先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るモノクロ用のインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1)の全体構成について説明する。
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部11が設けられている。筐体1aの内部空間には、インクジェットヘッド2(以下、ヘッド2)、プラテン4、用紙センサ5、給紙ユニット6、搬送ユニット7、制御装置100等が収容されている。筐体1aの内部空間には、給紙ユニット6から排紙部11に向けて、図1に示す太矢印に沿って、用紙Sが搬送される搬送経路が形成されている。
ヘッド2は、図2に示すように、互いに離隔しつつ主走査方向(用紙幅方向)に千鳥状に配列された、6つの単位ヘッド3を含む。ここで、主走査方向とは、吐出面3a(図1参照:記録時に用紙Sと対向する面)と平行で且つ記録時における単位ヘッド3と用紙Sとの相対移動方向(第3方向H3)と交差する方向である。本実施形態においては、単位ヘッド3と用紙Sとの相対移動方向(第3方向H3)は、主走査方向と直交する副走査方向である。プリンタ1は、単位ヘッド3が固定された状態で記録を行う、ライン方式のものである。6つの単位ヘッド3は、互いに同じ構成であり、それぞれ、流路部材、エネルギー付与部、及びドライバIC47(図4参照)を含む。流路部材には、各吐出口30(図3参照)に至る流路が形成されている。エネルギー付与部は、流路内のインクに吐出口30から吐出するためのエネルギーを付与するものである。本実施形態では、エネルギー付与部として、圧電素子を用いたピエゾ方式のもの(圧電アクチュエータ)を用いている。圧電アクチュエータは、ドライバIC47を実装した配線部材(例えば、フレキシブルプリント基板:FPC)を介して、制御装置100と接続されている。圧電アクチュエータは、制御装置100による制御の下、ドライバIC47から所定の電位が印加されることにより、駆動する。
図1に戻って、プラテン4は、平板状の部材である。プラテン4は、6つの単位ヘッド3と鉛直方向(主走査方向及び副走査方向と直交する方向)に対向している。プラテン4の上面と各単位ヘッド3の吐出面3aとの間には、記録(画像形成)に適した所定の間隙が形成されている。
用紙センサ5は、ヘッド2よりも、搬送ユニット7による用紙Sの搬送方向上流側に配置されている。用紙センサ5は、用紙Sの先端を検知し、検知信号を制御装置100に送信する。
給紙ユニット6は、給紙トレイ6a及び給紙ローラ6bを含む。給紙トレイ6aは、筐体1aに対して着脱可能である。給紙トレイ6aは、上面が開口した箱であり、複数の用紙Sを収容可能である。給紙ローラ6bは、制御装置100による制御の下、給紙モータ6M(図4参照)の駆動により回転し、給紙トレイ6a内で最も上方にある用紙Sを送り出す。
搬送ユニット7は、ローラ対12a〜12f及びガイド13a〜13eを含む。ローラ対12a〜12fは、搬送経路に沿って、搬送方向上流側からこの順で配置されている。各ローラ対12a〜12fのうちの一方のローラは、制御装置100による制御の下、搬送モータ7M(図4参照)の駆動により回転する駆動ローラである。他方のローラは、上記駆動ローラの回転に伴って回転する従動ローラである。ガイド13a〜13eは、搬送経路に沿って、搬送方向上流側からこの順で、ローラ対12a〜12fと交互に配置されている。各ガイド13a〜13eは、対向して配置された一対の板からなる。
制御装置100による制御の下、給紙ユニット6から送り出された用紙Sは、ローラ対12a,12bに挟持されつつ、ガイド13a〜13cの板間を通って、搬送方向に沿って搬送される。そして、用紙Sが、プラテン4の上面に支持されつつ、ローラ対12c,12dによって吐出面3aと平行な第3方向H3に搬送される際に、制御装置100の制御により、各単位ヘッド3において、吐出面3aに形成された複数の吐出口30(図3参照)から用紙Sの表面に向けてブラックのインク滴が吐出される。吐出口30からのインク吐出動作は、用紙センサ5から送信された検知信号に基づいて行われる。モノクロ画像が記録された用紙Sは、ローラ対12e,12fに挟持されつつ、ガイド13d,13eの板間を通って、筐体1a上部に形成された開口15から排紙部11に排出される。本実施形態においては、搬送ユニット7が本発明の移動機構に相当する。
制御装置100は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)50、ROM(Read Only Memory)51、RAM(Random Access Memory)52、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )53、パス54等を含む。ROM51には、CPU50が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM52には、プログラム実行時に必要なデータが一時的に記憶される。ASIC53は、各種制御回路を含む。また、制御装置100は、ヘッド2や搬送モータ7M等の、プリンタ1を構成する様々な装置と接続されている。また、制御装置100は、外部機器であるPC39とも接続されている。PC39には、アプリケーションプログラムが格納されている。PC39において、アプリケーションプログラムが実行されると、画像データの生成や、生成した画像データのディスプレイ39aへの表示等が行われる。なお、本実施形態では、制御装置100は、CPU、ROM、RAM、及び、ASICを備えたものとして説明するが、本発明はこれに限るものではなく、制御装置100はいかなるハードウェア構成で実現してもよい。例えば、2以上のCPUや、2以上のASICに機能を分担して実現してもよい。本実施形態においては、CPU50とASIC53とで本発明の制御手段を構成している。
RAM52には、画像データ記憶領域52a、及び液体吐出データ記憶領域52b(記憶手段)が形成されている。画像データ記憶領域52aには、このプリンタ1と接続されているPC39から転送される画像データが記憶される。この画像データは、PC39において、上記アプリケーションプログラムにより生成されたデータであり、RGB表色系で表現された複数の画素を含む。例えば、RGB各色8ビットの解像度で表現された画像データの各画素は、それぞれが、0〜255で表されるRGBの輝度階調値を有する。液体吐出データ記憶領域52bには、ヘッド2の吐出口30それぞれから吐出される個々のインク滴に含まれるブラックのインクのインク量に係るデータである液体吐出データが記憶される。
制御装置100は、ROM51に格納されたプログラムに従い、CPU50及びASIC53により下記の液体吐出データ生成処理、及び記録処理を実行する。液体吐出データ生成処理では、制御装置100は、画像データ記憶領域52aに記憶された画像データに基づき、液体吐出データを生成する。具体的には、画像データ記憶領域52aに記憶された画像データの各画素を色変換テーブル等に基づいて、RGB表色系からCMYK表色系に変換する。本実施形態においては、プリンタ1はモノクロ用のインクジェットプリンタであるため、このCMYK表色系に変換後の画像データは、例えばKが8ビットの解像度で表現されるデータである場合、各画素が、0〜255で表わされるブラックの濃度階調値を有するデータである。
ここで、画像データの用紙幅方向の解像度(画素数)と、用紙Sに記録される用紙幅方向の解像度(ドット数)とが一致しない場合がある。例えば、画像データの1画素を複数のドットで表現する場合がある。そこで、制御装置100は、画像データの用紙幅方向の画素数と、用紙Sに記録される用紙幅方向のドット数とが一致しない場合には、CMYK表色系に変換後の画像データの解像度を、用紙Sに記録させる画像の記録解像度に変換する処理を行う。なお、画像データの用紙幅方向の解像度と、用紙Sに記録される用紙幅方向の解像度とが一致する場合には、上記解像度の変換を行う必要はない。
その後、制御装置100は、解像度変換された画像データから、ヘッド2の吐出口30それぞれから吐出されたインク滴が着弾され得る各ドット領域(位置)について、当該各ドット領域に着弾させるインク滴のインク量に相当する階調値を示す液体吐出データを生成する。具体的には、画像データに含まれる各画素の階調値を大中小3種類の閾値を用いてそれぞれ4値化することにより、各ドット領域において、インク滴を吐出させるか否か、インク滴を吐出させる場合にはその量を大滴、中滴、小滴の何れにするか、を表す液体吐出データを生成する。こうして、生成された液体吐出データは、液体吐出データ記憶領域52bに記憶される。
制御装置100は、PC39から記録指令を受信すると、記録処理を実行する。記録処理では、制御装置100は、給紙モータ6M、搬送モータ7M、及びドライバIC47を制御して、用紙Sがプラテン4上に支持されつつ、ヘッド2の真下を通過する際に、ヘッド2の吐出口30からブラックのインク滴を吐出させて、用紙Sにモノクロ画像を記録させる。より詳細には、制御装置100は、液体吐出データ記憶領域52bに記憶されている液体吐出データに基づいて、複数の吐出口30のうちの少なくとも1つの吐出口30から吐出されたインク滴が第3方向H3に関して、当該液体吐出データに対応する用紙S上のドット領域(位置)に着弾され得るように、搬送モータ7M及びドライバIC47を制御する。
次いで、図3を参照し、各単位ヘッド3における吐出口30の配列態様、及び、単位ヘッド3の第3方向H3に対する傾斜態様について説明する。なお、6つの単位ヘッド3において、吐出口30の配列態様は同じであり、単位ヘッド3の第3方向H3に対する傾斜態様も同じである。従って、以下では、1の単位ヘッド3についてのみ説明する。
単位ヘッド3の吐出面3aには、N組(Nは2以上の整数:本実施形態では4組)の吐出口群30Aが形成されている。各吐出口群30Aは、第1方向H1に沿って等間隔に配置されたa個(aは2以上の整数)の吐出口30からなる吐出口列を、第1方向H1と直交する第2方向H2に沿ってM列(Mは2以上の整数:本実施形態では3)有している。つまり、各吐出口群30Aはa×M個の吐出口30を有している。そして、各吐出口群30Aにおけるa×M個の吐出口30は、第1方向H1に沿って等間隔Pで並ぶように配置されている。また、第2方向H2に平行であり、且つ第1方向H1に間隔Pで配列されるa×M本の仮想直線を想定したときに、各仮想直線上のそれぞれに、各吐出口群30Aに含まれる吐出口30がそれぞれ1つずつ配置されている。つまり、同一の仮想直線上にはN個の吐出口30が配置されている。
なお、単位ヘッド3は、用紙Sの搬送方向と交差する方向に走査しながら記録を行う所謂シリアル式のインクジェットプリンタのヘッドとしても使用することが可能な液体吐出ヘッドである。単位ヘッド3を、例えば、シリアル式のカラーインクジェットプリンタのヘッドとして使用する場合(多色少吐出口印刷を行う場合)には、N組(4組)の吐出口群30Aを、ブラック、イエロー、シアン、及びマゼンタの各色インクにそれぞれ対応させる。そして、単位ヘッド3と用紙Sとの相対移動方向を第2方向H2と一致させた状態で、各吐出口群30Aに属する吐出口30から、対応する色のインクが吐出されることで、用紙Sにカラー画像を記録することができる。
本実施形態の説明に戻り、単位ヘッド3の第3方向H3に対する傾斜態様について説明する。ここで、単位ヘッド3の全ての吐出口30から共通の色のインクからなるインク滴を吐出させるようにした場合(少数色多吐出口印刷を行う場合)、用紙幅方向に関して吐出口30の数だけ用紙Sにインク滴を着弾させることができる。しかしながら、単位ヘッド3を、吐出面3a内において第3方向H3と第2方向H2とが一致する(平行となる)ように配置した場合には、仮想直線も第3方向H3と一致することになる。このため、記録時に、単位ヘッド3のa×M×N個の吐出口30からインク滴を吐出させると、同一の仮想直線上に配置されるN個の吐出口30から吐出されたインク滴は、用紙Sにおける用紙幅方向に関して同一の位置に着弾される。その結果、用紙Sには結局a×M本のドット列が用紙幅方向に間隔Pで等間隔に配列されることになる。
ここで、用紙Sに高分解能の画像を記録する方法(用紙幅方向の記録解像度を高くする方法)として、単位ヘッド3を、吐出面3a内において第3方向H3と第2方向H2とが所定の角度θをなすように傾けて配置させる方法がある。この方法によると、同一の仮想直線上に配置されるN個の吐出口30についても、図5に示すように、用紙幅方向(第4方向H4)に関する配置位置が互いに異なることになる。これにより、単位ヘッド3のa×M×N個の吐出口30から共通の色のインクからなるインク滴を吐出させることで、用紙Sにa×M×N本のドット列を形成することが可能となり、用紙Sに高分解能の画像を記録することができる。しかしながら、用紙Sにa×M×N本のドット列を形成した場合、これらのドット列の用紙幅方向(第4方向H4)の間隔を等間隔にすることはできない。これは、単位ヘッド3の吐出面3aに形成されたa×M×N個の吐出口30を第4方向H4に沿って等間隔に配置することができないことに起因する。以下、詳細に説明する
なお、単位ヘッド3の吐出面3aに形成されたa×M×N個の吐出口30の第4方向H4の吐出口間隔Δそれぞれは、第4方向H4に関して連続するM×N個の吐出口30を1周期として、繰り返される。そこで、説明の便宜上、第4方向H4に関して連続するM×N+1個の吐出口30(吐出口#1〜吐出口#MN+1)についてのみ注目して説明する。また、図5に示すように、N組の吐出口群30Aの第2方向H2の間隔をそれぞれ、A1,A2・・AN−1とし、各吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の間隔をそれぞれ、B1,B2・・BM−1とする。
第4方向の吐出口間隔Δそれぞれは、吐出口#qと吐出口#q+1との第4方向H4の吐出口間隔ΔをΔq(qは1以上の整数)としたとき(図5参照)、下記式1で表される。
ここで、全ての吐出口間隔Δを厳密に等間隔にするためには、下記式2が満たされる必要がある。
しかしながら、各吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1は零ではないため、上記式2を満たすことはできない。即ち、全ての吐出口間隔Δを等間隔にすることができない。
また、吐出口間隔Δが等間隔でなくても、ある一定のバラツキの範囲内に収まっていれば実用的には問題ないが、このバラツキはある限界以上に小さくできない。以下、詳細に説明する。N組の吐出口群30Aの第2方向H2の間隔A1,A2・・AN−1の平均間隔A、及びM列の吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1の平均間隔Bは下記式3で表される。
そして、第iN番目の吐出口間隔ΔiNのうち最大のものΔiNmaxと、第MN番目の吐出口間隔ΔMNとの差を考えると、下記式4で表される。
すなわち、この場合においても、各吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1は零ではないため、吐出口間隔ΔのバラツキをMBsinθの程度以上に小さくすることもできないことが分かる。
以下、さらに補足説明する。吐出口間隔Δを等間隔にすることができない理由は、第4方向H4に隣接する2つの吐出口30であって、互いに異なる仮想直線上に配置される2つの吐出口30の第2方向H2の間隔Gとして、図6に示すように、大きく分けて2種類あることによる。以下、詳細に説明する。
第4方向H4に隣接する2つの吐出口30は、第4方向H4に関してN個の吐出口30おきに、互いに異なる仮想直線上に配置される。つまり、第4方向H4に隣接する2つの吐出口30は、第4方向H4に関してN個の吐出口30おきに、N組の吐出口群30Aのうち互いに最も離れた吐出口群30Aに含まれることになる。従って、第4方向H4に関して連続する吐出口#1〜吐出口#MN+1においては、第4方向H4に隣接する2つの吐出口30であって、互いに異なる仮想直線上に配置される2つの吐出口30はM組存在することになる。
そして、このM組のうちのM−1組の2つの吐出口30については、第2方向H2に関する間隔G1が、互いに最も離れた吐出口群30Aの第2方向H2に関する間隔(即ち、A1,A2・・AN−1の合計値)から、それぞれが対応する吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1を減算した値となる。つまり、このM組のうちのM−1組の2つの吐出口30の第2方向H2の間隔G1それぞれは、下記式5で表される。
しかしながら、M組のうちの残りの1組の2つの吐出口30(吐出口#MNと吐出口#MN+1)については、第2方向H2に関する間隔G2が、互いに最も離れた吐出口群30Aの第2方向H2に関する間隔に、吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1の合算値を加算した値となる。つまり、このM組のうちの残りの1組の2つの吐出口30の第2方向H2の間隔G2については、上記式5では表すことはできず、下記式6で表されることになる。
上記式5及び式6からも分かるように、M組のうちのM−1組の2つの吐出口30の第2方向H2の間隔G1と、M組のうちの残り1組の2つの吐出口30の第2方向H2の間隔G2とは、各吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1が零ではない限り、等しくはならない。
ところで、上記式1からも分かるように、第4方向H4に隣接する2つの吐出口30であって、互いに同一の仮想直線上に配置される2つの吐出口30の吐出口間隔Δについては、吐出面3a内において第3方向H3と第2方向H2とがなす角度θが0度から90度に向けて大きくなるにつれて、零を起点として次第に大きくなる。これに対して、第4方向H4に隣接する2つの吐出口30であって、互いに異なる仮想直線上に配置される2つの吐出口30の吐出口間隔Δについては、第3方向H3と第2方向H2とがなす角度θが0度から90度に向けて大きくなるにつれて、間隔Pを起点として次第に小さくなる。従って、第4方向H4の吐出口間隔Δを等間隔にするためには、互いに同一の仮想直線上に配置される2つの吐出口30の吐出口間隔Δと、互いに異なる仮想直線上に配置される2つの吐出口間隔Δとが等しくなるように角度θを調整する必要がある。
ここで、上記式5及び式6を、式1中のΔiNとΔMNに代入すると、下記式7及び式8が導出される。
上記式7及び式8からも分かるように、式7及び式8とでは、式中のsinθの係数が間隔G1と間隔G2とで異なっている。上述したように、間隔G1と間隔G2とを等しくすることはできないため、互いに異なる仮想直線上に配置されるM組の2つの吐出口30において、第2方向H2の間隔がG1であるM−1組の2つの吐出口30と、第2方向H2の間隔がG2である1組の2つの吐出口30とでは、角度θの或る変化量に対する第4方向H4の吐出口間隔Δの変化量も異なることになる。従って、第4方向H4に隣接する2つの吐出口30であって、互いに同一の仮想直線上に配置される2つの吐出口30の吐出口間隔Δは、ΔiN及びΔMNの何れか一方としか一致させることができない。その結果として、第4方向H4の吐出口間隔Δを等間隔にすることはできず、実用に適さないほど、ドット列の間隔に大きなバラツキが生じることになる。
以上のように、a×M×N個の吐出口30からブラックのインク滴を吐出させることで、用紙Sにa×M×N本のドット列を形成すると、ドット列の第4方向H4の間隔が不均等となる。このドット列の間隔の不均等は、用紙S上に記録される画像の品質に対して無視できない影響を与える。
そこで、本実施形態においては、第4方向H4に連続するM×N+1個の吐出口30からインクを吐出することにより用紙Sに記録されるM×N+1本のドット列のうち、吐出口間隔Δが最も小さい2つの吐出口30を用いて形成されるドット列を一本のドット列(以下、共有ドット列)とさせることで、用紙Sに形成されるドット列の第4方向H4の間隔を略等間隔にする。以下、詳細に説明する。
本実施形態では、共有ドット列を形成する2つの吐出口30を、吐出口#MNと吐出口#MN+1とし、これらの吐出口間隔ΔMNを他の吐出口間隔Δよりも小さくする。具体的には、図7に示すように、吐出口#MNと吐出口#MN+1との吐出口間隔ΔMNが零となるように、単位ヘッド3を第3方向H3に対して傾斜させて配置する。このときの吐出口間隔ΔMNは、上記式1から下記式9で表される。
そして、吐出面3a内において第3方向H3と第2方向H2とがなす角度である角度αは、上記式9を算出することで、下記式10で表される。
以上より、角度αが上記式10を満たすと、吐出口#MN及び吐出口#MN+1の吐出口間隔ΔMNを小さくすることができ、これら吐出口#MN及び吐出口#MN+1によって形成されるドット列を1本のドット列とみなせるほど近接させることができる。
また、吐出口#MN及び吐出口#MN+1によって形成されるドット列を1本のドット列とみなす場合には、吐出口#MN及び吐出口#MN+1を一つの吐出口30とみなすことができる。このように吐出口#MN及び吐出口#MN+1を一つの吐出口30とみなした場合において、吐出口間隔Δを全て等間隔にするためには、さらに、第4方向H4に隣接する2つの吐出口30であって、互いに同一の仮想直線上に配置される2つの吐出口30の吐出口間隔Δ(例えば、ΔiN−1)と、互いに異なる仮想直線上に配置される2つの吐出口30の吐出口間隔ΔiNとを等しくする必要がある。即ち、下記式11を満たす必要がある。
そして、角度αは、上記式11を算出することで、下記式12で表される。
全ての吐出口間隔Δを等間隔にするためには、角度αは上記式10及び式12の両方を満たす必要がある。従って、上記式10を式12に代入すると、下記式13が導かれる。
以上より、上記式13の条件、N組の吐出口群30Aの第2方向H2の間隔A1,A2・・AN−1が全て等しい条件、及び、吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1が全て等しい条件を満たすとき、吐出口間隔Δを等間隔にすることができることが分かる。本実施形態では、これらの条件を全て満たすように、複数の吐出口30が吐出面3a内において配置されている。
なお、実用レベルで考えると、ドット列の間隔が、等間隔ではなく、ある一定のバラツキの範囲内(実用に適した範囲内)に収まっていればよい場合がある。即ち、吐出口間隔Δが一定のバラツキの範囲に収まっていればよい場合がある。このような場合には、N組の吐出口群30Aの第2方向H2の間隔A1,A2・・AN−1が全て等しい条件、吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1が全て等しい条件、及び上記式13の条件を満たしている必要は必ずしもない。即ち、これらの条件を満たしていない場合でも、N組の吐出口群30Aの第2方向H2の平均間隔Aが、吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の平均間隔BにMを乗算した値(MB)のバラツキの範囲に収まっているときには、全ての吐出口間隔Δを一定のバラツキの範囲に収めることができる。具体的には、N組の吐出口群30Aの第2方向H2の間隔A1,A2・・AN−1が平均間隔Aの±X%の範囲内にあり、吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1が平均間隔Bの±Y%の範囲内にある場合には、吐出口間隔Δのバラツキは、吐出口間隔Δの平均値の±(X+Y)%の範囲に収めることができる。
以上のように、本実施形態では、吐出口#MNと吐出口#MN+1とを用いて形成されるドット列を1本のドット列とみなせるように単位ヘッド3を第3方向H3に対して傾斜させることで、従来のように吐出口30の数だけドット列を形成する場合と比べて、用紙Sに形成されるドット列の間隔を略等間隔にすることができる。なお、本実施形態においては、M×N+1個の吐出口30を用いてM×N本のドット列を形成する(共有ドット列を1本形成する)ことになるため、a×M×N個の吐出口30を有する1つの単位ヘッド3によっては、a×(M×N−1)+1本のドット列が形成されることになる(共有ドット列はa−1本形成される)。このため、ドット列の間隔は、(1/N)×(M×N)/(M×N−1)Pcosαとなる。
そして、制御装置100は、液体吐出データ生成処理において、吐出口#MNと吐出口#MN+1とを用いて形成されるドット列を一本のドット列(共有ドット列)とさせるよう、液体吐出データを生成する。ここで、吐出口#MNと吐出口#MN+1とを用いて共有ドット列を形成する場合において、1つの吐出口30を用いて1本のドット列を形成させるときと同様に、2つの吐出口#MN及び吐出口#MN+1それぞれからインク滴を吐出させると、共有ドット列が他のドット列と比べて2倍の量のインクで形成されることになる。その結果、用紙Sに記録される画像に濃度ムラ(スジ)が生じるため、画像の品質が劣化する虞がある。
そこで、本実施形態においては、制御装置100は、共有ドット列に属する任意の1つのドットを形成する際に、吐出口#MN及び吐出口#MN+1から吐出されるインク滴における、これら2つの吐出口30それぞれ1個当たりのインク滴に含まれるインク量を、吐出口#1〜吐出口#MN+1のうちの、吐出口#MN及び吐出口#MN+1以外の他の1つの吐出口30により1本のドット列を形成する際に、この1つの吐出口30から吐出されるインク滴のみで上記任意の1つのドットを形成するときの、この1つの吐出口から吐出されるインク滴に含まれるインク量よりも小さくさせるように単位ヘッド3を制御する。以下、詳細に説明する。
ここで、吐出口#MNを用いて用紙Sに形成されるドット列に係る液体吐出データを第1液体吐出データ、吐出口#MN+1を用いて用紙Sに形成されるドット列に係る液体吐出データを第2液体吐出データ、吐出口#1〜吐出口#MN+1のうちの、吐出口#MN及び吐出口#MN+1以外の他の1つの吐出口30を用いて用紙Sに形成されるドット列に係る液体吐出データを第3液体吐出データとする。また、記録時において第1液体吐出データに基づいて吐出口#MNから吐出されるべきインク滴に含まれるブラックのインク量の総和をV1とする。同様に、記録時において第2液体吐出データに基づいて吐出口#MN+1から吐出されるべきインク滴に含まれるブラックのインク量の総和をV2、記録時において第3液体吐出データに基づいて吐出口#MN及び吐出口#MN+1以外の他の1つの吐出口30から吐出されるべきインク滴に含まれるブラックのインク量の総和をV3とする。
また、液体吐出データ生成処理においてCMYK表色系に変換された画像データにおける、第1液体吐出データに対応する画像の光学濃度である第1光学濃度の総和をD1、第2液体吐出データに対応する画像の光学濃度である第2光学濃度の総和をD2、第3液体吐出データに対応する画像の光学濃度である第3光学濃度の総和をD3とする。本実施形態において、液体吐出データに対応する画像の光学濃度の総和とは、CMYK表色系に変換された画像データにおける、当該液体吐出データに基づき用紙Sに形成されるドット列のドットに対応する各画素の濃度階調値を合算したものである。
制御装置100は、液体吐出データ生成処理において、画像データに基づき、下記式14を満たすよう液体吐出データを生成する。
より詳細には、制御装置100は、液体吐出データ生成処理において、まず、画像データから、1つの単位ヘッド3当たり用紙Sに記録させるドット列がa×(M×N−1)+1本となるように、1つの単位ヘッド3当たりa×(M×N−1)+1個の液体吐出データを生成する。そして、共有ドット列に係る液体吐出データを第1液体吐出データ及び第2液体吐出データに分割する。
本実施形態においては、制御装置100は、吐出口#MN及び吐出口#MN+1を用いて形成される共有ドット列に属する任意の1つのドットを、吐出口#MN及び吐出口#MN+1のうちの何れか一方の吐出口30から吐出されるインク滴のみで形成されるように、第1液体吐出データ及び第2液体吐出データを生成する。例えば、制御装置100は、図8(a)に示すように、共有ドット列において、第3方向H3に連続するドットを、吐出口#MNから吐出されるインク滴及び吐出口#MN+1から吐出されるインク滴により1ドット毎に交互に形成されるように第1液体吐出データ及び第2液体吐出データを生成する。このとき、V1/D1=V2/D2=1/2×V3/D3であるから上記式14の関係が成立している。なお、図8(a)及び後で参照する図8(b)では、吐出口30から吐出されるインク滴で形成されるドットを、対応する吐出口の符号を付して黒丸で図示している。また、図8(a)及び図8(b)では、説明の便宜上、ドットの形状や形成位置等は、実際のものとは異ならせて図示している。
以上のように、制御装置100が、共有ドット列に属する任意の1つのドットを、吐出口#MN及び吐出口#MN+1のうちの何れか一方の吐出口30から吐出されるインク滴のみで形成させるように単位ヘッド3を制御することで、共有ドット列が他のドット列と比べて多量のインクで形成されることを抑制することができる。その結果、用紙Sに記録させる画像に濃度ムラが生じることを抑制することができる。
変形例として、制御装置100は、図8(b)に示すように、共有ドット列に属する全てのドットが、吐出口#MN及び吐出口#MN+1の何れか一方から吐出されるインク滴のみにより形成されるように第1液体吐出データ及び第2液体吐出データを生成してもよい。この場合、第1液体吐出データ及び第2液体吐出データの何れか一方の液体吐出データは、共有ドット列に対応する全てのドット領域において、インク滴を吐出させないことを表すデータとなる。従って、上記式14において、V1/D1及びV2/D2の何れか一方が零となる。この場合においても、共有ドット列が他のドット列と比べて多量のインクで形成されることを抑制することができるので、用紙Sに記録させる画像に濃度ムラが生じることを抑制することができる。
以上に述べたように、本実施形態によれば、単位ヘッド3を、用紙Sの搬送方向(第3方向H3)に対して傾斜させることで、用紙Sに高分解能の画像を記録することができる。また、複数の吐出口30のうち、第4方向H4に連続するM×N+1個の吐出口30からインクを吐出することにより用紙Sに形成されるM×N+1本のドット列のうち、第4方向の間隔が最も近い2つの吐出口30(吐出口#MN及び吐出口#MN+1)を用いて形成されるドット列を1本のドット列とさせることで、ドット列の間隔を略等間隔にすることができる。これにより、用紙Sに記録される画像の品質が劣化するのを抑制することができる。
また、第4方向の間隔が最も近い2つの吐出口30(吐出口#MN及び吐出口#MN+1)の吐出口間隔ΔMNは零であるため、これら2つの吐出口30で形成されるドット列を一本のドット列とみなすことができる。
また、本実施形態によれば、各吐出口群30Aにおける吐出口列の第2方向H2の平均間隔Aが、吐出口群の第2方向H2の平均間隔BのM倍である。加えて、N組の吐出口群30Aの第2方向H2の間隔A1,A2・・AN−1が全て等しく、且つ、吐出口群30AのM列の吐出口列の第2方向H2の間隔B1,B2・・BM−1が全て等しい。これにより、1つの単位ヘッドの吐出口30により形成されるa×(M×N−1)+1本のドット列を等間隔にすることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態では、第4方向H4の間隔が最も近い2つの吐出口30(吐出口#MN及び吐出口#MN+1)の吐出口間隔ΔMNは零にされていたが、これら2つの吐出口30により形成されるドット列を1本のドット列とみなすことができるのであれば、零ではなくてもよい。例えば、図9(a)及び図9(b)に示すように、吐出口#MN及び吐出口#MN+1の吐出口間隔ΔMNが、この2つの吐出口から吐出されるインク滴によって用紙Sに形成されるドットの最大直径Z(本実施形態では大滴のインク滴が着弾されることで形成されるドットの直径)以下とされていてもよい。なお、図9(b)では、吐出口30から吐出されるインク滴で形成されるドットを、対応する吐出口の符号を付して黒丸で図示している。
また、上述の実施形態では、吐出口#MN及び吐出口#MN+1を用いて形成される共有ドット列に属する任意の1つのドットを、吐出口#MN及び吐出口#MN+1のうちの何れか一方の吐出口30から吐出されるインク滴のみで形成されるように構成されていたが、1つのドットを吐出口#MN及び吐出口#MN+1の両方から吐出されるインク滴で形成されるように構成されていてもよい。この場合、吐出口#MN及び吐出口#MN+1それぞれ1個当たりのインク滴に含まれるインク量を、吐出口#1〜吐出口#MN+1のうちの、吐出口#MN及び吐出口#MN+1以外の他の1つの吐出口30により1本のドット列を形成する際に、この1つの吐出口から吐出されるインク滴のみで上記任意の1つのドットを形成するときの、この1つの吐出口から吐出されるインク滴に含まれるインク量よりも小さくされていればよい。例えば、任意の1つのドットを他の1つの吐出口30では大滴のインク滴を吐出させることで形成する場合において、当該任意の1つのドットを吐出口#MN及び吐出口#MN+1で形成する際には、これらの吐出口から大滴よりもインク量が少ない中滴や小滴のインク滴を吐出させるように構成されていればよい。
また、上述の実施形態では、プリンタ1の制御装置100が、画像データから液体吐出データを生成するように構成されているが、PC39において液体吐出データを生成して、当該生成した液体吐出データをプリンタ1に転送するように構成されていてもよい。
また、ヘッド2の複数の単位ヘッド3は、千鳥状に配列されることに限定されず、1列又は千鳥状でない複数列に配列されてもよい。単位ヘッド3の複数の吐出口30から吐出される液体の色は、上述の実施形態ではブラックであるが、他の色(例えば、イエロー)であってもよい。また、当該液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、用紙Sに記録される画像の品質を向上させる処理液)であってもよい。
また、プリンタ1はヘッド2を複数有していてもよい。この場合、複数のヘッド2から、それぞれ異なる色のインクを吐出させることで、用紙Sにカラー画像を記録させることができる。また、ヘッド2は1つの単位ヘッド3で構成されていてもよい。
また、エネルギー付与部は、圧電素子を用いたピエゾ方式のものに限定されず、その他の方式(発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)のものであってもよい。
本発明に係る液体吐出装置は、インクジェット方式に限定されず、その他の液体を吐出する方式であってもよい。本発明に係る液体吐出装置は、ライン方式に限定されず、シリアル方式であってもよい。本発明をシリアル方式のインクジェットプリンタに適用する場合、プリンタは1の単位ヘッド3を有し、当該単位ヘッド3は、主走査方向に移動しながら吐出口30からインクを吐出することにより、用紙P上に画像を記録する。また、本発明に係る液体吐出装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等であってもよい。