JP5450927B2 - 塩酸テモカプリルのi型結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
また、本化合物について開示する特許公報においても、かかる化合物についての結晶多形に関する記載は一切存在しない(特許文献1)。
(1)「カルボキシル基の定色反応」による、
(2)日本薬局方(日局)一般試験法「紫外可視吸光度測定法」による、
(3)日局一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認める、
(4)日局一般試験法「炎色反応試験法(ハロゲン化合物の炎色反応)」による、
確認試験法が確立している(非特許文献1)。
かかる両化合物は、工業的製造方法により得られた塩酸テモカプリルの結晶形変換手段によりそれぞれ分別して単離できることを確認した。
すなわち、本発明は塩酸テモカプリルのI型結晶ならびに塩酸テモカプリルのII型結晶を提供することを課題とする。
1.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする医薬組成。
2.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とするACE阻害剤。3.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする胆汁・腎排泄型ACE阻害剤。
4.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする高血圧症治療剤。
5.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする腎実質性高血圧症治療剤。
6.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする腎血管性高血圧症治療剤。
本発明により提供される塩酸テモカプリルの結晶多形は、2種のI型結晶とII型結晶であり、臨床的に使用されている塩酸テモカプリルは、本発明者らの検討によれば、I型結晶であると思われる。したがって、かかる純品の塩酸テモカプリルのI型結晶を提供することにより、臨床的により効果的な薬効を示す塩酸テモカプリルが提供されると共に、製剤学的にも安定性の良い塩酸テモカプリルを含有する製剤が提供できる利点を有している。
本発明が提供するI型結晶及びII型結晶は、下記化学式:
なお、結晶多形とは、同一化合物の複数の異なる結晶形態をいい、そのうちの一つの結晶形態を意味する。
さらに詳細には、本発明におけるI型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ)3.80±0.1°、7.58±0.1°、15.22±0.1°、20.46±0.1°及び20.74±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日局一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認める。
その粉末X線回折スペクトルは、図1に示すパターンを有するものである。
さらに詳細には、本発明におけるII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ)3.70±0.1°、7.40±0.1°、14.86±0.1°、25.46±0.1°及び26.18±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日局一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認めない。
その粉末X線回折スペクトルは、図2に示すパターンを有するものである。
すなわち、例えば、特許文献1の実施例に記載の方法に従って塩酸テモカプリルを製造する。ここで得られた塩酸テモカプリルの結晶は、特許文献1の記載によれば、エタノール−酢酸エチルにより再結晶することにより、融点187℃(分解)の結晶として得られるとされている。
本発明者等の追試の結果からも、同様の塩酸テモカプリルの結晶を得ることができたが、本品の赤外線吸収スペクトル(ペースト法)においては、非特許文献1に記載される臨床的に使用される塩酸テモカプリルの確認試験である、日局一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認めるものではなかった。
そこで本発明者等は溶媒を用いた結晶転移による結晶形変換を行い、赤外線吸収(IR)スペクトル(ペースト法)において波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認める結晶を得た。
そのI型結晶及びII型結晶の物理化学的特徴は上記したとおりのものである。
その変換前の塩酸テモカプリルのII型結晶は、具体的には以下のようにして調製することができる。
すなわち、例えば、特許文献1に記載の製造方法により合成した塩酸テモカプリルの結晶(注:この段階ではI型結晶であるかII型結晶であるかを問わない)を極性溶媒に溶解させ、そこに非極性溶媒を添加することにより塩酸テモカプリルの溶解度を下げ、結晶を晶出されることにより得ることができる。
なお、結晶転移に用いる溶媒はアセトンに限定されず、かかる目的を達成する溶媒であれば、アセトン以外の如何なる溶媒であってもよいことはいうまでもない。
また、IRスペクトル(ペースト法)において、波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認め、DSCにおいて、図3に示す180℃付近での吸熱パターンを示すものである。
また、IRスペクトル(ペースト法)において、波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認めず、DSCにおいて、図4に示す178℃付近での吸熱パターンを示すものである。
X線光源:Cu K−ALPHA1/40kV/80mA
オニゴメータ:縦型オニゴメータ
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルタ:使用しない
カウンタモノクロメータ:湾曲結晶モノクロメータ
発散スリット:1deg
散乱スリット:1deg
受光スリット:0.15mm
走査モード:連続
スキャンスピード:2°/min.
スキャンステップ:0.02°
走査軸:2θ
走査範囲:2〜40°
測定方法:ペースト法
測定範囲:4000〜500cm−1
分解能:4.0cm−1
スキャン回数:16
昇温速度:5℃/min.
雰囲気:窒素
測定温度範囲:30〜200℃
したがって、本願発明の塩酸テモカプリルのI型結晶及びII型結晶のそれぞれは、本明細書に記載の物理化学的性質によって特定されるべきものであるが、各スペクトルデータは、その性質上多少変化しうるものであり、厳密に解されるべきではなく、多少の変化はその許容の範囲内のものであると解釈され、本発明の権利範囲に包含されるべきものである。
すなわち、これまで臨床的に使用されている塩酸テモカプリルについては、結晶多形は存在しないとされていたが、本発明者等の検討では、結晶多形が存在し、その上、臨床的に使用されている塩酸テモカプリルは本発明にいうI型結晶であることが判明した。
その含有量は、ACE阻害剤、特に胆汁・腎排泄型ACE阻害剤としての有効量であればよく、具体的には、高血圧症、腎実質性高血圧症、血管性高血圧症への有効投与量、例えば、1mg、2mg並びに4mg含有錠剤として剤形化することができる。
実施例1:塩酸テモカプリルの製造
特公平7−113020号公報に記載の方法に準じて塩酸テモカプリルを調製した。
α−{6(R)−[1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピルアミノ]−5−オキソ−2(S)−(2−チエニル)ペルヒドロ−1,4−チアゼピン−4−イル}酢酸 tert−ブチルエステルを4N塩化水素・CPME(シクロペンチルメチルエーテル)に溶かし、15時間室温で攪拌した。溶媒を留去して、残留物に酢酸エチルを加えると塩酸テモカプリルが結晶として析出した。
かくして得た結晶を濾取し、乾燥することにより塩酸テモカプリルの結晶を得た。
上記の実施例1で調製された塩酸テモカプリルの結晶10gを、N,N−ジメチルアセトアミド13mLに25℃にて溶解させ、この溶液を濾過し、濾液に酢酸エチル130mLを加え、析出した結晶を濾取して、乾燥することにより塩酸テモカプリルのII型結晶を得た。
このII型結晶の粉末X線回折スペクトルは、図2に示すパターンを有するものであり、ブラッグ角(2θ)3.70±0.1°、7.40±0.1°、14.86±0.1°、25.46±0.1°及び26.18±0.1°に特徴的回折ピークを有するものであった。
また、IRスペクトル(ペースト法)において、波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認めず、DSCにおいて、図4に示す178℃付近での吸熱パターンを示すものであった。
上記実施例2で得た塩酸テモカプリルのII型結晶10gを、アセトン70mL中に懸濁させ、温度60℃にて攪拌処理することによる結晶形変換を行い、その後25℃まで冷却させ、結晶を濾取して、乾燥することにより塩酸テモカプリルのI型結晶を得た。
このI型結晶の粉末X線回折スペクトルは、図1に示すパターンを有するものであり、ブラッグ角(2θ)3.80±0.1°、7.58±0.1°、15.22±0.1°、20.46±0.1°及び20.74±0.1°に特徴的回折ピークを有するものであった。
また、IRスペクトル(ペースト法)において、波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認め、DSCにおいて、図3に示す180℃付近での吸熱パターンを示すものであった。
上記実施例3で得た塩酸テモカプリルのI型結晶10gを上記実施例2と同様の方法により、塩酸テモカプリルのII型結晶を得た。
Claims (2)
- α−{6(R)−[1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピルアミノ]−5−オキソ−2(S)−(2−チエニル)ペルヒドロ−1,4−チアゼピン−4−イル}酢酸モノハイドロクロライド(以下、「塩酸テモカプリル」と記載する)の結晶を、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドからなる極性溶媒に溶解させ、そこに非極性溶媒であるエステル系溶媒を添加することにより塩酸テモカプリルの溶解度を下げて結晶を得ることを特徴とする、粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ)3.70±0.1°、7.40±0.1°、14.86±0.1°、25.46±0.1°及び26.18±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日本薬局方一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認めない、塩酸テモカプリルのII型結晶の製造方法。
- 請求項1により製造された塩酸テモカプリルのII型結晶を、ケトン系溶媒中溶解させることなく25〜80℃の結晶転移温度で結晶形変換を行うことを特徴とする、粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ)3.80±0.1°、7.58±0.1°、15.22±0.1°、20.46±0.1°及び20.74±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日本薬局方一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認める、塩酸テモカプリルのI型結晶への変換方法。
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