JP5441038B2 - 異極像結晶を用いたx線発生装置 - Google Patents

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Description

本発明は、異極像結晶を用いたX線発生装置に関するものである。
ニオブ酸リチウム(LiNbO)やタンタル酸リチウム(LiTaO)等の異極像結晶を用いたX線発生装置は、高圧電源装置を必要としないので、小型軽量で可搬性に優れており、従来のX線管球に代わるX線源として注目されている。
従来のこの種のX線発生装置として、例えば、内部に低圧ガス雰囲気を維持する容器と、容器内に配置された異極像結晶と、異極像結晶の温度を昇降させる温度昇降手段と、容器内における異極像結晶から生じる電界の到達範囲内に配置された箔状のX線発生用金属ターゲットと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このX線発生装置では、容器内の異極像結晶は、定常状態においても分極していて、分極方向の一方の端面が正の電気面を形成し、他方の端面が負の電気面を形成する。そして、正の電気面および負の電気面には、それぞれ、その電荷量と等量で異符号の電荷が吸着しているため、常時は電気的に中性である。
ところが、異極像結晶が加熱および冷却を繰り返されると、その温度変化に伴って結晶内部の自発分極が増減し、正および負の電気面の吸着電荷がその変化に追従できなくなって、電気的な中和が破られ、結晶の周囲に強い電界が生じる。そして、容器中の電子が、金属ターゲットから異極像結晶に向かう電界によって、金属ターゲットに向けて加速され、金属ターゲットに衝突し、制動輻射によって金属ターゲットを形成する物質に固有の特性X線および連続X線が発生する。
しかし、このX線発生装置においては、異極像結晶および金属ターゲット間に発生する電界が異極像結晶からの距離の増大につれて急激に減衰するので、金属ターゲットに衝突する電子のエネルギーを上げることが容易ではなく、実用に十分な強度のX線を発生させることが難しいという問題があった。
そこで、異極像結晶および金属ターゲット間に発生する電界の強度を大きくし、金属ターゲットに衝突する電子のエネルギーを上げるため、例えば、容器内に一対の異極像結晶を対向配置し、対向する異極像結晶間に板状または箔状の金属ターゲットを配置したものがこれまでに提案されている(例えば、特許文献2参照)。
このX線発生装置によれば、対向する異極像結晶間の距離を適切に設定することによって、金属ターゲットを貫く強い電界を発生させて、金属ターゲットに対する電子の衝突エネルギーを増大させることができる。しかし、その一方で、この構成では、電子が金属ターゲット表面に対しほぼ垂直に衝突するのに対し、電子の衝突方向に発生する強いX線を外部に取り出すことが難しく、そのため、せっかく発生させた強いX線を装置から照射させることができないという問題があった。
また、上述の従来のX線発生装置のいずれにおいても、金属ターゲットに電子が衝突する際にスパッタリングが発生し、金属ターゲットの構成原子が金属ターゲットに対向する異極像結晶の電気面に付着することで、時間の経過とともに異極像結晶から生じる電界が減衰するという問題もあった。
このため、従来のX線発生装置においては、実用に十分な強いX線を安定的に発生させることができなかった。
特開2005−174556号公報 特開2005−285575号公報
したがって、本発明の課題は、より強いX線を安定的に発生する、異極像結晶を用いたX線発生装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は、内部に低圧ガス雰囲気を維持する容器と、それぞれ一方向に分極し、前記容器の内部に、正負の異なる電気面が互いに対向するように一列に配置された少なくとも2個の異極像結晶と、を備え、前記異極像結晶はそれぞれ前記分極の方向にのびる貫通孔を有するとともに、前記貫通孔が互いに整合するように配置され、さらに、対向する前記異極像結晶の間に配置された金属ターゲットを備え、前記金属ターゲットを挟んで隣接する前記異極像結晶同士が電気的に接続されて、前記異極像結晶および前記金属ターゲットからなる1つの積層体が形成され、さらに、前記積層体を前記容器内の所定位置に固定する固定手段と、前記異極像結晶の温度を昇降させる温度制御手段と、を備え、前記異極像結晶の温度の昇降に伴って前記貫通孔内に生じる電界によって、電子を前記金属ターゲットに衝突させることにより、X線を発生させるものであることを特徴とするX線発生装置を構成したものである。
好ましくは、前記X線発生装置は、さらに、対向する前記異極像結晶の間に配置されて当該異極像結晶同士を接続し、かつ前記金属ターゲットを取り外し可能に支持する、導電性を有するターゲット支持手段を備えており、あるいは、前記異極像結晶および前記金属ターゲットが導電性接着剤によって互いに接合されている。
また、前記積層体が3個以上の前記異極像結晶を含む場合、前記金属ターゲットには、隣り合う前記異極像結晶の貫通孔同士を連通する少なくとも1つの開口が形成されることが好ましい。
前記温度制御手段は、前記容器の内部または外部に配置されたヒーターと、前記容器の外部に配置され、前記ヒーターに電力を供給する電源と、前記容器の外部に配置され、前記電源から前記ヒーターへの電力供給を制御する制御部と、を有していることが好ましい。この場合、前記ヒーターは、前記積層体を取り巻いて配置され、前記積層体の軸方向にのびるコイル状の電熱線からなり、前記電熱線と前記積層体の間には、電気的絶縁のための間隙が設けられ、または電気絶縁性を有する部材が配置されることが好ましい。または、前記ヒーターは前記容器を取り巻いて配置された電熱線からなっていることが好ましい。
あるいは、前記温度制御手段は、前記容器内に固定されたペルチェ素子と、前記容器の外部に配置され、前記ペルチェ素子に電力を供給する電源と、前記容器の外部に配置され、前記電源から前記ペルチェ素子への電力供給を制御する制御部と、を有し、前記ペルチェ素子は、放熱板および吸熱板を貫通する中央開口を有し、前記固定手段は前記ペルチェ素子からなり、前記積層体の一方の端面が前記ペルチェ素子の前記放熱板または前記吸熱板に接触し、かつ前記貫通孔が前記ペルチェ素子の前記中央開口に整合した状態で、前記積層体が前記ペルチェ素子に固定されることが好ましい。
また、前記金属ターゲットが箔状に形成されていることが好ましい。
本発明によれば、分極方向に沿って貫通孔を有する異極像結晶を、正負の異なる電気面が向き合い、各貫通孔が整合するように一列に配置するとともに、対向する異極像結晶間に金属ターゲットを挿入し、さらに、金属ターゲットを挟んで隣接する異極像結晶同士を電気的に接続することによって1つの積層体を形成し、分極方向に貫通孔を有しかつ当該貫通孔内に金属ターゲットを備えた単体の異極像結晶と同等のものを構成した。
この積層体を構成する異極像結晶の温度を昇降させると、貫通孔内には、分極方向に平行でかつ金属ターゲットをほぼ垂直に貫通する強い電界が、昇温時には負の電気面側から正の電気面側に向かって、また、降温時にはその逆向きに発生し、それによって電界強度の大きい領域が局所的に形成される。
そして、異極像結晶の昇温時には、積層体の貫通孔内において、積層体の正の電気面側から負の電気面側に向かう高エネルギーの電子が金属ターゲットに対してほぼ垂直に衝突し、制動輻射によって、金属ターゲットを形成する物質に固有の特性X線および連続X線が、金属ターゲットから電子の衝突方向およびそれと反対方向に発生し、貫通孔を通って積層体の外部に放射される。また、異極像結晶の降温時には、積層体の貫通孔内において、積層体の負の電気面側から正の電気面側に向かう高エネルギーの電子が金属ターゲットに対してほぼ垂直に衝突し、制動輻射によって、金属ターゲットを形成する物質に固有の特性X線および連続X線が、金属ターゲットから電子の衝突方向およびそれと反対方向に発生し、貫通孔を通って積層体の外部に放射される。
こうして、本発明によれば、異極像結晶の昇温時および降温時のいずれの場合にも、金属ターゲットをほぼ垂直に貫通する強い電界を生じさせ、それによって、金属ターゲットに対してほぼ垂直に電子を衝突させて、金属ターゲットから電子の衝突方向に発生した強いX線を外部に照射させることができる。
また、本発明によれば、スパッタリングによって外に弾き出された金属ターゲットの構成原子は、その大部分が貫通孔の内壁に付着する。そのため、異極像結晶の電気面の汚染が防止され、異極像結晶から発生する強電界が長時間にわたって維持される。
本発明の1実施例による異極像結晶を用いたX線発生装置の概略構造を示す斜視図である。 本発明によるX線発生装置の動作を説明する側断面図である。 本発明の別の実施例による異極像結晶を用いたX線発生装置の概略構成を示す斜視図である。 それぞれ、一方向に分極し、中心部に分極方向に沿った貫通孔を有する2個の同一の異極像結晶を、正負の異なる電気面が接触しかつ貫通孔が整合した状態で電気的に接合したものからなる積層体が、真空雰囲気中であって表面に吸着電荷がない状態で生じさせる電界をシミュレーションした結果を示す図であり、(A)は、2個の異極像結晶の配置を示す断面図であり、(B)は、中心軸(z軸)に沿った電界(E)の強度を示すグラフであり、(C)は、貫通孔内の異なる深さ毎の直径方向(x軸)に沿った電界(E)の強度を示すグラフである。 貫通孔のない2個の同一の異極像結晶を、真空雰囲気中であって表面に吸着電荷がない状態で、正負の異なる電気面が対向するように配置した場合に、2個の異極像結晶の間に生じる電界をシミュレーションした結果を示す図であり、(A)は、2個の異極像結晶の配置を示す断面図である。(B)は、2個の異極像結晶間の異なる距離毎のz軸に沿った電界の強度を示すグラフであり、(C)は、2個の異極像結晶間の異なる距離毎のx軸に沿った電界の強度を示すグラフである。 貫通孔を有する異極像結晶の単体について、真空雰囲気中であって表面に吸着電荷がない状態で、貫通孔の径を変化させた場合に、発生する電界をシミュレーションした結果を示す図であり、(A)は、貫通孔の異なる径毎の貫通孔の中心軸に沿った電界の強度を示すグラフであり、(B)は、貫通孔の径の変化に伴う貫通孔の中心における電界の強度の変化を示すグラフである。 貫通孔を有する2個の異極像結晶の積層体について、真空雰囲気中であって表面に吸着電荷がない状態で貫通孔の径を変化させた場合に、積層体が生じさせる電界をシミュレーションした結果を示す図であり、(A)は、貫通孔の異なる径毎の貫通孔の中心軸に取った電界の強度を示すグラフであり、(B)は、貫通孔の径の変化に伴う貫通孔の中心における電界の強度の変化を示すグラフである。 図3のX線発生装置において、加熱・冷却サイクルの1周期の間に、1秒間当たりに発生するX線強度(積分強度)を測定した結果を示すグラフである。 図3のX線発生装置において、加熱・冷却サイクルの繰り返し回数を変化させたときのサイクル1周期当たりのX線積分強度の変化を測定した結果を示すグラフである。 図3のX線発生装置において、昇温時および降温時に発生するX線のそれぞれのスペクトルのグラフである。 図3のX線発生装置において、金属ターゲットの代わりに、茶葉を試料として配置し、茶葉に電子を照射し、茶葉から発生したX線を検出し、分析して得られたスペクトルのグラフである。
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例によるX線発生装置の概略構成を示す斜視図である。図1を参照して、本発明によれば、内部に低圧ガス雰囲気を維持する容器1が備えられる。この場合、低圧とは、数Pa〜数十Paの圧力を意味している。
図示の実施例では、容器1は、X線を遮蔽する材料から形成された、両端開口が閉じられた円筒からなっている。容器1の両端面1a、1bには、それぞれ中央に円形開口が形成され、これらの開口には、Be等から形成されたX線透過窓11が気密シールされた状態で取り付けられる。
容器1の内部には、それぞれ一方向に分極した2個の異極像結晶2、3が、正負の異なる電気面が互いに対向するように一列に配置される。異極像結晶2、3としては、例えば、LiNbOやLiTaO等の公知の異極像結晶がすべて使用可能であり、また、同種の異極像結晶を2個用いてもよいし、異種の異極像結晶を2個用いてもよい。
異極像結晶2、3のそれぞれには分極方向に沿って貫通孔4、5が形成され、2個の異極像結晶2、3は、貫通孔4、5が互いに整合するように配置される。また、異極像結晶2、3の間には、金属ターゲット6が配置される。金属ターゲット6は、箔状または平板状を有していることが好ましい。
この実施例では異極像結晶が2個備えられ、2個の異極像結晶の間に金属ターゲットが配置されるが、2個以上の異極像結晶を、正負の異なる電気面が互いに対向し、かつ貫通孔が互いに整合するように一列に配置し、対向する異極像結晶の間に金属ターゲットを配置してもよい。
異極像結晶2、3および金属ターゲット6は互いに導電性接着剤によって接合されて、1つの積層体7が形成される。
積層体7が3個以上の異極像結晶を含む場合、各金属ターゲットには、隣り合う異極像結晶の貫通孔同士を連通する少なくとも1つの開口が形成され、貫通孔の全体を通じて内部に低圧ガス雰囲気が維持される。
この実施例では、異極像結晶2、3および金属ターゲット6を互いに導電性接着剤によって接合することで積層体7を形成したが、その代わりに、異極像結晶2、3の間に、金属ターゲット7を取り外し可能に支持する、導電性を有するターゲット支持手段を配置し、このターゲット支持手段によって異極像結晶2、3同士を接続することで積層体7を形成してもよい。この構成によれば、金属ターゲット6を簡単に取り替えることができる。
こうして形成された積層体7は、分極方向に貫通孔を有しかつ当該貫通孔内に金属ターゲットを備えた単体の異極像結晶と同等の構成を有している。
図示はしないが、積層体7は、公知の適当な固定手段によって、容器1内の所定位置に固定される。図示の実施例では、積層体7は、貫通孔5の開口が容器1の一方の端面1bのX線透過窓11に整合し、かつ貫通孔4の開口が容器1の他方の端面1aのX線透過窓11に整合するようにして、容器1の一方の端面1bの内壁に、電気絶縁性を有するスペーサを介して固定される。
本発明によれば、また、異極像結晶の温度を昇降させる温度制御手段が備えられる。温度制御手段は、容器1の内部または外部に配置されたヒーターと、容器1の外部に配置され、ヒーターに電力を供給する電源10と、容器1の外部に配置され、電源10からヒーターへの電力供給を制御する制御部9とを有している。
図示の実施例では、ヒーターは、積層体7を取り巻いて配置され、積層体7の軸方向にのびるコイル状の電熱線8からなっている。そして、電熱線8と積層体7の間には、電気的絶縁のための間隙が設けられ、あるいは電気絶縁性を有する部材が配置される。この場合、電熱線8は、積層体7を構成する各異極像結晶2、3の温度を昇降させるためのものであるから、この目的が達成可能であれば、電熱線8を積層体の1個の異極像結晶のみを取り巻くように配置してもよい。
また、この実施例では、積層体7を取り巻く電熱線8からヒーターを構成したが、その代わりに、容器1を取り巻いて配置された電熱線8からヒーターを構成してもよい。
こうして、電源10から電熱線8への電力供給が制御部9によって制御されることにより、積層体7を構成する異極像結晶2、3の加熱および冷却が繰り返される。
そして、積層体7を構成する異極像結晶2、3の温度を昇降させると、図2に示すように、貫通孔4、5内には、分極方向に平行でかつ金属ターゲット6をほぼ垂直に貫通する強い電界が、昇温時には負の電気面(−z面)側から正の電気面(+z面)側に向かって(図2B参照)、また、降温時にはその逆向きに(図2A参照)発生し、それによって電界強度の大きい領域が局所的に形成される。
そして、図2Bに示すように、異極像結晶2、3の昇温時には、積層体の貫通孔4、5内において、積層体の正の電気面(+z面)側から負の電気面(−z面)側に向かう高エネルギーの電子が金属ターゲット6に対してほぼ垂直に衝突し、制動輻射によって、金属ターゲット6を形成する物質に固有の特性X線および連続X線が、金属ターゲット6から電子の衝突方向およびそれと反対方向に発生し、貫通孔4、5を通って積層体の外部に放射される。また、図2Aに示すように、異極像結晶2、3の降温時には、積層体の貫通孔4、5内において、積層体の負の電気面(−z面)側から正の電気面(+z面)側に向かう高いエネルギーの電子が金属ターゲット6に対してほぼ垂直に衝突し、制動輻射によって、金属ターゲット6を形成する物質に固有の特性X線および連続X線が、金属ターゲット6から電子の衝突方向およびそれと反対方向に発生し、貫通孔4、5を通って積層体の外部に放射される。
こうして、本発明によれば、異極像結晶の昇温時および降温時のいずれの場合にも、金属ターゲットをほぼ垂直に貫通する強い電界を生じさせ、この強電界によって、金属ターゲットに対してほぼ垂直に電子を衝突させて、金属ターゲットから電子の衝突方向に発生した強いX線を外部に照射することができる。
また、本発明によれば、スパッタリングによって外に弾き出された金属ターゲットの構成原子は、その大部分が貫通孔の内壁に付着する。そのため、異極像結晶の電気面の汚染が防止され、異極像結晶から発生する強電界が長時間にわたって維持される。
上述の実施例では、電熱線からヒーターを構成したが、電熱線の代わりに、ペルチェ素子からヒーターを構成することもできる。この構成を図3に示した。図3に示すように、この実施例では、容器1の一方の端面1bの内壁に4本の脚を備えた支持台13が固定される。図示しないが、支持台13の中央には開口が設けられている。
ペルチェ素子12は放熱板および吸熱板を貫通する中央開口12bを有している。そして、ペルチェ素子12の放熱板または吸熱板、この実施例では吸熱板が支持台13上面に接触し、かつ中央開口12bが支持台13の開口に整合した状態で、ペルチェ素子12が支持台13に固定される。
さらに、積層体7の一方の端面がペルチェ素子12の放熱板または吸熱板、この実施例では放熱板に接触し、かつ貫通孔4、5がペルチェ素子12の中央開口12bに整合した状態で、積層体7がペルチェ素子12に固定される。それによって、積層体7の貫通孔4、5の全体を通じて内部に低圧ガス雰囲気が維持される。
ペルチェ素子12のリード線12aは、容器1の側壁を通って容器外部にのび、ペルチェ素子12への電力供給を制御する制御部9を経て電源10に接続される。
こうして、電源10からペルチェ素子12への電力供給が制御部9によって制御されることにより、積層体7を構成する異極像結晶2、3の加熱および冷却が繰り返される。
次に、本発明によるX線発生装置の作用効果を確認すべく実験を行った。
[実験1]
それぞれ、一方向に分極し、中心部に分極方向に沿った貫通孔を有する2個の同一の異極像結晶(以下、「試料1」および「試料2」とする。)を、正負の異なる電気面が接触しかつ貫通孔が整合した状態で電気的に接合したものからなる積層体が、真空雰囲気中であって表面に吸着電荷がない状態で生じさせる電界をシミュレーションした。このシミュレーションにおいては、試料1および試料2は、外径10mmおよび厚さ5mmの円柱形状のLiTaO単結晶からなり、また、貫通孔は5mmの径を有するものとした。
シミュレーションの結果を図4に示す。図4(A)は、試料1および試料2の配置を示す断面図である。図4(A)に示すように、試料1および試料2の境界面の中心に原点Oを設定し、当該境界面上の互いに直交する2方向にx軸およびy軸を設定し、さらに積層体の中心軸方向にz軸を設定した。また、図4(B)は、中心軸(z軸)に沿った電界(E)の強度を示すグラフであり、図4(C)は、貫通孔内の異なる深さ毎(z=0mm、4mm、4.9mm、5mm)の直径方向(x軸)に沿った電界(E)の強度を示すグラフである。
比較のために、試料1および試料2とは貫通孔の有無だけが異なる試料3および試料4を、真空雰囲気中であって表面に吸着電荷がない状態で、正負の異なる電気面が対向するように配置した場合に、試料3および試料4の間に生じる電界をシミュレーションした。
シミュレーションの結果を図5に示す。図5(A)は、試料3および試料4の配置を示す断面図である。図5(A)に示すように、試料3および試料4を結ぶ中心線の中点に原点Oを、また該中心線に沿ってz軸をそれぞれ設定するとともに、該中心線に直交する2方向にx軸およびy軸を設定した。図5(B)は、試料3および試料4間の異なる距離毎(1mm、5mm、10mm、20mm)のz軸に沿った電界の強度を示すグラフであり、図5(C)は、試料3および試料4間の異なる距離毎(1mm、5mm、10mm、20mm)のx軸に沿った電界の強度を示すグラフである。
図4および図5から、試料1および試料2の積層体の貫通孔内においても、対向配置した試料3および試料4間に生じる電界と同程度の強い電界の生じることがわかる。
[実験2]
試料1の単体について、真空雰囲気中であって表面に吸着電荷がない状態で、貫通孔の径を変化させた場合に、試料1が生じさせる電界をシミュレーションした。シミュレーションの結果を図6に示す。図6(A)は、貫通孔の異なる径毎(3mm、5mm、7mm)の貫通孔の中心軸に沿った電界の強度を示すグラフであり、図6(B)は、貫通孔の径の変化に伴う貫通孔の中心における電界の強度の変化を示すグラフである。
また、実験1の試料1および試料2の積層体について、真空雰囲気中であって表面に吸着電荷がない状態で貫通孔の径を変化させた場合に、積層体が生じさせる電界をシミュレーションした。シミュレーションの結果を図7に示す。図7(A)は、貫通孔の異なる径毎(3mm、5mm、7mm)の貫通孔の中心軸に取った電界の強度を示すグラフであり、図7(B)は、貫通孔の径の変化に伴う貫通孔の中心における電界の強度の変化を示すグラフである。
図6および図7から、異極像結晶の体積が一定であるときは、貫通孔の径が小さくなるほど、異極像結晶および異極像結晶の積層体が生じさせる電界強度が大きくなることがわかる。
[実験3]
図3に示したものと同じ構成のX線発生装置を作製した。この場合、2個の異極像結晶2、3として、それぞれ、外径15mmおよび厚さ5mmの円柱形状のLiTaO単結晶を使用し、7mm径の貫通孔4、5を設けた。また、金属ターゲット6として、厚さ10μmのCu箔を使用した。さらに、15mm×15mmの吸熱板および放熱板を備え、かつ7mm径の中央開口を有するペルチェ素子12を使用した。なお、図3には示していないが、容器1にホースを介して真空ポンプを接続し、容器1内部のガス圧を調節可能とした。
こうして、容器1内に4〜6PaのNガス雰囲気を維持しつつ、ペルチェ素子12への供給電力を制御することによって、積層体7の加熱および冷却を繰り返した。この加熱および冷却は、500秒間の加熱によって積層体7の温度を約5℃から約80℃まで上昇させた後、500秒間の冷却によって積層体7の温度を約80℃から約5℃まで下降させるという加熱・冷却サイクルを繰り返すことによって実行した。
そして、容器1のX線透過窓11から照射されるX線をSi検出器によって検出し、加熱・冷却サイクルの1周期(1000秒)の間に、1秒間当たりに発生するX線強度(積分強度)を測定した。測定結果を、図8のグラフに示す。
また、加熱・冷却サイクルの繰り返し回数を変化させたときのサイクル1周期当たりのX線積分強度の変化を測定した。測定結果を、図9のグラフに示す。
図8および図9のグラフから、昇温時および降温時のいずれにおいても、X線が安定して照射されることがわかる。
さらに、Si検出器の検出信号をマルチチャンネルアナライザーを用いてエネルギー弁別し、積層体の昇温時および降温時に発生するX線のそれぞれのスペクトルを取得した。得られたスペクトルを図10に示す。図10から、昇温時および降温時のいずれにおいても、積層体の貫通孔から照射されるX線は、金属ターゲットを構成するCu原子の特性X線であることがわかる。
本発明では、異極像結晶の貫通孔内に金属ターゲットを配置し、異極像結晶の温度を昇降させて貫通孔内に強電界を生じさせ、この強電界によって電子を金属ターゲットに衝突させ、それによって金属ターゲットからX線を発生させている。
ところで、この場合、金属ターゲットの代わりに、構成原子・分子が不明な試料を貫通孔内に配置し、この試料に電子を衝突させると、試料を構成する原子および分子の特性X線が発生することになる。こうして、試料から発生するX線を分析することによって、試料の蛍光X線分析を簡単に行うことができる。
図11は、実験3で用いたX線発生装置において、Cu箔6の代わりに、茶葉を試料として配置し、実験3と同じ加熱・冷却サイクルで積層体7の温度昇降を行うことで茶葉に電子を照射し、茶葉から発生したX線を、実験3と同じSi検出器およびマルチチャンネルアナライザーを用いて検出し、分析して得られたスペクトルである。図11から、茶葉中に含まれるKuの分析が行えていることがわかる。
このように、本発明は、極めて容易に、蛍光X線分析装置に転用することができる。
1 容器
1a、1b 端面
2、3 異極像結晶
4、5 貫通孔
6 金属ターゲット
7 積層体
8 電熱線
9 制御部
10 電源
11 X線透過窓
12 ペルチェ素子
12a リード線
12b 中央開口
13 支持台

Claims (9)

  1. 内部に低圧ガス雰囲気を維持する容器と、
    それぞれ一方向に分極し、前記容器の内部に、正負の異なる電気面が互いに対向するように一列に配置された少なくとも2個の異極像結晶と、を備え、
    前記異極像結晶はそれぞれ前記分極の方向にのびる貫通孔を有するとともに、前記貫通孔が互いに整合するように配置され、さらに、
    対向する前記異極像結晶の間に配置された金属ターゲットを備え、前記金属ターゲットを挟んで隣接する前記異極像結晶同士が電気的に接続されて、前記異極像結晶および前記金属ターゲットからなる1つの積層体が形成され、さらに、
    前記積層体を前記容器内の所定位置に固定する固定手段と、
    前記異極像結晶の温度を昇降させる温度制御手段と、を備え、前記異極像結晶の温度の昇降に伴って前記貫通孔内に生じる電界によって、電子を前記金属ターゲットに衝突させることにより、X線を発生させるものであることを特徴とするX線発生装置。
  2. 対向する前記異極像結晶の間に配置されて当該異極像結晶同士を接続し、かつ前記金属ターゲットを取り外し可能に支持する、導電性を有するターゲット支持手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
  3. 前記異極像結晶および前記金属ターゲットが導電性接着剤によって互いに接合されていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
  4. 前記積層体が3個以上の前記異極像結晶を含む場合、前記金属ターゲットには、隣り合う前記異極像結晶の貫通孔同士を連通する少なくとも1つの開口が形成されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のX線発生装置。
  5. 前記温度制御手段は、
    前記容器の内部または外部に配置されたヒーターと、
    前記容器の外部に配置され、前記ヒーターに電力を供給する電源と、
    前記容器の外部に配置され、前記電源から前記ヒーターへの電力供給を制御する制御部と、を有していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のX線発生装置。
  6. 前記ヒーターは、前記積層体を取り巻いて配置され、前記積層体の軸方向にのびるコイル状の電熱線からなり、前記電熱線と前記積層体の間には、電気的絶縁のための間隙が設けられ、あるいは、電気絶縁性を有する部材が配置されることを特徴とする請求項5に記載のX線発生装置。
  7. 前記ヒーターは、前記容器を取り巻いて配置された電熱線からなっていることを特徴とする請求項5に記載のX線発生装置。
  8. 前記温度制御手段は、
    前記容器内に固定されたペルチェ素子と、
    前記容器の外部に配置され、前記ペルチェ素子に電力を供給する電源と、
    前記容器の外部に配置され、前記電源から前記ペルチェ素子への電力供給を制御する制御部と、を有し、前記ペルチェ素子は、放熱板および吸熱板を貫通する中央開口を有し、前記固定手段は前記ペルチェ素子からなり、前記積層体の一方の端面が前記ペルチェ素子の前記放熱板または前記吸熱板に接触し、かつ前記貫通孔が前記ペルチェ素子の前記中央開口に整合した状態で、前記積層体が前記ペルチェ素子に固定されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のX線発生装置。
  9. 前記金属ターゲットが箔状に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のX線発生装置。
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