JP2009289720A - 絶縁電線およびワイヤーハーネス - Google Patents

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毅 野中
Masato Inoue
正人 井上
Masashi Sato
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Tatsuya Shimada
達也 嶋田
Masahiro Nakamura
中村  匡宏
Tetsuya Iwasaki
哲也 岩崎
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Abstract

【課題】多層構造の絶縁被覆層を有し、難燃性、耐摩耗性、耐寒性に優れた絶縁電線を提供すること。
【解決手段】導体と、導体の外周を被覆する絶縁被覆層とを有する絶縁電線であって、絶縁被覆層は、少なくとも1層以上の内層と、内層の最表面に積層された外層とを有している。内層のうち、少なくとも1層は、難燃性組成物より形成されている。外層は、難燃剤を含有せず、かつ、その弾性率が500MPa以上とされている。外層の厚みは、絶縁被覆層の厚みの1/2以下であると良い。外層は、官能基が導入されたオレフィン系樹脂を含んでいると良い。
【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁電線およびワイヤーハーネスに関し、さらに詳しくは、多層構造の絶縁被覆層を有する絶縁電線およびこれを用いたワイヤーハーネスに関するものである。
従来、自動車等の車両や電気・電子機器等で使用される配線としては、導体の外周に、絶縁被覆層として、塩化ビニル樹脂組成物を1層被覆した絶縁電線が広く用いられてきた。
しかしながら、塩化ビニル樹脂組成物は、ハロゲン元素を含有しているため、車両の火災時や電気・電子機器の焼却廃棄時などの燃焼時に、有害なハロゲン系ガスを大気中に放出し、環境汚染の原因になるという問題があった。
そのため、地球環境への負荷を抑制するなどの観点から、近年では、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂に水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を添加した、いわゆるノンハロゲン系難燃性組成物へ、絶縁被覆材料の代替が進められている。
また、絶縁被覆層の層構造は、単層構造のものばかりではなく、多層構造のものも知られている。例えば、特許文献1には、ノンハロゲン系難燃性組成物より形成された内層と外層とからなる2層構造の絶縁被覆層を有する絶縁電線が開示されている。
特開2006−310092号公報
しかしながら、絶縁被覆層としてノンハロゲン系難燃性組成物が1層被覆された絶縁電線の場合、この1層の絶縁被覆層で必要な電線特性を満足させなければならない。例えば、十分な難燃性を確保しようとして、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を絶縁被覆層中に多量に添加すると、耐摩耗性が著しく低下してしまう。また、金属水酸化物の多量添加は、絶縁被覆層の脆化を招き、とりわけ、耐寒性を低下させる。
このように、1層の絶縁被覆層の配合を調整することで、絶縁電線に要求される難燃性、耐摩耗性、耐寒性等の電線特性を十分にバランスさせるのは、難易度が高かった。
一方、特許文献1に記載される多層構造の絶縁被覆層を有する絶縁電線は、十分な難燃性を有しつつ、耐摩耗性、柔軟性等に優れているとされている。しかしながら、十分な耐寒性を有するか否かは不明である。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、多層構造の絶縁被覆層を有し、難燃性、耐摩耗性、耐寒性に優れた絶縁電線を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る絶縁電線は、導体と、上記導体の外周を被覆する絶縁被覆層とを有する絶縁電線であって、上記絶縁被覆層は、少なくとも1層以上の内層と、上記内層の最表面に積層された外層とを有し、上記内層のうち、少なくとも1層は、難燃性組成物より形成されており、上記外層は、難燃剤を含有せず、かつ、その弾性率が500MPa以上であることを要旨とする。
ここで、上記外層の厚みは、上記絶縁被覆層の厚みの1/2以下であることが好ましい。
また、上記絶縁被覆層の厚みは、0.5mm以下であることが好ましい。
また、上記外層は、官能基が導入されたオレフィン系樹脂を含んでいることが好ましい。
この際、上記官能基は、カルボン酸基、酸無水基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、および、シラン基から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
本発明に係るワイヤーハーネスは、上述した絶縁電線を有することを要旨とする。
本発明に係る絶縁電線は、導体の外周を被覆する絶縁被覆層が、少なくとも1層以上の内層と、内層の最表面に積層された外層とを有している。そして、上記内層のうち、少なくとも1層は、難燃性組成物より形成されており、上記外層は、難燃剤を含有せず、かつ、その弾性率が500MPa以上である。
そのため、難燃性、耐摩耗性、耐寒性に優れる。これは、以下の理由によるものと推察される。
すなわち、本発明に係る絶縁電線は、内層のうち、少なくとも1層が、難燃性組成物より形成されているので、この内層により主に難燃性を発揮することができる。また、外層が難燃剤を含んでいないので、難燃剤による耐摩耗性の低下がない。そして、外層の弾性率が500MPa以上であるので、外層が比較的硬くなり、耐摩耗性を向上させることができる。また、外層が難燃剤を含んでいないので、外層の脆化がなく、耐寒性を向上させることができる。
ここで、上記外層の厚みが、上記絶縁被覆層の厚みの1/2以下である場合には、難燃性と耐摩耗性とのバランスをとりやすくなる。
また、絶縁被覆層の厚みが、0.5mm以下である場合には、比較的薄肉の絶縁被覆層にて上記効果を得ることが可能な絶縁電線が得られる。
また、外層が、官能基が導入されたオレフィン系樹脂を含んでいる場合には、内層との良好な密着性を確保しやすくなる。そのため、耐摩耗性、難燃性を確保しやすくなる。
この際、上記官能基が上述した特定の官能基であれば、上記効果を得やすくなる。
本発明に係るワイヤーハーネスは、上述した絶縁電線を有している。そのため、難燃性、耐摩耗性、耐寒性に優れる。
したがって、本発明に係る絶縁電線、ワイヤーハーネスは、摺動や低温負荷がかかる部位に好適に適用することができる。
以下、本実施形態に係る絶縁電線(「本電線」ということがある。)、本実施形態に係るワイヤーハーネス(「本ワイヤーハーネス」ということがある。)について詳細に説明する。
1.本電線
本電線は、導体と、導体の外周を被覆する絶縁被覆層とを有している。本電線において、絶縁被覆層は、少なくとも1層以上の内層と、内層の最表面に積層された外層とを有している。つまり、本電線の絶縁被覆層は、多層構造を有している。
(導体)
上記導体としては、単体の金属線、複数本の金属素線が撚り合わされた撚線、撚線が圧縮されたものなどを例示することができる。導体の材質などは、特に限定されるものではなく、用途に応じて選択することができる。
導体の断面積は、細径、軽量化などの観点から、好ましくは、0.13〜2.0mm 、より好ましくは、0.35〜1.25mm、さらに好ましくは、0.5〜1.0mmの範囲内にあると良い。
(内層)
本電線において、絶縁被覆層は、1層の内層を有していても良いし、複数層の内層を有していても良い。好ましくは、絶縁被覆層の層構造を簡略化でき、製造性が比較的良好になる等の観点から、絶縁被覆層は、2層以下の内層を有していると良い。より好ましくは、絶縁被覆層は、1層の内層を有していると良い。
ここで、本電線では、絶縁被覆層の内層のうち、少なくとも1層が難燃性組成物より形成されている。この難燃性組成物より形成された内層は、主に本電線が難燃性を発揮するのに重要な役割を有している。
上記難燃性組成物に含まれる主材料としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ホルマール系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリフェニレンサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、これら樹脂の変性物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記難燃性組成物に含まれる主材料としては、押出し加工性などの観点から、好ましくは、オレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂などであり、電線コストの低減、混練性などの観点から、より好ましくは、オレフィン系樹脂であると良い。
上記オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−ペンテンなどのα−オレフィンの単独重合体、相互重合体、それらの混合物等を例示することができる。
また、上記難燃性組成物は、上記主材料以外にも、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーや、エチレン系エラストマー等のオレフィン系熱可塑性エラストマーなどを1種または2種以上含んでいても良い。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)等を例示することができる。
上記エチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、および/または1−ヘキセンとの共重合体等を例示することができる。
上記難燃性組成物において、上記主材料がそれ単独で難燃性を有する場合には、特に難燃剤を含有していなくても構わないが、上記主材料がそれ単独で十分な難燃性を有さない場合には、上記難燃性組成物は、基本的に難燃剤を含有している。
上記難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウムなどの金属水酸化物や、リン系、チッソ系難燃剤などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。なお、上記金属水酸化物は、合成品であっても良いし、天然品(天然鉱物を粉砕したもの等)であっても良い。
例えば、難燃剤として、上記水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を用いる場合、金属水酸化物の粒径は、好ましくは、平均粒径(d50)が0.1〜20μm、より好ましくは、0.2〜10μm、さらに好ましくは、0.3〜5μmの範囲内にあると良い。粒子同士の二次凝集による機械的特性の低下や、絶縁被覆層の外観荒れなどが生じ難くなるからである。
また、上記金属水酸化物は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、オレフィン系ワックス等の表面処理剤により表面処理が施されていても良い。上記表面処理量としては、上記金属水酸化物に対して、好ましくは、0.1〜10質量部、より好ましくは、0.1〜5質量部であると良い 。
また、上記金属水酸化物の含有量は、十分な難燃性を付与する等の観点から、難燃性組成物中に含まれるポリマ成分100質量部に対して、好ましくは、30〜250質量部、より好ましくは、50〜200質量部、さらに好ましくは、60〜180質量部の範囲内にあると良い。
上記難燃性組成物は、他にも例えば、熱安定剤(酸化防止剤、老化防止剤など)、金属不活性剤(銅害防止剤など)、滑剤〔脂肪酸系、脂肪酸アマイド系、金属せっけん系、炭化水素系(ワックス系)、エステル系、シリコン系など〕、光安定剤、造核剤、帯電防止剤、着色剤、難燃助剤(シリコン系、窒素系、ホウ酸亜鉛、リン系など)、カップリング剤(シラン系、チタネート系など)、柔軟剤(プロセスオイルなど)、亜鉛系化合物(酸化亜鉛、硫化亜鉛など)などの各種添加剤が1種または2種以上添加されていても良い。
なお、絶縁被覆層の内層が2層以上からなる場合、残りの内層は、上記難燃性組成物より形成されていても良いし、本電線の必要物性を損なわない範囲内の物性を有するポリオレフィン系樹脂組成物等により形成されていても良い。
(外層)
本電線において、外層は、難燃剤を含有していない。外層が難燃剤を含んでいると、難燃剤により耐摩耗性が低下したり、脆化によって耐寒性が低下したりする原因となりやすいからである。
また、本電線において、外層の弾性率は、500MPa以上である。外層の弾性率が500MPa以上であると、外層が比較的硬くなり、耐摩耗性を向上させることが可能になるからである。
外層の弾性率は、十分な耐摩耗性を得やすくなる等の観点から、好ましくは、700MPa以上、より好ましくは、1000MPa以上、さらに好ましくは、1200MPa以上であると良い。
ここで、上記弾性率は、次のようにして求めることができる。すなわち、本電線における外層を単層にて導体に被覆した弾性率測定用電線を作製する。この際、弾性率測定用電線の被覆層の径と、本電線の絶縁被覆層中における外層の径とが、ほぼ同じ径となるように、導体の径を設定する。そして、JASO D611−94に準拠し、作製した弾性率測定用電線を150mmの長さに切り出し、導体を取り除いて外層単層からなる管状試験片とする。その後、この管状試験片の両端を引張試験機にて引っ張り、得られた応力−伸び曲線から外層の弾性率を求めることができる。なお、内層の弾性率もこれに準じて求めることができる。
上記外層に含まれる主材料は、例えば、押出し加工性などの観点から、好ましくは、オレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂などであり、電線コストの低減、混練り加工性などの観点から、より好ましくは、オレフィン系樹脂であると良い。
上記オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−ペンテンなどのα−オレフィンの単独重合体、相互重合体、それらの混合物等を挙げることができる。
ここで、上記オレフィン樹脂は、例えば、カルボン酸基、酸無水基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、シラン基等の官能基が導入されていると良い。内層との良好な密着性を確保しやすくなるため、耐摩耗性、難燃性を確保しやすくなるからである。これら官能基は、1種または2種以上導入されていても良い。これら官能基のうち、好ましくは、カルボン酸基、酸無水基、エポキシ基等である。
なお、上記オレフィン系樹脂に上記官能基を導入する方法としては、具体的には、例えば、上記官能基を上記オレフィン系樹脂にグラフトした変性重合体として導入する方法、上記官能基を、オレフィンと官能基含有化合物との共重合体として導入する方法などを例示することができる。
上記カルボン酸基、酸無水基を導入する化合物としては、具体的には、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸またはこれらの無水物、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ペンテン酸などの不飽和モノカルボン酸などを例示することができる。
上記エポキシ基を導入する化合物としては、具体的には、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステルおよびα−クロロアクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フマール酸などのグリシジルエステル類またはビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類、p−グリシジルスチレンなどを例示することができる。
上記ヒドロキシル基を導入する化合物としては、具体的には、例えば、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
上記アミノ基を導入する化合物としては、具体的には、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、フェニルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
上記アルケニル環状イミノエーテル基を導入する化合物としては、具体的には、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−イソプロペニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンなどを例示することができる。
上記シラン基を導入する化合物としては、具体的には、例えば、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセチルシラン、ビニルトリクロロシランなどの不飽和シラン化合物などを例示することができる。
また、上記オレフィン系樹脂における官能基の含有率は、内層との密着性、耐摩耗性、難燃性、端末加工性等の観点から、好ましくは、0.1〜10質量%、より好ましくは、0.3〜5質量%の範囲内にあると良い。なお、官能基の含有率は、滴定法などにより求めることができる。
上記外層は、上記主材料以外にも、例えば、内層で説明した、スチレン系熱可塑性エラストマーや、エチレン系エラストマー等のオレフィン系熱可塑性エラストマー、難燃剤以外の各種の添加剤などを1種または2種以上含んでいても良い。
(外層と絶縁被覆層の厚み)
本電線において、上記外層の厚みは、難燃性と耐摩耗性とのバランスをとりやすくなる等の観点から、好ましくは、絶縁被覆層(=内層+外層の合計厚み)の厚みの1/2倍以下、より好ましくは、1/2.5倍以下、さらに好ましくは、1/3倍以下であることが好ましい。
また、絶縁被覆層の厚みは、自動車等の細径、薄肉化電線として好適に用いることができる等の観点から、好ましくは、0.5mm以下、より好ましくは、0.4mm以下、さらに好ましくは、0.3mm以下であると良い。
2.本電線の製造方法
本電線の製造方法としては、一般に知られる手法を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、先ず、各成分と、必要に応じて他の成分や添加剤などを任意に配合し、これらを通常のタンブラーなどでドライブレンドしたり、もしくは、バンバリミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロールなどの通常の混練機で溶融混練して均一に分散し、内層の形成に用いる難燃性組成物、および、外層の形成に用いる組成物を調製する。
次いで、例えば、押出成形機を用いて、導体の外周に、調製した各組成物を任意の厚みで押出し被覆するなどすれば、本電線を得ることができる。この際、導体表面に先に内層を押出しした後、形成された内層の表面に外層を押出ししても良いし、導体表面に内層と外層とを同時に押出ししても良い。
3.本ワイヤーハーネス
本ワイヤーハーネスは、本電線を有している。具体的な構成としては、本電線のみがひとまとまりに束ねられた単独電線束、あるいは、本電線と他の絶縁電線とが混在状態でひとまとまりに束ねられた混在電線束が、ワイヤーハーネス保護材により被覆された構成などを例示することができる。
単独電線束および混在電線束に含まれる電線本数は、任意に定めることができ、特に限定されるものではない。
また、混在電線束を用いる場合、含まれる他の絶縁電線の構造は、特に限定されるものではない。絶縁被覆層は1層構造であっても、2層構造であっても良い。また、他の絶縁電線の絶縁被覆層の種類も特に限定されるものではない。
また、上記ワイヤーハーネス保護材は、電線束の外周を覆い、内部の電線束を外部環境などから保護する役割を有するものである。その形態としては、テープ状に形成された基材の少なくとも一方の面に粘着剤が塗布されたものや、チューブ状、シート状などに形成された基材を有するものなどが挙げられる。これらは、用途に応じて適宜選択して用いることができる。
ワイヤーハーネス保護材を構成する基材としては、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種樹脂に必要に応じて金属水酸化物等の難燃剤が添加されたポリオレフィン系樹脂組成物などのノンハロゲン系難燃樹脂組成物や、塩化ビニル樹脂組成物または当該塩化ビニル樹脂組成物以外のハロゲン系樹脂組成物などが挙げられる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.供試材料および製造元等
本実施例において使用した供試材料を製造元、商品名、物性値などとともに示す。
・ポリプロピレン(PP)[日本ポリプロ(株)製、「ノバテックPP EC7」]
・マレイン酸変性ポリプロピレン(マレイン酸変性PP)[三井化学(株)製、「NF556」]
・エポキシ変性ポリプロピレン(エポキシ変性PP)[エポキシ基の含有量が1質量%となるようにプロピレンとグリシジルメタクリレートとを混合し、ラジカル重合することにより作製]]
・ポリエチレン(PE)[日本ユニカー(株)製、「NUC 8008」]
・マレイン酸変性ポリエチレン(マレイン酸変性PE)[三井化学(株)製、「NF557」]
・水酸化マグネシウム[マーティンスベルグ(株)製、「マグニフィンH10」、平均粒径約1.0μm]
2.絶縁電線の作製
初めに、二軸混練機を用いて、表1および表2に示した各成分を200℃で混練した。その後、ペレタイザーを用いて、得られた各混練物をペレット上に成形し、各内層形成組成物および外層形成組成物を調製した。
次に、押出成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅撚線(断面積0.5mm)の外周に、表1および表2に示した各厚みとなるように各組成物を押出被覆し、実施例および比較例に係る各絶縁電線を作製した。なお、絶縁被覆層の全体の厚みは200μmとした。
3.弾性率の測定
外層および内層の弾性率を次のようにして測定した。すなわち、上述した絶縁電線の作製手順に準じて、軟銅撚線の外周に、表1および表2に示した所定厚みの各層を単層にて被覆し、弾性率測定用電線を作製した。
この際、弾性率測定用電線に被覆されている各層の径が、実施例および比較例に係る絶縁電線の絶縁被覆層中における各層の径とほぼ同じになるように、軟銅撚線の径を調節した。
その後、JASO D611−94に準拠し、作製した弾性率測定用電線の各層単層の弾性率を求めた。すなわち、弾性率測定用電線を150mmの長さに切り出し、軟銅撚線を取り除いて各層単層のみの管状試験片(例:外層単層のみからなる管状試験片、内層単層のみからなる管状試験片等)とした後、上記管状試験片の両端を引張試験機のチャックにチャック間距離20mmで取り付け、23±5℃の室温下にて、引張速度50mm/分で引っ張り、得られた応力−伸び曲線から各層単層の弾性率を求めた。
4.各種試験
作製した実施例および比較例に係る各絶縁電線について、難燃性試験、耐摩耗性試験、耐寒性試験を行った。以下、各試験方法について説明する。
(難燃性試験)
JASO D611−94に準拠して行った。すなわち、作製した各絶縁電線を300mmの長さに切り出して試験片とした。次いで、各試験片を鉄製試験箱に入れて水平に支持し、口径10mmのブンゼンバーナーを用いて還元炎の先端を試験片中央部の下側から30秒以内で燃焼するまで当て、炎を静かに取り去った後の残炎時間を測定した。この残炎時間が15秒以内のものを合格とし、15秒を超えるものを不合格とした。
(耐摩耗性試験)
JASO D611−94に準拠し、ブレード往復法により行った。すなわち、作製した各絶縁電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。次いで、23±5℃の室温下にて、台上に固定した試験片の絶縁被覆層の表面を軸方向に10mm以上の長さでブレードを往復させ、絶縁被覆層の摩耗によってブレードが導体に接触するまでの往復回数を測定した。この際、ブレードにかける荷重は7Nとし、ブレードは毎分50回の速度で往復させた。次いで、試験片を100mm移動させて、時計方向に90°回転させ、上記の測定を繰り返した。この測定を同一試験片について合計4回行い、最低値が200回以上のものを合格とし、200回未満のものを不合格とした。
(耐寒性試験)
JIS C3005に準拠して行なった。すなわち、作製した各絶縁電線を38mmの長さに切り出して試験片とした。次いで、この試験片を脆化試験機にかけ、冷却しながら打撃具でたたき、5本すべてが割れたときの温度を耐寒温度とした。耐寒温度が−20℃以下であった場合を、耐寒性に優れると評価した。
表1および表2に、作製した各絶縁電線の絶縁被覆層の構成、各層を形成する組成物の配合割合(単位:質量部)、評価結果等をまとめて示す。
Figure 2009289720
Figure 2009289720
上記表1、2によれば、比較例に係る各絶縁電線は、難燃性、耐摩耗性、耐寒性の評価項目のうち、何れかに難点があることが分かる。
すなわち、比較例1は、比較的高い弾性率を有する内層を有しているものの、外層を有していない。また、内層は、難燃性樹脂組成物より形成されていない。そのため、比較例1は、耐摩耗性、耐寒性が良好なものの、難燃性に劣る。
比較例2、3は、比較的高い弾性率を有する外層を有しているものの、内層を有していない。また、外層は、難燃剤を含有している。そのため、比較例2、3は、難燃性、耐摩耗性が良好なものの、耐寒性に劣る。
比較例4、5は、内層および外層を有しているものの、外層が難燃剤を含有しており、その弾性率も低い。そのため、比較例4、5は、耐摩耗性に劣る。
比較例6は、内層および外層を有しており、外層の弾性率が高いものの、外層が難燃剤を含有している。そのため、比較例6は、耐寒性に劣る。
比較例7〜10は、内層および外層を有しており、外層は難燃剤を含有していないものの、外層の弾性率が低い。そのため、比較例7〜10は、耐摩耗性に劣る。また、比較例7、8は、外層の厚みが、絶縁被覆層の全体厚みの1/2を越えていたことも耐摩耗性が悪化した原因であると考えられる。
これらに対して、実施例に係る絶縁電線は、何れも、難燃性、耐摩耗性、耐寒性の全てに優れることが確認できた。
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能なものである。

Claims (6)

  1. 導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆層とを有する絶縁電線であって、
    前記絶縁被覆層は、
    少なくとも1層以上の内層と、前記内層の最表面に積層された外層とを有し、
    前記内層のうち、少なくとも1層は、難燃性組成物より形成されており、
    前記外層は、難燃剤を含有せず、かつ、その弾性率が500MPa以上であることを特徴とする絶縁電線。
  2. 前記外層の厚みは、前記絶縁被覆層の厚みの1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記絶縁被覆層の厚みは、0.5mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁電線。
  4. 前記外層は、官能基が導入されたオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の絶縁電線。
  5. 前記官能基は、カルボン酸基、酸無水基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、および、シラン基から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項4に記載の絶縁電線。
  6. 請求項1から5の何れかに記載の絶縁電線を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
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JP2011150823A (ja) * 2010-01-20 2011-08-04 Hitachi Cable Ltd 絶縁電線

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