JP5446347B2 - 転写定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

この発明は、記録媒体上にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、に関するものである。
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置では、転写工程と定着工程とを同時におこなう転写定着装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3等参照。)。
このような転写定着装置を備えた画像形成装置は、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置に比べて、表面性の粗い記録媒体を使用しても画像品質の低下が起こり難いという利点がある。
詳しくは、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置では、表面性の粗い記録媒体を使用すると、中間転写ベルト等の中間転写体が記録媒体の表面性に追従できずに中間転写体と記録媒体との間に微小ギャップが形成されてしまう。そのため、その微小ギャップが形成された部分で異常放電が発生して、中間転写体上に担持された画像が記録媒体上に正常に転写されずに、画像が全体としてボソボソになってしまう。
これに対して、転写定着装置を備えた画像形成装置では、トナー像に対して転写と同時に熱を加えるため、トナーが軟化・溶融して粘弾性を帯びたブロック状の塊になる。そのため、表面性の粗い記録媒体を使用して定着部材と記録媒体との間に微小ギャップが形成されても、その部分に画像が塊として転写されてしまう。したがって、画像は、ボソボソにならずに、良好で高画質なものになる。
さらに、転写定着装置を備えた画像形成装置は、転写定着工程がおこなわれるニップ部(転写定着部材と加圧部材との当接位置である。)に搬送される記録媒体上に未定着のトナー像が担持されないために、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置に比べて、記録媒体の搬送経路に対する制約が少なくなる。すなわち、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置は、定着工程がおこなわれるニップ部(定着部材と加圧部材との当接位置である。)に搬送される記録媒体上に未定着のトナー像が担持されるために、転写部から定着部に至る搬送経路には未定着トナー像に接触しないための制約が課せられる。したがって、転写定着装置を備えた画像形成装置は、記録媒体の搬送経路に対する設計上の自由度が高く、記録媒体の搬送性を高めることができる。
上述した従来の転写定着装置は、トナー像を担持する転写定着部材を加熱してトナー像を加熱・溶融しているために、長寿命化のために転写定着ベルト(転写定着部材)が厚くなったり、大型のタンデム型の画像形成装置に設置するために転写定着ベルトの周長が長くなったりした場合に、転写定着ベルトの熱効率が低下してしまっていた。そのため、転写定着装置における消費エネルギが大きくなっていた。
さらに、従来の転写定着装置は、上述した転写定着ベルトの加熱工程に加えて、作像部の熱的損傷を低減するために転写定着工程後の転写定着ベルトを冷却する冷却工程がおこなわれている場合が多かった。このような加熱・冷却のサイクルが繰り返されるために、転写定着装置における消費エネルギが大きくなっていた。
本願発明者は、このような問題を解決するために研究を重ねた結果、転写定着ベルト(転写定着部材)の加熱を最小限に抑えて、トナーの加熱・溶融に必要な熱量を、ニップ部に搬送される直前に記録媒体を効率的に加熱することで補足する方策を知得した。このような方策を具現化するためには、ニップ部に対して記録媒体の搬送方向上流側であってニップ部の近傍に、記録媒体の転写定着面を加熱する加熱部材を設けることが考えられる。
しかし、その場合に、なるべくニップ部に近い位置で加熱部材によって記録媒体を効率的に加熱することが重要になる。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、消費エネルギが低く、ニップ部に近い位置で加熱部材によって転写定着工程直前の記録媒体が効率的に加熱されて、定着性が良好で高画質な画像を形成することができる、転写定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
この発明の請求項1記載の発明にかかる転写定着装置は、記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、トナー像を担持するとともに、所定方向に走行する転写定着部材と、前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体の前記転写定着面を加熱するとともに、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体を案内する加熱部材と、前記加熱部材に案内される記録媒体を当該加熱部材に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記付勢部材は、前記加圧部材に対向する部分の一部又は全部が変形して前記加圧部材に近づくように配設されたローラ状部材であって、前記加圧部材は、加圧ローラであって、前記ローラ状部材の回転中心と前記加圧ローラの回転中心との距離が、前記ローラ状部材及び前記加圧ローラに変形が生じていないときのそれぞれのローラ半径の和よりも小さくなるように構成されたものである。
また、請求項2記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記付勢部材と前記加圧部材との間に双方の部材同士の接触を防止するガイド部材を設けたものである。
また、請求項3記載の発明にかかる転写定着装置は、記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、トナー像を担持するとともに、所定方向に走行する転写定着部材と、前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体の前記転写定着面を加熱するとともに、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体を案内する加熱部材と、前記加熱部材に案内される記録媒体を当該加熱部材に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記付勢部材は、前記加圧部材に対向する部分の一部又は全部が変形して前記加圧部材に近づくように配設され、前記付勢部材と前記加圧部材との間に双方の部材同士の接触を防止するガイド部材を設けたものである。
また、請求項4記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記ガイド部材は、前記加圧部材に対して隙間をあけて配設されるとともに、前記付勢部材が摺接する面に低摩擦処理又は耐磨耗処理が施されたものである。
また、請求項5記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記加熱部材と前記付勢部材との間を記録媒体が通過しないときには、前記加熱部材又は/及び前記加圧部材に対して前記付勢部材を相対的に離間させるものである。
また、請求項6記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記加熱部材と前記付勢部材との間で記録媒体が搬送停止したときには、前記加熱部材を記録媒体から離れる方向に離間させるものである。
また、請求項7記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、記録媒体の搬送方向に対して前記加熱部材の上流側にレジストローラを備え、前記レジストローラから前記ニップ部までの距離が、通紙可能な最小サイズの記録媒体の搬送方向の長さよりも短くなるように構成されたものである。
また、この発明の請求項8記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の転写定着装置を備えたものである。
本発明は、転写定着部材と加圧部材とのニップ部に搬送される記録媒体を案内しながらその転写定着面を加熱する加熱部材と、記録媒体を加熱部材に向けて付勢する付勢部材と、を設けるとともに、付勢部材を変形させてニップ部に近づけている。これにより、消費エネルギが低く、ニップ部に近い位置で加熱部材によって転写定着工程直前の記録媒体が効率的に加熱されて、定着性が良好で高画質な画像が形成される、転写定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。 転写定着装置の一部を示す拡大図である。 転写定着装置におけるブラシ状ローラの接離機構を示す拡大図である。 加熱板が離間した状態を示す拡大図である。 加熱板からニップ部までの空走距離と、記録媒体の表面温度と、の関係を示すグラフである。 実験結果を示すグラフである。 この発明の実施の形態2における転写定着装置の近傍を示す拡大図である。 この発明の実施の形態3における画像形成装置の一部を示す構成図である。
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
図1〜図6にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、20Y、20M、20C、20BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応したプロセスカートリッジ、21は各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにそれぞれ収容された感光体ドラム(像担持体)、22は感光体ドラム21上を帯電する帯電部、23Y、23M、23C、23BKは感光体ドラム21上に形成される静電潜像を現像する現像装置、24は感光体ドラム21上に形成されたトナー像を転写定着ベルト27に転写する転写バイアスローラ、25は感光体ドラム21上の未転写トナーを回収するクリーニング装置、を示す。
また、27は複数色のトナー像が重ねて転写される転写定着部材としての転写定着ベルト、29は転写定着工程後の転写定着ベルト27を清掃するクリーニング装置(ベルトクリーニング装置)、32Y、32M、32C、32BKは各現像装置23Y、23M、23C、23BKに各色のトナーを補給するトナー補給部、51は原稿Dを原稿読込部55に搬送する原稿搬送部、55は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、61は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、66は記録媒体P上にトナー像を転写・定着する転写定着装置、68は転写定着ベルト27に圧接してニップ部を形成する加圧部材としての加圧ローラ、70は転写定着ベルト27を加熱するヒータ、85は転写定着ベルト27の幅方向温度分布を均一化するとともに転写定着ベルト27を冷却する冷却手段としての均しローラ、87は転写定着工程直前の記録媒体Pをニップ部に案内しながら加熱する加熱部材としての加熱板、91は記録媒体Pを加熱板87に向けて付勢する付勢部材としてのブラシ状ローラ、を示す。
ここで、転写定着装置66は、転写定着部材としての転写定着ベルト27、加熱装置87、88、加圧部材としての加圧ローラ68、付勢部材としてのブラシ状ローラ91、ヒータ70、均しローラ85、等で構成される。
また、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKは、それぞれ、感光体ドラム21、帯電部22、クリーニング装置25が、一体化されたものである。そして、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにおける感光体ドラム21上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像形成がおこなわれる。
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部51の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部55のコンタクトガラス53上に載置される。そして、原稿読込部55で、コンタクトガラス53上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
詳しくは、原稿読込部55は、コンタクトガラス53上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKの感光体ドラム21上に向けて発せられる。
一方、4つの感光体ドラム21は、それぞれ、図1の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム21の表面は、帯電部22との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム21上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム21表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部2において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。レーザ光は、ポリゴンミラー3に入射して反射した後に、レンズ4、5を透過する。レンズ4、5を透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
イエロー成分に対応したレーザ光は、ミラー6〜8で反射された後に、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ20Yの感光体ドラム21表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー3により、感光体ドラム21の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部22にて帯電された後の感光体ドラム21上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、ミラー9〜11で反射された後に、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ20Mの感光体ドラム21表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、ミラー12〜14で反射された後に、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ20Cの感光体ドラム212表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、ミラー15で反射された後に、紙面左から4番目のプロセスカートリッジ20BKの感光体ドラム21表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム21表面は、それぞれ、現像装置23Y、23M、23C、23BKとの対向位置に達する。そして、各現像装置23Y、23M、23C、23BKから感光体ドラム21上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム21上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、複数のローラ部材28A〜28C、85に張架・支持された転写定着ベルト27との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、転写定着ベルト27の内周面に当接するように転写バイアスローラ24が設置されている。そして、転写バイアスローラ24の位置で、転写定着ベルト27(転写定着部材)上に、感光体ドラム21上に形成された各色の画像(トナー像)が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
そして、第1転写工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、クリーニング装置25との対向位置に達する。そして、クリーニング装置25で、感光体ドラム21上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム21表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム21における一連の作像プロセスが終了する。
他方、感光体ドラム21上の各色のトナー像が重ねて転写・担持された転写定着ベルト27の表面は、図中の矢印方向に走行して、加圧ローラ68(加圧部材)との当接位置(ニップ部である。)に達する。ここで、本実施の形態1における転写定着装置66には、ニップ部の上流側で転写定着ベルト27(又は、転写定着ベルト27に担持されたトナー像)を加熱するヒータ70が設置されているが、このヒータ70による加熱量は従来のものに比べてかなり小さく設定されている。
転写定着ベルト27に担持されたトナー像は、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部にて、記録媒体Pの転写定着面(おもて面)に転写されるとともに定着される(転写・定着工程である。)。詳しくは、記録媒体Pの転写定着面がニップ部の直前で加熱板87(加熱部材)によって加熱されて、ニップ部にて、転写定着面の熱と、ヒータ70によって予備的に加熱された転写定着ベルト27の熱と、によってトナー像が加熱・溶融されるとともに、ニップ部の圧力によってトナー像が転写定着面に定着される。なお、転写定着装置66の構成・動作については、後で図2〜図4を用いてさらに詳しく説明する。
その後、転写定着ベルト27表面は、ベルトクリーニング部29の位置に達する。そして、転写定着ベルト27上の残トナー等の付着物がベルトクリーニング装置29に回収されて、転写定着ベルト27上の一連の転写定着プロセスが完了する。
なお、転写定着ベルト27に対向する位置であって、最下流にあるイエロー用の感光体ドラム21の下流側の位置であってニップ部の上流側の位置に、トナー検知センサや、転写定着ベルト27に対して接離自在に構成されたクリーニング機構を設置することもできる。そして、上述した作像プロセスを経て転写定着ベルト27上に形成した画像調整用のパターン画像をトナー検知センサで検知して、その検知結果に基いて各色の濃度補正や色ずれ補正等をおこなうことができる。その場合、転写定着ベルト27上に形成した画像調整用のパターン画像は、加圧ローラ68とのニップ部に達する前に、クリーニング機構によって除去されることになる。
ここで、転写定着装置66のニップ部に搬送される記録媒体Pは、給紙部61から搬送ガイド63、レジストローラ64、加熱板87等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部61から、給紙ローラ62により給送された転写紙Pが、搬送ガイド63を通過した後に、レジストローラ64に導かれる。レジストローラ64に達した記録媒体Pは、転写定着ベルト27上のトナー像とタイミングを合わせて、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部に向けて搬送される。このとき、レジストローラ64から送出される記録媒体Pは、搬送ガイド板65A、65B(図2を参照できる。)によって加熱板88とブラシ状ローラ91との間に導かれる。また、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pは加熱部材としての加熱板87(図2を参照できる。)に案内されるとともに、ブラシ状ローラ91によって加熱板87に向けて付勢されながら、記録媒体Pの転写定着面のみが加熱板87によって加熱される。
その後、フルカラー画像が転写・定着された記録媒体Pは、排紙搬送経路を通過して、排紙ローラ80によって装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。なお、本実施の形態1における画像形成装置は、記録媒体Pの搬送速度(又は、プロセス線速)が、300mm/秒程度に設定されている。
なお、本実施の形態1において用いられるトナーは、低温定着に適したものであることが好ましい。具体的に、トナーの軟化点(1/2流出温度)は100℃程度であることが好ましい。
トナー結着樹脂としては、以下の組成のものを使用することができる。
例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、 スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体が挙げられる。
また、以下の樹脂を混合して使用することもできる。ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。この中で特に、ポリエステル樹脂を含有しているものは充分な定着性を得るために、好ましい。特に結晶性ポリエステル樹脂は、紙接触時に充分に軟化溶融し、定着強度とともに色再現性の高い画像形成が可能となる。ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られるが、用いられるアルコールとはポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリエキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノル類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単体、その他の2価のアルコール単体を挙げることができる。
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の2量体、その他の2価の有機酸単量体を挙げることができる。
バインダー樹脂として用いるポリエステル樹脂を得るためには、以上の2官能性単量体のみによる重合体のみでなく、3官能以上の多官能性単量体による成分を含有する重合体を用いることも好適である。かかる多官能性単量体である3価以上の多価アルコール単量体としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−サルビタン、ペンタエスリトール、ジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1.3.5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
また3価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば1,2,4−ペンゼントリカルボン酸、1,2,5−ペンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンボール3量体酸、これらの酸無水物、その他を挙げることができる。
また、本実施の形態1に用いるトナーには、転写定着工程時の転写定着ベルト27表面でのトナーの離型性を向上する目的で、離型剤を含有させることができる。離型剤として、公知のものをすべて使用できるが、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックス、エステルワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。カルナウバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散したときの粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。各ワックスの酸価が各々の範囲未満であった場合、低温定着温度が上昇し低温定着化が不充分となる。逆に酸価が各々の範囲を超えた場合、コールドオフセット温度が上昇し低温定着化が不充分となる。ワックスの添加量としてはバインダー樹脂100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは3〜10重量部の範囲で用いられる。1重量部未満では、その離型効果が薄く所望の効果が得られにくい。また、15重量部を超えた場合はキャリアへのスペントが顕著になる等の問題が生じる。
また、外添加剤として、トナーの流動性を向上させる目的で、シリカ、酸化チタン、アルミナ等、さらに必要に応じて脂肪酸金属塩類やポリフッ化ビニリデン等を添加しても良い。
特に、転写定着装置66は、トナーを充分に加熱することが可能であるため、サブミクロンの大粒径シリカ等の添加剤を比較的多量に用いても定着性や定着温度に影響を与えないため、流動性・転写性を考慮した外添処方が可能である。
次に、図2〜図4を参照しながら、本実施の形態1において特徴的な転写定着装置66について詳述する。
図2は、転写定着装置66の一部を示す拡大図である。図3は、転写定着装置66におけるブラシ状ローラ91の接離機構92〜94を示す拡大図である。また、図4は、加熱板87が離間した状態を示す拡大図である。
図2及び図3を参照して、転写定着装置66は、転写定着部材としての転写定着ベルト27、加熱装置87〜89、加圧部材としての加圧ローラ68、付勢部材としてのブラシ状ローラ91(ローラ状部材)、接離機構92〜94、ガイド部材としての円筒ガイド板86、ヒータ70、均しローラ85、等で構成される。
ここで、転写定着部材としての転写定着ベルト27は、内周面側に形成された基材層上に、弾性層、表面層(離型層)が順次形成された多層構造のエンドレスベルトである。本実施の形態1では、基材層として層厚が80μm程度のポリイミド樹脂が用いられ、弾性層として層厚が160μm程度のシリコーンゴムが用いられ、表面層として層厚が7μm程度のフッ素ゴム(又はフッ素樹脂)が用いられている。弾性層は記録媒体Pの表面の凹凸に追従するためのものあり、表面層はトナーに対する離型性を担保するためのものである。また、本実施の形態1における転写定着ベルト27は、幅方向(図2の紙面垂直方向である。)の長さが300mm程度に、周長(走行方向の長さである。)が1150mm程度に設定されている。
また、加圧部材としての加圧ローラ68は、アルミニウム等からなる円筒状の芯金上に表面層(離型層)が形成されたものであって、図2の時計方向に回転する。加圧ローラ68は、不図示の加圧機構によって、転写定着ベルト27を介してローラ部材28Aに圧接する。こうして、加圧ローラ68と転写定着ベルト27との間に、所望のニップ部が形成される。
加熱装置87〜89は、転写定着装置66におけるニップ部の入口側の近傍に配設されている。加熱装置は、加熱部材としての加熱板87、加熱板87を加熱する発熱体88、加熱板87の温度を検知するための熱電対89(温度検知手段)、等で構成される。
加熱部材としての加熱板87は、板厚が0.2〜1.5mm程度の銅又はアルミニウムからなる板状部材である。加熱板87は、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍にかけて延設されていて、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pを案内する案内板(ガイド板)として機能する。また、加熱板87は、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pの転写定着面(おもて面)に接触して、発熱体88で発生した熱を記録媒体P(転写定着面)に伝熱する伝熱板としての機能も有する。
発熱体88は、PTC特性を有する発熱体であって、加熱板87の搬送面(記録媒体Pに対向する面である。)の反対側の面に貼着されている。PTC特性を有する発熱体は、所定のキューリー点となると抵抗が急激に上昇しる抵抗発熱体であるため、その自己温度制御機能によって加熱板87が異常昇温してしまう不具合を抑止することができる。具体的に、本実施の形態1では、加熱板87の温度が180〜220℃の範囲で制御されている。
なお、本実施の形態1では、加熱板87を熱伝導率が高く比較的安価な銅やアルミニウムで形成しているために、加熱効率が高く比較的安価な加熱装置87〜89を提供することができる。
このように構成された加熱装置は、上述したように、転写・定着工程直前の記録媒体Pの転写定着面(おもて面)のみを加熱するものである。換言すると、加熱装置は、記録媒体Pの裏面(転写定着面に対する裏面である。)が昇温する前に(おもて面から裏面に熱が伝達される前に)記録媒体Pがニップ部に搬送されるように転写定着面を加熱する。
本願発明者は、160℃に加熱された銅板(厚さ1mm)に記録媒体P(厚紙300g紙)を60msec接触させてその後に雰囲気温度40℃の空中に搬送(空走)したときの、記録媒体Pの転写定着面の温度変動をシミレーションした。その結果、銅板によって約140℃まで加熱された記録媒体Pが、雰囲気温度40℃の空中に10msec(搬送速度300mm/秒の場合、3mmの搬送距離に相当する。)搬送されるだけで110℃まで温度が低下するのがわかった。したがって、転写定着工程前の記録媒体Pの加熱効率を上げるためには、記録媒体を加熱する加熱部材(加熱板87)をできる限りニップ部に近接させることが必要になる。
本実施の形態1では、加熱板87を板状に形成して、その先端をできる限りニップ部に近づけるとともに、その搬送方向の長さをできる限り長く設定しているために、転写定着工程前の記録媒体Pの加熱効率を向上させることができる。
ここで、本実施の形態1における加熱板87は、記録媒体Pを案内する案内面(記録媒体Pに接触する面である。)に、フッ素樹脂粒子を含有するニッケルメッキが覆設されている。具体的には、ニッケルメッキの皮膜中に30vol%のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を分散させている。このようなコーティングは、析出状態の硬度がHv300程度であって通常の樹脂コーティングに比べて硬く、すべり性、耐摩耗性、離型性にも優れている。したがって、加熱板87にトナーや紙粉が付着する不具合を軽減できるとともに、加熱板87の耐久性を向上させることができる。
なお、加熱板87の案内面(記録媒体Pに接触する面である。)を、耐摩耗性が高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)やグラファイトライクカーボン(GLC)で覆設することもできる。
本実施の形態1における加熱装置87〜89は、記録媒体Pの転写定着面の温度が転写定着ベルト27の表面温度よりも高くなるように、転写定着面を加熱している。すなわち、転写定着ベルト27に担持されたトナー像Tは、ニップ部にて、主として記録媒体Pから受ける熱により加熱・溶融されることになる。
本実施の形態1では、記録媒体Pの転写定着面を加熱していて、出力画像上にて充分な光沢を得るための温度を独立して設定できるので、ヒータ70(ハロゲンヒータやカーボンヒータである。)によって加熱される転写定着ベルト27の温度(定着設定温度)を低くできる。また、記録媒体Pは転写・定着工程の直前に加熱されるので、過剰に加熱されずに、トナーTと記録媒体Pとの密着性も必要以上に高められることはない。
すなわち、本実施の形態1の構成によれば、低温定着が可能であって、装置のウォームアップ時間を短縮できて、省エネルギ化を向上させることができる。また、転写定着ベルト27への熱移動を抑制できるので、転写定着ベルト27の耐久性を向上させることができる。さらに、転写定着ベルト27の加熱温度が低減されるために、転写定着ベルト27の熱劣化を抑制できる。
また、本実施の形態1における転写定着装置66は、加熱板87によってニップ部に案内される記録媒体Pを、ローラ状部材としてのブラシ状ローラ91(付勢部材)によって加熱板87に押し付ける(付勢する)ように構成されている。このように構成することにより、加熱板87に対する記録媒体Pの密着力と密着時間が向上するために、加熱板87によって記録媒体Pの表面を確実に目標温度まで温度上昇させて、定着不良を抑制することが可能となる。
図2及び図3を参照して、付勢部材としてのブラシ状ローラ91は、芯金上に、ポリイミド繊維やアラミド繊維等が植毛されたブラシ布が螺旋状に巻回された耐熱性を有するローラ状部材であって、図2の時計方向に記録媒体Pの搬送速度と等速で回転する。そして、レジストローラ64の位置を通過した記録媒体Pは、ニップ部の直前で、ブラシ状ローラ91に付勢されて加熱板87に押し当てられながら、加熱板87によって加熱された後に、ニップ部に送入されることになる。ブラシ状ローラ91に耐熱性をもたせることで、加熱板87の熱によってブラシ状ローラ91のブラシ毛が熱劣化する不具合を軽減することができる。
ここで、図2及び図3(A)を参照して、本実施の形態1では、ブラシ状ローラ91(付勢部材)一部を変形させることで、ブラシ状ローラ91がニップ部の側(図2及び図3(A)の右側である。)に近づくように構成されている。詳しくは、ブラシ状ローラ91の回転中心と加圧ローラ68の回転中心との距離Mが、ブラシ状ローラ91及び加圧ローラ68に変形が生じていないときのそれぞれのローラ半径の和(N1+N2)よりも小さくなるように構成されている(M<N1+N2)。さらに具体的に、ブラシ状ローラ91のブラシ毛が変形して食い込むように、円筒ガイド板86にブラシ状ローラ91を押し付けている。
これにより、加熱板87とブラシ状ローラ91との圧接部(記録媒体Pが加熱板87に押し付けられて記録媒体Pの加熱が中心的におこなわれる位置である。)の位置を、できる限りニップ部に近づけることができるために、転写定着工程前の記録媒体Pの加熱効率を向上させることができる。
ここで、本実施の形態1では、レジストローラ64からニップ部(転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部である。)までの距離が、画像形成装置1で通紙可能な最小サイズの記録媒体Pの搬送方向の長さよりも短く設定されている。
このために、レジストローラ64とニップ部との間で記録媒体Pに与えられる搬送力は、主としてレジストローラ64や加圧ローラ68(転写定着ベルト27)によって与えられるものとなり、ブラシ状ローラ91のブラシ毛が低摩擦材料で形成されていてもレジストローラ64とニップ部との間での記録媒体Pの搬送性が低下することはない。
また、付勢部材としてブラシ状ローラ91は、加熱板87に案内される記録媒体Pに複数個所で点接触又は線接触することになる。記録媒体Pとの接触面積を極力小さくして記録媒体Pを加熱板87に押圧することで、ブラシ状ローラ91の側に熱が移動して記録媒体Pの加熱効率が低下する不具合を抑止することができるとともに、記録媒体Pの搬送性が低下する不具合を抑止することができる。
本実施の形態1では、加熱板87に圧接するブラシ状ローラ91の加圧幅N(ニップ幅)が3〜12mmになるように設定されている(3〜5kgf程度の加圧力に相当する。)。そして、本実施の形態1における転写定着装置66には、ブラシ状ローラ91によって加熱板87に向けて付勢される記録媒体Pに対する付勢力を可変する接離機構92〜94(可変手段)が設置されているが、これについては後で詳しく説明する。
なお、本実施の形態1では、付勢部材としてブラシ状ローラ91を用いたが、付勢部材として発泡ウレタンやフェルト等で形成された表面層を有するローラ部材を用いることもできる。
その場合にも、付勢部材の一部又は全部を変形させて、付勢部材をニップ部の側に近づかせることで、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態1における転写定着装置66には、加圧ローラ68とブラシ状ローラ91との間に、加圧ローラ68を覆うガイド部材としての円筒ガイド板86が設置されている。円筒ガイド板86(ガイド部材)は、加圧ローラ68に接触しないようにギャップをあけて設置されていて、ブラシ状ローラ91が加圧ローラ68に接触するのを防止している。円筒ガイド板86を設けることで、ブラシ状ローラ91を加圧ローラ68に近設しても、ブラシ状ローラ91のブラシ毛が加圧ローラ68に巻き込まれる副作用を抑止することができる。したがって、加熱板87とブラシ状ローラ91との圧接位置と、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部と、の距離(空走距離)を近づけることができて、副作用なく、転写定着工程前の記録媒体Pの加熱効率を高めることができる。
なお、円筒ガイド板86とブラシ状ローラ91との摺動抵抗を低減するために円筒ガイド板86の外周面(ブラシ状ローラ91が摺接する面である。)にフッ素樹脂コーティング等の低摩擦表面処理(低摩擦処理)を施したり、円筒ガイド板86の耐久性を高めるために円筒ガイド板86の外周面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の耐摩耗性が高い材料を覆設する耐磨耗処理を施したりすることもできる。
このように、本実施の形態1における転写定着装置66は、転写定着ベルト27の加熱を最小限に抑えて、トナーの加熱・溶融に必要な熱量を、ニップ部に搬送される直前に記録媒体Pを効率的に加熱することで補足するものである。しかし、その場合に、加熱された記録媒体Pから転写定着ベルト27が多量かつ不均一な分布の熱を受けて、転写定着ベルト27の幅方向(記録媒体の搬送方向に直交する方向である。)に温度ムラが生じて、定着ムラやオフセット等の定着不良画像が発生しやすくなってしまう。
これに対して、本実施の形態1では、図2に示すように、ニップ部を通過した後の転写定着ベルト27の表面の幅方向の温度分布を均一化するとともに、転写定着工程後の転写定着ベルト27を冷却する冷却手段としての均しローラ85を設置している。
均しローラ85は、ニップ部に対して転写定着ベルト27の走行方向下流側に配設されたローラ部材であって、3つのローラ部材28A〜28Cとともに転写定着ベルト27を張架・支持する。冷却手段としての均しローラ85は、ヒートパイプであって、その内部で熱を効率的に対流させることで、転写定着ベルト27を冷却するとともに転写定着ベルト27表面の幅方向の温度分布を均一化する。これにより、転写定着ベルト27の加熱を最小限に抑えてニップ部に搬送される直前の記録媒体Pを加熱板87によって加熱する場合であっても、定着ムラやオフセット等の定着不良が発生するのを抑止することができる。
ここで、本実施の形態1における転写定着装置66には、ブラシ状ローラ91(付勢部材)によって加熱板87(加熱部材)に向けて付勢される記録媒体Pに対する付勢力を可変する接離機構92〜94が設置されている。この接離機構92〜94は、加熱板87に対するブラシ状ローラ91の相対的な位置を可変するように構成されている。
詳しくは、図3を参照して、接離機構は、レバー92、カム93、引張スプリング94、駆動モータ(不図示である。)、等で構成されている。レバー92は、支軸92aを中心にして回動可能に、装置本体の側板に保持されている。レバー92の、一端側にはブラシ状ローラ91が回動可能に保持されていて、他端側には引張スプリング94の一方のフック部が接続されている。引張スプリング94の他方のフック部は、装置本体の側板に接続されている。また、レバー92の中央部には、不図示の駆動モータに連結されたカム93が係合している。このような構成により、不図示の駆動モータによってカム93が回転駆動されてカム93の回転方向の姿勢が定まると、引張スプリング94のスプリング力によってレバー92が支軸92aを中心に回動して(レバー92がカム93に接触しながら回動して)、ブラシ状ローラ91の位置が上下方向に可変されることになる。
具体的に、図3(A)は、ブラシ状ローラ91が加熱板87に対して所定の加圧幅(ニップ幅)Nで当接している状態である。この状態でカム93の回転方向の姿勢を所定角度だけ可変することで、加圧幅N(記録媒体Pに対する付勢力)が増減される。そして、接離機構92〜94(加圧幅可変機構)は、加熱板87に案内される記録媒体Pの厚さ(紙厚)が厚いときに、記録媒体Pの厚さ(紙厚)が薄いときよりも、上述した付勢力(加圧幅N)が大きくなるように制御される。
厚さの厚い記録媒体(厚紙)は、厚さの薄い記録媒体(薄紙)に比べて、加熱板87によって加熱された転写定着面(おもて面)の熱が時間の経過とともに裏面側に伝達されてしまうために、ニップ部に到達するまでの転写定着面の温度低下の程度が大きい。これに対して、薄紙の場合には、厚紙に比べて、加熱板87による加熱効率が高いために、厚紙を基準とした加熱板87の温度制御をおこなってしまうと、薄紙が過昇温してしまったり、温度上昇によってカールが発生してしまったりする。
したがって、上述した制御をおこなうことにより、厚さ(紙厚)が異なる記録媒体Pが通紙された場合であっても、加熱板87によって加熱される転写定着工程直前の記録媒体Pの温度にバラツキが生じることなく、安定した転写定着画像を形成することができる。これは、加熱板87に対するブラシ状ローラ91の加圧幅N(付勢力)の大小が、加熱板87から記録媒体Pに与えられる熱量の大小に影響することに基くものである。
図5は、加熱板87からニップ部(転写定着ベルト27と加圧ローラ68との当接位置である。)までの空走距離と、記録媒体Pの表面温度(転写定着面の温度)と、の関係を示すグラフであって、陰解法を用いた1次元伝熱解析シミュレーションをおこなった解析結果である。
図5中の、「300g紙」は厚紙を示し、「45K紙」は薄紙を示し、「ニップ」は加熱板87に対するブラシ状ローラ91の加圧幅Nを示す。図5では、加熱板87の温度を240℃と180℃とに振って、記録媒体Pの種類を300g紙(厚紙)と45K紙(薄紙)とに振って、加圧幅Nを6mmと12mmとに振って、それぞれの組み合わせについて、加熱板87(加熱位置)からの空走距離が大きくなるのにともない転写定着面の温度がどれほど低下するかを解析している。
図5の解析結果から、300g紙(厚紙)は、45K紙(薄紙)に比べて、おもて面の熱が低温度の裏面に向かって熱伝達される程度が大きいために、空走距離の増加にともない転写定着面の温度低下の程度が大きいのがわかる。また、加圧幅N(加熱幅)が大きいほど、加熱板87によって記録媒体の中央付近まで温められて、おもて面と裏面との温度差が小さくなるために、空走距離が長くなっても転写定着面の温度低下の程度が小さくなるのがわかる。さらに、加熱板87の設定温度が高いときには、記録媒体Pのおもて面に与えられる熱量も大きくなるために、所定の空走距離に達した後の転写定着面の温度も当然に高くなるのがわかる。
空走距離9mmの位置で記録媒体Pの表面温度を120℃に維持しようとすると、300g紙(厚紙)を用いた場合には、加熱板87の設定温度を240℃にして加圧幅Nを12mm前後に設定する必要がある(図5中のA点の位置を参照できる。)。これに対して、45K紙(薄紙)を用いた場合には、加熱板87の設定温度が180℃であっても、空走距離9mmの位置で記録媒体Pの表面温度を120℃に維持することができる(図5中のB点の位置を参照できる。)。また、45K紙(薄紙)を用いた場合には、加熱板87の設定温度が240℃であれば、加圧幅Nが6mmより小さくても、空走距離9mmの位置で記録媒体Pの表面温度を120℃に維持することができる(図5中のC点の位置を参照できる。)。したがって、仮に、300g紙(厚紙)を用いた場合の最適な条件(加熱板87の設定温度:240℃、加圧幅N:12mm)にて、45K紙(薄紙)の加熱をおこなうと、その転写定着面の温度が160℃にまで上昇してしまい、厚紙との温度差が40℃前後にまで広がってしまう。このように、厚紙において必要最小限の熱量を与えるように加熱条件を設定しても、同じ加熱条件を薄紙に適用すると、その温度が適正温度より高くなってしまい、必要最小限以上の熱量を記録媒体に与えることになってエネルギの浪費が多くなってしまう。また、過剰な熱が記録媒体のおもて面(又は裏面)を介して転写定着ベルト27に伝達されることで、転写定着ベルト27の温度が上昇してホットオフセット等の不具合が発生しやすくなる。さらには、両面プリント時の記録媒体Pの裏面温度が必要以上に高くなって、トナーの再溶融による画像劣化やヒートサイクルの不具合が発生する。
これに対して、本実施の形態1では、記録媒体Pの厚さに応じて加熱板87に対するブラシ状ローラ91の加圧幅Nを可変しているために、記録媒体Pの厚さに関わらず転写定着工程においてニップ部に送入される際の記録媒体Pの転写定着面の温度を適正化することができる。また、良好な転写定着画像を得るための必要最小限の熱量で記録媒体Pを加熱することができるために、装置全体としてのエネルギ効率を高めることができる。さらに、薄紙を通紙する場合に、必要最小限の熱量で加熱するために、加熱後に薄紙にカールが発生する不具合も防止することができる。
なお、通紙される記録媒体Pの紙厚は、記録媒体Pの搬送経路中に紙厚センサを設置してこれにより検知することもできるし、ユーザーによって装置本体1の操作部に入力された記録媒体Pに関する情報に基いて判断してもよい。そして、このようにして取得した記録媒体Pの紙厚についての情報に基いて、接離機構92〜94が可変制御されることになる。
ここで、本実施の形態1では、記録媒体Pの紙厚に応じて接離機構92〜94(可変手段)を制御して加圧幅Nを最適化した。
これに対して、周囲の温度(雰囲気温度)や、累積の稼働時間や、加熱板87の温度等に応じて接離機構92〜94を制御して加圧幅Nを最適化することもできる。
具体的に、周囲の温度(雰囲気温度)が低いときに、周囲の温度が高いときよりも、加圧幅N(又は付勢力)が大きくなるように、接離機構92〜94を制御することもできる。周囲の温度が低いときには、加熱板87によって記録媒体Pを加熱しにくくなるために、このような制御をおこなうことで、環境温度に関わらず、転写定着工程においてニップ部に送入される際の記録媒体Pの転写定着面の温度を適正化することができる。環境温度の検知は、装置本体1内に設置した温度センサによって検知することができる。
また、経時に加圧幅N(又は付勢力)が大きくなるように、接離機構92〜94を制御することもできる。ブラシ状ローラ91のブラシ毛は初期時に比べて経時で復元力(反発力)が低下してしまい、加圧板87に対するブラシ状ローラ91の位置が変わらなくても加圧幅Nが変化してしまい、加熱板87によって記録媒体Pを加熱しにくくなるために、このような制御をおこなうことで、経時においても記録媒体Pの転写定着面の温度を適正化することができる。時間の経過は、装置本体1に設けた累積プリント枚数カウンタの値によって判断することができる。
また、加熱板87の温度が低いときに、加熱板87の温度が高いときよりも、加圧幅N(又は付勢力)が大きくなるように、接離機構92〜94を制御することもできる。上述した環境温度の変化も含めて、加圧板87の温度が低いときには、加熱板87によって記録媒体Pを加熱しにくくなるために、このような制御をおこなうことで、転写定着工程においてニップ部に送入される際の記録媒体Pの転写定着面の温度を適正化することができる。なお、加熱板87の温度の検知は、加熱板87に貼着した熱電対89によって検知することができる。
また、本実施の形態1では、記録媒体Pの紙厚等に応じて、接離機構92〜94を制御して加圧幅Nを最適化した。これに対して、加熱板87の温度を可変する第2の可変手段をさらに設けて、記録媒体Pの紙厚等に応じて、接離機構92〜94を制御して加圧幅Nを最適化するとともに、加熱板87の温度を最適化することもできる。
先に図5で説明したように、加圧幅Nに加えて、加熱板87の設定温度も、記録媒体Pの転写定着面の温度を適正化するために大きく影響する。したがって、記録媒体Pの紙厚等に応じて加熱板87の温度をも可変制御することで、転写定着工程においてニップ部に送入される際の記録媒体Pの転写定着面の温度を適正化することができる。具体的には、発熱体88として温度調整をおこないやすいセラミックヒータや板状ヒータ等を用いて、熱電対89によって検知した温度に基いて発熱体88を温度制御することで、加熱板87の温度を、記録媒体Pの紙厚等に応じて最適な温度に制御することができる。
なお、その場合に、記録媒体Pの紙厚以外にも、周囲の温度や累積の稼働時間等に応じて、加熱板87の温度を可変制御してもよい。
ここで、図3(B)は、上述した離間機構92〜94の動作によって、ブラシ状ローラ91が加熱板87や加圧ローラ68(円筒ガイド板86)に対して完全に離間している状態である。
本実施の形態1において、非通紙時(加熱板87とブラシ状ローラ91との間を記録媒体Pが通過しないときだえる。)には、加熱板87や加圧ローラ68(円筒ガイド板86)に対してブラシ状ローラ91を相対的に離間させる制御をおこなっている(図3(B)の状態である。)。
これにより、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ91が加熱板87に当接することになるため、加熱板87からブラシ状ローラ91に熱が伝わってブラシ状ローラ91が熱劣化する不具合が低減される。また、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ91が加熱板87や円筒ガイド板86に当接して変形することになるため、ブラシ状ローラ91のブラシ毛が長時間の変形によって毛倒れが復元しなくなる不具合を軽減することができる。
さらに、図4を参照して、本実施の形態1では、加熱板87の近傍でジャムが発生したとき(加熱板87とブラシ状ローラ91との間で記録媒体Pが搬送停止したときである。)には、加熱板87を記録媒体P(搬送経路)から離れる方向に離間させるように制御している。具体的に、加熱板87は、不図示の駆動機構(ソレノイド等で構成されている。)によって、図4の位置に移動(先端部を中心とした回動である。)できるように構成されている。そして、不図示のジャム検知センサによって加熱板87の近傍での記録媒体Pのジャムが検知されると、発熱体88による加熱が遮断されるとともに、加熱板87の離間動作(図4の位置への移動である。)がおこなわれる。
これにより、ジャム発生時に記録媒体Pが加熱板87に接触し続けて過昇温する不具合が防止される(特に、発火点まで過昇温してしまう可能性が確実に防止される。)とともに、ジャムした記録媒体Pに対する加熱板87の拘束力が小さくなるためにジャム処理(ジャムした記録媒体の装置本体外への除去処理である。)の作業性が向上する。
また、このようなジャム発生時の制御に加えて、ジャム発生時に接離機構92〜94を動作させて搬送経路からのブラシ状ローラ91の離間動作(図3(B)の位置への移動である。)をもおこなうことで、ジャム処理の作業性がさらに向上する。さらに、ジャム発生時に、加熱板87の移動に連動して、搬送ガイド板65Aの搬送経路からの離間動作(図4の位置への移動である。)をもおこなうことで、ジャム処理の作業性がさらに向上する。
ここで、本実施の形態1における転写定着装置66では、記録媒体Pの転写定着面の温度が転写定着ベルト27(又は、転写定着ベルト27に担持されたトナー像T)の表面温度よりも高くなるように、記録媒体P及び転写定着ベルト27を加熱することが好ましい。このような場合、転写定着ベルト27に担持されたトナー像Tは、ニップ部にて、主として記録媒体Pから受ける熱により加熱・溶融されることになる。
このように、加熱装置87〜89とヒータ70とによって、記録媒体P(転写定着面)の温度が転写定着ベルト27の表面温度よりも高くなるように加熱することで、それぞれのトナーとの界面の粘弾性の違いでホットオフセットを防止することができる。すなわち、トナー層において、記録媒体P側の温度を高く、転写定着ベルト27側の温度を低くすることで、転写定着ベルト27とトナーとの付着力よりも、記録媒体Pとトナーとの付着力を高くして、転写定着ベルト27に対するトナーの離型性を上げることで、転写定着ベルト27へのオフセットが生じない良好な画像が得られる。さらに、耐ホットオフセット性が向上することによって、離型性をあげるためにトナー中に添加するワックスの量を減量することができる(又は、なくすことができる)ため、色再現性、現像性、帯電性の向上が見込まれる。また、転写定着ベルト27の温度を低く設定することで、転写定着ベルト27の冷却が容易になるとともに、転写定着ベルト27に接触している感光体ドラム21等の熱的劣化等の不具合を低減することができる。
具体的に、オフセットを生じさせないためには、ヒータ70によって加熱されるニップ部直前のトナー像(転写定着ベルト27に担持されたトナー像である。)の表面温度をTtとして、加熱装置87〜89によって加熱されるニップ部直前の記録媒体P(転写定着面)の表面温度をTpとして、加圧ローラ68の温度をTbとして、トナーの流出開始温度をTfbとして、トナーの軟化点温度をTsとしたときに、
(Tt+Tp)/2>Tfb …(1)
Tt<Tfb …(2)
(好ましくはTt<Tfb−20℃、さらに好ましくはTt<Tfb−30℃)
Tb<Ts …(3)
なる3つの条件式を成立させることが好ましい。
ここで、トナーの軟化温度、流出開始温度は、「高化式フローテスターCFT500D型」(島津製作所社製)を用いて測定することができる。フローテスターとは溶融物(トナー)が細管を通過するときの粘性抵抗を測定する細管式レオメーターである。測定方法は、まず、シリンダーに充填された試料(トナー)を、周囲から熱して溶融させ、上部からピストンによって一定の圧力を加える。その後、溶融したトナーは細い穴を持ったダイを通して押し出され、フローレートから試料の流動性(溶融粘度)が求められる。なお、測定条件は、荷重:5kgf/cm2、昇温速度:3.0℃/min、ダイ口径:1.00mm、ダイ長さ:10.0mmである。
図6は、上記の3つの条件式の根拠となる実験結果を示すグラフである。
実験は、ヒータによって加熱されるニップ部直前のトナー像(転写定着ベルト27)の表面温度をTt(図6の横軸に対応する。)と、加熱装置によって加熱されるニップ部直前の記録媒体Pの表面温度をTp(図6の縦軸に対応する。)と、を可変して、出力された定着画像の定着性(オフセットの有無)を観察したものである。また、図6(A)は流出開始温度Tfbが90℃のトナーを用いたときの実験結果であって、図6(B)は流出開始温度Tfbが110℃のトナーを用いたときの実験結果である。また、実験では、通紙する記録媒体Pとしてコート紙「カサブランカX」(王子製紙社製、坪量100g/m2)を用い、ニップ部におけるニップ時間を50msに、ニップ部における面圧を2kgf/cm2に設定した。また、図6において、「○」は定着性が良好な状態であって、「◇」は極微小なホットオフセットが発生した状態であって、「△」は微小なホットオフセットが発生した状態であって、「×」は許容できないレベルのホットオフセットが発生した状態であって、「□」はコールドオフセットが発生した状態である。なお、図6中の、破線で示す傾斜線は良好な定着性を確保することができる定着下限温度を示し、この破線より上方の範囲が良好な定着性を確保できる範囲である。
図6(A)及び図6(B)から、定着下限温度以上で、トナーの流出開始温度Tfbよりもニップ部直前のトナー像の温度Ttが高い場合(Tfb<Tt)には、ホットオフセットが発生して良好な画像が得られないことがわかる。そこで、上記の条件式(1)、(2)を満足するように、加熱装置を構成して適正な温度制御をおこなうことにより、オフセットのほとんどない良好な画像を得ることができる。なお、図6(A)及び図6(B)から、(Tfb−Tt≧20℃)なる条件が成立したときにはホットオフセットの量がさらに減り、(Tfb−Tt≧30℃)なる条件が成立したときにはホットオフセットがほぼ完全になくなることがわかる。
また、上記の条件式(3)は、転写定着ベルト27とのニップ部を形成している加圧ローラ68の温度をトナー軟化点温度以下に規定するものであって、これにより両面プリント時の表裏面(第1面と第2面とである。)の画像光沢差を軽減することができる。
以上説明したように、本実施の形態1によれば、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながらその転写定着面を加熱する加熱板87(加熱部材)と、記録媒体Pを加熱板87に向けて付勢するブラシ状ローラ91(付勢部材)と、を設けるとともに、ブラシ状ローラ91を変形させてニップ部に近づけている。これにより、消費エネルギが低く、ニップ部に近い位置で加熱板87によって転写定着工程直前の記録媒体Pが効率的に加熱されて、定着性が良好で高画質な画像を形成することができる。
なお、本実施の形態1では、転写定着部材として転写定着ベルト27を用いたが、転写定着部材として転写定着ローラ(例えば、特許文献3等を参照できる。)を用いることもできる。
また、本実施の形態1では、転写定着工程後の転写定着ベルト27を冷却する冷却手段として均しローラ85を用いたが、冷却手段として転写定着ベルトの表面に対向する冷却ファンを用いることもできる。
そして、これらの場合であっても、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態2.
図7にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図7は、実施の形態2における転写定着装置の近傍を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態2における転写定着装置は、各色の感光体ドラム21上に形成されたトナー像が中間転写ベルト95に1次転写された後に転写定着ベルト27に2次転写されて記録媒体Pに3次転写される点が、各色の感光体ドラム21上に形成されたトナー像が転写定着ベルト27に1次転写されて記録媒体Pに2次転写される前記実施の形態1のものと相違する。
本実施の形態2における画像形成装置は、各色の感光体ドラム(図示は省略するが、中間転写ベルト95に対向するように並設されている。)に形成されたトナー像が中間転写ベルト95に重ねて1次転写された後に、中間転写ベルト95と転写定着ベルト27との間で、そのトナー像が転写定着ベルト27に2次転写される。さらに、転写定着ベルト27に転写されたトナー像Tが、加圧ローラ68とのニップ部の位置で、記録媒体Pに3次転写されるとともに定着される(転写定着される。)。
ここで、本実施の形態2においても、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部の近傍に、転写定着工程直前の記録媒体Pを加熱する加熱装置87〜89が設置されている。また、転写定着工程直前の記録媒体Pを加熱板87(加熱部材)に向けて付勢するブラシ状ローラ91(付勢部材)が、円筒ガイド板86に圧接してその一部(ブラシ毛)が変形するように設置されている。
以上説明したように、本実施の形態2においても、前記実施の形態1と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながらその転写定着面を加熱する加熱板87(加熱部材)と、記録媒体Pを加熱板87に向けて付勢するブラシ状ローラ91(付勢部材)と、を設けるとともに、ブラシ状ローラ91を変形させてニップ部に近づけている。これにより、消費エネルギが低く、ニップ部に近い位置で加熱板87によって転写定着工程直前の記録媒体Pが効率的に加熱されて、定着性が良好で高画質な画像を形成することができる。
実施の形態3.
図8にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図8は、実施の形態3における画像形成装置の一部を示す構成図である。本実施の形態3における画像形成装置は、1つの感光体ドラム21が設置されている点が、4つの感光体ドラム21が設置されている前記実施の形態1のものと相違する。
図8に示すように、本実施の形態3における画像形成装置は、1つの感光体ドラム21の周囲に、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した書込み部(不図示である。)、帯電部(不図示である。)、現像装置23Y、23M、23C、23BKや、クリーニング装置25、等が配設されている。そして、感光体ドラム21上で各色の画像(トナー像)が重ねて形成されて、そのカラー画像が転写バイアスローラ24との対向位置で転写定着ベルト27上に転写される。
その後、転写定着ベルト27上に担持されたトナー像Tは、加圧ローラ68とのニップ部の位置で、前記各実施の形態と同様に、加熱装置によって加熱された記録媒体P上に転写・定着される。
そして、本実施の形態3における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部の近傍に、転写定着工程直前の記録媒体Pを加熱する加熱装置87〜89が設置されている。また、転写定着工程直前の記録媒体Pを加熱板87(加熱部材)に向けて付勢するブラシ状ローラ91(付勢部材)が、円筒ガイド板86に圧接してその一部(ブラシ毛)が変形するように設置されている。
以上説明したように、本実施の形態3においても、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながらその転写定着面を加熱する加熱板87(加熱部材)と、記録媒体Pを加熱板87に向けて付勢するブラシ状ローラ91(付勢部材)と、を設けるとともに、ブラシ状ローラ91を変形させてニップ部に近づけている。これにより、消費エネルギが低く、ニップ部に近い位置で加熱板87によって転写定着工程直前の記録媒体Pが効率的に加熱されて、定着性が良好で高画質な画像を形成することができる。
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
1 画像形成装置本体(装置本体)、
27 転写定着ベルト(転写定着部材)、
66 転写定着装置、
68 加圧ローラ(加圧部材)、
70 ヒータ、
86 円筒ガイド板(ガイド部材)、
87 加熱板(加熱部材)、
88 発熱体、
91 ブラシ状ローラ(付勢部材、ローラ状部材)、
95 中間転写ベルト、 P 記録媒体。
特開2005−37879号公報 特開2002−99159号公報 特開2004−145260号公報

Claims (8)

  1. 記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、
    トナー像を担持するとともに、所定方向に走行する転写定着部材と、
    前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
    前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体の前記転写定着面を加熱するとともに、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体を案内する加熱部材と、
    前記加熱部材に案内される記録媒体を当該加熱部材に向けて付勢する付勢部材と、
    を備え、
    前記付勢部材は、前記加圧部材に対向する部分の一部又は全部が変形して前記加圧部材に近づくように配設されたローラ状部材であって、
    前記加圧部材は、加圧ローラであって、
    前記ローラ状部材の回転中心と前記加圧ローラの回転中心との距離が、前記ローラ状部材及び前記加圧ローラに変形が生じていないときのそれぞれのローラ半径の和よりも小さくなるように構成されたことを特徴とする転写定着装置。
  2. 前記付勢部材と前記加圧部材との間に双方の部材同士の接触を防止するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の転写定着装置。
  3. 記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、
    トナー像を担持するとともに、所定方向に走行する転写定着部材と、
    前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
    前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体の前記転写定着面を加熱するとともに、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体を案内する加熱部材と、
    前記加熱部材に案内される記録媒体を当該加熱部材に向けて付勢する付勢部材と、
    を備え、
    前記付勢部材は、前記加圧部材に対向する部分の一部又は全部が変形して前記加圧部材に近づくように配設され、
    前記付勢部材と前記加圧部材との間に双方の部材同士の接触を防止するガイド部材を設けたことを特徴とする転写定着装置。
  4. 前記ガイド部材は、前記加圧部材に対して隙間をあけて配設されるとともに、前記付勢部材が摺接する面に低摩擦処理又は耐磨耗処理が施されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の転写定着装置。
  5. 前記加熱部材と前記付勢部材との間を記録媒体が通過しないときには、前記加熱部材又は/及び前記加圧部材に対して前記付勢部材を相対的に離間させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の転写定着装置。
  6. 前記加熱部材と前記付勢部材との間で記録媒体が搬送停止したときには、前記加熱部材を記録媒体から離れる方向に離間させることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の転写定着装置。
  7. 記録媒体の搬送方向に対して前記加熱部材の上流側にレジストローラを備え、
    前記レジストローラから前記ニップ部までの距離が、通紙可能な最小サイズの記録媒体の搬送方向の長さよりも短くなるように構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の転写定着装置。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の転写定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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