JP5446008B2 - 超音波を用いた温度測定方法 - Google Patents

超音波を用いた温度測定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5446008B2
JP5446008B2 JP2010011605A JP2010011605A JP5446008B2 JP 5446008 B2 JP5446008 B2 JP 5446008B2 JP 2010011605 A JP2010011605 A JP 2010011605A JP 2010011605 A JP2010011605 A JP 2010011605A JP 5446008 B2 JP5446008 B2 JP 5446008B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ultrasonic
temperature
medium
point
dimensional
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2010011605A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011149839A (ja
Inventor
郁夫 井原
学 高橋
浩之 山田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nagaoka University of Technology
Original Assignee
Nagaoka University of Technology
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nagaoka University of Technology filed Critical Nagaoka University of Technology
Priority to JP2010011605A priority Critical patent/JP5446008B2/ja
Publication of JP2011149839A publication Critical patent/JP2011149839A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5446008B2 publication Critical patent/JP5446008B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Measuring Temperature Or Quantity Of Heat (AREA)

Description

本発明は、超音波を用いた温度測定方法に関するものであり、より具体的には、超音波を用いて、媒体の表面又は/及び内部における二次元又は三次元の温度分布を高精度に測定する温度測定方法に関するものである。
工学・工業の諸分野において材料の温度分布を非接触でモニタリングしたいとう要望が数多くある。この要望に対応する方策として、現在までに赤外線放射を用いた手法が開発されており、例えば赤外線カメラが既に実用に供されている。しかし、この手法は周囲からの赤外線放射の影響や測定対象の表面状態の影響を受けやすく、また測定空間が狭小である場合には適用が困難となるなどの問題点がある。
ところで、超音波を用いた温度測定方法も知られている。これは、媒体に入射された超音波の伝播速度が媒体の温度に依存する温度依存性を利用したものである。本発明者らは、送波手段と受波手段とを備えた超音波探触子を媒体の上面に接触・振動させ、得られた超音波の伝播時間と当該媒体の既知のデータとを利用して、当該媒体内の温度分布を測定する手法を提案し、特許文献1に開示している。
しかし、特許文献1に開示の方法では媒体の一次元的な温度分布が測定可能であることを実証するに留まり、二次元的又は三次元的な温度分布を最適に求める手法まで開示するものではない。
また、特許文献1に開示の方法を含め、超音波探触子を用いた測定手法は、超音波探触子を媒体に設置する際にはカプラの塗布が必要であり、作業工程の増加につながる。また、計測対象が小型であったり狭隘部にあったりする場合には、超音波探触子を設置することが困難である。さらに、計測対象が高温の場合には、カプラの蒸発や超音波探触子の温度による損傷を防止する特殊な機構が必要となる上、媒体の温度あるいは温度勾配によって超音波の伝播速度が変化し、正確な測定が困難になる。
また、温度計測以外に超音波を用いた測定方法には、上記のような問題を含む接触式の超音波測定手法の他に、非接触式の測定方法も既に開示されており、例えば、レーザー光を与えるレーザー超音波測定手法(非特許文献1)、ローレンツ力や磁歪効果を利用した電磁超音波測定手法(特許文献2)、圧搾空気等を利用した空気超音波測定手法などが知られている。
しかしながら、媒体の内部又は表面の二次元又は三次元の温度分布を精度よく測定できたという報告例は見当たらない。また、仮に本発明者らによる特許文献1開示の超音波探触子を、従来のレーザー超音波測定機構に単に置き換えて改良を施したとしても媒体の一次元温度分布が辛うじて求められるに留まり、二次元又は三次元の温度分布を測定することは以下の理由により困難であった。
つまり、上記文献に触れた当業者は二次元又は三次元の温度分布を測定しようとする場合、通常、超音波発生手段と超音波検出手段とを夫々、任意の位置に配置してある位置の一次元温度分布を求め、再度、超音波発生手段と超音波検出手段とを平行移動するなどして超音波励起点や検出点を別の位置に移動して別の位置における一次元温度分布を求め、これを繰り返すことによって二次元又は三次元の温度分布を求めることになろう。
しかしながら、非接触式の超音波温度測定方法では、特にレーザー超音波測定手法では、超音波検出手段に厳格なアライメントが要求されており、アライメントが僅かでもずれると計測が行えないといった欠点がある。従って、上記のように二次元温度分布を現実的に測定するには、超音波検出手段の配置(つまり超音波検出点)を頻繁に変更することは許されるものではない。
特開2008−70340号公報 特開平7−77465号公報(第6頁、第9及び10図)
ジェイ.ディ.アッセル(J.D.Aussel)、「レーザーによる発生音響波: 放射源の理論的及び実験的検討」("GenerationAcoustic Waves by Laser: Theoretical and Experimental Study of the EmissionSource")、ウルトラソニックス(Ultrasonics)、第24巻(vol.24)、pp.246−255、1988年
以上の事情に鑑み、本発明の目的は、非接触式の超音波測定手法を用いて媒体の表面又は内部における二次元又は三次元の温度分布を精度よく測定する方法を提供することである。
本発明者らは、超音波検出点を常に固定しつつ超音波励起点のみを移動させることで、媒体の二次元又は三次元の温度分布が精度良く測定できる手法を見出し、本発明を完成するに至った。
例えば、本発明の一実施態様は以下に示すものである。
超音波の速度と温度との関係式が予め求められた媒体に超音波を励起し、該媒体を伝播した前記超音波を非接触的に検出して、前記媒体の二次元又は三次元温度分布を算出する超音波を用いた温度測定方法であって、
前記超音波の検出点を固定した状態で前記超音波の励起点のみを移動させて、前記励起点と前記検出点との間の前記超音波の伝播時間を算出し、
前記媒体の前記二次元又は三次元温度分布を算出するために、前記励起点の各点と前記検出点との間の一次元温度分布を数値解析によって夫々算出し、
前記数値解析では、前記関係式と前記伝播時間とが利用されることを特徴とする超音波を用いた温度測定方法。
なお、本明細書において「超音波を非接触的に検出」とは、計測対象の媒体上に直接、超音波探触子等を設置せずに超音波を計測することを意味し、具体的には、レーザー光を利用した装置、例えばレーザー干渉計やレーザードップラー計、を用いて超音波を検出する方法が挙げられ、これ以外にも、ローレンツ力や磁歪効果を利用した電磁超音波測定装置や圧搾空気等を利用した空気超音波測定装置を用いて超音波を検出することを含む。
また、本明細書において「超音波を非接触的に励起」とは、計測対象の媒体上に直接、超音波振動子等を設置せずに超音波を励起することを意味し、具体的には、例えばパルスレーザー等のレーザー光を媒体に照射して超音波を励起する方法が挙げられ、これ以外にも、ローレンツ力や磁歪効果を媒体に付与して超音波を励起したり、圧搾空気等を媒体に付与して超音波を励起したりすることを含む。
本発明の超音波を用いた温度測定方法によれば、計測対象である媒体の二次元又は三次元の温度分布測定のために超音波検出点を移動させる必要が無いので、上述した超音波検出手段のアライメントの問題は全く生じない。従って、高精度かつ容易に媒体の温度測定を実現できる。
本発明の一態様によれば、超音波の励起・検出は非接触的に行われるため、超音波探触子が使用できないような高温の場合や媒体が液体(例えば溶融金属)であっても媒体の温度分布を測定することが可能である。従って、計測対象を破壊することなく簡便・安全に温度測定が可能となる。また、超音波の励起にレーザー光を用いた本発明の一態様によれば、赤外線カメラ等の温度測定に比べ応答性の良い温度測定結果を得ることができる。
本発明の一態様によれば、検出超音波として媒体の表面を伝播する表面波又は媒体の内部を伝播するバルク波(縦波及び横波)を用いるため、媒体の表面又は内部の温度分布を測定することができる。
また、本発明の一態様によれば、表面波及びバルク波の双方を検出することも可能であり、これにより、媒体の三次元温度分布を測定することができる。
また、本発明の一態様によれば、温度分布の測定に有限差分法に基づいた数値解析を利用しているため、温度測定に係る境界条件(例えば加熱条件)の制約は緩和されるため、より広範な環境下で温度測定が可能となる。さらに、温度の解析にあたっては、ある時刻における最適解を同定するための繰り返し計算等を行う必要がないため、リアルタイムに温度分布を取得することが可能となる。
本発明の温度測定方法を実現する温度測定装置の概略を示した図である。 本発明の温度測定装置の一部を三次元的に示した図である。 本発明の数値解析方法の概念を示した図である。 本発明の温度測定方法の各ステップを示したフローチャートである。 本発明の実施例1に係る温度測定結果と赤外線カメラによる温度測定結果とを示した図である。 本発明の実施例1に係る温度測定結果と赤外線カメラによる温度測定結果とを示した図である。 本発明の他の実施形態を示した図である。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施形態に何等限定されるものではない。すなわち、本実施形態では二つの超音波トランスデューサー(送信用と受信用)を用いた測定手法、いわゆるピッチキャッチ法が用いられているが、送信および受信に複数個のトランスデューサーを用いても同様に実施することが可能である。
図1に、本発明の温度測定方法に供される非接触式温度分布測定装置1の概略を示す。本実施形態では、この媒体2の所望の地点(例えば、E)にて超音波を非接触的に励起・移動し、この媒体2を伝播した超音波を所望の地点Dにて非接触的に検出するために、以下に説明するレーザー超音波による測定手法及び構成を採用している。なお、媒体2が比較的低温であれば、接触式の超音波探触子(図示せず)を媒体2に複数設置し、各探触子における超音波励起時間をずらして、上記のような超音波の励起・移動を実現してもよい(この場合も本発明の効果を得るためには超音波検出は非接触で行う必要がある)。
なお、超音波を非接触的に検出する方法として、本実施形態のレーザー超音波による測定手法の他に、電磁超音波や空気超音波による測定手法を採用してもよい。しかしながら、レーザー超音波測定手法は、上記他の測定手法に比べSN比が高く取れるため、高精度測定としてより好適な手法である。また、計測対象に照射するレーザーは、短パルス高エネルギーのレーザー光、例えば、Nd:YAGレーザーが挙げられるが、他のレーザー光を用いることも可能である。
具体的には、超音波発生手段4(例えば、パルスレーザースキャナ)にて発生し、集光手段5(例えば、レンズ)、偏光手段6(例えば、ミラー)及び励起点走査手段7(例えば、ガルバノスキャナー)を通過した短パルス高エネルギーのレーザー光を、媒体2の表面2上の点(例えば、E)に照射すると、この点E付近に超音波が励起される。すなわち、この地点E付近でレーザーエネルギーの吸収による熱応力あるいは気化(アブレーション)圧縮力が発生し、その作用による歪みが超音波(表面波やバルク波)となって媒体2の表面2又は内部2を伝播するというものである。励起点走査手段7によってレーザー光を走査することで、超音波励起点を移動(図1又は図2の例では、点EからE〜Eへ移動)させることができ、各励起点で励起された超音波が点Dに伝播し、そこで夫々の超音波の波形が超音波検出手段8(例えば、レーザー干渉計やレーザードップラー計)によって検出される。これらの波形をもとに複数の点E〜Eから点Dまでの距離,伝播時間tや振幅等が取得され、アナログ/デジタル変換器(以下、A/D変換器と呼ぶ。)を介して制御・演算手段10に送られる。なお、制御・演算手段10は、上述の超音波波形の取得及びその後の温度分布の演算を行うだけでなく、超音波発生手段5や励起点走査手段7の駆動・制御も行う。
ここで、図2に示すように、超音波励起点E〜Eは複数あり、測定中、励起走査手段7によって移動していくのに対し、超音波検出手段8の検出点Dは一点のみであり、固定されていることに留意されたい。このように測定位置を制御することにより、所望の温度測定範囲を設定しつつ、超音波検出手段8のアライメントは全く変更・調整する必要が無いので高精度な超音波計測ひいては温度分布測定を行うことが可能となる。
また、媒体2の表面2上の超音波検出地点Dの付近には温度測定手段11(例えば、熱電対や放射温度計)が設けられ、この地点の温度データTがA/D変換器9を介して制御・演算手段10に送られるようにしてもよい。また、点Dが常に一定の温度である場合など既知である場合には、温度測定手段11を媒体2に設けなくてもよい。
さらに、本発明を実施する前、具体的には、レーザー光を照射する前に、計測対象の媒体2(又は媒体2と同じ材質の材料)を用いて、当該媒体2における超音波速度の温度依存性を求めておく必要がある。
以上のように計測・算出した超音波伝播時間t、検出点Dにおける温度T、温度依存性等を利用して、制御・演算手段10にて、各励起点E〜Eと検出点Dまでを結ぶ線上(つまり一次元)の温度分布が算出され、これら複数の一次元温度分布を用いて二次元座標上に表す等して、媒体2の表面2又は内部2の二次元温度分布を求めることができるものである。
次に、本発明の温度測定方法に係る測定原理を説明する。温度分布をもつ媒体2の表面2において、ある方位の温度分布を考える。この方位において温度が比較的単調に変化していると仮定する。このとき、その温度分布方向に伝播する表面波の伝播時間tは次式で与えられる。
ここで、v(T)は温度Tの関数として表される表面波速度、Lは伝搬距離である。表面温度分布があるとき、温度Tは位置Xの関数として表される。今、図3に示すように、この温度分布を有する領域の長さLを刻みhでN分割したモデルを考える。ある時刻nで一様な表面温度をもつ材料(つまり媒体2)の片側が加熱されることにより、媒体2表面の温度分布が変化する場合を考える。加熱開始から僅かな時間経過後(時刻n+1)の材料表面の各点での温度T n+1は次の差分式を用いて表すことができる。
ここで、T は時刻nにおける媒体2表面のある位置iでの温度である。αは熱拡散率、τは時間刻み、rはvon Neumann安定基準でr<0.5が要求される。加熱側(高温側)の端点i=1の温度は上記差分式のみで計算できないため、差分近似式(上記式(2))と次式の超音波速度の温度依存性を利用する。
ここで、a、bは夫々、媒体2の材料固有の定数であり、別途、校正試験を行う等して予め求めることができる。なお、上記式(4)式では、この表面波速度の温度依存性を線形と仮定したが、場合によっては他の非線形な式で近似してもよい。
このように式(4)を用いれば端点(i=1)での音速が求まり、さらにこの音速と表面波伝播時間tと上記差分式(2)とを組み合わせた次式から加熱側の温度を計算することができる。
ここでtは時刻n+1において計測された表面波伝播時間である。
さらに、低温側の端点i=Nの温度が既知(例えば、点Dでの実測値)であるとき、tが測定されれば式(2)および式(5)から時刻n+1での表面温度T n+1が全ての空間位置(i=1〜N)で計算可能となるので、表面波伝搬方位における一次元温度分布が得られることになる。
媒体2表面2上のある領域において上述のような一次元温度分布を順次場所を変えて得ることで、その領域内の温度分布(二次元分布)を得ることができる。
次に、図4に示すフローチャートを用いて実際の測定・評価方法のステップを説明する。まず、本発明の測定装置1によって媒体2を加熱・励起する前に、予め計測対象である媒体2(又は媒体2と同じ材質の試験片)における超音波速度の温度依存性v=f(T)を求めておく必要がある(ステップS1)。ここで、この温度依存性の導出にあたって、上述のように線形(つまりvがTの一次関数)と仮定してもよいし、非線形(例えば、vがTの二次関数)と仮定してもよい。例えば、高温域での温度分布測定を目的としている場合には、非線形の近似式の方が実際の現象をより的確に模擬していると考えられる。
その後、本実施形態においては、媒体2の一端面に設置されたヒーター3に電圧を印加し、この端面側から媒体2を加熱する(ステップS2)。なお、実際の製造プロセス中の温度分布を測定する場合には、このステップS2が存在せず、ステップS1終了後、下記のステップS3に進む場合もあると考えられる。
レーザー光を媒体2に照射し、媒体2のある点(例えば、E)を超音波励起し、超音波波形を検出する(ステップS3)。検出された波形データはA/D変換器9を通して制御・演算手段10に送られる。
なお、上記ステップS3の際、超音波励起点は移動(例えば、表面の点Eから点E乃至点Eを通過し点Eまで移動)し、検出点Dは固定しておくことが本発明では肝要である。これによって、表面上の各励起点から検出点Dまでの間の複数のライン上を伝播する複数の超音波波形(複数の一次元温度分布)が取得されるため、検出点Dと励起点が移動した軌跡とで画定された面積(図2では、斜線でハッチングされた部分)での二次元温度分布が可能となるとともに、厳格なアライメント調整が通常、要求される超音波検出手段は測定開始から終了まで全く変更・調整する必要が無い。
また、ステップS3の実行中、検出点D付近の表面温度Tを温度測定手段11にて検出する(ステップS4)。表面温度Tも波形データと同様に、A/D変換器9を通して制御・演算手段10に送られる。
制御・演算手段10では、各励起点から検出点Dまでの超音波伝播時間tが算出される(ステップS5)。
以上のステップS1〜5までに取得された測定データを基にある励起点Eと検出点Dとの間のあるライン上の一次元温度分布を数値解析により導出する(ステップS6)。なお、測定中に励起点は移動していることから、別の励起点と検出点Dとの間の一次元温度分布も同様に導出される。
本実施形態では、一次元温度分布の導出にあたって、有限差分法を利用した上記測定原理に基づいた数値解析が行われる。具体的には、ある解析時刻(例えば、n+1)において、図3で示したN分割差分解析モデルのN番目位置(i=N)の温度Tは、検出点Dの温度Tに相当するため、ステップS4で実測した温度Tが利用される。位置2〜N−1のうちのi番目位置の温度T n+1は上記(2)及び(3)式から求められる。すなわち、一解析時刻前(n)の温度T と当該i番目位置に隣接する位置i−1又は位置i+1の温度Ti−1 と温度Ti+1 とから解析できる。また、N分割差分解析モデルの各温度の初期条件として、例えば、加熱前の媒体温度を利用することが可能である。
なお、1番目位置(i=1)の温度Tは、励起点(例えば、E)の温度TE1に相当するため、上記(5)式より算出される。すなわち、ステップS1で求められた温度依存性の近似式、ステップS5で算出された伝播時間t等で決定された上記(4)式より温度TつまりTE1が算出されることになる。
本実施形態では、ある励起点から検出点Dまでの一次元温度分布の解析を、有限差分法による上記測定評価法を利用したが必ずしもこれに限定されず、例えば、有限要素法、境界要素法、或いはその他の数値解析手法、又はその他の解析手法、例えば、本発明者らによる特許文献1に開示の計算法(解析解を使った最適解同定のための繰り返し計算)、を利用してもよい。しかしながら、特許文献1に開示の上記計算法では、媒体2の加熱面が均一に加熱されていなければならない等、計算可能な境界条件に制約があるため、こうした境界条件を選ばない本実施形態の差分法の方が測定条件の柔軟性や適応可能性の面で望ましい。また、有限要素法等の他の数値解析手法は、ある時刻の温度を導出するにあたって、通常、煩雑な繰り返し計算を要するため、温度のリアルタイム測定の面からは本実施形態の差分法が有利であろう。
以上のように導出された複数の一次元温度分布を用いて(座標に表す等して)、二次元温度分布を取得する(ステップS7)。
実施例1として、計測対象である媒体2には厚さが30mmのアルミニウム平板(A2017)を用い、媒体2の片面にヒーター3を設置し、その表面2上に温度勾配を付くように加熱した。超音波発生手段4と励起点走査手段7には夫々パルスレーザー発生器とガルバノスキャナーが用いられ、パルスレーザー(Nd:YAG,1064nm,200mJ)を媒体2の表面2上に照射・走査した。本実施例の超音波の励起・移動は図2に示した方法と同様であり、点Eから点D及び点Eから点Dまでの距離は夫々60mmとし、各励起点の間の距離を20mmに設定した。また、超音波検出手段8には、フォトリフラクティブ二光波混合法を用いたレーザー干渉計(Nd:YAG,CW,532nm,200mW)が用いられ、表面2を伝播した表面波SAWを点Dにおいて検出した。
本実施例における表面波速度vの温度依存性v(T)として、線形近似式v=−0.756T+2981.7(m/s)が用いられた。
図5に本発明の実施例1の装置1を用いて測定された媒体2の表面2の二次元温度分布の経時変化を示す。ここで、各グラフに付された横軸と縦軸とは、夫々、図2に示す媒体表面2上のX方向の位置とY方向の位置とを示す(単位はmm)。例えば、励起点Eの位置(X,Y)は、原点(0,0)となっている。なお、温度測定を行うにあたっては、図1及び2に示すようにヒーター3により媒体2の一方の端面を、その端面のX方向の位置における温度が不均一になりつつ(温度分布が生じるようにしつつ)、Y及びZ方向の位置における温度が極力、均一(同一温度)になるよう加熱した。
また、図5には参考として赤外線カメラによる二次元温度分布の経時変化を示す。なお、赤外線カメラによる結果は、本発明の測定と同時に、媒体2の表面2の反対側にある表面(図1では表面2を参照)を計測したものである。なお、この温度測定実験の場合、媒体2の深さ方向(図1ではz方向)には均一に加熱されているため、表面2の温度分布ともう一方の面2の温度分布はほぼ同等であると推定される。
図5に示す測定結果より、加熱時間が経過するに従い、加熱面(図2参照)に近いX=0断面からX方向(正方向)に向かって熱が流入するよう媒体表面2が加熱され、表面温度が分布をもって上昇していることが二次元的に確認できた。
図6は、図5と同様に実施例1と赤外線カメラとによる測定結果を示したものであるが、定量的に比較できるよう、あるY方向位置断面における一次元温度分布を示したものである。具体的には、加熱時間120秒後のY=40mmにおけるX方向の温度分布(図6(a))と、同時刻のY=20mmにおけるX方向の温度分布(図6(b))を示す。
図5及び図6の結果において、部分的に多少の差が見られるが、本発明の方法による測定結果(実施例1)と赤外線カメラによる測定結果とは概ねよく一致しており、本手法の有効性が確認された。
なお、上記の実施形態や実施例においては、図2に示したように超音波として媒体表面(例えば、表面2)を伝播する表面波SAWを用いて表面2の二次元温度分布を求めているが、超音波として、図7に示すように、媒体2の内部2を伝播する(例えば、媒体2の一方の表面2の超音波励起点Eから侵入し他方の表面2に反射して上記表面2の検出点Dに戻る)バルク波BW(縦波又は横波)を用いて媒体内部2の二次元又は三次元の温度分布を求めることも可能である。
また、上記の実施形態や実施例においては、励起点走査手段7(ガルバノスキャナー)から媒体2の各励起点までの区間と、検出点Dから超音波検出手段8(レーザー干渉計)までの区間とは、レーザー光が空気中を伝播するよう構成されているが、例えば、夫々の区間の一部に、オプティカルファイバー等を追加した構成にしてもよい。これにより、短パルス高エネルギーのレーザー光を安全に照射・走査・検出することが可能となる。
工学・工業の諸分野において材料の温度分布を非接触でモニタリングしたいとう要望が数多くある。例えば、セラミックスや金属の焼結工程、ダイキャスティング、プラスチック製品やゴム製品の射出成形工程など熱の発生する様々な場面で本発明の温度測定方法は適用可能であり、産業上の利用可能性が非常に高い。
1 非接触式温度分布測定装置
2 媒体(計測対象)
、2 媒体の表面
媒体の内部
3 ヒーター
4 超音波発生手段
5 集光手段
6 偏光手段
7 励起点走査手段
8 超音波検出手段
9 アナログ/デジタル変換器(A/D変換器)
10 制御・演算手段
11 温度測定手段
、E、E、E、E、E、E 超音波励起点
D 超音波検出点
超音波伝播時間

Claims (8)

  1. 超音波の速度と温度との関係式が予め求められた媒体に超音波を励起し、該媒体を伝播した前記超音波を非接触的に検出して、前記媒体の二次元又は三次元温度分布を算出する超音波を用いた温度測定方法であって、
    前記超音波の検出点を固定した状態で前記超音波の励起点のみを移動させて、前記励起点と前記検出点との間の前記超音波の伝播時間を算出し、
    前記媒体の前記二次元又は三次元温度分布を算出するために、前記励起点の各点と前記検出点との間の一次元温度分布を数値解析によって夫々算出し、
    前記数値解析では、前記関係式と前記伝播時間とが利用されることを特徴とする超音波を用いた温度測定方法。
  2. 前記超音波は非接触的に励起されることを特徴とする請求項1に記載の超音波を用いた温度測定方法。
  3. 前記超音波はレーザー光によって励起され、前記励起点の前記移動は前記レーザー光を励起点走査手段により走査することによって達成されることを特徴とする請求項2に記載の超音波を用いた温度測定方法。
  4. 前記検出点で検出される前記超音波が表面波であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超音波を用いた温度測定方法。
  5. 前記検出点で検出される前記超音波がバルク波であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超音波を用いた温度測定方法。
  6. 前記検出点で検出される前記超音波が表面波及びバルク波であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超音波を用いた温度測定方法。
  7. 前記数値解析は有限差分法に基づいていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の超音波を用いた温度測定方法。
  8. 前記媒体が固体材料又は液体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の超音波を用いた温度測定方法。
JP2010011605A 2010-01-22 2010-01-22 超音波を用いた温度測定方法 Active JP5446008B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010011605A JP5446008B2 (ja) 2010-01-22 2010-01-22 超音波を用いた温度測定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010011605A JP5446008B2 (ja) 2010-01-22 2010-01-22 超音波を用いた温度測定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011149839A JP2011149839A (ja) 2011-08-04
JP5446008B2 true JP5446008B2 (ja) 2014-03-19

Family

ID=44536956

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010011605A Active JP5446008B2 (ja) 2010-01-22 2010-01-22 超音波を用いた温度測定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5446008B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20220016403A (ko) * 2020-07-31 2022-02-09 한국광기술원 레이저 초음파 탐상 및 파수신호처리 기반 비접촉 고온 슬리브강의 온도 측정장치 및 그 온도측정방법

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
BR112016024604A2 (pt) 2014-04-22 2017-08-15 Skyrobot Inc sistema de detecção e investigação de falha do painel solar

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0280922A (ja) * 1988-09-16 1990-03-22 Babcock Hitachi Kk ガス流体の流速および温度を測定する方法
JP3459491B2 (ja) * 1995-04-17 2003-10-20 新日本製鐵株式会社 内部温度測定装置
JP2000171232A (ja) * 1998-12-03 2000-06-23 Toshiba Corp 超音波計測装置
JP2009031180A (ja) * 2007-07-30 2009-02-12 Central Res Inst Of Electric Power Ind 内部温度の測定方法および測定装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20220016403A (ko) * 2020-07-31 2022-02-09 한국광기술원 레이저 초음파 탐상 및 파수신호처리 기반 비접촉 고온 슬리브강의 온도 측정장치 및 그 온도측정방법
KR102493099B1 (ko) * 2020-07-31 2023-01-30 한국광기술원 레이저 초음파 탐상 및 파수신호처리 기반 비접촉 고온 슬리브강의 온도 측정장치 및 그 온도측정방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011149839A (ja) 2011-08-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4321190B2 (ja) 材料厚さ測定方法及び装置
Kundu et al. Ultrasonic field modeling: A comparison of analytical, semi-analytical, and numerical techniques
Cerniglia et al. Influence of laser beam profile on the generation of ultrasonic waves
Pei et al. Inspection of cracks using laser-induced ultrasound with shadow method: Modeling and validation
Mounier et al. Sub-gigahertz laser resonant ultrasound spectroscopy for the evaluation of elastic properties of micrometric fibers
Chen et al. Laser-induced full-matrix ultrasonic imaging of complex-shaped objects
Jia et al. Noninvasive ultrasound measurements of temperature distribution and heat fluxes in solids
JP5058109B2 (ja) レーザ超音波法による材料中の縦波と横波の音速の計測方法及び装置
CN111157617B (zh) 一种测量固体材料温度相关杨氏模量的系统及方法
JP4086938B2 (ja) 超音波計測装置
CN106768464A (zh) 一种均匀材质构件内部温度场的激光超声探测方法与系统
Chen et al. All-optical laser-ultrasonic technology for width and depth gauging of rectangular surface-breaking defects
Jensen Safety assessment of advanced imaging sequences II: Simulations
JP5446008B2 (ja) 超音波を用いた温度測定方法
Ihara Ultrasonic sensing: fundamentals and its applications to nondestructive evaluation
JP2001194137A (ja) 材料厚さの非接触測定方法及び装置
KR101053415B1 (ko) 레이저 초음파 측정장치 및 측정방법
JP2002213936A (ja) 材料厚さの非接触測定方法及び装置
Ihara et al. New ultrasonic thermometry and its applications to temperature profiling of heated materials
Chen et al. Width and depth gauging of rectangular subsurface defects based on all-optical laser-ultrasonic technology
JP2010096703A (ja) 電磁超音波法による測定装置及び測定方法
JP2016114570A (ja) 超音波検査方法および装置
Jiménez et al. Dynamic nonlinear focal shift in amplitude modulated moderately focused acoustic beams
Lin et al. Heating of Polymer Films Induced by HIFU: Study of Acoustic and Thermal Effects
CN115420687B (zh) 基于表面波tof延时测量固体材料温度相关剪切模量的系统及方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130117

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130710

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130726

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130919

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131205

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131213

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5446008

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250