以下、図1〜図15に基づき、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、ライン式の固定のラインヘッド5を有するインクジェット方式のプリンタ100(画像記録装置に相当)を例に挙げて説明する。
(プリンタ100の概要)
まず、図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ100の概要を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ100の概略構成を示す正面模型的断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ100の搬送ベルト23を上方からみた平面図である。
図1に示すように、プリンタ100の左側部には用紙(記録媒体に相当)を積載して収容する給紙トレイ1が設けられる。この給紙トレイ1の一端部に、給紙ローラ対11が設けられる。給紙ローラ対11は、収容された用紙を、最上位の用紙から順に一枚ずつ搬送ユニット2に向けて給紙する。
給紙ローラ対11の用紙搬送方向下流側(図1において右側)に、搬送ユニット2が配される。搬送ユニット2は、用紙搬送方向下流側に配置された駆動ローラ21と、駆動ローラ21と軸線が平行な従動ローラ22と、駆動ローラ21と従動ローラ22に張架される搬送ベルト23を含む。搬送ベルト23には、例えば、誘電体樹脂の無端状のベルト等を用いることができる。駆動ローラ21には、ベルト駆動モータ24(図3参照)からの駆動力が伝達される。駆動ローラ21は、図1で時計方向に回転駆動する。これにより、搬送ベルト23上の用紙は、矢印Xの方向に搬送される。また、搬送ベルト23の用紙搬送方向下流側に、画像が記録された用紙を排出する排出ローラ対3が設けられる。又、排出ローラ対3から排出される用紙は、排出トレイ4が受け止める。
そして、搬送ベルト23の上方には、搬送ベルト23の上面に対して所定の間隔(例えば、1mm程度)が形成される高さに支持され、搬送ベルト23上を搬送される用紙に画像の記録を行うラインヘッド5が配される。ラインヘッド5は、用紙搬送方向上流側からシアンのインクを吐出するもの(ラインヘッド5C)、マゼンタのインクを吐出するもの(ラインヘッド5M)、イエローのインクを吐出するもの(ラインヘッド5Y)、ブラックのインクを吐出するもの(ラインヘッド5Bk)の順に並べて設けられる。これらのラインヘッド5C〜5Bkには、それぞれ異なる4色(シアン、 マゼンタ、イエロー及びブラック)のインクが充填され、各ラインヘッド5C〜5Bkからそれぞれのインクを吐出して、用紙上にカラー画像が記録される(印刷される)。
図2に示すように、ラインヘッド5C〜5Bkは、用紙搬送方向と直交する方向に千鳥状に配列された複数のヘッド部8(本実施形態のプリンタ100では8a〜8eの5個)を含む。尚、各ヘッド部8(8a〜8e)は、基本的に同様であるので、以下では、特に説明する場合を除き、a〜eの符号は省略する。そして、各ヘッド部8は、用紙搬送方向に対して垂直となるように配列された複数のノズルNを有する(図2では、●として図示)。ノズルNからは、各色のインクが吐出される。
複数のヘッド部8が組み合わされる各ラインヘッド5(5C〜5Bk)は、搬送される用紙の最大幅(例えば、A3用紙の短辺≒29cm)以上の記録領域を有する。言い換えると、ノズルNは、用紙搬送方向と垂直な方向に、搬送される用紙の最大幅以上の幅で配される。例えば、600dpiの場合、1インチ=25.4mmとすると、1ドット≒42.3μmとなる。用紙の最大幅を29cmとすると、29cm÷42.3μm≒6856となるので、600dpiの場合、例えば、約7000個程度のノズルNが、用紙搬送方向と垂直な方向に並べられる。これにより、搬送ベルト23上を搬送される用紙に対して、一括して1ライン分の画像を記録することができる。
(ハードウェア構成)
次に、図3を用いて、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ100のハードウェア構成の一例を説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
まず、プリンタ100には、記録動作を制御するため、制御部6が設けられる。尚、制御部6は、全体制御や画像処理を行うメイン制御部と、画像記録や各種回転体を回転させるモータ等のON/OFF等を制御するエンジン制御部等、機能ごとに分割して複数種設けられる場合があるが、本説明及び各図ではまとめて制御部6として説明する。
制御部6には、例えば、中央演算処理装置としてのCPU61が設けられる。CPU61は、制御部6と接続される記憶部62に記憶される制御プログラムや制御データに基づき演算等を行い、プリンタ100の各部に制御信号を発する。記憶部62は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory )、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュROM等で構成される。ROM、HDD、フラッシュROMは、不揮発性メモリで、制御プログラムや制御データ、画像データ等を記憶する。RAMは、揮発性メモリで、CPU61の演算等のため、制御プログラム、制御データ、画像データ等を展開し、記憶するメモリである。
又、制御部6は、通信部63と接続される。通信部63は、外部のコンピュータ200(例えば、パーソナルコンピュータ)や、用紙に記録された画像を読み取り、画像データを生成するスキャナ300(画像読取装置に相当)とプリンタ100とをネットワークやケーブル等によって通信可能に接続するためのインターフェイス部である。通信部63は各種コネクタ、ソケット、通信制御用のコントローラ等を含む。そして、制御部6は、外部のコンピュータ200から印刷開始命令や、画像データ等の送信を受けると、画像記録部としての各ラインヘッド5や搬送ユニット2等を駆使し、印刷を行わせる。又、プリンタ100は、通信部63を介して、スキャナ300から画像データを受け取ることができる。
画像処理部64は、コンピュータ200からの画像データや、制御部6の記憶部62に記憶される画像データに対し、各種画像処理を行う部分である。例えば、画像処理部64は、各ラインヘッド5のドライバ7に画像データを送信する。画像処理部64は、画像処理演算を行う専用回路としてのASIC65や、画像データを記憶する画像メモリ66を有する。又、画像処理部64はテストパターン画像G1を読み取って得られ、スキャナ300から受け取った画像データ(コンピュータ200を経由してもよい)における縦筋発生位置を認識する処理を行える(詳細は後述)。尚、画像処理部64をハードとして設けず、制御部6のCPU61、記憶部62、プログラムによって、機能的に画像処理部64が実現されても良い。尚、画像処理部64が行える画像処理は多岐にわたり、画像処理部64は、公知の画像処理を行えるものとして、便宜上、各画像処理の内容の説明は省略する。
又、図3に示すように、制御部6は、給紙ローラ対11、搬送ユニット2、排出ローラ対3、操作パネル9等のプリンタ100を構成する各部と接続される。そして、制御部6は、各部の動作の制御、指示を行う。又、操作パネル9は、使用者によりなされた入力を認識し、入力内容を示すデータを制御部6に送信する。又、制御部6は、各ラインヘッド5と接続され、各ラインヘッド5に動作指示を行う。
また、制御部6は、画像データ中の画素の階調に応じて各ラインヘッド5の各ノズルNから吐出されるインク量を調整し、記録媒体上に形成されるドットの階調(ドット面積)を制御する階調制御手段としての役割も果たす。各ラインヘッド5に設けられるドライバ7は、制御部6の指示に基づき、例えば、各ノズルNに印加される駆動電圧値や駆動パルス幅を変化させて、インクの吐出速度を調整する。
搬送ユニット2のエンコーダ25は、搬送ベルト23を張架する駆動ローラ21又は従動ローラ22に接続される。エンコーダ25は、駆動ローラ21又は従動ローラ22の回転軸の回転変位量に応じてパルスを出力する(例えば、半周や1周に1パルス。任意に設定可能)。制御部6は、エンコーダ25から送信されるパルスの数をカウントし、回転量から用紙の送り量(用紙位置)を把握する。又、制御部6は、エンコーダ25からの信号の周期に基づいて、ベルト駆動モータ24の回転速度を把握し、ドライバ7に制御信号を出力する。
又、用紙センサ12は、画像の記録開始タイミングを計るためのセンサである。用紙センサ12は、例えば、光センサであり、用紙が検知領域に存在するときと、存在しないときで出力が変化する。そして、用紙センサ12は、制御部6に接続される。用紙センサ12と各ラインヘッド5のノズルNの位置までの距離と用紙の搬送速度に基づき、制御部6は、ラインヘッド5ごとに時間を計時する。ラインヘッド5ごと(ヘッド部8ごと)に定められた時間を計時した際、制御部6は、各ラインヘッド5にインク吐出指示を与え、各ラインヘッド5は、インク吐出指示に基づき、インクの吐出を開始する。吸着部67は、制御部6からの出力信号に基づき、給紙側の従動ローラ22に電圧を印加して、搬送ベルト23に用紙を静電吸着させる。静電吸着の解除は、制御部6の指示に基づき、吸着部67が接地を行うことにより行われる。
(インクの吐出制御の機構)
次に、図4を用いて、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ100でのインクの吐出制御機構の一例を説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ100でのインクの吐出制御機構の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、各ラインヘッド5(5C〜5Bk)は、複数のヘッド部8(本実施形態では、8a〜8eの5つ)を組み合わせて構成される。そして、各ヘッド部8は、複数のノズルNと、各ノズルNに対して1つの圧電素子51と、各圧電素子51に対し電圧を印加し、インクの吐出を実際に制御する複数のドライバ7を含む。尚、図4では、便宜上、ラインヘッド5のうち、1つのヘッド部8のみ、内部構成の一部を図示しているが、各ヘッド部8の構成は、基本的に同様である。
各ノズルNは、エッチングや穿孔等によって金属板に穴を開ける等により、均等な間隔となるように形成される。そして、ノズルNに対し、圧電素子51(ピエゾ素子、PZN等)が設けられる。ドライバ7は管轄する各圧電素子51のうち、画像データにあわせ、インクを吐出させる圧電素子51に対し、電圧を印加する。制御部6は、ドライバ7に対し、例えば、主走査方向(用紙搬送方向に対し垂直な方向)にのびる1ライン単位で画像データを送信する。ドライバ7は、この画像データに基づき、インクを吐出すべきノズルNに対応する圧電素子51に電圧を印加する。この結果、圧電素子51は電圧印加により、形状が変形し、ノズルNにインクを供給する流路(不図示)に圧力を与えられ、流路に対する圧力が伝搬し、ノズルNからインクが吐出される。
又、1つのヘッド部8には、多数のノズルNが設けられるので、ヘッド部8には、複数のドライバ7が設けられる。その設置数は、画像の記録における解像度やドライバ7の性能等に左右されるが、例えば、1つのヘッド部8に4つ程度設けることができる。例えば、4つのドライバ7が設けられる場合、ヘッド部8に並べられたノズルNを4分割したノズル数が、1つのドライバ7が管轄するノズル数となる。
又、ドライバ7は、圧電素子51に印加する電圧を変えることができる。例えば、圧電素子51に印加する基準の電圧に対し、圧電素子51に印加する電圧を小さくすることができる。これにより、ドライバ7は、基準のインク吐出速度(以下、「基準吐出速度」という。本実施形態では、例えば、基準吐出速度では、インクを9m/sで吐出。)よりも、遅い速度(以下、「遅延吐出速度」という。本実施形態では、例えば、遅延吐出速度では、インクを5m/sで吐出。)でインクを吐出することができる。
尚、本実施形態のプリンタ100では、例えば、ドライバ7単位で、ノズルNからのインクの吐出速度を変えることができる。言い換えると、ドライバ7が管轄するノズル群ごとに、インクの吐出速度を変えることができる。即ち、本発明に係る画像記録装置(例えば、プリンタ100)は、記録媒体を搬送する搬送ユニット2と、記録媒体の搬送方向に対し直交するように、かつ、記録媒体に対向するように並べられた複数のノズルNを含むヘッド部8を、複数個並べて構成されるラインヘッド5と、を含み、複数のノズルNのうち、一部のノズルNは、基準の吐出速度である基準吐出速度よりも吐出速度を遅延させた遅延吐出速度でインクを吐出する。又、ラインヘッド5は、複数色分設けられ、各色のラインヘッド5に含まれる複数のノズルNのうち、一部のノズルNは、遅延吐出速度でインクを吐出する。
(縦筋解消の概念)
次に、図5、図6を用いて縦筋解消の基本的概念を説明する。図5は、本発明の第1の実施形態に係る縦筋の基本的な考え方の一例を示す模式図である。図6は、インクの吐出速度と、吐出後のインクの速度変化の関係を示すグラフである。
上述したように、ヘッド部8の取付、調整におけるズレやノズルNの加工のズレのため縦筋が発生する。そこで、本実施形態のプリンタ100では、縦筋発生部分でのインクの吐出速度を基準吐出速度よりも遅くする。そうすると、基準吐出速度でインクを吐出したときよりもインクが着弾するまでの時間が長くなる。これにより、インクは用紙に着弾するまでに機内の空気の流れの影響を多く受ける。機内では用紙搬送により、空気の流れが生じ、空気の流れはノズルN等のヘッド部8の凹みや凸部などにあたって向きを変え、不規則で不定な複雑な流れとなる。従って、基準吐出速度でインクを吐出するときよりも遅延吐出速度でインクを吐出したときの方が、インクの着弾位置がランダムにばらつく。
ここで、インクの吐出速度と空気抵抗の関係と、着弾位置のばらつきに関し、以下に考察を行う。尚、以下に示す式に示す記号の意味は以下の通りである。
吐出インク滴の半径:r(m)
吐出インク滴の密度:ρ(Kg/m3)
吐出速度:v(m/s)
粘度:η(Pa・s→空気の粘度1.8×10-5)
g:重力加速度(m/s)
まず、球体の落下速度は、ニュートンとストークスの式から以下の式1のように表すことができる。
ここで、簡略化のため、a=(4πr3・ρ)/3、b=6πηrとし、整理すると以下の式2となる
更に、式2を変形すると、式3となる。
式3を積分すると、式4となる。
式4から対数をとり、exp(C1)=とC2とすると、式5が導かれる。尚、C1、C2は、初期条件により求められる。
又、距離は、速度を微分したものなので、式5から式6が求められる。
式6を積分すると、以下の式7を得ることができる。尚、C3も、初期条件により求められる。
以上の求められた式を用い、得られた計算結果を図6に示す。尚、計算では、駆動周波数5kHz(吐出周期1/5k)のデータを使用した。まず、図6は、インクの吐出速度と、吐出後のインクの速度変化の関係を示すグラフである。尚、V0は、インクの吐出の初速を意味し、Vは、吐出後のインクの速度を意味する。
図6に示すように、インクの吐出速度が遅いほど、ノズルNから、着弾位置までの距離が遠いほど、速度が減速する割合が大きいことが分かる。従って、例えば、インクを9m/sで吐出するときよりも、5m/sで吐出する方が、空気抵抗の影響を受け、インク着弾までの間に機内の空気の流れの影響を受けやすいことが分かる。
そこで、本実施形態のプリンタ100では、図5に示すように、縦筋が発生する部分に位置するノズルNからのインクの吐出速度を遅延吐出速度とする。これにより、各ラインでインクの着弾位置が、ランダムにばらつき、縦筋が目立たなくなる。
(縦筋解消位置の設定)
次に、図7を用いて、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ100での縦筋解消位置の指定の一例を説明する。図7(a)は、本発明の第1の実施形態に係るテストパターン画像G1の一例を示す説明図であり、(b)は、縦筋発生位置の把握を、スキャナ300を用いて行う場合の一例を示すブロック図であり、(c)は、縦筋発生位置の設定入力を、使用者の入力により行う場合の一例を示すブロック図であり、(d)は、縦筋解消のためインクの吐出速度を遅らせるノズルNの位置の設定画面の一例である。
本実施形態のプリンタ100では、ドライバ7が、インクを吐出させる圧電素子51に印加する電圧を小さくすることによって、インクの吐出速度を落とすことができる。そして、縦筋の発生部分で、基準吐出速度よりもインクの吐出速度を遅延吐出速度まで落として縦筋を目立たなくする(図5参照)。そこで、本実施形態のプリンタ100では、プリンタ100の制御部6は、縦筋の発生位置を認識する。そして、制御部6は、縦筋が発生する位置のノズルNからのインク吐出を実際に制御するドライバ7に遅延吐出速度でインクを吐出する指示を与える。制御部6から指示を受けたドライバ7は、基準吐出速度の場合よりも圧電素子51に印加する電圧値を小さくし、遅延吐出速度でインクの吐出を行う。
そこで、縦筋の発生位置の把握の具体的な一例を、図7を用いて説明する。縦筋の発生位置の把握のため、制御部6は、各部を制御して、図7(a)に示すようなテストパターン画像G1を印刷させることができる。例えば、テストパターン画像G1を印刷するための画像データは、記憶部62に記憶される。例えば、使用者は、コンピュータ200や操作パネル9を用いて、テストパターン画像G1の印刷を指示できる。
例えば、テストパターン画像G1は、プリンタ100で扱うことができ、用紙搬送方向と垂直な方向で最大サイズを有する用紙に印刷される。例えば、A3横用紙(A3用紙の長辺と用紙搬送方向を一致させる)がプリンタ100で扱える最大サイズの場合、テストパターン画像G1は、A3横用紙やA4縦用紙(A4用紙の短辺と用紙搬送方向を一致させる)に印刷される。
テストパターン画像G1には、全ノズルNからインクを吐出させて記録させることにより、用紙搬送方向に一定幅を有する色ごとのベタ画像Gが含まれる。例えば、テストパターン画像G1には、図7(a)の左から、シアンのベタ画像GC、マゼンタのベタ画像GM、イエローのベタ画像GY、ブラックのベタ画像GBkが含まれる。
又、テストパターン画像G1には、目視にて、縦筋の発生位置を区分して認識するための目盛画像GGを配することができる。目盛の数、1目盛当たりの幅は任意に設定できる。本実施形態では、ヘッド部8が5つ設けられ、各ヘッド部8ではノズルNを4分割して管轄する4つのドライバ7が設けられるので、例えば、目盛数は、例えば、5×4=20目盛としてもよい。
例えば、テストパターン画像G1での縦筋の発生位置の把握には、例えば、スキャナ300を用いることができる。図7(b)に示すように、例えば、スキャナ300で、テストパターン画像G1が印刷した用紙を読み取る。そして、通信部63を介し、テストパターン画像G1を読み取って得られた画像データをプリンタ100に入力する。そして、制御部6や画像処理部64は、各ベタ画像Gについて、ベタ画像Gの平均画素値よりも所定画素値(任意に設定可能)を超えて多い又は少ない用紙搬送方向に伸びるラインを検出する(色筋と白筋)。そして、制御部6は、用紙搬送方向と垂直な方向において、ラインが検出できた位置を縦筋発生位置と把握する。
このように、テストパターン画像G1の画像データを確認し、縦筋の発生位置を確認することで、用紙搬送方向と垂直な方向で、縦筋の発生している位置を自動的に認識することができる。
例えば、テストパターン画像G1での縦筋の発生位置の把握は、例えば、使用者の目視による縦筋発生位置の確認と、プリンタ100への縦筋発生位置の入力により行われてもよい。図7(c)に示すように、操作パネル9を用いて、各色についてプリンタ100への縦筋発生位置を入力する。例えば、上記のテストパターン画像G1での縦筋が発生している位置の目盛の値を目盛画像GGを利用し入力する(例えば、7.5など)。これにより、制御部6は、縦筋が発生しているノズルNの位置を大まかに把握することができる。
又、図7(c)に示すように、通信部63により、プリンタ100と通信可能に接続されるコンピュータ200を用いて、各色についてプリンタ100への縦筋発生位置を入力してもよい。例えば、上記のテストパターン画像G1での縦筋が発生している位置の目盛の値を示すデータをコンピュータ200からプリンタ100(通信部63)へ送信する。これにより、制御部6は、縦筋が発生しているノズルNの位置を大まかに把握することができる。
図7(d)は、例えば、操作パネル9がタッチパネル式の液晶表示部を有する場合や、コンピュータ200のディスプレイに表示される縦筋発生位置を入力するための位置入力画面D1の一例である。この画面では、操作パネル9のテンキーなどのキーやコンピュータ200のキーポード等の入力機器を用いて、例えば、色ごとに、縦筋が発生している位置の目盛を入力することができる。又、縦筋の発生位置は複数入力可能としてもよい。この位置入力画面D1への入力の結果、制御部6は印刷物での縦筋の発生位置を認識する。
即ち、本発明に係る画像記録装置は、遅延吐出速度でインクを吐出させるノズルNの位置を指定する入力を受け付ける入力部(通信部63、操作パネル9)を有し、入力部(通信部63、操作パネル9)で指定された位置に存在する1又は複数のノズルは、遅延吐出速度でインクを吐出する。例えば、入力部(通信部63、操作パネル9)は、記録媒体の搬送方向にのびる縦筋の発生位置確認のため印刷されるテストパターン画像G1の記録がなされた記録媒体の画像読取装置(スキャナ300)による読み取りによって得られた画像データを受信する通信部63であり、画像データに基づき、縦筋の発生位置を把握する制御部6を有し、縦筋発生部分の位置に存在する1又は複数のノズルNは、遅延吐出速度でインクを吐出する。又、例えば、入力部(通信部63、操作パネル9)は、記録媒体の搬送方向にのびる縦筋の発生位置確認のため印刷されるテストパターン画像G1を視認した使用者からの縦筋の発生位置の入力を受け付ける操作入力部(通信部63、操作パネル9)であり、縦筋が発生すると入力された位置に存在する1又は複数のノズルNは、遅延吐出速度でインクを吐出する
(インクの吐出タイミングの調整)
次に、図8に基づき、本発明の第1の実施形態に係るインクの吐出タイミングの調整の一例を説明する。図8(a)は、インクの着弾のタイミングのズレの一例を示す説明図であり、(b)は、インクの吐出タイミングの調整を説明するための説明図である。
例えば、図8(a)での白抜矢印は、同時に遅延吐出速度と基準吐出速度でインクを吐出した際の、遅延吐出速度で吐出されたインクの着弾位置の一例である。塗り潰し矢印は、同時に遅延吐出速度と基準吐出速度でインクを吐出した際の、基準吐出速度で吐出されたインクの着弾位置の一例である。図8(a)に示すように、基準吐出速度でのインク吐出と遅延吐出速度でのインク吐出を同じタイミングで行えば、用紙に着弾するまでの時間が異なり、規則的、平均的に記録位置(描画位置)がずれる。言い換えると、遅延吐出速度で吐出したインクは、基準吐出速度で吐出したインクよりも着弾が遅れる。
そこで、本実施形態のプリンタ100では、ドライバ7は、基準吐出速度でインクを吐出するノズルNよりも遅延吐出速度でインクを吐出するノズルNでのインク吐出タイミングを早くする。例えば、図8(b)に示すように、1ラインでのインクを着弾させる狙いの位置(理想着弾位置)に対し、遅延吐出速度でインクを吐出するノズルNは、ノズルN直下に到る前のT1の時点でインクを吐出する。そして、その後、理想着弾位置がノズルN直下に到る前のT2の時点で基準吐出速度でインクを吐出するノズルNは、インクを吐出する。言い換えると、遅延吐出速度でインクを吐出するノズルNは、基準吐出速度でインクを吐出するノズルNよりもインク吐出タイミングが早い。
遅延吐出速度でインクを吐出するノズルNは、T1−T2=T3に相当する時間だけインクの吐出タイミングを基準吐出速度でインクを吐出するノズルNよりも早くする。尚、吐出タイミングを早める時間は、例えば、遅延吐出速度でインクを吐出した場合と、基準吐出速度でインクを吐出した場合の用紙への着弾位置のズレ量(ズレの距離)を実験により計測する。例えば、ズレ量を用紙搬送速度で割って、着弾の時間ズレを複数求め、時間ズレの平均値を求める。この平均値だけ、インクの吐出タイミングを早めてもよい。
又、吐出タイミングを早める時間をノズルNから用紙までの距離や、用紙搬送速度や、インクの吐出速度等を用いて、計算により求めてもよい。又、吐出タイミングを早める時間を変えつつ、複数回印刷を行い、基準吐出速度でインクを吐出した場合と、遅延吐出速度でインクを吐出した場合のズレが最も少なくなる吐出タイミングを経験的に探しあててもよい。
即ち、本発明に係る画像記録装置(例えば、プリンタ100)は、遅延吐出速度でインクを吐出するノズルNは、基準吐出速度でインクを吐出するノズルNよりも、早いタイミングでインクを吐出する。具体的に、例えば、遅延吐出速度でインクを吐出するノズルNは、基準吐出速度でインクを吐出したときのノズルNから記録媒体に着弾するまでの時間と、遅延吐出速度でインクを吐出したときのノズルNから記録媒体に着弾するまでの時間との差分だけ吐出タイミングを早めてインクを吐出する。
(実施例)
次に、図9〜図12を用いて、本発明の第1の実施形態に係る実施例を説明する。図9(a)は、基準吐出速度でインクを吐出したときの着弾位置のズレを示す散布図であり、(b)は、遅延吐出速度でインクを吐出したときの着弾位置のズレを示す散布図である。図10(a)〜(g)は、基準吐出速度でインクを吐出したときのノズルNごとのヘッド部8の長手方向(用紙搬送方向と垂直な方向)での着弾位置のズレを示すグラフである。図11(a)〜(g)は、基準吐出速度でインクを吐出したときのノズルNごとのヘッド部8の長手方向(用紙搬送方向と垂直な方向)での着弾位置のズレを示すグラフである。図12は、インクの吐出速度と平均的な着弾位置のズレ量の関係の一例を示すグラフである。
尚、本説明での実験に用いたインクジェット式のプリンタ100の詳細を述べておく。実験機では、基準吐出速度では9m/sでインクを吐出し、遅延吐出速度では、5m/sでインクを吐出した。又、用紙は、846.7mm/sの速度で搬送した。又、各ヘッド部8から用紙までの距離(印字ギャップ)は、1.0mmとした。又、インクの着弾位置測定のため、全ノズルNからインクを同時に吐出する画像データを用いて印刷した。
図9(a)は、9m/sで吐出した際の、各インク滴の理想的な着弾位置(グラフでの座標(0,0)。インクが着弾すべき位置)に対するズレを示すグラフである。9m/sでインクを吐出すると、実験結果に示されるように、インクの着弾位置のズレ(誤差)は、用紙搬送方向及び用紙搬送方向と垂直な方向で±10μmの範囲に収まる。
一方、図9(b)は、5m/sで吐出した際の、各インク滴の理想的な着弾位置(インクが着弾すべき位置)に対するズレを示すグラフである。5m/sでインクを吐出すると、実験結果に示されるように、インクの着弾位置のズレ(誤差)は、9m/sでインクを吐出する場合に比べ、大きくばらつく。
次に、ヘッド部8に含まれる複数のノズルNのうち、特定のノズルNに着目して着弾位置のズレを確認した結果を図10、図11に示す。尚、図10、図11では、横軸にノズル番号(ラインヘッド5の端を1番として810番から860番の50個のノズルNを抽出して例示)を示し、縦軸に、用紙搬送方向と垂直な方向での理想的な着弾位置に対するズレ量を示している。
図10(a)〜(g)は、基準吐出速度(9m/s)でインクを吐出した際の用紙搬送方向の垂直な方向での各ラインでの着弾ズレを示す。言い換えると、図10(a)〜(g)で基準吐出速度でインクを吐出した7ライン分のズレを統計的に示している。図10の各図で示すように、基準吐出速度(9m/s)でインクを吐出した場合でも、若干の着弾位置のばらつきが認められるが、各ラインで着弾位置のずれる方向にある程度の規則性が認められる。例えば、810番から820番のノズルNでは、基本的にプラス方向に着弾位置がずれる。このような傾向は、ノズルNの加工精度によるものと解される。
一方、図11(a)〜(g)は、遅延吐出速度(5m/s)でインクを吐出した際の用紙搬送方向の垂直な方向での各ラインでの着弾ズレを示す。言い換えると、図11(a)〜(g)で遅延吐出速度でインクを吐出した7ライン分のズレを統計的に示している。図11の各図で示すように、遅延吐出速度(5m/s)でインクを吐出した場合、着弾位置は、基準吐出速度でインクを吐出するときよりもばらつく。さらに、各ラインで着弾位置のズレ方向には、規則性や一定の傾向はほとんど認められない。従って、遅延吐出速度でインクを吐出すると、ランダムに着弾位置がばらつくと言える。
更に、図12は、代表のインク吐出速度として、9m/s、8m/s、7m/s、6m/s、5m/s、4m/sでインクを吐出した際の、吐出速度と平均的な着弾位置のズレ量の関係の一例を示すグラフである。
尚、図12のグラフでは、横軸にインクの吐出速度を示す。又、縦軸は、用紙搬送方向と垂直な方向での理想的な着弾位置に対するズレ量である。又、図12のグラフ作成では、例えば、各吐出速度でのズレ量の絶対値をラインでドットごとに加算し、1ラインに含まれるドット数で平均した値をグラフにプロットしている。
図12に示すように、インクの吐出速度が遅くなるに従って、インク滴に対する空気抵抗や空気の流れの影響を受けて、インクの着弾位置のズレは大きくなる。このように、縦筋の発生している部分で、インクの吐出速度を遅延吐出速度とすることにより、縦筋は目立たなくなる。
(ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目部分)
次に、図13に基づき、本発明の第1の実施形態に係るヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目で生ずる縦筋の解消を説明する。図13は、本発明の第1の実施形態に係るヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目の構成の一例を示す模式図である。
まず、図13(a)は、ヘッド部8がずれなく取り付けられたときの状態の一例を示す。例えば、各ヘッド部8では、隣接するノズルNの間隔W1が等しくなるように加工される。そして、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目でも、一方のヘッド部8の端部に位置するノズルNと他方のヘッド部8の端部に位置するノズルNとの用紙搬送方向と垂直な方向での間隔W2が、間隔W1と等しくなるように取り付けられる。これにより、用紙におけるインク滴(ドット)の間隔が等しくなり、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目で、縦筋は発生しない。しかし、例えば、600dpiの場合、1ドットにおける1辺は、約42.3μmとなる。従って、ヘッド部8での取付では、μmレベルの精度が必要となる。
図13(b)は、一方のヘッド部8の端部に位置するノズルNと他方のヘッド部8の端部に位置するノズルNとの用紙搬送方向と垂直な方向での間隔W2が、間隔W1よりも広くなる方向で取り付けられた場合の状態の一例である。言い換えると、間隔W2>間隔W1である。このような状態で記録を行うと、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目部分では、ドットとドットの間隔が大きくなる。これにより、白筋が発生してしまう。
一方、図13(c)は、一方のヘッド部8の端部に位置するノズルNと他方のヘッド部8の端部に位置するノズルNとの用紙搬送方向と垂直な方向での間隔W2が、間隔W1よりも狭い方向で取り付けられた場合の状態の一例である。言い換えると、間隔W1>間隔W2である。このような状態で記録を行うと、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目部分では、ドットとドットが重なり合い、色筋が発生してしまう。
そこで、本実施形態では、制御部6は、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目に位置するノズルN(ヘッド部8の用紙搬送方向において垂直な方向における端部のノズルN)を管轄する2つのドライバ7に遅延吐出速度でインクを吐出すべき指示を与える。これにより、ドライバ7は管轄するノズル群でのインク吐出速度を遅延吐出速度とする。従って、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目に生じやすい縦筋を目立たなくすることができる。即ち、本発明に係る画像記録装置(例えば、プリンタ100)では、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目に面するノズルN、又は、つなぎ目に面するノズルNから記録媒体の搬送方向と直交する方向への複数個のノズルNは、遅延吐出速度でインクを吐出する。
尚、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目で必ずしも縦筋が発生するとは限らない。そこで、例えば、図7で示したテストパターン画像G1の印刷を行う等により、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目で縦筋が発生しているか確認してもよい。そして、操作パネル9への入力や、コンピュータ200への入力による通信部63を介した縦筋発生位置のデータ送信等により、制御部6は、縦筋が発生するつなぎ目を認識し、縦筋が発生するつなぎ目部分だけで、インクの吐出速度を遅延吐出速度としてもよい。
(第2の実施形態)
次に、図14を用いて、本発明の第2の実施形態に係るプリンタ100の一例を説明する。図14は、本発明の第2の実施形態に係るプリンタ100でのインクの吐出制御機構の一例を説明する。図14は、本発明の第2の実施形態に係るプリンタ100でのインクの吐出制御機構の一例を示すブロック図である。
本実施形態は、第1の実施形態とは、インク吐出速度がノズル群単位ではなく各ノズルN単位で制御できる点で異なる。尚、その他の点については、第1の実施形態と同様でよく、共通する部分については、図示、詳細な説明を省略する。
例えば、図14に示すように、ドライバ7には、圧電素子51の1つに対し、1つの電圧設定部71が設けられる。電圧設定部71は、圧電素子に印加する電圧を制御するための回路である。この電圧設定部71をノズルNの数だけ設けることによって、ドライバ7は、ラインヘッド5に含まれるノズルNの圧電素子51に印加する電圧を1ノズル単位で可変させることができる。これにより、インク吐出速度をノズルN単位で細かく制御することができる。従って、第1の実施形態では、ドライバ7が管轄するノズル群単位でインク吐出速度を制御していたが、ノズルN縦筋が発生している部分でのみ局地的にインクの吐出速度を遅延吐出速度とすることができる。
このようにして、第1、第2の実施形態に示す画像記録装置によれば、画像記録装置内では用紙の搬送等によって風が生じ、ラインヘッド5のインクの吐出面と記録媒体の間では不規則な空気の流れが存在する。そこで、一部のノズルNは、基準の吐出速度である基準吐出速度よりも吐出速度を遅延させた遅延吐出速度でインクを吐出する。これにより、遅延吐出速度で吐出されたインクは、基準吐出速度で吐出されたインクよりも、着弾するまでの時間が長くなり、空気抵抗や空気の流れによる影響を大きく受ける。従って、遅延吐出速度で吐出されたインクの着弾位置をランダムにばらつかせることができる。例えば、各ヘッド部8で縦筋の発生する位置に一定の傾向がある場合など、予め縦筋が発生する部分に位置するノズルNでのインク吐出速度を遅延吐出速度とすることで、縦筋を目立たなくすることができる。又、ラインヘッド5や各ヘッド部8の取付、調整の精度や、ノズルNの加工精度を大きく高めることなく、縦筋が目立たなくなり、画質の向上を図れるので、画像記録装置(例えば、プリンタ100)の製造に要するコストを削減することができる。
又、入力部(通信部63、操作パネル9)で指定された位置に存在する1又は複数のノズルNは、遅延吐出速度でインクを吐出する。これにより、例えば、使用者は、縦筋の発生箇所など、インクの着弾位置をばらつかせるノズルNを指定することができる。又、例えば、使用中に縦筋が発生するようになった部分のノズルNからのインクの吐出速度を遅延吐出速度とすることができ、縦筋解消における自由度を高めることができる。
又、ラインヘッド5を構成する各ヘッド部8の取付や調整精度が悪いと、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目部分にあたるノズルNとノズルNの間隔が、設計上の間隔よりも(理想的な間隔よりも)、広く又は狭くなり、縦筋が発生することがある。そこで、ヘッド部8とヘッド部8のつなぎ目に面するノズルN、又は、つなぎ目に面するノズルNから記録媒体の搬送方向と直交する方向への複数個のノズル群は、遅延吐出速度でインクを吐出する。これにより、ヘッド部8とヘッド部8とのつなぎ目部分で、インクの着弾位置をばらつかせ、縦筋を目立たなくすることができる。
又、基準吐出速度で吐出する場合と、遅延吐出速度で吐出する場合とで、同じタイミングでインクを吐出した場合、遅延吐出速度のインクは基準吐出速度のインクの着弾位置よりも遅れて着弾する。従って、インクの着弾位置が用紙搬送方向に規則的、平均的にずれる。そこで、遅延吐出速度でインクを吐出するノズルNの吐出するタイミングは、基準吐出速度でインクを吐出するノズルNよりも早められる。これにより、遅延吐出速度のインクの着弾位置と基準吐出速度のインクの着弾位置との記録媒体の搬送方向における規則的、平均的なズレを解消する補正を行うことができる。
より具体的には、遅延吐出速度でインクを吐出するノズルNは、基準吐出速度でインクを吐出したときのノズルNから記録媒体に着弾するまでの時間と、遅延吐出速度でインクを吐出したときのノズルNから記録媒体に着弾するまでの時間との差分だけ吐出タイミングを早める。これにより、遅延吐出速度のインクの着弾位置と基準吐出速度のインクの着弾位置との記録媒体の搬送方向における規則的、平均的なズレを解消することができる。
又、入力部(通信部63)は、縦筋の発生位置確認のため印刷されるテストパターン画像G1の記録がなされた記録媒体を読み取り、画像データを出力する画像読取装置から受信する通信部63である。これにより、縦筋発生部分が自動的に認識され、縦筋発生部分でのインク吐出速度を自動的に遅延吐出速度とすることができる。従って、縦筋発生部分に位置するノズルNのインクの着弾位置を自動的にばらつかせるようにすることができる。又、使用者には複雑な操作が要求されない。
又、入力部(通信部63、操作パネル9)は、筋の発生位置確認のため印刷されるテストパターン画像G1を視認した使用者からの筋発生部分の位置の入力を受け付ける操作パネル9、及び/又は、縦筋の発生位置を示すデータを外部のコンピュータ200から受信する通信部63である。これにより、使用者は、吐出速度を遅延吐出速度とするノズルNの位置を入力することができる。従って、縦筋発生部分を目立たなくする位置を任意に指定することができ、使用者にとっての自由度が高い。
又、ラインヘッド5は、色ごとに設けられ、縦筋の発生位置は、ラインヘッド5ごとに異なる。そこで、各色のラインヘッド5に含まれる複数のノズルNのうち、一部のノズルNは、遅延吐出速度でインクを吐出する。これにより、各色のラインヘッド5ごとに、縦筋が発生する傾向のある部分や縦筋発生部分で、インクの吐出速度を遅らせることができる。これにより、各色について、縦筋を目立たなくすることができる。従って、縦筋が視認されないカラー画像を記録することができ、高画質の画像記録装置を提供することができる。
(第3の実施形態)
次に、図15を用いて、本発明の第3の実施形態に係るプリンタ100の一例を説明する。図15(a)は本発明の第3の実施形態に係るテストパターン画像G2の一例を示す説明図であり、(b)は、インクの吐出速度の設定用の吐出速度設定画面D2の一例である。
本実施形態は、第1、第2の実施形態とは、インク吐出速度は、基準吐出速度に対して複数段階で切り替えることができる点で異なる。尚、その他の点については、第1、第2の実施形態と同様でよく、共通する部分は、図示、詳細な説明を省略する。
例えば、本実施形態では、各ドライバ7は、ノズル群又は、各ノズルNに対する圧電素子51に印加する電圧を複数段階で切り替えることができる。例えば、各ドライバ7は、基準吐出速度のインク吐出速度である9m/sでインクが吐出されるように各圧電素子51に電圧を印加し、又、各圧電素子51に印加する電圧の大きさを変えることで、例えば、8m/s、7m/s、6m/s、5m/s、4m/sでインクを吐出させることができる。言い換えると、各ドライバ7は、基準吐出速度に対し、複数段階の遅延吐出速度でインクをノズルNから吐出させることができる。
例えば、図7を用いて、第1の実施形態で説明したように、テストパターン画像G1を印刷して、スキャナ300によるテストパターン画像G1の画像データや、操作パネル9やコンピュータ200への入力によって、縦筋発生位置が制御部6に認識される。次に、制御部6は、図15(a)に示すようなテストパターン画像G2を印刷させる。
このテストパターン画像G2では、複数の縦筋解消程度確認用画像G3が記録される。各縦筋解消程度確認用画像G3は、例えば、各色のラインヘッド5ごとに、ラインヘッド5に含まれる全ノズルNから、一定時間インクの吐出を続けて印刷を行ったベタ画像Gを組み合わせたものである。それぞれの縦筋解消程度確認用画像G3では、縦筋発生位置のノズルNが含まれるノズル群や縦筋発生位置のノズルNでのインク吐出速度は、基準吐出速度よりも遅くされる。
例えば、図15(a)の左から、縦筋発生位置のノズルNからインクの吐出速度を8m/sとした縦筋解消程度確認用画像G38、7m/sとした縦筋解消程度確認用画像G37、6m/sとした縦筋解消程度確認用画像G36、5m/sとした縦筋解消程度確認用画像G35、4m/sとした縦筋解消程度確認用画像G34の順に印刷される。
例えば、インク吐出速度を遅くしすぎると、空気抵抗や空気の流れの影響が強すぎることや、圧電素子51による圧力が小さく、インクの吐出が安定しないことがある。又、遅延吐出速度を固定とすると、縦筋がうっすらと残る場合もあり得る。そこで、図15(b)に示されるように、吐出速度設定画面D2に、使用者が各遅延吐出速度で形成した縦筋解消程度確認用画像G3の内から好適と思われる吐出速度を入力する。
図15(b)に示される吐出速度設定画面D2は、図7(e)として示した位置入力画面D1と同様に、例えば、操作パネル9がタッチパネル式の液晶表示部を有するならば、液晶表示部に表示しても良いし、プリンタ100と通信化の液晶表示部に接続されるコンピュータ200のディスプレイに表示されてもよい。この画面では、操作パネル9のテンキー部や、コンピュータ200のキーポード等の入力機器を用いて、例えば、色ごとに、縦筋解消程度確認用画像G3の番号(符号)を入力して、好みのインクの吐出速度を選択する入力を行うことができる。即ち、本発明に係る画像記録装置(例えば、プリンタ100)では、ノズルNは、基準吐出速度に対し、複数段階の吐出速度の異なる遅延吐出速度を有し、入力部(通信部63、操作パネル9)は、複数段階のうち、遅延吐出速度を指定する入力を受け付け、ノズルNは、指定された遅延吐出速度でインクを吐出する。
このようにして、第3の実施形態に示す画像記録装置によれば、指定された遅延吐出速度でインクが吐出される。これにより、インクの着弾位置のばらつきの程度を調整することができる。例えば、もう少し着弾位置をばらつかせたい場合や、インクの吐出速度が遅すぎ、インクの吐出が安定しない場合や、インクの着弾位置のばらつきが大きすぎる場合、遅延吐出速度を指定することで的確に縦筋を目立たなくすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。