JP5450927B2 - 塩酸テモカプリルのi型結晶の製造方法 - Google Patents

塩酸テモカプリルのi型結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、塩酸テモカプリルの結晶多形に基づく新規結晶、及びそれを有効成分とする医薬組成物に関する。
化学名、(+)−[(2S,6R)−6−[[(S)−1−(エトキシカルボニル)−3−フェニルプロピル]アミノ]−5−オキソ−2−(2−チエニル)ペルヒドロ−1,4−チアセピン−4−イル]酢酸 モノハイドロクロライド(IUPAC)である塩酸テモカプリル(Temocapril Hydrochloride:JAN)は、プロドラッグであり、生体内で活性体に変化し、アンジオテンシン変換酵素を阻害して、アンジオテンシンII生成を抑制することにより血圧降下作用を示すことから、胆汁・腎排泄型ACE阻害剤として、高血圧症、腎実質性高血圧症、腎血管性高血圧症患者に臨床的に使用されている化合物「商品名:エースコール(登録商標)」である。
臨床的に使用されている塩酸テモカプリルは、白色〜淡黄色の結晶性の粉末として提供されており、その結晶多形については、粉末X線回折スペクトル、赤外吸収スペクトル及び熱分析により結晶多形は認められないとされている(非特許文献1)。
また、本化合物について開示する特許公報においても、かかる化合物についての結晶多形に関する記載は一切存在しない(特許文献1)。
本発明者は本化合物について、その工業的製造方法を検討してきているなかで、かかる化合物に結晶多形、すなわちI型結晶及びII型結晶の結晶多形が存在することを新規に見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、臨床的に使用されている塩酸テモカプリルは、その確認試験法として;
(1)「カルボキシル基の定色反応」による、
(2)日本薬局方(日局)一般試験法「紫外可視吸光度測定法」による、
(3)日局一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認める、
(4)日局一般試験法「炎色反応試験法(ハロゲン化合物の炎色反応)」による、
確認試験法が確立している(非特許文献1)。
本発明者らは、工業的製造方法により合成された塩酸テモカプリルが、臨床的に使用することができる塩酸テモカプリルと同一の化合物であることの確認試験を行っているなかで、上記(3)の赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)による確認試験で、波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認める塩酸テモカプリルの結晶と、それ以外の、波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認めない塩酸テモカプリルの結晶の両者が存在することを見出し、その粉末X線回折スペクトルにおいて両者のブラッグ角(2θ)における特徴的回折ピークが異なるものであることを確認した。
かかる両化合物は、工業的製造方法により得られた塩酸テモカプリルの結晶形変換手段によりそれぞれ分別して単離できることを確認した。
すなわち、臨床的に使用されている塩酸テモカプリルについては結晶多形が存在しないものであるとされているが(非特許文献1)、本発明者らの詳細な検討の結果、この塩酸テモカプリルには結晶多形が存在することを見出し、本発明を完成させるに至った。
特公平7−113020号公報 医薬品インタビューホーム「エースコール」(2005年2月)
したがって本発明の課題は、これまで結晶多形が存在しないものであるとされていた塩酸テモカプリルについて、新規な結晶多形による2種の結晶を提供するものであり、その2種の結晶のうち、一方の結晶をI型結晶といい、他方の結晶をII型結晶という。
すなわち、本発明は塩酸テモカプリルのI型結晶ならびに塩酸テモカプリルのII型結晶を提供することを課題とする。
而して、本発明の一つの基本的態様である請求項1に記載の発明は、α−{6(R)−[1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピルアミノ]−5−オキソ−2(S)−(2−チエニル)ペルヒドロ−1,4−チアゼピン−4−イル}酢酸モノハイドロクロライド(以下、「塩酸テモカプリル」と記載する)の結晶を極性溶媒に溶解させ、そこに非極性溶媒を添加することにより塩酸テモカプリルの溶解度を下げて結晶を得ることを特徴とする、粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ)3.70±0.1°、7.40±0.1°、14.86±0.1°、25.46±0.1°及び26.18±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日本薬局方一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm −1 及び755cm 1付近に吸収を認めない、塩酸テモカプリルのII型結晶の製造方法である。
より具体的な本発明は、極性溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドから選択されるものであり、非極性溶媒が、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、不飽和炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、または飽和炭化水素系溶媒である上記の請求項1に記載の塩酸テモカプリルのII型結晶の製造方法である。
また本発明は、請求項1で得られた塩酸テモカプリルのIIが結晶からI型結晶への結晶形変換方法であり、具体的には、上記で製造された塩酸テモカプリルのII型結晶を、溶媒中溶解させることなく10〜100℃の結晶転移温度で結晶形変換を行うことを特徴とする、粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ)3.80±0.1°、7.58±0.1°、15.22±0.1°、20.46±0.1°及び20.74±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日本薬局方一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm −1 及び755cm −1 付近に吸収を認める、塩酸テモカプリルのI型結晶への変換方法である。
より具体的には、本発明は、結晶転移を行う溶媒が、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、水、トルエン、テトラヒドロフラン、エーテル、ジイソプロピルエーテル、クロロホルム、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドから選択させるものである上記の塩酸テモカプリルのI型結晶への変換方法である。
更に本発明は、以下の構成に関するものでもある。すなわち、
1.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする医薬組成。
2.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とするACE阻害剤。3.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする胆汁・腎排泄型ACE阻害剤。
4.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする高血圧症治療剤。
5.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする腎実質性高血圧症治療剤。
6.上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の結晶を有効成分とする腎血管性高血圧症治療剤。
本発明により、これまで結晶多形が存在しないものとされていた塩酸テモカプリルについて新たな結晶多形が提供される。
本発明により提供される塩酸テモカプリルの結晶多形は、2種のI型結晶とII型結晶であり、臨床的に使用されている塩酸テモカプリルは、本発明者らの検討によれば、I型結晶であると思われる。したがって、かかる純品の塩酸テモカプリルのI型結晶を提供することにより、臨床的により効果的な薬効を示す塩酸テモカプリルが提供されると共に、製剤学的にも安定性の良い塩酸テモカプリルを含有する製剤が提供できる利点を有している。
本発明は、上記したように、その基本は、これまで結晶多形が存在しないものとされていた塩酸テモカプリルについて、新たな結晶多形であるI型結晶及びII型結晶である。
本発明が提供するI型結晶及びII型結晶は、下記化学式:
Figure 0005450927
で示される(+)−[(2S,6R)−6−[[(S)−1−(エトキシカルボニル)−3−フェニルプロピル]アミノ]−5−オキソ−2−(2−チエニル)ペルヒドロ−1,4−チアセピン−4−イル]酢酸 モノ塩酸塩である塩酸テモカプリルの結晶多形であり、両者は異なる物理化学的特徴を有する。
なお、結晶多形とは、同一化合物の複数の異なる結晶形態をいい、そのうちの一つの結晶形態を意味する。
本発明におけるI型結晶は、X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ)3.80±0.1°、7.58±0.1°、15.22±0.1°、20.46±0.1°及び20.74±0.1°に特徴的回折ピークを有する。
さらに詳細には、本発明におけるI型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ)3.80±0.1°、7.58±0.1°、15.22±0.1°、20.46±0.1°及び20.74±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日局一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認める。
その粉末X線回折スペクトルは、図1に示すパターンを有するものである。
また本発明におけるI型結晶は、日局一般試験法「融点測定法」において明確な融点分解点を示さず、示唆走査熱量測定(DSC)において、図3に示す180℃付近での吸熱パターンを示すものである。
一方、本発明におけるII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ)3.70±0.1°、7.40±0.1°、14.86±0.1°、25.46±0.1°及び26.18±0.1°に特徴的回折ピークを有する。
さらに詳細には、本発明におけるII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ)3.70±0.1°、7.40±0.1°、14.86±0.1°、25.46±0.1°及び26.18±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日局一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認めない。
その粉末X線回折スペクトルは、図2に示すパターンを有するものである。
また本発明におけるII型結晶は、日局一般試験法「融点測定法」において明確な融点分解点を示さず、示唆走査熱量測定(DSC)において、図4に示す178℃付近での吸熱パターンを示すものである。
本発明におけるI型結晶は、以下のようにして得ることができる。
すなわち、例えば、特許文献1の実施例に記載の方法に従って塩酸テモカプリルを製造する。ここで得られた塩酸テモカプリルの結晶は、特許文献1の記載によれば、エタノール−酢酸エチルにより再結晶することにより、融点187℃(分解)の結晶として得られるとされている。
本発明者等の追試の結果からも、同様の塩酸テモカプリルの結晶を得ることができたが、本品の赤外線吸収スペクトル(ペースト法)においては、非特許文献1に記載される臨床的に使用される塩酸テモカプリルの確認試験である、日局一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認めるものではなかった。
そこで本発明者等は溶媒を用いた結晶転移による結晶形変換を行い、赤外線吸収(IR)スペクトル(ペースト法)において波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認める結晶を得た。
この特許文献1に記載の製造方法によって得られた塩酸テモカプリルの結晶と、これを結晶形変換させて得た塩酸テモカプリルの結晶の両者は、塩酸テモカプリルとしては化学的に同一のものであるが、その粉末X線回折スペクトル、IRスペクトル、DSCがそれぞれ異なるものであることが判明した。すなわち、塩酸テモカプリルには結晶多形が存在することが判明した。
かかる新規な知見に基づいて、本発明者等は、IRスペクトル(ペースト法)において波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認める結晶、すなわち臨床的に使用されている塩酸テモカプリルの結晶をI型結晶と命名し、波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認めない塩酸テモカプリルの結晶をII型結晶と命名した。
そのI型結晶及びII型結晶の物理化学的特徴は上記したとおりのものである。
なお、特許文献1に記載の製造方法において、その反応条件の如何、精製条件の如何によっては、本発明で命名するI型結晶が得られる可能性もある。しかしながら、かかる点は本発明において重要なものではない。本発明は、これまで塩酸テモカプリルには結晶多形が存在しないとされていた技術的背景下で塩酸テモカプリルに結晶多形が存在することを初めて見出したものであり、その新規な知見に基づいて塩酸テモカプリルのI型結晶及びII型結晶を提供する点が本発明の本質である。
本発明が提供する塩酸テモカプリルのI型結晶は、II型結晶を結晶形変換させることにより得ることができる。
その変換前の塩酸テモカプリルのII型結晶は、具体的には以下のようにして調製することができる。
すなわち、例えば、特許文献1に記載の製造方法により合成した塩酸テモカプリルの結晶(注:この段階ではI型結晶であるかII型結晶であるかを問わない)を極性溶媒に溶解させ、そこに非極性溶媒を添加することにより塩酸テモカプリルの溶解度を下げ、結晶を晶出されることにより得ることができる。
使用する極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒を好ましく挙げることができ、また非極性溶媒としては、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、不飽和炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、飽和炭化水素系溶媒等を好ましく挙げることができる。
その溶媒の使用量、溶解温度等は特に限定されないが、塩酸テモカプリルを溶解させるのに十分な量、温度等であればよい。
かくして調製された塩酸テモカプリルのII型結晶よりI型結晶を得るには、II型結晶を、例えばアセトン中で、II型結晶を溶解させることなく加熱処理する結晶転移温度で、結晶形変換を行うことにより調製することができる。
なお、結晶転移に用いる溶媒はアセトンに限定されず、かかる目的を達成する溶媒であれば、アセトン以外の如何なる溶媒であってもよいことはいうまでもない。
具体的には、本発明において使用される溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、水、トルエン、テトラヒドロフラン、エーテル、ジイソプロピルエーテル、クロロホルム、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、それらの溶媒の性質を考慮し、それぞれ極性溶媒、非極性溶媒、或いは結晶転移溶媒としてその1種又は複数種を組み合わせて使用することができる。
また、結晶形変換における結晶転移温度としては、約10℃〜約100℃、好ましくは約25℃〜80℃程度である。
上述した発明においては、塩酸テモカプリルのII型結晶からI型結晶への結晶形変換を説明したが、逆に塩酸テモカプリルのI型結晶からII型結晶の結晶形変換も可能であり、同様の結晶転移による処理で行うことができる。
かくして得られた塩酸テモカプリルのI型結晶は、X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ)3.80±0.1°、7.58±0.1°、15.22±0.1°、20.46±0.1°及び20.74±0.1°に特徴的回折ピークを有し、その粉末X線回折スペクトルは、図1に示すパターンを有するものである。
また、IRスペクトル(ペースト法)において、波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認め、DSCにおいて、図3に示す180℃付近での吸熱パターンを示すものである。
また、塩酸テモカプリルのII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ)3.70±0.1°、7.40±0.1°、14.86±0.1°、25.46±0.1°及び26.18±0.1°に特徴的回折ピークを有し、その粉末X線回折スペクトルは、図2に示すパターンを有するものである。
また、IRスペクトル(ペースト法)において、波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認めず、DSCにおいて、図4に示す178℃付近での吸熱パターンを示すものである。
本発明にいう粉末X線回折スペクトルとは、RU−200BV型粉末X線回折装置(理学電機社)を用いて以下の条件で測定されるスペクトルをいう。
X線光源:Cu K−ALPHA1/40kV/80mA
オニゴメータ:縦型オニゴメータ
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルタ:使用しない
カウンタモノクロメータ:湾曲結晶モノクロメータ
発散スリット:1deg
散乱スリット:1deg
受光スリット:0.15mm
走査モード:連続
スキャンスピード:2°/min.
スキャンステップ:0.02°
走査軸:2θ
走査範囲:2〜40°
また、IRスペクトルとは、FT/IR−430(日本分光社)を用いて以下の条件で測定されるデータをいう。
測定方法:ペースト法
測定範囲:4000〜500cm−1
分解能:4.0cm−1
スキャン回数:16
さらに、DSCにおける吸熱ピークは、DSC8230(理学電機社)を用いて以下の条件で測定される吸熱ピークをいう。
昇温速度:5℃/min.
雰囲気:窒素
測定温度範囲:30〜200℃
なお、これらの装置を用いて結晶を解析した場合において、それぞれのデータ及びスペクトルパターンが類似するものは、本発明の結晶に含まれるものであり、通常の測定方法では検出できない程度の量のII型結晶が含まれるI型結晶も、本発明のI型結晶に包含されるべきものであり、また逆に、通常の測定方法では検出できない程度の量のI型結晶が含まれるII型結晶も、本発明のII型結晶に包含されるべきものである。
さらに、粉末X線回折スペクトルデータは、その性質上、結晶の同一性の認定においてはブラッグ角(2θ)や、全体的なパターンが重要であり、相対的強度は結晶成長の方向、結晶粒子の大きさ、測定条件によって多少変化し得るものである。また、DSC、IRスペクトルにおいても、結晶の同一性の認定においては、その全体的なパターンが重要であり、測定条件によって多少変化し得るものである。
したがって、本願発明の塩酸テモカプリルのI型結晶及びII型結晶のそれぞれは、本明細書に記載の物理化学的性質によって特定されるべきものであるが、各スペクトルデータは、その性質上多少変化しうるものであり、厳密に解されるべきではなく、多少の変化はその許容の範囲内のものであると解釈され、本発明の権利範囲に包含されるべきものである。
本発明が提供する医薬組成物においては、上記した塩酸テモカプリルのI型結晶を含有する医薬組成物が好ましい。
すなわち、これまで臨床的に使用されている塩酸テモカプリルについては、結晶多形は存在しないとされていたが、本発明者等の検討では、結晶多形が存在し、その上、臨床的に使用されている塩酸テモカプリルは本発明にいうI型結晶であることが判明した。
その含有量は、ACE阻害剤、特に胆汁・腎排泄型ACE阻害剤としての有効量であればよく、具体的には、高血圧症、腎実質性高血圧症、血管性高血圧症への有効投与量、例えば、1mg、2mg並びに4mg含有錠剤として剤形化することができる。
かかる製剤の調製にあっては、汎用されている製剤添加物、製剤化技術を用いて行うことができ、臨床的に提供されている塩酸テモカプリルを含有する製剤、例えば錠剤の配合処方を参考にして、目的とする、塩酸テモカプリルのI型結晶の1mg、2mg並びに4mg含有錠剤を調製することができる。
以下に本発明を実施例により、より詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。
実施例1:塩酸テモカプリルの製造
特公平7−113020号公報に記載の方法に準じて塩酸テモカプリルを調製した。
α−{6(R)−[1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピルアミノ]−5−オキソ−2(S)−(2−チエニル)ペルヒドロ−1,4−チアゼピン−4−イル}酢酸 tert−ブチルエステルを4N塩化水素・CPME(シクロペンチルメチルエーテル)に溶かし、15時間室温で攪拌した。溶媒を留去して、残留物に酢酸エチルを加えると塩酸テモカプリルが結晶として析出した。
かくして得た結晶を濾取し、乾燥することにより塩酸テモカプリルの結晶を得た。
実施例2:塩酸テモカプリルのII型結晶の調製
上記の実施例1で調製された塩酸テモカプリルの結晶10gを、N,N−ジメチルアセトアミド13mLに25℃にて溶解させ、この溶液を濾過し、濾液に酢酸エチル130mLを加え、析出した結晶を濾取して、乾燥することにより塩酸テモカプリルのII型結晶を得た。
このII型結晶の粉末X線回折スペクトルは、図2に示すパターンを有するものであり、ブラッグ角(2θ)3.70±0.1°、7.40±0.1°、14.86±0.1°、25.46±0.1°及び26.18±0.1°に特徴的回折ピークを有するものであった。
また、IRスペクトル(ペースト法)において、波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認めず、DSCにおいて、図4に示す178℃付近での吸熱パターンを示すものであった。
実施例3:塩酸テモカプリルのI型結晶の調製
上記実施例2で得た塩酸テモカプリルのII型結晶10gを、アセトン70mL中に懸濁させ、温度60℃にて攪拌処理することによる結晶形変換を行い、その後25℃まで冷却させ、結晶を濾取して、乾燥することにより塩酸テモカプリルのI型結晶を得た。
このI型結晶の粉末X線回折スペクトルは、図1に示すパターンを有するものであり、ブラッグ角(2θ)3.80±0.1°、7.58±0.1°、15.22±0.1°、20.46±0.1°及び20.74±0.1°に特徴的回折ピークを有するものであった。
また、IRスペクトル(ペースト法)において、波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認め、DSCにおいて、図3に示す180℃付近での吸熱パターンを示すものであった。
実施例4:塩酸テモカプリルのII型結晶の調製
上記実施例3で得た塩酸テモカプリルのI型結晶10gを上記実施例2と同様の方法により、塩酸テモカプリルのII型結晶を得た。
本発明によれば、塩酸テモカプリルについて結晶多形であるI型結晶並びにII型結晶が提供される。これまで臨床的に使用されてきた塩酸テモカプリルについて結晶多形は存在しないものとされていたが、本発明により結晶多形が存在することを明らかにしたものであり、より純品の塩酸テモカプリルが提供されることにより、臨床的により効果的な薬効を示す塩酸テモカプリルが提供される点で、産業上の利用性は多大なものである。
I型結晶の粉末X線回折パターンを示す図である。 II型結晶の粉末X線回折パターンを示す図である。 I型結晶のDSCを示す図である。 II型結晶のDSCを示す図である。

Claims (2)

  1. α−{6(R)−[1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピルアミノ]−5−オキソ−2(S)−(2−チエニル)ペルヒドロ−1,4−チアゼピン−4−イル}酢酸モノハイドロクロライド(以下、「塩酸テモカプリル」と記載する)の結晶を、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドからなる極性溶媒に溶解させ、そこに非極性溶媒であるエステル系溶媒を添加することにより塩酸テモカプリルの溶解度を下げて結晶を得ることを特徴とする、粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ)3.70±0.1°、7.40±0.1°、14.86±0.1°、25.46±0.1°及び26.18±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日本薬局方一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm1付近に吸収を認めない、塩酸テモカプリルのII型結晶の製造方法。
  2. 請求項1により製造された塩酸テモカプリルのII型結晶を、ケトン系溶媒中溶解させることなく25〜80℃の結晶転移温度で結晶形変換を行うことを特徴とする、粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ)3.80±0.1°、7.58±0.1°、15.22±0.1°、20.46±0.1°及び20.74±0.1°に特徴的回折ピークを有し、日本薬局方一般試験法「赤外線吸収スペクトル測定法(ペースト法)」による波長1496cm−1及び755cm−1付近に吸収を認める、塩酸テモカプリルのI型結晶への変換方法。
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