JP5445109B2 - 絶縁電線 - Google Patents

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Description

本発明は、回転電機や変圧器などの電気機器のコイルに用いられる絶縁電線に係り、特に、押出被覆層を含む絶縁被覆が形成された絶縁電線に関するものである。
回転電機や変圧器などの電気機器のコイルに用いられている絶縁電線(エナメル被覆絶縁電線)は、一般的に、コイルの用途・形状に合致した断面形状(例えば、丸形状や矩形状)に成形された導体の外層に単層または複数層の絶縁被覆が形成された構造をしている。該絶縁被覆を形成する方法には、樹脂を有機溶剤に溶解させた絶縁塗料を導体上に塗布・焼付けする方法と、予め調合した樹脂組成物を導体上に押出被覆する方法がある。
近年、電気機器への小型化の要求により、コイル巻線工程において絶縁電線を高い張力下で小径のコアに高密度で巻くようになってきており、絶縁被覆には過酷な加工ストレスに耐えられる耐摩耗性が求められている。また、電気機器への高効率化・高出力化の要求からインバータ制御や高電圧化が進展している。その結果、コイルの運転温度が以前よりも上昇傾向にあり、絶縁被覆には高い耐熱性も求められている。それらに加えて、インバータサージ電圧などのより高い電圧が電気機器中のコイルに掛かることから、部分放電の発生によって絶縁被覆が劣化・損傷することがあるという問題が生じていた。
部分放電による絶縁被覆の劣化・損傷を防ぐために、部分放電開始電圧の高い絶縁被覆の開発が進められている。絶縁被覆の部分放電開始電圧を高くする手段として、絶縁被覆に比誘電率の低い樹脂を用いる方法や、絶縁被覆の厚さを厚くする方法が挙げられる。
例えば、特許文献1には、特定の構造を有するフッ素系ポリイミド樹脂を含む巻線の絶縁被覆材料が開示されている。特許文献1に記載の絶縁被覆材料は、比誘電率が2.3〜2.8であり、従来の絶縁塗料の比誘電率(3〜4程度)と比較して有意に低く、その結果、絶縁被覆の発熱量が抑えられて熱による劣化が抑えられるとされている。
特許文献2では、導体の外周に、少なくとも1層のエナメル焼き付け層と、その外側に少なくとも1層の押出被覆樹脂層を有し、該エナメル焼き付け層と該押出被覆樹脂層の厚さの合計が60μm以上であり、前記エナメル焼き付け層の厚さが50μm以下であり、前記押出被覆樹脂層が、25℃における引張弾性率が1000 MPa以上であり、かつ250℃における引張弾性率が10 MPa以上である樹脂材料(ポリエーテルエーテルケトンを除く)からなることを特徴とする耐インバータサージ絶縁ワイヤが開示されている。特許文献2に記載の絶縁ワイヤは、導体と絶縁被覆層の接着強度を下げることなく、高い部分放電開始電圧(900 V程度)を有する絶縁ワイヤを提供することができるとされている。
また、特許文献3では、導体と前記導体を被覆する押出絶縁層を有してなる2層以上の多層絶縁電線であって、前記絶縁層の最内層以外の少なくとも1層が、ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)を連続層とし、オレフィン系共重合体成分(B)を分散相とする樹脂混和物で形成され、前記樹脂混和物からなる絶縁層が、ポリフェニレンスルフィド樹脂(A) 100質量部と、オレフィン系共重合体成分(B) 3〜40質量部とを含有することを特徴とする多層絶縁電線が開示されている。特許文献3に記載の絶縁電線は、耐熱性と耐薬品性に優れているとされている。
特開2002−56720号公報 特許第4177295号公報 再公表2005−106898号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているようなフッ素系ポリイミド樹脂からなる絶縁塗料を用いて絶縁被覆を形成した場合、絶縁被覆の比誘電率を低くすることはできるが、フッ素系ポリイミド樹脂から形成した絶縁被覆は導体への密着性が低いため、例えば、コイル巻線工程などにおける過酷な加工ストレスによって、絶縁被覆が導体から剥離する現象(被覆浮き)が発生してしまうことが懸念される。被覆浮きは、最悪の場合に絶縁破壊を起こす要因となる。
また、前述したように、電気機器の更なる高効率化・高出力化に伴い、コイルに対して絶縁電線の占席率の向上が更に要求されるとともに、絶縁電線に対しても部分放電開始電圧の更なる向上(例えば、1500 V以上の部分放電開始電圧)が要求されている。ここで、特許文献2に記載されているような押出被覆層を有する従来の絶縁電線は、押出被覆層の厚さを厚くすることによって部分放電開始電圧を高くすることができると考えられるが、絶縁被覆全体の厚さも厚くなることになるため、絶縁電線の占積率を向上させることが困難になる弊害も生じる。
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決し、従来と同等の耐熱性と絶縁被覆厚さとを有しながら、従来よりも高い部分放電開始電圧を有する絶縁電線を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、少なくとも1つの押出被覆層を含む複数の被覆層からなる絶縁被覆が導体上に形成されている絶縁電線であって、前記少なくとも1つの押出被覆層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)とオレフィン系共重合樹脂(B)とを含む樹脂組成物を押出被覆した層であり、前記樹脂組成物は、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)と前記オレフィン系共重合樹脂(B)とが、重量部比で「(B)/(A) = 45/55 〜 70/30」の範囲で混和されていることを特徴とする絶縁電線を提供する。なお、「45/55 〜 70/30」とは、「45/55以上、70/30以下」を意味するものとする。
また、本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係る絶縁電線において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(1)前記オレフィン系共重合樹脂(B)は、ポリメチルペンテン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。
(2)前記オレフィン系共重合樹脂(B)は、グラフト共重合させたオレフィン系共重合樹脂(C)を更に含有する。
(3)前記グラフト共重合させたオレフィン系共重合樹脂(C)は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を、無水マレイン酸あるいはグリジシルメタクリレートでグラフト共重合させた樹脂からなる。
(4)前記絶縁被覆は、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドのいずれか1種の樹脂が前記導体上に形成された第1の被覆層と、前記少なくとも1つの押出被覆層が前記第1の被覆層の外層に形成された第2の被覆層とを有する。
(5)前記絶縁被覆は、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドのいずれか1種の樹脂が前記第2の被覆層の外層に形成された第3の被覆層を更に有する。
(6)前記絶縁被覆は、前記第1の被覆層および/または前記第3の被覆層が押出被覆によって形成されている。
本発明によれば、従来と同等の耐熱性と絶縁被覆厚さとを有しながら、従来よりも高い部分放電開始電圧を有する絶縁電線を提供することができる。
本発明に係る絶縁電線の実施形態の1例を示す断面模式図である。 本発明に係る絶縁電線の実施形態の他の1例を示す断面模式図である。
本発明者らは、絶縁被覆を構成する樹脂組成物における組成と比誘電率と部分放電開始電圧との関係を鋭意検討した結果、ポリフェニレンサルファイド樹脂とオレフィン系共重合樹脂とをある範囲の重量部比で混和した樹脂組成物からなる層(押出被覆層)は、比誘電率を2.8以下に抑えることが可能となり、かつ、該押出被覆層の厚さを100μm以下にしても部分放電開始電圧を1500 V以上にできることを見出したことに基づき、本発明を完成した。
以下、本発明に係る実施形態を説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施の形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
本発明に係る絶縁電線は、少なくとも1つの押出被覆層を含む複数の被覆層からなる絶縁被覆が導体上に形成されている絶縁電線であって、前記少なくとも1つの押出被覆層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)とオレフィン系共重合樹脂(B)とを含む樹脂組成物を押出被覆した層であり、前記樹脂組成物は、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)と前記オレフィン系共重合樹脂(B)とが、重量部比で「(B)/(A) = 45/55 〜 70/30」の範囲で混和されていることを特徴とする。
ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)は高い耐熱性を有するが、比誘電率が高いため絶縁被覆中に高い比率で存在すると部分放電開始電圧を向上させることが難しくなる。そこで、比誘電率を低下させるためにオレフィン系共重合樹脂(B)を混合した樹脂組成物を検討した。ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)とオレフィン系共重合樹脂(B)とを混和する比率(重量部比)が「(B)/(A) < 45/55」になると、比誘電率が十分に低くならず部分放電開始電圧の向上が不十分となる。一方、該重量部比が「(B)/(A) > 70/30」になると、コイル用絶縁電線として要求される耐熱性を確保することが難しくなる。
混合するオレフィン系共重合樹脂(B)としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンなどの樹脂を用いることができる。ここで、高い耐熱性を確保するためには融点の高いオレフィン系共重合樹脂を用いることが好ましく、ポリメチルペンテン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンを用いることが好ましい。
また、上記のオレフィン系共重合樹脂(B)を、無水マレイン酸やグリシジルメタクリレートなどでグラフト共重合した樹脂(C)(例えば、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性ポリメチルペンテン等)をオレフィン系共重合樹脂(B)の一部として更に含有させることは好ましい。絶縁被覆中に無水マレイン酸やグリシジル基を有する樹脂を混和させることにより、絶縁被覆が複数層からなる場合に被覆層同士の密着性を向上させることが可能となる。これにより、機械的強度の低下や絶縁破壊の発生を抑えることができる。なお、オレフィン系共重合樹脂(B)は、上記の樹脂を1種類で用いても良いし、2種類以上を混和して用いても良い。
図1は、本発明に係る絶縁電線の実施形態の1例を示す断面模式図である。本発明に係る絶縁電線10は、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドのいずれか1種の樹脂が導体1上に形成された第1の被覆層2と、第1の被覆層2の外層に前述の樹脂組成物が押出被覆により形成された第2の被覆層3とを有する。このような多層絶縁被覆構造とすることにより、導体1と第1の被覆層2との密着性および第1の被覆層2と第2の被覆層3との密着性を向上させ、絶縁被覆全体の耐熱性を向上させることができる。
なお、第1の被覆層2の形成方法に特段の限定は無いが、第1の被覆層2と第2の被覆層3とを昇温された状態で接触(接合)させることが好ましい。各層を構成する樹脂を互いに高い温度で接触させることにより、被覆層同士の密着性をより向上させることができ機械的強度を確保しやすくなる。また、第1の被覆層2を押出被覆によって形成することは好ましい。第1の被覆層2と第2の被覆層3とを同時押出またはタンデム押出によって形成することで、絶縁被覆の製造工程を簡素化することができる。
図2は、本発明に係る絶縁電線の実施形態の他の1例を示す断面模式図である。本発明に係る絶縁電線20は、上述の絶縁電線10における第2の被覆層3の外層に、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドのいずれか1種の樹脂により形成された第3の被覆層4を更に有する。第3の被覆層4を形成することで、多層絶縁被覆の耐摩耗性をより向上させることが可能となる。
前述と同様に、第3の被覆層4の形成方法に特段の限定は無いが、第2の被覆層3と第3の被覆層4とを昇温された状態で接触(接合)させることが好ましい。各層を構成する樹脂を互いに高い温度で接触させることにより、被覆層同士の密着性をより向上させることができ機械的強度を確保しやすくなる。また、第3の被覆層4を押出被覆によって形成することは好ましい。第1の被覆層2から第3の被覆層4を同時押出またはタンデム押出によって形成することで、絶縁被覆の製造工程を簡素化することができる。
また、導体1の材料にも特段の限定は無く、エナメル被覆絶縁電線で常用される材料(例えば、無酸素銅や低酸素銅など)を用いることができる。なお、図1および図2においては、導体1として丸形状の断面を有する例を示したが、それに限定されることはなく、矩形状の断面を有する導体であってもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜6の作製)
導体として外径1.25 mmの銅線を用い、該銅線の外層に押出機を用いて2層の被覆層(第1の被覆層と第2の被覆層)を同時に押出被覆して、図1に示すような絶縁電線(実施例1〜6)を作製した。第1の被覆層の厚さを約20μmとし、絶縁被覆全体の厚さが70〜100μmになるように第2の被覆層をチューブ状に押出被覆した。各被覆層を構成する樹脂組成物の組成および絶縁被覆の全体厚さは、後述する表1に示した。
(実施例7〜10の作製)
導体として外径1.25 mmの銅線を用い、該銅線の外層に押出機を用いて2層の被覆層(第1の被覆層と第2の被覆層)を同時に押出被覆し、さらに第3の被覆層をタンデム押出によって被覆形成して、図2に示すような絶縁電線(実施例7〜10)を作製した。第1の被覆層と第3の被覆層の厚さをそれぞれ約20μmとし、絶縁被覆全体の厚さが70〜100μmになるように第2の被覆層と第3の被覆層をチューブ状に押出被覆した。各被覆層を構成する樹脂組成物の組成および絶縁被覆の全体厚さは、後述する表1に示した。
(比較例1の作製)
導体として外径1.25 mmの銅線を用い、該銅線の外層に押出機を用いてポリフェニレンサルファイドを押出被覆して、厚さが約100μmの単層の押出被覆層(第1の被覆層)を有する絶縁電線(比較例1)を作製した。
(比較例2の作製)
導体として外径1.25 mmの銅線を用い、該銅線の外層に押出機を用いて実施例8の第2の被覆層と同じ樹脂組成物を押出被覆して、厚さが約100μmの単層の押出被覆層(第1の被覆層)を有する絶縁電線(比較例2)を作製した。
(比較例3の作製)
導体として外径1.25 mmの銅線を用い、該銅線の外層に押出機を用いて2層の被覆層(第1の被覆層と第2の被覆層)を同時に押出被覆して、図1に示すような絶縁電線を作製した。このとき、第2の被覆層を構成する樹脂組成物の組成は、ポリフェニレンサルファイド樹脂の重量部比が本発明の規定よりも高い組成とした(後述する表2、比較例3参照)。第1の被覆層の厚さを約20μmとし、絶縁被覆全体の厚さが約100μmになるように第2の被覆層をチューブ状に押出被覆した。
(比較例4の作製)
導体として外径1.25 mmの銅線を用い、該銅線の外層に押出機を用いて2層の被覆層(第1の被覆層と第2の被覆層)を同時に押出被覆して、図1に示すような絶縁電線を作製した。このとき、第2の被覆層を構成する樹脂組成物の組成は、ポリフェニレンサルファイド樹脂の重量部比が本発明の規定よりも低い組成とした(後述する表2、比較例4参照)。第1の被覆層の厚さを約20μmとし、絶縁被覆全体の厚さが約100μmになるように第2の被覆層をチューブ状に押出被覆した。
上記のように作製した絶縁電線(実施例1〜10および比較例1〜4)に対して、次のような測定および試験を行った。
(1)比誘電率測定
まず、実施例1〜10および比較例1〜4でそれぞれ用いた樹脂組成物を温度300℃でプレス成形してシート状(厚さ0.5 mm)の測定用試料を作製した。比誘電率測定は、シェーリングブリッジ(総研電気株式会社製、DAC-PSC-UA)を用いて、測定用試料に対して50 Hzで500 Vの電圧を印加する条件で行った。
(2)部分放電開始電圧測定
部分放電開始電圧の測定は次のような手順で行った。絶縁電線を500 mmの長さで2本切り出し、39 N(4.0 kgf)の張力を掛けながら撚り合わせて中央部の120 mmの範囲に6回の撚り部を有するツイストペアの試料を用意した。試料端部10 mmの絶縁被覆をアビソフィックス装置で剥離した。その後、絶縁被覆の乾燥のため、120℃の恒温槽中に30分間保持し、デシケータ中で室温になるまで18時間放置した。部分放電開始電圧は、部分放電自動試験システム(総研電気株式会社製、DAC-6024)を用いて測定した。測定条件は、25℃で相対湿度50%の雰囲気とし、50 Hzの電圧を10〜30 V/sで昇圧しながらツイストペア試料に荷電した。ツイストペア試料に50 pCの放電が50回発生した電圧を部分放電開始電圧とした。
(3)耐熱性試験
耐熱性試験は次のような手順で行った。絶縁電線を500 mmの長さで2本切り出し、39 N(4.0 kgf)の張力を掛けながら撚り合わせて中央部の120 mmの範囲に6回の撚り部を有するツイストペアの試料を用意した。次に、老化試験機(東洋精機株式会社製、ギヤー・オーブンSTD60P)において150℃で2000時間保持して加熱老化させた。その後、導体径と同じ径を有する丸棒(巻き付け棒)にツイストペア試料を巻き付け、50倍の光学顕微鏡を用いて絶縁被覆でのクラックの有無を調査した。クラックの発生が無いものを「○:合格の意味」、クラックの発生が有るものを「×:不合格の意味」とした。
(4)耐摩耗性試験
耐摩耗性試験は次のような手順で行った。絶縁電線を120 mmの長さに切り出し、片側末端の絶縁被覆をアビソフィックス装置で剥離して評価試料とした。テーバー型の摩耗試験機(東英工業株式会社製、TS-4)に評価試料を取り付けた後、剥離した末端部に電極を取り付け、絶縁被覆の表面に垂直方向から5.9 N(0.6 kgf)の荷重を掛けながら触針の往復摩耗(振幅20 mm)を行い、電気が導通したときの往復摩耗回数を測定した。往復摩耗回数が1500回未満のものを「×:不合格の意味」、1500回以上2000回未満のものを「○:合格の意味」、2000回以上のものを「◎:優秀の意味」として評価した。
実施例1〜10における各被覆層を構成する樹脂組成物の組成、絶縁被覆の全体厚さ、および各種測定評価結果を表1に示す。また、比較例1〜4における各被覆層を構成する樹脂組成物の組成、絶縁被覆の全体厚さ、および各種測定評価結果を表2に示す。
Figure 0005445109
Figure 0005445109
表1に示したように、本発明に係る実施例1〜10は、絶縁被覆の比誘電率が2.8以下となっており、従来の低誘電性の絶縁被覆材料のそれと同等の低い比誘電率を有していることが確認された。また、実施例1〜10の絶縁電線は、絶縁被覆の厚さが100μm以下でも1500 V以上の高い部分放電開始電圧を有していることが確認された。さらに、耐熱性および耐摩耗性に関しても、実施例1〜10の絶縁電線は必要十分な特性を有していることが確認された。
個別に見ていくと、同じ絶縁被覆厚さで比較した場合、例えば実施例1〜4に示したように(絶縁被覆厚さ=100μm)、絶縁被覆の比誘電率が低くなるほど部分放電開始電圧が高くなる傾向があった。また、第3の被覆層を形成した絶縁電線(実施例7〜10)は、第3の被覆層を有さない絶縁電線(実施例1〜6)よりも更に良好な耐摩耗性を有することが確認された。
これらに対し、比較例1の絶縁電線は、絶縁被覆の比誘電率が比較的高く、部分放電開始電圧の向上効果が不十分であった。比較例2の絶縁電線は、実施例8の第2の被覆層と同じ樹脂組成物を銅導体上に直接被覆したものであり、低い比誘電率と高い部分放電開始電圧とを有していたが、加熱中の銅イオンの影響により耐熱性が劣化し、耐摩耗性も不合格であった。比較例3の絶縁電線は、第2の被覆層におけるポリフェニレンサルファイドの重量部比が本発明の規定を超えており、絶縁被覆の比誘電率が比較的高く、部分放電開始電圧の向上効果が不十分であった。また、比較例4の絶縁電線は、第2の被覆層におけるポリフェニレンサルファイドの重量部比が本発明の規定を下回っている例であり、比較例2と同様に、低い比誘電率と高い部分放電開始電圧とを有していたが、耐熱性と耐磨耗性がともに不合格であった。
以上のことから、本発明に係る実施例1〜10の絶縁電線は、従来と同等の耐熱性と絶縁被覆厚さとを有しながら、従来よりも高い部分放電開始電圧を兼ね備えていることが実証された。
10,20…絶縁電線、
1…導体、2…第1の被覆層、3…第2の被覆層、4…第3の被覆層。

Claims (6)

  1. 少なくとも1つの押出被覆層を含む複数の被覆層からなる絶縁被覆が導体上に形成されている絶縁電線であって、
    前記少なくとも1つの押出被覆層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)とポリメチルペンテン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するオレフィン系共重合樹脂(B)とを含む樹脂組成物を押出被覆した層であり、
    前記樹脂組成物は、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)と前記オレフィン系共重合樹脂(B)とが、重量部比で「(B)/(A) = 45/55 〜70/30」の範囲で混和されていることを特徴とするコイルに用いられる絶縁電線。
  2. 前記オレフィン系共重合樹脂(B)は、グラフト共重合させたオレフィン系共重合樹脂(C)を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記グラフト共重合させたオレフィン系共重合樹脂(C)は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を、無水マレイン酸あるいはグリジシルメタクリレートでグラフト共重合させた樹脂からなる請求項に記載の絶縁電線。
  4. 前記絶縁被覆は、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドのいずれか1種の樹脂が前記導体上に形成された第1の被覆層と、前記少なくとも1つの押出被覆層が前記第1の被覆層の外層に形成された第2の被覆層とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項に記載の絶縁電線。
  5. 前記絶縁被覆は、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドのいずれか1種の樹脂が前記第2の押出被覆層の外層に形成された第3被覆層を更に有することを特徴とする請求項に記載の絶縁電線。
  6. 前記絶縁被覆は、前記第1の被覆層および/または前記第3の被覆層が押出被覆によって形成されていることを特徴とする請求項に記載の絶縁電線。
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