列番号6)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA 1μL、TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.2μM各々プライマー、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、55℃で20秒、72℃で1分からなるサイクルを30回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.95kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片を、PCR産物クローニングベクターpGEM−TEasy(Promega製)と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリン及び50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacI及びSphIで切断することにより、約1.0kbの挿入断片が認められ、これをpGEMT/CgLDHと命名した。
(C)ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊用プラスミドの構築
上記(B)で作製したpGEMT/CgLDHを制限酵素EcoRV及びXbaIで切断することにより約0.25kbからなるラクテートデヒドロゲナーゼのコーディング領域を切り出した。残った約3.7kbのDNA断片の末端をクレノウフラグメントにて平滑化し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて環状化させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で生育した株を、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacI及びSphIで切断することにより、約0.75kbの挿入断片が認められたクローンを選抜し、これをpGEMT/ΔLDHと命名した。
次に、上記pGEMT/ΔLDHを制限酵素SacI及びSphIにて切断して生じる約0.75kbのDNA断片を、0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収し、欠損領域を含むラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子断片を調製した。このDNA断片を、制限酵素SacI及びSphIにて切断した参考例1にて構築したpKMB1と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシン及び50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacI及びSphIで切断することにより、約0.75kbの挿入断片が認められたものを選抜し、これをpKMB1/ΔLDHと命名した(図2)。
(D)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株由来ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊株の作製
ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株の形質転換に用いるプラスミドDNAは、pKMB1/ΔLDHを用いて塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,53,159,1970)により形質転換した大腸菌JM110株から調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株の形質転換は、電気パルス法(Res.Microbiol.,Vol.144,p.181−185,1993)によって行い、得られた形質転換体をカナマイシン50μg/mLを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株は、pKMB1/ΔLDHがブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子とブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、同ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子及びSacB遺伝子が挿入されているはずである。
次に、上記相同組み換え株をカナマイシン50μg/mLを含むLBG培地にて液体培養した。この培養液の菌体数約100万相当分を10%ショ糖含有LBG培地に塗抹にした。結果、2回目の相同組み換えによりSacB遺伝子が脱落しショ糖非感受性となったと考えられる株約10個得た。
この様にして得られた株の中には、そのラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子がpKMB1/ΔLDHに由来する変異型に置き換わったものと野生型に戻ったものが含まれる。ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子が変異型であるか野生型であるかの確認は、LBG培地にて液体培養して得られた菌体を直接PCR反応に供し、ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子の検出を行うことによって容易に確認できる。ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子をPCR増幅するためのプライマー(配列番号7及び配列番号8)を用いて分析すると、野生型では720bp、欠失領域を持つ変異型では471bpのDNA断片を認めるはずである。
上記方法にてショ糖非感受性となった菌株を分析した結果、変異型遺伝子のみを有する株を選抜し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDHと命名した。
(E)ラクテートデヒドロゲナーゼ活性の確認
上記(D)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株をA培地に植菌し、30℃で15時間好気的に振とう培養した。得られた培養物を遠心分離(3,000×g、4℃、20分間)して菌体を回収後、ナトリウム−リン酸緩衝液[組成:50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)]で洗浄した。
次いで、洗浄菌体0.5g(湿重量)を上記ナトリウム−リン酸緩衝液2mLに懸濁し、氷冷下で超音波破砕器(ブランソン社製)にかけ菌体破砕物を得た。該破砕物を遠心分離(10,000×g,4℃,30分間)し、上清を粗酵素液として得た。対照として、ブレビバクテリウム・フラバム MJ233−ES株の粗酵素液を同様に調製し、以下の活性測定に供した。
ラクテートデヒドロゲナーゼ酵素活性の確認は、両粗酵素液について、ピルビン酸を基質とした乳酸の生成に伴い、補酵素NADHがNAD+に酸化されるのを、340nmの吸光度変化として測定した[L. Kanarek and R. L. Hill, J.Biol. Chem. 239, 4202 (1964)]。反応は、50mM カリウム−リン酸緩衝液(pH7.2)、10mM ピルビン酸、0.4mMNADH存在下、37℃にて行った。その結果、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株から調製された粗酵素液におけるラクテートデヒドロゲナーゼ活性に対し、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株から調製された粗酵素液におけるラクテートデヒドロゲナーゼ活性は、10分の1以下であった。
[参考例3]
<コリネ型細菌発現ベクターの構築>
(A)コリネ型細菌用プロモーター断片の調製
コリネ型細菌で強力なプロモーター活性を有することが報告された特開平7−95891号公報の配列番号4に記載のDNA断片(以降TZ4プロモーターと称する)を利用することとした。本プロモーター断片の取得は、参考例2の(A)で調製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233ゲノムDNAを鋳型とし、特開平7−95891の配列番号4に記載の配列を基に設計した合成DNA(配列番号9及び配列番号10)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は2分とした。
増幅産物の確認は、2.0%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.25kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5’末端をリン酸化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて大腸菌ベクターpUC19(宝酒造)のSmaI部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリン及び50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成した6クローンについて、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製し、塩基配列を決定した。これ中でTZ4プロモーターがpUC19のlacプロモーターと逆方向に転写活性を有するように挿入されたクローンを選抜し、これをpUC/TZ4と命名した。
次に、pUC/TZ4を制限酵素BamHI及びPstIで切断して調製したDNA断片に、5’末端がリン酸化された合成DNA(配列番号11及び配列番号12)から成り、両末端にそれぞれBamHIとPstIに対する粘着末端を有するDNAリンカーを混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。本DNAリンカーには、リボソーム結合配列(AGGAGG)及びその下流に配したクローニングサイト(上流から順に、PacI、NotI、ApaI)が含まれている。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAの中から制限酵素NotIによって切断されるものを選抜し、これをpUC/TZ4−SDと命名した。
この様にして構築したpUC/TZ4−SDを制限酵素PstIで切断後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化し、次いで制限酵素KpnIで切断することにより生じた約0.3kbのプロモーター断片を、2.0%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。
(B)コリネ型細菌発現ベクターの構築
コリネ型細菌にて安定的に自立複製可能なプラスミドとして、特開平12−93183記載のpHSG298par−repを利用する。本プラスミドは、ブレビバクテリウム・スタチオニスIFO12144株が保有する天然型プラスミドpBY503の複製領域及び安定化機能を有する領域と大腸菌ベクターpHSG298(宝酒造)に由来するカナマイシン耐性遺伝子及び大腸菌の複製領域を備える。pHSG298par−repを制限酵素SseIで切断後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化し、次いで制限酵素KpnIで切断することによって調製したDNAを、上記(A)で調製したTZ4プロモーター断片と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で生育した株を、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAの中から制限酵素NotIによって切断されるものを選抜し、該プラスミドをpTZ4と命名した(図3に構築手順を示した)。
[参考例4]
<ピルベートカルボキシラーゼ活性増強株の作製>
(A)ピルベートカルボキシラーゼ遺伝子の取得
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来ピルベートカルボキシラーゼ遺伝子の取得は、参考例2の(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.AP005276)を基に設計した合成DNA(配列番号13及び配列番号14)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、68℃で4分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの68℃での保温は10分とした。PCR反応終了後、Takara Ex Taq(宝酒造)を0.1μL加え、さらに72℃で30分保温した。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約3.7kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片を、PCR産物クローニングベクターpGEM−TEasy(Promega製)と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリン及び50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素PacI及びApaIで切断することにより、約3.7kbの挿入断片が認められ、これをpGEM/MJPCと命名した。
pGEM/MJPCの挿入断片の塩基配列は、アプライドバイオシステム社製塩基配列解読装置(モデル377XL)及びビックダイターミネーターサイクルシークエンスキットver3を用いて決定した。その結果得られたDNA塩基配列及び推測されるアミノ酸配列を配列番号15に記載する。また、アミノ酸配列のみを配列番号16に記載する。本アミノ酸配列はコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株由来のそれと極めて高い相同性(99.4%)を示すことから、pGEM/MJPCの挿入断片がブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来のピルベートカルボキシラーゼ遺伝子であると断定した。
(B)ピルベートカルボキシラーゼ活性増強用プラスミドの構築
上記(A)で作製したpGEM/MJPCを制限酵素PacI及びApaIで切断することにより生じる約3.7kbからなるピルベートカルボキシラーゼ遺伝子断片を、0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。
このDNA断片を、制限酵素PacI及びApaIにて切断した、参考例3にて構築したpTZ4と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で生育した株を、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素PacI及びApaIで切断することにより、約3.7kbの挿入断片が認められたものを選抜し、これをpMJPC1と命名した(図4)。
(C)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株への形質転換
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株内で複製可能なpMJPC1による形質転換用のプラスミドDNAは、上記(B)で形質転換した大腸菌(DH5α株)から調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株への形質転換は、電気パルス法(Res.Microbiol.,Vol.144,p.181−185,1993)によって行い、得られた形質転換体をカナマイシン50μg/mLを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株から、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを抽出、制限酵素切断による解析を行った結果、同株がpMJPC1を保持していることを確認し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC/ΔLDH株と命名した。
(D)ピルベートカルボキシラーゼ酵素活性
上記(C)で得られた形質転換株ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC/ΔLDH株をグルコース2%、カナマイシン25mg/Lを含むA培地100mlで終夜培養を行った。得られた菌体を集菌後、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)50mlで洗浄し、同組成の緩衝液20mlに再度懸濁させた。懸濁液をSONIFIER350(BRANSON製)で破砕し、遠心分離した上清を無細胞抽出液とした。得られた無細胞抽出液を用いピルベートカルボキシラーゼ活性を測定した。酵素活性の測定は100mM Tris/HCl緩衝液(pH7.5)、0.1mg/10mlビオチン、5mM 塩化マグネシウム、50mM炭酸水素ナトリウム、5mMピルビン酸ナトリウム、5mMアデノシン三リン酸ナトリウム、0.32mM NADH、20units/1.5mlリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(WAKO製、酵母由来)及び酵素を含む反応液中で25℃で反応させることにより行った。1Uは1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量とした。ピルベートカルボキシラーゼを発現させた無細胞抽出液における比活性は0.2U/mg蛋白質であった。なお親株であるMJ233/ΔLDH株をA培地を用いて同様に培養した菌体では、本活性測定方法によりピルベートカルボキシラーゼ活性は検出されなかった。
[参考例5]
<発酵液の調製>
尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、及び蒸留水:1000mLの培地100mLを500mLの三角フラスコにいれ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やし、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を4mL、無菌濾過した5%カナマイシン水溶液を50μL添加し、参考例4(C)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC/ΔLDH株を接種して24時間30℃にて種培養した。
尿素:12g、硫酸アンモニウム:42g、リン酸1カリウム:1.5g、リン酸2カリウム1.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:1.5g、硫酸第一鉄・7水和物:60mg、硫酸マンガン・水和物:60mg、D−ビオチン:600μg、塩酸チアミン:600μg、酵母エキス3g、カザミノ酸3g、消泡剤(アデカノールLG294:旭電化製):1mL及び蒸留水:2500mLの培地を5Lの発酵糟に入れ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やした後、あらかじめ滅菌した12%グルコース水溶液を500mL添加し、これに前述の種培養液を全量加えて、30℃に保温した。通気は毎分500mL、攪拌は毎分500回転で本培養を行った。12時間後にグルコースがほぼ消費されていた。
硫酸マグネシウム・7水和物:1.5g、硫酸第一鉄・7水和物:60mg、硫酸マンガン・水和物:60mg、D−ビオチン:600μg、塩酸チアミン:600μg、消泡剤(アデカノールLG294:旭電化製):5ml及び蒸留水:1.5Lの培地を3Lの三角フラスコに入れ、120℃、20分加熱滅菌した。室温まで冷やした後、上記の本培養により得られた培養液を10000g、5分の遠心分離により集菌した菌体を添加して、O.D.(660nm)が60になるように再懸濁した。この懸濁液1.5Lとあらかじめ滅菌した20%グルコース溶液1.5Lを5Lのジャーファーメンターに入れて混合し、35℃に保温した。pHは2M炭酸アンモニウムを用いて7.6に保ち、毎分500mLで通気、毎分300回転で攪拌しながら反応を行った。反応開始後約50時間でグルコースがほぼ消費されていた。コハク酸が57g/L蓄積されていた。この発酵液を10000g、5分間の遠心分離、限外濾過(日東電工(株)製 NTU−3000−C1R)により菌体と上清に分離した。以上の操作を30回行うことにより、コハク酸発酵液上清を103L得ることができた。
[参考例6]
<コハク酸醗酵液からのコハク酸精製>
上記のようにして得られたコハク酸発酵液上清を103L(コハク酸含有量5.87kg)を、減圧しながらジャケット付き攪拌槽にて濃縮し、コハク酸の濃度が32.9%、アンモニア11.9%の濃縮液:17.8kg(計算値)を得た。これに酢酸(ダイセル化学社製)を8.58kg加えて30℃まで冷却し、更にメタノール(キシダ化学社製)を4.0kg加えて15℃まで冷却し1時間攪拌した後、20℃にて4時間攪拌を継続した。
結晶が析出しており、これを遠心濾過器にて濾過を行い、コハク酸を74.6%、酢酸3.5%、アンモニア12.2%を含有する結晶4.95kgを得た。
酢酸11.3kgに得られた結晶4.9kgをいれ、85℃にて溶解し、直ちに20℃まで冷却した。既に結晶は析出していたが、そのまま更に3時間攪拌を続けた後、遠心濾過器にて濾過を行い、コハク酸87.9%、酢酸8.4%、アンモニア0.6%を含有する結晶2.44kgを得た。
5℃に冷やした脱塩水3.5Lにて得られた結晶を懸洗し、これを遠心濾過器にて濾過すると、コハク酸90%、酢酸1.7%、アンモニア0.05%(およそ500ppm)含有する2.08kgの結晶が得られた。
この粗コハク酸結晶2.0kgを28.5Lの脱塩水に溶解し、1Lのイオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)をつめた塔にSV=2にて通液し、約33Lの処理液を得た。これを減圧したロータリーエバポレータに連続フィードしながら、およそ5.2Lまで濃縮した。この段階で既に結晶が析出していた。更に、5℃に冷却し、2時間攪拌を継続した後、これを濾過すると、コハク酸96.7%の結晶1.76kgを得た。これを真空乾燥機にて乾燥すると1.68kgのコハク酸を得る事ができた。
[参考例7]
<1,4−ブタンジオールの製造>
上記のような方法で得られたバイオマス資源由来コハク酸を用いて、公知の方法で1,4−ブタンジオールを得た。そのような1,4−ブタンジオールは、例えば以下の方法で得られた。
バイオマス資源由来コハク酸100重量部、メタノール317重量部ならびに濃硫酸(97%)2重量部の混合液を、還流下で2時間攪拌させた。反応液を冷却後、炭酸水素ナトリウム3.6重量部を添加して60℃で30分間反応液を攪拌させた。常圧下での蒸留ならびにその蒸留残を濾過後、減圧蒸留することによりコハク酸ジメチル(収率93%)を得た。得られたコハク酸ジメチル100重量部をCuO−ZnO触媒(ズードケミー社製、T−8402)15重量部存在下、仕込みコハク酸ジメチルに対して約4倍の体積容量を持つオートクレーブ(ハステロイC)を用いて水素5MPa加圧下で攪拌させながら1時間かけて230℃まで昇温させた。その後、230℃で15MPaの水素加圧下9時間反応液を攪拌させた。反応液を冷却後、脱ガスを行った。反応液から濾過により触媒を除去した。ろ液を減圧蒸留することにより精製1,4−ブタンジオールを得た(収率81%)。製造された精製1,4−ブタンジオール中には窒素原子が0.7ppm含まれたが、硫黄原子は含まれていなかった。また、1,4−ブタンジオール中には酸化生成物である2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフランが1000ppm含有されていた。
[製造例1]
<窒素原子含有量5ppm、硫黄原子含有量0.2ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル及びそのペレットの製造>
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、窒素原子含有量5ppm、硫黄原子含有量0.2ppmのバイオマス資源由来コハク酸100重量部(YI=2.5)、三菱化学社製工業グレードの1,4−ブタンジオール88.5重量部、リンゴ酸0.37重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液5.4重量部を仕込み、減圧(到達減圧度0.2kPa)後、窒素ガスで大気圧まで復圧する操作を三回繰り返す方法によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を150rpmで攪拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1.5時間かけて0.07×103Paになるように減圧し、同減圧度で1.8時間反応を行った。ここで、減圧後の攪拌装置の攪拌回転数は150rpm、60rpm、40rpmと段階的に下げ、重合終了前30分間の回転数を6rpmとした。得られたポリエステルを220℃で反応槽の底部からストランドとして抜き出し、10℃の水中を潜らせた後、カッターでストランドをカットすることにより白色のペレット(黄色度YIは11)を得た。得られた白色のポリエステルペレットの最小径は2mm、最大径は3.5mmであった。本ペレットを真空下、80℃で8h加熱乾燥させことにより358ppmの含水量のペレットを得た。乾燥後のポリエステル中の窒素原子含有量ならびに硫黄原子含量は、それぞれ2ppm、0.1ppmであり、ポリエステルの還元粘度(ηsp/C)は2.5dL/g、末端カルボキシル基量は26当量/トンであった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
この乾燥ペレットを光の遮光下でポリエステル/アルミニウム/ポリエチレンの複合フィルム袋中に半年間貯蔵したが、ペレットの引っ張り伸び特性の顕著な劣化は観測されなかった。
一方、本ペレットの含水量を更に下げる目的で、真空下、100℃で72時間加熱乾燥させるとポリマーの着色が観測され、長期間の乾燥は好ましくないことが判った。
[製造例2]
<窒素原子含有量12ppm、硫黄原子含有量5ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル及びそのペレットの製造>
原料として、製造例1の窒素原子5ppm、硫黄原子含有量0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子12ppm、硫黄原子含有量5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは7)100重量部を使用した以外は製造例1と同様の条件によって製造例1と同様の白いポリエステルのペレットを製造した。0.07×103Paの減圧下での重合反応時間は2時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは22)中の窒素原子含量は、3.6ppm、硫黄原子含有量は 2.6ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/C)は2.3dL/g、末端カルボキシル基量は19当量/トンであった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
[製造例3]
<窒素原子含有量115ppm、硫黄原子含有量0.3ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル及びそのペレットの製造>
原料として、製造例1の窒素原子5ppm、硫黄原子含有量0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子115ppm、硫黄原子含有量0.3ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部を使用した以外は製造例1と同様の条件によって製造例1と同様のポリエステルのペレットを製造した。0.07×103Paの減圧下での重合反応時間は2.9時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは23)中の窒素原子含量は、19ppm、硫黄原子含有量は0.2ppmポリエステルの還元粘度(ηsp/C)は2.5dL/g、末端カルボキシル基量は19当量/トンであった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
[製造例4]
<窒素原子含有量230ppm、硫黄原子含有量1ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル及びそのペレットの製造>
原料として、製造例1の窒素原子5ppm、硫黄原子含有量0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子230ppm、硫黄原子含有量1ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは11)100重量部を使用した以外は製造例1と同様の条件によって製造例1と同様のポリエステルのペレットを製造した。0.07×103Paの減圧下での重合反応時間は2.6時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは39)中の窒素原子含量は、27ppm、硫黄原子含有量 0.6ppmポリエステルの還元粘度(ηsp/C)は2.4dL/g、末端カルボキシル基量は19当量/トンであった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
[製造例5]
<窒素原子、硫黄原子を含まない石油由来コハク酸と窒素原子0.7ppmを含有するバイオマス資源由来1,4−ブタンジオールを用いたポリエステル及びそのペレットの製造>
原料として、製造例1のコハク酸の代わりに窒素原子及び硫黄原子を含まない石油由来コハク酸(川崎化成(株)社製工業グレード(黄色度YIは2)100重量部に、製造例1の石油由来1,4−ブタンジオールの代わりに、バイオマス資源から誘導した1,4−ブタンジオール88.5重量部を使用した以外は製造例1と同様の条件によって製造例1と同様のポリエステルのペレットを製造した。0.07×103Paの減圧下での重合反応時間は3.4時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは7)中の窒素原子含量は、0.5ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/C)は2.5dL/g、末端カルボキシル基量は28当量/トンであった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
[製造例6]
<窒素原子含有量660ppm、硫黄原子含有量330ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル及びそのペレットの製造>
原料として、製造例1のコハク酸の代わりに窒素原子含有量660ppm、硫黄原子330ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは8)100重量部を使用した以外は製造例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×103Paの減圧下で2.5時間重合反応を実施したが、得られたポリエステルはこげ茶に着色した(黄色度YIは60以上)。
得られたこげ茶のポリエステル中の窒素原子含量は、54ppm、硫黄原子含量は、16ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/C)は0.7dL/g、末端カルボキシル基量は139当量/トンであった。
[製造例7]
<窒素原子含有量850ppm、硫黄原子含有量290ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル及びそのペレットの製造>
原料として、製造例1のコハク酸の代わりに窒素原子含有量850ppm、硫黄原子290ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは8)100重量部を使用した以外は製造例1と同様の条件によって製造例1と同様のポリエステルペレットを製造した。0.07×103Paの減圧下で2.5時間重合反応を実施したが得られたポリエステルはこげ茶に着色した(黄色度YIは60以上)。
得られたこげ茶のポリエステル中の窒素原子含有量51ppm、硫黄原子含量は、16ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/C)は1.1dL/g、末端カルボキシル基量は69当量/トンであった。
本製造例から、ポリエステル中の窒素原子や硫黄原子の含有量が多いほどポリエステルの着色や重合阻害が著しくなる傾向があることが判る。特に、窒素原子の含有量が多いほど、ポリマーの着色が著しくなる傾向があり、一方、硫黄原子がある特定量以上含有されたり、高温での製造を試みるとカルボン末端カルボキシル基量が多くなり、一部ゲル化により生成したと考えられる有機溶媒に対する不溶物が多くなる傾向がある。これらの不溶物が製品中へ混入されると製品の景観を損ねたり、物性の低下が引き起こされることが知られている。
[実施例1]
製造例1で得られた脂肪族ポリエステル100重量部、核剤(気泡調整剤)であるタルク(松村産業(株)製、ハイフィラー#12;平均粒径3〜4μm)0.2重量部を190℃においてテクノベル社製二軸押し出し機(KZW15)にて溶融混練した後、ストランド状に押出し、次いでこのストランドを切断して、直径約1.7mm、長さ約1.9mm、1個当り約3mgの脂肪族ポリエステル樹脂粒子を得た(脂肪族ポリエステル樹脂粒子作製工程)。
この脂肪族ポリエステル樹脂粒子の末端カルボキシル基量、還元粘度、窒素原子及び硫黄原子含量を表1に示した。
得られた脂肪族ポリエステル樹脂粒子100重量部と、純水300重量部と、融着防止剤である第三リン酸カルシウム(平均粒径 μm)0.02重量部、分散剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.0006重量部とを、内容積500mLのオートクレーブに入れ、窒素ガスを導入しオートクレーブ内の酸素を除去した。攪拌しながら発泡温度(105℃)まで昇温し、二酸化炭素をオートクレーブ圧力が45kgf/cm2G(3.9MPa)となるまで注入し、同温度で60分間保持した。その後、95℃まで内容物を冷却し、同温度で5分間保持した後、オートクレーブの一端を開放して、大気圧下にして発泡倍率30倍の発泡粒子(嵩密度0.028g/cm3)を得た(発泡工程)。
得られた発泡粒子の発泡倍率、末端カルボキシル基量、及び還元粘度を測定した。
得られた発泡粒子を温度25℃、相対湿度50%の条件下で1日間以上静置し、40mm×40mm×25mmの金型に容積の90%を充填し、成形温度を120℃としてスチームで加熱して成形したところ、成形性の評価において、何ら問題がなく成形性良好(○)であった。
得られた型内発泡成形体は大気圧下40℃で48時間養生した(型内成形工程)。
[実施例2]
基材樹脂として、製造例2で得た脂肪族ポリエステルを使用した以外は実施例1と同様の条件によってポリエステル樹脂粒子及び発泡粒子、型内成形体を製造した。得られた発泡粒子は発泡倍率30倍の発泡粒子であった。さらに型内成形体も実施例1の結果と同様に問題なく成形ができ、成形性良好(○)とした。
脂肪族ポリエステル樹脂粒子の末端カルボキシル基量、還元粘度、窒素原子及び硫黄原子含量と得られた発泡粒子の発泡倍率、末端カルボキシル基量及び還元粘度を測定し、型内成形性を表1に示した。
[実施例3]
基材樹脂として、製造例3で得た脂肪族ポリエステルを使用した以外は実施例1と同様の条件によってポリエステル樹脂粒子及び発泡粒子、型内成形体を製造した。得られた発泡粒子は発泡倍率33倍の発泡粒子であった。さらに型内成形体も実施例1の結果と同様に問題なく成形ができ、成形性良好(○)とした。
脂肪族ポリエステル樹脂粒子の末端カルボキシル基量、還元粘度、窒素原子及び硫黄原子含量と得られた発泡粒子の発泡倍率、末端カルボキシル基量及び還元粘度を測定し、型内成形性を表1に示した。
[実施例4]
基材樹脂として、製造例4で得た脂肪族ポリエステルを使用した以外は実施例1と同様の条件によってポリエステル樹脂粒子及び発泡粒子、型内成形体を製造した。得られた発泡粒子は発泡倍率32倍の発泡粒子であった。さらに型内成形体も実施例1の結果と同様に問題なく成形ができ、成形性良好(○)とした。
脂肪族ポリエステル樹脂粒子の末端カルボキシル基量、還元粘度、窒素原子及び硫黄原子含量と得られた発泡粒子の発泡倍率、末端カルボキシル基量及び還元粘度を測定し、型内成形性を表1に示した。
[実施例5]
基材樹脂として、製造例5で得た脂肪族ポリエステルを使用した以外は実施例1と同様の条件によってポリエステル樹脂粒子及び発泡粒子、型内成形体を製造した。得られた発泡粒子は発泡倍率35倍の発泡粒子であった。さらに型内成形体も実施例1の結果と同様に問題なく成形ができ、成形性良好(○)とした。
脂肪族ポリエステル樹脂粒子の末端カルボキシル基量、還元粘度、窒素原子及び硫黄原子含量と得られた発泡粒子の発泡倍率、末端カルボキシル基量及び還元粘度を測定し、型内成形性を表1に示した。
[実施例6]
実施例1の樹脂粒子製造工程において、カルボジイミド化合物(日清紡製 カルボジライトLA−1)0.5重量部を追加したこと以外は樹脂粒子を得た。発泡粒子製造工程は実施例1と同様の条件によってポリエステル発泡粒子、型内成形体を製造した。得られた発泡粒子は発泡倍率34倍の発泡粒子であった。さらに型内成形体も実施例1の結果と同様に問題なく成形ができ、成形性良好(○)とした。
脂肪族ポリエステル樹脂粒子の末端カルボキシル基量、還元粘度、窒素原子及び硫黄原子含量と得られた発泡粒子の発泡倍率、末端カルボキシル基量及び還元粘度を測定し、型内成形性を表1に示した。
[比較例1]
基材樹脂として、製造例6で得た脂肪族ポリエステルを使用した以外は実施例1と同様の条件によってポリエステル樹脂粒子及び発泡粒子を製造した。
しかし、気泡の合一や粒子の変形が著しく、満足な発泡粒子は得られなかった。
また、得られた発泡粒子を型内成形に供するも発泡成形体は得られなかった。
脂肪族ポリエステル樹脂粒子の末端カルボキシル基量、還元粘度、窒素原子及び硫黄原子含量と得られた発泡粒子の発泡倍率、末端カルボキシル基量及び還元粘度を測定し、表1に示した。
本比較例では、バイオマス資源由来の原料から混入された不純物量(窒素、硫黄)が多いため、満足な分子量が得られず、発泡成形体製造には不適当であることが分かる。さらに、ポリエステル中に含まれる不純物が発泡工程中で加水分解を促進することが分かり、結果として還元粘度の低下と末端カルボキシル基量の上昇をもたらした。
[比較例2]
基材樹脂として、製造例7で得た脂肪族ポリエステルを使用した以外は実施例1と同様の条件によってポリエステル樹脂粒子及び発泡粒子を製造した。
しかし、気泡の合一や粒子の変形が著しく、満足な発泡粒子は得られなかった。
また、得られた発泡粒子を型内成形に供するも発泡成形体は得られなかった。
脂肪族ポリエステル樹脂粒子の末端カルボキシル基量、還元粘度、窒素原子及び硫黄原子含量と得られた発泡粒子の発泡倍率、末端カルボキシル基量及び還元粘度を測定し、表1に示した。
本比較例では、バイオマス資源由来の原料から混入された不純物量(窒素、硫黄)が多いため、満足な分子量が得られず、発泡成形体製造には不適当であることが分かる。さらに、ポリエステル中に含まれる不純物が発泡工程中で加水分解を促進することが分かり、結果として還元粘度の低下と末端カルボキシル基量の上昇をもたらした。