JP5445195B2 - 血液浄化器 - Google Patents

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Description

本発明は酢酸セルロースからなる中空糸膜を内蔵した血液適合性に優れた血液浄化器に関する。
腎不全治療などにおける血液浄化法では、血液中の尿毒素、老廃物を除去する目的で、天然素材であるセルロース、またその誘導体であるセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、合成高分子としてはポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの高分子を用いた透析膜や限外濾過膜を分離材として用いた血液透析器、血液濾過器あるいは血液透析濾過器などの血液浄化器が広く使用されている。特に中空糸型の膜を分離材として用いた血液浄化器は体外循環にかかわる循環血液量の低減、血中の物質除去効率の高さ、さらに血液浄化器組立ての生産性などの利点から血液浄化分野での重要度が高い。
中空糸膜を用いた血液浄化器は、通常中空糸膜の中空部に血液を流し、外側部に透析液を向流に流し、血液から透析液への拡散に基づく物質移動により尿素、クレアチニンなどの低分子量物質を血中から除くことを主眼としている。さらに、長期透析患者の増加に伴い、透析合併症が問題となり、近年では透析による除去対象物質は尿素、クレアチニンなどの低分子量物質のみでなく、分子量数千の中分子量から分子量1〜2万の高分子量の物質まで拡大し、これらの物質も除去できることが血液浄化膜に要求されている。特に分子量11700のβ2ミクログロブリンは手根管症候群の原因物質であることがわかっており除去ターゲットとなっている。このような高分子量物質除去の治療に用いられる膜はハイパフォーマンス膜と呼ばれている。近年わが国においては、合成高分子が基材の主成分である非対称構造の中空糸膜がハイパフォーマンス膜として多く臨床で用いられている。
血液浄化膜の素材として利用されている合成高分子であるポリスルホンやポリエーテルスルホンは、疎水性が高いため血液適合性に問題があり、通常は親水化剤、主としてポリビニルピロリドン(PVP)を添加して血液適合性を改善している。ところが、血液浄化膜の性能が高性能になるに従い、膜の細孔径が大きくなるので、血液と接触した親水化剤は、血中により溶け出しやすくなる。患者の健康状態や体質によっては、溶出したPVPに過剰反応し、アナフィラキシーというショック症状を示す場合もある(例えば、非特許文献1、2、3参照)。
合成高分子膜において、血液適合性を付与する方法としてビタミンEを膜表面にコートする技術がある。ビタミンEには抗血栓性や抗酸化剤としての効果があるが、その主たる付与方法は中空糸膜成型後に行うコーティングである。現在、わが国の血液浄化器の薬価では抗血栓性付与による特別な設定はされていないため、製造コストの低減が問題である。(例えば特許文献1参照)
また、合成高分子を材料とした非対称構造である中空糸膜は、血液と接触する内表面にスキン層をもたせることでシャープな分画特性を発現させているが、一方で、分画層が内表面の薄い層のみであることに起因する性能の経時変化が顕著であるという性質を併せ持っている(例えば、非特許文献4参照)。
親水化剤を必要としない単一成分からなる血液浄化膜としてセルロース誘導体からなる膜がある。セルロース誘導体は捕体を活性化させる水酸基の大部分を置換した構造であるため、親水化剤を用いなくても捕体活性化の面においては、血液適合性に優れた素材である。セルロース誘導体の血液浄化用途においては、さらに血液適合性を向上させることを目標にし、血液と接触する内表面の粒径を小さく均一にコントロールすることや、内表面の凹凸をなくし平滑にすること、さらには、合成高分子と同等の分画特性を発現させるために内表面にスキン層を持たせた構造についても検討されている。いずれの発明についても、第一番目もしくは唯一の分画層は最内表面に存在しており、高性能化と性能の経時変化、目詰まり、タンパクの不可逆吸着の抑制が常に課題であった(例えば特許文献2、3、4、5参照)。
日本透析医学会誌 2005年 38号 予稿集p822 日本透析医学会誌 2007年 40号 予稿集p636 腎と透析別冊 55、103-104 2003 (HDF療法) 腎と透析別冊 63、195-196 2007 (HDF療法)
特開2000−254222号公報 特開2002−45662号公報 特開2006−340977号公報 特開2008−178814号公報 特開平10−66725号公報
本発明は、酢酸セルロースからなる外表面付近に2層の緻密層を有する中空糸膜を内蔵した性能安定性と血液適合性に優れた血液浄化器を提供することにある。
血液浄化用途の中空糸膜開発においては、高性能化と多くの場合それとは相反する性質である性能安定性との取り合いがあった。また、血液適合性を確保するために化学物質を用いる工夫もされているが、化学物質使用には工程数が増えること、コストアップ、副作用に対する懸念が付きまとう。本発明者は、前記課題を解決するために血液浄化器に用いる中空糸膜について鋭意検討した結果、分画特性を最内表面に求めず、外表面付近に存在する2層の緻密層にて発現させることで、安定した高性能化を達成できること、また内表面に分画層を存在させないため、表面を緻密構造にしないので、血液成分中の抗酸化作用を持つビリルビンが内表面に局在的に可逆的に存在し、膜表面において患者の体液成分による抗酸化作用が発現できる血液浄化膜の発明に至った。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ついに本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)酢酸セルロースからなる中空糸膜を内蔵した血液浄化器であって、該中空糸膜が粒子の集合体からなり、外表面から内表面に向かって膜厚の30%の範囲に粒子の緻密な層が2層あり、内表面から外表面に向かって膜厚の60%の範囲には平均径が50nm以上の粒子が充填した構造であることを特徴とする血液浄化器。
(2)内径基準の膜面積が1.5m2である血液浄化器の血液流路側にビリルビン0.6mg/dlを含有する血液を用いて血液循環を4時間行った後、生理食塩液にて返血した血液浄化器内に残存するビリルビンの量が10〜500μgの範囲であることを特徴とする(1)に記載の血液浄化器。
(3)血液循環を4時間行った後、生理食塩液にて返血した血液浄化器内に残存する総タンパクの量が200〜1500mgの範囲であり、かつ残存する総タンパクにおけるアルブミンとグロブリンの比が1.5〜2.5であることを特徴とする(1)または(2)に記載の血液浄化器。
本発明の血液浄化器は、分画層を中空糸膜の外表面近傍に2層設けているので、性能安定性と血液適合性に優れた血液浄化膜を内蔵した血液浄化器であり、アナフィラキシーなどのリスクが低い利点がある。
本発明の中空糸膜の構造の一例を示すTEM像。 従来技術の中空糸膜の構造の一例を示すTEM像。 従来技術の中空糸膜の構造の一例を示すTEM像。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、前記課題を解決するために、血液浄化器に用いられる中空糸膜の製造工程と中空糸膜の構造、血液中における性能の関係について検討した。一般には、血液中でのβ2ミクログロブリンなどの低分子量タンパク質の濾過による除去性能を向上させた中空糸膜は、内表面にスキン層を持つ非対称構造であり、素材は合成高分子と親水化剤のブレンドである。このような構造の膜は、血液浄化療法中の4時間程度で、治療開始時と終了直前での性能変化が顕著になる場合がある。また、親水化剤が溶出することによるアレルギー症状が見られる場合もある。高性能を達成しつつ、治療中の経時変化を軽減し、さらに生体適合性の高い膜を得るためには、製造工程において、膜を外表面から2段階で積極的に相分離させ、外表面近傍に2つ以上の分画層を持たせ、一方で内表面近傍は相分離速度を抑制し大きな粒子が均一に充填した構造が適していることを見出し本発明に至った。
本発明において、血液浄化器に充填される中空糸膜の構造は、膜全体において粒子が充填した構造であることが好ましい。構造の観察は電子顕微鏡にて観察可能であり、特に透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行うと、粒子と空隙の区別が明確になるので適している。粒子が充填した構造では、網目状構造よりも、空孔率や粒子径を大きくする方にコントロールしやすく、高性能化に適している。TEM観察において膜の断面を観察した場合、外表面から内表面に向かって膜全体の膜厚に対して30%の範囲で粒子の緻密な層が2層ある構造(同心円状に2重環がみえる)が好ましい。緻密な層とは、TEMで構造観察をした際に、膜の断面構造が内側から外側までが一つの画像で観察できる倍率において、膜断面のコントラストにて判断し、周囲より濃く観察される部分が緻密な層である。緻密な層では、TEMの観察倍率を2万倍まで拡大しても、互いの粒子が接近しているため、粒径測定が困難である。断面サンプルは同サンプルについて複数個所から採取し観察する。いずれについても断面のコントラストが同じ傾向であることを確認して最終的に緻密な層の有無、位置などを判定する。ここで、膜断面構造を観察する際に、部分的に別々の画像を用いると、TEM観察した際の光量の加減などで単純に濃淡を比較できない場合があるので適さない。緻密な層はいわゆる分離に直接作用する分画層であり、分画層が外表面側に2つ以上あるということは、少なくとも2回篩にかけられることを意味しており、分画層の目詰まりに対して、スペアを持った構造であり、性能低下の抑制に効果がある。
また、内表面に緻密層、とくに孔径が小さく薄い密な構造のスキン層がある場合には、血液と接触する内表面に可逆的なタンパク質の吸脱着層が存在できないので、膜と流れる血液との間にストレスが発生することになり適さない。内表面から外表面に向かって膜厚に対して60%の領域では、血液中のタンパク質の大部分を占めるアルブミンやグロブリンが目詰まりしない領域である、径が50nm以上である均一な粒子が均等に充填した均一構造であることが好ましい。均一層の粒子のサイズは55nm以上、150nm以下が好ましく、さらには60nm以上、140nm以下がより好ましい。このサイズの粒子が均一径で均等に充填した構造である場合、血液中のたんぱく質、主にアルブミンが可逆層として血液接触面に存在することが可能となる。ビリルビンはアルブミンと相互作用しやすいので、アルブミンが多く存在するとビリルビンの存在比も高くなるので好ましい。径が150nm以上の粒子の集合体では中空糸膜の強度が弱くなるので、血液浄化膜としては適さない。
膜を構成する基材は、血液への溶出物の心配がない単一高分子基材が好ましく、酢酸セルロースが血液浄化器として実績があり特に好ましい。さらには水酸基の置換度が高い三酢酸セルロースが捕体活性の抑制に効果があり好ましい。
本発明において、成人の正常範囲内であるビリルビン濃度0.6mg/dlの血液を用いて、膜面積1.5m2の血液浄化器にて血液循環を4時間行い、さらに生理食塩液で返血した後、中空糸膜に残存するビリルビンの量が10〜500μgの範囲であることが好ましい。ビリルビンは抗酸化作用がある(例えば、Science, 235, 1043-1046(1987)参照)。血液中における抗酸化活性を測定するには、過酸化物をモニターする必要があるが、血液中の過酸化物を実験室レベルで正確に定量するのは困難である。しかし、人工物である中空糸膜の血液と接触する内表面にわずかでもビリルビンが存在することで、血液浄化療法中の血液循環が原因による酸化ストレスを軽減する作用が期待できる。膜内表面に残存するビリルビンの量は15〜480μgが好ましく、20〜450μgがさらに好ましい。残存するビリルビンの量が15μg以下では、定量が困難であるため好ましくない。血液浄化器内に残存するビリルビンの量は500μgを超えると、返血後の血液浄化器は鮮やかな黄色に着色するので、医療従事者や患者に不安や異常を感じさせるので好ましくない。
本発明において、血液循環を4時間行った後、生理食塩液にて返血した中空糸膜に残存する総タンパク質の量が200〜1500mgであることが好ましい。人工物である血液浄化膜に血液が直接接触すると、異物を認識する生体反応が活発になり、凝血やアレルギーなどを引き起こすリスクが高くなる。中空糸膜の内表面に血液中のタンパク質が可逆的に結合することは、血液適合性を患者自身の成分で付与することになる。血液浄化器内に残存する総タンパク質の量は220mg以上1400mg以下が好ましく、250mg以上1300mg以下がさらに好ましい。血液浄化器に残存する総タンパク質の量が200mg以下では中空糸膜の内表面を十分な厚さでタンパク質層が形成されているとは言えない。また、吸着量が1500mgを超えると、血液からのタンパク質の損失が多過ぎ、特に栄養状態の良くない患者には適切でない。
さらに、血液浄化器に残存するタンパク質について、アルブミンとグロブリンの比(A/G比)は1.5〜2.5であることが好ましい。牛血液の場合、血液中のA/G比はおよそ1.2〜1.5であるが、アルブミンはビリルビンと結合しやすく、アルブミンの存在率が多い方がビリルビンの存在率も高くなるので、血液浄化器内に残存するタンパク質は血液全体と比較してアルブミンの量が多い方が好ましい。A/G比が1.5以下では通常血液と同程度の比であり、ビリルビンの局在化に効果的でない。またA/G比が2.5を超える場合は、膜の構造が原因でグロブリンが吸着や目詰まりで正常に回収できなかった可能性があり適切でない。
このように、中空糸膜の内表面に可逆的にビリルビンや、特定のA/G比でタンパク質を存在させるためには、内表面の構造が、血液中のタンパク質の大部分を占めるアルブミンやグロブリンが目詰まりしない領域である、粒子径が50nm以上である均一な粒子が均等に充填した均一構造であることが好ましい。先述したように、内表面に緻密層、とくに孔径が小さく薄い密な構造のスキン層がある場合には、表面構造が平滑過ぎて、血液と接触する内表面に可逆的なタンパク質の層が存在できない。また、粒子径が150nm以上ではタンパク質による目詰まりや糸強度が低下するので好ましくない。さらに、内表面近傍にボイドがあるような場合は、内表面が不規則になり血液が活性化されて凝固しやすくなるので好ましくない。
本発明において、中空糸膜の平均膜厚は10μm以上50μm以下が好ましい。平均膜厚が大きすぎると、透水性は高くても、中〜高分子量物質の透過性が不足することがある。また、血液浄化器の設計上、膜面積を大きくする際に膜厚が大きいと、血液浄化器の大きさが大きくなってしまい適切ではない。膜厚は薄い方が物質透過性が高まるため好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。平均膜厚が薄すぎると、バースト圧などの欠点評価などにおいて血液浄化器に必要な最低限の膜強度を維持するのが困難になることがある。したがって、平均膜厚は12μm以上がより好ましく、13μm以上がさらに好ましい。ここでいう平均膜厚とは、ランダムにサンプリングした中空糸膜5本を測定したときの平均値である。この時、それぞれの値と平均値との差が、平均値の2割を超えないこととする。
また、中空糸膜の内径は100〜300μmであることが好ましい。内径が小さすぎると、中空糸膜の中空部を流れる血液の圧力損失が大きくなるため、溶血の恐れがある。また、内径が大きすぎると、中空糸膜の中空部を流れる血液のせん断速度が小さくなるため、血液中のタンパク質が経時的に膜の内面に堆積しやすくなる。中空糸膜内部を流れる血液の圧力損失やせん断速度が適度な範囲となる内径は150〜250μmである。
本発明の血液浄化器は、血液透析や血液透析濾過、血液濾過など、腎不全の治療に用いる血液浄化器として好適である。さらに、高性能であるにも関わらず、膜からの親水化剤などの溶出物が無く、さらに患者自身の血液成分による酸化ストレス抑制作用も期待できるなど、安全な治療ができるという点で優れている。
このような血液浄化器に用いる中空糸膜の製造方法としては、以下に示す条件が好ましい。粒子充填構造にするためには、紡糸原液のポリマー濃度を低くすればよく、さらに内表面近傍の均一構造領域の粒子径を50nm以上にするには、ポリマーの種類などにもよるが三酢酸セルロースの場合、18質量%以下、より好ましくは17質量%以下とするのが好ましい。しかし、紡糸原液中のポリマー濃度が低すぎても、必要な膜強度を得られない可能性があるので、12質量%以上が好ましく、14質量%以上がより好ましい。
紡糸原液は、紡糸原液中の不溶成分やゲルを取り除く目的でノズル吐出直前にフィルターにかけるのが好ましい。フィルターの孔径は小さい方がよく、具体的には中空糸膜の膜厚以下のものが好ましく、中空糸膜の膜厚の1/2以下がより好ましい。フィルターが無い場合やフィルターの孔径が中空糸膜の膜厚を超える場合、ノズルスリットの一部に詰まりが生じ、偏肉糸の発生を招くことがある。さらに、フィルター無しの場合やフィルター孔径が中空糸膜の膜厚を超えると、紡糸原液中の不溶解成分やゲルなどの混入が原因で部分的なボイドの原因となりやすい。粒子充填構造の場合、ボイドなどの膜中の欠陥は血液浄化膜としての強度を著しく低下させることになる。紡糸原液の濾過は、吐出するまでの間に複数回実施してもよく、フィルターの寿命を延ばすことができるので好ましい。
また、ドラフト比は小さい方が好ましい。具体的には1以上10以下が好ましく、3以上9以下がより好ましく、5以上9以下がさらに好ましい。ここで言うドラフト比は、ノズルから吐出される紡糸原液の吐出線速度と凝固浴出口における中空糸膜引取り速度の比である。ドラフト比が大きすぎると、膜の構造形成時に張力がかかり、粒子の変形や均一性を損なうことがある。
紡糸原液を吐出する際のノズルの温度は、紡糸原液の粘度を可紡領域でコントロールするために、50℃以上130℃以下が好ましく、70℃以上120℃以下がより好ましく、80℃以上110℃以下がさらに好ましい。ノズル温度が低過ぎると紡糸原液の粘度が高くなるため、ノズルにかかる圧力が高くなり紡糸原液を安定に吐出できないことがある。また、ノズル温度が高過ぎると相分離による膜形成に影響し孔径が大きくなりすぎる可能性がある。
吐出した紡糸原液は、空中走行部を経て凝固液に浸漬させる。この時の空中走行部は、膜の外表面の相分離速度を早くするために、外気と遮断する部材(紡糸管)で囲み、相対湿度を高くすることが好ましい。具体的には、外部から水蒸気を送り込み、紡糸管内の相対湿度を80〜100%とするのが好ましい。90〜100%とするのがより好ましい。送り込んだ水蒸気が紡糸管内で急激に温度低下すると結露し、膜の外表面が不均一になるので、水蒸気の温度は紡糸管内温度よりも低い温度であることが好ましい。紡糸管内温度をコントロールするために、紡糸管を外側から暖めるためのヒーターを設置しても良い。水蒸気の温度は、15℃以上100℃以下が好ましく、30℃以上より好ましく、40℃以上がさらに好ましい。紡糸管内の水蒸気にムラがあると相分離速度にムラができるので、紡糸管内の水蒸気はムラのないように送り込むことが好ましい。具体的には、紡糸管内に送り込むノズルを複数設置する方法が好ましい。空中走行部の長さは紡糸速度にもよるが、3〜150mmが好ましく、5〜100mmがより好ましく、5〜70mmがさらに好ましい。紡糸管内を通過する時間は、0.001秒〜1.0秒が好ましく、0.01秒〜0.1秒がさらに好ましい。
本発明の一つである、中空糸膜内表面から外表面に向かって膜厚の60%の領域で均一な粒子構造を持たせる手段として、内表面の相分離速度を抑制する必要がある。そこで、中空形成材は、相分離において不活性な液体や気体を用いるのが好ましい。このような中空形成材の具体例としては、流動パラフィンやミリスチン酸イソプロピル、窒素、アルゴンなどが挙げられる。これらの中空形成材には、必要に応じてグリセリンやエチレングリール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの非溶媒を加えることもできる。
空中走行部を経てゲル化した膜は、凝固浴中を通過させることにより相分離を進行させる(粒子を成長させる)。このとき、凝固液は紡糸原液を調製する際に使用した溶媒の水溶液が好ましい。凝固液が水溶液である場合には、外表面からの相分離速度が加速するので好ましい。空中走行部で水蒸気によって、外表面からの相分離が促進した状態で、さらに外表面からの相分離を促進させる水溶液の凝固浴を通過するという2段階の相分離反応を経ることは、本発明の一つである外表面付近に2つの緻密層を形成させる手段となる。凝固浴の溶媒濃度は30質量%以下が好ましく、27質量%以下がより好ましく、24質量%以下がさらに好ましい。ただし、凝固浴の溶媒濃度が低すぎると紡糸時の濃度コントロールが困難であるため、溶媒濃度の下限は1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。凝固浴の温度は凝固速度のコントロールのため5℃以上50℃以下が好ましい。10℃以上45℃以下がより好ましい。凝固浴には、必要に応じてグリセリンやエチレングリール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの非溶媒、また酸化防止剤や潤滑剤などの添加剤を加えることもできる。
凝固浴を経た中空糸膜は洗浄工程を経て溶媒などの不要な成分を洗い流す。このときに用いる洗浄液は水が好ましく、温度は20℃〜80℃であれば洗浄効果が高くなるため好ましい。20℃未満では洗浄効率が悪く、80℃超では熱効率が悪いことと、中空糸膜への負担が大きく、保存安定性や性能に影響を与えることがある。また、本発明の中空糸膜はポリマー濃度を低くし、粒子充填構造をとっているので、構造が完全に完成する乾燥工程以前の工程で、外部から強い力を加えると膜構造や表面形状、孔形状が変形してしまうことがあるので、洗浄浴を走行する中空糸膜になるべく抵抗がかからないような工夫を施すのが好ましい。中空糸膜から溶媒や添加剤等の不要な成分を除去するためには、液更新を高めるのが好ましく、従来は、例えば洗浄液のシャワーの中を中空糸膜を走行させるとか、洗浄液の流れと中空糸膜の走行を向流にするなどして洗浄効率を高めていた。しかし、このような洗浄方法を採用すると中空糸膜の走行抵抗が大きくなるため、中空糸膜に延伸をかけて弛んだり縺れたりすることを防ぐ必要があった。
中空糸膜の変形抑制と洗浄性の両立をはかるためには、洗浄液と中空糸膜を並流で流すことが有効である。洗浄工程の具体的な態様としては、例えば、洗浄浴に傾きをつけ中空糸膜がその傾斜を下っていくような設備がよい。具体的には、浴の傾斜は1〜3度が好ましい。3度以上では洗浄液の流速が早くなりすぎ中空糸膜の走行抵抗を抑えることができないことがある。1度未満では、洗浄液の滞留による中空糸膜の洗浄不良が発生することがある。このように洗浄浴での中空糸膜への抵抗を抑制することで、洗浄浴入り口の中空糸膜の走行速度と出口の走行速度をほぼ同じにすることができる。また、洗浄効率をより高めるために、洗浄浴は多段に配置されるのが好ましい。段数については洗浄性との兼合いにより適宜設定する必要があり、例えば、本発明に使用される溶媒、非溶媒、親水化剤等の除去を目的とするのであれば、3〜30段程度あれば足りるといえる。
洗浄工程を経た中空糸膜は必要に応じてグリセリン処理を行なう。たとえば、セルロース系高分子からなる中空糸膜の場合はグリセリン浴を通過させた後、乾燥工程を経て巻き取る。この場合グリセリン濃度は60〜90質量%が好ましい。より好ましくは70〜80質量%である。グリセリン濃度が低すぎると、乾燥時に中空糸膜が縮み易く、保存安定性が悪くなることがある。また、グリセリン濃度が高すぎると、中空糸膜に余分なグリセリンが付着しやすく、血液浄化器に組み立てる時に中空糸膜端部の接着性が悪くなることがある。グリセリン浴の温度は、50℃以上80℃以下が好ましい。より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。グリセリン浴の温度が低すぎると、グリセリン水溶液の粘度が高く、中空糸膜の細孔の隅々までグリセリン水溶液が行き渡らない可能性がある。グリセリン浴の温度が高すぎると、中空糸膜が熱で変性、変質してしまう可能性がある。
このようにして、2段階相分離により外表面近傍の構造を2層の緻密層とし、内表面近傍は相分離速度を抑制し粒子が均一に充填した構造の中空糸膜を作製することができる。得られた中空糸膜を充填した血液浄化器について、血液循環後の残存ビリルビン量は10μg以上500μg以下とすることが可能となる。また、残存総タンパク量は200mg以上1500mg以下、さらにそのA/G比は1.5〜2.5の範囲とすることができる。
以下、本発明の有効性について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.断面構造の観察(TEM)
評価する中空糸膜を水洗した後、エタノールシリーズで脱水させた。脱水後、エタノールを酢酸3‐メチルブチルに置換し、臨界点乾燥装置を用いて膜を乾燥させた。
乾燥させた膜を樹脂包埋し、ミクロトームを用いて超薄切片を作製した。作製した超薄切片を四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色し、カーボン蒸着を施した。透過電子顕微鏡 日本電子株式会社製JEM2100を用いて、加速電圧200kVで膜全体の構造と粒子径について観察した。
2.ビリルビン液の調製
ビリルビン試薬(ナカライテスク製)40mgを0.1M炭酸ナトリウム水溶液8mlに溶解した後、4%牛血清アルブミン(BSA)(ナカライテスク製)を約160ml加えて混和する。次いで0.1N塩酸8mlを加えた後、4%BSA溶液で200mlに調製する。これをビリルビン原液とする。ビリルビンは光により分解するので、遮光した条件で取り扱う。
3.血液循環と血中UFRの測定
クエン酸を添加し、凝固を抑制した牛血液をヘマトクリット25〜30%、タンパク濃度6〜7g/dlに調製する。ここに2で作製したビリルビン溶液を血液中の総ビリルビン濃度が0.6mg/dlになるように添加して混和する。測定はできるだけ遮光して実施する。37℃で生理食塩液にてプライミング処理した血液浄化器に200ml/minで送液し、一定の流速(Qf=15ml/min)で血液をろ過する。このとき、ろ液は血液に戻し、循環系とする。循環開始15分後と120分後にモジュール前後の血液の圧力(PinとPout)、ろ液側の圧力(Fout)を測定する。圧力を測定した時点での濾過流速(Qf)を正確に測定する。以下の式から血中UFRを算出する。
TMP(mmHg)=(Pin+Pout)÷2−Fout
π(mmHg):膠質浸透圧 Qf=0の時のTMP
血中UFR(ml/hr/m2/mmHg)=Qf(ml/min)×60÷(TMP−π)÷膜面積(m2
血中UFR保持率=120分値÷15分値×100
4.血液浄化器に残存したビリルビンとタンパクの測定
上記3の方法にて4時間血液循環した後、生理食塩液を用いて臨床の場合と同様に返血する。返血に使用する生理食塩液の量は1.5m2の膜面積の場合、約200mlである。返血が終わったモジュールは、最短長さに切り詰めた新しい回路を用いて、37℃で、0.1%tween20溶液200mlで流速500ml/minにて30分洗浄し、可逆的に吸着している成分を回収する。洗浄液は全て回収し、体外診断用のキット:総ビリルビン濃度(ビリルビンBIIテストワコー、和光純薬工業製)、タンパク濃度:アルブミン、グロブリン比(A/G比)(A/G B-テストワコー 和光純薬工業製)を用いて総ビリルビン濃度、タンパク濃度、A/G比を測定する。
5.中空糸膜の内径、外径、膜厚の測定
これらの測定は、中空形成材を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた形態で観察する。乾燥方法は問わないが、乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去したのち、純水で完全に置換した後、湿潤状態で形態を観察する。中空糸膜の内径、外径および膜厚は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられたφ3mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面でカミソリによりカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon−V−12Aを用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定することにより得られる。中空糸膜断面1個につき2方向の短径、長径を測定し、それぞれの算術平均値を中空糸膜断面1個の内径および外径とし、膜厚は(外径−内径)/2で算出した。5断面について同様に測定を行い、その平均値を内径、外径、膜厚とした。
(実施例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)18質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)57.4質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.6質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を2段の焼結フィルターに順に通した後、100℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに吐出した。外気と遮断された紡糸管には、40℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を90%とした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。紡糸管通過後、30℃の10質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、60℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライアーで乾燥し、巻き上げた。ドラフト比は7であった。また、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μm、TEMによる構造観察により、粒子充填構造であること、外表面から内表面に向かって4.5μmの範囲で緻密な層が2つあること、また内表面から外表面に向かって9μmの範囲では約50nmの粒子が均質に充填したような構造であることが観察された(図1)。
得られた中空糸膜を用いて内径基準の膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。純水でプライミングした後、ビリルビンを添加した牛血液による循環試験を4時間実施した。循環開始15分後と120分後に血中UFRの測定を実施した。4時間循環後、生理食塩液にて返血を行い、さらに、tween20溶液で残存タンパクを回収した。回収液についてビリルビン量、タンパク量、タンパクについてはA/G比を測定した。測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜は、血液循環後に残存するビリルビンとタンパクが観察され、血液循環中に膜表面において抗酸化機能が発現されていたと考えられ、血液適合性に優れた素材であるといえる。
(実施例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)14質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)60.2質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.8質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を2段の焼結フィルターに順に通した後、90℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに吐出した。外気と遮断された紡糸管には、60℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を95%とした。空中走行部の長さは80mm、紡糸管内を通過時間は0.06秒であった。紡糸管通過後、40℃の15質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、70℃、75質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライアーで乾燥し、巻き上げた。ドラフト比は8であった。また、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は13μm、TEMによる構造観察により、粒子充填構造であること、外表面から内表面に向かって3.9μmの範囲で緻密な層が2つあること、また内表面から外表面に向かって8μmの範囲では約100nmの粒子が均質に充填したような構造であることが観察された。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。純水でプライミングした後、ビリルビンを添加した牛血液による循環試験を4時間実施した。循環開始15分後と120分後に血中UFRの測定を実施した。4時間循環後、生理食塩液にて返血を行い、さらに、tween20溶液で残存タンパクを回収した。回収液についてビリルビン量、タンパク量、タンパクについてはA/G比を測定した。測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜は、血液循環後に残存するビリルビンとタンパクが観察され、血液循環中に膜表面において抗酸化機能が発現されていたと考えられ、血液適合性に優れた素材であるといえる。
(実施例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)15質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)59.5質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.5質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を2段の焼結フィルターに順に通した後、110℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに吐出した。外気と遮断された紡糸管には、100℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を100%とした。空中走行部の長さは50mm、紡糸管内を通過時間は0.04秒であった。紡糸管通過後、45℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、80℃、80質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライアーで乾燥し、巻き上げた。ドラフト比は7であった。また、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は10段とした。
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μm、TEMによる構造観察により、粒子充填構造であること、外表面から内表面に向かって4.5μmの範囲で緻密な層が2つあること、また内表面から外表面に向かって9μmの範囲では約60nmの粒子が均質に充填したような構造であることが観察された。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。純水でプライミングした後、ビリルビンを添加した牛血液による循環試験を4時間実施した。循環開始15分後と120分後に血中UFRの測定を実施した。4時間循環後、生理食塩液にて返血を行い、さらに、tween20溶液で残存タンパクを回収した。回収液についてビリルビン量、タンパク量、タンパクについてはA/G比を測定した。測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜は、血液循環後に残存するビリルビンとタンパクが観察され、血液循環中に膜表面において抗酸化機能が発現されていたと考えられ、血液適合性に優れた素材であるといえる。
(実施例4)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)18質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)57.4質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.6質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を2段の焼結フィルターに順に通した後、100℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに吐出した。外気と遮断された紡糸管には、40℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を90%とした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。紡糸管通過後、20℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、60℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライアーで乾燥し、巻き上げた。ドラフト比は7であった。また、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は16μm、TEMによる構造観察により、粒子充填構造であること、外表面から内表面に向かって4.5μmの範囲で緻密な層が2つあること、また内表面から外表面に向かって10μmの範囲では約75nmの粒子が均質に充填した構造であることが観察された。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。純水でプライミングした後、ビリルビンを添加した牛血液による循環試験を4時間実施した。循環開始15分後と120分後に血中UFRの測定を実施した。4時間循環後、生理食塩液にて返血を行い、さらに、tween20溶液で残存タンパクを回収した。回収液についてビリルビン量、タンパク量、タンパクについてはA/G比を測定した。測定した結果を表1に示す。
得られた中空糸膜は、血液循環後に残存するビリルビンとタンパクが観察され、血液循環中に膜表面において抗酸化機能が発現されていたと考えられ、血液適合性に優れた素材であるといえる。
(実施例5)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)18質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)57.4質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.6質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を2段の焼結フィルターに順に通した後、100℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに吐出した。外気と遮断された紡糸管には、40℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を90%とした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。紡糸管通過後、30℃の10質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、60℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライアーで乾燥し、巻き上げた。ドラフト比は7であった。また、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は14μm、TEMによる構造観察により、粒子充填構造であること、外表面から内表面に向かって4.5μmの範囲で緻密な層が2つあること、また内表面から外表面に向かって9μmの範囲では約85nmの粒子が均質に充填した構造であることが観察された。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。純水でプライミングした後、ビリルビンを添加した牛血液による循環試験を4時間実施した。循環開始15分後と120分後に血中UFRの測定を実施した。4時間循環後、生理食塩液にて返血を行い、さらに、tween20溶液で残存タンパクを回収した。回収液についてビリルビン量、タンパク量、タンパクについてはA/G比を測定した。測定した結果を表1に示す。
得られた中空糸膜は、血液循環後に残存するビリルビンとタンパクが観察され、血液循環中に膜表面において抗酸化機能が発現されていたと考えられ、血液適合性に優れた素材であるといえる。
(比較例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)20質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)56.0質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.0質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を2段の焼結フィルターに順に通した後、55℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した水とともに吐出した。紡糸管は外気と遮断したのみである。空中走行部の長さは50mm、紡糸管内を通過時間は0.04秒であった。紡糸管通過後、50℃の30質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、50℃の水洗浴を経た後、70℃、70質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライアーで乾燥し、巻き上げた。ドラフト比は2であった。また、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は10段とした。
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は30μm、TEMによる構造観察により、網目構造であること、内表面にスキン層があることが観察された。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。純水でプライミングした後、ビリルビンを添加した牛血液による循環試験を4時間実施した。循環開始15分後と120分後に血中UFRの測定を実施した。4時間循環後、生理食塩液にて返血を行い、さらに、tween20溶液で残存タンパクを回収した。回収液についてビリルビン量、タンパク量、タンパクについてはA/G比を測定した。測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜は、中空形成材として水を用いたため、内表面が小さな孔径の緻密層であり、血液循環後に残存するビリルビンとタンパクはほとんど観察されなかった。血液循環中に膜表面において血液成分による抗酸化機能は発現されていなかったと考えられる。
(比較例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)18質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)57.4質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.6質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を2段の焼結フィルターに順に通した後、110℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに吐出した。紡糸管は外気と遮断したのみである。空中走行部の長さは10mm、紡糸管内を通過時間は0.01秒であった。紡糸管通過後、40℃の30質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、70℃、70質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライアーで乾燥し、巻き上げた。ドラフト比は5であった。また、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μm、TEMによる構造観察により、粒子を充填したような構造であることが観察された(図2)。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。純水でプライミングした後、ビリルビンを添加した牛血液による循環試験を4時間実施した。循環開始15分後と120分後に血中UFRの測定を実施した。4時間循環後、生理食塩液にて返血を行い、さらに、tween20溶液で残存タンパクを回収した。回収液についてビリルビン量、タンパク量、タンパクについてはA/G比を測定した。測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜は、中空形成材が非凝固系であることに加え、空中走行部を短くし、さらに凝固浴濃度、凝固浴温度ともに高くして、内層からも外層からも積極的な凝固を極力抑制した条件としたため、特定部位に緻密層を持たない粒子径が小さい均一構造となったことから、血液循環後に残存するビリルビンとタンパクが十分量ではなく、血液循環中に膜表面において十分な抗酸化機能が発現されていないと考えられる。また、血中UFRの保持率が50%を下回ったことから、治療中の性能変動が大きいことが予想された。
(比較例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)16質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)58.8質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.2質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を2段の焼結フィルターに順に通した後、100℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに吐出した。紡糸管は外気と遮断したのみである。空中走行部の長さは150mm、紡糸管内を通過時間は0.12秒であった。紡糸管通過後、40℃の10質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、80℃、80質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライアーで乾燥し、巻き上げた。ドラフト比は7であった。また、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μm、TEMによる構造観察により、外表面に一層のスキン層がある非対称構造であることが観察された(図3)。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。純水でプライミングした後、ビリルビンを添加した牛血液による循環試験を4時間実施した。循環開始15分後と120分後に血中UFRの測定を実施した。4時間循環後、生理食塩液にて返血を行い、さらに、tween20溶液で残存タンパクを回収した。回収液についてビリルビン量、タンパク量、タンパクについてはA/G比を測定した。測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜は、凝固浴濃度が低く、また空中走行部での湿度が十分に高くないことから凝固反応は凝固浴で一気に進行し、外表面にスキン総が一層となったため、血中UFRの保持率が50%を下回り、治療中の性能変動が大きくなったものと考える。
(比較例4)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)12質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)61.6質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)26.4質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を2段の焼結フィルターに順に通した後、90℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに吐出した。紡糸管は外気と遮断したのみである。空中走行部の長さは50mm、紡糸管内を通過時間は0.04秒であった。紡糸管通過後、40℃の10質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させたが、中空糸膜の強度が低すぎ紡糸することができなかった。
本発明の中空糸型血液浄化器は性能安定性および血液適合性に優れている。さらに基材以外の化学物質を構成成分としないことから、アレルギー反応に対するリスクが低いという特性を持つ。そのため、臨床現場での取り扱いにおいて、安定した性能および高い安全性が期待できるという利点がある。したがって、産業の発展に大きく寄与できる。

Claims (3)

  1. 酢酸セルロースからなる中空糸膜を内蔵した血液浄化器であって、該中空糸膜が粒子の集合体からなり、外表面から内表面に向かって膜厚の30%の範囲に粒子の緻密な層が2層あり、内表面から外表面に向かって膜厚の60%の範囲には平均径が50nm以上の粒子が充填した構造であることを特徴とする血液浄化器。
  2. 内径基準の膜面積が1.5m2である血液浄化器の血液流路側にビリルビン0.6mg/dlを含有する血液を用いて血液循環を4時間行った後、生理食塩液にて返血した血液浄化器内に残存するビリルビンの量が10〜500μgの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の血液浄化器。
  3. 血液循環を4時間行った後、生理食塩液にて返血した血液浄化器内に残存する総タンパクの量が200〜1500mgの範囲であり、かつ残存する総タンパクにおけるアルブミンとグロブリンの比が1.5〜2.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の血液浄化器。
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