JP5453373B2 - フェノール系炭素繊維の製造方法及びフェノール系活性炭素繊維の製造方法 - Google Patents

フェノール系炭素繊維の製造方法及びフェノール系活性炭素繊維の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フェノール系炭素繊維の製造方法及びフェノール系活性炭素繊維の製造方法に関する。
フェノール系繊維は、耐熱性、難燃性及び耐薬品性に優れていることから、これらの特性が要求される一般産業資材分野をはじめ、幅広い分野で長年に渡り利用されている。
また、フェノール系繊維を炭素化することによりフェノール系炭素繊維が得られることが知られている。このフェノール系炭素繊維は、たとえばポリアクリロニトリル系やピッチ系の炭素繊維に比べ、強度や弾性率が低いものの、柔軟性に富んで加工が容易である点、炭素化後の残存率が高い点、良好な潤滑性を示す点から、特定分野では不可欠な材料とされている。
また、フェノール系繊維を炭素化した後、賦活することによりフェノール系活性炭素繊維が得られることが知られている。このフェノール系活性炭素繊維も、特定の有機溶剤に対して極めて高い吸着性を示す等、特定分野では不可欠な材料とされている。
ところで、近年、フェノール系繊維については高密度織物、高密度不織布又は薄い紙への要望などから、フェノール系炭素繊維とフェノール系活性炭素繊維については比表面積もしくは吸着速度等の特性向上又は触媒担体の高性能化の要望などから、繊維直径が従来に比して細いフェノール系繊維(細径化)が求められている。
また、これとは逆に、フェノール系繊維をフィルター等の用途に使用する場合、圧力損失を低減させるため、繊維直径が従来に比して太いフェノール系繊維(太径化)が求められている。
フェノール系繊維は、従来一般的に、熱可塑性のノボラック型フェノール樹脂を溶融紡糸し、その後、酸性触媒下でアルデヒド類と反応させることにより三次元架橋を行い、熱不融化する製造方法により製造されている。
原料となるノボラック型フェノール樹脂は、完全非晶質であることに加えて、重合度が低く、粘度の温度依存性が高い。そのため、ノボラック型フェノール樹脂を溶融紡糸して得られる糸條は、周囲の温度の低下に伴って急速に固化する反面、極めて脆い性質を有する。特に、架橋反応前の糸條は脆弱である。したがって、たとえば、ポリアミド系繊維やポリエステル系繊維などの他の熱可塑性繊維を製造する際には、糸條に対して延伸を加えることが可能であるが、通常の方法でフェノール系繊維を製造する際に延伸を加えることは不可能であった。
従来、フェノール系繊維に延伸を加える方法はないため、溶融したノボラック型フェノール樹脂を細孔より吐出させ、可塑変形領域にて一気に引き伸ばす高速ドラフト法による直接紡糸法が採られている。しかし、該直接紡糸法では、紡糸条件が極めて狭い管理幅内に規制される上、たとえその管理幅内にあっても、僅かな温度、紡糸速度の変動が原因で糸切れが多発しやすかった。そのため、これまで実用に耐え得る細径化の限界は繊維直径が12μm程度であった。この理由は、繊維を細くするために口金からの吐出量が絞られ、さらに紡糸速度が高く設定された条件下で、溶融したノボラック型フェノール樹脂が紡糸張力に耐え得る機械的強度を有していないためである。
フェノール系繊維の細径化に際し、前記のように糸切れが多発するのを抑制するため、原料のノボラック型フェノール樹脂の水分率、遊離フェノール含有率及び樹脂形状を規定したフェノール系繊維の製造法が提案されている(特許文献1参照)。
また、ノボラック型フェノール樹脂に脂肪族系ポリアミド0.1乃至5重量%未満を混合することにより、ノボラック型フェノール樹脂本来の曳糸性の低さが改善され、紡糸速度の毎分1000m以上を実現でき、通常の溶融紡糸に比して高速紡糸が可能となる技術が提案されている(特許文献2参照)。
さらに、フェノール樹脂と、該フェノール樹脂に非相溶もしくは低相溶性の熱可塑性樹脂からなり、島成分がフェノール樹脂であり、海成分が熱可塑性樹脂である海島型複合繊維であって、該海島型複合繊維から海成分の熱可塑性樹脂のみ選択的に除去することにより、繊維直径が1μm以下のフェノール系繊維が得られる技術が提案されている(特許文献3参照)。
一方、フェノール系繊維の太径化においては、紡糸上の制約は少ないものの、上記のように、ノボラック型フェノール樹脂を溶融紡糸して得られる架橋反応前の糸條は脆弱である。また、該糸條を、アルデヒド類を用いて硬化(三次元架橋して熱不融化)した繊維は可とう性がなくなり、極めて脆くなる。そのため、従来の製造方法によりフェノール系繊維を太径化した場合、織布、不織布、フェルト等の調製や紡績に必要とされる機械的強度(特に繊維強度と繊維伸度)が不足するため、これまで実用に耐え得る太径化の限界は繊維直径25μm程度であった。また、フェノール系繊維の太径化については、これまで検討された例がほとんど無いのが実情である。
特公昭51−7206号公報 特公昭52−12814号公報 特開2005−105450号公報
しかしながら、特許文献1に記載された製造法は、糸切れの発生を充分に抑制できるものではない。その上、該製造法は、原料のノボラック型フェノール樹脂の製造、精製、選別に費用や労力を要するため、生産性に劣る問題がある。
特許文献2に記載された技術は、フェノール系繊維の細径化の手段に成り得るものの、実用に耐え得る細径化の限界が繊維直径10μm程度までである。しかも、脂肪族系ポリアミドの種類又はその使用量によっては、紡糸用の混合原料を加温している途中で相分離を起こしやすい。そのため、脂肪族系ポリアミドの選別等に費用や労力を要することから、特許文献2の技術は生産性に劣る問題がある。
特許文献3に記載された技術は、従来のフェノール系繊維の製造方法に比べて工程が煩雑化して生産性が悪く、コスト高にもなるため、産業上の用途が非常に限られてしまう。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、耐熱性、難燃性及び耐薬品性が良好であると共に機械的強度が高く、かつ、繊維直径が従来に比して細径化又は太径化されたフェノール系繊維が生産性良く得られ、この細径化又は太径化されたフェノール系繊維を用いてフェノール系炭素繊維及びフェノール系活性炭素繊維をそれぞれ製造する方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明のフェノール系炭素繊維の製造方法は、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを混合する原料混合工程と、前記原料混合工程で得られた原料混合物を紡糸して糸條を得る紡糸工程とを有するフェノール系繊維の製造方法により製造されたフェノール系繊維を、炭素化することを特徴とする。
本発明のフェノール系炭素繊維の製造方法においては、前記原料混合工程で、前記フェノール樹脂と前記脂肪酸アミド類とを溶融混合することが好ましい。
また、本発明のフェノール系炭素繊維の製造方法においては、前記紡糸工程で得られた糸條を硬化する硬化工程を有することが好ましい。
また、本発明のフェノール系活性炭素繊維の製造方法は、前記本発明のフェノール系炭素繊維の製造方法により製造されたフェノール系炭素繊維を賦活することを特徴とする。
本発明のフェノール系炭素繊維及びフェノール系活性炭素繊維の各製造方法により、耐熱性、難燃性及び耐薬品性が良好であると共に機械的強度が高く、かつ、繊維直径が従来に比して細径化又は太径化されたフェノール系繊維が生産性良く得られ、この細径化又は太径化されたフェノール系繊維を用いて、フェノール系炭素繊維及びフェノール系活性炭素繊維をそれぞれ製造することができる。
<フェノール系繊維の製造方法>
本発明におけるフェノール系繊維の製造方法は、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを混合する原料混合工程と、前記原料混合工程で得られた原料混合物を紡糸して糸條を得る紡糸工程とを有する。
[原料混合工程]
原料混合工程では、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを混合して原料混合物を得る。
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、酸性触媒の存在下でフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂、塩基性触媒の存在下でフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂、各種変性フェノール樹脂又はこれらの混合物等を使用できる。
前記フェノール類としては、酸性又は塩基性触媒の存在下でアルデヒド類と反応させて各フェノール樹脂が得られるものであればよく、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、3,5−キシレノール、m−エチルフェノール、m−プロピルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−ブチルフェノール、レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、メチルハイドロキノン、2−メチルレゾルシノール、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジメチルレゾルシノール、2−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、4−エチルレゾルシノール、3−エトキシ−4−メトキシフェノール、2−プロペニルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−ピロポキシフェノール、2−アリルフェノール、3,4,5−トリメトキシフェノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、ピロガロール、フロログリシノール、1,2,4−ベンゼントリオール、5−イソプロピル−3−メチルフェノール、4−ブトキシフェノール、4−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ペンチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3−フェノキシフェノール、4−フェノキシフェノール、4−へキシルオキシフェノール、4−ヘキサノイルレゾルシノール、3,5−ジイソプロピルカテコール、4−ヘキシルレゾルシノール、4−ヘプチルオキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、ジ−sec−ブチルフェノール、4−クミルフェノール、ノニルフェノール、2−シクロペンチルフェノール、4−シクロペンチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
なかでも、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、2,3−キシレノール、3,5−キシレノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、レゾルシノールが好ましく、フェノールが最も好ましい。前記フェノール類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフラール、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルヘミホルマール、エチルへミホルマール、プロピルへミホルマール、サリチルアルデヒド、ブチルヘミホルマール、フェニルへミホルマール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o―メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド等が挙げられる。
なかでも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドが好ましく、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが特に好ましい。前記アルデヒド類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、酪酸、乳酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、硼酸、又は塩化亜鉛もしくは酢酸亜鉛などの金属との塩等が挙げられる。前記酸性触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類等が挙げられる。前記塩基性触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
各種変性フェノール樹脂は、ノボラック型又はレゾール型フェノール樹脂を、ホウ素変性、ケイ素変性、重金属変性、窒素変性、イオウ変性、油変性、ロジン変性等の公知の技法により変性させたものが挙げられる。
上記のなかでも、フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂が好ましい。
たとえば脂肪酸アミド類と溶融混合し、後述の紡糸工程で最も一般的な紡糸方法である溶融紡糸を行う場合、フェノール樹脂としては、ノボラック型又はレゾール型フェノール樹脂のいずれも使用可能である。しかし、レゾール型は、ノボラック型に比べて熱安定性に劣り、溶融時の加熱で容易に重合が進んでしまうために溶融紡糸装置内での固化が避けられず、連続的に安定に紡糸するのが難しい。したがって、工業的に製造する場合の工程の容易さ、汎用性を勘案してノボラック型フェノール樹脂を選択することが特に好ましい。
フェノール樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
(脂肪酸アミド類)
本発明において「脂肪酸アミド類」とは、アンモニア又はアミンの窒素原子に結合する水素原子の1以上がアシル基によって置換された構造をもつ非重合体を意味し、該窒素原子に水素原子が2つ結合する第1級アミド、該窒素原子に水素原子が1つ結合する第2級アミド、該窒素原子に水素原子が結合していない第3級アミド、ラクタム、及び1分子中にアミンの窒素原子を2個以上有するものを包含する。したがって、本発明における「脂肪酸アミド類」は、ナイロン−6、ナイロン−6,6に代表される所謂、脂肪族ポリアミドのような重合体とは異なる。なお、「脂肪酸アミド類」は脂肪酸アマイド類とも称する。
(第1級アミド)
第1級アミドとしては、一般式「RC(=O)NH」で表される化合物などが挙げられる。
前記式中、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基である。ここでいう「置換基を有していてもよい」とは、炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよいことを意味する。Rの炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、その炭素数は5〜31が好ましく、11〜23がより好ましい。ただし、Rの炭化水素基の炭素数は、後述の置換基中の炭素数を含まないものとする。該炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基の炭素数は1〜11が好ましい。
第1級アミドとして具体的には、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、ペラルゴン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチル酸アミド、パルミチル酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸モノアミドなどが挙げられる。
(第2級アミド)
第2級アミドとしては、一般式「RC(=O)NHR」で表される化合物などが挙げられる。
前記式中、Rは、上記第1級アミドについての説明におけるRと同じである。
前記式中、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は、−C(=O)Rである。Rにおける該炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、その炭素数は1〜23が好ましく、1〜17がより好ましい。該炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基等が挙げられる。
は、上記第1級アミドについての説明におけるRと同様のものが挙げられ、RとRとは互いに同じであっても異なっていてもよい。なお、Rが−C(=O)Rである化合物はイミドとも称する。
第2級アミドとして具体的には、ステアリルステアリン酸アミド、オレイルオレイン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミド、オレイルステアリン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド;メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミドなどが挙げられる。
(第3級アミド)
第3級アミドとしては、一般式「RC(=O)NR」で表される化合物などが挙げられる。
前記式中、Rは、上記第1級アミドについての説明におけるRと同じである。
前記式中、R,Rは、それぞれ、上記第2級アミドについての説明におけるRと同様のものが挙げられ、RとRとは互いに同じであっても異なっていてもよい。
(ラクタム)
ラクタムのなかで好適なものとしては、炭素数3〜12のものが挙げられる。
ラクタムとして具体的には、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム(2−ピロリドン)、δ−バレロラクタム(2−ピペリドン)、ε−カプロラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタム(ラウロ/ラウリロラクタム)などが挙げられる。
(1分子中にアミンの窒素原子を2個以上有するもの)
1分子中にアミンの窒素原子を2個以上有するものとしては、一般式「R11C(=O)NH−R−NHC(=O)R12」で表される化合物、一般式「R11NHC(=O)−R−C(=O)NHR12」で表される化合物が挙げられる。
前記式中、R11,R12は、それぞれ、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、上記Rと同様のものが挙げられる。
,Rは、それぞれ、二価の炭化水素基であり、その炭素数は1〜10が好ましく、1〜8がより好ましい。
1分子中にアミンの窒素原子を2個以上有するものとして具体的には、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド;N,N−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。
上記の脂肪酸アミド類のなかでも、原料混合物の取扱い性、安定性又は紡糸性等の点から、第1級アミド、第2級アミドが好ましく、第1級アミドがより好ましく、飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミドが特に好ましい。
また、脂肪酸アミド類としては、その炭素数が少なすぎるとフェノール系繊維の耐熱性が低下するおそれが有り、炭素数が多すぎるとフェノール系繊維の原料に用いるフェノール樹脂との相溶性が低下するおそれがある。そのため、脂肪酸アミド類は、その炭素数が分子全体で12〜30であるものが好ましく、18〜24であるものがより好ましい。
脂肪酸アミド類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
(混合)
原料混合工程において、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを混合する際、フェノール樹脂の使用量は、得られる原料混合物中のフェノール樹脂の割合が55〜99.9質量%となる量であることが好ましく、70〜99質量%となる量であることがより好ましく、85〜95質量%となる量であることが特に好ましい。
脂肪酸アミド類の使用量は、得られる原料混合物中の脂肪酸アミド類の割合が0.1〜45質量%となる量であることが好ましく、1〜30質量%となる量であることがより好ましく、5〜15質量%となる量であることが特に好ましい。脂肪酸アミド類の割合が好ましい下限値以上であれば、フェノール系繊維を細径化又は太径化した際の機械的強度向上の効果が得られやすい。一方、フェノール樹脂の割合が好ましい上限値以下であれば、フェノール系繊維が有する耐熱性、難燃性及び耐薬品性等の特性を保持しやすい。
フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを混合する方法としては、両者を溶融混合する方法、溶媒を用いて両者を溶解混合する方法等が挙げられる。なかでも、工程の煩雑さ、環境への負荷、経済性の点から、両者を溶融混合する方法が好ましい。
フェノール樹脂と脂肪酸アミド類との溶融混合は、一例として、両者を加熱混練する方法が挙げられる。
フェノール樹脂と脂肪酸アミド類との加熱混練には、公知の混練装置を用いて行うことができ、混練装置としては、押出機型混練機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、高速二軸連続ミキサー等が挙げられる。
加熱混練の温度は、原料の性状等により適宜選択すればよく、200℃以下が好ましく、140〜180℃がより好ましい。加熱混練の温度を好ましい上限値以下にすることで、高温に原料を曝すことによる熱変性、劣化を抑制しやすい。加熱混練の温度を好ましい下限値以上にすることで、効率良く両者を混合することが可能となる。
加熱混練の時間は15分間以上が好ましく、30〜120分間がより好ましい。加熱混練の時間を好ましい下限値以上にすることで、両者をより均一に混合することが可能となる。加熱混練の時間を好ましい上限値以下にすることで、原料の熱変性、劣化を抑制しやすい。
フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを溶媒を用いて溶解混合する方法では、両者を溶解し得る溶媒に両者を溶解混合した後、該溶媒を蒸発除去することにより原料混合物が得られる。
両者を溶解し得る溶媒としては、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、含窒素系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤等から選択される一種又は二種以上を混合した溶剤を使用できる。
フェノール樹脂と脂肪酸アミド類との溶解混合は、溶媒を撹拌しながら、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類を徐々に加えていくことが好ましい。その際、フェノール樹脂又は脂肪酸アミド類が溶媒に溶けにくいようであれば加熱することが有効である。また、加圧することで、常圧での溶媒の沸点以上に加温することが可能となってさらに有効である。但し、高温に原料を曝すことで熱変性、劣化を及ぼすおそれがあることから、加熱は原料が完全溶解するまで限定的に行うことが好ましい。
溶媒に溶解するフェノール樹脂と脂肪酸アミド類の濃度については、特に限定されるものではなく、原料の性状、後の紡糸工程における紡糸方法を考慮して適宜設定すればよい。また、蒸発除去される溶媒の回収に多大な時間とエネルギーを要する点から、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類の濃度は、それぞれの溶解度を考慮し、でき得る限り高濃度に設定することが好ましい。
フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを混合する方法としては、前記の溶融混合、溶解混合以外の方法でもよい。たとえば、後の紡糸工程における紡糸方法として乾式紡糸、湿式紡糸又は乾・湿式紡糸の方法を用いる場合には、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類の両者を溶解し得る溶媒に両者を溶解混合した原料混合物溶液を調製してもよい。該原料混合物溶液は、直接、紡糸用原液として用いることができる。
また、フェノール樹脂の合成反応を阻害せず、かつ、該合成反応中の温度で原料が劣化しない範疇であれば、フェノール樹脂の合成反応の途中に、脂肪酸アミド類を配合することにより、両者を混合することも有効である。
原料混合工程では、原料混合物を得るのにいずれの方法を用いた場合であっても、必要に応じて公知の添加剤、可塑剤、相溶化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、浸透剤、増粘剤、防黴剤、染料、顔料、充填剤などを用いてもよい。
特に、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを溶融混合する場合であって、脂肪酸アミド類の溶融粘度がフェノール樹脂のそれに比べて極端に異なる場合は、相溶化剤を使用することが好ましい。これにより、紡糸時に分離を生じることを防止できる。
[紡糸工程]
紡糸工程では、前記原料混合工程で得られた原料混合物を紡糸して糸條を得る。
紡糸の方法は、原料混合物の性状等の点から公知の方法を適宜選択することができ、湿式紡糸、乾式紡糸、乾・湿式紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸、液晶紡糸などの方法が挙げられる。なかでも、装置の簡便さ、経済的に有利なことから、溶融紡糸が好ましい。
紡糸の方法として溶融紡糸を用いる場合、一般的な溶融紡糸装置が使用できる。
該溶融紡糸装置の溶解装置としては、グリッドメルター式、単軸押出し機方式、二軸押出し機方式、タンデム押出し機方式などを使用できる。
なお、溶融した原料混合物の酸化を防止するために、溶融紡糸装置内の窒素置換を行ってもよく、又はベントを具備した押出し機を使用して、微量の残留溶媒もしくはモノマー類を除去する操作を行ってもよい。
溶融紡糸の際、温度条件は、120〜200℃が好ましく、140〜170℃がより好ましい。温度条件を好ましい下限値以上とすることで、効率良く紡糸することができる。温度条件を好ましい上限値以下とすることで、熱変性、劣化を抑制しやすく、かつ、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とが分離しにくくなる。
紡糸口金としては、通常のものが使用可能であり、孔径は0.05mm以上1mm未満が好ましく、0.1mm以上0.5mm未満がより好ましく、キャピラー部の(長さL/直径D)は0.5以上10未満が好ましく、1〜5がより好ましい。孔径とL/Dをそれぞれ前記の好ましい範囲とすることで、安定して紡糸することができる。
特別な繊維の製造方法の場合(たとえば並列型複合繊維、芯鞘型複合繊維、海島型複合繊維の場合など)には、サイドバイサイド型もしくはシースコア型、又は第三成分のポリマーを組み合わせるコンジュゲート口金を使用することもできる。
紡糸速度は、15m/分以上、3000m/分未満が好ましく、30m/分以上、2000m/分未満がより好ましく、50m/分以上、1600m/分未満がさらに好ましい。
紡糸速度を好ましい下限値以上とすることで、効率良く紡糸できる。紡糸速度を好ましい上限値未満とすることで、紡糸時の糸切れの発生を抑制できる。
[硬化工程]
本発明のフェノール系繊維の製造方法においては、前記紡糸工程で得られた糸條を硬化する硬化工程を有することが好ましい。硬化工程で該糸條を硬化することにより、主にフェノール樹脂部分が架橋されるので、細径化又は太径化されたフェノール系繊維の機械的強度が高まる。
原料のフェノール樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を用いた場合、前記紡糸工程で得られた糸條を硬化する方法は、ステープル状もしくはトウ状に加工したものを反応容器内の処理液に浸漬させてバッチ式で硬化処理する方法、ボビン状もしくはかせ状に加工したものを処理液と接触させて硬化処理する方法、又はトウ状に加工したものを連続的に処理液と接触させて硬化処理する方法などが挙げられる。
処理液は、触媒とアルデヒド類からなる。
触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、酪酸、乳酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、硼酸、塩化亜鉛もしくは酢酸亜鉛などの金属との塩、又はこれらの混合物等の酸性触媒;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類、又はこれらの混合物等の塩基性触媒などが挙げられる。触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフラール、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルヘミホルマール、エチルへミホルマール、プロピルへミホルマール、サリチルアルデヒド、ブチルヘミホルマール、フェニルへミホルマール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o―メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド等が使用できる。
なかでも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドが好ましく、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが特に好ましい。アルデヒド類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
硬化は、液相にて、60℃以上110℃未満の温度で3時間以上30時間未満、加熱して行うことが好ましい。また、本発明においては、気相下で加熱することにより硬化してもよい。
さらには該加熱の後、水洗乾燥し、窒素、ヘリウム、炭酸ガス等の不活性ガス中、100〜300℃の温度で加熱することによりさらに硬化させる等、公知の硬化処理を行うことができる。この硬化処理によって、糸條中のフェノール樹脂部分が架橋して、充分な強度を備えたフェノール系繊維を得ることができる。
一方、原料のフェノール樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を用いた場合、湿熱法又は乾熱法で加熱処理を行うことにより糸條を硬化することができる。
加熱処理条件は、温度は100〜220℃が好ましく、120〜180℃がより好ましく、処理時間は5〜120分間が好ましく、20〜60分間がより好ましい。
本発明のフェノール系繊維の製造方法においては、機械的強度の高い、細径又は太径のフェノール系繊維がそれぞれ製造される。
フェノール系繊維の細径化を図った場合、具体的には、引張強度が20kg/mm以上であるフェノール系繊維が容易に得られる。また、伸度が30%以上であるフェノール系繊維が容易に得られる。
フェノール系繊維の太径化を図った場合、具体的には、引張強度が12kg/mm以上であるフェノール系繊維が容易に得られる。また、伸度が8%以上であるフェノール系繊維が容易に得られる。
ここで「引張強度」と「伸度」は、JIS L−1015に準拠した方法によりそれぞれ測定される値を示す。
そして、本発明のフェノール系繊維の製造方法は、繊維直径が従来に比して細径化又は太径化されたフェノール系繊維を製造できる。
細径化されたフェノール系繊維として具体的には、繊維直径が10μm未満のフェノール系繊維が容易に得られる。
太径化されたフェノール系繊維として具体的には、繊維直径が25μmを超えるフェノール系繊維が容易に得られる。
以上説明した本発明のフェノール系繊維の製造方法においては、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを混合した原料混合物を紡糸してフェノール系繊維を得る。該原料混合物を用いていることにより、理由は定かではないが、フェノール樹脂と脂肪酸アミド類との相互作用によって機械的強度が高まり、従来は機械的強度の不足から工業的には極めて製造が困難であった細径化又は太径化されたフェノール系繊維のいずれも製造することができる。
また、本発明のフェノール系繊維の製造方法により製造されるフェノール系繊維は、従来のフェノール系繊維と同様、耐熱性、難燃性及び耐薬品性のいずれも良好である。
また、本発明のフェノール系繊維の製造方法は、あらたに用いる脂肪酸アミド類をフェノール樹脂と混合するだけであり、工程上の煩雑さがなく、原料(フェノール樹脂、脂肪酸アミド類)の選別等に費用や労力を要することもなく、細径又は太径のフェノール系繊維を生産性良く製造できる。さらに、フェノール系繊維を安価かつ高品質に製造できることから、幅広い分野での利用が可能である。
<フェノール系炭素繊維の製造方法>
本発明のフェノール系炭素繊維の製造方法は、前記本発明のフェノール系繊維の製造方法により製造されたフェノール系繊維を炭素化することによりフェノール系炭素繊維が製造される。
フェノール系繊維の炭素化は、不活性ガス存在下で加熱する従来公知の方法を用いることができる。
炭素化する際、使用する不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。温度条件は600〜1200℃の範囲が好ましく、800〜1000℃の範囲がより好ましい。
本発明によれば、フェノール系繊維の機械的強度が高いため、実用的価値のある細径化又は太径化されたフェノール系炭素繊維を工業的にそれぞれ製造できる。
<フェノール系活性炭素繊維の製造方法>
本発明のフェノール系活性炭素繊維の製造方法は、前記本発明のフェノール系繊維の製造方法により製造されたフェノール系繊維を炭素化した後、賦活することによりフェノール系活性炭素繊維が製造される。
フェノール系繊維を炭素化した後に賦活するには、ガス賦活法、薬剤賦活法などの従来公知の賦活方法を用いることができる。
ガス賦活法では、賦活ガスを、炭素化されたフェノール系繊維に接触させて賦活する。賦活ガスとしては、水蒸気、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、塩化水素、酸素又はこれらを混合したものからなるガスが挙げられる。
薬剤賦活法では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;ホウ酸、リン酸、硫酸、塩酸等の無機酸類;又は塩化亜鉛などの無機塩類などを、炭素化されたフェノール系繊維に接触させて賦活する。
本発明によれば、フェノール系繊維の機械的強度が高いため、実用的価値のあるフェノール系活性炭素繊維を工業的に製造できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例において、繊維直径、繊度、引張強度、引張弾性率、伸度及び比表面積は、以下の方法によりそれぞれ測定した。また、耐熱性、難燃性及び耐薬品性は、以下の方法によりそれぞれ評価した。
[繊維直径]
フェノール系繊維とフェノール系炭素繊維の繊維直径(μm)は、(株)キーエンス製のVK−8500レーザー顕微鏡を使用して測定した。
[繊度]
フェノール系繊維の繊度(デニール)は、サーチ(株)製のDC11B デニールコンピューターを使用して測定した。
[引張強度]
フェノール系繊維とフェノール系炭素繊維の引張強度(kg/mm)は、(株)エー・アンド・ディ社製のRTG−1210テンシロン万能試験機を使用し、JIS L−1015に準拠した方法により測定した。
[引張弾性率]
フェノール系繊維とフェノール系炭素繊維の引張弾性率(kg/mm)は、(株)エー・アンド・ディ社製のRTG−1210テンシロン万能試験機を使用し、JIS L−1015に準拠した方法により測定した。
[伸度]
フェノール系繊維の伸度(%)は、(株)エー・アンド・ディ社製のRTG−1210テンシロン万能試験機を使用し、JIS L−1015に準拠した方法により測定した。
[比表面積]
フェノール系活性炭素繊維の比表面積(m/g)は、日本ベル社製のベルソープ28SAを使用して測定した。
[耐熱性]
フェノール系繊維の耐熱性は、得られたフェノール系繊維を、150℃及び180℃の空気中にそれぞれ100時間暴露した後、上記の方法により引張強度を測定し、下式に基づいて強度保持率(%)を算出することにより評価した。
強度保持率(%)=(暴露後の引張強度/暴露前の引張強度)×100
[難燃性]
フェノール系繊維の難燃性は、得られたフェノール系繊維の限界酸素指数(LOI)をJIS L−1091に準拠した方法で測定することにより評価した。一般に、LOIの値が28以上であれば、難燃性を有していると判断される。
[耐薬品性]
フェノール系繊維の耐薬品性は、得られたフェノール系繊維を、各種の薬品(36質量%塩酸、25質量%アンモニア水、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF))に、それぞれ25℃で100時間浸漬した後、上記の方法により引張強度を測定し、前記の耐熱性の評価と同様にして強度保持率(%)を算出することにより評価した。
<フェノール系繊維の製造例>
以下に示すフェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを用いて、各製造例によりフェノール系繊維をそれぞれ製造した。
・フェノール樹脂
フェノール樹脂は、以下のようにして合成したノボラック型フェノール樹脂を用いた。
[フェノール樹脂の合成]
フェノール1000gと37質量%ホルマリン733gとシュウ酸5gを、還流冷却器を備えた反応容器に仕込み、40分間で常温から100℃に昇温させ、さらに100℃で4時間反応させた後、200℃まで加熱して脱水濃縮した後、冷却してノボラック型フェノール樹脂を得た。
・脂肪酸アミド類
オレイン酸アミド(日本精化(株)製、商品名「ニュートロン」)。
ベヘン酸アミド(ベヘニン酸アミド、日本精化(株)製、商品名「BNT−22H」)。
(実施例1)
原料混合工程:
ノボラック型フェノール樹脂450gとオレイン酸アミド50gとを、二軸混練機(高速二軸連続ミキサー)に投入して、150℃で50分間の混練(溶融混合)を行い、淡黄色透明なブロック状物を得た。
紡糸工程:
次に、このブロック状物を粗粉砕し、溶融紡糸装置(グリッドメルター式)を用いて200℃で溶融し、該溶融により得られた溶融物を、170℃に保たれた孔径0.1mm、長さL/直径D=3、ホール数10個の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら紡糸速度1500m/分で紡糸(溶融紡糸)して糸條を得た。
硬化工程:
紡糸工程で得られた糸條を、長さ51mmにカットしてフラスコに入れ、塩酸14質量%かつホルムアルデヒド8質量%の水溶液に常温で30分間浸漬した後、2時間で98℃まで昇温し、さらに98℃で2時間保持することにより硬化を行った。
次いで、硬化工程で得られた硬化物を、前記フラスコから取り出して充分に水洗した後、3質量%アンモニア水溶液で60℃、30分間の中和を行った。その後、再度、充分に水洗し、90℃、30分間乾燥することによりフェノール系繊維を得た。
(実施例2)
実施例1の紡糸工程で、紡糸速度を1500m/分から75m/分に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール系繊維を得た。
(実施例3)
実施例1の原料混合工程で、オレイン酸アミド50gの代わりに、ベヘン酸アミド50gを用いた以外は、実施例1と同様にしてフェノール系繊維を得た。
(実施例4)
実施例3の紡糸工程で、紡糸速度を1500m/分から75m/分に変更した以外は、実施例3と同様にしてフェノール系繊維を得た。
(比較例1)
実施例1の原料混合工程で、ノボラック型フェノール樹脂450gとオレイン酸アミド50gの代わりに、ノボラック型フェノール樹脂500gを用いた以外は、実施例1と同様にしてフェノール系繊維の製造を行った。
(比較例2)
実施例1の原料混合工程で、ノボラック型フェノール樹脂450gとオレイン酸アミド50gの代わりに、ノボラック型フェノール樹脂500gを用い、かつ、実施例1の紡糸工程で、紡糸速度を1500m/分から750m/分に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール系繊維を得た。
(比較例3)
比較例2の紡糸工程で、紡糸速度を750m/分から75m/分に変更した以外は、比較例2と同様にしてフェノール系繊維を得た。
得られたフェノール系繊維について、繊維直径、繊度、引張強度、引張弾性率、伸度、強度保持率(耐熱性)、LOI(難燃性)、強度保持率(耐薬品性)を測定した結果を表1に示す。但し、実施例1〜4は参考例である。
Figure 0005453373
表1の結果から、実施例1、3では、引張強度と伸度がいずれも高く、糸切れを起こすことなく、繊維直径が細径化されたフェノール系繊維が製造されていることが分かる。
一方、比較例1では、溶融したノボラック型フェノール樹脂が紡糸張力に耐えられず、糸切れを多発して紡糸できなかった。
比較例2では、比較例1より紡糸速度を低くして紡糸を行うことにより、繊維直径10.5μmのフェノール系繊維が得られた。しかしながら、比較例2で得られたフェノール系繊維は、比較例2よりも繊維直径の細い実施例1、3で得られたフェノール系繊維に比べて、引張強度と伸度が低いものであった。
実施例2、4でそれぞれ製造されたフェノール系繊維は、いずれも繊維直径が太径化されているにもかかわらず、引張強度が高く、伸度も高いことが分かる。
一方、比較例3で製造されたフェノール系繊維は、繊維直径が太径化されているものの、引張強度が低く、伸度も著しく低いことから、実用上使用できないものであった。
また、実施例1〜4でそれぞれ製造されたフェノール系繊維は、いずれも、耐熱性、難燃性及び耐薬品性も良好であることが分かる。
さらに、実施例1〜4の製造例では、脂肪酸アミド類を、原料混合工程でフェノール樹脂と混合することにより、所定の繊維直径を有するフェノール系繊維が得られていることが分かる。したがって、本発明のフェノール系繊維の製造方法は、工程上の煩雑さがなく、生産性に優れていると云える。
<フェノール系炭素繊維の製造例>
(実施例5)
実施例1で得られたフェノール系繊維を試験炭素化炉に入れ、窒素気流中、900℃、30分間の条件で炭素化することによりフェノール系炭素繊維を得た。
(実施例6〜8)
実施例1で得られたフェノール系繊維の代わりに、実施例2〜4で得られたフェノール系繊維をそれぞれ用いた以外は、実施例5と同様にしてフェノール系炭素繊維を得た。
(比較例4、5)
実施例1で得られたフェノール系繊維の代わりに、比較例2、3で得られたフェノール系繊維をそれぞれ用いた以外は、実施例5と同様にしてフェノール系炭素繊維を得た。
なお、比較例3で製造されたフェノール系繊維は、非常に脆いため、試験炭素化炉に入れるまでの作業には細心の注意が必要であった。
得られたフェノール系炭素繊維について、繊維直径、引張強度、引張弾性率、収率を測定した結果を表2に示す。
Figure 0005453373
表2の結果から、実施例1、3のフェノール系繊維をそれぞれ炭素化することにより、細径のフェノール系炭素繊維を製造できることが確認できた。
また、実施例2、4のフェノール系繊維をそれぞれ炭素化することにより、太径のフェノール系炭素繊維を製造できることが確認できた。
<フェノール系活性炭素繊維の製造例>
(実施例9)
実施例1で得られたフェノール系繊維を内径70mmの石英管に入れ、窒素気流中、室温から5℃/分の昇温速度で900℃まで昇温した。この時点で、予め80℃に調整されている温水中に窒素ガスを導入し、窒素と水蒸気との混合ガスを前記石英管に10分間導入した。続いて、窒素のみを導入しながら冷却することによりフェノール系活性炭素繊維を得た。
(実施例10〜12)
実施例1で得られたフェノール系繊維の代わりに、実施例2〜4で得られたフェノール系繊維をそれぞれ用いた以外は、実施例9と同様にしてフェノール系活性炭素繊維を得た。
(比較例6、7)
実施例1で得られたフェノール系繊維の代わりに、比較例2、3で得られたフェノール系繊維をそれぞれ用いた以外は、実施例9と同様にしてフェノール系活性炭素繊維を得た。
得られたフェノール系活性炭素繊維について、比表面積、収率を測定した結果を表3に示す。
Figure 0005453373
表3の結果から、実施例1〜4のフェノール系繊維をそれぞれ炭素化した後、賦活することにより、フェノール系活性炭素繊維を製造できることが確認できた。

Claims (4)

  1. フェノール樹脂と脂肪酸アミド類とを混合する原料混合工程と、前記原料混合工程で得られた原料混合物を紡糸して糸條を得る紡糸工程とを有するフェノール系繊維の製造方法により製造されたフェノール系繊維を、炭素化することを特徴とするフェノール系炭素繊維の製造方法。
  2. 前記原料混合工程で、前記フェノール樹脂と前記脂肪酸アミド類とを溶融混合する請求項1に記載のフェノール系炭素繊維の製造方法。
  3. 前記紡糸工程で得られた糸條を硬化する硬化工程を有する請求項1又は請求項2に記載のフェノール系炭素繊維の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフェノール系炭素繊維の製造方法により製造されたフェノール系炭素繊維を賦活することを特徴とするフェノール系活性炭素繊維の製造方法。
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