JP2005005128A - イオン移動度検出器 - Google Patents
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Abstract
【課題】コンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることが可能なイオン移動度検出器を提供すること。
【解決手段】ドリフト室21は、管状部材としてのドリフト管23内に形成されており、イオン化室内でイオン化された試料分子がその長手方向に移動する領域である。ドリフト管23は、複数のリング状の電極25と、複数のリング状の電気絶縁体27とを含み、電極25と電気絶縁体27が交互に積層された構成となっている。電極25は、電気絶縁体27を挟んで隣接するもの同士が分圧抵抗65により電気的に接続されている。分圧抵抗65は、電気絶縁体27の外周表面に形成された薄膜状の印刷抵抗体Rである。分圧抵抗65は、当該分圧抵抗65と電気的に接続されるように印刷形成された導通用電極66を通して、対応する電極25に電気的に接続される。
【選択図】 図3
【解決手段】ドリフト室21は、管状部材としてのドリフト管23内に形成されており、イオン化室内でイオン化された試料分子がその長手方向に移動する領域である。ドリフト管23は、複数のリング状の電極25と、複数のリング状の電気絶縁体27とを含み、電極25と電気絶縁体27が交互に積層された構成となっている。電極25は、電気絶縁体27を挟んで隣接するもの同士が分圧抵抗65により電気的に接続されている。分圧抵抗65は、電気絶縁体27の外周表面に形成された薄膜状の印刷抵抗体Rである。分圧抵抗65は、当該分圧抵抗65と電気的に接続されるように印刷形成された導通用電極66を通して、対応する電極25に電気的に接続される。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン移動度検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のイオン移動度検出器として、複数のリング状の電極と複数のリング状の電気絶縁体とを含み、これらの電極と電気絶縁体が交互に積層された管状部材と、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を電気的に接続する分圧抵抗群と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されたイオン移動度検出器では、各分圧抵抗は分圧抵抗が管状部材から突出して設けられている。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4777363号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されたイオン移動度検出器の構成では、分圧抵抗が管状部材から突出して設けられることから、分圧抵抗が隣接する部品と干渉し易くなり、レイアウトの自由度が制限されるといった問題点や、分圧抵抗が突出する分、イオン移動度検出器が大型化してしまうといった問題点を有することとなる。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、コンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることが可能なイオン移動度検出器を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るイオン移動度検出器は、イオン化された試料分子を移動させるための電界を形成する電界形成手段を備えたイオン移動度検出器であって、電界形成手段は、複数のリング状の電極と複数のリング状の電気絶縁体とを含み、電極と電気絶縁体とが交互に積層された管状部材と、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を管状部材の外周表面において電気的に接続する薄膜状の分圧抵抗と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明に係るイオン移動度検出器では、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を電気的に接続する分圧抵抗は、それぞれが薄膜状とされているので、管状部材の外周表面から突出するようなことはない。この結果、イオン移動度検出器のコンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0009】
また、分圧抵抗は、電気絶縁体の外周表面に形成された印刷抵抗体であることが好ましい。このように構成した場合、薄膜状の分圧抵抗を簡易に形成することができる。
【0010】
また、分圧抵抗は、電気絶縁性部材に形成されており、対応する電極に導電性部材を通して電気的に接続されていることが好ましい。このように構成した場合、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を確実に電気的に接続し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0011】
また、分圧抵抗は、電気絶縁性部材に形成されており、対応する電極と物理的に接触することによって電気的に接続されていることが好ましい。このように構成した場合、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を確実に電気的に接続し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0012】
また、電気絶縁性部材は、耐熱性を有すると共に、ヒーターが形成されており、電気絶縁性部材は、管状部材の外周表面に沿って当該管状部材の外側に配置されることが好ましい。このように構成した場合、装置内の空間(例えば、イオン化室やドリフト室等)を加熱し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0013】
また、電気絶縁性部材は、樹脂薄膜であることが好ましい。このように構成した場合、加工が容易であり、また管状部材の外周表面に沿って巻きつけるようにして配置することが可能となる。特に、ヒーターが形成された樹脂薄膜を管状部材の外周表面に沿って巻きつけた場合、装置内の空間(例えば、イオン化室やドリフト室等)を均一に加熱することができる。
【0014】
また、樹脂薄膜は、ポリイミド樹脂からなることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係るイオン移動度検出器について図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。図2は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図3は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる蓋周辺を示す断面図である。図4は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる印刷抵抗体の断面構成を説明するための図である。
【0017】
イオン移動度検出器IMS1は、図1及び図2に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。イオン化室1及びドリフト室21内の圧力は、大気圧相当である。なお、本第1実施形態に係るイオン移動度検出器IMS1は、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0018】
イオン化室1は、図2に示されるように、両端に開口3a,3bを有する筒状部材3内に形成されており、試料分子をイオン化する領域である。筒状部材3は、電気絶縁性材料(例えば、アルミナ等)からなる。イオン化室1(筒状部材3の内部空間)は、筒状部材3の一方の開口3aを通してドリフト室21に連通している。筒状部材3には、試料導入管5と、真空紫外ランプ7が設けられている。
【0019】
試料導入管5は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給源及び試料分子を供給する試料分子供給源(いずれも図示せず)に接続されており、試料導入管5の一端に形成された導入口13を通してイオン化室1に連通している。キャリアガス供給源から供給されたキャリアガス及び試料分子供給源から供給された試料分子は、混合された状態で、試料導入管5を通ってイオン化室1内に導入される。ここで、試料導入管5は、試料分子をイオン化室1内に導入する試料分子導入手段として機能する。
【0020】
真空紫外ランプ7は、試料導入管5を通してイオン化室1に導入された試料分子に真空紫外光を照射する。真空紫外光が照射された試料分子は、イオン化されることとなる。ここで、真空紫外ランプ7は、イオン化室1に導入された試料分子にエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段として機能する。なお、真空紫外ランプ7としては、希ガス等を利用するエキシマランプやキャピラリ放電管、水素放電ランプを用いることができる。また、真空紫外ランプ7の代わりに、紫外線やX線を放出するD2ランプ、軟X線管や、多光子吸収によってイオン化させることができるUVレーザを用いることができる。真空紫外ランプ7は、筒状部材3に形成された挿入口に挿入され、その外周がOリング14によりシールされた状態で、筒状部材3に配設される。
【0021】
真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向と試料導入管5を通した試料分子の導入方向とは、互いに交差(例えば、直交)すると共に、ドリフト室21の長手方向中心軸Lと交差(例えば、直交)する方向に設定されている。なお、本第1実施形態においては、真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向、試料導入管5を通した試料分子の導入方向、及び、ドリフト室21の長手方向中心軸Lは一点で交差している。
【0022】
筒状部材3には、試料導入管5を通した試料分子の導入方向で見て導入口13と対向する位置に、図1に示されるように、導入された試料分子を排出するための排出口15が形成されている。イオン化室1は、排出口15を通して外部空間に連通している。
【0023】
筒状部材3の他方の開口3bは、電子捕集電極17により塞がれている。この電子捕集電極17は、試料分子がイオン化される際に発生する電子を捕集するためのものであり、所定の正の電位が印加されている。電子捕集電極17には、筒状部材3の他方の開口3bに内挿される突出部19が形成されている。
【0024】
ドリフト室21は、図2に示されるように、管状部材としてのドリフト管23内に形成されており、一端側がイオン化室1に連通し、イオン化室1内でイオン化された試料分子がその長手方向に移動する領域である。ドリフト管23は、複数のリング状の電極25と、複数のリング状の電気絶縁体27とを含んでおり、電極25と電気絶縁体27が交互に積層された構成となっている。即ち、電極25と電極25との間に電気絶縁体27が配置され、電極25と電極25とは電気絶縁体27により電気的に絶縁された状態にある。電極25及び電気絶縁体27,35は、イオン化された試料分子を移動させるための電界を形成する電界形成手段として機能する。電極25は、例えばコバール等の導電性材料からなる。電気絶縁体27は、例えばアルミナ等の電気絶縁性材料からなる。なお、イオン化室1を形成する筒状部材3も、ドリフト室21を形成するドリフト管23と同様に、電極と電気絶縁体とを交互に積層した構成としてもよい。
【0025】
ドリフト管23の一端側には、ゲートシャッターとしてのゲート電極31が設けられている。ゲート電極31としては、ブラッドバリー−ニールセン・シャッター(Bradbury−Nielsen shutter)を用いることができる。ゲート電極31は、印加される電位が変化することによりイオン化された試料分子を通過させるものであり、一対の電極31aと電気絶縁性を有する枠部材32とを含んでいる。各電極31aは、基幹部と当該基幹部から交差する方向に伸びる複数の分岐部とを有した櫛歯形状を呈しており、枠部材32に互いに噛み合うように配置されている。上記一対の電極31a間の電位差を0とすることにより、イオン化された試料分子の通過が許容され、当該電位差を0より大きい所定の値とすることにより、イオン化された試料分子の通過が禁止される。したがって、ゲート電極31にパルス状の信号を供給し、所定の時間、一対の電極31a間の電位差を0とすることにより、当該所定の時間だけイオン化された試料分子がゲート電極31を通過することとなる。ゲート電極31により、イオン化室1とドリフト室21とが分離されることとなる。ゲート電極31には、図1に示されるように、電位を印加するためのリード部33がドリフト管23の径方向に突出して設けられている。なお、ゲート電極31として、ブラッドバリー−ニールセン・シャッターの代わりに、2枚のメッシュ電極を近接配置させてもよい。
【0026】
ゲート電極31と筒状部材3との間にも、電極25と電気絶縁体35が交互に積層された状態で配置されている。電気絶縁体35は、例えばアルミナ等の電気絶縁性材料からなり、複数のガス放出口37が形成されている。ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、ガス放出口37を通して、外部空間に連通している。
【0027】
ドリフト管23の他端側には、図3にも示されるように、導電性金属板からなる蓋41が設けられている。蓋41には、イオン化された試料分子を収集するための集電極45(本実施形態においては、アノードとして機能する。)が配置されている。蓋41は、第1の部材42と第2の部材43とを有している。第1の部材42は、断面形状がハット形とされ、鍔部42aと、当該鍔部42aに対して段差を有して形成された底面部42bとを含んでいる。第2の部材43は、断面形状がハット形とされ、鍔部43aと、当該鍔部43aに対して段差を有して形成された底面部43bとを含んでいる。第1の部材42と第2の部材43とは、底面部42bと底面部43bとが所定の間隔を有した状態で鍔部42aと鍔部43aとが接合されることにより一体化されている。第1の部材42の底面部42bには、ドリフトガス導入管47が一体に形成されていると共に、中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと同軸上に位置する開口42cが形成されている。第2の部材43の底面部43bには、中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと同軸上に位置する開口43cが形成されている。
【0028】
集電極45は、開口42cに挿通された状態で設けられた、電気絶縁性を有する円板状の部材46の表面に層状に形成されることにより、蓋41に配置されている。集電極45は、部材46を貫通して設けられた電極リード48と電気的に接続されており、集電極45からの電気信号は電極リード48を通して出力される。集電極45は、その中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致するように設けられている。集電極45の電位は、蓋41と同じ電位に保たれている。集電極45としては、ファラデー・カップ等を用いることも可能である。
【0029】
ドリフトガス導入管47は、ドリフトガスを供給するドリフトガス供給源(図示せず)に接続されており、ドリフトガス導入管47の一端に形成された導入口49を通してドリフト室21の他端側に連通している。ドリフトガス供給源から供給されたドリフトガスは、ドリフトガス導入管47を通り、ドリフト室21内におけるイオン化された試料分子の移動方向に見て集電極45より前方からドリフト室21内に導入される。即ち、集電極45は、ドリフトガスの流れ方向で見て、ドリフトガス導入管47の導入口49よりも下流に位置している。
【0030】
ドリフト室21の他端側には、メッシュ形状を呈したグリッド電極53が集電極45に対向して設けられている。このグリッド電極53は、電極25のうちの最も蓋41に近い電極に電気的に接続されており、当該電極と同じ電位とされている。グリッド電極53は、ドリフト室21内に形成される電界がゲート電極31における電位のパルス状の変化により変動するのを抑制する。
【0031】
集電極45の外周側には、補助電極55が配置されている。補助電極55は、板状部材からなり、その中央部に集電極45の直径よりも若干大きい内径を有する開口57が形成されている。補助電極55は、開口57内に集電極45が位置するように、集電極45と同一平面内に設けられている。補助電極55の外周部分は、第2の部材43の底面部43bと接しており、第2の部材43と電気的に接続されている。これにより、補助電極55の電位は、蓋41と同じ電位に保たれる。また、補助電極55の電位は、集電極45の電位と同じである。
【0032】
補助電極55には、複数の貫通孔が形成されている。ドリフトガス導入管47の導入口13から導入されるドリフトガスは、まず、第1の部材42、第2の部材43、補助電極55及び集電極45とで画成される空間内に流入する。その後、ドリフトガスは、補助電極55に形成された貫通孔、及び、補助電極55の内周と集電極45の外周との間隙を通って、ドリフト室21内を流れていく。第1の部材42、第2の部材43、補助電極55及び集電極45とで画成される空間は、ドリフトガスのバッファ領域として機能する。なお、補助電極55は、貫通孔を有する板状部材の他に、メッシュ状の部材としてもよい。
【0033】
ところで、蓋41、電極25及び電子捕集電極17は、図4にも示されるように、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3を挟んで隣接するもの同士が分圧抵抗65により電気的に接続されている。分圧抵抗65は、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3の外周表面に形成された薄膜状の印刷抵抗体Rである。分圧抵抗65は、当該分圧抵抗65と電気的に接続されるように印刷形成された導通用電極66を通して、対応する蓋41、電極25及び電子捕集電極17に電気的に接続される。分圧抵抗65は、例えば酸化ルテニウム等からなり、導通用電極66は、Au等からなる。ドリフト管23における分圧抵抗65及び導通用電極66を形成する部分を平面に加工しておいてもよい。なお、図4においては、電極25及び電気絶縁体27しか図示していないが、筒状部材3及び電気絶縁体35の外周表面にも同じく印刷抵抗体Rが形成されている。
【0034】
そして、上述したように、電子捕集電極17に所定の正の電位を印加し、蓋41を接地すると、イオン化室1からドリフト室21にわたって、電界が形成される。この電界により、イオン化された試料分子は、イオン化室1からドリフト室21に移動し、ドリフト室21内を集電極45に向けて移動する。
【0035】
筒状部材3と電極25との間には、メッシュ状電極69が配置されている。メッシュ状電極69は、筒状部材3と電極25とで挟持されており、電極25と同じ電位とされる。このメッシュ状電極69は、筒状部材3の一方の開口3a近傍に位置することとなり、イオン化室1内に形成される電界がゲート電極31における電位のパルス状の変化により変動するのを抑制する。
【0036】
続いて、上述した構成を有するイオン移動度検出器IMS1の測定原理を簡単に説明する。イオン化室1にてイオン化された試料分子(以下、単にイオンと称する)を、ゲート電極31にパルス状の電圧を印加して電位を変化させることで、ドリフト室21内に導入する。ドリフト室21に導入されたパルス状のイオン群は、ドリフトガス導入管47より導入されたドリフトガスの分子の影響を受けることで時間的遅れを持って移動し、ドリフト室21内に形成されたほぼ均一の電界に沿って集電極45に到達する。集電極45に到達したイオン群はパルス状の電気信号として出力され、当該電気信号に基づいて、ゲート電極31から集電極45までの到達時間(飛行時間(TOF)、集電極45に到達したイオン群の量等が検出される。上記到達時間からイオン移動度を求めることができ、試料分子の同定が可能となる。また、電気信号の応答波形の積分値もしくはピーク値から、試料分子の定量が可能となる。
【0037】
以上のように、本第1実施形態において、蓋41、電極25及び電子捕集電極17は、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3を挟んで隣接するもの同士がドリフト管23の外周表面において分圧抵抗65により電気的に接続されている。このとき、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3を挟んで隣接する電極等17,25,41同士を電気的に接続する分圧抵抗65は、それぞれが薄膜状とされているので、ドリフト管23の外周表面から突出するようなことはない。この結果、イオン移動度検出器IMS1のコンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0038】
また、本第1実施形態において、分圧抵抗65は、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3の外周表面に形成された印刷抵抗体Rである。これにより、薄膜状の分圧抵抗65を簡易に形成することができる。
【0039】
また、分圧抵抗65を印刷抵抗体Rとして構成することにより、電極25間の間隔(ピッチ)を狭くすることも可能である(例えば、3mm)。このように電極25間のピッチを狭くした場合、ドリフト室21においてドリフト管23の内周近傍まで均一な電界が形成されることとなり、高分解能のイオン移動度検出器を実現することができる。
【0040】
また、本第1実施形態においては、集電極45の外周側に、当該集電極45と同電位とされる補助電極55が設けられているので、移動途中にドリフト室21の長手方向中心軸Lに交差する方向に分散し、当該長手方向中心軸Lから離れた軌跡を形成するイオン化された試料分子は、集電極45に収集されることなく、補助電極55に確実に収集されることとなる。これにより、集電極45からの出力が時間的な遅れ成分を含むようなことはなく、イオン移動度検出器IMS1の時間分解能の劣化を効果的に抑制することができる。なお、補助電極55はドリフトガスを透過するので、上記ドリフトガスの流れを阻害するようなことはない。
【0041】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。図6は、第2実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図7は、図6におけるVII−VII線に沿った断面図である。なお、図6においては、後述する樹脂薄膜165等の図示を省略している。
【0042】
イオン移動度検出器IMS2は、図5〜図7に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。なお、本第2実施形態に係るイオン移動度検出器IMS2も、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0043】
イオン化室1は、第1実施形態と同じく、筒状部材3内に形成されている。
【0044】
ドリフト室21は、第1実施形態と同じく、ドリフト管23内に形成されており、一端側がイオン化室1に連通している。また、ドリフト管23は、複数のリング状の電極25と、複数のリング状の電気絶縁体27とを含んでおり、電極25と電気絶縁体27が交互に積層された構成となっている。
【0045】
ゲート電極31と筒状部材3との間には、略円板状の電極135が配置されている。電極135は、ドリフト管23を構成する電極25と同様の形状を有する外周部137と、当該外周部137から内側方向に伸びる基部139とを有している。基部139には、筒状部材3の一方の開口3aに連通する開口139aと、当該開口139aの外周寄りの位置に形成されたガス放出口139bが形成されている。外周部137にも、ガス放出口137aが形成されている。ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、電極135の基部139に形成された開口139a及び筒状部材3の一方の開口3aを通して、イオン化室1に連通している。また、ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、ガス放出口137a,139bを通して、外部空間に連通している。
【0046】
ドリフト管23の他端側には、導電性の基板143が設けられている。基板143には、イオン化された試料分子を収集するための集電極45(本実施形態においては、アノードとして機能する。)と、ドリフトガス導入管47が配置されている。
【0047】
本第2実施形態における集電極45は、円板状の部材であり、基板143に電気絶縁性を有するリング状の部材146を介して設けられた支持部材にネジ止めされることにより、基板143に配置されている。リング状の部材146以外に集電極45を基板143と電気的に絶縁する手段としては、集電極45のリード部をガラス等の電気絶縁材料や絶縁性接着剤で封着したり、Oリング止めをしたりしてもよい。集電極45としては、ファラデー・カップ等を用いることができる。集電極45は、その中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致するように設けられている。集電極45の電位は、基板143と同じ電位に保たれている。
【0048】
ドリフト室21の他端側には、グリッド電極153が集電極45に対向して設けられている。このグリッド電極153は、集電極45の中心軸近傍に位置するメッシュ部155と、メッシュ部155を囲み、当該メッシュ部155におけるドリフトガスの透過率よりも低い透過率を有する外周部157とを含んでいる。グリッド電極153は、電極25のうちの最も基板143に近い電極に電気的に接続されており、当該電極と同じ電位とされている。グリッド電極153の外周部157は、板状部材からなる。なお、外周部157は、板状部材の他に、メッシュ部155のメッシュ粗さよりも細かいメッシュとしてもよい。また、板状部材に複数の貫通孔を形成してもよい。
【0049】
グリッド電極153のメッシュ部155は、円形状を呈しており、メッシュ部155の直径(外周部157の内側直径)は、集電極45の直径よりも小さく設定されている。このように、メッシュ部155の直径を集電極45の直径よりも小さく設定することで、集電極45に到達するイオン化された試料分子を制限することができる。すなわち、ドリフト室21の長手方向中心軸L付近をドリフト室21内に形成される電界に概ね垂直に移動するイオン化された試料分子が主として集電極45に到達することとなる。
【0050】
電極25,135、電気絶縁体27、ゲート電極31、筒状部材3及び電子捕集電極17は、基板143と抑え板159とで挟持されている。抑え板159は、電極25,135、電気絶縁体27、ゲート電極31、筒状部材3及び電子捕集電極17を挟持した状態で、一端側が基板143に固定された支柱161の他端側に螺合するナット163により基板143に対して固定される。なお、電子捕集電極17は、抑え板159にネジ止めされている。
【0051】
ところで、基板143及び電極25,135は、隣り合うもの同士が分圧抵抗65により電気的に接続されている。分圧抵抗65は、図8及び図9に示されるように、樹脂薄膜165の一方面側に形成された薄膜状の印刷抵抗体である。また、樹脂薄膜165の他方面側には、ヒーター166が配線されている。ヒーター166の両端には、電気配線が接続されるリード部166aが設けられている。ヒーター166は、例えばSUS(ステンレス鋼)ヒーターを用いることができる。ヒーター166は、樹脂薄膜165の一方面(分圧抵抗65が形成された面)側にも形成してもよい。
【0052】
樹脂薄膜165は、図5及び図10に示されるように、ドリフト管23の外周表面に沿って巻かれた状態で当該ドリフト管23の外側に配置される。樹脂薄膜165は、断熱性を有しており、ポリイミド樹脂からなる。
【0053】
続いて、各電極等25,135,143と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成について、図11〜図13を参照して説明する。なお、図11〜図13では、電極25と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成の一例を図示している。図11〜図13は、電極等と分割抵抗とを電気的に接続するための構成を説明するための模式図である。
【0054】
まず、図11を参照すると、樹脂薄膜165は、ヒーター166が形成された面がドリフト管23(電極25及び電気絶縁体27)の外周表面と対向するように配置されている。ドリフト管23の外周表面とヒーター166との間には、ヒーター166と電極25とを電気的に絶縁するための電気絶縁層167(例えば、ポリイミド樹脂からなる薄膜等)が設けられている。この電気絶縁層167は、耐熱性を有する粘着層168(例えば、アクリル、シリコン、ポリイミド樹脂等)により、ドリフト管23の外周表面に接着されている。なお、この粘着層168は必ずしも必要ではなく、電気絶縁層167をドリフト管23の外周表面の当接させる構成としてもよい。
【0055】
分圧抵抗65は、当該分圧抵抗65と電気的に接続されるように印刷形成された導通用電極66、及び、導電性を有するビス169を通して電極25に電気的に接続される。このビス169は、樹脂薄膜165をドリフト管23に固定する機能も有している。
【0056】
樹脂薄膜165は、ビス169が導電性を有する他の部品と電気的に絶縁されるように、電気絶縁層170(例えば、ポリイミド樹脂からなる薄膜等)で覆われている。なお、電気絶縁層170で覆う代わりに、電気絶縁性を有するケースで樹脂薄膜165を覆う構成としてもよく、ビス169に電気絶縁性を有する樹脂をポッティングして覆う構成としてもよい。
【0057】
続いて、図12を参照すると、分圧抵抗65は、導通用電極66、及び、電極25に立設された導電性を有するピン171を通して電極25に電気的に接続される。この場合、ピン171と導通用電極66とを導電性を有する接着剤で固定することにより、樹脂薄膜165がドリフト管23に固定されることとなる。
【0058】
続いて、図13を参照すると、樹脂薄膜165は、分圧抵抗65が形成された面がドリフト管23(電極25及び電気絶縁体27)の外周表面と対向するように配置されている。樹脂薄膜165がビス172により外周側から押さえられると、導通用電極66と電極25とが物理的に接触することとなる。これにより、分圧抵抗65は、導通用電極66を通して電極25に電気的に接続される。ビス172は、導電性を有していてもよく、電気的絶縁性を有していてもよい。なお、樹脂薄膜165を電気絶縁層170で覆っているが、ビス172が電気的絶縁性を有する場合には、省略してもよい。
【0059】
図示は省略したが、基板143と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成、あるいは、電極135と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成にも、上述した電極25と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成が採用されている。また、電極135と電子捕集電極17とは、図示しない分圧抵抗を通して電気的に接続されている。また、樹脂薄膜165を用いてドリフト管23のみならず、筒状部材3及び電子捕集電極17まで覆い、電極135と電子捕集電極17とを電気的に接続したり、ヒーター166でイオン化室1を加熱してもよい
【0060】
電子捕集電極17に所定の正の電位を印加し、基板143を接地すると、第1実施形態と同様に、イオン化室1からドリフト室21にわたって、電界が形成される。この電界により、イオン化された試料分子は、イオン化室1からドリフト室21に移動し、ドリフト室21内を集電極45に向けて移動する。
【0061】
以上のように、本第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同じく、イオン移動度検出器IMS2のコンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0062】
また、本第2実施形態において、分圧抵抗65は、断熱性を有する樹脂薄膜165に形成されており、対応する電極等25,135,143にビス169及び導通用電極66を通して電気的に接続されている。これにより、電気絶縁体27を挟んで隣接する電極等25,135,143同士を確実に電気的に接続し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0063】
また、本第2実施形態において、分圧抵抗65は、樹脂薄膜165に形成されており、対応する電極等25,135,143と導通用電極66とが物理的に接触することによって電気的に接続されている。これにより、電気絶縁体27を挟んで隣接する電極等25,135,143同士を確実に電気的に接続し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0064】
また、本第2実施形態において、樹脂薄膜165には、ヒーター166が形成されており、樹脂薄膜165は、ドリフト管23の外周表面に沿って巻かれた状態で当該ドリフト管23の外側に配置されている。これにより、ドリフト室21内を加熱し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0065】
また、本第2実施形態においては、樹脂薄膜165を用いているので、加工が容易であり、またドリフト管23の外周表面に沿って巻きつけるようにして配置することが可能となる。特に、ヒーター166が形成された樹脂薄膜165をドリフト管23の外周表面に沿って巻きつけた場合、ドリフト室21を均一に加熱することができる。
【0066】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、第2実施形態においては、分圧抵抗65を樹脂薄膜165に形成しているが、これに限られることなく、電気絶縁性を有する薄板に分圧抵抗65を形成するようにしてもよい。
【0067】
また、本第1及び第2実施形態においては、本発明を、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器IMS1,IMS2に適用しているが、これに限られることなく、試料分子を陰イオン化し、陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器にも本発明を適用することができる。陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器の場合、電位配置は、上記イオン移動度検出器IMS1,IMS2の電位配置とは逆の関係になる。また、GND(接地)の位置は、任意に設定することができる。
【0068】
また、本第1実施形態においては、イオン化された試料分子を移動させるための電界をイオン化室1内に形成する電界形成手段として、電極25と電気絶縁体35とを含む管状部材を設け、イオン化された試料分子を移動させるための電界をドリフト室21内に形成する電界形成手段として、電極25と電気絶縁体27とを含むドリフト管23(管状部材)を設けるように構成しているが、これに限られるものではない。イオン化された試料分子を移動させるための電界をイオン化室1内に形成する電界形成手段のみを上記管状部材として構成してもよく、また、イオン化された試料分子を移動させるための電界をドリフト室21内に形成する電界形成手段のみを上記管状部材として構成してもよい。
【0069】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、コンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることが可能なイオン移動度検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図3】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる蓋周辺を示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる印刷抵抗体の断面構成を説明するための図である。
【図5】第2実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。
【図6】第2実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図7】図6におけるVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる樹脂薄膜の平面図であり、分圧抵抗が形成された面を示している。
【図9】第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる樹脂薄膜の平面図であり、ヒーターが形成された面を示している。
【図10】第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる樹脂薄膜を示す斜視図である。
【図11】第2実施形態に係るイオン移動度検出器における、電極等と分割抵抗とを電気的に接続するための構成の一例を説明するための図である。
【図12】第2実施形態に係るイオン移動度検出器における、電極等と分割抵抗とを電気的に接続するための構成の一例を説明するための図である。
【図13】第2実施形態に係るイオン移動度検出器における、電極等と分割抵抗とを電気的に接続するための構成の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…イオン化室、3…筒状部材、5…試料導入管、7…真空紫外ランプ、21…ドリフト室、23…ドリフト管、25…電極、27,35…電気絶縁体、45…集電極、47…ドリフトガス導入管、65…分圧抵抗、66…導通用電極、135…電極、165…樹脂薄膜、166…ヒーター、167,170…電気絶縁層、169,172…ビス、171…ピン、IMS1,IMS2…イオン移動度検出器、R…印刷抵抗体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン移動度検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のイオン移動度検出器として、複数のリング状の電極と複数のリング状の電気絶縁体とを含み、これらの電極と電気絶縁体が交互に積層された管状部材と、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を電気的に接続する分圧抵抗群と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されたイオン移動度検出器では、各分圧抵抗は分圧抵抗が管状部材から突出して設けられている。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4777363号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されたイオン移動度検出器の構成では、分圧抵抗が管状部材から突出して設けられることから、分圧抵抗が隣接する部品と干渉し易くなり、レイアウトの自由度が制限されるといった問題点や、分圧抵抗が突出する分、イオン移動度検出器が大型化してしまうといった問題点を有することとなる。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、コンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることが可能なイオン移動度検出器を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るイオン移動度検出器は、イオン化された試料分子を移動させるための電界を形成する電界形成手段を備えたイオン移動度検出器であって、電界形成手段は、複数のリング状の電極と複数のリング状の電気絶縁体とを含み、電極と電気絶縁体とが交互に積層された管状部材と、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を管状部材の外周表面において電気的に接続する薄膜状の分圧抵抗と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明に係るイオン移動度検出器では、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を電気的に接続する分圧抵抗は、それぞれが薄膜状とされているので、管状部材の外周表面から突出するようなことはない。この結果、イオン移動度検出器のコンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0009】
また、分圧抵抗は、電気絶縁体の外周表面に形成された印刷抵抗体であることが好ましい。このように構成した場合、薄膜状の分圧抵抗を簡易に形成することができる。
【0010】
また、分圧抵抗は、電気絶縁性部材に形成されており、対応する電極に導電性部材を通して電気的に接続されていることが好ましい。このように構成した場合、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を確実に電気的に接続し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0011】
また、分圧抵抗は、電気絶縁性部材に形成されており、対応する電極と物理的に接触することによって電気的に接続されていることが好ましい。このように構成した場合、電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を確実に電気的に接続し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0012】
また、電気絶縁性部材は、耐熱性を有すると共に、ヒーターが形成されており、電気絶縁性部材は、管状部材の外周表面に沿って当該管状部材の外側に配置されることが好ましい。このように構成した場合、装置内の空間(例えば、イオン化室やドリフト室等)を加熱し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0013】
また、電気絶縁性部材は、樹脂薄膜であることが好ましい。このように構成した場合、加工が容易であり、また管状部材の外周表面に沿って巻きつけるようにして配置することが可能となる。特に、ヒーターが形成された樹脂薄膜を管状部材の外周表面に沿って巻きつけた場合、装置内の空間(例えば、イオン化室やドリフト室等)を均一に加熱することができる。
【0014】
また、樹脂薄膜は、ポリイミド樹脂からなることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係るイオン移動度検出器について図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。図2は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図3は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる蓋周辺を示す断面図である。図4は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる印刷抵抗体の断面構成を説明するための図である。
【0017】
イオン移動度検出器IMS1は、図1及び図2に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。イオン化室1及びドリフト室21内の圧力は、大気圧相当である。なお、本第1実施形態に係るイオン移動度検出器IMS1は、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0018】
イオン化室1は、図2に示されるように、両端に開口3a,3bを有する筒状部材3内に形成されており、試料分子をイオン化する領域である。筒状部材3は、電気絶縁性材料(例えば、アルミナ等)からなる。イオン化室1(筒状部材3の内部空間)は、筒状部材3の一方の開口3aを通してドリフト室21に連通している。筒状部材3には、試料導入管5と、真空紫外ランプ7が設けられている。
【0019】
試料導入管5は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給源及び試料分子を供給する試料分子供給源(いずれも図示せず)に接続されており、試料導入管5の一端に形成された導入口13を通してイオン化室1に連通している。キャリアガス供給源から供給されたキャリアガス及び試料分子供給源から供給された試料分子は、混合された状態で、試料導入管5を通ってイオン化室1内に導入される。ここで、試料導入管5は、試料分子をイオン化室1内に導入する試料分子導入手段として機能する。
【0020】
真空紫外ランプ7は、試料導入管5を通してイオン化室1に導入された試料分子に真空紫外光を照射する。真空紫外光が照射された試料分子は、イオン化されることとなる。ここで、真空紫外ランプ7は、イオン化室1に導入された試料分子にエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段として機能する。なお、真空紫外ランプ7としては、希ガス等を利用するエキシマランプやキャピラリ放電管、水素放電ランプを用いることができる。また、真空紫外ランプ7の代わりに、紫外線やX線を放出するD2ランプ、軟X線管や、多光子吸収によってイオン化させることができるUVレーザを用いることができる。真空紫外ランプ7は、筒状部材3に形成された挿入口に挿入され、その外周がOリング14によりシールされた状態で、筒状部材3に配設される。
【0021】
真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向と試料導入管5を通した試料分子の導入方向とは、互いに交差(例えば、直交)すると共に、ドリフト室21の長手方向中心軸Lと交差(例えば、直交)する方向に設定されている。なお、本第1実施形態においては、真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向、試料導入管5を通した試料分子の導入方向、及び、ドリフト室21の長手方向中心軸Lは一点で交差している。
【0022】
筒状部材3には、試料導入管5を通した試料分子の導入方向で見て導入口13と対向する位置に、図1に示されるように、導入された試料分子を排出するための排出口15が形成されている。イオン化室1は、排出口15を通して外部空間に連通している。
【0023】
筒状部材3の他方の開口3bは、電子捕集電極17により塞がれている。この電子捕集電極17は、試料分子がイオン化される際に発生する電子を捕集するためのものであり、所定の正の電位が印加されている。電子捕集電極17には、筒状部材3の他方の開口3bに内挿される突出部19が形成されている。
【0024】
ドリフト室21は、図2に示されるように、管状部材としてのドリフト管23内に形成されており、一端側がイオン化室1に連通し、イオン化室1内でイオン化された試料分子がその長手方向に移動する領域である。ドリフト管23は、複数のリング状の電極25と、複数のリング状の電気絶縁体27とを含んでおり、電極25と電気絶縁体27が交互に積層された構成となっている。即ち、電極25と電極25との間に電気絶縁体27が配置され、電極25と電極25とは電気絶縁体27により電気的に絶縁された状態にある。電極25及び電気絶縁体27,35は、イオン化された試料分子を移動させるための電界を形成する電界形成手段として機能する。電極25は、例えばコバール等の導電性材料からなる。電気絶縁体27は、例えばアルミナ等の電気絶縁性材料からなる。なお、イオン化室1を形成する筒状部材3も、ドリフト室21を形成するドリフト管23と同様に、電極と電気絶縁体とを交互に積層した構成としてもよい。
【0025】
ドリフト管23の一端側には、ゲートシャッターとしてのゲート電極31が設けられている。ゲート電極31としては、ブラッドバリー−ニールセン・シャッター(Bradbury−Nielsen shutter)を用いることができる。ゲート電極31は、印加される電位が変化することによりイオン化された試料分子を通過させるものであり、一対の電極31aと電気絶縁性を有する枠部材32とを含んでいる。各電極31aは、基幹部と当該基幹部から交差する方向に伸びる複数の分岐部とを有した櫛歯形状を呈しており、枠部材32に互いに噛み合うように配置されている。上記一対の電極31a間の電位差を0とすることにより、イオン化された試料分子の通過が許容され、当該電位差を0より大きい所定の値とすることにより、イオン化された試料分子の通過が禁止される。したがって、ゲート電極31にパルス状の信号を供給し、所定の時間、一対の電極31a間の電位差を0とすることにより、当該所定の時間だけイオン化された試料分子がゲート電極31を通過することとなる。ゲート電極31により、イオン化室1とドリフト室21とが分離されることとなる。ゲート電極31には、図1に示されるように、電位を印加するためのリード部33がドリフト管23の径方向に突出して設けられている。なお、ゲート電極31として、ブラッドバリー−ニールセン・シャッターの代わりに、2枚のメッシュ電極を近接配置させてもよい。
【0026】
ゲート電極31と筒状部材3との間にも、電極25と電気絶縁体35が交互に積層された状態で配置されている。電気絶縁体35は、例えばアルミナ等の電気絶縁性材料からなり、複数のガス放出口37が形成されている。ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、ガス放出口37を通して、外部空間に連通している。
【0027】
ドリフト管23の他端側には、図3にも示されるように、導電性金属板からなる蓋41が設けられている。蓋41には、イオン化された試料分子を収集するための集電極45(本実施形態においては、アノードとして機能する。)が配置されている。蓋41は、第1の部材42と第2の部材43とを有している。第1の部材42は、断面形状がハット形とされ、鍔部42aと、当該鍔部42aに対して段差を有して形成された底面部42bとを含んでいる。第2の部材43は、断面形状がハット形とされ、鍔部43aと、当該鍔部43aに対して段差を有して形成された底面部43bとを含んでいる。第1の部材42と第2の部材43とは、底面部42bと底面部43bとが所定の間隔を有した状態で鍔部42aと鍔部43aとが接合されることにより一体化されている。第1の部材42の底面部42bには、ドリフトガス導入管47が一体に形成されていると共に、中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと同軸上に位置する開口42cが形成されている。第2の部材43の底面部43bには、中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと同軸上に位置する開口43cが形成されている。
【0028】
集電極45は、開口42cに挿通された状態で設けられた、電気絶縁性を有する円板状の部材46の表面に層状に形成されることにより、蓋41に配置されている。集電極45は、部材46を貫通して設けられた電極リード48と電気的に接続されており、集電極45からの電気信号は電極リード48を通して出力される。集電極45は、その中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致するように設けられている。集電極45の電位は、蓋41と同じ電位に保たれている。集電極45としては、ファラデー・カップ等を用いることも可能である。
【0029】
ドリフトガス導入管47は、ドリフトガスを供給するドリフトガス供給源(図示せず)に接続されており、ドリフトガス導入管47の一端に形成された導入口49を通してドリフト室21の他端側に連通している。ドリフトガス供給源から供給されたドリフトガスは、ドリフトガス導入管47を通り、ドリフト室21内におけるイオン化された試料分子の移動方向に見て集電極45より前方からドリフト室21内に導入される。即ち、集電極45は、ドリフトガスの流れ方向で見て、ドリフトガス導入管47の導入口49よりも下流に位置している。
【0030】
ドリフト室21の他端側には、メッシュ形状を呈したグリッド電極53が集電極45に対向して設けられている。このグリッド電極53は、電極25のうちの最も蓋41に近い電極に電気的に接続されており、当該電極と同じ電位とされている。グリッド電極53は、ドリフト室21内に形成される電界がゲート電極31における電位のパルス状の変化により変動するのを抑制する。
【0031】
集電極45の外周側には、補助電極55が配置されている。補助電極55は、板状部材からなり、その中央部に集電極45の直径よりも若干大きい内径を有する開口57が形成されている。補助電極55は、開口57内に集電極45が位置するように、集電極45と同一平面内に設けられている。補助電極55の外周部分は、第2の部材43の底面部43bと接しており、第2の部材43と電気的に接続されている。これにより、補助電極55の電位は、蓋41と同じ電位に保たれる。また、補助電極55の電位は、集電極45の電位と同じである。
【0032】
補助電極55には、複数の貫通孔が形成されている。ドリフトガス導入管47の導入口13から導入されるドリフトガスは、まず、第1の部材42、第2の部材43、補助電極55及び集電極45とで画成される空間内に流入する。その後、ドリフトガスは、補助電極55に形成された貫通孔、及び、補助電極55の内周と集電極45の外周との間隙を通って、ドリフト室21内を流れていく。第1の部材42、第2の部材43、補助電極55及び集電極45とで画成される空間は、ドリフトガスのバッファ領域として機能する。なお、補助電極55は、貫通孔を有する板状部材の他に、メッシュ状の部材としてもよい。
【0033】
ところで、蓋41、電極25及び電子捕集電極17は、図4にも示されるように、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3を挟んで隣接するもの同士が分圧抵抗65により電気的に接続されている。分圧抵抗65は、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3の外周表面に形成された薄膜状の印刷抵抗体Rである。分圧抵抗65は、当該分圧抵抗65と電気的に接続されるように印刷形成された導通用電極66を通して、対応する蓋41、電極25及び電子捕集電極17に電気的に接続される。分圧抵抗65は、例えば酸化ルテニウム等からなり、導通用電極66は、Au等からなる。ドリフト管23における分圧抵抗65及び導通用電極66を形成する部分を平面に加工しておいてもよい。なお、図4においては、電極25及び電気絶縁体27しか図示していないが、筒状部材3及び電気絶縁体35の外周表面にも同じく印刷抵抗体Rが形成されている。
【0034】
そして、上述したように、電子捕集電極17に所定の正の電位を印加し、蓋41を接地すると、イオン化室1からドリフト室21にわたって、電界が形成される。この電界により、イオン化された試料分子は、イオン化室1からドリフト室21に移動し、ドリフト室21内を集電極45に向けて移動する。
【0035】
筒状部材3と電極25との間には、メッシュ状電極69が配置されている。メッシュ状電極69は、筒状部材3と電極25とで挟持されており、電極25と同じ電位とされる。このメッシュ状電極69は、筒状部材3の一方の開口3a近傍に位置することとなり、イオン化室1内に形成される電界がゲート電極31における電位のパルス状の変化により変動するのを抑制する。
【0036】
続いて、上述した構成を有するイオン移動度検出器IMS1の測定原理を簡単に説明する。イオン化室1にてイオン化された試料分子(以下、単にイオンと称する)を、ゲート電極31にパルス状の電圧を印加して電位を変化させることで、ドリフト室21内に導入する。ドリフト室21に導入されたパルス状のイオン群は、ドリフトガス導入管47より導入されたドリフトガスの分子の影響を受けることで時間的遅れを持って移動し、ドリフト室21内に形成されたほぼ均一の電界に沿って集電極45に到達する。集電極45に到達したイオン群はパルス状の電気信号として出力され、当該電気信号に基づいて、ゲート電極31から集電極45までの到達時間(飛行時間(TOF)、集電極45に到達したイオン群の量等が検出される。上記到達時間からイオン移動度を求めることができ、試料分子の同定が可能となる。また、電気信号の応答波形の積分値もしくはピーク値から、試料分子の定量が可能となる。
【0037】
以上のように、本第1実施形態において、蓋41、電極25及び電子捕集電極17は、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3を挟んで隣接するもの同士がドリフト管23の外周表面において分圧抵抗65により電気的に接続されている。このとき、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3を挟んで隣接する電極等17,25,41同士を電気的に接続する分圧抵抗65は、それぞれが薄膜状とされているので、ドリフト管23の外周表面から突出するようなことはない。この結果、イオン移動度検出器IMS1のコンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0038】
また、本第1実施形態において、分圧抵抗65は、電気絶縁体27,35あるいは筒状部材3の外周表面に形成された印刷抵抗体Rである。これにより、薄膜状の分圧抵抗65を簡易に形成することができる。
【0039】
また、分圧抵抗65を印刷抵抗体Rとして構成することにより、電極25間の間隔(ピッチ)を狭くすることも可能である(例えば、3mm)。このように電極25間のピッチを狭くした場合、ドリフト室21においてドリフト管23の内周近傍まで均一な電界が形成されることとなり、高分解能のイオン移動度検出器を実現することができる。
【0040】
また、本第1実施形態においては、集電極45の外周側に、当該集電極45と同電位とされる補助電極55が設けられているので、移動途中にドリフト室21の長手方向中心軸Lに交差する方向に分散し、当該長手方向中心軸Lから離れた軌跡を形成するイオン化された試料分子は、集電極45に収集されることなく、補助電極55に確実に収集されることとなる。これにより、集電極45からの出力が時間的な遅れ成分を含むようなことはなく、イオン移動度検出器IMS1の時間分解能の劣化を効果的に抑制することができる。なお、補助電極55はドリフトガスを透過するので、上記ドリフトガスの流れを阻害するようなことはない。
【0041】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。図6は、第2実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図7は、図6におけるVII−VII線に沿った断面図である。なお、図6においては、後述する樹脂薄膜165等の図示を省略している。
【0042】
イオン移動度検出器IMS2は、図5〜図7に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。なお、本第2実施形態に係るイオン移動度検出器IMS2も、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0043】
イオン化室1は、第1実施形態と同じく、筒状部材3内に形成されている。
【0044】
ドリフト室21は、第1実施形態と同じく、ドリフト管23内に形成されており、一端側がイオン化室1に連通している。また、ドリフト管23は、複数のリング状の電極25と、複数のリング状の電気絶縁体27とを含んでおり、電極25と電気絶縁体27が交互に積層された構成となっている。
【0045】
ゲート電極31と筒状部材3との間には、略円板状の電極135が配置されている。電極135は、ドリフト管23を構成する電極25と同様の形状を有する外周部137と、当該外周部137から内側方向に伸びる基部139とを有している。基部139には、筒状部材3の一方の開口3aに連通する開口139aと、当該開口139aの外周寄りの位置に形成されたガス放出口139bが形成されている。外周部137にも、ガス放出口137aが形成されている。ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、電極135の基部139に形成された開口139a及び筒状部材3の一方の開口3aを通して、イオン化室1に連通している。また、ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、ガス放出口137a,139bを通して、外部空間に連通している。
【0046】
ドリフト管23の他端側には、導電性の基板143が設けられている。基板143には、イオン化された試料分子を収集するための集電極45(本実施形態においては、アノードとして機能する。)と、ドリフトガス導入管47が配置されている。
【0047】
本第2実施形態における集電極45は、円板状の部材であり、基板143に電気絶縁性を有するリング状の部材146を介して設けられた支持部材にネジ止めされることにより、基板143に配置されている。リング状の部材146以外に集電極45を基板143と電気的に絶縁する手段としては、集電極45のリード部をガラス等の電気絶縁材料や絶縁性接着剤で封着したり、Oリング止めをしたりしてもよい。集電極45としては、ファラデー・カップ等を用いることができる。集電極45は、その中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致するように設けられている。集電極45の電位は、基板143と同じ電位に保たれている。
【0048】
ドリフト室21の他端側には、グリッド電極153が集電極45に対向して設けられている。このグリッド電極153は、集電極45の中心軸近傍に位置するメッシュ部155と、メッシュ部155を囲み、当該メッシュ部155におけるドリフトガスの透過率よりも低い透過率を有する外周部157とを含んでいる。グリッド電極153は、電極25のうちの最も基板143に近い電極に電気的に接続されており、当該電極と同じ電位とされている。グリッド電極153の外周部157は、板状部材からなる。なお、外周部157は、板状部材の他に、メッシュ部155のメッシュ粗さよりも細かいメッシュとしてもよい。また、板状部材に複数の貫通孔を形成してもよい。
【0049】
グリッド電極153のメッシュ部155は、円形状を呈しており、メッシュ部155の直径(外周部157の内側直径)は、集電極45の直径よりも小さく設定されている。このように、メッシュ部155の直径を集電極45の直径よりも小さく設定することで、集電極45に到達するイオン化された試料分子を制限することができる。すなわち、ドリフト室21の長手方向中心軸L付近をドリフト室21内に形成される電界に概ね垂直に移動するイオン化された試料分子が主として集電極45に到達することとなる。
【0050】
電極25,135、電気絶縁体27、ゲート電極31、筒状部材3及び電子捕集電極17は、基板143と抑え板159とで挟持されている。抑え板159は、電極25,135、電気絶縁体27、ゲート電極31、筒状部材3及び電子捕集電極17を挟持した状態で、一端側が基板143に固定された支柱161の他端側に螺合するナット163により基板143に対して固定される。なお、電子捕集電極17は、抑え板159にネジ止めされている。
【0051】
ところで、基板143及び電極25,135は、隣り合うもの同士が分圧抵抗65により電気的に接続されている。分圧抵抗65は、図8及び図9に示されるように、樹脂薄膜165の一方面側に形成された薄膜状の印刷抵抗体である。また、樹脂薄膜165の他方面側には、ヒーター166が配線されている。ヒーター166の両端には、電気配線が接続されるリード部166aが設けられている。ヒーター166は、例えばSUS(ステンレス鋼)ヒーターを用いることができる。ヒーター166は、樹脂薄膜165の一方面(分圧抵抗65が形成された面)側にも形成してもよい。
【0052】
樹脂薄膜165は、図5及び図10に示されるように、ドリフト管23の外周表面に沿って巻かれた状態で当該ドリフト管23の外側に配置される。樹脂薄膜165は、断熱性を有しており、ポリイミド樹脂からなる。
【0053】
続いて、各電極等25,135,143と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成について、図11〜図13を参照して説明する。なお、図11〜図13では、電極25と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成の一例を図示している。図11〜図13は、電極等と分割抵抗とを電気的に接続するための構成を説明するための模式図である。
【0054】
まず、図11を参照すると、樹脂薄膜165は、ヒーター166が形成された面がドリフト管23(電極25及び電気絶縁体27)の外周表面と対向するように配置されている。ドリフト管23の外周表面とヒーター166との間には、ヒーター166と電極25とを電気的に絶縁するための電気絶縁層167(例えば、ポリイミド樹脂からなる薄膜等)が設けられている。この電気絶縁層167は、耐熱性を有する粘着層168(例えば、アクリル、シリコン、ポリイミド樹脂等)により、ドリフト管23の外周表面に接着されている。なお、この粘着層168は必ずしも必要ではなく、電気絶縁層167をドリフト管23の外周表面の当接させる構成としてもよい。
【0055】
分圧抵抗65は、当該分圧抵抗65と電気的に接続されるように印刷形成された導通用電極66、及び、導電性を有するビス169を通して電極25に電気的に接続される。このビス169は、樹脂薄膜165をドリフト管23に固定する機能も有している。
【0056】
樹脂薄膜165は、ビス169が導電性を有する他の部品と電気的に絶縁されるように、電気絶縁層170(例えば、ポリイミド樹脂からなる薄膜等)で覆われている。なお、電気絶縁層170で覆う代わりに、電気絶縁性を有するケースで樹脂薄膜165を覆う構成としてもよく、ビス169に電気絶縁性を有する樹脂をポッティングして覆う構成としてもよい。
【0057】
続いて、図12を参照すると、分圧抵抗65は、導通用電極66、及び、電極25に立設された導電性を有するピン171を通して電極25に電気的に接続される。この場合、ピン171と導通用電極66とを導電性を有する接着剤で固定することにより、樹脂薄膜165がドリフト管23に固定されることとなる。
【0058】
続いて、図13を参照すると、樹脂薄膜165は、分圧抵抗65が形成された面がドリフト管23(電極25及び電気絶縁体27)の外周表面と対向するように配置されている。樹脂薄膜165がビス172により外周側から押さえられると、導通用電極66と電極25とが物理的に接触することとなる。これにより、分圧抵抗65は、導通用電極66を通して電極25に電気的に接続される。ビス172は、導電性を有していてもよく、電気的絶縁性を有していてもよい。なお、樹脂薄膜165を電気絶縁層170で覆っているが、ビス172が電気的絶縁性を有する場合には、省略してもよい。
【0059】
図示は省略したが、基板143と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成、あるいは、電極135と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成にも、上述した電極25と分圧抵抗65とを電気的に接続するための構成が採用されている。また、電極135と電子捕集電極17とは、図示しない分圧抵抗を通して電気的に接続されている。また、樹脂薄膜165を用いてドリフト管23のみならず、筒状部材3及び電子捕集電極17まで覆い、電極135と電子捕集電極17とを電気的に接続したり、ヒーター166でイオン化室1を加熱してもよい
【0060】
電子捕集電極17に所定の正の電位を印加し、基板143を接地すると、第1実施形態と同様に、イオン化室1からドリフト室21にわたって、電界が形成される。この電界により、イオン化された試料分子は、イオン化室1からドリフト室21に移動し、ドリフト室21内を集電極45に向けて移動する。
【0061】
以上のように、本第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同じく、イオン移動度検出器IMS2のコンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0062】
また、本第2実施形態において、分圧抵抗65は、断熱性を有する樹脂薄膜165に形成されており、対応する電極等25,135,143にビス169及び導通用電極66を通して電気的に接続されている。これにより、電気絶縁体27を挟んで隣接する電極等25,135,143同士を確実に電気的に接続し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0063】
また、本第2実施形態において、分圧抵抗65は、樹脂薄膜165に形成されており、対応する電極等25,135,143と導通用電極66とが物理的に接触することによって電気的に接続されている。これにより、電気絶縁体27を挟んで隣接する電極等25,135,143同士を確実に電気的に接続し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0064】
また、本第2実施形態において、樹脂薄膜165には、ヒーター166が形成されており、樹脂薄膜165は、ドリフト管23の外周表面に沿って巻かれた状態で当該ドリフト管23の外側に配置されている。これにより、ドリフト室21内を加熱し得る構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0065】
また、本第2実施形態においては、樹脂薄膜165を用いているので、加工が容易であり、またドリフト管23の外周表面に沿って巻きつけるようにして配置することが可能となる。特に、ヒーター166が形成された樹脂薄膜165をドリフト管23の外周表面に沿って巻きつけた場合、ドリフト室21を均一に加熱することができる。
【0066】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、第2実施形態においては、分圧抵抗65を樹脂薄膜165に形成しているが、これに限られることなく、電気絶縁性を有する薄板に分圧抵抗65を形成するようにしてもよい。
【0067】
また、本第1及び第2実施形態においては、本発明を、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器IMS1,IMS2に適用しているが、これに限られることなく、試料分子を陰イオン化し、陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器にも本発明を適用することができる。陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器の場合、電位配置は、上記イオン移動度検出器IMS1,IMS2の電位配置とは逆の関係になる。また、GND(接地)の位置は、任意に設定することができる。
【0068】
また、本第1実施形態においては、イオン化された試料分子を移動させるための電界をイオン化室1内に形成する電界形成手段として、電極25と電気絶縁体35とを含む管状部材を設け、イオン化された試料分子を移動させるための電界をドリフト室21内に形成する電界形成手段として、電極25と電気絶縁体27とを含むドリフト管23(管状部材)を設けるように構成しているが、これに限られるものではない。イオン化された試料分子を移動させるための電界をイオン化室1内に形成する電界形成手段のみを上記管状部材として構成してもよく、また、イオン化された試料分子を移動させるための電界をドリフト室21内に形成する電界形成手段のみを上記管状部材として構成してもよい。
【0069】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、コンパクト化を図り、レイアウトの自由度を高めることが可能なイオン移動度検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図3】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる蓋周辺を示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる印刷抵抗体の断面構成を説明するための図である。
【図5】第2実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。
【図6】第2実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図7】図6におけるVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる樹脂薄膜の平面図であり、分圧抵抗が形成された面を示している。
【図9】第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる樹脂薄膜の平面図であり、ヒーターが形成された面を示している。
【図10】第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれる樹脂薄膜を示す斜視図である。
【図11】第2実施形態に係るイオン移動度検出器における、電極等と分割抵抗とを電気的に接続するための構成の一例を説明するための図である。
【図12】第2実施形態に係るイオン移動度検出器における、電極等と分割抵抗とを電気的に接続するための構成の一例を説明するための図である。
【図13】第2実施形態に係るイオン移動度検出器における、電極等と分割抵抗とを電気的に接続するための構成の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…イオン化室、3…筒状部材、5…試料導入管、7…真空紫外ランプ、21…ドリフト室、23…ドリフト管、25…電極、27,35…電気絶縁体、45…集電極、47…ドリフトガス導入管、65…分圧抵抗、66…導通用電極、135…電極、165…樹脂薄膜、166…ヒーター、167,170…電気絶縁層、169,172…ビス、171…ピン、IMS1,IMS2…イオン移動度検出器、R…印刷抵抗体。
Claims (7)
- イオン化された試料分子を移動させるための電界を形成する電界形成手段を備えたイオン移動度検出器であって、
前記電界形成手段は、
複数のリング状の電極と複数のリング状の電気絶縁体とを含み、前記電極と前記電気絶縁体とが交互に積層された管状部材と、
前記電気絶縁体を挟んで隣接する電極同士を前記管状部材の外周表面において電気的に接続する薄膜状の分圧抵抗と、を有することを特徴とするイオン移動度検出器。 - 前記分圧抵抗は、前記電気絶縁体の外周表面に形成された印刷抵抗体であることを特徴とする請求項1に記載のイオン移動度検出器。
- 前記分圧抵抗は、電気絶縁性部材に形成されており、対応する電極に導電性部材を通して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン移動度検出器。
- 前記分圧抵抗は、電気絶縁性部材に形成されており、対応する電極と物理的に接触することによって電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン移動度検出器。
- 前記電気絶縁性部材は、耐熱性を有すると共に、ヒーターが形成されており、
前記電気絶縁性部材は、前記管状部材の外周表面に沿って当該管状部材の外側に配置されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のイオン移動度検出器。 - 前記電気絶縁性部材は、樹脂薄膜であることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載のイオン移動度検出器。
- 前記樹脂薄膜は、ポリイミド樹脂からなることを特徴とする請求項6に記載のイオン移動度検出器。
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