JP5454162B2 - フィルムコーティングされた昇華性成分含有固形製剤 - Google Patents

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本発明は、イブプロフェン等の昇華性成分を含有する固形製剤に関し、該昇華性成分の昇華を抑制するためのフィルムコーティング液及び該フィルムコーティング液で被覆された昇華性成分含有固形製剤に関する。
メントール、カフェインやイブプロフェンは昇華性を有する成分として知られている。これら昇華性成分を配合した錠剤等の固形製剤においては、その表面にウィスカー(Whisker)と呼ばれる髭状の結晶が発生したり、錠剤等を入れた透明ガラス瓶の内側に白い曇りが生じ、瓶の中味が見えにくくなることがある。そこで、こうした昇華性を有する成分を含有する固形製剤においては、その昇華を抑制するため、糖衣やフィルムコーティング等何らかのマスキング処理がなされるのが一般的である。
例えば、昇華性成分に起因するウィスカーの発生を防止するために、錠剤に糖衣コーティングを施す方法が考案されている(特許文献1及び2参照)。また、錠剤等をシクロデキストリン配合の高分子フィルムで被覆する方法(特許文献3参照)、酵母細胞壁画分を配合した高分子フィルムで被覆する方法(特許文献4参照)、カルボキシメチルセルロース又はその塩を配合した高分子フィルムで被覆する方法(特許文献5参照)、フィルムコーティングされた錠剤の平均相対湿度を20%以下に抑える方法(特許文献6参照)等が考案されている。
特開2002‐179559号公報 特開2002‐241275号公報 特開昭61‐129138号公報 特開2003‐95987号公報 特開2005‐162619号公報 特開2001‐163774号公報
しかしながら、これらの方法は必ずしもその昇華抑制効果が十分でなかったり、フィルム等の基剤として汎用されていない成分を用いたり、製造時間が長いため、製造コストの上昇を招来するという問題があった。
そこで、本発明の目的は、従来の方法よりも簡便にかつ効果的に固形製剤に配合された昇華性成分の昇華を抑制する方法及び昇華が抑制された昇華性成分含有固形製剤を提供することである。
本発明者らは、昇華性成分含有固形製剤の昇華やウィスカーの発生を抑制する手段としてフィルムコーティングを採択し、フィルムを構成する組成について鋭意検討を行った。その結果、フィルムの基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「ヒプロメロース」とも呼ばれる。以下、適宜に「HPMC」という。)や酸化チタンといったフィルム常用の基剤に、ポリビニルアルコール(以下、適宜に「PVA」という。)、パラフィン及びカルナウバロウを組合せ、かつ、フィルム基剤(固形分)中の酸化チタンの配合量を1乃至20質量%の範囲に制限したフィルムコーティング液でコーティング(被覆)することにより、昇華性成分含有固形製剤の昇華やウィスカーの発生が顕著に抑制されることを見出した。固形製剤の基剤としては公知の成分の組合せではあるが、フィルムの基剤としてはあまり用いられていないPVAとパラフィンを配合し、糖衣やフィルムコーティングされた錠剤の艶だし剤として汎用されているカルナウバロウをフィルムコーティングの成分として配合した上、全く酸化チタンを配合しなかった場合やフィルム基剤(固形分)中に20質量%を超えて酸化チタンを配合した場合には十分な昇華抑制効果が得られず、酸化チタンを1乃至20質量%という限定された範囲で配合した場合のみ優れた昇華抑制効果を奏するという知見は、固形製剤の製造・開発等に従事する者にとっては全く予期せぬ新たな知見であった。
かかる知見に基づき完成した本発明の態様は、ポリビニルアルコール、パラフィン、カルナウバロウ及び酸化チタンを含有し、固形分濃度が5〜20質量%であって、該酸化チタンの含有量が固形分全体の1〜20質量%であることを特徴とするフィルムコーティング液である。
本発明の他の態様は、ポリビニルアルコール、パラフィン、カルナウバロウ及び酸化チタンを含有し、該酸化チタンの含有量が1〜20質量%であるフィルム層によってコーティングされていることを特徴とする昇華性成分含有固形製剤である。
本発明の他の態様は、昇華性成分がイブプロフェンである前記昇華性成分含有固形製剤である。
本発明の他の態様は、フィルムコーティングされた錠剤である前記昇華性成分含有固形製剤である。
本発明により、イブプロフェン等の昇華性成分に起因する昇華が抑制され、ウィスカーや透明ガラス容器の曇りの発生等が抑えられた昇華性成分含有固形製剤の提供が可能となった。
実施例1〜4及び比較例1〜4の40℃2週間保存後の透明ガラスビンの曇りの程度を示す写真である。
本発明のフィルムコーティング液は、ポリビニルアルコール、パラフィン、カルナウバロウ及び酸化チタンを含有し、固形分濃度が5〜20質量%であって、該酸化チタンの含有量が固形分全体の1〜20質量%であることを特徴とするフィルムコーティング液である。
フィルムコーティング液のうち、水等の液体部分を除いた、実際に錠剤等を覆うフィルム層を形成する成分を固形分というが、本発明のフィルムコーティング液は、固形分として、PVA、パラフィン、カルナウバロウ及び酸化チタンを必須とする。
ポリビニルアルコール(PVA)とは、ポリ酢酸ビニルをけん化して得た重合物で、白色若しくは微黄白色の粉末である。ここで本発明において使用するPVAは、その種類が特に制限されるものではないが、付着力と溶解性を考慮すれば部分ケン化物を使用することが好ましく、好ましいケン化度は85〜90モル%品である。PVAの含有(配合量)量は、固形分全体の20〜40質量%が好ましい。
パラフィンとは、石油から得た固形の脂肪族飽和炭化水素の混合物であり無色又は白色のやや透明な結晶性の粒である。パラフィンの含有(配合)量は、固形分全体の5〜20質量%が好ましい。
カルナウバロウとは、カルナウバヤシの葉から得たロウであり淡黄色〜淡褐色の堅くてもろい塊又は白色〜淡黄色の粉末である。カルナウバロウの含有(配合)量は、固形分全体の5〜20質量%が好ましい。
酸化チタンとは、二酸化チタンの白色の粉末である。酸化チタンの含有(配合)量を固形分全体の1〜20質量%とするのは、酸化チタンが1質量%未満の場合も20質量%を超える場合も昇華抑制効果が低下し、1〜20質量%という限定された範囲においてのみ優れた昇華抑制効果を奏するという、本発明を通じて初めて明らかにされる知見に基づくものである。
また、一般的に水溶性コーティング、腸溶性コーティング、徐放性コーティング等で用いられる高分子を必要に応じて配合することができる。このような高分子物質としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;ヒプロメロース)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、エチルセルロース等のセルロース系基剤、メタアクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL30D−55)、アミノアルキルアクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS等のアクリル酸系基剤、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等のビニル系基剤、プルラン、セラック等の天然物が挙げられる。このうち最も好ましいのは、HPMCである。
HPMCとは、セルロースのメチル及びヒドロキシプロピルの混合エーテルであり、白色〜帯黄白色の繊維状の粉末である。HPMCの含有(配合)量は、固形分全体の20〜40質量%が好ましい。
さらに、固形分(フィルム層)として、ポリエチレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、クエン酸トリエチル、トリアセチン等の可塑剤、ケイ酸塩類、タルク等の懸濁剤、三二酸化鉄や色素等の着色剤等を適宜に配合することができる。
ここに、ショ糖脂肪酸エステルとは、脂肪酸とショ糖のエステルであり、白色〜淡黄褐色の粉末である。ショ糖脂肪酸エステルの含有(配合)量は固形分全体の1〜5質量%である。
ポリソルベート80とは、無水ソルビトールの水酸基の一部をオレイン酸でエステル化したもののポリオキシエチレンエーテルであり、無色〜だいだい黄色の粘ちょう性のある液である。ポリソルベート80の含有(配合)量は固形分全体の1〜5質量%である。
そして、これら固形分を溶解又は分散させ、フィルムコーティング液を調製する溶媒としては、水の他、少量の有機溶媒(エタノール等)を添加してもよい。
本発明のフィルムコーティング液の固形分濃度は5〜20質量%であって、該酸化チタンの含有(配合)量は固形分全体の1〜20質量%であることを特徴とする。
本発明のコーティングフィルム液は、前記固形分を精製水等に溶解又は分散させ、固形分濃度が5〜20質量%となるように調製される。固形分濃度を5〜20質量%とするのは、固形分濃度が5質量%未満であるとコーティング中の噴霧工程が長くなり、コーティング全体に要する時間が長くなって好ましくないからである。また、20質量%を超えるとフィルムコーティング液の粘性が大きくなって錠剤に均一にコーティングすることが難しくなり、錠剤同士の付着等を生じて好ましくないからである。
フィルムコーティングとは、固形製剤の分野で一般的に行われるフィルムコーティングを施すことをいい、その方法に特に制限はない。例えば、本発明の昇華性成分含有固形製剤が錠剤の場合には、コーティングパンあるいは通気乾燥型パンを用いて錠剤を仕込み、フィルムコーティング液をスプレーしながら乾燥させる。顆粒剤の場合には、流動層コーティング機に素顆粒を仕込んで前記フィルムコーティング液をスプレーしながら乾燥させる。
本発明の昇華性成分含有固形製剤とは、昇華性を有する成分(以下、適宜に「昇華性成分」という。)を含有し、前記フィルムコーティング液によってコーティング(被覆)された、より具体的には、ポリビニルアルコール、パラフィン、カルナウバロウ及び酸化チタンを含有し、該酸化チタンの含有量が1〜20質量%であるフィルム層によってコーティング(被覆)されている昇華性成分含有固形製剤である。
フィルムコーティングは、そのフィルム層の質量がフィルムコーティング前の昇華性成分含有固形製剤の質量に対し約1〜50質量%、好ましくは約2〜20質量%程度となるように実施される。
本発明の昇華性成分含有固形製剤は、昇華性成分を含有する錠剤や顆粒剤、散剤等が直接フィルムコーティングされている場合の他、フィルムコーティングされた昇華性薬物含有顆粒等を他の有効成分や賦形剤等と混合・造粒等することによって調製された顆粒剤や散剤、圧縮成型することによって得られた錠剤、カプセル充填することによって調製されたカプセル剤も本発明の昇華性成分含有固形製剤に包含される。このように調製された各固形製剤は、昇華性成分の昇華が抑制され、透明なガラスビンなどの気密容器や透明なPTP包装に充填しても、ウィスカーの発生や容器の曇り等が抑制されているからである。
昇華とは、固体が液体を経ずに直接に気体になる現象をいうが、本発明において昇華性成分とは、それ自体が昇華性を有するか、その分解物が昇華性を有するため、ウィスカーやガラス容器に曇り等を生じる物質をいい、このような性質を有する物質であれば特に限定はない。このような成分としては、例えば、イブプロフェン、アセトアミノフェン、エテンザミド、マレイン酸クロルフェニラミン、ヒベンズ酸チペピジン、ノスカピン、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、イソプロピルアンチピリン、カフェイン類(カフェイン(1水和物)、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェインなど)カンフル類(l−カンフル、d−カンフル、dl−カンフルなど)、メントール類(l−メントール、d−メントール、dl−メントールなど)、サリチル酸類(サリチル酸、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチルなど)、生薬エキス(マオウ、ケイヒ、地竜、ニンジン、カンゾウ、ゴオウなどのエキス)、漢方エキス(葛根湯、小紫胡湯、小青竜湯、紫胡桂枝湯、安中散など)が挙げられる。中でも昇華の著しい成分として代表的なものは、イブプロフェン、カフェイン及びメントールであり、本発明はこれら成分の昇華を抑制する簡易かつ効果的な方法として有用である。
イブプロフェンとは、非ステロイド性抗炎症薬の1つであり、優れた解熱、鎮痛、抗炎症効果を有し、副作用が比較的少ないとされるプロピオン酸系の薬剤である。そのコーティングされる前の固形製剤中における含有(配合)量は、固形製剤中30〜80質量%である。
カフェインとは、白色の柔らかい結晶又は粉末であり、ねむけ、倦怠感、血管拡張性及び脳圧亢進性頭痛に用いられる薬物である。そのコーティングされる前の固形製剤中における含有(配合)量は、固形製剤中1〜20質量%である。
メントールとは、無色の結晶で、特異でそう快な芳香があり芳香・矯臭・矯味の目的で用いられる。そのコーティングされる前の固形製剤中における含有(配合)量は、固形製剤中0.01〜10質量%である。
本発明のフィルムコーティング前の昇華性成分含有固形製剤には、昇華性成分の他に他の薬理活性成分や通常に医薬品や食品に使用されている成分を適宜その目的に応じて配合してもよい。例えば、薬理活性成分としては、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、小児鎮痛薬、制酸薬、健胃薬、整腸薬、消化薬、血管拡張薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、鎮うん薬、利尿薬、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤などに用いる薬理活性成分が挙げられる。また医薬品や食品に使用される成分としては、賦形剤(希釈剤)、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、着色剤、矯味剤、吸着剤、防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤、崩壊延長剤、発泡剤等が挙げられる。例えば、乳糖、精製白糖、ブドウ糖、含水ブドウ糖、トレハロース、エリスリトール、マルチトール、マンニトール等の糖・糖アルコール類、コーンスターチ、バレイショデンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、HPMC、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム,炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。賦形剤の配合量に特に制限はないが、例えばフィルムコーティング前の昇華性成分含有固形製剤全体に対して約10〜99質量%、好ましくは約20〜98質量%程度である。
以下に、参考例、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
参考例1
イブプロフェン70質量%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース10質量%、軽質無水ケイ酸5質量%、結晶セルロース4質量%及びHPMC2質量%を混合機に仕込み混合した。この混合物20kgを流動層造粒乾燥機に移し、HPMC5質量%及び軽質無水ケイ酸4質量%をエタノールと精製水の混液(エタノール:精製水=4:6)に溶解した結合液29kgをスプレーして造粒を行い、乾燥後24M(710μm)の篩で分級し、篩残は粗砕して顆粒を得た。
参考例2
参考例1で調製した顆粒3150gを混合機に仕込み、結晶セルロース500g、軽質無水ケイ酸85g、タルク85g及びステアリン酸マグネシウム9gを添加して混合した。混合末をロータリー式打錠機で打錠して1錠重量180mgの素錠を得た。
参考例3
参考例1で調製した顆粒1728gを混合機に仕込み、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース170g、軽質無水ケイ酸50g、タルク50g及びステアリン酸マグネシウム5gを添加して混合した。混合末をロータリー式打錠機で打錠して1錠重量167gの素錠を得た。
実施例1
参考例2で調製した素錠約3,900錠(700g)を通気式のフィルムコーティング機(ドリアコーター、パウレック社製)に仕込み、HPMC72g、PVA72g、パラフィン19.2g、カルナウバロウ19.2g、ショ糖脂肪酸エステル4.8g、ポリソルベート−80 4.8g及び酸化チタン2.4g(固形分として1質量%)を精製水1440gに溶解・分散させたコーティング液を用いてスプレー法によりフィルムコーティングを行い、1錠重量190mgのフィルム錠(フィルム層10mg)を製造した。
実施例2
参考例2で調製した素錠約3,900錠(700g)を通気式のフィルムコーティング機に仕込み、HPMC72g、PVA72g、パラフィン19.2g、カルナウバロウ19.2g、ショ糖脂肪酸エステル4.8g、ポリソルベート−80 4.8g及び酸化チタン6g(固形分として3質量%)を精製水1440gに溶解・分散させたコーティング液を用いてスプレー法によりフィルムコーティングを行い、1錠重量190mg(フィルム層10mg)のフィルム錠を製造した。
実施例3
参考例2で調製した素錠約3,900錠(700g)を通気式のフィルムコーティング機に仕込み、HPMC72g、PVA72g、パラフィン19.2g、カルナウバロウ19.2g、ショ糖脂肪酸エステル4.8g、ポリソルベート−80 4.8g及び酸化チタン9.6g(固形分として5質量%)を精製水1440gに溶解・分散させたコーティング液を用いてスプレー法によりフィルムコーティングを行い、1錠重量190mg(フィルム層10mg)のフィルム錠を製造した。
実施例4
参考例3で調製した素錠約4,200錠(700g)を通気式のフィルムコーティング機に仕込み、HPMC60g、PVA60g、パラフィン16.1g、カルナウバロウ16.1g、ショ糖脂肪酸エステル3.8g、ポリソルベート−80 3.8g及び酸化チタン40.5g(固形分として20質量%)を精製水1200gに溶解・分散させたコーティング液を用いてスプレー法によりフィルムコーティングを行い、1錠重量177mg(フィルム層10mg)のフィルム錠を製造した。
比較例1
参考例2で調製した素錠約3,900錠(700g)を通気式のフィルムコーティング機に仕込み、HPMC72g、PVA72g、パラフィン19.2g、カルナウバロウ19.2g、ショ糖脂肪酸エステル4.8g及びポリソルベート−80 4.8gを精製水1440gに溶解・分散させ、酸化チタンを含まないコーティング液を用いてスプレー法によりフィルムコーティングを行い、1錠重量190mg(フィルム層10mg)のフィルム錠を製造した。
比較例2
参考例3で調製した素錠約4,200錠(700g)を通気式のフィルムコーティング機に仕込み、HPMC100.8g、PVA100.8g、パラフィン27g、カルナウバロウ27g、ショ糖脂肪酸エステル7.2g及びポリソルベート−80 7.2g及び酸化チタン90g(固形分として25質量%)を精製水2016gに溶解・分散させたコーティング液を用いてスプレー法によりフィルムコーティングを行い、1錠重量177mg(フィルム層10mg)のフィルム錠を製造した。
比較例3
参考例で調製した素錠約3,900錠(700g)を通気式のフィルムコーティング機に仕込み、HPMC67.2g、PVA67.2g、パラフィン18g、カルナウバロウ18g、ショ糖脂肪酸エステル4.8g、ポリソルベート−80 4.8g及び酸化チタン84g(固形分として30質量%)を精製水1344gに溶解・分散させたコーティング液を用いてスプレー法によりフィルムコーティングを行い、1錠重量190mg(フィルム層10mg)のフィルム錠を製造した。
比較例4
上記参考例2で調製した1錠重量180mgの素錠をそのままフィルムコーティングせずに用いた。
実施例及び比較例の処方を下表1に示す。
Figure 0005454162
試験例1 比較試験
(1)評価方法
被験製剤を透明ガラスビンに20錠充填し密封したものを40℃の条件下に2週間保存した後、ビンの曇りの程度を肉眼で確認した。比較例4の素錠の場合のビンの曇りの程度を2、比較例1のフィルム錠の場合のビンの曇りの程度を0、ビンの曇りが認められない場合を−2として、−2から2の5段階で評価した。
(2)結果
結果を下表2に示す。
また、実際の透明ガラスビンの曇りの程度を写真にして図1に示す。
Figure 0005454162
表2から明らかなとおり、素錠(比較例4)に比べ酸化チタンを含まないフィルムコーティングを施したフィルム錠剤(比較例1)はビンの曇りの程度は弱まっているものの、ビンの曇りを完全に抑制することはできなかった。一方、本発明の酸化チタンを固形分として1〜20質量%含有するフィルムコーティングを施したフィルム錠剤(フィルム層中に1〜20質量%の酸化チタンを含有するフィルム錠;実施例1〜4)ではビンの曇りが認められず、比較例1より有意に昇華が抑制されることが確認された。しかしながら、フィルム層中の酸化チタン含有量が25%質量以上となる比較例2及び3では比較例1に比べ昇華の程度が強くなっており、酸化チタン含有量が一定量以上となると昇華抑制効果が却って低減することが明らかとなった。
本発明により、イブプロフェン等の昇華性成分に起因する昇華が抑制され、ウィスカーや透明ガラス容器の曇りの発生等が抑えられた錠剤、顆粒剤、散剤等固形製剤の提供が可能となり、医薬品・医薬部外品等の品質向上に寄与することが期待される。

Claims (4)

  1. ポリビニルアルコール、パラフィン、カルナウバロウ及び酸化チタンを含有し、固形分濃度が5〜20質量%であって、該酸化チタンの含有量が固形分全体の1〜20質量%であることを特徴とするフィルムコーティング液。
  2. ポリビニルアルコール、パラフィン、カルナウバロウ及び酸化チタンを含有し、該酸化チタンの含有量が1〜20質量%であるフィルム層によってコーティングされていることを特徴とする昇華性成分含有固形製剤。
  3. 昇華性成分がイブプロフェンである請求項2記載の昇華性成分含有固形製剤。
  4. フィルムコーティングされた錠剤である請求項2又は3記載の昇華性成分含有固形製剤。
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