JP5452240B2 - 光学物品およびその製造方法 - Google Patents

光学物品およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5452240B2
JP5452240B2 JP2010005652A JP2010005652A JP5452240B2 JP 5452240 B2 JP5452240 B2 JP 5452240B2 JP 2010005652 A JP2010005652 A JP 2010005652A JP 2010005652 A JP2010005652 A JP 2010005652A JP 5452240 B2 JP5452240 B2 JP 5452240B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
filter
carbon
gas
silicon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2010005652A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011145442A (ja
Inventor
圭司 西本
崇 野口
政孝 川上
Original Assignee
ホーヤ レンズ マニュファクチャリング フィリピン インク
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ホーヤ レンズ マニュファクチャリング フィリピン インク filed Critical ホーヤ レンズ マニュファクチャリング フィリピン インク
Priority to JP2010005652A priority Critical patent/JP5452240B2/ja
Publication of JP2011145442A publication Critical patent/JP2011145442A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5452240B2 publication Critical patent/JP5452240B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Optical Filters (AREA)
  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本発明は、フィルタリング機能を備えた光学物品およびその製造方法に関するものである。
特許文献1には、光学的性質を劣化させずに長期間に渡って帯電防止効果を保つことができる光学多層膜フィルターと、該フィルターを簡便に製造する光学多層膜フィルターの製造方法、さらに、このような光学多層膜フィルターを組み込んだ電子機器装置を提供するために、光学多層膜フィルターの、基板上に形成された複数層からなる無機薄膜の最表層を構成する酸化ケイ素層の密度を1.9〜2.2g/cm3にすることが記載されている。
特開2007−298951号公報
特許文献1の光学多層膜フィルターは、蒸着時の真空度を変化させ、最表層のSiO2膜の密度を低下させることによりシート抵抗を低下させ、帯電防止性を有する光学多層膜フィルターを提供している。しかしながら、さらにゴミが付着する可能性を低減するためには、さらに、低抵抗にすることが要望されている。ここで「低抵抗にする」とは、シート抵抗を小さくすることである。
光学物品において透明電極であるITO膜を用いて低抵抗にすることが提案されている。しかしながら、ITO膜は用途によっては、耐久性、特に、汗などに相当する酸やアルカリなどの薬品に対する耐久性に懸念がある場合がある。貴金属の薄膜を積層することも提案されるが、製造コストに問題がある場合がある。
本発明の一態様は、光学基材の上に直にまたは他の層を介して形成されたフィルター層であって、所定の波長域の光を透過し、所定の波長域よりも長波長および/または短波長の光を遮断するフィルター層を有する光学物品の製造方法である。この製造方法は、フィルター層に含まれる第1の層であって、表層が低抵抗な第1の層を形成することを有する。第1の層を形成することは、イオン化した第1の気体を用いて、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかを含む表層を形成することを含む。第1の気体は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムのいずれかを含む第1の化合物群に含まれる少なくとも1種を含む。
炭素、シリコンおよびゲルマニウムは、身近な製品の素材、半導体基板の素材などとして使用されており、比較的低コストで入手可能な素材である。イオン化した上記第1の気体を用いて、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかを含む表層を形成することにより、低抵抗な表層を含む第1の層を形成することができる。したがって、蒸着などによりフィルター層を成膜する際に用いられる気体を第1の気体に代えたり、フィルター層を成膜する際に用いられる気体に第1の気体を含ませることにより、表面抵抗の低い光学物品を提供できる。このため、帯電防止機能および/または電磁波遮蔽機能などを備えた光学物品であって、フィルター層を含む光学物品を比較的簡単に、また、低コストで製造および提供できる。
また、炭素、シリコンおよびゲルマニウムは、それぞれ、遷移金属と化合物を形成するが、形成された化合物は、そのほとんどが低抵抗なものである。イオン化された上記第1の気体を用いることにより、第1の層の表層に、遷移金属カーバイド(遷移金属炭素化合物、遷移金属炭化物)、遷移金属シリサイド(遷移金属ケイ素化合物、遷移金属ケイ化物)、および遷移金属ゲルマニド(遷移金属ゲルマニウム化合物、遷移金属ゲルマニウム化物)のうちの少なくとも1つを形成することも可能である。
遷移金属カーバイド、遷移金属シリサイド、および遷移金属ゲルマニドは、それぞれ、低抵抗な素材であり、酸に対する耐久性も高い。イオン化された上記第1の気体を用い、第1の層の表層に、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかを含む遷移金属化合物を形成することにより、帯電防止機能および/または電磁波遮蔽機能を備え、しかも、耐久性の良好な光学物品を提供できる。
したがって、第1の層は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと化合物を形成可能な遷移金属を含むことが好ましい。この場合、表層を形成することは、例えば、第1の層の表面にイオン化した第1の気体を照射することを含めてもよい。
イオン化した第1の気体を照射すること、すなわち、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれか、またはそれらの化合物がイオン化されたものを電子ビームとして照射することにより、第1の層の表層に、炭素、ケイ素、およびゲルマニウムのうちの少なくとも1つを導入(添加)できる。これにより、典型的には、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと第1の層に含まれる遷移金属とが反応し、第1の層の表層に、遷移金属カーバイド、遷移金属シリサイド、および遷移金属ゲルマニドのいずれかが形成される。このため、低抵抗な表層を備えた第1の層を形成できる。
表層を形成することは、イオン化した第1の気体をアシストイオンまたはスパッタイオンとし、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと化合物を形成する遷移金属またはその酸化物を蒸着源として、表層を成膜することを含んでもよい。これにより、第1の層の表面に、遷移金属カーバイド、遷移金属シリサイド、および遷移金属ゲルマニドのいずれかを含む低抵抗な層(表層)を成膜することができる。
表層を低抵抗化する組成(遷移金属カーバイド、遷移金属シリサイド、および遷移金属ゲルマニドのいずれか)と第1の層とは、機械的および/または化学的な相違は小さい可能性が高い。したがって、機械的および/または化学的に、より安定したフィルター層を備えた光学物品を製造し易い。
フィルター層の典型的なものの1つは、多層膜である。この製造方法は、さらに、第1の層に重ねて多層膜の他の層を形成することを含んでもよい。
本発明の他の態様の1つは、光学基材と、光学基材の上に直にまたは他の層を介して形成されたフィルター層とを有する光学物品である。フィルター層は、所定の波長域の光を透過し、所定の波長域よりも長波長および/または短波長の光を遮断するためのものである。このフィルター層は、表層が低抵抗な第1の層を含む。第1の層の表層は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムのいずれかを含む第1の化合物群に含まれる少なくとも1種を含む第1の気体であって、イオン化された第1の気体を用い、炭素、シリコンおよびゲルマニウムのいずれかを含むように形成されたものである。
第1の層の表層は、イオン化された第1の気体を用い、炭素、シリコンおよびゲルマニウムのいずれかを含むように形成された低抵抗な層である。さらに、第1の層の光学的性能に及ぼす影響を最小限に止めることが可能である。すなわち、上記方法により、第1の層の表層という限られた領域の構成を調整できるので、第1の層の光吸収率の低下があるとしても、その光吸収率の低下を反射防止層の光学的性質の許容範囲内に止めるように調整することができる。このため、フィルター層の光学的性能に与える影響を抑制しながら、帯電防止、ゴミの付着防止などの機能が付与された光学物品を提供できる。
第1の層は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと化合物を形成可能な遷移金属を含む層、または酸化物層(炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと化合物を形成可能な遷移金属の酸化物を含む層)であることが好ましい。典型的には、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと第1の層に含まれる遷移金属とにより低抵抗な化合物が形成される。すなわち、表層は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと遷移金属との化合物を含むことが望ましい。このため、表層に形成された化合物と第1の層との間の機械的および/または化学的な相違を小さくできる可能性がある。したがって、機械的および/または化学的に、より安定したフィルター層を備えた光学物品を提供できる可能性がある。
フィルター層の典型的なものの1つは、可視光を透過させ、紫外光および/または赤外光を遮断するものである。光学物品は、可視光をハンドリングするシステム、例えば、カメラ、プロジェクタなどのシステムに用いられる光学多層膜フィルターを含む。フィルター層は、紫外光を透過するもの、赤外光を透過するものであってもよく、さらに波長域の狭い光または波長域の広い光を透過するためのものであってもよい。
光学多層膜フィルターにおいて、第1の層は、多層膜を構成する1つの層である。多層膜を構成する層の典型的なものは酸化物層であり、第1の層は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと化合物を形成可能な遷移金属を含む酸化物層であることが好ましい。フィルター層は、有機または無機の単層であってもよい。
光学基材の典型的なものは、ガラス板または水晶板である。ガラス板あるいは水晶板を振動板として使用できるため、振動機能付きの光学物品を提供できる。光学基材は、レンズ、フィルムなどであってもよい。
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、上述した光学物品と、光学物品を通して画像を取得するための撮像装置とを有するシステムである。このシステムの1つは、レンズ鏡筒が取り外し可能な一眼レフカメラであり、この場合、光学物品を撮像素子のカバーガラスなどとして使用できる。また、光学物品は、反射防止膜、ハーフミラー、ローパスフィルター等の機能部材としても利用できる。このシステムは、そのような機能部材を含む電子機器装置、光学機器装置を含む。
多層構造(多層膜)のフィルター層を含む光学物品(光学多層膜フィルター)の構造を示す断面図。 設計波長が550nmのUV−IRフィルター用の多層膜の層構成を示す表。 設計波長が550nmのUV−IRフィルターの透過率を示す図。 図4(A)は、炭酸ガスイオンビームをTiO2層(59番目の層)に照射している様子を示す図、図4(B)は、59層の表層にチタンカーバイドが形成された様子を示す図。 サンプルS1〜S3およびR1の評価を示す表。 図6(A)は、シート抵抗を測定する様子を示す断面図、図6(B)は、シート抵抗を測定する様子を示す平面図。 図7(A)は、炭酸ガスイオンビームをTiO2層に照射している様子を示す図、図7(B)は、チタンカーバイドを含む層(表層)が形成された様子を示す図。 サンプルS4〜S9の評価を示す表。 一眼レフデジタルカメラの概要を示す図。
本発明の幾つかの実施形態を説明する。図1に、本発明を適用した光学多層膜フィルター10の構成の一例を、基材1を中心とした一方の面の側の断面図により示している。光学多層膜フィルター10は、光学物品の一例であり、透光性を有する(透明な)基材1と、基材(光学基材)1の上に直にまたは他の層を介して形成されたフィルター層2とを有する。図1に示した光学多層膜フィルター10は、基材1の上に直にフィルター層2が形成されている。フィルター層2は、所定の波長域(周波数帯)の光を透過し、所定の波長域(周波数帯)の長波長および/または短波長の波長域(周波数帯)の光を遮断するためのものである。この実施形態の光学多層膜フィルター10は、可視光を透過し、紫外線(紫外光、UV)および赤外線(赤外光、IR)を遮断する(カットする)機能を備えたフィルター層2を備えている。
光学多層膜フィルター10の典型的な基材1は、ガラス、水晶、プラスチックなどの透光性の素材からなる板材である。基材1は、透光性の素材からなるプリズム、レンズなどの所定の光学的性能を備えた部材であってもよい。また、基材1は、透光性の素材からなる可撓性のフィルムであってもよい。
所定の波長域よりも長波長および/または短波長の光を遮断するためのフィルター層2は、無機系の組成からなる多層膜で構成される。典型的な多層膜は、屈折率が1.3〜1.6である低屈折率層と、屈折率が1.8〜2.6である高屈折率層とを交互に積層した構成を備えている。無機多層膜の各層の例としては、SiO2、SiO、TiO2、TiO、Ti23、Ti25、Al23、TaO2、Ta25、NdO2、NbO、Nb23、NbO2、Nb25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、WO3、HfO2、ZrO2などが挙げられる。各層は、これらの無機物の単独もしくは2種以上の混合組成で構成できる。
所定の波長域よりも長波長および/または短波長の波長域の光を遮断するためのフィルター層2は、典型的には数10層の多層膜で構成される。図1に示すように、フィルター層2は、基材1の側から高屈折率層(H)21(TiO2層21ともいう)と、低屈折率層(L)22(SiO2層22ともいう)とを組み合わせて積層された構成を備えている。設計波長λが550nmのフィルター層2の基本構成は60層であり、第1層の高屈折率材料のTiO2層21の膜厚が0.60H、第2層の低屈折率材料のSiO2層22の膜厚が0.20L、以下、順次、1.05H、0.37L、(0.68H、0.53L)4、0.69H、0.42L、0.59H、1.92L、(1.38H、1.38L)6、1.48H、1.52L、1.65H、1.71L、1.54H、1.59L、1.42H、1.58L、1.51H、1.72L、1.84H、1.80L、1.67H、1.77L、(1.87H、1.87L)7、1.89H、1.90L、1.90H、最表層(最表面)の低屈折率材料のSiO2層22が0.96Lである。
なお、膜厚は、光学膜厚nd=1/4λを「1」として記載しており、高屈折率層(H、21)の膜厚については「H」を付記し、低屈折率層(L、22)の膜厚については「L」を付記している。また、(xH、yL)Sは、括弧内の構成を周期的に繰り返すことを表しており、「S」はスタック数と呼ばれる繰り返しの回数である。
図2に設計波長λが550nmのフィルター層2の各層の具体的な厚みを示している。フィルター層2の高屈折率層21は、酸化チタン(TiO2)層であり屈折率nは2.40である。低屈折率層22は二酸化ケイ素(SiO2)層であり屈折率nは1.46である。
図3に、フィルター層2を含む光学多層膜フィルター10の透過率特性を示している。この光学多層膜フィルター10は、可視光の波長域(この例では390−660nm)をほぼ透過し、それより短波長の紫外域および長波長の赤色および赤外域の波長を遮断する特性を備えている。設計波長を変えたり、フィルター層2の構成を変えたりすることにより、フィルター層2の透過特性を制御することができる。
フィルター層2を形成する方法としては、乾式法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが挙げられる。真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
さらに、本実施形態の光学多層膜フィルター10においては、フィルター層2に含まれる多層のうち、図2にアスタリスクで示す第59層(第1の層)の表層を形成する際に、イオン化した第1の気体を用い、炭素(カーボン)、ケイ素(シリコン)およびゲルマニウムの少なくともいずれかを含むようにしている。これにより、低抵抗な表層を含む第59層を形成でき、フィルター層2の表面の電気抵抗を低減できる。ここで、第1の気体とは、炭素、シリコンおよびゲルマニウムのいずれかを含む第1の化合物群に含まれる少なくとも1種を含むものである。
すなわち、図1に示す光学多層膜フィルター10において、最上層の低屈折率層22の下の高屈折率層21、すなわち、最上層の高屈折率層21の表層に、イオン化した第1の気体を用い、炭素(カーボン)、ケイ素(シリコン)およびゲルマニウムの少なくともいずれかを添加することにより、低抵抗化された表層23を形成している。イオン化した第1の気体により添加された炭素(カーボン)、ケイ素(シリコン)およびゲルマニウムの少なくともいずれかは、高屈折率層21を形成する酸化チタンのチタンと反応し、金属間化合物(カーバイド、シリサイド、あるいはゲルマニド)が生成される。
炭素、ケイ素およびゲルマニウムの少なくともいずれかを含む導電性の金属間化合物の1つは、カーバイドなどと称される有機遷移金属である。有機遷移金属の例としては、SiC、TiC、ZrC、HfC、VC、NbC、TaC、Mo2C、W2C、WC、NdC2、LaC2、CeC2、PrC2、SmC2が挙げられる。
炭素、ケイ素およびゲルマニウムの少なくともいずれかを含む導電性の金属間化合物の他の1つは、シリサイドなどと称される遷移金属ケイ化物である。シリサイドの例としては、ZrSi、CoSi、WSi、MoSi、NiSi、TaSi、NdSi、Ti3Si、Ti5Si3、Ti5Si4、TiSi、TiSi2、Zr3Si、Zr2Si、Zr5Si3、Zr3Si2、Zr5Si4、Zr6Si5、ZrSi2、Hf2Si、Hf5Si3、Hf3Si2、Hf4Si3、Hf5Si4、HfSi、HfSi2、V3Si、V5Si3、V5Si4、VSi2、Nb4Si、Nb3Si、Nb5Si3、NbSi2、Ta4.5Si、Ta4Si、Ta3Si、Ta2Si、Ta5Si3、TaSi2、Cr3Si、Cr2Si、Cr5Si3、Cr3Si2、CrSi、CrSi2、Mo3Si、Mo5Si3、Mo3Si2、MoSi2、W3Si、W5Si3、W3Si2、WSi2、Mn6Si、Mn3Si、Mn5Si2、Mn5Si3、MnSi、Mn11Si19、Mn4Si7、MnSi2、Tc4Si、Tc3Si、Tc5Si3、TcSi、TcSi2、Re3Si、Re5Si3、ReSi、ReSi2、Fe3Si、Fe5Si3、FeSi、FeSi2、Ru2Si、RuSi、Ru2Si3、OsSi、Os2Si3、OsSi2、OsSi1.8、OsSi3、Co3Si、Co2Si、CoSi2、Rh2Si、Rh5Si3、Rh3Si2、RhSi、Rh4Si5、Rh3Si4、RhSi2、Ir3Si、Ir2Si、Ir3Si2、IrSi、Ir2Si3、IrSi1.75、IrSi2、IrSi3、Ni3Si、Ni5Si2、Ni2Si、Ni3Si2、NiSi2、Pd5Si、Pd9Si2、Pd4Si、Pd3Si、Pd9Si4、Pd2Si、PdSi、Pt4Si、Pt3Si、Pt5Si2、Pt12Si5、Pt7Si3、Pt2Si、Pt6Si5、PtSiを挙げることができる。
炭素、ケイ素およびゲルマニウムの少なくともいずれかを含む導電性の金属間化合物のさらに他の1つは、ゲルマニドなどと称される遷移金属ゲルマニウム化物である。ゲルマニドの例としては、NaGe、AlGe、KGe4、TiGe2、TiGe、Ti6Ge5、Ti5Ge3、V3Ge、CrGe2、Cr3Ge2、CrGe、Cr3Ge、Cr5Ge3、Cr11Ge8、MnGe、Mn5Ge3、CoGe、CoGe2、Co5Ge7、NiGe、CuGe、Cu3Ge、ZrGe2、ZrGe、RbGe4、NbGe2、Nb2Ge、Nb3Ge、Nb5Ge3、Nb3Ge2、NbGe2、Mo3Ge、Mo3Ge2、Mo5Ge3、Mo2Ge3、MoGe2、CeGe4、RhGe、PdGe、AgGe、Hf5Ge3、HfGe、HfGe2、TaGe2、PtGeを挙げることができる。
(光学多層膜フィルターの製造)
1.実施例1(サンプルS1)
基材1は、光を透過させるためのガラス基板であり、実施例1では、屈折率1.53の白板ガラス(B270)を用いた。さらに、一般的なイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(いわゆるIAD法)により、基材1の上に無機薄膜のフィルター層2を形成して光学多層膜フィルター10を製造した。実施例1において、フィルター層2の高屈折率層21は、酸化チタン(TiO2)層であり、低屈折率層22は二酸化ケイ素(SiO2)層である。具体的には、基材1を真空蒸着チャンバー(図示せず)内に取り付けた後、真空蒸着チャンバー内の下部に蒸着材料を充填したるつぼを配置し、電子ビームにより蒸発させ、真空蒸着法により、図2に示した構成で、TiO2層21とSiO2層22とを交互に成膜した。TiO2膜とSiO2膜との成膜条件は以下の通りである。
<SiO2膜の成膜条件>
成膜速度:0.8nm/sec
真空蒸着(イオンアシストあり(酸素ガス))
加速電圧:1000V
加速電流:120mA
2流量:70sccm
成膜温度:150℃
<TiO2膜の成膜条件>
成膜速度:0.3nm/sec
真空蒸着(イオンアシストあり(酸素ガスおよびアルゴンガス))
加速電圧:1000V
加速電流:120mA
2流量:60sccm
Ar流量:20sccm
成膜温度:150℃
1.1 低抵抗化
最上層の高屈折率層(59層)21を成膜後、最表層(最上層)の低屈折率層(60層)22を成膜する前に、最上層の高屈折率層(59層)21の表層23を低抵抗化させた。具体的には、最上層の高屈折率層(59層)21の表層23に、イオン化した二酸化炭素ガス(炭酸ガス)を照射することにより炭素を添加(導入)して、表層23を低抵抗化した。高屈折率層21に含まれるチタンはカーボン、シリコンおよびゲルマニウムと金属間化合物を形成し、導電性の化合物となる遷移金属である。したがって、高屈折率層21を構成する組成である酸化チタン(TiO2)は、遷移金属の酸化物である。
この例では、最上層の高屈折率層(59層)21の表層23に添加(導入)した炭素(C)は、高屈折率層(59層、TiO2層)21に含まれるチタン(Ti)と反応して、チタンカーバイド(典型的には、TiC)となる。ただし、導入された炭素(C)は、全てがチタンカーバイドの生成に寄与するとは限られない。例えば、正孔または電子を生成することにより電荷のキャリアを増やし、表層23の導電率を高めることに寄与する可能性もある。
図4(A)および(B)は、最上層の高屈折率層(59層)21を第1の層とし、その表層23にチタンカーバイドを形成する様子を模式的に示している。なお、蒸着装置においてイオンビームが照射される状態を示しているので、図1に示した高屈折率層21と、その表層23との関係は本図においては上下反転して示している。
本例では、二酸化炭素ガス(炭酸ガス、CO2)を使用し、流量を30sccmとして、これを蒸着装置の真空容器内に導入した。さらに、蒸着装置のイオン化条件を加速電圧800V、イオン電流150mAに設定した。これにより、二酸化炭素ガスからCO2+、CO+、C+などを含む炭酸ガスイオンビームを生成し、高屈折率層(59層)21に照射した。炭酸ガスイオンビームの照射時間は20秒とした(図4(A))。
炭酸ガスイオンビームは、二酸化炭素を原料として生成したイオンビームであり、二酸化炭素イオンの他、分解生成物である一酸化炭素イオン、炭素イオン、酸素イオンなどが含まれてもよい。また、炭酸ガスイオンビームには、一価のイオンの他に、二価や三価の多価イオンが含まれてもよい。炭酸ガスイオンビームを高屈折率層(59層)21に照射することにより、高屈折率層21の表層23において、TiO2と炭素(C)がミキシングされて化学反応し、チタンカーバイド(典型的にはTiC)を含む導電性の表層23が形成される(図4(B))。この方法により高屈折率層(59層、第1の層)21の表層23に導電性のチタンカーバイドが形成されることは、後述するようにサンプルが低抵抗化することで確認されている。
高屈折率層(59層、第1の層)21のうちのどの程度の領域(厚さ、深さ)まで炭素(C)が導入され、導電性の表層(導電層)23が形成されるか(典型的にはカーバイドが形成されるか)は、炭酸ガスイオンビームの照射時間、イオンエネルギー(加速電圧)、およびイオン電流によって決まる。本例の条件では、高屈折率層(59層、99.25nm)21のうちの表層23の数nmの領域内にチタンカーバイドが形成され、導電層として機能すると考えられる。
炭酸ガスイオンビームを照射することにより、高屈折率層21の表面の全体あるいは部分にカーバイドを形成することができる。そして、微小な導電領域(低抵抗な領域)の存在によりフィルター層2のシート抵抗が低減し、導電性が向上すると考えられる。このため、炭酸ガスイオンビームを照射して低抵抗化(導電化)する層23は薄く数nm程度で十分である。したがって、高屈折率層21の表層23を改質して低抵抗化することが、フィルター層2の光学的な性質(特性)に与える影響は非常に小さい。若干の反射率の上昇が見られる可能性があるが、金属層を形成する場合よりも反射率の上昇ははるかに少ないと予想されている。また、低抵抗化のために導電性の表層23を形成する層は、フィルター層2を構成する多層のうち、最上層の高屈折率層21に限定されることなく、いずれかの層でよい。さらに、複数の層の表層にカーバイドを形成してもよい。
59番目の高屈折率層21の表層23を低抵抗化した後に、高屈折率層21に重ねて、最表層(最上層)の60番目の低屈折率層22を成膜した。
この実施例における高屈折率層(TiO2層)21の表層23の低抵抗化の条件は以下の通りである。
<低抵抗化の条件(サンプルS1)>
対象層(第1の層):TiO2(59番目の層)
処理:対象層(59番目の層)の表面への炭酸ガスイオンビーム照射
処理時間:20秒
イオンビームの照射条件
加速電圧(イオンエネルギー):800V
加速電流(イオン電流):150mA
イオンガンへのガス導入:炭酸ガス(二酸化炭素ガス)30sccm
2.実施例2(サンプルS2)
実施例1と同様の製造方法により、実施例1と同様の層構成のフィルター層2を含む光学多層膜フィルター10を製造した。ただし、59番目の高屈折率層21の表層23の低抵抗化の条件は以下のように変更した。
本例では、導入ガスとして、炭酸ガスとアルゴンガスとの混合ガスを用いた。炭酸ガスとアルゴンガスとの混合ガスをイオン化することにより炭酸ガスイオンビームとアルゴンイオンビームとが高屈折率層21の表面に照射され、さらに低抵抗の表層23を形成できる。アルゴンイオンビームを炭酸ガスイオンビームと併用することは、以下の実験結果に示すように低抵抗化に適しており、TiCの形成を促進するなどの影響が予想される。
<低抵抗化の条件(サンプルS2)>
対象層(第1の層):TiO2(59番目の層)
処理:対象層(59番目の層)の表面への炭酸ガスイオンビーム照射
処理時間:120秒
イオンビームの照射条件
加速電圧:800V
加速電流:150mA
イオンガンへのガス導入:炭酸ガス(二酸化炭素ガス)15sccmとアルゴンガス15sccmとの混合
3.実施例3(サンプルS3)
実施例1と同様の製造方法により、実施例1と同様の層構成のフィルター層2を含む光学多層膜フィルター10を製造した。ただし、59番目の高屈折率層21の表層23の低抵抗化の条件は以下のように変更した。
<低抵抗化の条件(サンプルS3)>
対象層(第1の層):TiO2(59番目の層)
処理:対象層(59番目の層)の表面への炭酸ガスイオンビーム照射
処理時間:120秒
イオン照射条件
加速電圧:500V
加速電流:150mA
イオンガンへのガス導入:炭酸ガス(二酸化炭素ガス)15sccmとアルゴンガス15sccmとの混合
R1.比較例1(サンプルR1)
実施例1と同様の製造方法により、実施例1と同様の層構成のフィルター層2を含む光学多層膜フィルター10を製造した。ただし、低抵抗化の処理は行わなかった。
(サンプルの評価)
上記により製造された実施例1〜3のサンプルS1〜S3および比較例1のサンプルR1の導電性について、シート抵抗、ごみの付着試験を用いて評価した。評価結果を図5にまとめて示している。
(1)シート抵抗
図6(A)および(B)に、シート抵抗の測定方法を示している。上記にて製造したサンプルS1〜S3およびR1の光学多層膜フィルター10の表面10Aにリングプローブ61を接触させ、光学多層膜フィルター10のシート抵抗を測定した。測定装置60は、三菱化学(株)製高抵抗抵抗率計ハイレスタUP MCP−HT450型を使用した。使用したリングプローブ61は、URSタイプであり、2つの電極を有し、外側のリング電極61Aは外径18mm、内径10mmであり、内側の円形電極61Bは直径7mmである。それらの電極間に1000V〜10Vの電圧を印加し、各サンプルのシート抵抗を測定した。
図5の測定結果に示すように、フィルター層2に含まれる高屈折率層21の1つの層の表層23を低抵抗化したサンプルS1〜S3においては、シート抵抗の測定値がそれぞれ、1×1010Ω/□、2×109Ω/□、3.5×109Ω/□となり、ごみの付着が懸念されるシート抵抗値1×1012Ω/□より十分に低い値となっている。これに対し、サンプルR1のシート抵抗の測定値は、1.5×1013Ω/□であった。
(2)ごみの付着試験
上記にて製造したサンプルS1〜S3の光学多層膜フィルター10の表面10Aの上で、眼鏡レンズ用拭き布を1kgの垂直加重にて10往復こすりつけ、このときに発生した静電気によるごみの付着の有無を調べた。ごみとしては、発泡スチロールを約5mmの大きさに砕いたものを使用した。判断基準は、以下の通りである。
○:ごみの付着が認められなかった。
△:ごみが数個付着していることが認められた。
×:数多くのごみが付着していることが認められた。
図5に示すように、フィルター層2に含まれる高屈折率層21の1つの層の表層23を低抵抗化したサンプルS1〜S3の評価はすべて○である。したがって、低抵抗の表層を設けた光学多層膜フィルター10は優れた帯電防止効果を備えていることがわかった。これに対し、低抵抗化しなかったサンプルR1の評価は×であった。
(3)評価結果
実施例1〜3により得られたサンプルS1〜S3は、シート抵抗が低く、ごみの付着が見られない。したがって、フィルター層2に含まれる高屈折率層21の1つの層の表面にイオン化した二酸化炭素ガスを照射することにより、帯電防止効果に優れた光学多層膜フィルターを得られることがわかった。
また、高屈折率層21の1つの層の表面にイオン化した二酸化炭素ガスを照射することにより、高屈折率層21の表層23にカーバイドが形成されると考えられるが、カーバイドは、酸やアルカリに対しての耐腐食性に優れ、化学的に安定性が高い。したがって、酸やアルカリに対する耐久性の良好な光学多層膜フィルターが得られる。
導電性の表層23は、異なる製造方法により製造することも可能である。たとえば、イオンアシスト蒸着、スパッタリング等を用いてカーバイドを含む層(表層)23をベースとなる層の上に積層することも可能である。
4.実施例4(サンプルS4)
この例では、最上層の59番目の高屈折率層21までは、実施例1と同様に成膜した。ただし、高屈折率の59番目のTiO2層21を59番目の層21のベース層として92nmまで成膜した後、酸化チタン(TiO2)の顆粒材料を蒸着源とし、炭酸ガスイオンビームをアシストイオンとして用いてベース層の上に厚さ約7.2nmの表層23をイオンアシスト蒸着し、ベース層および表層23の全体の厚みが約99.2nmとなるように調整した。なお、図2に示した層厚は理論値であり、実際に成膜する際の膜厚は誤差を持っている。
なお、本実施例ではイオン化された炭酸ガスをアシストイオンとして用い、表層をイオンアシスト蒸着している。別の導電層の形成方法としてスパッタを用いることもできる。二酸化炭素ガスをスパッタソースに導入し、放電させ、炭酸ガスイオンあるいはこのイオンがある雰囲気でスパッタ膜を形成させ表層23とすることもできる。いずれの場合も、チタンカーバイド(典型的には、TiCであり、その他TiOCなどを含む)を含む導電性の表層23を成膜することができ、表面の電気抵抗が低い光学多層膜フィルターを提供できる。
図7(A)および(B)は、最上層の高屈折率層(59番目の層)21を第1の層として、その59番目の層21を、TiO2層のベース層21bと、TiC層の表層23とで形成する様子を模式的に示している。
図7(A)に示すように、ベース層21bを形成した後、酸化チタン(TiO2)の顆粒材料を蒸着源とし、これに加速した電子を照射して加熱蒸発させ、蒸発させた酸化チタンを、炭酸ガスイオンビームをアシストビームとして用い、TiCをイオンアシスト蒸着した。なお、蒸着源はTiO(0<X≦2)であってもよい。なお、アシストガスとしては、二酸化炭素(CO2)ガス(第1の気体)とアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスを用いた。二酸化炭素ガスの流量は15sccm、アルゴンガスの流量は15sccmである。加速電圧(イオンエネルギー)は800V、イオン電流は200mAに設定した。
炭酸ガスイオンビームは、CO2、CO、およびCを含む。このため、炭酸ガスイオンをアシストイオンとして用い、TiO2を蒸着源として真空蒸着することにより、TiO2に含まれるチタン(Ti)原子と、炭酸ガスイオンビームに含まれる炭素(C)原子とによって、ベース層21bの上にチタンカーバイド(典型的にはTiC)を含む表層(カーバイド層)23が形成される(図7(B))。本例では、層厚が7.2nmとなるように導電性の表層(カーバイド層)23を形成した。
なお、表層23を成膜した後に、59番目の層21に重ねて、最表層(最上層)の低屈折率層22の60番目の層を形成した。
このように、イオン化した二酸化炭素ガス(第1の気体)をアシストイオンとし、炭素と遷移金属またはその酸化物(ここでは二酸化チタン)を蒸着源として、導電性の表層23を成膜することができる。この方法では、ベース層21bはTiO2層に限らず、ZrO2層などの他の組成の高屈折率層であってもよく、低屈折率層22であってもよい。
この実施例における59番目の層21の表層23の低抵抗化の条件は以下の通りである。
<低抵抗化の条件(サンプルS4)>
対象層(第1の層):59番目の層
処理:TiO2のベース層を形成した後、炭酸ガスイオンビームを用いたイオンアシスト蒸着により表層を形成
蒸着源:酸化チタンの顆粒材料
イオンアシスト条件
加速電圧(イオンエネルギー):800V
加速電流(イオン電流):200mA
ガス導入:炭酸ガス(二酸化炭素ガス)15sccmとアルゴンガス15sccmとの混合
ベース層(TiO2層)の層厚:92.0nm
表層(TiC層)の層厚:7.2nm
5.実施例5(サンプルS5)
実施例4と同様の製造方法により、実施例1と同様の層構成のフィルター層2を含む光学多層膜フィルター10を製造した。ただし、59番目の高屈折率層21の表層23の低抵抗化の条件は以下のように変更した。
<低抵抗化の条件(サンプルS5)>
対象層(第1の層):59番目の層
処理:TiO2のベース層を形成した後、炭酸ガスイオンビームを用いたイオンアシスト蒸着により表層を形成
蒸着源:酸化チタンの顆粒材料
イオンアシスト条件
加速電圧:800V
加速電流:200mA
ガス導入:炭酸ガス(二酸化炭素ガス)15sccmとアルゴンガス15sccmとの混合
ベース層(TiO2層)の層厚:94.2nm
表層(TiC層)の層厚:5.0nm
6.実施例6(サンプルS6)
実施例4と同様の製造方法により、実施例1と同様の層構成のフィルター層2を含む光学多層膜フィルター10を製造した。ただし、59番目の高屈折率層21の表層23の低抵抗化の条件は以下のように変更した。
<低抵抗化の条件(サンプルS6)>
対象層(第1の層):59番目の層
処理:TiO2のベース層を形成した後、炭酸ガスイオンビームを用いたイオンアシスト蒸着により表層を形成
蒸着源:酸化チタンの顆粒材料
イオンアシスト条件
加速電圧:800V
加速電流:150mA
ガス導入:炭酸ガス(二酸化炭素ガス)30sccm
ベース層(TiO2層)の層厚:92.0nm
表層(TiC層)の層厚:7.2nm
7.実施例7(サンプルS7)
実施例4と同様の製造方法により、実施例1と同様の層構成のフィルター層2を含む光学多層膜フィルター10を製造した。ただし、59番目の高屈折率層21の表層23の低抵抗化の条件は以下のように変更した。
<低抵抗化の条件(サンプルS7)>
対象層(第1の層):59番目の層
処理:TiO2のベース層を形成した後、炭酸ガスイオンビームを用いたイオンアシスト蒸着により表層を形成
蒸着源:酸化チタンの顆粒材料
イオンアシスト条件
加速電圧:1000V
加速電流:200mA
ガス導入:炭酸ガス(二酸化炭素ガス)30sccm
ベース層(TiO2層)の層厚:92.0nm
表層(TiC層)の層厚:7.2nm
8.実施例8(サンプルS8)
実施例4と同様の製造方法により、実施例1と同様の層構成のフィルター層2を含む光学多層膜フィルター10を製造した。ただし、59番目の高屈折率層21の表層23の低抵抗化の条件は以下のように変更した。
<低抵抗化の条件(サンプルS8)>
対象層(第1の層):59番目の層
処理:TiO2のベース層を形成した後、炭酸ガスイオンビームを用いたイオンアシスト蒸着により表層を形成
蒸着源:酸化チタンの顆粒材料
イオンアシスト条件
加速電圧:1000V
加速電流:200mA
ガス導入:炭酸ガス(二酸化炭素ガス)30sccm
ベース層(TiO2層)の層厚:89.2nm
表層(TiC層)の層厚:10.0nm
9.実施例9(サンプルS9)
実施例4と同様の製造方法により、実施例1と同様の層構成のフィルター層2を含む光学多層膜フィルター10を製造した。ただし、59番目の高屈折率層21の表層23の低抵抗化の条件は以下のように変更した。
<低抵抗化の条件(サンプルS9)>
対象層(第1の層):59番目の層
処理:TiO2のベース層を形成した後、炭酸ガスイオンビームを用いたイオンアシスト蒸着により表層を形成
蒸着源:酸化チタンの顆粒材料
イオンアシスト条件
加速電圧:1000V
加速電流:200mA
ガス導入:炭酸ガス(二酸化炭素ガス)15sccmとアルゴンガス15sccmとの混合
ベース層(TiO2層)の層厚:89.2nm
表層(TiC層)の層厚:10.0nm
(サンプルの評価およびその結果)
上記により製造された実施例4〜9のサンプルS4〜S9について、シート抵抗、ごみの付着試験を上記と同様にして測定および評価した。結果を図8にまとめて示している。
(1)シート抵抗
図8に示すように、フィルター層2に含まれる低抵抗の表層23を形成したサンプルS4〜S9においては、シート抵抗の測定値がそれぞれ、8×108Ω/□、2×1010Ω/□、1.5×109Ω/□、2.4×109Ω/□、5.0×108Ω/□、2×108Ω/□となり、ごみの付着が懸念されるシート抵抗値1×1012Ω/□より十分に低い値となっている。
サンプルS4とサンプルS5、サンプルS7とサンプルS8を比較すると、TiC層(表層)23の層厚が厚いサンプルS4やS8の方がシート抵抗は低い。また、サンプルS8とサンプルS9を比較すると、アルゴンガスを合わせて導入したサンプルS9の方がシート抵抗は低い。このように、導電性のTiC層(表層)23の層厚を厚めにしたり、アルゴンガスを合わせて導入することにより、シート抵抗をさらに低くできると思われる。
(2)ごみの付着試験
図8に示すように、フィルター層2に含まれる高屈折率層21の1つの層にチタンカーバイドを含む表層23を成膜したサンプルS4〜S9の評価はすべて○である。したがって、低抵抗化の処理を施した光学多層膜フィルター10は優れた帯電防止効果を備えていることがわかった。
(3)評価結果
実施例4〜9により得られたサンプルS4〜S9は、シート抵抗が低く、ごみの付着が見られない。したがって、フィルター層2に含まれる高屈折率層21の1つの層の表面にカーバイドを含む層を、イオン化した二酸化炭素ガスをアシストガスとし、酸化チタンを蒸着源として成膜することにより、帯電防止効果に優れた光学多層膜フィルターを得られることがわかった。
カーバイドに代わり、シリサイドやゲルマニドを形成したり、これらを複数含むようにしても、同様に高屈折率層21の1つの層の表面を低抵抗化できる。すなわち、ケイ素(シリコン)およびゲルマニウムは、炭素と同じ第IV族元素であり、同様の電子構造を持ち、周期律表のシリコンの上下に位置する組成である。したがって、イオン化して用いる第1の気体を、炭素を含む気体に代えて、ケイ素やゲルマニウムを含む気体としても、低抵抗な表層23を得ることが可能であり、化学的および機械的に安定で、帯電防止性能に優れ、ごみの付着を抑制でき、さらに、光学的性質の低下もほとんどない光学多層膜フィルターを提供できる。
また、炭素およびケイ素は、身近な製品に多用されている低コストの素材である。また、ゲルマニウムも、ケイ素とともに半導体基板などの工業材料として多く用いられている。したがって、炭素、ケイ素(シリコン)、または、ゲルマニウムを用いて低抵抗化することにより、低コストで帯電防止性能に優れた光学多層膜フィルターを提供できる。
遷移金属カーバイドを含む表層23を形成する際に適した、イオン化される第1の気体の例、すなわち、第1の化合物群に含まれる種としては、二酸化炭素の他、一酸化炭素、アセチレン、メタン、エタン、四フッ化炭素などが挙げられる。遷移金属シリサイドを含む表層23を形成する際に適した、イオン化される第1の気体の例(第1の化合物群に含まれる種)としては、例えば、シラン(SiH)、四塩化ケイ素(SiCl)、四フッ化ケイ素(SiF)などが挙げられる。遷移金属ゲルマニドを含む表層23を形成する場合の第1の気体の例(第1の化合物群に含まれる種)としては、四塩化ゲルマニウム(GeCl)、ゲルマン(水素化ゲルマニウム、GeH)、四フッ化ゲルマニウム(GeF)などが挙げられる。ここで挙げた気体は、対象層(第1の層)へのイオンビームの照射に用いてもよく、また、イオンアシストガスやスパッタイオンを生成するために用いてもよい。さらに、遷移金属もチタンに限定されるものではない。
図9に、実施例1〜9の光学多層膜フィルター10を備えた電子機器装置(システム)を示している。このシステム400は、例えば、静止画の撮影を行うレンズ鏡筒が取り外し可能なデジタルスチルカメラの撮像装置である。図9のシステム(撮像装置)400は、光学物品(光学多層膜フィルター)10を通して画像を取得するものであり、撮像モジュール100を含む。撮像モジュール100は、光学多層膜フィルター10と、光学ローパスフィルター110と、光学像を電気的に変換する撮像素子のCCD(電荷結合素子)120と、このCCD120を駆動する駆動部130を含む。
光学多層膜フィルター10は、上記実施例において説明したように、基材1と、高屈折率層21と低屈折率層22とが交互に積層された無機薄膜のフィルター層2とを含み、UV−IRカットフィルター機能を有する。この光学多層膜フィルター10は、前記したCCD120の前面に、固定治具140によってCCD120と一体的に構成され、CCD120の防塵ガラス機能を併せて有している。この固定治具140は金属によって構成されており、光学多層膜フィルター10の最表層と電気的に接続されている。そして、固定治具140は、アースケーブル150によってアース(地落)されている。光学多層膜フィルター10は、塵除去のために圧電素子などにより振動が加えられるようになっていてもよい。
撮像装置400は、撮像モジュール100に加え、光入射側に配置されるレンズ200と、撮像モジュール100から出力される撮像信号の記録・再生等を行う本体部300とを含む。なお、図示しないが、本体部300には、撮像信号の補正等を行う信号処理部と、撮像信号を磁気テープ等の記録媒体に記録する記録部と、この撮像信号を再生する再生部と、再生された映像を表示する表示部などの構成要素が含まれる。撮像装置400の一例はレンズ鏡筒が取り外し可能なデジタルスチルカメラであり、CCD120と防塵ガラス機能とUV−IRカットフィルター機能とを一体的に備えた光学多層膜フィルター10の搭載により、貼り合わせ精度がよく、良好な光学特性のデジタルスチルカメラを提供することができる。なお、実施例の撮像モジュール100は、レンズ200を分離して配置した構造で説明したが、レンズ200も含めて撮像モジュールが構成されていてもよい。
光学多層膜フィルター10は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの撮像装置にかぎらず、いわゆるカメラ付携帯電話、いわゆるカメラ付携帯型パソコン(パーソナルコンピューター)などに適応でき、ほこりがつきにくく、光透過率が高い帯電防止性光学素子としての性能を維持できる。したがって、撮像機能を備えた多くのシステムに本発明を適用できる。
多層膜を備えた本発明の異なる実施形態の1つは、光学ローパスフィルター(OLPF)である。OLPFの構成の一例は、水晶複屈折板と、帯電防止機能を備えたフィルター層2を含むIRカットガラスと、位相差フィルムと、水晶複屈折板とが順次積層されている構成のものである。
このように、本発明に係る光学物品は、種々の波長帯域の光を選択的に透過させたり、光の透過率を確保したりすることが要求されるシステムに好適なものである。光学基材は、白板ガラスを用いて説明したが、これに限定せず、BK7、サファイアガラス、ホウケイ酸ガラス、青板ガラス、SF3、及びSF7等の透明基板であってもよいし、一般に市販されている光学ガラスであってもよい。さらに、光学基材として上述した水晶板を用いてもよく、また、プラスチック製の光学基材を用いてもよい。
また、フィルター層2を構成する高屈折率層21と低屈折率層22との組み合わせは、TiO2/SiO2に限定されることはない。フィルター層2は、ZrO2/SiO2、Ta25/SiO2、NdO2/SiO2、HfO2/SiO2、Al23/SiO2を含むさまざまな系で構成できる。それらのいずれかの層に対し、イオン化した第1の気体(炭素、シリコンおよびゲルマニウムのいずれかを含む第1の化合物群に含まれる少なくとも1種を含む気体)を用いて炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかを含む表層を形成することにより、これに対し、低抵抗化および/または帯電防止機能を付加することが可能である。さらに、本発明の光学物品は、多層のフィルター層2に加えて、防汚層などの他の機能層を含んでいてもよい。例えば、光学基材がプラスチックなどの場合は、ハードコート層、プライマー層などの機能層を含んでいてもよい。
1 基材、2 フィルター層
21 高屈折率層、22 低屈折率層、23 表層
10 光学多層膜フィルター

Claims (11)

  1. 光学基材の上に直にまたは他の層を介して形成されたフィルター層であって、所定の波長域の光を透過し、前記所定の波長域よりも長波長および/または短波長の光を遮断するフィルター層を有する光学物品の製造方法であって、
    前記フィルター層に含まれる第1の層であって、表層が低抵抗な前記第1の層を形成することを有し、
    前記第1の層を形成することは、イオン化した第1の気体を用いて炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかを含む前記表層を形成することを含み、
    前記第1の気体は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムのいずれかを含む第1の化合物群に含まれる少なくとも1種を含む、光学物品の製造方法。
  2. 請求項1において、前記第1の層は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと化合物を形成可能な遷移金属を含み、
    前記表層を形成することは、前記第1の層の表面に前記イオン化した第1の気体を照射することを含む、光学物品の製造方法。
  3. 請求項1において、前記表層を形成することは、前記イオン化した第1の気体をアシストイオンまたはスパッタイオンとし、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと化合物を形成する遷移金属または前記遷移金属の酸化物を蒸着源として、前記表層を成膜することを含む、光学物品の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記フィルター層は多層膜であり、
    さらに、前記第1の層に重ねて前記多層膜の他の層を形成することを含む、光学物品の製造方法。
  5. 光学基材と、
    前記光学基材の上に直にまたは他の層を介して形成されたフィルター層であって、所定の波長域の光を透過し、前記所定の波長域よりも長波長および/または短波長の光を遮断するフィルター層とを有し、
    前記フィルター層は、表層が低抵抗な第1の層を含み、
    前記第1の層の前記表層は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムのいずれかを含む第1の化合物群に含まれる少なくとも1種を含む第1の気体であって、イオン化された前記第1の気体を用い、炭素、シリコンおよびゲルマニウムのいずれかを含むように形成されたものである、光学物品。
  6. 請求項5において、前記第1の層は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと化合物を形成可能な遷移金属を含む層、または前記遷移金属の酸化物を含む層である、光学物品。
  7. 請求項5または6において、前記表層は、炭素、シリコンおよびゲルマニウムの少なくともいずれかと遷移金属との化合物を含む、光学物品。
  8. 請求項5ないし7のいずれかにおいて、前記フィルター層は、可視光を透過し、紫外光および/または赤外光を遮断するフィルターである、光学物品。
  9. 請求項5ないし8のいずれかにおいて、前記フィルター層は多層膜であり、前記第1の層は、前記多層膜を構成する1つの層である、光学物品。
  10. 請求項5ないし9のいずれかにおいて、前記光学基材は、ガラス板または水晶板である、光学物品。
  11. 請求項5ないし10のいずれかに記載の光学物品と、
    前記光学物品を通して画像を取得するための撮像装置とを有する、システム。
JP2010005652A 2010-01-14 2010-01-14 光学物品およびその製造方法 Expired - Fee Related JP5452240B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010005652A JP5452240B2 (ja) 2010-01-14 2010-01-14 光学物品およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010005652A JP5452240B2 (ja) 2010-01-14 2010-01-14 光学物品およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011145442A JP2011145442A (ja) 2011-07-28
JP5452240B2 true JP5452240B2 (ja) 2014-03-26

Family

ID=44460356

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010005652A Expired - Fee Related JP5452240B2 (ja) 2010-01-14 2010-01-14 光学物品およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5452240B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6770915B2 (ja) * 2017-03-08 2020-10-21 株式会社Screenホールディングス 熱処理装置
US10677972B2 (en) * 2017-12-08 2020-06-09 Viavi Solutions Inc. Multispectral sensor response balancing

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011145442A (ja) 2011-07-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2010231172A (ja) 光学物品およびその製造方法
JP4207083B2 (ja) 光学多層膜フィルタ、光学多層膜フィルタの製造方法および電子機器装置
US8233219B2 (en) Optical multilayer thin-film filters and methods for manufacturing same
JP2009139925A (ja) 光学多層膜フィルタ、光学多層膜フィルタの製造方法および電子機器装置
KR101657713B1 (ko) 광학 물품 및 그 제조 방법
JP2005043755A (ja) 光学多層膜フィルタ、光学多層膜フィルタの製造方法、光学ローパスフィルタ、及び電子機器装置
JP6034785B2 (ja) 光学部材
US7990616B2 (en) IR-UV cut multilayer filter with dust repellent property
JP2005234038A (ja) 誘電体多層膜フィルタ及びその製造方法並びに固体撮像デバイス
JP2015175865A (ja) 光学部品、光学部品の製造方法、電子機器、および移動体
JP5621184B2 (ja) 透明電極
JP2008070828A (ja) 赤外線遮蔽フィルタ
JP5452240B2 (ja) 光学物品およびその製造方法
JPWO2019138875A1 (ja) 機能素子および機能素子の製造方法ならびに電子機器
JP2010231173A (ja) 光学物品およびその製造方法
JP5433943B2 (ja) 光学部材、撮像系光学物品、撮像モジュール、カメラ、及び光学部材の製造方法
JP2010237639A (ja) 光学多層膜フィルターおよびその製造方法
JP2007047530A (ja) 光学多層膜フィルタおよびその製造方法
JP2011158909A (ja) 光学多層膜フィルタ
JP2007248495A (ja) 光学多層膜フィルタの製造方法、光学多層膜フィルタおよび固体撮像デバイス
JP5779317B2 (ja) 光学物品の製造方法
JP2009265579A (ja) 多層膜ndフィルター
JP7271121B2 (ja) 光学フィルタ及び光学装置
JP5584448B2 (ja) 光導電素子及びこれを用いた撮像デバイス、並びに導電膜付き基板の製造方法
JP2010243164A (ja) 透光性部材、時計、および透光性部材の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20121204

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20130418

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20131129

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131210

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131227

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5452240

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees