<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置10の要部の構成が分解斜視図により示されており、図2にはウエビング巻取装置10の要部の構成が正面断面図により示されている。
図2に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は背板14を備えている。背板14の幅方向一方の端部からは背板14の厚さ方向一方の側へ向けて脚板16が延出されており、背板14の幅方向他方の端部からは背板14に対する脚板16の延出方向へ向けて脚板(図示省略)が延出されている。背板14の幅方向一方の端部から延出された脚板16と背板14の幅方向他方の端部から延出された脚板(図示省略)との間にはスプール18が設けられている。図1に示されるように、スプール18は軸方向が背板14の幅方向に沿った円筒形状とされている。
このスプール18には長尺帯状に形成されたウエビングベルト20の長手方向基端側が係止されており、スプール18がその軸周りの一方である巻取方向に回転するとウエビングベルト20が長手方向基端側からウエビングベルト20の外周部に巻取られる。これに対し、ウエビングベルト20をその先端側へ引っ張ると、スプール18に巻取られているウエビングベルト20がスプール18から引出されつつ、ウエビング巻取装置10が巻取方向とは反対の引出方向に回転する。
一方、上記の背板14の幅方向に沿った脚板16の外側にはテンションリデューサ22を構成するケース24が設けられている。ケース24は厚さ方向が脚板16の厚さ方向に沿った板状の基部26を備えており、この基部26がねじ等の締結固定手段やぎぼしピン等の嵌合固定手段によって脚板16に固定される。この基部26には所定形状の孔が形成されており、この孔の縁に沿った環状の周壁28が基部26の脚板16とは反対側へ向けて形成されている。この周壁28の基部26とは反対側の端部には中壁30が周壁28から連続して形成されている。中壁30は厚さ方向が基部26の厚さ方向に沿った板状とされており、中壁30よりも基部26側で周壁28に囲まれた空間は巻取スプリングユニット収容部32(図1参照)とされている。
この巻取スプリングユニット収容部32の内側には巻取スプリングユニット40が配置されている。巻取スプリングユニット40は保持体としてのスプリングカバー42を備えている。スプリングカバー42は平板状の底壁44を備えている。この底壁44の外周部からは脚板16側へ向けて周壁46が立設されており、スプリングカバー42は全体的に脚板16側へ向けて開口した箱形状とされている。このスプリングカバー42の外周形状は巻取スプリングユニット収容部32の内周形状(すなわち、周壁28の内周形状)よりも僅かに小さく、スプリングカバー42は巻取スプリングユニット収容部32の内側でケース24に対して回り止とめされた状態で嵌め込まれている。
スプリングカバー42の内側には、スプール付勢手段としての巻取スプリング50が設けられている。巻取スプリング50は渦巻き方向外側から渦巻き方向内側への向きが引出方向とされたぜんまいばねにより構成されている。巻取スプリング50の渦巻き方向外側の端部近傍では巻取スプリング50が逆向きに折り返されて係止部52が形成されており、底壁44から脚板16側へ向けて立設された係止壁54に係止されている。これに対して、巻取スプリング50の渦巻き方向内側の端部は連結部材として回転伝達手段を構成するのアダプタ56の外周部に係止されている。
アダプタ56はスプール18に対して略同軸とされた円柱形状に形成されており、スプール18における軸方向脚板16側の端部と対向するアダプタ56の端部には、スプール18に対して同軸的にスプール18から突出形成された連結軸部58が嵌まり込む嵌合孔60が形成されており、連結軸部58が嵌合孔60に嵌り込むことでスプール18に対するアダプタ56の相対回転が不能な状態でスプール18とアダプタ56とが繋がる。
このため、ウエビングベルト20をその先端側へ引っ張ってスプール18を引出方向へ回転させると巻取スプリング50の渦巻き方向内側の端部が渦巻き方向外側の端部に対して引出方向に相対回転する。このようにして巻取スプリング50が巻き締められることでスプール18を巻取方向に付勢すると共に、巻取スプリング50の渦巻き方向外側端部に対する渦巻き方向内側端部の引出方向への相対回転量が多いほど上記の付勢力が増大する。
この巻取スプリング50が収容されたスプリングカバー42の開口側にはシート62が設けられている。シート62は厚さ方向が脚板16の厚さ方向に沿った板状とされている。このシート62には貫通孔64が形成されており、上記のアダプタ56が通過する。また、シート62の外周一部からは嵌合片66が延出されている。嵌合片66に対応して上記の背板14には嵌合孔68を有する嵌合部70が形成されており、嵌合部70の嵌合孔68に嵌合片66を嵌合させることでシート62が背板14に一体的に取り付けられ、背板14における巻取スプリングユニット収容部32の開口側やスプリングカバー42の開口側が閉止される。
一方、背板14の中壁30には所定形状の孔部82が形成されている。さらに、中壁30の脚板16とは反対側の面からは孔部82の縁に沿った周壁84が形成されている。この周壁84の中壁30とは反対側の端部は底壁86により閉止されており、底壁86よりも中壁30側における周壁84の内側はリデューススプリングユニット収容部88とされ、このリデューススプリングユニット収容部88にはリデューススプリングユニット90が収容されている。リデューススプリングユニット90は、ばね収容部並びに回転体としてのラチェットギヤ92を備えている。
ラチェットギヤ92は厚さ方向が底壁86の厚さ方向に沿った板状の底壁部94を備えている。底壁部94の中央にはボス96が形成されている。ボス96は底壁86側へ向けて開口した有底筒形状に形成されており、その軸方向中間部よりも一方の側(ボス96の開口側)は底壁部94の底壁86側へ突出し、ボス96の軸方向中間部よりも他方の側(ボス96の底部98側)は底壁部94の脚板16側に突出している。
ボス96の内周形状は円形である外周形状に対して同軸の円形に形成されている。さらに、この底部98にはボス96の内周形状に対して同軸の貫通孔100が形成されている。この貫通孔100は底部98を貫通しているのみならず、底部98の脚板16側の面での開口端へ向けて漸次内径寸法が小さくなる円錐台形状とされている。
図1及び図2に示されるように、このボス96に対応してケース24の底壁86には円筒部として第1支持手段及び第2支持手段の双方を構成する軸受部102が形成されている。軸受部102はケース24を脚板16に取り付けた状態でスプール18に対して同軸状となる円筒形状に形成されている。但し、軸受部102の先端側はボス96の底部98に形成された貫通孔100に対応して先端へ向けて漸次外径寸法が小さくなる円錐台形状となっている。リデューススプリングユニット収容部88内にラチェットギヤ92を配置した状態で軸受部102の内側にはボス96が入り込み、ボス96によってラチェットギヤ92が回転自在に支持される。さらに、ボス96の内側にはスプール18に対して同軸状に円柱形状にアダプタ56に一体に形成された軸受部102が入り込み、軸受部102(すなわち、アダプタ56)が回転自在に支持されている。
底壁部94の外周部にはリング状のラチェット部106が形成されており、ラチェットギヤ92は全体的に脚板16側へ向けて開口した盆形状(軸方向寸法が比較的短い有底筒形状)とされている。ラチェット部106の径方向外側(本実施の形態ではラチェット部106の下方)にはソレノイド110が設けられている。ソレノイド110は制御手段としてのECUを介して車両に搭載されたバッテリーに電気的に接続されている。さらに、このECUは本ウエビング巻取装置10と共にシートベルト装置を構成するバックル装置に設けられたバックルスイッチに電気的に接続されており、上記のウエビングベルト20に設けられたタングプレートがバックル装置に装着されたことをバックルスイッチが検出すると、ECUがソレノイド110を通電状態する。このようにソレノイド110が通電状態になるとソレノイド110は磁界を形成する。
また、このソレノイド110にはプランジャ112が設けられている。プランジャ112は磁性体によって棒状に形成されており、その長手方向基端側はソレノイド110に入り込んでいる。上記のようにソレノイド110が通電されるとソレノイド110が形成する磁界によってプランジャ112は更にソレノイド110の内側に引き込まれるようになっている。このプランジャ112の先端側にはパウル114が設けられている。パウル114が円筒部116を備えている。円筒部116は軸方向がスプール18の軸方向と同じ向きとされている。この円筒部116には少なくとも一端がシート62及びケース24の少なくとも何れか一方に保持された軸部118(図2参照)が通過し、軸部118周りにパウル114が回動可能に支持されている。この円筒部116の外周一部からは回転規制片120が延出されている。
図3に示されるように、パウル114が軸部118周りの一方である係合方向へ回動すると、回転規制片120の先端はラチェット部106の外周部に接近してラチェット部106のラチェット歯に係合する。このように回転規制片120の先端がラチェット部106のラチェット歯に係合した状態では、ラチェットギヤ92の巻取方向への回転が規制される。また、円筒部116の外周一部からは連結片122が延出されている。パウル114はこの連結片122にてパウル114がプランジャ112に繋がっており、プランジャ112がソレノイド110に引き込まれると連結片122がプランジャ112に引っ張られて軸部118周りにパウル114が係合方向へ回動する。また、このパウル114にはリターンスプリング124の一端が係止されており、パウル114は係合方向とは反対方向に付勢され、ソレノイド110が通電されなければ回転規制片120の先端側がラチェット部106の外周部から離間した状態で維持される。
一方、図1に示されるように、ラチェットギヤ92のラチェット部106は底壁94よりも厚く、このため、ラチェット部106の内側にはスプリングカバー42側へ向けて開口したばね収容孔126が形成されている。このばね収容孔126の内側(すなわち、底壁部94の脚板16側でラチェット部106の内側)には、リデューススプリングユニット90を構成する渦巻きばねとしてのリデュースバランススプリング130が配置されている。リデュースバランススプリング130は巻取スプリング50よりも付勢力が弱く、しかも、渦巻き方向外側から渦巻き方向内側への向きが巻取方向とされたぜんまいばねにより構成されている。
このリデュースバランススプリング130が収容されるばね収容孔126の開口縁からは、ばね収容孔126の開口径方向内側へ向けて干渉部132が突出形成されており、更に、ばね収容孔126の底壁には干渉部132の各々に対応する孔134が形成されている。これらの孔134はラチェットギヤ92を成形するにあたり、各干渉部132を形成するためのコアが通過する孔として形成される。
ここで、図5にはばね収容孔126の半径方向内側から干渉部132を見た概略的な拡大正面図が示されており、図6には図5の6−6線に沿った拡大断面図が示されている。図6に示されるように、ばね収容孔126の開口縁からの干渉部132の突出寸法は、リデュースバランススプリング130の厚さ以上とされており、干渉部132の先端部は少なくともリデュースバランススプリング130の最外層部よりもばね収容孔126の開口半径方向内側に達している。
また、干渉部132は底壁部94側の面がラチェットギヤ92の軸方向に沿った底壁部94への向きに対してラチェットギヤ92の回転半径方向内方側へ傾斜しており、ばね収容孔126の開口縁からの干渉部132の突出方向へ向けて漸次底壁部94から離間している。このため、少なくとも干渉部132の先端部近傍では、通常の状態でリデュースバランススプリング130から離間している。
さらに、図5に示されるように、干渉部132の底壁部94側の面は底壁部94とは反対側を曲率の中心として底壁部94側へ張り出すように湾曲した曲面とされている。
図3及び図4に示されるように、リデュースバランススプリング130における渦巻き方向外側の端部近傍では、半径方向内方で且つ渦巻き方向内方側に折り曲げられている。このリデュースバランススプリング130の渦巻き方向最外層の部分(渦巻きの最も外側の部分)と最外層から2番目の部分(渦巻きの外側から2番目の部分)との間にはリデューススライドスプリング140が配置されている。リデューススライドスプリング140は長手方向がリデュースバランススプリング130の周方向に沿い幅方向がスプール18の軸方向に沿った細幅板状に形成されている。リデュースバランススプリング130の渦巻き方向内側端の側を曲率の中心として幅方向を軸方向とする軸周りに湾曲している。
さらに、図2から図4に示されるように、リデュースバランススプリング130の渦巻き方向最内層の部分(渦巻きの最も内側の部分)の更に内側には、回転伝達部材として回転伝達手段を構成するクラッチ150が設けられている。クラッチ150はスプリングケース152を備えている。スプリングケース152は脚板16の側へ向けて開口した有底の円筒形状に形成されている。ラチェットギヤ92の底壁部94に形成されたボス96のうち、底壁部94よりも脚板16側に位置する部分により、ラチェットギヤ92に対して同軸的に相対回転可能に支持されている。
このスプリングケース152の底壁にはアダプタ56の軸部104が貫通しており、軸部104に対して同軸的に相対回転自在に軸部104に支持されていると共に、図3及び図4に示されるように、スプリングケース152にはリデュースバランススプリング130の渦巻き方向内側の端部が係止されている。
また、図1に示されるように、クラッチ150はクラッチホイール154を備えている。クラッチホイール154は円筒形状のクラッチ壁156を備えており、このクラッチ壁156が軸受部102に対して同軸の状態でスプリングケース152の内側に入り込み、この状態でクラッチホイール154がスプリングケース152に組み付いている。また、クラッチホイール154にはアダプタ56の本体部分と軸受部102との間に介在する非円形の回り止め部158が貫通しており、クラッチホイール154のアダプタ56に対する相対回転が規制されている。
上記のスプリングケース152の内側で且つクラッチ壁156の外側にはクラッチスプリング160が配置されている。クラッチスプリング160は軸方向がスプール18の軸方向と同じ向きとされたコイル状に形成されており、その一端はスプリングケース152に係止されている。クラッチスプリング160を円筒形状とみなした場合、その内径寸法はクラッチ壁156の外径寸法に略等しく、クラッチスプリング160はクラッチ壁156の外周部に摺接している。さらに、このクラッチスプリング160は、他端側が一端側に対して巻取方向に変位することで巻き締まるようにコイルの巻き回し方向が設定されている。
<本実施の形態の作用、効果>
次に本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
(テンションリデューサ22の動作)
本ウエビング巻取装置10では、車両のシートに着座した乗員が身体にウエビングベルト20を装着するためにウエビングベルト20をその先端側へ引っ張ってウエビングベルト20をスプール18から引出すと、スプール18が引出方向に回転する。スプール18が引出方向に回転すると、アダプタ56が引出方向に回転して巻取スプリング50の渦巻き方向内側端部を渦巻き方向外側端部に対して引出方向に回転させる。これにより、巻取スプリング50が巻き締まり、アダプタ56を介してスプール18を巻取方向へ付勢する付勢力が漸次増加する。
また、このようにアダプタ56が引出方向に回転することでクラッチホイール154が引出方向に回転する。クラッチホイール154のクラッチ壁156の外周部にはクラッチスプリング160が摺接しているので、クラッチ壁156の外周部とクラッチスプリング160との摩擦によりクラッチスプリング160がクラッチ壁156と共に引出方向に回転すると、クラッチスプリング160の一端が係止されたスプリングケース152が引出方向に回転する。
スプリングケース152にはリデュースバランススプリング130の渦巻き方向内側端部が係止されているので、スプリングケース152が引出方向に回転するとリデュースバランススプリング130の渦巻き方向内側端部が引出方向に回転する。リデュースバランススプリング130の最外層はリデュースバランススプリング130の弾性やリデューススライドスプリング140の弾性でラチェットギヤ92のラチェット部106に圧接しているので、リデュースバランススプリング130の渦巻き方向内側端部が引出方向に回転すると、リデュースバランススプリング130の最外層が引出方向に回転し、更に、リデュースバランススプリング130の最外層とラチェット部106の内周部との摩擦でラチェットギヤ92が引出方向に回転する。すなわち、この状態では、スプール18の引出方向への回転力がラチェットギヤ92まで伝わったとしてもラチェットギヤ92は引出方向へ回転するだけであり、リデュースバランススプリング130に特に変化が生じない。
次いで、ウエビングベルト20が充分に引出されて乗員の身体に掛け回され、更に、ウエビングベルト20に設けられたタングがバックル装置に装着されると、バックル装置に設けられたバックルスイッチからの電気信号に基づきECUがソレノイド110を通電状態にする。ソレノイド110が通電されることで形成された磁界によりプランジャ112がソレノイド110に引き込まれると、プランジャ112の先端側に連結片122が係合しているパウル114がリターンスプリング124の付勢力に抗して係合方向に回動する。これにより、パウル114の回転規制片120がラチェット部106の外周部に形成されたラチェット歯に係合すると、ラチェットギヤ92の巻取方向への回転が規制される。
この状態で、乗員がウエビングベルト20を引出すためにウエビングベルト20に付与していた引っ張り力が解消されると(乗員がウエビングベルト20の引っ張りをやめると)、巻取スプリング50がその付勢力でアダプタ56を介してスプール18を巻取方向へ回転させてウエビングベルト20の弛みを解消させる。アダプタ56が巻取方向に回転させられることで、クラッチホイール154が巻取方向に回転すると、クラッチ壁156との摩擦でクラッチスプリング160の他端が巻取方向に回転し、これにより、クラッチスプリング160が巻き締まる。
クラッチスプリング160が巻き締まることでクラッチスプリング160とクラッチ壁156との摩擦が増大すると、クラッチスプリング160全体がクラッチ壁156(すなわち、クラッチホイール154)と共に巻取方向に回転する。クラッチスプリング160が巻取方向に回転することでスプリングケース152が巻取方向に回転すると、スプリングケース152に係止されているリデュースバランススプリング130の渦巻き方向内側端部が巻取方向に回転する。
リデュースバランススプリング130はその最外層がリデュースバランススプリング130の弾性やリデューススライドスプリング140の弾性でリデューススプリングユニット90のラチェット部106に圧接しており、しかも、上記のようにラチェットギヤ92の巻取方向への回転が規制されているので、この状態でリデュースバランススプリング130の渦巻き方向内側端部が巻取方向に回転しても、リデュースバランススプリング130の最外層はラチェット部106の内周部との摩擦で回転しないか、又は、渦巻き方向内側端部よりも回転量が少ない。
リデュースバランススプリング130は渦巻き方向外側から渦巻き方向内側への向きが巻取方向とされている。このため、リデュースバランススプリング130は渦巻き方向内側端部が渦巻き方向外側端部に対して相対的に巻取方向に回転すると、リデュースバランススプリング130が巻き締められて渦巻き方向内側端部を引出方向に回転させようとする付勢力が増大する。
このようにして生じた(増大した)リデュースバランススプリング130の付勢力はリデュースバランススプリング130の渦巻き方向内側端部が係止されたスプリングケース152を巻取方向に回転させようとする力、すなわち、巻取スプリング50の付勢力に抗することになる。
さらに、リデュースバランススプリング130がスプリングケース152の外周部に全密着するまで巻き締められると、この状態以降にスプリングケース152を介してリデュースバランススプリング130に伝わる巻取方向への回転力でリデュースバランススプリング130の最外層とリデューススライドスプリング140とが一体となって回転する。
このようにして巻取スプリング50の付勢力の一部又は全部がリデュースバランススプリング130の付勢力で相殺されることで、スプール18を巻取方向に回転させようとする力が減少し、乗員の身体に装着されているウエビングベルト20をその基端側へ引っ張る力が減少する。これにより、ウエビングベルト20が乗員に付与する締め付け(静的締付力)が軽減される。
また、ウエビングベルト20を装着した乗員の身体が移動すると、ウエビングベルト20が引き出される。ウエビングベルト20が引き出されることでスプール18が引出方向に回転すると巻取スプリング50が巻き締められ、スプール18を巻取方向に付勢する力、ひいては、ウエビングベルト20を引っ張って乗員の身体を締め付ける力が増加する。しかしながら、本ウエビング巻取装置10では、リデュースバランススプリング130の付勢力が巻取スプリング50の付勢力を相殺するので、乗員の身体が移動してウエビングベルト20を引っ張った際のウエビングベルト20の締付力(動的締付力)の増加を抑制できる。
一方、乗員がバックル装置からタングを抜き取ると、バックルスイッチからの電気信号に基づきECUがソレノイド110に対する通電を解除する。これにより、ソレノイド110の周囲に形成されていた磁界が解消されると、リターンスプリング124の付勢力でパウル114が係合方向とは反対向きに回動してプランジャ112がソレノイド110から突出する。
このように、リターンスプリング124の付勢力でパウル114が係合方向とは反対向きに回動すると、パウル114の回転規制片120とラチェット部106のラチェット歯との係合が解消される。この状態では、ラチェットギヤ92の回転が規制されていないので、この状態で巻き締められているリデュースバランススプリング130の付勢力でラチェットギヤ92が回転させられつつリデュースバランススプリング130の巻き締めが開放される。
このようなリデュースバランススプリング130の巻き締めが開放された直後やリデュースバランススプリング130の巻き締めの開放が終了してラチェットギヤ92の回転が停止した直後等の衝撃でリデュースバランススプリング130の最外層部がばね収容孔126の開口側へ変位すると、干渉部132の底壁部94側の面がリデュースバランススプリング130の最外層部に干渉する。これにより、リデュースバランススプリング130の最外層部がばね収容孔126のから抜け出ることを防止又は抑制できる。
また、ばね収容孔126の開口側へ変位したリデュースバランススプリング130の最外層部は干渉部132に干渉されることで干渉部132の底壁部94側の面からの反力を受ける。ここで、上記のように干渉部132の底壁部94側の面は、干渉部132の先端側へ向けて漸次底壁部94から離間するように傾斜している。このため、上記の反力はラチェットギヤ92の軸方向底壁部94側への向きに対してラチェットギヤ92の回転半径方向内方へ傾く。この反力を受けたリデュースバランススプリング130の最外層部はラチェットギヤ92の回転半径方向内方側へ弾性変形する。
ばね収容孔126の開口側へのリデュースバランススプリング130の変位がおさまると、上記のように弾性変形しているリデュースバランススプリング130の最外層部は元の形状に復元しようとする。このリデュースバランススプリング130の最外層部の復元に際してリデュースバランススプリング130の最外層部は干渉部132の底壁部94側の面に案内されてラチェット部106の内周部に接近しつつ底壁部94側へ変位する。
これにより、ばね収容孔126の開口側へ変位する前の位置にリデュースバランススプリング130の最外層部が戻る。このように、ばね収容孔126の開口側へ変位したリデュースバランススプリング130の最外層部は元の位置に戻るので、干渉部132を常にリデュースバランススプリング130の最外層部に当接させておかなくてもよい。このため、通常の状態では、干渉部132とリデュースバランススプリング130の最外層部との間に摩擦が生じないので、リデュースバランススプリング130の巻き締めや巻き締めの開放を円滑にできる。
また、干渉部132の底壁部94側の面は、上記のように傾斜し、ており、しかも、底壁部94とは反対側を曲率の中心として底壁部94側へ張り出すように湾曲した曲面とされているので、干渉部132に対するリデュースバランススプリング130の最外層部の接触は点接触になる。このため、干渉部132にリデュースバランススプリング130の最外層部が接触しても摩擦抵抗は小さい。更に言えば、干渉部132はリデュースバランススプリング130の最外層部の極一部にのみ対応して設けられており、この意味でも、干渉部132に対するリデュースバランススプリング130の最外層部の接触面積は小さくなり、摩擦抵抗も小さく、リデュースバランススプリング130の巻き締めや巻き締めの開放を円滑にできる。
なお、本実施の形態では、テンションリデューサ22のリデュースバランススプリング130に対応してラチェットギヤ92に干渉部132を設けた構成であったが、巻取スプリング50に対応してスプリングカバー42の周壁46の開口縁に干渉部132を設けてもよい。また、テンションリデューサ22を備えない構成のウエビング巻取装置においてスプールを巻取方向に付勢する渦巻きばね(本実施の形態における巻取スプリング50に対応する構成)を含めて、ウエビング巻取装置に適用される様々な渦巻きばねに対応して干渉部132を設けてもよい。