JP5446351B2 - 燃料と有機化合物水溶液を使用する高温燃焼方法及び装置 - Google Patents

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本発明は、有機化合物水溶液の燃焼方法及び装置に係り、特にアルコール水溶液等の有機化合物水溶液と燃料を使用する高温燃焼方法及び装置に関する。
従来、液体燃料を用い、有機化合物を含む加水燃料を添加して燃焼する方法において、有機化合物水溶液(以下、原水と称す)の有機化合物としては、アルコール類、有機酸類、アルデヒトケトン類等があり、原水の一例として産業廃棄物である有機廃水が挙げられる。
この原水を燃焼させる場合、二重管型の二流体バーナを使い外管のバーナで重油等を燃焼させながら、内管のバーナ口から原水を徐々に添加して燃焼させる場合が多い。この方法は、重油で有機廃水の水を蒸発させながら中に含まれる有機化合物を酸化処理する方法であり、エネルギー的には殆ど寄与しておらず、単なる廃水処理として行われている。
また、原水に重油等を添加・混合して、油中水滴型(W/O)のエマルジョンを作り、燃料として処理する方法があるが、原水中の有機化合物を燃料として利用できるが、特に効率よく燃焼するわけでもない。
エマルジョンタイプの加水燃料を燃焼する場合、焼却炉や内燃機関に使用するのは殆どが油中水滴型(W/O型)エマルジョンである。これは油中水滴型の方が油が表面に出るので、火が付き易いというメリットがある。水中油滴型(O/W型)では油が水の中に微粒子として含まれるので、火がつきにくいという問題がある。
しかし、石油類と水の熱伝導率を調べてみると、360°K(87℃)において水は0.674W/mk、石油の一形態のデカン(C1022 )は0.119W/mkで水の方が5.6倍の熱伝導率を持っていることが解る(非特許文献1:参照。)
ところで、水蒸気爆発の条件として熱の急速な移動ができないと水蒸気爆発は起こらない。したがって、全く同じ条件では、O/W型の方がW/O型より約5倍の早さで熱が移動するので、水蒸気爆発が起こり易い筈である。
また、水蒸気爆発は、溶鉄が水槽に落下した時や、地下水がマグマと接触したときに起きるとされている(非特許文献2:参照)。
W/O型エマルジョンを噴霧してもエマルジョンの表面は油に覆われているので、熱の伝導率は小さく、しかも油の表面には油の蒸気膜で覆われているので(一般に気体の熱伝導率は液体の1/10以下になる)、水蒸気爆発の起こる確率は非常に低くなる。
特開2008−81740号公報 特開2004−211970号公報
「化学便覧基礎編II」(丸善株式会社昭和59年6月25日発行、第73頁) 「蒸気爆発の科学」(高島武雄・飯田嘉宏共著/株式会社裳華房1998年1月25日発行、第28〜57頁)
本願発明は、これらの知見を元に、確実に水蒸気爆発(噴霧状の粒子などの微爆発とした)が起こる条件を設定し、分解しないまでも結合を緩め水蒸気微爆発のエネルギーを利用して水に含有される有機化合物を一部分解し、水分子との水性ガス反応、空気との酸化反応を促進して燃焼効率の増加を図るものである。
まず、水蒸気微爆発の起こる条件としては原水を瞬時に高温に昇温することであり、例えば高温の固体表面に衝突させて水蒸気微爆発を発生させることである。高温気体中に噴霧しても噴霧した水滴は表面に水蒸気膜ができて熱の移動を阻止するので水蒸気微爆発は起こりにくい(水の熱伝導度は87℃で0.674W/mkに対し、水蒸気の熱伝導度は100℃で0.025W/mkで水蒸気の熱伝導度は水の約27分の1である)。
水蒸気微爆発が起こらないと原水中に含まれる有機化合物と水蒸気による単なる水性ガス反応と空気による酸化反応だけとなり、燃焼効率の大幅な向上は望めない。本発明によれば、水蒸気微爆発により原水中に含まれる有機化合物の一部分解と結合の緩みが生じ、水性ガス反応、酸化反応が進んで、水性ガス反応の吸熱反応が減少し(結合が緩んだり、切れたりすると吸熱反応が小さくなる)、結果的に燃焼効率が増大する。実際にアルコール10%水溶液を850℃に加熱した穴をあけた鉄製耐熱反射板に噴霧したところ、鉄製耐熱反射板が溶融して溶融塊となってしまうので、水蒸気微爆発と水性ガス反応、酸化反応が同時に起き、一気に温度が上昇したものと想定される。
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究の結果、次の手段によりこの課題を解決した。
[1] 燃焼炉内において、(1)第1バーナにより燃料を噴霧燃焼して、燃焼炉内に配設された多数の透通孔を備えた耐熱反射体を700℃以上に加熱する工程と、(2)次いで第2バーナにより水に溶解するアルコール類、有機酸類、アルデヒト類、又はケトン類から選択されるいずれか1種又は2種以上の有機化合物水溶液である有機化合物水溶液を前記第1バーナによる高温燃焼ガス中に噴霧して混合させ、かつ前記加熱した耐熱反射体表面に衝突させ、炉内温度を更に高温に昇温する工程とからなることを特徴とする燃料と有機化合物水溶液を使用する高温燃焼方法。
[2] 多数の透通孔を備えた耐熱反射体が、セラミック製であることを特徴とする前記[1]に記載の有機化合物水溶液の燃焼方法。
[3] 第1バーナにより噴霧される燃料が、灯油、軽油等の石油類、アルコール等の有機溶媒、都市ガス、LPG、天然ガス、水素ガス又はブラウンガスから選択されるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする前記[1]又は[2]のいずれか1項に記載の有機化合物水溶液の燃焼方法。
[4] 燃焼炉1と、それに取り付けられた炉内に燃料を噴霧して燃焼して炉内温度を700℃以上の高温にするための第1バーナ2と、燃焼炉内に配設され、前記第1バーナにより燃料を噴霧燃焼して700℃以上に加熱される多数の透通孔を備えた耐熱反射体4と、第1バーナに隣接して取り付けられ、水に溶解するアルコール類、有機酸類、アルデヒト類、又はケトン類から選択されるいずれか1種又は2種以上の有機化合物水溶液である有機化合物水溶液を
前記第1バーナによる高温燃焼ガス中に噴霧して混合させ、炉内温度を更に高温に昇温するための第2バーナ3とを備えてなることを特徴とする燃料と有機化合物水溶液を使用する高温燃焼装置。
[5] 多数の透通孔を備えた耐熱反射体が、セラミック製であることを特徴とする前記[4]に記載の有機化合物水溶液の燃焼装置。
燃焼炉内において、(1)第1バーナにより燃料を噴霧燃焼して、燃焼炉内に配設された多数の透通孔を備えた耐熱反射体を700℃以上に加熱する工程と、(2)次いで第2バーナにより水に溶解するアルコール類、有機酸類、アルデヒト類、又はケトン類から選択されるいずれか1種又は2種以上の有機化合物水溶液である有機化合物水溶液を前記第1バーナによる高温燃焼ガス中に噴霧して混合させ、かつ前記加熱した耐熱反射体表面に衝突させ、炉内温度を更に高温に昇温する工程とからなる、
本願発明によれば、燃料又は有機化合物水溶液を単独に用いて燃焼する場合に比較して、炉内温度を非常に高温に昇温することができる。よって、燃料及び有機化合物を完全に燃焼させることができる。
本願発明の第1実施例の装置の断面図、 本願発明の第2実施例の装置の断面図、 本願発明の第3実施例の装置の断面図、 本願発明の第4実施例の装置の説明図、 本願発明の第5実施例の装置の断面図、 本願発明の第6実施例の装置の断面図、 本願発明の第7実施例の装置の断面図、 本願発明の第1実施例の装置を用いた炉内温度の変化グラフ図、
1:燃焼炉の炉体、
2:第1バーナ、
3:第2バーナ、
4、5、6、7、8、9、10、11:耐熱反射体、
12:温度計、
13:電磁誘導コイル、
14:電極、
本発明の実施の形態を図面及び実施例に基づいて詳細に説明する。
図1〜図7は本願発明の実施例の装置の説明図であり、1は燃焼炉の炉体、2は第1バーナ、3は第2バーナ、4、5、6、7、8、9、10、11は耐熱反射体、12は温度計、13は電磁誘導コイル、14は電極である。
図1は第1実施例の装置を示している。
図1(a)は装置の断面図、(b)及び(c)は耐熱反射板の平面図である。
まず、第1バーナ(燃料バーナ)2から通常、A重油、軽油、灯油など燃料油を炉体1内に噴霧し燃焼する。空気量は完全燃焼させる適量が同燃料とともに供給され、空気比は通常1.3〜1.7程度である。そこで、炉体1内に配設された耐熱反射体(例えば表面にアルミナコーティングされた炭化珪素系セラミック板)4、5が700℃以上の高温に加熱される。なお、4は多数の透通孔4’が穿設された円板、5は同板の周囲に切り欠き部5’を備えた円板である。4又は5はいずれか1種を使用しても、2種を組み合わせて使用してもよい。
次いで、さらに加えて、第2バーナ(有機化合物水溶液噴射バーナ)3から原水(有機化合物含有水)が、炉体1内に第1バーナによる火炎に混合するようにして噴霧され、高温に加熱されている耐熱反射体4、5に突き当たり、耐熱反射体4表面で水蒸気爆発を伴って有機化合物が分解される。
有機化合物水溶液は、第2バーナ3から炉1内に噴霧されるが、その組成は、有機化合物:水の比率=1:0.5〜20の範囲のもの(すなわち、有機化合物含有率は66.7〜5.0%)である。また、第1バーナ2からの灯油噴射量1容量部に対して、第2バーナ3からの有機化合物水溶液噴射量は、1〜5容量部が好ましい。なお、炉1内温度は温度計12により、常時計測されている。
図2は第2実施例の装置を示している。
該例では、通気性立方体よりなる耐熱金属メッシュ体の集合体又はハニカムセラミック体等の耐熱反射体6が炉1内に配設されている。
図3は第3実施例の装置を示している。
該例では、通気性立方体よりなる耐熱磁性体金属メッシュ体の集合体又は又は炭化珪素系セラミックハニカムの耐熱反射体6が炉1内に配設されており、炉1の外周に電磁誘導コイル13が巻回されており、それに高周波電流を通電することで、内部の反射体7が電磁誘導加熱されて昇温する。
図4は第4実施例の装置を示している。(a)は断面図、(b)は底面図であり、14は電極である。
該例では、炉1内に通電による抵抗加熱で発熱する電気抵抗棒8が多数立設されており、電極14からの電力供給により、電気抵抗棒8が加熱される。
図5は第5実施例の装置の断面図である。
該例では、炉1の上方及び側方に第1バーナ2と第2バーナ3を取付け、炉内に耐熱反射板9を斜めに配置し、その後方に耐熱反射体4を垂設してある。
そして、液体燃料と有機化合物水溶液は、第1バーナ2と第2バーナ3とから傾設された耐熱反射体9に向けて互いに直交するようにして噴射され、高温に上昇して燃焼する。燃焼したガス体は耐熱反射体4を通過して炉1外へ導出される。
図6は第6実施例の装置の断面図である。
該例では、炉1の上方及び側方に第1バーナ2取付け、炉内に耐熱反射板9を斜めに配置し、かつ両バーナからの噴射ガスが耐熱反射板9の表面と裏面に当たるように配置し、その後方には耐熱反射体4を垂設してある。
図7は第7実施例の装置の断面図である。
該例では、炉1の上方に第1バーナ2と第2バーナ3を隣接して取付け、炉内1底部に耐熱反射板10及び耐熱性基板11を平置して配置し、かつ両バーナから垂直に噴射ガスを耐熱反射板10に当たるようにする。燃焼した高温ガスはその後方には垂設された耐熱反射体4を通過して炉1外へ導出される。
燃焼方法としては、まず第1バーナ2からA重油等を噴射着火して耐熱反射板4〜10を加熱する。温度計13の温度が水性ガス反応発生の700℃以上、できれば1000℃以上に達したときに原水の噴霧を始める。
原水の噴霧は燃料と同量程度から始めるのがよいが、温度が1000℃に達していれば2〜5倍量程度噴霧しても問題ない。噴霧された原水(有機化合物含有水)は1000℃の温度で耐熱反射板4〜10に衝突し、表面の蒸気膜でなく噴霧水が直接1000℃に加熱された耐熱反射板4〜10から熱を受け水蒸気微爆発を起こす。この場合、原水の代わりにW/O型のエマルジョンでは熱の移動が遅くなり、水蒸気微爆発の可能性は非常に低くなる。
また、O/W型のエマルジョンでは、水の中に石油の粒子が分散した型なので水が直接耐熱反射板4〜10に当たるので水蒸気微爆発は起こり易い。
原水の内メタノールやエタノールを含む水はメタノールやエタノールと共沸混合物を作り、沸点が下がるので水蒸気微爆発が起き易くなる。しかもメタノールやエタノールは水に溶解しているので、しかもアルコールは水のクラスターの内部に入り込んで溶解している、水蒸気微爆発により、アルコールは一部分解や結合が緩み、水性ガス反応と酸化反応が同時に起こり、効率の高い燃焼が実現する。
図8は本願実施例1に示す装置を用いた炉内温度変化を示すグラフ図である。
図1に示す装置を用いて、第1バーナ2から14L/Hの灯油及び空気を炉内に15分間噴霧して、炉内温度を700℃にさせた。次いで第2バーナ3から5.5%濃度及び10%濃度のメタノール水溶液を、耐熱反射体4に向けて10分間噴霧し加熱して、炉内温度変化を測定した。それらの結果を図8に示したが、炉内温度が700℃になった時点で、追加的に第2バーナ3から有機化合物水溶液を噴射すると、700℃から急上昇して瞬時に1100〜1200℃に昇温することが理解される。なお、グラフ図中(a)線は第2バーナ3から10%濃度のメタノール水溶液を追加的に噴霧した場合の炉内の温度上昇曲線、(b)線は5.5%濃度のメタノール水溶液を追加的に噴霧した場合の炉内温度の温度上昇曲線である。
この理由は確実には解明されていないが、700℃に加熱された耐熱反射体にメタノール水溶液の微小液滴が衝突して水蒸気微爆発を起こす。この微爆発は温度が高い程激しいエネルギーを示す。特にメタノールは水とはクラスターを共有して溶解しており、しかも沸点64.7℃と低いので、激しい水蒸気微爆発により、メタノール分子結合は分解ないし結合は緩み、水性ガス反応、酸化反応が急速に進み温度が急上昇したものと考えられる。

Claims (5)

  1. 燃焼炉内において、(1)第1バーナにより燃料を噴霧燃焼して、燃焼炉内に配設された多数の透通孔を備えた耐熱反射体を700℃以上に加熱する工程と、(2)次いで第2バーナにより水に溶解するアルコール類、有機酸類、アルデヒト類、又はケトン類から選択されるいずれか1種又は2種以上の有機化合物水溶液である有機化合物水溶液を前記第1バーナによる高温燃焼ガス中に噴霧して混合させ、かつ前記加熱した耐熱反射体表面に衝突させ、炉内温度を更に高温に昇温する行程とからなることを特徴とする燃料と有機化合物水溶液を使用する高温燃焼方法。
  2. 多数の透通孔を備えた耐熱反射体が、セラミック製であることを特徴とする請求項1に記載の燃料と有機化合物水溶液を使用する高温燃焼方法。
  3. 第1バーナにより燃料を噴霧される燃料が、灯油、軽油等の石油類、アルコール等の有機溶媒、都市ガス、LPG、天然ガス、水素ガス又はブラウンガスから選択されるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の燃料と有機化合物水溶液を使用する高温燃焼方法。
  4. (1)燃焼炉と、(2)それに取り付けられた炉内に燃料を噴霧して燃焼して炉内温度を700℃以上の高温にするための第1バーナと、(3)燃焼炉内に配設され、前記第1バーナにより燃料を噴霧燃焼して700℃以上に加熱される多数の透通孔を備えた耐熱反射体と、(4)第1バーナに隣接して取り付けられ、水に溶解するアルコール類、有機酸類、アルデヒト類、又はケトン類から選択されるいずれか1種又は2種以上の有機化合物水溶液である有機化合物水溶液を前記第1バーナによる高温燃焼ガス中に噴霧して混合させ、炉内温度を更に高温に昇温するための第2バーナとを備えてなることを特徴とする燃料と有機化合物水溶液を使用する高温燃焼装置。
  5. 多数の透通孔を備えた耐熱反射体が、セラミック製であることを特徴とする請求項に記載の燃料と有機化合物水溶液を使用する高温燃焼装置。
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