JP5443276B2 - 超電導磁石装置 - Google Patents

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Description

本発明は、超電導磁石装置に関し、詳しくは、超電導磁石による主磁場の磁場均一度を補正して高い磁場均一度を得るための磁場補正機構を備えた超電導磁石装置に関する。
磁気共鳴画像装置(MRI)用の超電導磁石装置では、超電導磁石の内部領域に形成される測定空間(磁場発生空間の中心付近)において磁場均一度が極めて高い(数ppm以下である)こと、つまり磁束密度が一様で勾配がなく、磁束密度の空間的変化が極めて小さいことが要求される。このような磁場の高均一化を実現するために、設計過程において主磁場を発生する超電導磁石のコイル形状や電流密度等に工夫が施されている。しかし、製造過程における寸法誤差等により設計通りの製造精度が得られ難いことや、装置設置場所の周辺にある磁性体(例えば、鉄筋コンクリート建屋の鉄筋など)の影響により誤差磁場成分が生じ、所望の磁場均一度が得られないことがある。このため、超電導磁石装置では、ニッケル片や鉄片などの高い透磁率を持つ磁場補正用の磁性体片を超電導磁石の内部領域の適切な位置に適切な量だけ配置して、この磁性体片の磁化により発生する磁場により、超電導磁石による主磁場の磁場均一度を補正する方法が採用されている。この磁性体片は磁性体シムと称されている。また、磁性体シムを用いて超電導磁石による主磁場の磁場均一度を補正する方法は磁性体シム法(パッシブシム法)と称されている
この磁場発生空間においては、磁性体片は強力な電磁力の作用を受けるため、磁性体片を超電導磁石の内部領域に何らかの方法で固定する必要がある。磁性体片を超電導磁石の内部領域に固定する一つの方法として、超電導体磁石を収容する円筒状のハウジング(ボア)の内周壁に磁性体片を接着材等で直接貼り付ける方法が従来から知られている。しかしながら、この方法では、補正過程においてハウジングの内周壁に一度貼り付けた磁性体片の位置を変更する場合、その都度、磁性体をハウジングからはがして貼り付け直す必要があるため、多大な労力を要するという問題があった。この問題を解決するための技術として、例えば、以下の特許文献1〜3に記載にあるように、磁場補正機構をハウジングの内周壁に固定し、この磁場補正機構により磁性体片の配置を容易に変更可能にすると共に、磁性体片をこの磁場補正機構の所要位置において固定可能にしたものがある。
特許文献1に記載された技術では、磁場強度補正装置(磁場補正機構)を円筒状容器(ハウジング)の内周壁に固定している。この磁場強度補正装置は、磁性体片を保持するホルダの両側に、板ばねを介して一対の突起部を形成し、この突起部を使用して、ホルダを保持部材の所要位置での固定及びその位置の変更を可能にしている。
また、特許文献2に記載された技術では、円筒(ハウジング)の内周壁にカーテンレール状のリングレールと直線レールとを取り付けて、磁性体片をこれらのレールに嵌め込み、レール内を滑らせることで磁性体片の位置の変更を可能にすると共に、磁性体をレールにボルト等で固定することでレールの所要位置に磁性体片を固定可能にしている。
また、特許文献3に記載された技術では、磁性体片を収納する磁性体シム機構(磁場補正機構)をハウジングの内周壁に固定している。この磁性体シム機構は、複数の磁性体片と、それを収納する複数の分割シムトレイ、この分割シムトレイ間に挿入されるシムトレイスペーサとを直線状に結合した組合せシムトレイ、分割シムトレイのシムポケットの中で磁性体シムを固定するシムスペーサ、及びシムポケットを覆うはめ込み式の蓋から構成されている。そして、分割シムトレイとシムトレイスペーサの組み合せ方、及び分割シムトレイに収納する磁性体片の量を変更することで、ハウジングの内周壁内における磁性体片の配置位置及び量を調整している。なお、分割シムトレイの側部には、はめ込み式の蓋を固定できるように溝が切ってあり、シムポケットに磁性体片を収納後、シムスペーサを充填し、はめ込み式用の蓋を閉めることによりシムポケット内部で磁性体片を固定することが可能にされている。
特開昭63−122441号公報 特開平1−254154号公報 特開2008−289703号公報
ところで、超電導磁石装置において、測定空間の磁場均一度に向上させるためには、超電導磁石の内部領域に配置される磁性体片の配置の空間的な自由度(磁性体片の配置位置、及び量の自由度)が高いことが望ましい。つまり、ハウジングの内周壁に固定される磁性体補正機構においては、この磁性体補正機構が備える磁性体片の配置の空間的な自由度が高いことが望ましい。しかし、磁性体補正機構が備える磁性体片の配置の空間的な自由度を高くするために、ただ単に磁場補正機構の大きさを大きくすると、超電導磁石の内部領域に形成される測定空間(磁場発生空間)を狭めることになるため、この磁場補正機構は上限なく大きくすることはできない。特に四肢や頭部専用の小型のMRI用の超電導磁石装置においては、超電導磁石の内部領域が小さいため、測定空間を所要の大きさ確保するために磁場補正機構の大きさはかなり制限されたものになっている。このため、磁性体片を磁場補正機構の所要位置に固定(配置)させる手段(以下、磁性体配置手段)の磁場補正機構において占める割合(大きさ)を小さくして、磁性体補正機構が備える磁性体片の配置の空間的な自由度を高くすることが可能な超電導磁石装置が望まれている。
上記特許文献1に記載された技術では磁性体配置手段はホルダ及び保持部材であり、特許文献2に記載された技術で磁性体配置手段はカーテンレール状のレール及びボルト等であり、特許文献3に記載された技術では磁性体配置手段は分割シムトレイ、シムスペーサ、及びはめこみ式の蓋であり、何れの技術においても磁性体配置手段の磁場補正機構において占める大きさが大きいため、磁性体補正機構が備える磁性体片の配置の空間的な自由度が充分に高いとは云い難いものである。
そこで、本願発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、超電導磁石の内部領域に形成される測定空間を狭めることなく、磁性体片の配置の空間的な自由度を高くすることが可能な磁場補正機構を備えた超電導磁石装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の超電導磁石装置は、内側領域に形成される測定空間に主磁場を発生する超電導磁石と、内周壁と外周壁との間に前記超電導磁石を収容する円筒状のハウジングと、前記主磁場の磁場均一度を補正する磁場補正機構とを備え、前記磁場補正機構は、前記ハウジングの前記内周壁よりも径内側に配された円筒状の枠体と、前記枠体の外周面に形成され、前記ハウジングの前記内周壁とで囲繞された複数の収納空間を形成する複数の凹部と、前記複数の収納空間に収納される磁場補正用の磁性体片とを備えていることを特徴とする。
上記の構成によれば、磁場補正用の磁性体片は、ハウジングの内周壁と、枠体の外周面に形成された凹部とで囲繞された収納空間に収納される。
このように、磁性体片を磁場補正機構の所要位置に固定(配置)させる磁性体配置手段の一構成要素としてハウジングの内周壁を用いているので、磁場補正機構における磁性体配置手段の大きさを、従来装置に比べて小さくすることができる。従って、磁場補正機構の大きさが同じである場合においても、従来装置に比べて磁性体補正機構が備える磁性体片の配置の空間的な自由度を高くすることができるので、その結果、測定空間の磁場均一度を向上させることができる。
また、本発明の超電導磁石装置において、前記磁場補正機構は、前記収納空間に収納可能なスペーサを更に備え、前記収納空間は、前記磁性体片又は前記スペーサの少なくとも一方によりその空間が埋められていてもよい。上記の構成によれば、磁性体片をこの収納空間内において固定させることができ、磁性体片を磁場補正機構の所要位置により固定させることができるので、その結果、超電導磁石の主磁場の磁場均一度の補正を精度よく行うことができ、測定空間の磁場均一度をより向上させることができる。
また、本発明の超電導磁石装置において、前記磁性体片は断面U字状に形成されており、前記所要の収納空間に弾性に抗して収納されていてもよい。上記の構成によれば、磁性体片は自らの弾性により所要の収納空間において強固に固定されることになるので、その結果、超電導磁石の主磁場の磁場均一度の補正を精度よく行うことができ、測定空間の磁場均一度をより向上させることができる。
また、本発明の超電導磁石装置において、前記スペーサが非磁性体であってもよい。上記の構成によれば、磁場発生空間においてもスペーサから磁場は発生しない。従って、このスペーサは、測定空間の磁場を乱す要因とはならないので、その結果、超電導磁石の主磁場の磁場均一度を精度よく補正することができ、測定空間の磁場均一度をより向上させることができる。
また、本発明の超電導磁石装置において、前記磁性体片は、前記収納空間に複数収納可能な大きさに形成されていてもよい。上記の構成によれば、所要の収納空間に収納させる磁性体片の数を変更するだけで、所要の収納空間内の磁性体の量を調整することができるので、主磁場の磁場均一度の補正を容易に行うことができる。
また、本発明の超電導磁石装置において、前記凹部は、前記枠体の外周面の周方向及び軸方向に亘って複数形成されていてもよい。上記の構成によれば、凹部とハウジングの内周壁とで囲繞された収納空間は、枠体の周方向及び軸方向に亘って複数形成されることになるので、この収納空間に収納される磁性体片の配置の空間的な自由度は高くなり、その結果、超電導磁石の主磁場の磁場均一度を精度よく補正することができ、測定空間の磁場均一度をより向上させることができる。
前記枠体は、前記ハウジングの前記内周壁よりも径外側に拡径され、前記ハウジングの円筒端部に着脱可能に固定されたフランジ部を備えていてもよい。上記の構成によれば、枠体をハウジングに対して固定させることができるので、収納空間に収容された磁性体片を超電導磁石の内部領域の所要位置に固定させることができる。その結果、超電導磁石の主磁場の磁場均一度を精度よく補正することができ、測定空間の磁場均一度をより向上させることができる。
超電導磁石の内部領域に形成される測定空間を狭めることなく、磁場補正機構が備える磁性体片の配置の空間的な自由度を高くすることができる。
本発明の一実施形態に係る超電導磁石装置の構成を示す模式的構成説明図で、全体の1/4部分を切り取って装置内部を示すようにした図である。 図1に示す超電導磁石装置の断面状態を示す説明図である。 図2のA―A線の断面状態を示す説明図である。 超電導磁石装置の変形例を示す図2のA―A線の断面状態を示す説明図である。
以下、本発明の一実施形態を、四肢専用の小型のMRI用超電導磁石装置に適用して図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る超電導磁石装置の構成を示す模式的構成説明図で、全体の1/4部分を切り取って装置内部を示すようにした図である。図2は、図1に示す超電導磁石装置の断面状態を示す説明図である。図3は、図2のA―A線の断面状態を示す説明図である。図4は、超電導磁石装置の変形例を示す図2のA―A線の断面状態を示す説明図である。
図1〜図3に示すように、本実施形態の超電導磁石装置1は、超電導磁石2と、ハウジング3と、磁場補正機構10とを備えている。
(超電導磁石)
超電導磁石2は、複数の超電導コイル(図示せず)と、この超電導コイルを内部に収容し、超電導コイルを超電導に保つために必要な冷媒である液体ヘリウムが充填されたヘリウム容器(図示せず)とから主に構成されている。この超電導磁石2は円筒状をなしており、内部領域に形成される測定空間Tに主磁場を発生する。
(ハウジング)
ハウジング3は円筒状をなし、内周壁3aと外周壁3bとの間に超電導磁石2を収容する容器である。ハウジング3の内径は250mm〜400mm程度である。またハウジング3の軸方向長さは500mm程度である。ハウジング3の円筒端部3cには、図2に示すように、軸方向に延び、後述する固定ボルト17と螺合される雌ネジ穴3dが複数穿設されている。
(磁場補正機構)
磁場補正機構10は、超電導磁石2の主磁場の磁場均一度を補正するためのものであり、枠体11と、枠体11の後述する本体部12の外周面12aに形成された複数の凹部14と、磁場補正用の磁性体片15と、スペーサ16とを備えている。
(枠体)
枠体11は、円筒状の本体部12と、本体部12の一端に径外方向に拡径して形成されたフランジ部13とを備えており、非磁性体材料からなる。この本体部12は、その外径がハウジング3の内径と略同一寸法にされている。これにより、枠体11の本体部12をハウジング3の内周壁3aよりも径内側に配した際に、フランジ部13の外径はハウジングの内周壁3aの同一面上よりも径外側に配されることになる。
本体部12の外周面12aには、枠体11の周方向及び軸方向に亘って等間隔に凹部14が複数形成されている。この凹部14の縦横は数cm角、深さは2mm程度である。また凹部14の底面は、本体部12の円周に沿って湾曲されている。
枠体11のフランジ部13には、ハウジング3の雌ネジ穴3dに対応し、軸方向に延びる貫通孔13aが、本体部12の外周面12aから径外方向に所定間隔離反して複数形成されている。枠体11の本体部12をハウジング3の内周壁3aよりも径内側に配した(本体部12を超電導磁石2の内部領域に挿入した)際に、固定ボルト17をこのフランジ部13の貫通孔13aに挿通させ、ハウジング3の円筒端部の雌ネジ穴3dと螺合させることで、枠体11をハウジング3の所定位置に、すなわち、磁場補正機構10を超電導磁石2の内部領域の所定位置に着脱可能に固定させることができる。その結果、超電導磁石の主磁場の磁場均一度を精度よく補正することができ、測定空間の磁場均一度をより向上させることができる。
上記のように本実施形態では、ハウジング3の雌ネジ穴3d、枠体11のフランジ部13の貫通孔13a、及び固定ボルト17により、枠体11をハウジング3の所定位置に着脱可能に固定させているが、これに限定されることはなく、枠体11の内周面よりも径内側にある測定空間Tの空間を狭めることなく、磁場補正機構10を超電導磁石2の内部領域の所定位置に着脱可能に固定させることができるものであればよい。
枠体11の本体部12をハウジング3の内周壁3aよりも径内側に配した際には、図2及び図3に示すように、ハウジング3の内周壁3aと枠体11の凹部14とで囲繞された収納空間18が周方向及び軸方向に亘って等間隔に複数形成される。このように、収納空間18は、枠体11の周方向及び軸方向に亘って等間隔に複数形成されているため、この収納空間18に収納される磁性体片15の配置の空間的な自由度は高く、その結果、超電導磁石2の主磁場の磁場均一度を精度よく補正することができ、測定空間の磁場均一度を向上させることができる。
(磁性体片及びスペーサ)
磁性体片15は、ニッケル片や鉄片などの高い透磁率を持つ磁性体材料からなる薄板である。この磁性体片15は、後述する磁場補正方法における磁性体の配置設計に基づいて、複数の収納空間18のうちの所要の収納空間(以下、磁性体収納空間18aとも称す。)に収納されることになる。換言すれば、所要の収納空間(磁性体収納空間18a)とは、後述の磁場補正方法における磁性体の配置設計において、磁性体片15を収納させる収納空間として選定された収納空間18のことである。
この磁性体片15は、収納空間18に収まる寸法で、縦横の寸法及び/又は厚さの寸法が異なる複数種類のものが用意されている。具体的には、磁性体片15の厚さについては、0.05mm〜2mmの間で複数種類用意されている。凹部14の深さは上記したように2mm程度であるため、例えば、磁性体片15の厚さが0.05mmである場合には、この磁性体片15を収納空間18に複数枚収納させることができる。このように、磁性体片15が収納空間18に複数枚収納可能な大きさに形成されていた場合、磁性体収納空間18a内における磁性体の量を、収納させる磁性体片15の縦横及び厚さの寸法並びに枚数により調整することができるので、その結果、主磁場の磁場均一度の補正(調整)を容易に行うことができる。磁性体片15の縦横については、例えば、凹部14の縦横と略同一寸法や半分の寸法等のものが複数種類用意されている。
なお、磁性体片は、図4に示すように、板部材を曲げたような断面U字状に形成された磁性体片150でもよい。この磁性体片150を、その弾性に抗して磁性体収納空間18aに収納させることで、磁性体片150を磁性体収納空間18a内において強固に固定させることができる。具体的には、図4に示すように、磁性体片150のU字の一側部150aを凹部14の底面に向け、他側部150bをハウジング3の内周壁3aに向けて、この磁性体片150をU字が狭まるように(一側部150aと他側部150bとを近づけるように)変形させて、磁性体片15を磁性体収納空間18aに収納させることで、一側部150aは枠体11の凹部14の底面を、他側部150bはハウジング3の内周壁3aを、この磁性体片150の弾性(復元力)によりそれぞれ押圧することになる。この押圧の反力により、磁性体片150を磁性体収納空間18a内に強固に固定させることができる。このように、磁性体片150を自らの弾性により磁性体収納空間18a内に強固に固定させることで、強い電磁力の作用が働いたとしても、磁性体片15を磁性体収納空間18a内において動くことをなくすことができるので、その結果、超電導磁石2の主磁場の磁場均一度の補正を精度よく行うことができ、測定空間の磁場均一度をより向上させることができる。なお、磁性体収納空間18aに収納される磁性体片150の配置向きは特に限定されるものではなく、弾性に抗して磁性体収納空間18aに収納されていればよい。例えば、一側部150a及び他側部150bを凹部14の対向する側面にそれぞれ向けて、磁性体片150を弾性に抗して磁性体収納空間18aに収納させて、一側部150a及び他側部150bが枠体11の凹部14の対向する側面を押圧させることで、磁性体片150を磁性体収納空間18a内に固定させるようにされていてもよい。
スペーサ16は、シリコンゴムやバイトン樹脂あるいはアルミニウムや鉛などの弾性(弾力性)のある非磁性樹脂、非磁性金属からなる薄板であり、磁性体片15と同様に、収納空間18に収まる寸法で、縦横の寸法及び/又は厚さの寸法が異なる複数種類のものが用意されている。このスペーサ16は、磁性体片15を磁性体収納空間18a内の所要の配置位置に固定させるためのものである。具体的には、磁性体収納空間18a内に配置された磁性体片15が占める空間以外の残余空間をこのスペーサ16により埋めることで、磁性体片15を磁性体収納空間18a内の所要の配置位置に固定させる。なお、磁性体片15が磁性体収納空間18a全体を埋めている場合、すなわち、磁性体収納空間18a内に残余空間が存在しない場合には、このスペーサ16を磁性体収納空間18aに収納させる必要はない。つまり、磁性体収納空間18aは、磁性体片15のみ、又は磁性体片15及びスペーサ16により(磁性体片15又はスペーサ16の少なくとも一方により)、その空間が埋められている。
なお、所要の収納空間(磁性体収納空間18a)以外の収納空間18は、即ち後述の磁場補正方法における磁性体の配置設計において、磁性体片15を収納させる収納空間として選定されていない収納空間18は、磁性体片15及びスペーサ16が収納されていない空の状態にされていてもよく、また、スペーサ16のみが収納されていてもよい。
以上のように、磁性体片15は、ハウジング3の内周壁3aと、枠体11の本体部12の外周面12aに形成された凹部14とで囲繞された磁性体収納空間18aに収納される。このように、磁性体片15を磁場補正機構10の所要位置に固定させる磁性体配置手段の一構成要素として、ハウジング3の内周壁3aを用いているので、磁場補正機構10における磁性体配置手段の大きさを、従来装置に比べて小さくすることができる。従って、磁場補正機構10の大きさが同じである場合においても、従来装置に比べて磁場補正機構10が備える磁性体片15の配置の空間的な自由度を高くすることができるので、測定空間Tの磁場均一度を向上させることができる。また、磁性体収納空間18aは、磁性体片15又はスペーサ16の少なくとも一方によりその空間が埋められているので、磁性体片15を磁性体収納空間18a内において固定させることができる。
なお、磁性体収納空間18aは、磁性体片15やスペーサ16によりその空間全体が密に埋められている必要は必ずしもなく、主磁場の磁場均一度の補正に支障をきたさない程度であれば、すなわち、磁性体片15が電磁力の作用を受けた際においても、この磁性体片15が磁性体収納空間18a内に動かないように固定されているのであれば、磁性体収納空間18aに磁性体片15やスペーサ16に埋められていない若干の空間があってもよい。
また、上記したように、磁場補正機構10の枠体11及びスペーサ16は非磁性体材料からなる。従って、磁場発生空間においても枠体11及びスペーサ16から磁場は発生しない。これにより、枠体11及びスペーサ16は、測定空間Tの磁場を乱す要因とはならないので、主磁場の磁場均一度を精度よく補正することができ、測定空間Tの磁場均一度をより向上させることができる。
また、磁性体片15及びスペーサ16は、枠体11の円周に沿って湾曲されている。すなわち、磁性体片15及びスペーサ16は凹部14の底面に沿って湾曲されている。このように磁性体片15及びスペーサ16を湾曲させることで、磁性体片15を磁性体収納空間18aに収納した際に凹部14と磁性体片15との間、及びスペーサ16と磁性体片15との間に生じる隙間を減らすことができるため、磁性体片15に強い電磁力の作用が働いた場合においても、磁性体片15を磁性体収納空間18a内において動かないように固定させることができると共に、磁性体収納空間18aに収納される磁性体収納空間18aの配置の自由度を高くすることができる。
また、磁性体収納空間18aの残余空間には、この残余空間の大きさよりも若干大きいスペーサ16を収納することが好ましい。この理由は、スペーサ16が残余空間の大きさよりも若干大きい場合、スペーサ16は磁性体収納空間18a内に変形されて収納されることになるので、磁性体片15は、このスペーサ16の弾性(復元力)により磁性体収納空間18a内により強固に固定されることになるからである。またさらに、このスペーサ16は、ハウジング3の内周壁3aと枠体11の凹部14の底面とを弾性により押圧することになるので、磁場補正機構10をハウジング3に強固に固定させることができる場合がある。
[磁場補正方法]
次に、超電導磁石装置1の磁場補正方法ついて説明する。まず、磁場補正機構10における枠体11の本体部12をハウジング3の内周壁3aよりも径内側に配さない状態(磁性体片15を超電導磁石2の内部領域に配さない状態)で、超電導磁石2を励磁し、測定空間Tの磁場を多数点測定し、超電導磁石2が発生する主磁場のみの磁場均一度を評価する。次に超電導磁石2の主磁場の磁場均一度を補正するために、超電導磁石2の内部領域における磁性体の配置設計をする。具体的には、測定された多数点の磁場を基に、誤差磁場成分が小さくなるように、磁性体片15を収納させる収納空間18(磁性体収納空間18a)の選定、並びに選定された磁性体収納空間18a各々に収納させる磁性体片15の縦横・厚さの寸法、枚数、及び磁性体収納空間18a内の配置位置の選定を計算により行う。
次に、上記の配置設計に基づいて、図1に示すように、磁性体収納空間18aに対応する凹部14に、磁性体片15のみ、又は磁性体片15及びスペーサ16を入れる。その後、枠体11の本体部12をハウジング3の内周壁3aよりも径内側に配し(本体部12を超電導磁石2の内部領域に挿入し)、固定ボルト17を枠体11のフランジ部13の貫通孔13aに挿通させ、ハウジング3の雌ネジ穴3dと螺合させることで、磁場補正機構10をハウジング3(超電導磁石2の内部領域)の所定位置に固定させる(図2参照)。この時、磁性体片15は、枠体11の凹部14とハウジング3の内周壁3aとで形成された磁性体収納空間18a内に固定されているので、このように磁場補正機構10をハウジング3の所定位置に固定させることで、結果として磁性体片15を超電導磁石2の内部領域の所要位置に固定させることができる。
磁場補正機構10をハウジング3に固定した状態で、超電導磁石2を励磁し、再度測定空間Tの磁場を多数点測定し、磁場均一度を評価する。通常、一回の補正では測定空間Tの磁場均一度を目標範囲(数ppm以下)にすることは難しいので、上記した磁性体の配置設計、配置設計に基づいた磁性体収納空間18aへの磁性体片15の収納、測定空間Tの磁場均一度の評価の一連の作業を繰り返して、徐々に測定空間Tの磁場均一度を向上させていく。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
1 超電導磁石装置
2 超電導磁石
3 ハウジング
3a 内周壁
3b 外周壁
10 磁場補正機構
11 枠体
12 本体部
12a 外周面
14 凹部
15 磁性体片
16 スペーサ
18 収納空間
18a 所要の収納空間(磁性体収納空間)
150 磁性体片

Claims (6)

  1. 内側領域に形成される測定空間に主磁場を発生する超電導磁石と、
    内周壁と外周壁との間に前記超電導磁石を収容する円筒状のハウジングと、
    前記主磁場の磁場均一度を補正する磁場補正機構と
    を備え、
    前記磁場補正機構は、
    前記ハウジングの前記内周壁よりも径内側に配された円筒状の枠体と、
    前記枠体の外周面に形成され、前記ハウジングの前記内周壁とで囲繞された複数の収納空間を形成する複数の凹部と、
    前記複数の収納空間に収納される磁場補正用の磁性体片と、
    を備え
    前記磁性体片は、磁性体材料からなる薄板を弾性変形する形状に形成したものであって、前記所要の収納空間に弾性に抗して収納されていることを特徴とする超電導磁石装置。
  2. 内側領域に形成される測定空間に主磁場を発生する超電導磁石と、
    内周壁と外周壁との間に前記超電導磁石を収容する円筒状のハウジングと、
    前記主磁場の磁場均一度を補正する磁場補正機構と
    を備え、
    前記磁場補正機構は、
    前記ハウジングの前記内周壁よりも径内側に配された円筒状の枠体と、
    前記枠体の外周面に形成され、前記ハウジングの前記内周壁とで囲繞された複数の収納空間を形成する複数の凹部と、
    前記複数の収納空間に収納される磁場補正用の磁性体片と、
    を備え
    前記枠体は、前記ハウジングの前記内周壁よりも径外側に拡径され、前記ハウジングの円筒端部に着脱可能に固定されたフランジ部を備えていることを特徴とする超電導磁石装置。
  3. 前記磁場補正機構は、
    前記収納空間に収納可能なスペーサを更に備え、
    前記収納空間は、前記磁性体片又は前記スペーサの少なくとも一方によりその空間が埋められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導磁石装置。
  4. 前記スペーサが非磁性体であることを特徴とする請求項に記載の超電導磁石装置。
  5. 前記磁性体片は、前記収納空間に複数収納可能な大きさに形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超電導磁石装置。
  6. 前記凹部は、前記枠体の周方向及び軸方向に亘って複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超電導磁石装置。
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